○國井淳一君 私は無所属懇談会を代表いたしまして、ここに上程されました
食糧の
増産確保に関する
決議案に対しまして、満腔の賛意を表するため、且つは
増産を阻んでおりまするところの二三の惡條件、これを指摘いたしまして、これを剔抉して貰うという考えから、ここに立つた次第であります。
私共は現在九
原則の枠内にありまして、
予算も決定し、それから政治もその線に副
つて運営されておりますることは当然でございます。
國民がひとしくこの線に沿
つて耐乏し、創意を十分に活かすことによ
つて、初めてこの九
原則が達成せられ、
経済の安定ができるわけなんでありますが、然るにこの九
原則の下において
政策が進められておりまする今日、
農民の立場はどんなふうにな
つておるか。これは前の
議員諸君が一生懸命にここで怒号された
通りであります。
負担は非常にいよいよ過重にな
つて参ります。それから
供出制度はいよいよ強化されました。而も
農産物價は
生産費以下に切下げられておるような
現状でございまして、
農家の
経営はいよいよ行詰
つて、轉落の一途を辿り始めておる。東北の方におきましては、無論冗談であると存じまするが、娘賣りが始まつたというようなことを申します。今人身賣買禁止の令があるが、これを撤去して貰わなければ我々は
生活できないのだというような冗談すら、もう飛び始めた。それから借金でありまするが、借金はもう軒並に始めた。どこの協同組合長の話をお聽きにな
つてもお分りであると思いますが、朝飯前に五人も十人も借金をするために組合長のところへ押し掛けて來ておる。こういうようなことでありまして、もう借金は常識の域に達しておるのであります。然るに一方株式市場などを見ますと、どういうことであるか、非常な活況を呈しておりますことは皆さん御
承知の
通りであります。こういう株式市場が非常に活況を呈しているということを
農民が見まして、一体これはどういうことであろうかと疑問に感じておると思うのであります。私が思うのに、この九
原則を活かすための方向がどんな方向を辿
つているかということが、これで明らかではないかと思うのであります。即ち一部の者を擁護し、勤労者や
農民を犠牲にすることによ
つて、果して
日本再建、それから民族の
復興ができるでございましようか。私共はこの民族
復興と
日本経済の
再建、
國民生活の安定は、一にかか
つて食糧の
増産以外にないと確信しているわけであります。
帆足君の例を先の委員長が詳しく申されましたが、全くその
通りでございます。この点につきましては、私はどんな人でも否定する人はないと思うのでありまするが、併しよく考えて見ますると、終戰以來の歴代の
内閣は
食糧増産のためにどんな
施策をや
つて來たのでございましようか。私をして言わしめれば、
農民は飽くまで
食糧を
増産する意欲に燃えている。この点につきましても委員長が、默々として
日本國民を飢えしめないために
農民が
努力しているということを申されましたが、その
通りでございまするけれども、併しどの
内閣も、私をして言わしめれば、この熱意を消し止め若しくは阻止するような
方策しか取
つておらなか
つたのではないか、こういうふうに考える外ないのであります。今日参議院におきまして今更のようにこの
決議案が上程されざるを得なかつたということは、如何に今までの
政策が貧困であつたかということを物語
つている外の何ものでもないと思いますが、一体今まで
農民が働くための衣服だとか、それから地下足袋だとか、それから肥料、農機具、こういうようなものが
農民に渡
つておつたでありましようか。私はこれを渡すべき
政府に義務があると、こう考えておるのであります。何となれば、
農民はこれは個人
企業ではなくなり、
國家の工場の一
労働者に
なつた。去年の七月から
なつたわけなのであります。こういう点から、こういうものが渡
つておらなければならないと思うのでありまするが渡
つておらない。更にこの惡條件の下で、いろいろ
実情を無視いたしました割当を
供出をいたしまして、更に非常な困難を忍んで早期の
供出をし、それから超過の
供出をしておるのでありまするが、この僅かの
早期供出などにつきまして、僅かの金額に対しましてすら税金をかけているというような始末でございまして、
農民が次第にこういうようなことから
増産の意欲に失
つてしまうことは当然なのであります。そのために全國に亘
つて耕作放棄という重大な問題を惹起しつつありますことは、これも委員長からお話のあつた
通りであります。どうぞこの際
政府は決意を以ちまして、
早期供出に対する課税、これを取止めにして頂きたいと思うのです。若しこれが事情上できないということであれば、
早期供出と、それから普通の
供出と、所得税において累進される結果になりますが、この点を二つに分けて、累進しないような特別な課税をするというような方法ならば取れないことはなかろうと思う。この点是非
一つ御考慮願いたいと思うのであります。
更に、その税金の問題につきましては、その基本となりまするところの所得税でありまするが、この所得税の中の必要
経費の計算は全く
実情を無視しておるのであります。牛馬、農機具の耐用年数にいたしましてもそうでありまするが、第一に
農業労働に対する労賃を全然認めておらないのであります。つまり百姓を只で使用しておる。こういうふうな
実情なんであります。よろしくこの点も労働從業者の
基礎控除を認めて頂きたいと思うのであります。外に地租を引上げるとか、若しくは土地使用税をかけるとかいうような噂があるのでありまするが、こういうような噂が飛ぶだけでも
増産の意欲を減殺すること夥しいと思う。
食糧と直接関係はございませんが、先程の楠見さんのお話の輸出の大宗であるところの蚕の
事業税、こういうようなものは即時廃止して貰いたい。もう
一つ煙草でありまするが、煙草は私共は全くこれは
國家より委託された栽培品だ。一葉でも自家用に供することはできないのであります。こういうような委託栽培品についても
事業税が課せられておるわけであります。これは是非即時撤廃して貰いたいと思うのであります。次に
農産物の物價の問題でございますが、御
承知のように
農産物價はパリテイ計算、パリテイ方式によ
つて計算されているわけでございまするが、このパリテイ計算の内実は甚だ
農民としてこれはもう納得の行かない点が多々あるのでございます。(「その
通り」と呼ぶ者あり)今日は時間がありませんので詳しく申上げませんが、(「もつとやれ」と呼ぶ者あり)第一、
國民の
生活費を計算いたしまする場合に、闇購入費を計算に入れておるのであります。それにも拘わらず
農産物の基準品目となりまする
生産生活資材の七十四品目を取
つて参ります場合に、パリテイ計算においては全然七十四品目を
公定價格で計算しておる。私は百姓でありまするが、それは七十四品目を決して
公定價格で買
つておりません。何割しか買
つておらない
状態なんである。これがパリテイ計算の
基礎になるわけであります。私は
生産費を償わないということを先に申上げましたが、ここに全國平均地と思われるところの群馬縣京ケ島村のまじめな
調査がございますので、ちよつと皆さんにお聽かせしたいと思うのですが、実に群馬縣京ケ島村では米の
生産費四千八十四円四十六銭かかる。然るに米の
價格は幾らであるかというと、御
承知の
通り三千五百九十五円、
生産費に対して八八%しか支拂
つておらない。大麦は大体三千三百二十八円、これに対して千五百九十三円でありまするから四八%、甘藷は六六%しか支拂
つておらないのであります。こういうような
実情、百姓を叩きに叩いて安く買
つておる。更に追加拂にいたしましても、我々の計算、これは
農林省の方式によ
つて計算したのでありまするが、大麦一俵について二百円、小麦が二百六十六円、バツク・ペイしなければならないのでありまするが、この支拂われておる額が僅かに五分の一に過ぎないのであります。時間が参りましたので急いで切上げまするが、こういうような
実情の中で、私共はどうして
増産をすることができるでありましよう。先程から前の方たちが一生懸命に
耕地改良、こういうようなことにつきまして細かい数字を挙げまして、どうしても
耕地改良をやらなくちや駄目だと言われた。
開拓をや
つておりまするが、
開拓はなかなか手間が取る、併し
耕地の改良をやれば二割や三割は確実に最も手早く穫れる。濕田を乾田にするために裏作ができるとか、若しくはそのために肥料の吸收がよくなるという、こういうようなことで早く穫れるのでありますが、このための
予算が実質において去年の半分しか組まれておらない。これは一体どういうことか。本氣にな
つて増産をさせる意思が
政府に本当にあるんですか。私はそういう意思はないんじやないかと疑う程なんです。こういうような今の九
原則を活かすために必要なこの
食糧増産に対してですね。こんなことで本当に
食糧を
増産する熱意があるかどうかということを考えるのでありますが、これらの
補助はこれはもう全部要求
通り復活して、この全額を私は國庫が支拂わなくちやならんと思うのです。なぜかというと、先程申上げましたように、私共は去年の七月からこつち、すつかり個人
企業だというようなことを言われておりますが、それは個人
企業でも何でもない。これはまあ言
つて見れば
國家の
生産工場の
労働者に
なつた、
國家管理が行われたんです。主要
食糧確保措置法によりまして、去年の七月から私共は
國家管理に入つた。入つた以上
國家がこれは
予算の裏付をして、私共の
増産を助ける方法を急速に採
つて呉れということを要望する。そうでなかつたら私共はとても(「もういいよ」と呼ぶ者あり)
増産はできない。(「分つた」と呼ぶ者あり)どうぞ
一つその点御
賛成願いたいと思います。(
拍手)