○佐々木良作君
只今議題となりました
私的独占の禁止及び
公正取引の確保に関する
法律の一部を
改正する
法律案の経済安定
委員会における
審議の経過並びに結果について御
報告いたします。
政府の
提案説明によりますと、いわゆる
私的独占禁止法が
昭和二十二年四月公布されましてから、約二年を経過したのでありますが、日本経済の再建自立のため不可欠な外資導入並びに再建整備法に基く証券消化等の問題に関連しまして、本法中若干の諸
規定で日本経済の実態に不適当なもののあることが認められたというのでありまして、特に
改正法第六條の外國
事業者との間の國際契約に関する認可制と、同じく第十條の会社の株式保有を原則的に禁止する
規定とが問題となり、本法の法益とする公正且つ自由な競爭を阻害しない限り、これらの
規定を緩和いたしまして、外資導入、証券消化等の障害を除去する必要が生じたと、こういうのであります。
次に本
改正案の要点を申上げますと、大体次の三点に要約されると思います。即ち先ず第一は、独禁法の法益を阻害しない限り、
現行法第十條、第十三條のごとく、会社の大小、或いは業種の如何を問わず、会社の持株を原則的に禁止したり、一定数以上の役員兼任を機械的に禁止したりするような会社法的な
規定をできるだけ削除しようとしたことであります。それから第二点は、
現行法中には第六條又は第十條以下の第四章の
規定のごとく、國際契約会社の株式取得、個人の株式取得、会社合併、営業
讓受等につきまして、嚴重な認可申請を要する事項が極めて多いのでありますが、このような認可制をできるだけ削除いたしまして、特に必要なものについてのみ、有効且つ適切な事後届出制に改めようとしておることであります。第三に、本法の條文中随所に用いられておる「競爭」という文字の定義につきましては、
現行法では單に第二條第二項「潜在的競爭を含む」とあるだけでありまして、その意味は必ずしも明瞭でなく、殊に第四章中の役員兼任、株式取得に関する制限
規定の適用につき判断に苦しむ向が少くなく、又この独禁法の
規定が外
國会社、外國
事業者等に適用があるかどうかにつきましても、若干の疑義が生じましたので、これらの競爭の定義をできるだけ明瞭にすると共に、外
國会社についても本法の法域内にある限り適用がある旨を明らかにしようとしていることであります。
改正要点は今申上げました三点でありますが、この
改正法案は現在の経済上相当重要と考えられますから、主な
改正の内容につきまして、少しく説明を加えて見たいと思います。
先ず第一に、第二條第二項を
改正いたしまして、本法でいう「競爭」とは、二つ以上の
事業者が、共に國内で
生産、販賣等、何らかの
事業活動を営み、その通常の状態で起る現実の競爭であるか、或いは又は現在このような現実の競爭がなくても、施設
方法等に簡單な変更を加えれば同一の顧客を爭い得るような場合の競爭を指すことを明記しております。又その競爭には賣手間の競爭だけでなくて、買手間の競爭をも含めておることを
規定しております。併しながら第四章の株式保有や役員兼任に関する予防
規定には、買手間の競爭は一切問題にしないことにな
つております。
次に第六條につきましては、外資導入、國際契約等に関する制約を緩和するため、國際契約、貿易協定の認定制を事後届出制に改め、又第四條第一項各号に該当するような契約でない限り、「科学、技術に関する知識、情報の交換を制限するような契約」でも差支ないように改められているのであります。
第十條は相当問題の
規定でありますが、
事業会社の株式保有の制限に関する
規定でありまして、会社の株式保有を原則的に禁止する從來の
規定を廃止しまして、原則的に廣く一般会社の株式保有を認めるため、外
國会社をも含めて、会社は「競爭を実質的に制限することとなる場合」に限り、これを禁止することと
改正されております。尚、金融会社以外の会社が、自己と競爭関係にある他会社の株式を取得所有することは一切禁止されておりますが、たとえ第二條第二項の競爭の抽象的基準に該当するような不安がある場合でも、親会社から経済上の利益の供給を受けなければ子会社の
事業活動に重大な支障を來すような場合は、両会社の間に競爭関係がないという
規定を新たに設けておるのであります。更に金融以外の会社の株式取得の認可制は、一年二回の定期的な届出
報告に改め、尚、総
資産五百万円以下の会社は、これらの届出義務もないことにな
つておるのであります。
第十條の以上のような大幅な緩和に伴いまして、既存の会社が持株会社となり得る場合が生じて採りますので、第九條は、持株会社の設立だけでなく、その機能をも禁止するように改められております。
次に、第十二條の会社の社債取得の二五%の制限並びに第十三條の役員の兼任の四分の一又は一人三つの制限の
規定は、すべて削除されまして、競爭関係にある会社相互間でない限り役員の兼任は自由とな
つておるのであります。
最後に、第十五條、会社の合併に関する
規定におきまして、
政府原案では、総
資産五百万円以下の会社については、從來の認可制を三十日以内の届出制に改め、又第十六條におきまして、外
國会社の場合だけは営業の
讓渡等につき事前認可制とな
つておりましたが、衆議院におきまして、総
資産五百万円以上であ
つても届出制ということにし、ただ、この場合、届出受理の日から三十日間は当該行爲をしてはならないということにし、更に外
國会社についても、國内の会社と同樣、届出制にすることに修正しておるのであります。
このように、第四章予防
規定が全面的に援和されると共に、機械的な制限がすべて削除されましたので、これらの
規定の違反であるかどうかが、はつきりしない場合の多いことが予想されるために、第十七條の二を追加しまして、特に必要な排除
措置又は届出命令の
規定を設けておるのであります。その他第八章第二節の手続
規定、或いは第十章の罰則、これは罰金額の値上げでありますがこれらについて若干の修正を行い、又衆議院におきましても若干の修正を加えておりますが、これらはすべて條文の整理に基くものであります。
以上が本
改正案の内容であります。これに対しまして各
委員から熱心な質疑が行われましたが、質疑の主なものを以下整理して二、三申上げて見たいと思います。
第一に、制限会社令によりますと、資本金五百万円以上の制限会社の株式社債等を讓り渡したり取得しようとするものは大藏大臣の許可を要することにな
つており、会社証券保有等制限令によりますと、他会社の株式、社債の保有、投員の兼任は禁止されております。從
つて独禁法が折角以上のように
改正されまして株式の保有、役員の兼任などが緩和されましても、現在主要な会社はこれらの勅令の適用を受けておるために、事実上はこの
法律改正の効果は極めて薄いと思われるが、
政府はこれをどういうふうに考えておるのかというのが第一であります。
それから第二には、
事業者團体法によりますと、企業の大小を問わず、すべて
事業者が共通の利益を増進することを目的として結合又は連合して、購買、販賣、
生産、製造、加工、輸送その他営業活動を営むことは禁止されておる。從
つて同法により、中小企業は協同行爲ができないものが少くなく、本法
改正により、大企業に対し中小企業の取扱が不均衡となり、そのため却
つて独禁法の
趣旨に反しまして、一部大企業のみを利する虞れがありはしないか、これが第二点であります。
それから第三点といたしまして、外
國会社の取扱については、國際市場では手が着けられないことにな
つておる上に、今度の
改正では、國内市場では、外
國会社を國内会社と同様に平等無差別に扱うことにな
つておるが、これでは外
國会社に押されることになる虞れがあるから、外
國会社の取扱については更に
檢討を要すると思うがどうか、これが第三点であります。
整理して見ますと、大体こういう質問が主であつたと思います。
これに対しまして、
政府の答弁もいろいろありましたが、これを今のように整理して申上げますと。
第一は、制限会社の我が國産業復興に占める比重と独禁法
改正の
趣旨に鑑みて、この際、制限会社の解除をできるだけ速かに行うことが適当であると考えておるし、又会社証券保有等制限令も相当緩和することが望ましいと考えておるというのが
政府の第一点の答弁であります。
それから第二には、
事業者團体法に関しても或る程度の
改正を加える必要があると思われるので、
政府においても只今関係方面と折衝中であり、今後とも努力する考えである。こういうお答えであります。
それから第三に、第十條、第十五條及び第十六條の緩和によ
つて外
國会社に不当に押されはしないかという懸念については、本
改正法では外
國会社に対しても無差別の
方針を採
つておるけれども、一方に外國資本の導入については、外國人の
財産取得に関する政令がありまして、これによ
つて制約できるから心配はないと考えると、こういうことでありました。大体整理して申上げますと、以上のようになると思います。
それから討論に入りまして、討論におきましては、藤井、鎌田、帆足、奧、西川、安達等の各
委員の方から、第一に、國際協定、貿易協定については、今後の日本経済の振興状況に應じて更に緩和すべきであり、第二には、
事業者團体法の
改正も行わるべきであり、第三には、制限会社令、会社証券保有等制限令が現在のままでは、本
改正は殆んど実効がないから、これらの政令も速かに
改正すべきである、こういう意味の強い要望を付せられまして、
賛成意見が述べられました。
それから和田
委員からは、今回の
改正は、企業の現実の要求を容れて緩和しておるようであ
つて、この点に関してだけは反対しないのであるけれども、
事業者團体法との関係で非常に中小企業との関係が不均衡になり、更に役員兼任の緩和は経済の民主化を妨げる虞れがある。又外
國会社を國内会社と同じに扱
つておる上に、國際市場には手が着けられない。外資導入には自主性を持つ必要がある、以上の諸点からして反対であるが、更に本法のような重要な
改正は、本
改正案のごとき部分的な
改正ではなくて、日本経済の全面的な考慮の上に立
つて、もつと本格的な
改正がなさるべきである、こういう意味の反対意見が述べられました。
かくいたしまして採決に入りましたところ、多数を以て本
改正法律案を可決すべきものと決定した次第であります。尚ちよつとお断り申上げますが、この
報告におきましては、質疑應答中に必ずしも意味の明瞭でない点もあつたのでありますけれども、今日の
報告までにまだ速記録が整備いたしておりませんために、適宜
委員長の責任におきまして整理いたしまして、或いは補足し、解釈をいたしまして
報告申上げたことを御了解願いたいと思います。尚詳しい点につきましては、速記録を一つ十分に御覽願いたい、こういうふうに考えます。以上を以ちまして
私的独占の禁止及び
公正取引の確保に関する
法律の一部を
改正する
法律案の経済安定
委員会における
審議の経過及び結果を御
報告いたした次第であります。(
拍手)