○羽仁五郎君 私はこの問題が今
会期において解決せられることを衷心から希うものであります。二十三日の
事件以來、私は実に沈痛の感情に打たれておるものでありますが、この
参議院が成立して最初の三年間に、そうして私の平素尊敬している
松平議長の存任期間の間に、こういう
事件が起
つたことを、
議長御自身どれ程苦しくお考えにな
つておるか。私としても皆樣と御同樣考えざるを得ないのであります。(
拍手)
私は
言論の自由が守られさえすれば歴史は平和に
進行するものであるということを、長い間の人類の歴史に顧みて固く信じておるものであります。今回の
事件について、私は特に
自分がまだ完全に冷静に高所大局から考えることができないことを、
自分自身非常に恥かしく思
つております。で、この
自分の立場からものを考えることはできますが、併し他の立場に立
つて、ものを考えることができなければならないと思
つて、私自身この努力をしております。併し私自身その努力が容易でないことを感ずるものであります。けれども、
参議院が特に
衆議院に対して持
つております使命の最も大きいものは、
衆議院において政党政治の本質が発揮せられることに対して、
参議院においては別個の本質が発揮せられなければならないということは、皆樣のお考えにな
つておるところであろうと思うのです。アメリカの上院においては、アメリカの下院では政党が
原則であるけれども、アメリカの上院においては個人が最高であるということが定説にな
つております。從
つて現在もアメリカの
國会で行われておりますように、いわゆるフイリバスタリング、たとえ一人の人と雖も、
少数の人と雖も、提出されておる
法案なり或いは問題なりについて疑義があれば、時間の制限がなく
討論が行われるということが行われております。これは決して一朝一夕にそういうことができたのではなくて、長い間のイギリス及びアメリカにおける数百年に亘る民主主義の発達の過程において、そういう結果が出ておるのであります。我々は勿論、
國民の幸福のために
議事の促進を
原則としなければならないのでありますけれども、併しながら同時に立法が誤まりなく
國民の幸福を守るためには、慎重
審議をしなければならない。そのためにアメリカの
國会においては現在も、例えばトルーマンが
発言時間の制限をしようかというふうに考えても、イギリスやアメリカの数百年に亘る民主主義の発達というものの結果として立派に認められているところのフイリバスタリングというものを、單に眼前の目的を以て制限すべきではないという考えが現在も貫いているのであります。こういうふうに、いわゆるコントロヴアシイというものを含んで起
つて來た問題でありまして、必ずしもいわゆる普通の意味において
議院の品位を落したというような問題ではないと思うのであります。この点を私は皆さんにもう一度十分考えて頂きたい。
第二に、私として特に皆さんに訴えたいと思いますことは、このいわゆる
議院における
会期不継続の
原則であります。
國会法が規定しておりますところの第一の
原則は
会期不継続である。で、止むを得ないときに限
つて皆さんの議決によ
つてこれが継続せられることができる。これは、やはり決して一朝一夕にできた法則ではなくて、民主主義の長い間の歴史の結果としてできて來たものだと思います。私見を申上げては甚だ恐縮でありますが、この
國会は何よりも歴史が進んで行くその動きに應ぜられるものでなければならない。從
つて一つの
会期において起
つた問題は、その
会期において解決せられることが理想であります。若しも前の
会期に起
つて來たことを次の
会期にまで持ち越しということになれば、その間に動いて行く歴史の動きというものを
國会が束縛することになります。これは歴史の動きに対して
國会が枠を嵌めるということにならざるを得ません。(「
簡單々々」と呼ぶ者あり)これは
國会としては最も愼重に考えなければならないことであります。而も
懲罰の問題は、御
承知のように
國会法においても他の案件とは異
なつた取扱をせられておるのであります。御
承知のように
懲罰の問題は、その
事件が起
つてから三日の間に
懲罰の
動議が起らなければ採り上げられない。これはいわゆる現行の法則によ
つて、(「
簡單々々」と呼ぶ者あり)その問題が起
つたその場所で、その時にこれを解決すべきである、これを長く持ち越すべきでない、長く持ち越すことは
國会の
運営のために決して幸福なことではないという意味を含んであると思うのであります。どうか眼前の事実だけでなく、そうして党派の問題でなく、大所高所に立たれて、そうして
参議院に対して日本
國民が又國際世界が持
つているところの期待を裏切られないことを、私は衷心から希望するものであります。(「時間時間」と呼ぶ者あり)その意味におきまして、
只今の問題が
只今の
会期において立派に解決され、我々の尊敬する
議長、又我々の尊敬する
同僚諸君が、この問題を久しきに亘
つて未決の間に……