○堀眞琴君 石炭はあらゆる産業の動力源であり、石炭業が産業復興の上において占める意義というものは、今更私が喋々するまでもないのであります。昨年度は三千六百万トン、本年度は四千二百万トンの出炭高が要請されておりますのも、全く産業復興のために石炭の増産が必要であるからであります。で、炭鉱労働者はこの石炭の産業復興に果すところの役割を認識しまして、あらゆる困難を克服して生産に努力しておるのであります。ところが皆樣も御承知の通り去る五月三日から炭鉱ストライキ、波状ストライキが起りました。五月七日から第二次ストライキが、更に発展して明後十四日からは全國一齊に四十八時間のストライキが起ろうとしておるのであります。石炭の今日我が國の復興において占める地位を考え、我々はこの炭鉱ストライキに対して決して無関心であることはできないのであります。で、私はこの炭鉱ストライキがどういう過程を通じて発生して参り、そしてそれが今日どういう状態にあるかを先ず御説明申上げまして、そして政府当局の御
答弁を煩わしたいと思うのであります。
この炭鉱ストライキの
理由は二つあるのであります。
一つは賃金問題、そしてもう
一つは低品位炭鉱の切り捨て問題であります。
第一の賃金問題でありまするが、これは昨年の十二月締結せられましたところの中央協定に基きまして、労資の交渉による四月以降の新賃金を協定するということにな
つておるのでありまして、この協定に基きまして三月末分から労資双方に交渉が開始されたのであります。三月三十一日第一回の交渉が行われたのでありまするが、その交渉におきまして、資本家側即ち日本石炭鉱業連盟側におきましては、新賃金問題につきまして、大体次のような提案をして参
つておるのであります。即ち標準賃金として坑外夫は日額二百十六円、坑内夫は三百六十三円、一ケ月坑外夫は二十五万、坑内夫は二十二万として、税込坑外夫は五千四百円、坑内夫は七千九百八十六円、この賃金を
支拂うためには鉱山労働者は一五%方の増産を是非とも行わなければならぬ。こういうことを要請して参
つておるのであります。つまり低賃金を強要した上に更に実質的な賃金の切り下げを一五%によ
つて要求しておる。こういう案を提示して参つたのであります。これに対しまして炭鉱労働者側、日本炭坑労働組合連合会におきましては、標準賃金ではなくて全國統一賃金、これは昨年乃至はこの三ケ年間、労働組合と資金家側との間に結ばれました協定によりまして統一賃金が行われておつたのでありますが、今回もやはり全國統一賃金を要求すべきであるとして、坑外夫につきましては日額三百円、坑内夫は五百五十七円、坑外夫は從
つて一ケ月七千五百円、坑内夫は一万二千二百五十四円、この統一賃金としての賃金を、組合側におきましては、他の産業との比率を勘案し、並びに物價変動を加味いたしまして、この賃金を算定いたしているのであります。他の産業との比率の場合の基礎としておりますのは、労働省告示第四十四号、
一般職種別賃金に基くものでありまして、労働者側のこの要求は全く正しい要求だと申上げなければならぬのであります。ところが資本家側におきましては労働者側のこの要求を飽くまでも認めまいとし、標準賃金を以てこれに臨もうとしているのであります。殊に三月十日の日本政府宛連合軍司令部の覚書並びに賃金三
原則、
経済九
原則に便乘しまして、賃金補給金を打切られるということを
理由に、炭鉱の自立、各社各山の
経営実態に應じて賃金
支拂をしなければならぬということを主張いたしまして、飽くまで標準賃金を強調しているのであります。組合側におきましては、先きにも申上げました通り、過去三年間統一賃金をと
つて來たのでありまして、三
原則、九
原則にも拘わらず、現在各
経営は統一賃金を
支拂い得ることを主張いたしました。そうして、その交渉を飽くまで中央の團体交渉によ
つて、これをなし遂げようと要求したのであります。ところが、この第一回の交渉は遂に労資双方の意見が纏らずに物別れとなりました。結局四月一日から無協約状態になり、前の協定はなく
なつたのであります。從
つてこの無協約時代の
経過措置としまして、組合側におきましては、前の協定の四項により從來の慣行を適用して、新賃金の協定ができるまでは、組合側におきましてはこの從來の慣行を適用する、若し新資金協定ができたならば、これを四月一日まで遡及すべきものであるということを主張いたしました。連盟側におきましては從來の賃金延長に対しましては反対いたしました。各社各山で以て、これを自由に
決定すべきものであるという態度をと
つて、又々
経過措置についても両者の態度は対立したのであります。次いで四月八日に至りまして、連盟側からして、
経過措置について團体交渉を行うことは、もはや無意味であるというので、一方的にこれを打切る通告をして参つたのであります。そこで組合側におきましては、この問題を中労委に斡旋方を
申出でたのであります。ところが連盟側におきましては、中労委によるところの斡旋の形でこの問題が解決されることは自分たちとしては承服できない、如何なる斡旋にも應じかねるという態度をとりました。又賃金の
支拂につきましては、從來の賃金の八〇%方の
支拂を全國に通告するということをやつたのであります。これは労働基準法第二十四條にいうところの「賃金は直接労働者にその全額を
支拂わなければならない」という、この
規定に違反するものであります。これに対しまして組合側では、飽くまでも一〇〇%完全支給を要求する。併しながらこの問題は、やはり未解決のまま今日まで残されているところの問題でありまして、この問題だけで闘爭に入
つている組合が幾つか尚今日存在しているのであります。更に四月十四日に至りまして、連盟側から一方的の團体交渉打切りを再度申入れて参りました。そこで組合側におきましては、もはや、こういうような状態において資本家側と交渉することは無意味であると、ストを決行すべきことを
決定いたしました。五月三日から第一一の波状スト、五月七日から第二次の波状スト、十四日から全國一齊四十八時間ストということを
決定したのであります。尚四月二十一日GHQからメモランダムが参りまして、この炭鉱の問題は日本政府の責任で以て解決すべきであるということが要請されているのであります。そこで政府では協議の結果、中労委に対しまして斡旋方を依頼することに
なつたのであります。この依頼に基きまして、中労委におきましては労資双方と会談を遂げまして、四月三十一日に至
つて一應の斡旋案を作つたのであります。それは「四月以降六月までの石炭賃金については、前中央協定の定める基準によるを
原則とするが、最近における各般の事情変更、特に補給金の打切り、三月十日司令部の覚書等により、
経営者が能率上昇と
経営合理化を急がねばならない立場にあり、その関係上、相当困難な経理事情に陥るものもあると認められるから、炭労はこの事実を認めて、覚書第十項の適用に関し、極力経連と協力して紛爭の予防及び解決に努力されたい。」これが第一項、それから第二項は「七月以降の賃金に関しては、当事者双方とも事情変更の実情を考慮に入れて、新たに協議を開始されたく、五月末日までに協議成立せざるときは中労委に調停を申請して解決することとされたい」云々という申入れを行
なつたのであります。これに対しまして、組合側としては
條件附でこれを受諾したのであります。その間の事情は長くなりますから省略しますが、ところが連盟側におきましては、これに対して生産奬励金を除去するとか、或いは能率を挙げることを
條件とするとかいう交渉をいたしておるが、これも亦結局意味がないと思うのであります。更に五月一日再会談をやりまして、中労委の末弘会長の斡旋が続けられたのでありますが、五月二日に至りまして最後の斡旋案ができ上りまして、双方に申入れておるのであります。それを読みますが、第一は、「連盟は能率についての季節差のあることを認め、四月乃至六月の具体的季節差については復興度その他の点を勘案して、双方協議の上一週間以内に
決定されたい。若し協議が纏まらないときは当方において斡旋する。」第二には、「連盟は物價事情の変化による実質賃金の低下を防ぐため、何らかの形で一時資金を支給されたい。(その
金額は四月乃至六月通算一人当り五百円程度)」こういう
内容の申入れを行
なつたのであります。これに対しまして、組合側はこれを受諾したのでありますが、併し連盟側におきましては、再考慮を約してそのまま物別れにな
つておるのであります。これが労働賃金の問題であります。
それから低品位の炭鉱切捨ての問題でありますが、四千カロリー以下の炭鉱はこれを切捨てるということを
決定しておる。
〔「緊急
質問に入れ」と呼ぶ者あり〕
この低品位炭坑切捨ての問題は、結局中小炭鉱の切捨て問題でありまして、日本産業の再建にとりまして由々しい問題だと思う。そこで私は先ず首相に対しまして
質問いたしたいのでありますが、首相はこの重大なる問題の
質問に対して、
答弁をされるためにここに出ておられないのであります。私はそれを大変遺憾に思うのでありますが、幸い副首相が出ておられますから、副首相に対して
質問を申上げたいと思います。首相はかねて労働者の愛國的協力を説いておるのでありますが、今度のストライキをどう考えられるか、労働者の要求を正しいとは思わないかということと、なぜストライキ解決のために積極的な態度に出ないかという、この三点を首相に代
つて副首相からお答えを願いたいのであります。それから労働大臣に対しましては、連盟側の賃金
経過措置は労働基準法第二十四條の違反ではないかということ、ストライキに対して靜観的な態度をとる旨を労働大臣、商工大臣、安本長官が協議したということが朝日新聞の十日附に出ておるのでありますが、むしろ労働大臣としては、この問題を解決するために早急に手を打つべきではないか、而もその手を打つとして、その
内容は如何なるものであるか、及びストの見通しについてはどう考えられるかということをお尋ねいたしたいのであります。それから最後に商工大臣に対しましては、四千カロリー以下の低品位炭鉱の切捨てを行われる
意思があるかどうかということ、それから炭鉱労働者の生活安定なくしては四千二百万トンの出炭目標が達成されないと思うが、これに対する見解はどうかということをお尋ねいたしたいのであります。以上緊急
質問を終ります。(
拍手)
〔國務大臣林讓治君
登壇、
拍手〕