○奧主一郎君
只今議題となりました
昭和二十一
年度歳入歳出総決算及び
昭和二十一
年度特別会計歳入歳出決算について、決算
委員会における
審議の経過並びに結果を御
報告いたします。
御
承知の
通り昭和二十一
年度の決算
報告は第二
國会に
提出され、決算
委員会における
審議は相当進行しておりましたが、当時行政機構の改革に関する多数の
法律案審議のため相当の日時を費したので、
審議未了に終り、第三
國会以後におきましては、常任
委員会の
組織変更がありましたことと、会期が短かつたために
審議未了となり、遂に今回に至
つてその全部を
審議し終つた次第であります。
審議が遅れました右の
事情につきまして、予め御了承を願いたいと思うのであります。
先ず
歳入の部について申上げますと、総決算に計上してありまする
歳入決算額は、経営部三百二十三億余円、
臨時部八百六十五億余円、合計一千百八十八億円であります。これを
歳入予算額と比較しますと、経営部におきましては三十三億余円を増加し、
臨時部では三十四億余円を減少し、結局一億余円の減少とな
つております。次に
歳出の部を見ますると、
歳出予算額は、一千百九十億余円で、これに前
年度からの繰越額二億余円を加えますと、一千百九十三億余円となりますが、そのうちから支出額一千百五十二億余円と、翌
年度繰越額十九億余円を差引きますと、結局二十一億余円の不用額を生じております。これらの詳細は決算書類について御覧を願いたいと思います。
次に会計檢査院が、法令若しくは
予算に違則し又は不当と認めた事項として指摘しておりますもののうち、特に重要であり、内閣に対して將來の注意を促すため特に
意見を附すべきものと認めましたものについて、その要点を御
報告いたしたいと存じます。
その一は、元
臨時軍事費
特別会計に関する件であります。これに属する
歳入及び
歳出は、
昭和二十一年
臨時軍事費
特別会計の終結に関する件というポツダム勅令によりますと、
收支の判明した金額は、これをその判明した
年度の
一般会計の
歳入歳出に組入れて整理することに
規定されておるのに対し、内閣の決算
報告では、これを「二十一
年度に組入整理した」と記載しながら、実際にはその処置をなさず、別途に計算してこれを総決算に附記しております。本
特別会計の
昭和二十一
年度歳入は一億余円、
歳出は二百十五億余円でありますので、
一般会計の
收支計算は前に申しましたように黒字決算のように見えますが、ここに二百億円以上の
赤字が存在しております。この決算の仕方は明らかにこのポツダム勅令に
違反する
措置であります。
その二は、
收入未済額が多額に上り、而も年々増加の傾向にありますことは遺憾であります。
一般会計における
收入未済額は百十五億余円に上り、その調定済額に対する
割合は八%余に当り、前
年度の
割合四%に対して二倍にな
つております。
特別会計においても同樣、
徴收成績は不良であります。殊に
租税のみについて見ますと、
一般会計と
特別会計とを合せて未
收入額百五十七億余円に上り、調定済額に対し約二五%に当り、前
年度の八%に比し非常な増加であります。内閣は、我が國の困難なる
財政の
現状に鑑み、
收入金の
徴收成績の改善のため格段の努力をなす必要を認めます。
その三は、繰越金の問題であります。経費の
年度区分を紊つた事例は殆んど全部の省においてこれを見出し、殊に司法省においてその件数が多いのであります。繰越金の承認を余り自由にすると、或いは思わぬ弊害を生ずる虞れもあるかと思われますが、
反対に余り嚴重に失するときは、虚僞の口実を設けたり、或いは虚僞の
報告をしたりして、無理に
予算の消化を図ろうとするようになり、延いては経費の
年度区分を紊るなど、会計法規に
違反した
措置を講じ、種々弊害を生ずる源となるのであります。その故に、事業計画の示達の敏速、
予算の配賦、繰越の申請及びその承認につきまして改革を要するものがあると認めます。
第四は、
予算に積算なきに拘わらず、他の費目を流用し、
予算の目的外に経費を使用する等、会計法規を紊る事例は殆んど全部の省に存在し、特に逓信省などが甚だしいのであります。内閣は会計法規を嚴守して、將來重ねてこのような事故の起らないよう、十分注意を加うべきであります。但しこの
違反事項のうちには、
事情諒とすべきものもありますが、眞に必要なものについては
予算に計上するの
措置をとるべきであります。
その五は、特殊物件及び放出物件の処分については、終戰直後の異常な時期に処置を急ぐという特殊
事情がありましたので、多少の混乱を生じたことは止むを得ないことではありますが、違法又は不当の事件が多か
つたのは遺憾であります。これらの物件の処置は、今日では大部分終了しておりますが、尚今後整理を要する問題が相当残
つておりますから、今後の処置については遺憾のないよう、内閣は格別の注意を拂う必要があると認めます。
特殊物件の中で、廃兵器類の賣拂につきましては、兵器処理
委員会に一括して取扱わせたのでありますが、その方法が甚だ不適当でありましたので、今日では、この
委員会の業務を停止させ、これを産業復興公團の取扱わせておりますが、この
委員会の残務整理については、内閣は特に嚴重な監督をなす必要があると認めます。
尚、内務省において鉄鋼類等を賣拂つた場合に、賣拂のときの公定價格によるものを
國庫の
收入となすべきであるにも拘わらず、價格安定資金を捻出するため、これと異なる取扱をしたことにつきまして、当局の説明では、この方法が当時の
事情に照して最良の方法であつたし、内務省、物價廳、大藏省、商工省の共同責任で行な
つたのであると言
つておりますが、この異例な取扱をしたことは適当でなかつたと認めます。又その收納未済額が多額に上
つていることも遺憾であります。
その六は、
終戰処理費の大部分は工事費及び物件調達費でありまして、その支出額は四百億円近くに上り、その多くは概算拂で支拂われていますが、その精算が著しく遅延していたり、会計の経理が著しく不良なものがある等、経理の改善を要するものが多いのであります。
終戰処理費は、その金額が多額に上り、且つ特殊の
事情もありますから、内閣は特に注意して、その経理事務を的確に且つ迅速に整理するよう、その改善につき最善の努力をなすべきであります。
その七は、補助金の支出額は多額に達しておりますが、その使用の実績を見ますと、或いは補助の條件に適合しないものに交付し、或いは事業
実施の程度を考慮せずして、徒らに過大に交付する等、
措置よろしきを得ないものが多いのであります。特に顯著なものは、大藏省專賣局の自給製塩設備に対する補助、農林省の各種の補助であります。又精算遅延のため補助超過額の返納に至らないものがあり、その特に著しいものとしては、内務省等において
昭和二十
年度までに支出した防空関係の補助金は、終戰後二年余を経過した時において、未だ大部分が精算未了であるのであります。
凡そ補助金の交付に関しましては、決算
委員会の昨年の審査
報告にも記載されております
通り、その目的達成のため効果的に支出するよう、内閣は更に十分の注意を拂うべきであると
考えるのであります。
その次は官有物についての問題であります。物品の経理は現金に比して
從來一般に軽視された傾向があり、物品出納簿の記帳整理も十分でなく、又帳簿外の物品を保有するとか、或いはその出納保管の上に適当でないと認められることが少くないのであります。名古屋財務局で木材の管理よろしきを得ず、多量の腐蝕材を生じたこと、或いは靜岡刑務所等で多くの物品を失つたこと、或いは東京逓信局で久しきに亘り官有物の使用料の決定及び
徴收をしなかつたこと等がその主なものであります。須らく内閣は物品経理の改善につき十分注意を加うべきであります。
その九は出資團体に関するものであります。庶民金庫は大藏省の監督に服するものでありますが、
政府の保証がある債券であるという
理由で、多額に上る帝國燃料興業債券を買入れております。併し当時の
事情から見まするならば、不良の社債であることが明らかであり、而も結局七割程度の評價損を生じたのでありまするから、資金の運用よろしきを得ないものと認めざるを得ないのであります。
又農林省の監督に服しておりまする日本蚕糸統制株式会社はその清算に当
つて、本來の業務を逸脱して製造していた製品の大部分を賣却し、又解散記念品代等の名目で無償で拂い出し、且つ國において
負担すべきもので仮拂金として整理して來た生糸檢査所の戰災復興費を寄附金として損失整理したこと等は、
措置当を得ないものと認める次第であります。資金の運用につきましては、決算
委員会の前
年度審査
報告書において嚴重な注意をなすべきことを指摘しているのでありますが、内閣は出資團体の資金の運用に関してもその適正を期するため嚴重な監督を加える外、一般に出資團体に対しては、
從來に比し、更に嚴重且つ適正な監督を行うことが肝要であると
考えるのであります。
その十は、大藏省專賣局において、補助條件に適合しないものに補助金を交付したものがあること、並びに
予算の目的外に経費を使用したものがあることにつきまして、專賣局ではすでにその責任者をそれぞれ訓告或いは注意の処分に付しているにも拘わらず、当
委員会の席上における説明の際には、その処分に関する事実を默祕して、これらの
措置が正当であつたことを主張しておるのでありますが、このような当局の態度は実に遺憾であります。
委員会に対する
政府当局の態度はまじめで誠実でなければならんのでありまして、この点、当局の深き反省を
要求するものであります。(
拍手)
尚遵法の府であり、範を公に示すベきである司法省におきまして、幾多の会計法規の
違反を行な
つていること、及び決算
委員会の前
年度審査
報告において嚴重な注意を受けた運輸省において、引続き多くの
違反事項を繰返していることは、これ亦遺憾に堪えないところであるのでありまして、当局の深き反省を望む次第であります。
以上は内閣に対し將來の注意を促すため、特に
意見を附した重要問題でありますが、会計檢査院の檢査
報告の中に、「法令若しくは
予算に
違反し又は不当と認めた事項」として指摘されております事件数は、
昭和二十一
年度及び即往
年度分では内務省所管で二件、大藏省所管で百十九件、司法省所管で七件、文部省所管で二件、厚生省所管で四件、農林省所管で五件、商工省所管で四件、運輸省所管で十件、逓信省所管で十一件、及び出資團体に関するもの二件、合計百六十六件に上り、
昭和二十
年度の二十二件に比し著しい増加であります。これらのいわゆる批難事項のうち特に重要と認めた事項につきましては、以上御説明申上げましたが、それ以外の多くの事項につきましては、いずれも会計檢査院の檢査
報告とその見解を同じうするのであります。尚、批難事項の詳細につきましては、会計檢査院の檢査
報告書で御覧を願いたいと思うのであります。決算に関し以上述べました事項以外の事項につきましては、別に
異議はなか
つたのであります。
最後に申上げたいことは、会計法規に関する
違反事項は、
昭和二十一
年度において前述の
通り二十
年度に比し著しく増加しておるのでありますが、
昭和二十二
年度においては更に著しく増加しておるのであります。これは終戰以後の混乱が尚靜ま
つていなかつたこと、官吏の会計経理に関する観念が散漫にな
つていること、その他いろいろの原因に基くものと思うのでありますが、誠に寒心に堪えないところであります。よ
つて内閣に対し次の事項を要望する次第であります。
内閣に対する要望事項
会計法規に関する
違反事項は、年々寧ろ増加する傾向にあることは、甚だ遺憾である。
内閣は、会計法規に関する
違反を防止するために、最善の諸方策を講ずべきこと、前述の各
意見に対しては、その実現を期するため、速かに最善の具体的
措置を講ずべきこと、及び責任者に対する処分のうちには、
違反の内容が相当重大であるにもかかわらず、その処分が軽きに失するものがあると認められるから、責任者の処分を嚴重、適正にするよう
措置を講ずべきことを要望する。
決算
委員会は愼重に
審議いたしました結果、全会一致を以て以上述べました
通り議決いたしました。
右御
報告申上げます。(
拍手)