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1949-05-06 第5回国会 参議院 本会議 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月六日(金曜日)    午前十時三十分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十号   昭和二十四年五月六日    午前十時開議  第一 飲食営業臨時規整法案衆議院提出)(委員長報告)  第二 太田原野谷河川補修費國庫補助に関する請願委員長報告)  第三 一ツ瀬川及びその支流三財川改修工事施行に関する請願委員長報告)  第四 五ケ瀬川直轄施行河川編入請願委員長報告)  第五 半場川外三河川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第六 揖保川改修工事促進に関する請願委員長報告)  第七 佐波川堤防改修工事促進に関する請願委員長報告)  第八 呉市の治山事業施行に関する請願委員長報告)  第九 山國直轄砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一〇 熊原、杉倉河川砂防工事施行に関する請願委員長報告)  第一一 魚野川災害復旧工事促進に関する請願委員長報告)  第一二 魚野川支流砂防工事等施行等に関する請願委員長報告)  第一三 高瀬川改良工事施行に関する請願委員長報告)  第一四 高瀬地藏院河川改良工事施行に関する請願委員長報告)  第一五 富田川改修工事等施行に関する請願委員長報告)  第一六 利根、荒川河川改修工事促進に関する請願委員長報告)  第一七 豊平川改修工事促進に関する請願委員長報告)  第一八 松浦川改修工事施行に関する請願委員長報告)  第一九 狩野川改修工事継続促進に関する請願委員長報告)  第二〇 江川、周布及び三隅三河川砂防工事促進に関する請願委員長報告)  第二一 西大阪高潮災害防除工事施行に関する請願委員長報告)  第二二 淀、神崎河川西淀川地内災害復旧工事促進に関する請願委員長報告)  第二三 堀川しゆんせつに関する請願委員長報告)  第二四 加茂川護岸工事施行に関する請願委員長報告)  第二五 朝見、春木、境各河川砂防工事促進に関する請願委員長報告)  第二六 大淀川えん堤直轄調査費國庫補助増額に関する請願委員長報告)  第二七 伊作改修工事促進に関する請願委員長報告)  第二八 特別都市計画事業費國庫補助増額に関する請願委員長報告)  第二九 都営青山第二共同住宅改善に関する請願委員長報告)  第三〇 中部地区内戰災都復興事業費國庫補助に関する請願委員長報告)  第三一 大阪市の城東運河排水路開さく工事施行認可に関する請願委員長報告)  第三二 阿仁田沢地域総合開発事業促進に関する請願委員長報告)  第三三 大隅熊毛総合開発事業促進に関する請願委員長報告)  第三四 十津川、紀の川総合開発に関する請願委員長報告)  第三五 南九州総合開発計画促進に関する請願委員長報告)  第三六 荒川北岸堤防工事促進に関する陳情委員長報告)  第三七 阿武隈阿賀河川改修工事施行に関する陳情委員長報告)  第三八 三根川の砂防治水工事促進に関する陳情委員長報告)  第三九 徳島縣内地盤沈下災害復旧事業費國庫補助に関する陳情委員長報告)  第四〇 五ケ瀬川直轄測量調査施行に関する陳情委員長報告)  第四一 大淀川えん堤直轄調査費國庫補助増額に関する陳情委員長報告)  第四二 戰災復興土地区画整理事業助成に関する陳情委員長報告)  第四三 戰災復興都市計画事業費國庫補助増額に関する陳情委員長報告)  第四四 不燃都市建設に関する陳情委員長報告)  第四五 戰災復興土地区画整理事業費國庫補助増額に関する陳情委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
  3. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、飲食営業臨時規整法案衆議院提出)を議題といたします。先ず委員長報告を求めます。地方行政委員長岡本愛祐君。    〔岡本愛祐登壇拍手
  4. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 只今議題となりました飲食営業臨時規整法案地方行政委員会における審査経過並びに結果について御報告いたします。  本法案衆議院議員星島二郎君外六名発議衆議院提出のものでありまして、その提案理由及び主な内容は、「現在飲食営業旅館外食券食堂及び喫茶店を除いては、昭和二十二年政令第一一八号飲食営業緊急措置令によつて全面的に営業を禁止されているに拘わらず、事実は料亭、待合等裏口営業が行われ、而もこれを取締ることは経済的社会的に困難な状態にあるので、尚この事態を継続して行くことは、國民生活を不明朗ならしめ、主要食糧等流通秩序を紊乱することになる。そこでこの際、飲食営業について國民生活実情に副うような合理的措置を講じ、國民生活明朗化を図ると共に、主要食糧等流通秩序の確立と税收の確保に資せんとするものである。即ち本法案は、飲食営業を全面的に再開すると共に、半面、主食及び醤油等統制食糧の横流れを防ぎ、大切な食糧の浪費、闇取引の助長を防止する措置をも講じ、旅館外食券食堂又は「めん」類外食券食堂を営む者は、外食券引換でなければ食事を提供してはならない、それ以外の飲食営業者指定主食を提供してはならない、軽飲食店営業者は、主務大臣の定める副食券引換でなければ料理を提供してはならないとし、又すべての飲食営業者消費者の委託を受けてその持参する飲食物調理加工をしてはならない」というのであります。  地方行政委員会においては、数回にわたり提案者並びに経済安定本部政府委員との間に質疑應答を重ねたのでありますが、その論議のうち主要な点を申上げますと、先ず現在國民耐乏生活要求され、今後失業者も多数出ることが予想せられるが、料飲店再開によつて提案者説明のごとく國民生活明朗化を期待できるであろうか、大いに疑問であるとの質問を対して、提案者側から、本法案経済原則の線を逸脱するものでなく、その線に沿つて立案せられたものである。飲食営業の大部分大衆の利用するものであつて、今回再開料飲店が一部贅沢階級慾望充足に供せられるというような心配は余りないと思うとの答弁がありました。次に本法案の各所において法律事項命令以下に委任しておる点が問題となり、これは営業権の自由を行政権で制限し得る途を開くものであつて人権擁護立場から看過し難いとの意見があり、これに対し、本法案基本的事項だけを法律規定して、その枠内における細部の点は、法律を実施して見た上で、その実情に應じ、取締寛嚴よろしきを制して、彈力性のある規整を行い得るように、行政命令責任者取扱に委ねたものであるとの答弁がありました。次に第五條と第八條とが論議の対象となり、第五條において飲食物持込みを認めながら、調理加工を禁止するのは片手落であり、又第八條において規定する副食券の制度は、徒らに煩瑣であつて、共に取締が極めて困難であり、実効を挙げる見込が薄いと思われるから、むしろ第五條及び第八條は削除すべしという反対意見がありました。これに対し、主要食糧等闇取引の防止を主眼とする本法の立前よりして、第五條も第八條も共に必要な規定であつて、その励行が困難であるという理由だけで、これらの條文を削除して、いわゆる野放し状態に放任することは、現在の國情よりして到底許さるべきでないという答弁がありました。次に露店でちよつと飲食をやつても、副食券が必要になるとすれば、余りに実情に副わない無理な規定であり、励行は困難であるから、規定運用上、露店は軽飲食店から除外する取扱が望ましい。一面いろいろな事情もあろうが、その間の実情に即した取扱政府に要望するとの質問に対しては、政府委員より、本法運用に当つては成るべく趣旨に副うように善処したいとの答弁がありました。その他質疑應答の詳細は速記録に讓りたいと存じます。  かくて愼重なる論議を重ねた後、五月四日討論に入り、先ず西郷委員より次の修正案が提出され、尚、修正以外の点は原案賛成する旨の発言がありました。   飲食堂業臨時規整法案を次のように修正する。   第三條第一項中「主務大臣の定めるところにより」を「主務大臣の定める手続により、」に改める。   同條第二項中「前項規定による都道縣知事許可は、」を「都道縣知事は、」に、「してはならない。」を「前項規定による許可をしてはならない。」に改める。   同條第三項及び第四項を次のように改める。  3 都道縣知事は、同一の場所にあつては第一項の飲食営業の二種類以上を許可してはならない。但し、特別の事情のある場合は、この限りでない。  4 都道縣知事は、第一項の規定による許可をしようとするときは、営業の設備及び場所來客予想数等を調査し、食糧合理的消費に妨げがあると認めるときは、その許可をしてはならない。   第十一條第一項中「不正の事実があると認めたときは、命令の定めるところにより、」を「不正の事実があつた場合において、著しく第一條目的に反すると認めたときは、」に改める。   同條第二項中「命令の定めるところにより、」を削る。   同條に次の二項を加える。  3 都道縣知事は、前二項の処分をしようとするときは、当該営業者又はその代理人の出頭を求めて、公開による聽聞を行わなければならない。  4 都部府縣知事は、第一項又は第二項の処分の原因と認められる違反行爲並びに聽聞期日及び場所を、期日の一週間前までに当該営業者通告し、且つ聽聞期日及び場所を公示しなければならない。   第十三條中「一年以下の懲役又は」を削る。   第十四條中「六箇月以下の懲役又は」を削る。   第十五條中「前三條」を「第十二條」に改める。   附則第三項中「昭和二十二年政令第百十八号(昭和二十二年七月一日)及び昭和二十三年政令第九十八号(昭和二十三年四月三十日)により飲食店営業につき、営業許可を受けている者は」を「昭和二十四年四月三十日現在において、飲食営業緊急措置令昭和二十二年政令第百十八号)により飲食店営業につき、営業許可を受けていた者は、」に改める。   附則第四項中「(昭和二十二年政令第百十八号)」を削る。  次に、三水委員より、本法案は現下の経済情勢に合致せず、又内外の情勢上無理を生ずる虞れがあり、特に五條七條八條のごときは実施に困難である。從つて公けに営業ができることによつて、必然的に食糧闇行爲を助長する。法治國において破られること必至の法律を制定することは適当でないという理由反対討論があり、次に林屋委員より、この法案條文が煩瑣に過ぎ、実行困難であると思うが、質疑の際指摘した諸点について、政府の最善の努力を期待して、止むを得ず修正案賛成するとの発言がありました。次いで採決に入り、先ず西郷委員提出修正案につき採決の結果、多数を以て修正案を可決いたしました。次に修正部分を除く原案につき採決の結果、これ又多数を以て可決いたしました。よつて法案修正議決を見た次第であります。  最後に修正理由簡單説明いたします。  第三條第一項の修正は、営業許可に関する手続のみを主務大臣命令に委任することを明確にいたしました。  第三條第二項の修正は、他の各項との権衡上條文を整えただけであります。  第三條第三項の修正は、原案が知事に委任せんとしている内容を、この法案自身において明らかにし、二種以上の飲食営業兼業原則として許可しないこととし、特別の事情ある場合にのみ兼業を認めることにいたしました。  第三條第四項の修正は、原案眞意を明瞭に表現するため、字句を補う必要があると認めたのであります。  第十一條第一項及び第二項の修正は、手放しで命令の定めるところにより営業停止又は営業許可の取消しというような重要な処分が行われることは、営業権という人権擁護立場上、不可でありますから、都道縣知事処分に対し、法律一定の制約を設けんとするものであります。  又第十一條に新たに第三項、第四項を追加して、公開聽聞に関する規定を設けたのは、人権擁護立場から、風俗営業取締法旅館業法等の例に倣つて処分を受ける相手方に公開聽聞という方法によつて弁明する機会を法律上保証することが必要と考えたからであります。  第十三條、第十四條の修正は、この二ケ條規定する懲役刑が、他の取締法規の罰則との均衡上、酷に失していると認められるので、刑罰法規の体系に一貫した筋を通すため、懲役刑規定を削除したのであります。  第十五條及び附則第三項、第四項の修正は、共に條文整理意味に過ぎないのであつて、実質的な内容を有するものではありません。  以上を以て飲食営業臨時規整法案に対する地方行政委員会審議経過並びに結果についての御報告を終ります。(拍手
  5. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 本案に対し討論通告がございます。これより発言を許します。中野重治君。    〔中野重治登壇拍手
  6. 中野重治

    中野重治君 日本共産党はこの料理屋飲食店をもう一度開くという法律案反対します。この理由簡單に話します。大体今の委員長の詳しい説明によつて、すでにこの法案がよくないということが明らかであつたと思いますが、尚この外に多少附け加えたいことがありますから、これを話します。大体、大衆的な料理屋飲食店食堂、こういうものを今まで店を閉めさせて、そうして非常に窮地に陷れて、而も裏口営業をやつているだろうと認めて、これに税金を課して來た。これをそこから解放して、こうして大衆的な料理店飲食店をもう一度開かせる、そうして良い飲み物を飲ませ、ちやんとした食べ物を食べさせて、又商賣をやる人たちにして見れば、適当なる税金を納めつつ喜んで商賣ができるようにしなければならぬというのは、これは共産党の元來の要求でありますから、若しそういうものであるならば我我はこれに賛成したいのですけれども、法案をよく見てみますと、これは高級料理店というものを保護し、必要な大衆的飲食店露店などはこれを苦しめるという方式になつておる。而もこの大衆的な飲食店その他等々を苦しめることにおいて、そういう方面の犠牲において、高級料理店を保護するということになつておりますから、我々はどうしてもこれに反対しなければならない。これは今も説明がありましたが、この十一條を見ればよくそれが分ります。いろいろな点で多少の修正がありましたけれども、それは文句の修正或いは表面上の修正であつて内容は、或いは精神は全く変らない。第十一條の二項を見ますと、「命令の定めるところにより」というのは今これを変えるようでありますけれども、本來は、「前條の外食券又は副食券の数が、主務大臣の定める期間内に、主務大臣の定める数に達しなかつたときは、都道縣知事は、やむを得ない事由があると認めた場合を除き、命令の定めるところにより、その飲食営業を営む者の営業を停止し、又はその営業許可を取り消さなければならない」と、こういうことになつております。そこで主務大臣とか都道縣知事とかというような人々が、三軒茶屋の燒とり屋に行くか、或いはそこらの露店に行くかと言えば、そういう人々は必らず天ぷら御殿に行く。これは從來そうやつて來ております。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ち元の貴族とか、大臣とか、大闇屋とか、或る種のお寺、それらの営んでおる料理屋に、そういうところに彼らは行く。ですから、主務大臣の定める時期に、主務大臣の定める数が足りないということになれば、主務大臣都道縣知事は、一族郎党を引連れて、そういうところに行つて嵌まり込めばそれで数に達するということになる。それですから、たとえ間違いがあつても、これは止むを得ない事由があるという仕掛けになつておる。営業停止許可の取消になるかの心配は、こういう高級料飲店にはあり得ないということになつておる。その逆が大衆的な方面にかぶさつて來ておる。今度の野放し営業にすでにそのことは現われております。  それから税金はどうなるかと言いますと、これは非常に大切な問題であつて、今までは裏口営業をやつておるだろうと天下り的に見て、これを強制的に取上げた。今度はこれは表口の法となつてつて行く。よく追剥ぎなんかが道で人を捕まえて追い剥ぎますが、これは取れば逃げて行つてしまいます。この際その追剥ぎが強奪して置きながら、これはあなたに差上げたものでありますという証文を取れば、これは戰慄すべきものであります。丁度そういう方式になろうと思う。罰金なんかについても同樣であつて懲役がなくなつて罰金ということになりましたが、これは多くの人々は、中以下の人々は、罰金を取られるよりは懲役行つた方がいいというぐらいです。これは、こういうことがあつてはならないけれども、民自党政府がそういうところに追い込んで來ておる。ところが天ぷら御殿の方は、罰金なんかの分は一定期間、共託局に預けて置けばどんどんやつてつても儲かる。こういう方式になつておる。そうして、そういう罰金その他は、所得税営業税、手数料、それと農民からの強権供出等等に被さつて、そういう高級飲食店に注ぎ込まれるということになる。民自党は公約をすべて破棄したということを言われております。それでたつた一つ残つたのはこれだと言われている。それで、たとい民自党のものであつても、たつた一つでも約束を果させてやりたい、できればこれを援助したいというのは、我々の心にもありますけれども、(笑声)こういう性質のものであるから、このたつた一つ残つたと言われるのも、我々は微塵に打碎かなければならぬ。そうしなければ日本の人民は困るのでありますから、こういう意味で我々日本共産党はこの法案反対するものであります。
  7. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) これにて討論通告者発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を請います。    〔起立者多数〕
  8. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 過半数と認めます。よつて本案委員会修正通り議決せられました。(拍手)      ——————————
  9. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) この際、日程に追加して、日本國有鉄道法の一部を改正する法律案板谷順助君外七名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。本案発議者板谷順助君外七名より委員会審査省略要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないものと認めます。よつてこれより発議者に対し法案趣旨説明発言を許します。板谷順助君。     —————————————    〔板谷順助登壇
  12. 板谷順助

    板谷順助君 只今議題となりましたる日本國有鉄道法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申上げます。  改正の要点は監理委員任命についての手続愼重に行いたいという点であります。即ち、御承知の通り現行第十二條第二項によりますると、内閣監理委員任命するについては両議院同意を要することになつておるのでありまするが、この場合、若しも衆議院同意して参議院同意しない場合には、内閣総理大臣國会で指名する場合の憲法規定、即ち憲法第六十七條第二項の例によりまして、衆議院同意を以て両議院同意とすることになつておるのであります。併しながら監理委員は、運輸業、工業、商業又は金融業について廣い経驗と知識を有する者であることを要件といたしておるのでありまして、一般より廣く選考するのでありまして、総理大臣の指名の場合と異なり、政治的な要素を含まないところの問題であります。又監理委員は、日本國有鉄道法一條にある通り、國が國有鉄道事業特別会計を以て経営しておる鉄道事業その他一切の事業を経営し、能率的な運営によつてこれを発展せしめ、以て公共の福祉を増進することを目的とする日本國有鉄道業務運営を指導統制する点から考えまして、苟くも議院のうち、いずれかの一院が同意しない者を任命することは妥当でないと考えられまするので、第十二條第二項を削除することといたしたのであります。削除いたしました條文は次の規定であります。即ち「委員任命において、衆議院同意して参議院同意しない場合には、日本國憲法第六十七條第二項の場合の例により、衆議院同意を以て両議院同意とする。」という、この規定を削除するという点であります。以上が改正法律案提案理由であります。何とぞ愼重御審議の上、御賛成をお願い申上げる次第であります。
  13. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を請います。    〔総員起立
  14. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以つて可決せられました。      ——————————
  15. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) この際、日程第二より第三十五までの請願及び日程第三十六より第四十五までの陳情を一括して議題とすることに御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。建設委員長石坂豊一君。    〔石坂豊一登壇
  17. 石坂豊一

    石坂豊一君 只今議題となりました請願第十八号外三十四件、陳情第七号外十件につき、建設委員会審査の結果を報告いたします。  これらの請願陳情の内訳は、河川に関するもの二十二件、砂防に関するもの八件、運河排水路の施工に関するもの一件、高潮災害防除に関するもの一件、地盤沈下に関するもの一件、戰災復興に関するもの五件、特定地域総合開発に関するもの四件、建築に関するもの二件でございます。  河川に関する請願陳情は、近年全國に頻発する激甚なる災害を復旧防止するために改修工事促進して呉れるように要請しておるのであります。又新たに工事施行を希望しておるものもございます。又治水及び利水に関する根本的対策を樹立するために調査を要望し、又は直轄施行河川編入請願しておるものもあるのであります。河川改修工事促進請願するものといたしましては、兵庫縣下の担保川、山口縣下の佐渡川、北海道の豊平川新潟縣下魚野川、又新たに改修工事施行を要望するものは、靜岡縣下太田原野谷の両河川宮崎縣下一ツ瀬川及び支流三財川奈良縣下高瀬地藏院の両河川和歌山縣下の宮田川、岡山縣下加茂川鹿兒島縣伊作川、佐賀縣下松浦川、又福岡縣下の堀川の浚渫、大阪府の淀、神崎河川西淀川地区内の災害復旧工事など、いずれも近年各河川出水被害状況に対して急速なる災害防除工事施行は、生産増強、民生安定上、急務中の急務であると訴えておるのであります。又福島縣下阿武隈阿賀の両河川については、全國重要河川に加えて根本的治水対策を講ずるように要求しているのであります。靜岡縣下狩野川改修工事継続につきましては、新放水路の開設に対して一部地元の反対がありましたために、これまで一應保留されておつたのでございますけれども、同縣におきましても委員会を設置し、円満なる解決を期しているとのことでございまするから、これに信頼を拂いまして採択することにいたした次第であります。利根川、荒川河川改修工事促進についての請願は、関係地方民五十三万七千余名が署名しておりまして、累年の激甚なる災害に対して、これが根本治水対策促進関係地方が如何に眞劍熾烈なる関心を有しているかを示すことができます。河川に関する調査を要望するものは、宮崎縣大淀川及び五ケ瀬川であります。又五ケ瀬川直轄工事施行河川編入するように請願しているのでございます。治水及び河川改修には、上流において砂防工事が最も必要であるとして、各地より熱烈なる請願又は陳情が出されているのであります。その事件は島根縣下の半場川外三河川、江川、周布川、三隅川、大分縣下の山國川、朝見、春木、境の各河川、青森縣下の熊原、杉倉の両河川新潟縣下魚野川支流、長崎縣の対馬の三根川の砂防、又呉市背後の治山治水工事の要望等でございます。  運河排水路の開さく工事に関するものは東大阪高潮災害防除に関するものは西大阪地区でございまして、同地の地理的状況と工業地帶としての重要性と睨み合せまして、その必要が認められた次第であります。  地盤沈下の復旧事業に関する陳情は、徳島縣下でございまして、南海四國地方においても亦同一のものがあるのであります。  戰災復旧事業促進とこれが助成に関する要請は全國的に誠に熾烈であります。全國一般の問題として國庫補助増額の陳情があります。又鹿兒島市を初め鹿兒島縣下の戰災都市に関する陳情もあるのであります。  近時、開発資源の総合開発を中心とする各種の建設事業に関して、地方計画の樹立と促進をするようにということは、各地方でその氣運が高まつて來ているのであります。秋田縣阿仁田沢、鹿兒島縣大隅、熊毛、奈良縣十津川、紀の川地区、宮崎縣南那珂郡地方は、いずれもその特色を生かして総合計画の樹立と事業促進するように請願して來ております。  最後に建築に関するものといたしましては、不燃都市建設のために、木造と不燃建築との差額を補助し、又融資によりこれを助成するよう要求しているもの、又都営青山第二共同住宅の設備改善に関するものがあります。  以上いずれも建設委員会におきましては愼重審議の結果、これを院議に付して内閣に送付するを要するものと決定いたした次第であります。右報告いたします。(拍手
  18. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情委員長報告通り採択し、内閣に送付することに贊成の諸君起立を請います。    〔総員起立
  19. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。  これにて本日の議事日程は終了いたしましたが、尚この際お諮りいたしたいことがございます。四月二十八日、本院に予備審査のため送付せられました労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案に関しまして、本日午後、労働大臣説明を求めたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 御異議ないと認めます。午後一時まで休憩いたします。    午前十一時八分休憩      ——————————    午後一時三十二分開議
  21. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案に関しまして労働大臣説明を求めます。鈴木労働大臣。    〔國務大臣鈴木正文君登壇拍手
  22. 鈴木正文

    ○國務大臣(鈴木正文君) 只今議題となりました労働組合法案並びに労働関係調整法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申上げます。  先ず労働組合法案について申上げます。現行の労働組合法は、御承知のごとく昭和二十年十二月二十二日に公布、翌二十一年三月一日から施行せられたもので、終戰直後の日本の民主化促進経済の再建のために重要且つ不可欠の要素であるところの労働者の権利を保障する画期的意議を有する法律として制定されたものであります。(「そんならば改惡せんでいいぢやないか」と呼ぶ者あり)爾來、早くも三年有余を経過いたしまして、その間に生れ出た労働組合の数は三万に達せんとし、一般組織労働者は五百三十万に及び、日本の労働組合運動は、終戰直後の空白の状態から一躍他にその例を見ない急激な発展を遂げたものでありまして、その点より見ますれば、本法の功績は誠に偉大なものがあつたのであります。併しながら一面、三年間の同法施行の結果を顧みまするに、本法は、立法の当時我が國に労働組合が殆んどなかつた状態において立案制定されました関係上、その後の実施の過程において、当時予想せられなかつた不備の点が現われて参つた次第であります。例を申上げますと、「労働組合の正当な行爲」というものが、当時においては「健全な社会通念によつて判断する」と説明せられておつたのでありまするが、その後において必ずしもその範囲がすべての人に明確に認識されるに至つておらず、又労働組合の自主的、民主的な組織運営が、立法当時予想せられました通りに行かない点も一部に現われて來たのでありまして、そのため却つて本法の本來の目的に背馳するような種々の弊害を生じた憾みもあつたのであります。又使用者の労働組合に対する妨害、干渉が必ずしも十分に排除されておらず、労働協約の締結運営の状態も必ずしも所期のごとくには行われていない状態であり、労働委員会についても、その顯著なる功績にも拘わらず、一部その運営、機構等の上におきまして不備の点があつて、必ずしも所期の目的を十分に達成できない面もあたつのでありまして、これらの点につきましては、從來労働教育及び行政運営において極力その補正に努めて参ると共に、その中の若干の点につきましては、昭和二十一年及び昭和二十二年、労働関係調査法及び労働基準法の制定の機会に、僅少の改訂が施されたのでありますが、今日においては、三年間の実績に鑑み、これらの不備の中に、労働教育乃至行政運営を以てしては的確に補い難い点があることが痛感せられ、これらの諸点について立法上の措置を施す必要があることが明らかになつたのであります。これが提案理由の第一点であります。  次に今日この時期においてこの改正を行わんとする理由といたしまして、第一には、現行労働組合法施行以來の三年間は、いわば労働組合の搖籃期とも言うべき時期で、ともかくも労働組合が我が國において発展することを促進するのが最大の急務であつたのでありますが、三年を経過し、三万の労働組合と五百三十万の組合員とを擁し、國際的労働運動場裡にも近くその参加を許されるというような機運に至りました今日においては、かかる発達を遂げた労働組合が、眞に自主的、民主的であり、且つ経済的再建に対してその責任をみずから負うところの、自由にして建設的な労働組合となることが何よりも要請されるのであります。第二には、今日我が國に課せられた至上命令である経済原則励行のためには、経済再建の最大の担い手としての労働者の組織である労働組合が、自主的、民主的で、且つ責任ある組織となり、眞に組合大衆の盛り上る総意を以て我が國再建の方途に協力することが、不可欠最大の基盤をなすのでありまして、かかる態勢確立のための必要な立法上の措置を講することが喫緊の急務なつたわけであります。これが提案の第二の理由でございます。  最後に、現行労働組合法は言うまでもなく旧憲法下において制定せられた法律でありまして、例えば第一條目的憲法第二十八條と重複する嫌いがあり、その他裁判所による組合解散命令のごとき監督取締的旧思想の形骸が残つておること、新憲法及びその成立後に行われました諸立法との調整を図る必要が生じて來たこと等に鑑み、この際これらの点についても整理を施す必要があるのであります。これが提案理由の第三点でございます。  次に本法案提出に至りまする経過を概略申上げますると、労働組合法の改正は過去においてもしばしば考慮せられたことがあるのでありまするが、その後次第に各方面から強く要望せられ、その必要がいよいよ痛感されるに至りましたので、吉田前内閣におきましては、連合國軍総司令部の示唆に基き、当時の増田労働大臣の下に労働省において昨年十二月初めからこれが本格的研究に著手し、本年当初より事務当局の手によつて法案の立案に著手したのでございます。爾來GHQ労働課の強力な指導と援助の下に作業を行い、去る二月十四日一應の事務当局案を得ましたので、これを労働省試案として発表したのであります。現内閣成立後も引続き作業を続行し、二月二十日から十日間に亘り全國七ヶ所におきまして十五回に及ぶ労働省主催の公聽会を開催し、その後、公聽会における労働者、使用者、学識経驗者の意見、その他政府又は労働者に対して寄せられました各方面意見を参酌し、試案に数回の改訂を加え、遂に今回提案の運びに至つた次第であります。  次にかくのごとき経過を経て立案いたしました本法案の大要を申上げます。本法案の立案の基本方針といたしましたところは二点であります。即ち第一点としては、労働組合法施行三ケ年間の経驗に徴し、且つ諸般の情勢の推移に鑑み、自由にして建設的な労働組合運動の助成を一層推進し、これにより公正な労使関係の維持促進を図つた点であります。第二点としては、この目的のためには幾多の点につき改正を要するものが認められるのでありますが、公聽会その他各方面意見と、経済原則の円滑な実施のための諸情勢を考慮いたしまして、改正は漸進的に措置することとし、本法案には当面の情勢から特に必要とせられるもののみを規定することといたした点であります。  次に本法案の要点とその趣旨とを簡單に申上げます。  第一章総則につきましては、本法目的を、憲法第二十八條との関係から現行法より、より具体的に規定し、労働者の團結権、團体行動権の保障を明確化しております。労働組合の正当な行爲は罰せられないということは、現行法に明示してありますが、これが、ややともすれば、ほしいままに解釈されていた從來の経驗に鑑みまして、少くとも労働組合の暴力の行使等は正当な行爲でないことを明らかにいたし、更に労働組合に加入し得る者の範囲を明示すると共に、使用者の財政上の援助を禁止して、労働組合の自主性を保障したのであります。  第二章労働組合の章につきましては、現行法の規定中、届出、規約変更命令、組合解散命令等、行政廳乃至裁判所の干與に関する規定を一切廃止して、労働組合の一層自由な発展を期すると同時に、組合員の平等権、公正な会計監査及び役員選挙、同盟罷業、規約改正における無記名投票制等を組合規約の必要記載事項とすることにより、労働組合の民主性、責任性の保障を図り、且労働組合の資格を備えないもの又はその規約が必要な要件を満さない労働組合に対しては、本法及び労働関係調整法に規定する手続に参與できず、救済が與えられないことといたしております。更に使用者が正当な理由なくして團体交渉を拒否することを禁止して、團体交渉権を擁護し、その不当労働行爲の範囲を拡充して、使用者の労働組合に対する一切の干渉妨害を排除することにより、團結権及び團体行動権を保障いたしたのであります。  第三章労働協約の章につきましては、労働協約の不合理な延長を排除することにより、合理的な労使関係の保障を図り、又現行法の條文中從來殆んど実益のなかつたものを削除いたしまして、法の簡素化を図ることといたしました。  第四章労働委員会の章につきましては、その職責、権限、組織を法律上明定することにより、労働委員会の性格を明確にし、且つその使命と職責とに鑑み、その権限を強化すると共に、準司法的機能につきましては、労使委員の参與の下において公益委員のみによつてこれを行うこととし、その公正妥当な運営を保障いたしました。又不当労働行爲に対する労働委員会の原状回復等の命令、裁判所の緊急命令その他労働者及び労働組合の権利の回復のための迅速な処分手続を定めることにより、不当労働行爲の防止及び是正のための有効適切な措置を講じたのであります。更に中央労働委員会に地方労働委員会処分に対する再審査権、規則制定権等を與え、且つ全國的な問題の優先的管轄権を明確にすることにより、労使間の粉爭議の合理的解決を図つたのであります。  第五章罰則につきましては、不当労働行爲の性格に鑑み、これが行爲を直接に罰する方針を改め、労働委員会及び裁判所の命令違反に対し有効且つ強化された罰則を課することにより、正常な労使関係の確保を図ることとしたのであります。  最後に附則として施行期日その他必要な経過規定を定めております。  以上全文三十三ケ條、現行法に比して四ケ條だけ條文の数が少くなつておりますが、現行法の條文の約半ばがそのまま本法案中にとり入れられておるのでありまして、形式的に新らしい法案となつておりますが、実質的には現行法の一部改正となつておるのであります。  次に労働関係調整法の一部を改正する法律案について御説明申上げます。  今回のこの法律案を提出するに至りました理由と、立案の経過及び改正案の基本方針につきましては、先に申上げました労働組合法におけるそれと概ね同様でありますが、とくに労働関係調整法につきましては、労働爭議なかんずく公益事業の爭議行爲と公共の福祉との調整にその改正の重点を置き、形式上にも労働組合法と異なり、一部改正といたしております。  次にその改正の要点について御説明申上げます。  第一には、公益事業の追加指定は現在行政機関のみで行うこととなつておりますが、公益事業の範囲は、法律にその主要な事業を明記しており、これが追加指定も、新憲法との関係から、立法的手続によることが、より妥当な措置であると考えられますので、國会の承認を経て行うことといたしたのであります。  第二には、調停案を当事者双方が受諾した後においては、調停委員会の見解を聽かなければ、その調停案の解釈又は履行については爭議行爲をなし得ないことといたしまして、労使の当事者間に了解が成立したにも拘わらず、その了解の解釈又は履行に関しまして爭議行爲を以て双方が相爭うというような、從來往々見られた不合理な事態を合理的且つ平和的に解決し、労使間の無用の紛爭を努めて努去するようにいたしたのであります。  第三には、公益事業における爭議行爲の制限についての改正であります。現行法は、公益事業の労働爭議を努めて防止し、早期且つ平和的に解決しようとするために、これに三十日の冷却期間を設けているのみでありますが、從來の経驗に徴しますると、必ずしも所期の目的を達成し得ず、一度冷却期間経過いたしました後、徒らに爭議解決が遷延せられる嫌いもありましたので、本改正法案におきましては、冷却期間経過後六十日間を経た後には、更に調停手続を経て冷却期間経過しなければ爭議行爲をなし得ないことといたし、労働爭議の防止と、その早期且つ平和的な解決に一層有効ならしめたのであります。  又当事者が調停案を受諾した以上、その調停案中に團体交渉を継続すべき旨が定められている事項があるときは、これらの事項を理由とする爭議行爲は新たに冷却期間経過しなければならぬものといたしまして、無用の爭議行爲をできるだけ防止することといたしたのであります。その他從來調停と斡旋とが混用され、却つて事態を紛糾させることもありましたので、調停と斡旋との本質を明確には、かかる紛糾を避けようとした点、正当な爭議行爲に対する保護はすべて労働組合法中に規定することとした点等について改正をいたしております。  以上が労働組合法案及び労働関係調整法の一部を改正する法律案提案いたしました理由及びその大体の構成であります。  経済再建特に九原則の実行のために労働者及び労働組合の責任が極めて重大であることは言うまでもないことでありますが、勿論、事、労働問題に関しましては、法律改正によつてすべての問題が解決するものであるとは、もとより考えておらないのでありまして、行政運営、労働教育、特に政治全般の総合施策に待つところが極めて大であり、労使の自覚と努力及び公正な世論の批判と協力とが何よりも肝要であるということは、もとより考えているのでございます。政府並びに労働行政当局におきましては、從來とも最大の努力を傾けて参つたのでありまするが、更に今回提案いたしましたこの法案が、御審議の結果、通過成立を見ました曉には、労働者の地位の向上、自由にして建設的な労働組合の発達及び労働運動と公共の福祉との間の調整につきまして、一段の努力を傾注し、法的措置と行政と相俟つて労使各方面の協力の下に日本経済再建の目的のために邁進いたしたいと存じます。何とぞ御審議の上速かに可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 只今の労働大臣発言に関し、質疑通告がございます。順次発言を許します。堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  24. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 只今労働大臣から説明せられましたところの労働組合法案並びに労働関係調整法の一部を改正する法律案につきまして、先ず総括的に二つの点を御質問申上げたいと思うのであります。  一つは労働権の尊重ということであります。労働権は憲法二十八條に保障されたところの権利でありまして、憲法上にも謳つてありまするように、人類が長い歴史の努力の結果これを獲得したものであります。從つてこの権利は憲法改正する以外に、他の如何なる法律によつても、亦如何なる権力によつてもこれを奪うことができないのであります。從つて労働権を尊重するということは、我々國民として飽くまでも守らなければならないものでありまして、この憲法上に保障された権利を、たとえ、どんな事態が起きようとも法律を以て或いはその他の政令によつて制限するというがごときは、断じてとるべきではないのであります。労働組合法は、この労働権の尊重の上に労働者の地位を確立し、生活を保障するというところに法の目的が存在するのでありまして、若し労働権の尊重せず、労働者の地位を資本家と対等にせず、生活を保障しないというようなことでありましたならば、それこそ全く日本の我々が命を以て守らなければならないところの憲法に違反するものだと申上げなければならぬのであります。而もこの労働権は、單に日本憲法において保障されているばかりでなく、ポツダム宣言において、極東委員会の十六原則において、又昨年の十二月パリの國際連合において採択されました國際人権宣言において、明確に保障しているところのものでありまして、つまり世界的にこの権利こそは認められているのであります。然るに政府は今回、過去の経驗に鑑みて、自由な労働組合の発達を助長し、その民主化を促進するためと称して、全面的な労働法の改正提案されているのであります。併しながら過去三年間の経驗に徴して、果して労働権を制限しなければならないような事態が起つておつたでありましようか。只今労働大臣は、過去三年間に不備な点が徐々に分つて参つたというので、三点だけその不備な点を挙げておられるのでありますが、極めて抽象的であり、むしろ我々の経驗から申すならば、現行法を活かして、そうしてこれに保障されているところの権利を飽くまでも伸張し、賃金不拂であるとか、労働組合に対するところの不当な抑圧、或いはその他の使用者側の組合に対するところの干渉なり侵害なりを、むしろこの際はつきり取締るべきではないか、こういう工合に考えるのであります。この点につきまして先ず政府の所見を伺いたいのであります。  それから総括的な第二点としましては、只今労働大臣から申されておりますように、公益事業と公共の福祉との関係、特に労働爭議に対する公共福祉との調和を図るということを申されておるのでありまするが、公共の福祉ということについて果してどういう考えを持つておられるか、労働権は、先に申上げましたように、憲法上に保障された権限であります。この権利を、公共の福祉という名前によつて一應の枠を作ることは、憲法はこれを認めております。併しながら基本的な権利に属する労働権の行使について、時に公共福祉の上からこれを制限することがあり得るのでありまして、公共の福祉ということを常に用いることによつて、むしろ却つて一方的にこれを利用するという嫌いを生ずることを私は憂えるのであります。一体公共の福祉という場合、その内容が社会全体の人々によつて認識されていることを前提とするものであります。それは特定の階級、或いは人々によつてのみ見出されるものでなくて、法律の世界に住むすべての人々によつて共通の内容が意識されることによつて初めて可能なのであります。併しそのような観音は、実は一つの擬制に過ぎないのであります。法律学上で言うフイクチオンに過ぎないのであります。なぜなら、この社会が同質的な、同じ要素から成つている場合ならいざ知らず、現実の社会は矛盾と対立に満ち満ちている。この社会では、異質的な、質を異にするところの要素が存在するのであり、從つて矛盾対立はそこに避けられないからであります。中でも、生産手段を所有するものと、自分の労働力以外に何ものをも持たないものとの対立ということは、今日の社会において蔽うべからざる事実であると申上げなければならぬのであります。從つて、公共の福祉という観念は、こういうような社会においては全く論理的にも成立ち得ないのであります。併し皮肉にも、このような矛盾対立の社会において公共の福祉という観念が見出されたということは、私共として極めて興味のあることだと申上げなければならぬのであります。つまり対立する社会においてこれを規範的に統一しようとして作られた考え方——擬制が公共の福祉なのであります。從つて公共の福祉という観念は、必ずしも今日の社会において現実的にその内容を有することができないのであります。ところが、その内容が一應は自明的なものとして一方においてこれを要請しながら、実は矛盾したところの要素が社会に認められる結果は、矛盾するところの人々、矛盾するところの法意識の対決、両者を対決させることによつてこれを決定するということにならざるを得ないのであります。從つて又そういうような対決の問題となれば、論理の問題よりもむしろ実践の問題であり、從つて又それは言い換えるならば政治的な問題であります。政治的な対決によつて初めて解決されるというような性質をおのずから持つて來なければならぬと思うのであります。で、私が先に公共の福祉とは一方的に利用されるところの危險があると、こう申したのは、このためであり、結局、政治的対決によつてそれが決定されるということであれば、政治的に優位を占めているところの人々がこれが内容を決定するということは言うまでもないのであります。言い換えるならば、資本家階級が公共福祉の内容を決定するという結果になるのであります。そういうようなものを以て、人類の、或いはすべての人々の基本的権利であるところの労働権を抑制するということは、そもそも論理的にも間違つていると申上げなければならぬのであります。この点につきまして政府は果してどういう考えを持つておられるか。しばしば公共の福祉ということを言われる。公務員法の制定のときにも公共の福祉ということを言われて、これが基本的権利の制限或いはその枠として当然のことと考えられておつたのでありますが、そういうふうな殆んど今日の社会において單に擬制に過ぎないようなところのものを以て、現実的な我々の基本的な権利を制限することが果してできるか。このことについて政府意見を伺いたいのであります。  次には、労働組合法の内容に入りまして若干質問をして見たいのであります。労働組合法の第一條には、その目的が述べられておるのであります。只今、大臣は、從來は極めて抽象的であつたが、今度は具体的にその目的事項を記載したと、こう申しておるのでありますが、確かに五項目に亘つて本法目的事項が述べられておるのであります。併し、むしろ本法目的は、労働権の尊重、團結権、團体行動の権利を保護するということが目的なんでありまして、その目的から本法が制定されることが極めて望ましいのであり、從つて、そういうことを、むしろ本法目的として明記すべきではないかということを、先ず第一にお尋ねしたいのであります。並びにその目的に関連して、「暴力の行使は、労働組合の正当な行爲と解釈されてはならない。」というので、暴力行爲に対して禁止事項を含んでいるのでありますが、これは刑法にすでに除外規定があるのでありまして、殊更にここに挿入する必要を認めないのであります。これを挿入することによりまして、むしろ組合活動の取締を強化しようとする意図がそこにあるのではないか、このように私は考えるのであります。この点、労働組合法の目的について、政府の意向を質したいのであります。  それから労働組合の資格と言いますか、規定と申しますか、それにつきましてお尋ねしたいのであります。一つは、第二條の第二号に、組合の運営のための経費の支出について使用者の経営上の援助を受けるものは組合ではないという規定があるのであります。組合の経費について使用者から援助を受けるということを組合として排除すべきは言うまでもありません。併し、この経理上の援助を受けるというものの中に組合の專從者の問題を含んでいるとするならば、私はこれに対して反対せざるを得ないのであります。勿論、組合の專從員も、今申上げたように、使用者からの経費によつてこれを負担するということは、必ずしも望ましいことではないのであります。併しながら、組合運動が発足してからまだ日も浅いことであり、それに労働者に対して最低賃金制がまだ確立されておらぬ今日の状態におきまして、組合專從者の問題をこの場合一挙に解決するということは私は間違いである。むしろ多少の時間を貸して、組合運動が十分に発達し、労働者の地位も向上し、生活が保障された暁には、專從者の給與を使用者側の負担において行わぬという原側を打立てることが望ましいのではないか。又組合運動の実際について見ましても、專從者の給與を使用者の負担において出しているところの組合において、少しもそれが御用化しておるというようなことは見えないのであります。むしろその他の面において御用化しておるところの組合が非常に多いのでありまして、例えば信用者が組合幹部を買收するとか、或いは懷柔するとか、或いは第二組合を作らせるとかいうような点は、しばしば今日までの経驗において我々の見て來たところであります。從いまして、むしろ專從者の問題よりも、その他の点において組合の御用化しておる面を十分に当局においては排除し、取締るということが必要ではないかと、こういう工合に考えるのであります。  それから組合規約の記載事項についてでありまするが、組合は團結権に基いて自主的に運営されるものである。從つてその基的は組合の自主的に規定するところに讓りまして、法律上は、ただ組合が労働者によつて自主的に運営されることを明らかにする程度で十分とすべきであると思います。若し本法案のように必要記載事項を列挙し、そうしてこの事項を一つでも欠くものは法律上の保護を與えられないというようなことにするならば、結局、労働組合法は、労働権の尊重ということよりも、労働権を取締取締法に轉化する危險が十分にあるのではないかということを考えるのであります。この点についての政府当局の御意見を伺いたいのであります。  それから團体交渉の問題でありまするが、本法案は、組合の代表者又は委任を受けた者が使用者又はその團体と交渉をする権限を規定しております。又これは不当労働行爲の中に規定してあるのでありまするが、使用者は組合の代表者と團体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むことができないということを規定しておるのであります。正当な理由という逃げ道を作つて置くということは、これこそ正当ではないと私は思うのであります。むしろ積極的に、使用者は團体交渉に應ずる義務があるということをはつきりと規定すべきではないか。この点に関する政府の意向を質したいのであります。  それから労働委員会におきましては、委員の任免の場合をそれぞれ規定しておるのでありまするが、これについても疑問があるのでありまするが、何よりもその構成を民主的にするために、委員に対するリコール制を採用すべきではないか。この点に関する政府意見を質したいのであります。それから労働委員会について、もう一つ、会議の公開原則を是非とも、ここで認めて貰いたいということであります。法案には、「公益上必要があると認めたとき」に限りその会議を公開にするということを規定しておるのでありまするが、これは全く非民主的な規定であります。國会のこの本会議も、亦國会における各常任委員会も、今日ではすべて原則として公開されておるのであります。そういう今日、労働委員会の会議について公開制の原則を認めないということは、絶対に私は反対すべきだ。この点に関する政府の意向をお尋ねしたいのであります。  それから労調法の一部を改正する法律案につきましては、二点お尋ねしたいのであります。  一つは、公益事業の追加指定についてであります。改正法案によりまするというと、内閣総理大臣國会の承認を経て追加指定するということになつておるのでありまするが、これは次の理由から不当であると申さなければなりません。一つは、労働権の制限を法律によらず、総理大臣の指定としたということは憲法違反であるということ、それから第二には、公益事業はその性質が絶えず変るものではなく、殆んど一定しておるものであるからして、かかる規定を設けることは、労働権の制限を行政官廳によつて一方的に拡大させるところの法的根據を與えるものであるということ、それから第三には、よしんば、これが決定を認めるとしても、むしろ規行法通りにすべきではないか、この三点の理由から私は不当であると考えるのでありまするが、これに対する政府の所見を伺いたいのであります。  それから、もう一つ労働法関係の法案についてお尋ねしたいのは、公益事業の爭議権行使に対しての冷却期間規定であります。三十日の期間に更に六十日の冷却期間を設けておるということは、結局、労働組合の團体行動に関する労働権の制限であり、これ亦憲法違反と申さなければならぬのであります。この点につきまして政府の所見を伺いたいのであります。以上。(拍手)    〔國務大臣鈴木正文君登壇
  25. 鈴木正文

    ○國務大臣(鈴木正文君) 堀議員の御質問にお答え申上げます。  労働権の問題についてでありまするが、提案された法案を冷靜に公平に読み取つて頂きましたならば、労働権を否定するとか、そういつたような考え方の上に毛頭立つておらないということを御了解頂けるものと私共は確信しております。勿論、労働権は憲法によつて保障されたところの基本的の権利でありまして、これを尊重するという考え方については、敢えていずれの会派を問わず、これを否定するというような考えの下に立つている者は勿論ない筈でありまして、労働省当局も同樣であります。ただ公益との関係の点につきましては、労資二つに分れた異質的な階級以外には、明確なる概念も、その機関となる実在も存在しないというふうな考え方の下に、第三者的、一般國民的の公益問題というものを否定されたのでありまするけれども、私共はそういうふうには考えておらないのでありまして、最も重要な労資の存在は十分認めますけれども、一般の國民の層としての、一般の第三者的な、公益的な観念も実在も存在するのでありまして、労働問題の実際の解決に当りましては、公益面と労働爭議の調整というものを考えて行くのが当然であると考えているのであります。そういう考え方の下に立案されたということをお答え申上げます。  それからいろいろ御質問がありまして、或いは漏れる点があるかも知れませんが、若し漏れましたら、(「漏らすな」と呼ぶ者あり)委員会その他適当な機会に申上げることにいたします。  第一條目的という点についての労働基本権との関係の御質問でありましたが、この第一條は、明らかに労働者の労働権の基本的な権利としての確保ということを明確にその目的として書いているのでございまして、(「明確でない」と呼ぶ者あり)これも御指摘になりました点、よく読んで頂きますれば十分に分つて頂けると思います。(「分らん」と呼ぶ者あり)第一條第二項に但書を附けましたのは、從來、労働組合のやることは、如何なる行爲を以てしてもそれは違法でない、極端な場合においても、それが労働組合の活動の形においてなされたる場合には、如何なるものも違法でないというような極端なる考え方、言説もあつたのでありまして、私共はその考え方には反対であり、労働組合の行動の中にも亦、当然正当な一定の限界があるということを考えているのでありまして、その考え方の下に附されたところの但書に過ぎないのであります。  それから組合專從員の給料の問題であります。この問題につきましては、曾て私共から加藤労働大臣に対しましての組合專從員の給料の問題をどう考えているかという質問に対しまして、当時も当然、世界の実例から見ても、事の本質から見ても、專從職員の給料を拂うということは原則としてもおかしい、間違つているという原則は認める、但し組合の発達の過程の現状に徴して、もう暫らくこの点は楢予して欲しいという答弁でありました。(拍手、「名答弁」と呼ぶ者あり)根本におきましては、この考え方に反対の余地はないと思うのであります。世界に專從職員の給料が使用者によつて拂われているという実例はないのであります。私共は結局現段階はこの原則を実行すべき段階であり、時期であるかどうかという観点につきまして、正に実行すべき時期であるという観点を以てこれを決定したということを申上げます。(拍手)  それから組合規約の中に書き込むところの問題を細々の列挙しているのは、組合に関する干渉ではないかという御意見でありましたけれども、これは苟くも民主的にして、自由な、一部の独裁者に引摺られないところの民主的な組合である以上は、当然書き込むべき、書いて当り前、書いてないのが不思議なだけの條項でありまして、極く当り前の最小限度のものを書いたのに過ぎないのでありまして、組合の民主化を促進するところの目的に適うことこそあれ、決して組合自体の民主化を阻害するというような性格のものではないと考えております。  労働委員会のリコール制につきましては、労働委員会委員の任期は一年なのでありまして、この一年という短かい任期と照し合せまするときに、敢えてこの際、リコール制というものを持ち込まなくても、重大なる過ちは現われずして是正されて行くと考えているのであります。それから労働委員会公開の問題でありました。これは各方面から嚴正妥当な解決定に導いて行くためには、非公開でやる場合の方が多く妥当でありますけれども、併し御指摘のように、必要があれば公開するところの措置と準備は規定されているのであります。  公益事業の追加指定の問題でありますが、これは現在の新憲法の下におきましては、國会の下において追加を決定するということが、最も民主的であり、妥当であると私共は考えているのであります。(拍手、「冷却期間はどうした」と呼ぶ者あり)     —————————————
  26. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 原虎一君。    〔原虎一君登壇拍手
  27. 原虎一

    ○原虎一君 私は只今政府の提出になりました二つの法案に対して、日本社会党を代表して質問をいたしたいと存じます。  先ず、改正條項について労働大臣に対して質問をいたします。政府は労資が対等の立場に立つこと、これを促進すると強調しております。然るに改正の要点の一つであります第二十七條におきましては、労働委員会の決定に從わない資本家に対しても、裁判の判決を俟たなければ制裁をする方法がないことになつているのであります。これは労働によつて生活し、他に経済的余裕のない労働者にとつて、非常な不利益であります。又不公平も甚だしいものであります。その事実は労働大臣も御承知と思いまするが、山口縣大浜炭鉱の事件によつて明らかであります。即ち大浜炭鉱主は、労働組合を破壊せんとして、幹部七十数名を首切つたのであります。これに対して地方労働委員会は、炭鉱主の不当労働行爲と決定したのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)ところが、これが裁判に付せられました結果、遂に炭鉱主が大審院にまで上告しましたため、一ケ年半を経過して、漸く労働者の勝訴となつたのであります。併しこの長い一ケ年半の間、七十数名の組合幹部は失業状態に置かれ、悲惨なる生活を続けなければならなかつたのであります。この事実に照しましても、眞に労資対等の立場を強調するならば、不当労働行爲に対する労働委員会の決定には、直ちに労働者を原状に復帰せしめるだけの執行力を持たすべきであります。本改正案は文面上は労資対等である、併しながらその実質は遥かに遠いものであるということを断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第二は、使用者の組合に対する財政援助の禁止であります。即ち組合の事務專從者に対して從來使用者が給料を負担していたのを禁止する結果、当然労働者の組合財政に対する負担の増加となるのであります。これは今日労働組合が社会的、國家的に重要なる任務を有するものでありますから、労働者の社会的、文化的生活費の増大は当然賃金の一部に加算して要求することは妥当であると思うのであります。これについて労働大臣の見解を明らかにされたいのであります。  第三は、労働委員会の権限を強化しているのでありまするが、組合の資格認定、資本家の不当労働行為等、重大なる決定を、公益委員即ち第三者委員のみによつて決定することになつております。労働委員の三部制の根本精神にこれは反し、非民主的でありますばかりでなくして、公益委員の選任には労資両委員同意を要するのであります。労資は互いに自派の味方の委員の多きことを希望いたしますことは当然であります。從つて場合によれば、公益委員任命に対しては、労資両委員の承認を得ることが困難に陷つて参ります。こういう場合におきますところの労働大臣は如何なる処置を採られるか、その確信の程を伺いたいのであります。  第四は、労調法の改正によりまして、公益事業の爭議は三十日間の調停期間経過してから後に罷業をなし得ることとなつております。その罷業が六十日間継続したときは再び調停にかけることを規定したのであります。政府はこれによりまして、公益事業の罷業を抑制し得るところの確信を持つておるかのように主張いたしておりまするが、私に言わせますれば誠に滑稽に堪えません。と申しますのは、ガス、水道、電氣のごとき公益事業の罷業は、できる限り短期間に終了することは何人も望むところであります。然るに政府はこれが六十日に及ぶことを是認したのであります。諸君、交通機関のごとき公益事業の罷業が六十日間も継続した場合は社会はどうなるでありましよう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)ここに政府法律によつて日数を規定することが罷業の抑制になると考える矛盾が暴露されておるのであります。(拍手)罷業の日数を制限するがごときことは、これこそ労資の自粛に俟つべきものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るに政府が画期的な改善のごとく強調する眞意がどこにあるか、私は誠に疑わざるを得ないのであります。この点を明らかに御答弁願いたいと存ずるのであります。  次に、主として総理大臣にお伺いいたしたいと思います。労働組合の基本的任務が、戰前におきましては主として労働條件の維持改善と労働者の地位の向上にありました。然るに敗戰後の新生労働組合は、これに加うるに民主的日本建設という大きな國家的、社会的任務を有するものであることは、吉田総理と雖も承認されるところを信ずるのであります。(「どうかな」と呼ぶ者あり)今回政府改正せんとする法案の要点は、自由にして建設的な労働組合の助成を一層推進し、労働爭議と公共の福祉との関係の適正な調整を図ることを主眼とし、これが改正を漸進的に措置するというのであつて、一應肯けるような説明であります。併しながらその底を流れております思想について靜かに檢討いたしますときに、大いなる疑問と憤懣とを抱かざるを得ないものであります。第一に、政府が労働組合の健全なる発達を図るためには法律によることが最善の方法であるとするところに、大いなる過ちのあることを指摘しなければなりません。即ち法律によつて取締りさえすれば事足れりとするところの古い考えを打破しなければならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)政府もこの点については多少反省をいたしたのでありましようか、二月発表しました取締法案を引込めまして本案に代えましたが、まだ根本的の理念の変化は決して認められないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)御承知の通り今日模範的労働組合と称せられておりまするところのイギリス労働組合も、その有する百数十年の歴史の中には、労僅者が失業するのは機械ができたからだと言つて機械を破壞した時代もあるのであります。今より二十三年前の一九二六年には、御承知のように二百数十万の労働者がゼネストを決行して、國内は勿論世界を驚かしたのであります。この明らかな歴史的事実が示す通りに、理想的労働組合の実現は一片の法律によつてなされるものでなく、労働者みずからの努力が累積されて初めて達成されるのであります。從つて一時的には社会的犠牲も亦止むを得ないのであります。かくのごとき尊き歴史の上に築き上げられたるところのイギリス労働組合でありますればこそ、フアツシヨの嵐にも、鉄のカーテンの中にも巻き込まれることなく、毅然として理想に向つて邁進いたしておるのであります。吉田総理は、曾て政治目的達成のために労働組合を使嗾する不逞の輩ありと言われた。事実若しありといたしましても、首相のごとくこれを罵倒し、或いは法律によつて取締ることによつて事足れりといたしまして、かくのごとき社会運動の起り得るところの社会的欠陷を除去する具体的な施策を怠るときは、かかる運動はますます活溌になつて來るのであります。吉田民自党内閣におきまして、これに処するところの進歩的政策と熱意がありましようか。ありますならば、具体的に今日お示しを願いたいのであります。  敗戰直後の労働組合運動に行き過ぎがあつたとして、これを労働者のみの責任の帰して法律によつて取締らんとすることは、本末を知らざるものと言わなければなりません。一部労働組合運動に行過ぎがあつたといたしましても、それは過去数十年間に亘り、ただただ労働組合を危險のものとして彈圧することのみを知つて、これを認めるの理を知らなかつたところの支配階級の負うべき責任を逃れることはできないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  今や我が國の労働組合の大多数は、過去三ケ年の尊い経驗によつて、みずからの力によつて民主的にして建設的なる方向に向つて大いなる努力を拂いつつあるのであります。このとき本法案の提出は、却つて角を矯めて牛を殺す慮れなしとしないのであります。然るに政府は幾多の改正を必要とし、これを漸進的に行うと言つておるのであるが、本法案の外に尚如何なる改正をなさんとする意図であるか。吉田首相並びに鈴木労働大臣の明快なる御答弁要求するものであります。尚、私はこれを以て質問を終りますが、時間の許す限り第二の質問の時間を與えられんことを議長に希望いたしまして、私の質問を打切ることにいたします。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔國務大臣吉田茂君登壇拍手
  28. 吉田茂

    ○國務大臣(吉田茂君) 原君にお答えをいたします。政府は過去における、或いは又現在の労働運動等の実情に鑑みまして、破壞的行爲、或いは非民主的、或いは独裁的の少数の組合による指導、これを排除いたしたいというのであつて、決して労働運動を法律によつて圧迫するとか、或いは彈圧するとかいう氣持は毛頭ないのであります。健全なる労働運動を助長するがためには、政府は十分にこれらの運動の発達に、或いは組合の発達に飽くまでも助力するつもりでおるのであります。從つて政府の考え方については更に御再考を希望いたします。(拍手)    〔國務大臣鈴木正文君登壇
  29. 鈴木正文

    ○國務大臣(鈴木正文君) 最後の御質問の方からお答えいたします。  労働法関係の法規を改訂するということを計画し、又実行いたしましたのは、先程提案理由の中でも詳しく申上げましたように、この三年間の運営の実驗に徴して、幾多の是正すべき技術的な面があると同時に、本來自主的、民主的、建設的であるべき労働組合の発達に、まだ一部の独裁的な指導関係、或いは又一部の使用者側の方面から見ましても、眞に健全な労働組合を育成する、協力するという考え方と方式の足りない点、そういつたことは先程幾つかの実例を挙げて、提案理由の中で申上げたのでありまするが、それらと考え合せまして、この段階におきまして、可能なる範囲において改訂を施して、そうして自主的な、民主的な労働組合をより一層推進する、九原則の実行という命題とも睨み合せて実行する必要があると考えましたが故に、改訂を計画し、それからその結果として法案を提出した次第でございます。又根本的に労働組合というものに対して、どういうふうの考えを持つておるかという御質問に対しましては、只今総理よりお答え申上げましたと全く同じ考え方の上に立つております。  次に労働法の二十七條の関係についての御質問でありまして、例として山口縣の大浜炭鉱の例を挙げておられたのでありますが、この二十七條はむしろこういつた例のないように、速かに原状回復をさせることによつて、労働者の利益を守ろうとしておるのでありまして、二十七條の第二項、第七項及び第三十二條と照合して見て頂ければ、この関係はよく分ると思うのであります。労働委員会命令があつて、三十日以内に裁判所へこれが行かないというときには、労働委員会命令が確定して、命令を履行しない日数に應じて、毎日十万円以下の過料を課するということになつておるのでありまして、むしろ方向は、こういう労働爭議の長びくことを通じて労働者が不当に損害を蒙むるということを防止しようという考え方の上に立つておるのが、根本的な考え方であるのでございます。それから組合への財政援助の件につきましては、先程も申上げましたところでありまするけれども、專從者の職員の問題も勿論であり、その他特殊の厚生設備とか、或いはそういつたもの以外の一般的の組合の経費というものを、経営者側から受取るということは、飽くまでも独立の、民主的な、自由な組合という立場から考えまして、誰が考えても当然ではないのでありまして、段階に應じまして、現在の段階におきましては、この改正案に盛られた程度のことは実行すべき時期であると考えて、あの改訂を盛り込んだのでございます。それから労働委員会の重大な事柄を中立委員のみに任せるということは不当ではないか、適当ではないじやないかという御質問でありまするが、労働委員会の仕事の中で以て準司法的な性格を持つたところの認定、或いはその他の仕事はむしろ労使双方の直接的関係を離れて、公益委員の手によつて妥当に処置するということの方が全体の動向といたしまして正しいのでありまして、この線に沿つての改訂が当然と考えたからであります。それから六十日に及ぶところの冷却期間を認めたということは、却つて政府自体が六十日間爭議を長引かすことを認めたようなものじやないかという御質問もありましたけれども、そうではないのでありまして、六十日以内に当然公益事業の爭議の解決は図るべきであり、又実際問題といたしましても、これ以上に亘るような長期の公益事業の爭議が勝ち得る筈がないのであり、実例といたしましても、この程度で以て労使双方が眞に解決するところの意思を以て協力的に臨んだならば、解決し得るものであり、そういう考え方の下に六十日のこの期間を置いたということは適当である。そういうふうに考えて、これを実現したのであります。
  30. 原虎一

    ○原虎一君 再質問をいたしたいと思います。自席からお許し願いたいと思います。
  31. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) よろしうございます。まだ時間がございますから‥‥。御登壇願います。    〔原虎一君登壇
  32. 原虎一

    ○原虎一君 総理大臣の御答弁は甚だ不満足でありますが、お帰りになりましたから、別な機会に再びいたしたいと思います。鈴木労働大臣の御答弁、御親切になされたつもりかも知れませんけれども、私の質問の要点を外れてお答えになつた点だけを先ず問い返しまして、不満足の点は、いずれ労働委員会においてお尋ねをいたしたいと思います。即ち第二の事務專從者に対するところの使用者の経済的援助、これを打切る結果は、当然労働組合は社会的、國家的任務を果す公の團体でありますから、労働者は文化的、社会的生活に必要なるところの生活費として、これを賃金の中へ入れて要求する運動が当然起きて然るべきなのであります。今まで資本家の援助の理由はいろいろあります。又先程質問されましたところの堀眞琴君が言われるごとく、その時期ではないという考えもあります。併しながらこれを六月までに敢えて断行しようという関係方面の意図もあるように伺つております。從つて労働組合が社会的に立派な活動をするためには、人を要し、財政を要するのであります。從つて賃金にこれを要求して來るところの運動が当然起きて然るべきであつて、こういう運動に対するところの労働大臣の見解を明らかにされたいということを質問したのであります。御答弁を願います。    〔國務大臣鈴木正文君登壇
  33. 鈴木正文

    ○國務大臣(鈴木正文君) 労働組合経営のための諸経費の問題が原さんの言われるように、直接的な賃金問題と結び付く、そういうふうには考えておりません。併しながら一面におきまして、労働組合の從來受けておつた、間接的にしても專從職員の給料その他を以て受けておつたところの経済的援助というものが、この際断ち切られるということにつきましては、大きな影響があると思います。ただ、それを直ちに賃金問題と結び付けて、そうしてどうこうという性格のものではないと思うのであります。     —————————————
  34. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 門屋盛一君。    〔門屋盛一君登壇
  35. 門屋盛一

    ○門屋盛一君 私は民主党を代表いたしまして、今回政府より提案せられました労働組合法、同調整法等の改正案の審議に直面いたしまして、二三点だけ政府の御所信を質して見たいと思うのであります。  第一、この法案は、まだ審議に入らない前から、甚だしい改惡であるから絶対に反対であるという声と、この程度の改正では物足りないから、いつそ改正案を出さない方がいいという声が起つております。私は考えまするに、かようのことは、一つは、この内閣は労働者に最も理解のない内閣であるから、到底労働者の立場など考えた改正はできないという(「異議なし」と呼ぶ者あり)一種の不安から、頭から改惡されるものと決めて掛かつておる労働組合側の声であります。一つは、労働基準法や安定法、労調法等の大幅の改正をして、自分たちの都合のよいようにして呉れるであろうと考えていた資本家、経営者たちの失望の声であると思います。大体現行の労働法規は、我が國産業民主化のために、旧來の資本主義や軍國主義を打破して行くために労働組合の健全なる発達を図らねばならない、言葉を換えて申しますならば、平和日本再建の先駆とし、且つその基盤とする目的を以て生れたものであると思うのであります。(「門屋大統領方歳」と呼ぶ者あり)資本家や経営者から見れば、実に驚くべき行過ぎと思われる点もあり、労働者側から見ましても、その贈物が余りにもすばらしいので、消化し切れなくて、まごついておる点もあるのであります。かくして生れました労働法規も、先程労働大臣その他の言われましたように、三年間という貴重の体驗を経まして、今日の場合特に経済原則を立てようとする今日においては、労資双方の立場からその改正をすることは絶対必要であると思います。又改正しなければならぬ点も数々あるのであります。然るに何故に今回の提出の改正案が、一方からは絶対反対、一方からは物足りないと言われるのであるかという点であります。只今労働大臣からは極めて型のごとく提案理由の御説明がありましたが、この説明において二つの重大な点が明らかにせられていないのであります。  第一点は、三月十四日発表せられたところの政府の試案と、本日提案されましたところの案とは甚だしく重点を異にしておるのでありますが、このことに対し、政府の試案が如何なる理由によつて閣議決定に至らず、今日の改正案を採上げなければならなかつたかという点についての御説明が足りないと思うのであります。この点を説明願いたい。  第二点は、政府は公聽会を開いて各階層の陳述を聽かれておるということを言われておりますが、その結果としてこの改正案の如何なる点にその公聽会の声を採入れられたか。私の見るところでは、このことが甚だ少いのであります。特に労働組合側の意見は殆んど採上げられていない。これは如何なる見解によつて採入れることができなかつたか。以上の二つの点に対し、その経緯について率直に且つ良心的の御答弁を願いたいのであります。(拍手)  労働大臣はこのことに対し、去る三十日衆議院における川崎代議士の質問に対しまして、二月試案と本案とは実質的に変りない旨の簡單なる御答弁があつたのでありますが、私はこの二つの重大なる経緯につきましては、極めて懇切に御説明せらるることが最も大切なる労働大臣の責任であると思うものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手経済原則実行に当りまして労資の完全なる協力を必要とすることは申上げるまでもありません。この完全なる労資の協力を必要とするこの際、労資双方の不満を了解しなければならぬという見地からも、こういう点は十分に御説明になつて、今ここに提出せられたる改正案は、政府が努力に努力をしたものであり、今日の情勢においては是非とも國民に納得して貰わねばならぬというのであれば、一層それだけ熱意のある良心的の御説明をせらるべきであると思います。  第三点は、政府本案修正に應じられる用意があるか否かということをお尋ねしたいのであります。我が國経済再建上どうしても労資一体となつて行かねばならないこの際、労働組合側の意見が余り容れられていないというこの案に対し、絶対反対という意見を持たれておる政党もあるようでありますが、これは一應御尤もと思いますが、併し私はこれらの点に対しましては十分に檢討しまして、修正すべき点は修正せられて行くことが正しいのではないかと思うものであります。徒らに反対反対だとの言い放しではいけない。いくら労働組合の希望でも、経営者側の希望でも、現在の段階においてどうしても容れられない点もあると思いますが、修正した方がいい。修正すべき点もあるのであります。我々はこれらの点に対しましては、各党各派が十分にこの修正点に力を入れるべきであると信ずるものであります。そうして適正な修正案のできました場合は、政府も與党もこれを認めて、大いに同調して、よりよき改正法を決定して、そうして朗かなる労働力の発揚をやらねばならぬと思うのであります。(「修正できなければ反対するか」と呼ぶ者あり)  又提案が非常に遅れたために、審議期間の切迫しました今日から考えまして、審議上実に憂慮に堪えないものがあるのでありますが、大体この内閣は労働問題を非常に軽く取扱つておるのであります。御承知のごとく、予算が出れば大藏大臣は財政上の説明をするという発言を求められて來るのであります。今回の労働法の改正は、我が國の産業再建上重要な法案であります。それにも拘わらず、政府が労働関係法に重きを置かず、政府よりこの提案理由説明するという発言要求がなかつたために、本院は今日漸く議院要求によつて政府から説明を聽いておる。二十八日に提案したという形にはなつておりますが、重要な説明がないから、約一週間というものを審議に入ることができない。かくのごときは政府においても非常にお考えにならなければならぬ。尚又只今までの答弁を伺つておりましても、この答弁が非常に不親切なのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで政府におかれましては、毎度のような独善的の考え方による押付けがましいことのないように、又その場逃れの白々しい答弁等のために不必要の問題を提供せられたりして、貴重な時間を空費せぬよう、十分の御留意を希望いたします。  第四点としましては、私は昨年十月、第二次吉田内閣成立以來今日まで、吉田内閣としての労働政策というものが発表されておらないことに非常に不案を感ずるものであります。又鈴木労働大臣としても、何らの御抱負の発表もないのであります。この点に対しまして、國民として少からず不安を感ずるものでありますから、今日この機会にできるだけ詳細なる御所信を御発表して頂きたいと要求するものであります。  労働者諸君はもとより、経営者側といたしましても、一体この内閣は如何なる労働施策を持つておるのであろうか。第一誰が考えても相当の出血を覚悟せねばならないとするところの、今日の経済原則の大手術に著手しております今日、一体吉田病院の鈴木医長は、如何なる用意の下にこの手術に参加されておるのでありますか。これが分らぬのであります。米窪さんや加藤さんならば、上手か下手かは別問題としまして、大体患者の体質とか、既往症とかいうものをよく知つておられたから、大した方角違いはなかろう。こういうふうに一通り國民に分つておりましたが、今度の鈴木先生は、一体患者の体質や体力既往症等を知つていらつしやるであろうか。どんな診断をして、どんな手当をなさるのであるか。出血が非常に多量な場合、輸血の準備があるのかないのか。こういうことを非常に心配しておるのであります。前労働大臣の増田君に第三國会におきまして、私が労働委員会質問した際に、今度の大問題に対して吉田内閣は立法的措置によつて労働者の安定を図るつもりか、安定施策によつて安定を図るのか、いずれを先にするかという質問をいたしましたときに、増田労働大臣は、それは安定施策の方を先にする、止むを得ず立法の改正はやるのであると、体裁のよいことを言われておつたが、何もそういうことはない。(「それは重大問題だ」と呼ぶ者あり)すでに單一爲替レートの設定を見まして、企業合理化はもう出発しておるのであります。ぼつぼつと申上げたいが、首切りは極めて急速に始まつております。行政整理の首切りぐらいのものではありません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)可なり多量の出血を予想されております。これに対しまして、政府の現在お持合せになつている処方箋、即ち失業保險や緊急失業対策費の二十余億の頓服藥ぐらいのものでは、企業家も労働者も全く不安で不安で堪らないであろうと思うのであります。そこで根本療法を知りたいのであります。私は諸種の労働法案審議に当りまして、甚だ困ることは、政府の労働施策の判然としていない点であります。労働問題を軽くお取扱いになつておる点であります。つきましては、この際政府は如何なる労働施策をお持合せになつておるかをお伺いしたい。特に我が國の過剩人口に起因するところの数百万の潜在労働力を如何に処理せられる方針であるかをお伺いしたいのであります。企業の合理化によつて潜在せる労働力は、表面に失業者として現われて來ると思いますが、政府は如何なる方法を以てこれを基本産業面にその力を能率化して行くかということについて、労働大臣としてのお考えを伺いたいのであります。尚、当面の失業対策としての失業保險と、緊急対策費二十余億円で賄い切れぬというふうになつたときの対策と、その場合最も心配になる資金面、即ち財源の点について、大藏大臣並びに関係方面との了解はできておるのかどうか。以上の点につきまして、先程申上げましたように、できるだけ詳細に明確にお答え願いたいのであります。尚、以上の御答弁を得まして、納得し難い点がありました場合は、都合にて再質問をするということを議長にお願いして置きます。(拍手)    〔國務大臣鈴木正文君登壇拍手〕    〔「藪医者答えろ」「胸がどきどきだろう」と呼ぶ者あり〕
  36. 鈴木正文

    ○國務大臣(鈴木正文君) 政府のいわゆる労働省試案と、それから最後的に出て來た本案との間に著しい本質的な相違があるのではないか、そうであるならば、何故そういうふうになつたのかというのが質問の第一点だと思います。この点につきましては、私共は先程も申しましたように、民主的な自由な組合活動、質、量両面に亘るところの自由にして民主的な組合の助長と活動、それを中軸といたしまして、健全な労働運動を助長して行くと、こういう考えを第一の重点として立案の最初から当つたのでありまして、その根本的な面におきましては、当初の案も、今度の案も、方向に変化はないと考えております。ただ幾つか採上げられましたところの問題、例えば交渉單位の問題とか、或いは幹部組合の問題とかというふうな面につきまして、当初の原案にあつて、そうして最終案にはなくなつたというふうなものが幾つかあります。これらは関係方面意見という点も必ずしもないではないにいたしましても、主として最初から申上げておりましたように、公聽会はただ單に聞き流してやるのか、形式的に公聽会を開いたというだけの意味においてやるのかという御質問も、当時からしばしばあつたのでありまするが、率直にあの当時から申上げておりました通り、條件が許すならば、聞き得るところの考えはでき得る限りこれを採入れて、そうして公正妥当なものに持つて行く、決して彈圧的な組合関係法を作るというようなことは根本的の立場ではないということをしばしば申上げておつたのでありまして、各地の公聽会、それから各方面から寄せられました意見というものをすべて参照いたしまして、そうして除くべきものは除き、簡素化すべきものは簡素化して行くという変化は起きておりますけれども、根本的の変化は起きておりません。と同時に、最初提案の際にも御説明申しましたように、現段階の諸條件に鑑みまして、段階的に妥当なる改正を図つて行くという考え方も加えたのでありまして、根本的方向が変化しておるとは考えておらないのでありまして、この点御了解を願いたいと存じます。  更に具体的にどういう点においてそれでは公聽会その他の意見を採り入れておるかという御質問がありましたが、これは公聽会だけでなくて、各方面意見を公平な立場で採り入れておることは只今申上げた通りでありまするが、例えば一二の事例を挙げて申しますならば、第一に労働者諸君の側からも、使用者諸君の側からも、中立側の側からも、共に反対であつたところの只今申上げましたところの幹部労働組合というふうな観念は、この原案から排除して最終案に盛り込まなかつたという点が例えばその一点であります。又第二に團体交渉の單位制という問題、これも先程申しましたけれども、これも大体において労使双方のみならず中立側からも、反対若しくは生硬不熟の考え方で十分熟しておらないという御意見がありましたので、この点も削除したという点も一点であります。それからこれは労使共に強い意見が述べられたのでありまするが、労働委員会の準司法的機能については、さつきの御質問にありましたように、公益委員がこれに当ることになつておりました。そう書いただけでありましたが、その他に、必要な場合には労使の委員が審問に参與することができるという意見も公聽会の各方面意見として最終案に採り入れておるのであります。第四に、不当労働行爲に関する有効且つ適切な手続を設けるべきであるという点、この御意見を採り入れたつもりであります。第五に、團体交渉拒否の事由の列挙について反対がありましたので、これは「正当な理由なくして」という簡單な言葉にいたしまして、幾つかのケースを沢山試案の中には列挙したのでありまするけれども、どこまで列挙して行つても、最後の縄目のところに行きまするというと、不分明の問題が出てくる、こういう見方が各方面から主張されたのでありまして、この列挙主義を取止めまして、「正当なる理由なくして」というように変えた点も、公聽会の意見を大体採り入れた点であるのであります。それから労使共に反対しておつたところの労働組合に対する官廳の関與という問題は、これはもう思い切つて削除してしまつておる。これもさつき御説明の中にあつた通りであります。これも公聽会の意見であります。それから爭議行爲の予告期間規定しておつたのであります。これも公聽会の意見に基いたのでありまして、爭議行爲の予告期間という考え方は削除したのであります。それから、これはまあ末梢的な問題でありまするが、條文が極めて冗漫であつて、大法典のような形をしているけれども、要らない部分があるのではないかというふうな御意見もありましたので、それは極めて簡素にして、最初百條に余つたところのものが只今申上げましたような簡素な形になつた。本質的の変化ではありませんけれども、以上のごときが大体今数え得るところの、公聽会に対して意見をどの程度具体的に採り入れたかという問題に対する一應の答えであります。  尚、改正に應ずるところの意向が政府にあるかどうかという問題であります。國会それ自体の立法権に関しましては、全く政府が干渉すべき余地があるべき筈はない。これは國会の自由なる御意思によるべきでありますけれども、政府側といたしましては、只今も申しましたように、すべての角度から檢討を重ねたのでありまして、應じないとまでは言い切れませんけれども、この原案において進みたいという意向を持つております。  もう一つ最後に御質問のありました失業問題、直接的にはこの法規の問題に関係がないようにも思いますけれども、御質問でありますので、概略だけの考え方をお答え申上げます。これは、失業者の数がどれだけあるかという考え方に至りましては、例えば私共のすでに先般來発表している数、或いは共産党諸君が言われますところの一千万というような数、その他いろいろな見方がありますけれども、この数につきましては、すでに本会議場、或いは委員会等で発表しましたあの大体の数が今のところは、最終的に決定した行政整理案、定員法あたりの関係から申しましても、一應変更しなくとも、あの数が大体当時の推定ではありましたけれども、現状においてはあの数の下に立案をして措置を講じて行けばいいと、こう考えております。その大体の考え方は、飽くまでも國民経済を新らしく拡大強化されたところの雇用面の引上げられた面に、最終的に失業者諸君が吸收し終えるのでなければ、失業問題は徹底的に片付かないというのは、これは当然のことであります。それは本年内に出て來るところのあの程度の失業者に対して、本年度内に我が國民経済の拡大と、それから雇用面の増大とが應じ得るかという問題でありまするが、これは安本当局及び商工省その他とも十分新予算の下に訂正される五ケ年計画をも併せて檢討した結果、今年度内に全部が吸收し終り得るというふうなことは到底考えられない。常識的に考えてもそうでありまするが、実際に数字的に檢討した結果もそうであつたのであります。現在大体計算したところの基礎数字は、恐らく四十万くらい新らしい國民経済の雇用面の増大というものが本年度内に実現されるであろう、そのうち二十万人は輸出産業の方面、その他の方面で二十万人、併せて四十万人くらい、來年度になりまするならば、あの予算及び計画に基きますると、百十万人ぐらいの新らしい雇用というものが生れて來るであろうという、ここまでの見通しと計画は一應でき上つたのであります。そういたしますると、大雜把に申しまして、この吸收面の増大に対應して、本年度内に生じて來るところの、失業者をどういうふうに処置して行くかという問題でありまするが、仮に百四十万乃至百八十万の失業者、その中に何パーセントの実際に就業を要望する者があるかという問題でありまするが、仮に七十%と押えましても、百万乃至百三四十万のこの人たちの配分は、二十五年度の最終にまで行きまするならば、政府の施策が活溌に展開されるならば、そういう場合においては、最終的に吸收し得るところの計画と見通しとを立て得る。その中間においてはどうするかという問題は、四十万の吸收の外に余つて來るところの人たちは、一應先ず第一線的には失業保險によつて受止めなければならない。この失業保險によつて現在受止め得るところの数は、決予算に計上してある二十一億円に対しての吸收する数というものは三十万人でありますけれども、失業保險の経理は極めて健全なのでありますから、これをフルに動かして行きますならば、そうしてそれに対應して三分の一の國庫負担を政府が出し得るならば、百十万人はこれを吸収し得るところの計算は成立つのであります。先に七十万人までは自信があると申しましたのは、百十万人の数を採らず、かれこれ見合せまして、極端の場合はここまで來ても大丈夫だという意味であつたのであります。勿論言うまでもなく現予算には二十一億円きり計上されておりませんけれども、これは失業者がそれだけ出て参りましたときには、國家の義務費でありますからして、当然如何なる方式を以てしても捻出して、そうして失業者に対應しなければならないのでありまして、現在予算に計上されておる三十万人の外に、七十万人ぐらいは必ず、必要の事態が生じれば必ず措置し得ると考えておるのであります。併しながら失業保險によるところの失業者の吸收というものは、最も消極的な方法であることは勿論でありまして、國民経済への最終吸收に備えるその段階においての対処の処置は、当然言うところの直接的な失業救済事業でなければならないのでありまして、この点につきましては、門屋議員にも御審議を願つておりまするように、緊急失業対策等の法律を制定いたそうとしているのでありまして、先ずでき上りました現予算に計上されておる八億八百余万円で足らないのは御承知の通りでありまして、実情に遅れないように、必要な経費を計上すべきであり、これはいずれの内閣と雖も、かかる情勢の下においては絶対に出さなければならない経費であることは勿論であります。この点につきましては、大藏大臣及び閣内においても十分の了解を得ておるということを、はつきり申上げますると共に、関係方面ともこれは100%までは行きませんけれども、必要な場合には財政的な処置を講ずる交渉をも具体的に、否定的な形でなくて進めつつあるということを申上げます。    〔問屋盛一君発言許可を求む〕
  37. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 再質問ですか。よろしうございます。    〔門屋盛一君登壇
  38. 門屋盛一

    ○門屋盛一君 私のお尋ねいたしましたことに対して、都合のいいところはくどくどと並べて御説明になるし、都合の惡いところは御説明活なかつた。(「そうだ」と呼ぶ者あり)殊に開捨てならない一言がありましたので、再び登壇せざるの止むを得ざることになりました。それは、承わつておりますと、本法案に直接の関係はありませんがという前置きの下に、失業対策について若干の政府の考え方をお漏らしになりました。これがそもそも私は労働大臣として言い得る言葉であろうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)一般の労働政策は明らかにせず、失業対策を明らかにせずして、労働者関係の法律案をこの國会審議して呉れということを言い得ることであるか。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)このことについてお伺いしたい。それから私の質問の第三点にありましたように、予算が出た場合は大藏大臣はここで財政方針の演説をなさる。吉田内閣の鈴木労働大臣が労働問題を重要にお考えになつておつたならば、なぜ労働法をお出しになる……。まだ本会議には出ておりませんが、委員会に沢山の関係労働法案が引掛つている。この機会に、何故二十八日に國会発言を求めて、この説明をみずからなさらなかつたかということについての御答弁がない。(「そうだ」と呼ぶ者あり)数字のことは委員会で十分にできるのです。この嚴正なるところの本会議においては、総理大臣又は主管大臣として、この大きな問題に対して答弁して貰いたい。細かいことは委員会で承わる。(「そうだ」と呼ぶ者あり)でありますから、何故に二十八日のこの労働法に対する説明発言要求をなさらなかつたかということを、それから何でこの労働政策と失業対策というものが、労働法に関係がないかということを、はつきりして頂きたい。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)以上。(拍手)    〔國務大臣鈴木正文君登壇
  39. 鈴木正文

    ○國務大臣(鈴木正文君) 御指摘の失業問題のお答えを申上げる前段の言葉は、ただこれは法律自体の問題ではありませんでしたが、という程度の軽い言葉でありましたので、どうぞその点御了承願いたいと思います。尚二十八日になぜ提出しなかつたか、実はこれは(「提出じやない、説明をなぜ求めなかつたか」と呼ぶ者あり)二十八日の夕方頃初めてアプルーヴアルが最終的のものが來たのでありまして、そうして、そのときに衆議院にかけるかどうかという問題が考えられておりましたのが、衆議院にもかけられなかつたというような形になつて、御承知のように衆議院も遅れたのでありまして、アプルーヴアルがかつかつのところで参つたので、それに対する私共の関係方面との折衝の十分でなかつたという点もお叱りがあるかも知れませんが、時間的関係にはそういうふうな関係になつておりましたので、御了解を願いたいと思います。    〔門屋盛一君「了承できない、議長」と述ぶ〕
  40. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 門屋君、再質問ですか。
  41. 門屋盛一

    ○門屋盛一君 再質問ですが、自席から発言許可願います。  今私のお尋ねたのは、二十八日に労働法提案の準備ができたのに、なぜ本会議に政府発言要求をしなかつたかということを尋ねている。言い換えますならば、現内閣はこの労働法という大きな問題を本会議に発言を求めて説明する意思があつたのかないのか。こちらの要求によつて初めて今日出て來ている。それをどうしてやらなかつたのか。率直に謝まりを言つて貰いたい。(「その通り」と呼ぶ者あり)その外のことは言う必要はないと思う。(「その通り」「審議未了になつつて責任は負わんぞ」「参議院を無視したのだろう」と呼ぶ者あり)    〔國務大臣鈴木正文君登壇
  42. 鈴木正文

    ○國務大臣(鈴木正文君) 只今も申しましたように、二十八日夕方にアプルーヴアルが参りまして、二十九日は御承知の通りに休みでありまして、それから三十日に提案しろということは、衆議院の方では当時議院運営委員会を開いて盛んに催促されておつたわけであります。三十日に御承知のように衆議院の運営委員会がありまして、(「それは分つている、発言する意思がないのだ」と呼ぶ者あり)参議院の方に対しましては、この問題を参議院が同じ形で採上げられるといたしまして、いつの機会に御説明申上げるべきかということは考えておつたのでありますが、それから休みが続いてしまつたのでありまして、極めてその点遺憾でありまして、その点参議院の皆樣に遺憾の意を表しまして、お詑び申上げます。    〔門屋盛一君「まあ了承だ」と述ぶ、笑声〕
  43. 佐々木良作

    ○佐々木良作君 議長、議事進行に対して……会議の継続の定員があるかどうか調べて貰いたいと思います。(「こんなに歯が抜けたようでは……」と呼ぶ者あり)
  44. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 佐々木君の御発言に対しましてお答えいたします。会議が開かれました後におきましては、殊に質疑などの場合におきましては、一時的な場合に限り定足数を問題にしないということは本院の前例となつております。この際議事の都合により暫時休憩いたします。    午後三時十三分休憩      ——————————    午後四時五十五分開議
  45. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  議長は休憩に際しての発言を取消し、これを、定足数を欠いておりますから暫時休憩をいたしますに改めます。  休憩前に引続き労働大臣説明に対する質疑を続けます。中野重治君。    〔中野重治登壇拍手
  46. 中野重治

    中野重治君 労働組合法案と労調法の一部改正法律案についての共産党簡單質問をいたします。これは質問は非常に沢山ありますが、二、三の單純なことについてお尋ねします。それで晝前から続けておりますが、私としましては労働大臣に前以て注文を付けて置きたいのですが、尋ねられたことについて答えて頂きたい。(「そうだ、その通りだ」と呼ぶ者あり)これは聽かれたことに対する答え以外のことを喋つてはならんというわけでは決してありません。(「賛成」と呼ぶ者あり)併しそれは自由ですけれども、外のことを長く喋つて肝腎の答えを横流しないように願いたいと思います。なぜこういうことを言うかというと、(「本論に入れ」と呼ぶ者あり)これが本論の中の重要な部分です。この間うちからの労働委員会で我々が非常に難澁をしておる。これは労働大臣ばかりでなく、政務次官でも、確か齋藤さんとおつしやつた説明員までも含めて、いろいろ質問が出るけれども、答は出ない。仕方がないから、これは、こうでしようということを念を押すと、そうでございますと言う。先程なんかは門屋議員から謝まりなさいということで、謝まるというようなことになつております。私は時間もありませんし、大臣のために答を用意して來ておるわけではありませんから、どうか大臣の方で答えて頂きたい。(「その通り」と呼ぶ者あり)  問題に入ります。  第一の問題は、新らしい労組法、労調法の改正案、このことと、その他の労働関係法案との根本関係はどうなつておるかということです。これについては先程も話がありましたが、先程お話になつてことでなく私はお尋ねしたい。例えば政府は緊急失業対策法案を出していますが、あれを調べて見ると、あれは実際には永久失業法というものになつている。政府説明を聽きますと、行政整理の名で沢山の、何十万という人間の首を切る。そうして失業者が出た場合には、何ものにも優先してこれを助けなければならぬと、こう言つております。そこで四月の二十五日、二十六日の労働大臣説明を聽きますと、あのときはまあ四十万の頭脳労働者が首になるという。この四十万をどこへ持つて行くかというと、今に輸出が盛んになるだろうから輸出産業へ持つて行く、輸出産業が盛んになればサービスの仕事が殖えるからそこにも廻す。この輸出産業とサービスで二十万廻す。それからあとの二十万はどうするかというと、研究の結果、戰災による燒跡の地ならし、煉瓦の取り片付け、それから都市衞生のためのどぶ浚い、公園の整理、掃除などに廻す。こう言つております。これで四十万人を吸收すると言つている。これが緊急失業対策法案の根本精神です。そこで、どうなるかというと、爲替レートが決まつたから輸出が盛んになるだろうと言うけれども、これはなかなか疑わしい。反対の氣味合いも現に現われております。よしんば幾らか盛んになるとしても、労働大臣その人が、輸出の元は低コストにあると言つておりますから、輸出産業の低コストのための低賃金というものは避くべからざるものになる。サービスなんかの産業というものは、これは賃金というものは名ばかりのものになりましよう。それだから一旦二十万人の首を切つて、その上に非常に大きな低賃金に引込もうという仕掛けになつております。輸出産業が盛んになれば、そこに労働市場の方に盛んに失業者が集まりまして、盛んに労働地獄が開かれる。失業地獄が開かれるということになる。一方どぶ浚い、それから地ならしはどうかというと、これは一層ひどい。一体こういうことは今日までに政府がやつて來ていなければならないことであります。それをやつて來ていかなかつた。そこに氣が付いて、人を使つて正当な賃金を拂つて今日どしどしやらなければならないが、首を切つて、その上、失業者をそこに廻すということで今日までやつて來なかつた。今日尚やつていないことをごまかしてはならないということで肩代りは断じて許すことができない。一方どぶ浚いとか何とかということを考えて見ましても、地方財政は非常に貧しいし、それから公共事業費も首切られ、手を切られ、足も切られ、胴も切られているのですから、これは公園の問題なんかなかなか片が付かない。それですから從來日本では公園、火葬場というふうなことをやる人たちは、まあ惡い言葉を使いますと、乞食に毛の生えたようなことをやつておつたことになります。ああいうところに頭脳労働者の首を切つて、そうして持つて行こうとする、これが緊急失業対策法案であります。それですから、この緊急失業対策法案というものは、成る程、口では首を切せれた人は何ものにも優先してこれを救済しなければならんと言つているけれども、実際はこういうことになる。失業者を使つて、そうしてそれを半失業状態に永久化する。固定化する。そこで、こういう緊急失業対策法案、即ち実際は永久失業法を出している政府が、一方で今度は新らしい労組法案を出している。そうして労働大臣はこの労働省の宣傳新聞の「週間労働」というものに、さつきも演説でいろいろありましたが、これによつて組合の民主性、責任性、自主性に十分確立ができる、幸いにこの法案國会を通過したならば、新らしい労働問題は適切に調整でき、経済原則実行に当つて結局は労資双方にプラスになるだろう。こういうことを言つている。組合の自主性を確保しようとする、そういう政府が、一方で永久失業法案を出そうとしているということになれば、ここは平仄が合わぬということをなる。この永久失業法というものは確実でありますから、そこで、この平仄が合わぬものを合せようとすれば、この新らしい労働法案は、これは組合の自主性を破壞し、労資双方のうちの大資本家だけがプラスになるということになれば、これは平仄が合うということになります。そこで、この右と左のような、この二つの法案の根本関係が労働大臣においてはどういうふうに調和を保つているか。その間の根本関係を説明して頂きたい。こう思います。  次に法案そのものに入ります。この法案については、やはり先程説明があつて、要らぬ條項は削つた、大分削つたが根本は変らないというふうな説明がありましたが、そこで、どういう條項が削られたかということを見ますと、沢山削られておりますが、例えば現行法の二十一條、二十五條、それから労調法の四十條が削られております。それだから、我々はここで要らぬものが削られたかどうかを見るために、二十一條、二十五條、四十條が何であるかを見ればよい。二十一條はこうなつております。「労働協約締結セラレタルトキハ当事者互ニ誠意ヲ以テ之ヲ遵守シ労働能率ノ増進ト産業平和ノ維持トニ協力スベキモノトス」、労働協約は双方の側が遵守しなければならぬ。こう書いてある。第二十五條は「労働協約ニ当該労働協約ニ関シ紛爭アル場合調停又ハ仲裁ニ付スルコトノ定アルトキハ調停又ハ仲裁成ラザル場合ノ外同盟罷業、作業所閉鎖其ノ他ノ爭議行爲ヲ爲スコトヲ得ズ」、平和條項ということになりましよう。だから裁定が決定しない前に勝手に資本家の方で工場閉鎖をやるということはできないということになつておる。それから労調法の四十條というのは、「使用者は、この法律による労働爭議の調整をなす場合において、労働者がなした発言又は労働者が爭議行爲をなしたことを理由として、その労働者を解雇」することができない。資本家に氣に入らぬ言葉遣いをしたからといつて労働者の首をちよん切つてはならん。こういうことです。これが皆削られておる。そうして、これを削ることによつて、不必要なものは削られ、自由な、民主的な、自主性ある組合がその発展を確保された。こう労働大臣は言つておる。これは実際そうであるかどうか。問題は簡單でありますから、労働大臣もお答えが願えるだろうと私は思う。ここで実際これが削られるなれば、双方にプラスするか、それとも資本家にプラスするか、私が説明するまでもないでしよう。問題が紛糾した場合にも、或いは労働者の言葉遣いが氣に喰わぬというような、そんな簡單なことからも、資本家の方がいつでも拔打ち的に工場を閉鎖することができる。首切りをすることができる。この拔打ちをやるということが、この二十一條、二十五條、四十條が削られたことから、労資双方の側の資本家の方がプラスです。労働者の方は拔打ちに首を切られる。拔打ちにロツク・アウトを喰う。資本家は簡單な言葉遣い一つで拔打ちに首切ることができる。工場閉鎖ができる。これがどうして労働組合の自由な発展を確保するということになるか。これを説明して欲しい。そうして、これは資本家の中でも余程惡い大々資本家の利益のためにということを、政府が労働者の犠牲においてやろうとしておるのでなければ、この点は説明されないと思うが、外に説明のしようがあるかどうか。政府はさまざまな労働組合彈圧を考えておるようであります。今日廻つて來た屋外廣告物法案というようなものを見ても、労働組合がビラを貼り、ポスターを貼り、宣言文を貼るということを、理窟をこねて法的に禁止しようという陰謀が明らかに現われておる。そういうものの関係においてこの点を説明して欲しい。削られることによつて無用なものが削られるのか。併しながら実際について見れば、これが削られることによつて労働者は拔打ちに失業の危險にさらされておる。ここはどうなるか。こういう簡單なことであります。  次に第三は、今度の新らしい法案によると、政府は労働組合というものを許可制、認可制に引込もうとしておる。何か外の営業のようなものにしようとしておる。これは第五條、第十九條に関係します。そうして若しこの認可する、許可をする、適格を認めるというのは、その仕事が労働委員会に與えられておつて、労働委員会がこれは駄目だということになれば、駄目だと言われた労働組合は労働組合として受け得る一切の利益から排除されなければならぬ。アウト・ローを宣言される。こういうことになつております。そうして、この労働委員会はどこがこれを握るかというと、中央労働委員会は労働大臣が握る。地方労働委員会都道縣知事がこれを握る。これを握つて、これを運用して、上から運営するということになつております。それから先程労働大臣は他の方の質問の対する答えの中で、官廳の干渉を思い切り切つて捨てた。そうして組合の自由なる発展を考えておるのだと言うておるけれども、その言葉で実行しようとしておることは。労働大臣都道縣知事が、上から中央及び地方の労働委員会を握つて、そうして、それによつて自分の一存で組合そのものの適格性の認可さえも左右できる。こういうことになります。これは今度の戰爭中、日本の軍閥が産報を通してサーペルと役人とで労働組合を上から握り、これを左右し、延いては、これを叩き潰してしまつた。その方式です。実際、日本の労働組合が今日まで発展して來ることができたというのは、こういう軍閥方式が木端微塵に打碎かれて、それを乘越えて進んで來たからです。ところが今労働大臣は、官僚の干渉を取除いて、組合の自主的に自由な発展を念願とするという一方で、この軍閥的、産報的方式を復活しようとしている。この間の関係はどういうふうに我々が納得したらいいか。このことを説明を願いたい。  尚、最後に、この法案が出るという話が始まるや否や、日本の全労働者がこれに反対の声を揚げています。これは日本の全労働者であつて、労働組合のいろいろな系統とか、或いは個々の労働者の政治的、思想的立場ということに拘わりなく、それらを越えてすべてが反対している。そこで日本の生産を復興して行く、そうしてこの能書にもあるように経済原則を実行して日本の生産を挙げて行くというためには、どうしても日本の労働者の結束した賛成と努力とを確保しなければならんのですが、その肝腎の労働者階級が全体打つて一丸となつて反対している。このことをどうして政府は默殺し、無視して、労働者からは利益を削除し、資本家には拔打ちの権利を合法的に與えようとするこの法案を出さねばならんのか。又出したいのか。これが一つ。それから日本の労働者階級はこういう條件の中で非常に苦しいながら自己の生活を戰いによつて確保して、そうして自分たちの力でこそ日本の生産は復興しなければならない、こういう方向へどんどん進んでおります。それですから、今まで爭議その他に対して政府側、会社側、官憲側から加えられた非常に乱暴な仕打ち、例えば東洋時計の上尾のときなんか人が殺されていますが、そういうことをも堪え忍んで、そういうものに恐れず怯まず自分の道を歩もうとしておる。ところが、この力を蹂躪して、本当に労働大臣がさつき言つたような日本の産業の復興ができるかどうか。これは普通の日本人が考えるとできないことですが、どうして、できるというふうに労働大臣は考えるか。このことを考えることのできるその材料を示して頂きたい。又日本の労働者階級がこういうべら棒な改惡に泣き寢入りしてしまうものと思つておるのかどうか。こういうやり方で湧き寢入りさせようとするその方式こそ、日本の労働者階級の統一された戰線による非常に大きな根柢的な反撃を我々から呼ぶ起すものとは感ずることができないかどうか。そのことを答えて頂きたいと思います。(拍手
  47. 松平恒雄

    議長松平恒雄君) 議事の都合により休憩いたします。    午後五時十四分休憩      ——————————    午後六時七分開議
  48. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 休憩前に引続きこれより会議を開きます。  議事の都合により本日はこれにて延会いたします。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後六時八分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 飲食営業臨時規整法   案  一、日本國有鉄道法の一部を改正す   る法律案  一、日程第二乃至日程第三十五の請   願及び日程第三十六乃至日程第四   十五の陳情  一、労働組合法案及び労働関係調整   法の一部を改正する法律案提案   理由説明  一、労働組合法案及び労働関係調整   法の一部を改正する法律案に対す   る質問