○波多野鼎君 私は
日本社会党を
代表いたしまして、
政府提出、
衆議院送付の
予算案に対しまして反対の意向を表明するものであります。
本
予算案につきましては根本的に論ずべき点が非常に多いのでありますが、先ず我々がこの
予算案を見まして、一番現われておるところで問題となると思われる点は、先ず第一に國民所得の見積りが過大に過ぎるという点であります。我が國が今年度におきまして單一
爲替レートを設定する、即ち円の通貨價値の安定を図るということを國策の基本に置いて立てておるのでありますが、この通貨價値の安定ということは、即ち裏を返せば経済の一應の混乱、つまり今までの
日本の経済の行き方に対しまして急激な歯止めをすることから起る大きな混乱が予想されるのであります。從いまして、例えば中小
企業におきましても倒産するものも相当出て來る筈でありますし、又
政府におきましても行政整理をやる、或いは又民間におきましても
企業の合理化をやるということから、失
業者の続出は免れ難いところであります。でありますから、國民所得というものは、昨年度に比較いたしまして、そう大幅に増加するとは考えられない。ところが
政府は租税收入の見積りの基礎におきまして、國民所得を昨年度の約三〇%増加というところに置いております。殊に失
業者が沢山出るということを
政府側においてもしばしば言明しており、そのための対策を愼重に考慮しなければならんということを
言つておるその矢先に、同じ
政府が提出しておるこの所得税の算定の基礎とな
つておる勤労所得につきましては、昨年度より五五%増加するというようなことる基礎に置いて、この租税計画を立てておるのであります。又中小
企業などの面を見ましても、現に
政府が発表しておりますところの経済白書、あれを御覽になりますと、すでに我が國は相対的な、リラテイブな生産過剩に陷
つておる。即ち購買力の不足によりまして製品の販路が梗塞して、ストツクが増加しつつあるということは、経済白書の中に
はつきり謳
つておる。にも拘わらず、営業所得の三〇%見当の増加を見越す。こういうような甚だ杜撰な國民所得の算定の上に立
つて所得税の計算をや
つておるのであります。勿論
政府においては來る五月に税制の改革をやると申しておりますけれども、この
予算案が通過いたしますと、この数字に基きまして財務局並びに税務署などに対して、いわゆる
努力目標なるものを設定されるに決ま
つておる。そうしますと、税務署あたりはこの
努力目標を達成しなければ自己の成績に関わるということから、國民に対しまして強制的な非常に強い力で以て租税の取立をやる。その結果は、吉田首相が憂えておられる苛斂誅求、今年度においても、二十三年度においてもすでに苛斂誅求があ
つたということを首相自身も認めておる。その苛斂誅求以上のことが起るということを私共は心配せざるを得ないのであります。このことから如何なる事態が
日本に生ずるかということを思いますと、肌に粟を生ずる感がするのであります。この意味におきまして、私共はこの租税計画、これを中心とする
予算案には反対せざるを得ない。これが反対
理由の第一点であります。
第二は、民生に対する経費の支出が非常に少額であるということであります。御
承知のように我々がポツダム宣言に基いて文化國家として立上るためには、もうあらゆる議員があらゆる機会に口を酸つぱくして言うところのこの教育、國民の教育ということが根本的な事柄であるに拘わらず、六・三制の完遂については、総理はまあそう急ぐ必要はない、五年、六年くらいでやればよろしい、とい
つたような意向を持
つておりまして、今年度の六・三制の経費は非常に削減されてしま
つておる。このままでは我々の子弟は進学におきまして非常な困難を感ずるに違いない。六・三制がすでに六・二制になるということさえも世間で言われておる。そういう教育の危機をもたらしておるのであります。又農業問題につきましても、これは九
原則の
一つといたしまして、
日本の國内資源は十分開発しろ、そうして、できるだけ食糧の自給の方策を講ずるということが九
原則の
一つにな
つておるにも拘わらず、農業生産
改良に用いらるべき費用というものは非常に削減されております。この農業
改良費用の削減ということは、私は九
原則にそのまま直案に反すると思う。この
予算案は九
原則の中に財政の均衡を図るというところに力点を置き過ぎております。それにのみ囚われて、九
原則に謳
つておるその他の点を疎そかにしておるということが
はつきり言えると思うのであります。又住宅の問題につきましても、國民は住宅問題に悩んでおるということは、これはこの議場でも何度も言われておる。そうして
政府の善処方をいつも
要求されておるにも拘わらず、住宅建設費なんてものは相当大幅に削減されてしま
つておる。こういう性格を持
つておるものでありますが故に、本
予算案に対しては反対せざるを得ない。これが第二点であります。
第三点は、二千二十二億円という、租税收入の約四〇%を占める價格調整費の見積りが過大に失しておるという点であります。價格調整費につきましては、
政府が特に提出しておるところの
昭和二十四年度
予算の
説明書の末尾にその内容が記されておりますけれども、ここに記されておる價格調整費の内容を仔細に檢討いたしますと、一目してこの價格調整費の見積りが非常に大きな水増しであるということが分るのであります。現にこの重要資材の安定帶物資の價格調整費の計算にいたしましても、これは
輸出さるべき安定帶物資に対して直接乃至間接の補助金をや
つておることになる。
輸出に対する補助金を出すということは、これは御
承知のハヴアナ憲章によりまして、いわゆる國際貿易憲章、これによ
つて固く禁じられておる。國際的にこういうことをやらないで置こうということが協定されておるので、
輸出補助金を出すということは一種のダンピングなんだから、これをや
つたのでは又第二次戰爭の原因と同じようなものを作り出すから、そういうことはやらないで置こうということが決められておる。にも拘わらず、この安定帶物資中、
輸出さるべきものにつきまして、直接乃至間接の補助金が出されておる。このことが
はつきり見える。これは私は國際貿易憲章の精神に反すると思う。そういう不信なことをや
つておりましては、國際
社会において
日本が信用を得てその仲間に入るという日が一日々々と遅れて行くということを惧れるのであります。又食糧輸入につきましても、この調整費の内訳を見ますと、輸入食糧は二百六十一万八千トンという見込を立てて、それについての調整金を、いわゆる輸入補助金を計算いたしております。四百六億の輸入補助金を計算しておる。ところが昨日の新聞を見ましても、
農林大臣は今年度の食糧輸入は大体百八十七万トンであろうということを
言つておる。價格調整費を取るときには二百六十一万トンの輸入食糧が入るということを前提として組んでおる。そうして実際入るのは百八十七万トンだ。こういうことを見ましても、非常にこの價格調整費の計算の仕方が杜撰であるということが分る。又棉花につきましても、ここでは三十六万五千梱を基礎に置いております。而もそれに対して全部補助金を出している。だからこれは國内用の綿製品のための
原料に全部使うのかと私共は問う。漁網用に使いますと
政府は答える。棉花が漁網用にこんなに沢山要るのか。そうすると、一部はそうではないものに使う、とい
つたような極めて曖昧な答弁しか得られない。私は怒らく綿製品につきましては、
輸出不適格品、
輸出不合格品などが國内用に使われるだけであるというふうに思う。だとすれば、ここに補助金をこんなに出すということは
輸出奬励金を出すにひとしい。先程言
つた國際貿易憲章の精神に反する。こうい
つたようなことが沢山ある。でありまするから、こういう厖大な、而も基礎の薄弱な二千二十億円というような價格調整費の組み方に対しては反対せざるを得ない。
主としてこの三点から私共はこの
予算案に反対の意向を表明せざるを得ないのでありますが、これに対しまして、私は
予算第一分科会におきまして二つの修正案を各派共同で出した。これは先程
委員長の
報告にもございました
通り、その各派共同の修正案の内容は、價格調整費におきまして五百七十五億八千八百万円を節約する。これぐらいの節約はできる。それから剩余金がすでに二百億円あるということは
政府委員が
説明しており
通りであります。その半額を國債償還に充てる。半額だけを一般会計に計上してよろしい。かくして六百七十五億八千八百万円の財源を見積りまして、この財源から公共事業費として百億円、この内訳は六・三制の完成のために三十億、農業
改良のために五十億、住宅建設のために二十億、合せて百億、これを入れる。それから地方配付税配付金の増額を図らなければ地方財政はもう破綻に瀕しております。で、その増額として百六十億円を出す。そうして残りの四百十五億八千八百万円を以て租税の軽減に充てる。こういう内容を持
つた修正案でありました。小
委員会におきましては民自党の
諸君がこれに反対されましたけれども、これは民自党の
諸君が言われておるところとそう違わないんだ。民自党の
諸君が選挙において言われておることを、我々がそれを代弁しておるような恰好にな
つてしま
つておるのです。私は参議院が、できるならば一致の
態度を以ちまして、その参議院の権威において連合國側に懇請がしたか
つたのであります。(
拍手)我々はこの修正案の内容が、恐らく國民すべての人が望んでおるところのものに触れておると思う。(
拍手)その全部ではないでしようけれども、恐らくその一端はこの修正案の中に現われておると思う。併し残念ながら
関係方面の了解を得ることができなくて流産になりましたけれども、我々は今後の
政府のやり方を監視する場合におきまして、この精神において、この
方針において嚴重に我々は
政府のやり方を監視いたしまして、そうして國民
代表としての我々の
責任を十分果したいと思
つておるのであります。(
拍手)以上本
予算案に対する反対の意見を表明いたしました。(
拍手)