○岡部常君 只今上程になりました七法案につきまして、それぞれ簡單に法務
委員会における議事の審議の模樣並びに結果を御
報告いたします。尚、詳細につきましては速記録に讓りたいと思いますから、予めその点御了承置きを願います。
先ず第一に
刑事訴訟法の一部を
改正する
法律案について申上げます。
この
改正法案の第一点は、家庭裁判所の開設に伴う
改正でありまして、家庭裁判所は少年に関係のある一定種類の成年者の刑事第一審事件も取扱うことになりました結果、特定の事項につきまして、家庭裁判所の裁判官に対し地方裁判所の裁判官と同等の権限を賦與する等、その他必要な範囲内で簡單な
改正を加えました。
次に身体の拘束を受けておる被疑者につきましては、從來特別の令状がなくても指紋、足型の採取、身長、体重の測定等をすることができるものと解せられておつたのでありますが、この点疑義の生ずる余地のないように明文を以て
規定いたしたのであります。以上が本
改正法案の要点であります。
委員会におきましては愼重審議いたしました上、討論は省略いたしまして、衆議院の修正を経ました原案を採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定したのであります。
次に
裁判所法等の一部を
改正する
法律案について申上げます。
本法は裁判所法と、裁判官及びその他の
裁判所職員の分限に関する
法律の二つの
法律につきまして、それぞれその一部を
改正するものであります。先ず裁判所法の
改正について申上げます。現行法は裁判所事務官の中から裁判所書記を補するという建前になつておるのでありますが、本來その職務の内容は異なつておりまして、前者は司法行政事務を掌るものであり、後者は裁判所の事件記録の作成、保管等、訴訟手続に関する事務を行うものでありますので、この点に関する現行法の関係
規定を
改正しまして、新たに裁判所書記官及び裁判所書記官補の官職を設け、裁判所書記官は現在の裁判所書記の職務を掌り、裁判所書記官補は裁判所書記の事務を補助するものといたしたのであります。次に補充裁判官の制度につきまして、この制度は、会議体裁判所の審理が長期間に亘る場合、担当裁判官が審理に関與できなくなつたときに補充裁判官がこれに代ることによつて審理の円滑を期するために設けられてあるのでありますが、最近相当長期に亘ることが予想される大事件が現われて参りましたので、会議体の裁判官の員数と同数までの補充裁判官を置くことができるように改めました。又司法研修所教官及び裁判所調査官につきまして、現在これらの職に裁判官又は檢察官を轉官せしめることが困難な実情にありますので、当分の間特に必要があるときは裁判官又は檢察官をそのまま教官、調査官に充てることができる旨の
規定を設けました。次に裁判官及びその他の
裁判所職員の分限に関する
法律の
改正につきましては、裁判官以外の
裁判所職員の分限及び懲戒に関してその
法律で
規定したものですが、
國家公務員法によりまして、裁判官及び最高裁判所裁判官の秘書官以外の
裁判所職員は
一般職として同法の適用を受けることとなり、右
規定の必要はなくなりましたので、これを削除することといたし、その
法律の名前も裁判官分限法と改めましたのであります。
委員会におきましては、愼重審議いたしまして、討論は省略の上、採決いたしましたところ、全会一致を以て可決決定すべきものと決定いたしました。
次に
司法試驗法案につきまして申上げます。
これまで裁判官、檢察官、弁護士等になる資格を得るためには、高等試驗令による高等試驗司法科試驗に合格し、一定期間、司法修習生又は弁護士試補として実務修習をしなければならなかつたのであります。ところが
國家公務員法の
改正によりまして、高等試驗令が廃止せられ、高等試驗司法科試驗が昨年末でなくなりましたので、これに代るべき試驗制度を早急に定める必要が生じ、本法の立案を見た次第であります。法案の内容といたしましては、この試驗は
法律專門家として必要な学識及びその應用能力を有するかどうかを判定することを目的とする國家試驗でありまして、これを第一次と第二次の両試驗に分けます。第一次試驗は第二次試驗を受けるのに相当なる教養と
一般的学力の有無を判定することを目的とするもので、学校教育法に定める大学卒業程度において
一般教養科目につき卒記試驗を行うものであります。從前の高等試驗予備試驗と異なる点は、その受驗資格を制限しないことと、試驗科目の範囲を拡めたことでありまするが、その具体的細目は後述の司法試驗管理
委員会の規則で定める筈であります。第一次試驗の免除につきましては、大体從前の高等試驗予備試驗のそれと同様であります。第二次試驗につきましては、その受驗資格は第一次試驗合格者及びその免除を受けたものといたしまして、試驗科目は筆記七科目、口述五科目とし、その科目は大体旧高等試驗令による司法科試驗と同じく
法律学を主とするものであります。次にこの試驗に関する事項を管理する機関といたしましては、法務総裁の所轄の下に、法務総裁官房長、最高裁判所事務総長及び法務総裁が弁護士会の推薦に基き任命する弁護士一名の三名によつて構成される司法試驗管理
委員会がこれに当ることになります。以上が大体の構想でありますが、
委員会におきましては、大野
委員より、高等試驗の行政科試驗に合格した者が本法による試驗を受けようとする場合は、憲法並びに民法及び刑法の中一科目、民事訴訟法及び
刑事訴訟法の中一科目につきて試驗を行い、その他の科目については試驗を免除する旨の修正案が出ました。又松村
委員より、司法試驗は
法律專門家として必要な学識及びその應用能力を有するかどうかを判定することを目的とする國家試驗であるという本法第
一條中の「
法律專門家として」という点を、「裁判官、檢察官又は弁護士となろうとする者に」と改め、その目的を明確にする旨の修正案が提出せられ、更に松井
委員より、本法の試驗は法務総裁の所轄から最高裁判所の所轄に改める旨の修正案が出されたのであります。右の三修正案をめぐりまして熱心なる討論が行われたのでありまするが、詳細は速記録に讓らして頂きまして、採決に入りましたところ、三修正案中、大野案、松村案はいずれも全会一致を以て可決せられ、松井案は少数否決と決定いたした次第であります。次に大野、松村両案の修正部分を除く原案につきましては全会一致を以て可決すべきものと決定いたしたのであります。
次に犯罪者予防更正法案について申上げます。
近時犯罪は激増の一途を辿つているのでありまするが、これに伴う刑務所その他の矯正施設の收容力は著しく不足しているのであります。そこで勢い刑の執行猶予、仮出獄及び少年保護の諸制度が活用せられるのでありますが、その運営及びそれらの観察を要する者の指導、更正、保護という点について、從來の機構及び法規では十分でないものがありまするので、その機構を統制と秩序ある一本の形態にまとめて、保護観察を中心とする刑余者等の福利更生を図ろうというのが本
法律案の趣旨であります。先ず中央に法務府の外局として中央更正保護
委員会、地方八ヶ所にそれぞれ地方少年保護
委員会と地方成人保護
委員会を置き、以上いずれも事務局を設けまして、現在の法務廳の成人矯正局、少年矯正局、檢務局恩赦課の一部を中央更生保護
委員会の事務局に吸收いたします。末端の機関といたしましては、各地方裁判所の所在地に少年保護観察所、成人保護観察所を置きまして、在來の少年審判所、司法保護
委員会に代らせます。保護観察に付せられる者は、家庭裁判所からこの地方
委員会に送致せられた者、少年院仮退院中の者、仮出獄中の者及び少年で執行猶予の言渡しを受けた者の四種類で、遵守事項を定め、これを指導監督し、且つ必要な補導援護を與えることになつております。若し本人が遵守事項を守らなかつた場合には、地方
委員会で仮出獄を取消すことができるのであります。かようにいたしまして本人の更生を確保することといたしました。仮出獄及び返退院の審査及び許可は各地方
委員会で行うことになつております。次に恩赦事項につきましては、これを中央更生保護
委員会の所管事項とし、その実施及び恩赦制度の改善についての調査研究と個別的な恩赦の申出に関する事務もこの
委員会が行うことといたしており、尚その他犯罪の予防活動の助長を目的として、
一般的に犯罪者の発生を予防するための科学的な調査研究、世論の啓発、指導等につきましても、本法は必要な事項を
規定しているのであります。尚、当初政府提出の原案では、自由刑の執行猶予を受けた者については、成年も少年も保護観察に付する前提で立案せられて参つたのでありますが、衆議院におきましては、懲役又は禁錮につき刑の執行猶予の言渡しを受けた者が十八歳未満の場合に限り保護観察に付することに改めました。
委員会におきましては、本法案の審議に当りまして、各
委員会より幾多の有益適切なる質疑が続出したのでありまするが、その説明は省略さして頂きます。討論は省略の上、衆議院の修正の原案につきまして採決いたしましたところ、全会一致を以て可決せられたのであります。
次に
犯罪者予防更生法施行法案について申上げます。本法は犯罪者予防更生法の
施行につきまして必要な二三の事項につき経過的
規定を設けると共に、
関係法令について若干の
改正を加えましたもので、その内容といたしましては速記録によつて御承知を願いたいと存じます。本法案につきましても、討論は省略の上、採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものとせられたのであります。
次に
法務局及び
地方法務局設置に伴う
関係法律の
整理等に関する
法律案につき申上げます。今國会に提出の法務廳
設置法の一部を
改正する
法律案によりまして、新たに
法務局、地方
法務局及びその支局、出張所が設けられまして、これが從來の司法事務局及びその出張所において掌つておりましたところの登記供託事務、
戸籍等に関する監督の事務、司法書士に関する監督事務等を掌ることになり、このために
関係法律二十一中
整理を要する諸
規定がありますので、本法を以てこれらの
規定を一括
整理することとなつたのであります。即ち登記事務については不動産登記法、非訟事件手続法、農業協同組合法等、供託事務につきましては供託法、
戸籍事務の監督につきましては
戸籍法、更に司法書士に対する監督につきましては司法書士法をそれぞれ
改正いたしております。次に右の
整理とは別個の理由によるものではありますが、ついでに本法を以て
改正したものといたしまして、登記手続につきまして、戰時民事特別法及びこれに基く戰時登記手続令に定められている特例中、過去の実績に照して尚存置するのが適当と認められる部分は、これを不動産登記法及び非訟事件手続法に採り入れて恒久化し、その他不動産登記法、非訟事件手続法につきまして、從來
法律又は司法省令等で定めておりました手数料の額を政令で定めることに改め、司法書士に対する過料の額の限度を五百円から二万五千円に引上げる等の
改正をいたしております。
委員会におきましては、本法案中、登記所における手数料の額を政令で定めることにいたした点について、その額は、物價の状況、
戸籍の謄本の
交付等に要する実費、その他一切の事情を考慮して定めることが妥当であるとして、その趣旨の修正をしたのであります。討論は省略の上、修正案及び原案につき採決いたしましたところ、いずれも全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。
最後に、
裁判所職員の定員に関する
法律の一部を
改正する
法律案につきまして申上げます。
本法は新民事訴訟法、新
刑事訴訟法の運用並びに家庭裁判所の運営につきまして必要欠くベからざる限度において
裁判所職員の増員を行うことを重点とし、加うるに今國会に政府より提出の
裁判所法等の一部を
改正する
法律案によりまして、裁判所書記官及び裁判所書記官補という官職が新設せられることになりますので、これに対應して必要な
改正を行つたものであります。その要点といたしましては、先ず第一に裁判官の増員でありますが、これは新民事訴訟法及び新
刑事訴訟法の運用のため
昭和二十四年七月一日以後において判事を増員すること、又それに伴いましてそれぞれ書記の増員等のこともございます。又次に
東京高等裁判所の行政訴訟事件の増加に鑑みまして、同裁判所に置くべき裁判所調査官の二名を増員、第三に裁判所等の一部を
改正する
法律によつて新設される裁判所書記官及び裁判所書記官補の定員に関する
規定も含まれておるのであります。これらの員数の詳細は速記録によつて御承知を願いたいと存じます。
委員会におきましては、
裁判所職員の増員と
行政整理に関する関係等につきまして適切なる質疑があり、これに対しまして政府
委員は、裁判所としては、実際は本法による増員以上の増員の必要に迫られているのであるが、國家財政及び
行政整理の関係とも睨み合せまして、この程度の増員に止めたのであるという旨の答弁がありました。その他の質疑につきましては速記録において御承知を願いたいのであります。討論は省略の上、採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしたのであります。