○
國務大臣(
青木孝義君)
終戰以來五星霜、苦難の途を辿
つて参りました
日本経済も、最近に至りまして漸く生産も比較的順調な上昇を來し、インフレーシヨンは緩慢化し、勤労者の実質賃金も漸次向上するに至りまして、(「嘘を言うな」と呼ぶ者あり)ここに経済安定への萠しを示し始めて参りましたのでありますが、その基礎は未だいわゆる竹馬経済たるを免れないのであります。それはもとより、この間一面において連合國側の理解ある援助と
指導とに負うところ誠に大なるものがあると共に、他面において、食糧の供出、石炭の増産等、経済の各分野において拂われました全
國民の再建への努力と熱意によるものでありまして、ここに深く感謝の意を表するものであります。併しながら今や経済九原則に從い、健全財政を樹立して國家再建の基礎を固むるにつきましては、我が國経済の実体を洞察して、その中に包藏している不健全な要素を的確に認識しなければならないと思うのであります。
即ち先ずその最大のものは、年間数億ドルに上る外國援助を受けている事実でありまして、我が國経済安定の萠しも、実は米國の市民と企業の負担による援助に支えられているものであることを忘れてはならないのであります。次に経済活動の担い手たる企業においては、その生産設備は荒廃し且つ老朽して、いわゆる企業実体資本減耗の傾向は著しく、企業の経営は多額の價格調整費の支出に依存し、赤字金融は累積する等、その健全性と自主性とを著しく喪失するに至
つているのであります。更に河川災害の累増、山林の消耗等、國土の荒廃、國富の喰い潰しの傾向も亦憂うべきものがあるのでありまして、インフレーシヨンの緩慢化と生産水準の上昇の背後には、誠に憂慮すべき実態が隱されていることを指摘せざるを得ないのであります。言葉を換えて申しますれば、米國の援助と補助金政策とによ
つて衰乏経済の上に実力以上の経済運営が行われているというのが、
日本経済の現状であると申さなければなりません。このまま推移して行くならば、脆弱なる経済基盤の上に不安定なる経済繁栄を築く結果となるの虞れがあるのでありまして、今後の経済施策の根本は、経済の眞の安定から再出発すべきであることを痛感する次第であります。昨年十二月、連合國最高
司令部から発せられた経済九原則の指令も、正にこの
趣旨を明確にしたものでありまして、連合國の対日政策が、今や
日本経済の安定と自立とを要求する段階に到達したことを物語るものであります。從
つて九原則の狙いとするところは、將來における経済の自立を目標として、当面何よりも経済安定を目途とする施策を強力に実施し、経済性に徹した合理的な経済運営を期すべしとする点にありまして、これがため單一爲替レート設定の準備といたしまして、九項目の施策を実施すべきことを内容としているのであります。
思うに
経済自立の基盤となるべき健全な経済力の回復は、経済の安定なくしては期待され得ないのであります。從
つて強力なインフレ
対策の実施を遷延いたしますれば、それを長引かせる程、現在の不健全な
状態を更に長く続けることとなるのでありまして、かくては、たとえ爲替レートを設定いたしましても、これを維持することは困難となり、
國民経済に却
つて有害な影響を及ぼすのでありましようし、又待望の民間外國投資も、経済の安定なくしてはその本格的導入を期待し得べくもないのであります。私はかかる
情勢の下においては、九原則指令の線に沿い、堪え難きを忍んで、
経済自立のための第一歩である経済の安定を万難を排して達成するにあらずんば、我が國の再建は期し難いと衷心より信ずるものであります。(「公約はどうした」と呼ぶ者あり)
政府といたしましても、かかる信念の下に、企業に対しては強力な合理化施策を強く要求すると共に、
國民生活に対しても敢て一段の耐乏を要請することとし、諸般の経済施策を強力に推進して行く方針であります。
かかる方針の下に
政府は先ず二十四
年度予算の編成に当面いたしたのでありますが、その内容の詳細につきましては
大藏大臣の演説に譲ることといたしまして、ここにはその基本的な構想と総合的な経済施策との関連につきまして簡單に申述べたいと思います。
先ず経済安定九原則に掲げられた総合
予算の眞の均衡ということでありますが、その
趣旨とするところは財政面から來るイレフン要因の徹底的排除というにあるのでありまして、そのためには、
一般会計、特別会計は勿論、その他の
政府関係諸機関の收支一切を
予算に網羅し、この收支全体に亘
つて実質的な均衡を確保することが先ず必要となるのであります。併しながら均衡
予算の編成に当
つてはあらゆる経済的要求が悉くこの面に現われて來る結果、その間の調整は
政府の最も苦心いたしたところであります。即ち先ず歳出につきましては、誠に切実な
公共事業費の要求に対しても敢てこれを削減せざるを得なかつたのみならず、
行政整理の断行、特別会計の経営合理化の強行、その他あらゆる経費節減を強行し、更に又物價安定のための價格調整費についてもその支出範囲を縮小し、支出單價に思い切つた削減を加えて、企業に極度の合理化を要求すると共に、同じく輸入補給金についても企業経理と
國民生計費の堪え得る極限まで、できる限り圧縮節約を図つたのであります。
他面歳入につきましては、実質的均衡財政実現のためには租税收入の増加と確保に俟つ外はなく、
政府といたしましても、現行税制の下に專ら税收の確保に万全の努力をいたす覚悟であります。現在
國民の租税負担の決して軽いものでないことは、もとより
政府の十分
承知いたしておるところでありまして、均衡
予算実施途上においても徴税
方法の
改善を図り、負担の公平化について一段と努力を拂う所存でありますると共に、
予算に計上せられた経費につきましても実施上更にその削減に努め、國有財産の処分を行う等、
國民負担の軽減に資する所存でありますが、
國民各位におかれましても、我が國経済の自立のために拂わなければならない負担として、この税收の確保に進んで協力下されんことをお願いする次第であります。
次に米國の援助資金についてでありますが、
從來その使途について明確さを欠いていた結果、折角の好意ある援助もその本來の
趣旨に副い難い憾みがあつたのでありまして、
政府はこの際これを円價として明確に
予算化することによ
つて、最も効果的な運営を期したい所存であります。即ち今後この援助資金はこれを米國対日援助見返り資金特別会計に繰入れて、経済復興の資金や國債の買上等、最も有効適切な方途に使用することにいたしたいと存じております。
次に金融の問題についてでありまするが、健全金融方策の確立とその徹底的な遂行を期することを、ここに改めて宣明いたしたいのであります。即ち資金の給源は蓄積資金の範囲内で賄う原則の下に、
國民に対しては極力その消費を節約し貯蓄の増強に努めるよう協力を要望すると共に、企業に対しては企業三原則の枠内において、みずからの生産努力と資本蓄積とにより、所要の資金を調達すべきことを要請せられるのであります。更に
政府といたしましても、今回の
予算編成に当
つては、財政の負担すべきものは率直にこれを財政の負担とすることによ
つて、ややもすれば財政の負担を金融に轉嫁するがごとき
從來の行き方を嚴に是正する
態度を明白にいたした次第であります。かくして財政及び金融の両面を通じてインフレ要因の徹底的除去を期したのでありますが、他面、生産活動の維持、経済復興のため、眞に必要な資金については、かような健全金融の方針の下においてその調達に遺憾なきを期さなければならんことは申すまでもないところでありまして、これを資金の供給面について見ますならば、幸いに米國の援助資金の
相当部分を建設資金及び復興資金の使途に充て、更に國債、復金債等の償還を通じて産業資金に充てることになりましたので、当面二十四
年度の産業資金は、運轉資金においても、設備資金においても、計算上その額としては必らずしも事業活動を著しく阻碍するがごときものでないと
考えられるのであります。併しながら今後復興金融金庫の事業が縮小せられ、市中金融機関の任務が、國債、復金債等の償還による手許資金の増加とも相俟
つて、ますます重要性を加えて参りますに鑑みまして、
國民経済上の見地から所要資金を所要の事業に確保するためには、金融機関の自主的な協力を得ることが絶対の要請とな
つて來る次第であります。更に
政府といたしても、今後の事態の推移とも睨み合わせまして、必要な資金の規制につき
実情に即した
措置を講じたい所存でありますと共に、企業の自己資本調達を極力促進する見地から、証券市場の健全な発達を期する外、
從來の資本の喰い潰しを防止するため、減價償却の合理的実施を可能ならしめるための施策を檢討いたしておる次第であります。
次に現段階における物價政策についてでありますが、その重点は、前述のごとき財政金融の強い健全化方策に対應いたしまして、物價の低位安定を期するにあり、更に單一レートの設定を契機とする國際経済への参加を目睫の間に控えまして、國内物價の國際物價への鞘寄せを図るにあるのでありまして、これを起点として均衡ある経済の安定を進めて参る所存であります。即ち昨年六月に発足しました現行價格体系は、その後の経済條件の変化によりまして、若干のひずみが生じ、このため経済の合理的な運行が阻碍せられる面も見受けられるので、これが調整は必要に應じて行う方針ではありますが、全体としての價格水準の引上はこの際避ける方針であります。特に貨物運賃、安定帶物資價格はこれを据置くこととし、これに対應して繰業條件の好轉している消費財につきましては、その價格引下をも
考慮し、家計の安定と價格のバランスの確保に資したい所存であります。而してこの物價の低位安定を図りますために、今回の
予算編成に際しましても、
相当多額の價格調整補給金を用意しておるのでありますが、本來かかる補給金制度は、経済の合理性と企業の自立性との要請の見地からは、必ずしも好ましからぬものであります。併しながら
日本経済の脆弱なる現状において一挙にその解決を図ろうとすることは、却
つて徒らなる混乱を惹起する虞れもあり、この際この程度の補給金の計上は誠に止むを得なかつた次第であります。併しながらこの補給金の支出に際しましては、補給金單價の切下を行いますと共に、今後の企業努力及び企業合理化促進
措置の強行によりまして、これが節約を図り、苟くも不合理な経営に対し、漫然これが支柱となるような補給金の使い方は絶対に避ける方針であります。
更に國内價格の国際價格への鞘寄せ及び爲替要因からの國内價格への影響調整の問題につきましては、先ず久しく国際経済から隔離された我が國の孤立物價体系から、國際價格体系の
一環としての合理的且つ自然な價格体系へ移行することが、今後の
日本経済の正常な発展のために強く要請せられるところであります。換言いたしますれば、
日本経済が國際経済の一員として、自立の途を拓いて行くためには、先ず国際價格体系のうちにみずから融和するごとく経済的努力を進めることが、当面重要なる課題であると信ずるのであります。(
拍手)併しながら他面、單一爲替レートの設定と、國際價格への鞘寄せにより、企業、家計等に余り急激なる影響を與えることも亦物価安定の見地からは能う限り避くべきものでありますので、
政府におきましては差当り過渡的な方策として、輸入補給金によるその緩和策を採つたのでありますが、この輸入補給金の支出に際しましても、生産費切下の努力により、これが節減に努めて参る方針であります。
以上申述べました低位安定を目途とする物價政策にも拘わらず、農業パリテイ指数の上昇に伴い、近く主食の消費者價格を若干引上げる見込であり、又特別会計の独立採算制堅持のため、旅客運賃、通信料金についても或る程度の引上が不可避であります。尚又輸入物資に多する補給金が若干廃止される結果、延いては消費物資についても多少の價格改訂を余儀なくせられますが、国民
経済自立のためには、消費を節約して蓄積を行わざるを得ず、而も國も、企業も、家計も、すべてが節約耐乏する以外に、自力による
日本経済の再建は期し難いのでありまして、
國民諸君におかれましては、この際耐えがたきを忍んで耐乏
生活を克服せられるよう念願する次第であります。(「片山内閣の眞似をするな」と呼ぶ者あり)
日本経済の眞の安定を期するための根本的な方策が生産の確保増強を図るにあることは、改めて申すまでもないところでありまして、これがため
政府は先ず全企業、全勧労者の奮起を要望するのでありますが、かかる生産の増加も、合理的な経済運営の基盤の上に立
つてこそ、初めて力強い経済発展の基礎たり得るものと信ずるのであります。(「社会党の眞似をするな」と呼ぶ者あり)この見地から
政府は先に企業三原則の方針を明示し、今回重ねて九原則の線に沿う施策を講じて、企業の合理化を強力に推移し、合理化された基盤の上に健全な民間外資の道入を期待せんとするものであります。これを先ず價格の面から見ますならば、第一に石炭、電力等の基幹産業については、現在の價格を据え置き、その範囲内において收支相償う合理的経営を行い、所期の生産要請を充足すべきことの要求であります。
從來これらの務業にあ
つては、生産を第一主義の止むを得ざる要請から、ややもすれば補給金、赤字融資等、
政府援助に依存する傾向が続く、その経営に幾多の不合理且つ不健全な要素を内包しつつ今日に至つたのでありますが、今後は先ず経営の合理化を強行して確乎たる経済的経営を行い得る基礎を確立し、所期の増産を正常な経済的基盤の上に遂行せしめることこそ、
日本経済の自立と健全化の第一歩をなすものでありまして、これに先ず企業三原則の線を強く貫徹しなければならんのであります。この結果行われる合理化は、
相当熾烈なものがあると予想せられるのでありますが、経済の安定と自立達成のためには、かかる基幹産業が正常な計済的運営に立直ることが急務であると信ずる次第であります。而して石炭、電力等の基礎資材の價格が据置かれることと対照いたしますと、來
年度において操業度の上昇が期待される製造工業については、
相当経営上の余裕が生ずるものと認められますので、前に述べましたごとき物價政策に対應しまして、これに対しては企業合理化の見地から、輸入補給金の廃止に伴う輸入原材料の値上りを吸收せしめる外、價格調整補給金單價の削減、公定價格引下げ等の
可能性につき、
実情に應じた檢討を加えまして、物價の安定、コスト引下による企業合理化の推進に資して参りたいと存じております。殊に輸出産業については、熾烈なる國際競爭場裡に立ち向うべき合理化が当面火急の問題として要求せられるのでありまして、
政府といたしましても爲替レート設定への一段階として、差当り四月一日から輸出の價格比率を四百二十五円で打切ると共に、爲替レート実施の際には輸出補助金はこれを全廃する方針の下に、企業の合理化を強力に推進して行く方針であります。
次に資金の供給の面から企業の経営に及ぼす影響としての
対策について一言いたします。前述のごとき強固なる均衡財政、健全金融方針の確立の結果、産業資金は主として蓄積資金の範囲内で賜わざるを得ないこととなるのであります。從
つて企業に対しては、企業三原則の建前からも、赤字融資を行わないということは勿論、健全金融の方針の下に圧縮された一定の資金の枠内で、所要の増産と建設とを行うよう強く要請されることとなるのであります故に、企業は何よりも先ず生産費の切下による合理化の力強い遂行を要求せられるのでありますが、
政府といたしましてもこれに應ずる資金確保の
対策を講ずる所存であります。
以上企業
一般に対する施策とそのあり方を示したのでありますが、かかる施策遂行が、特に中小企業に及ぼす影響については、
政府といたしましても重大なる関心を抱いておる次第であります。即ち中小企業が
日本経済の発展に果すべき特殊の役割を自覚して、経営の
改善合理化を促進し、前に述べました
通り経済九原則の
趣旨に副う努力を盡されるならば、
政府は必ずや中小企業がその窮境を打開して
日本経済に確乎たる地歩を占めることを信じますと共に、この線に沿う育成に努めたい所存であります。
以上、経済安定の基本方策を強力に遂行する結果、今後における実質賃金の上昇は、労資
一体の企業努力による生産の増加に俟つ以外にないのであります。言うまでもなく
政府におきましても、
日本経済再建のために、その担い手ため勤労者の
生活安定が必要であるとの認識の下に、(「嘘つけ」と呼ぶ者あり)流通秩序の確立、
生活必需物資の確保につきましては、一段と強力に努力を傾ける所存であります。
從來の赤字融資、国庫補給金の支出、價格の引上により甘やかされた経済がそのまま推移いたしますれば、その結果はインフレーシヨンの進行を激化せしめ、
日本経済の自立と安定は百年河清を待つにひとしく、勤労者の
生活は不断に脅かされ、かくしては勤労者の眞の利益たり得ないと信じ、ここに
政府は断乎として口に苦き良藥の施策を実施せんと決意いたしておる次第であります。(
拍手)企業及び勤労者各位におかれましては、この試煉と耐乏と勤儉力行の実踐を経てこそ、
日本経済の再建と
生活水準の向上が期待されるものであることを理解されまして、
政府の微衷に御協力賜わらんことをお願いする次第であります。(
拍手)尚、
政府におきましては、かくのごとき施策強行により不幸にして生ずることあるべき
失業者の発生に対しましては、今後発展して行く産業、殊に輸出産業部門及び援助資金の活用等による新投資事業等に吸收いたしますと共に、
失業保險等の円滑なる運用と充実につきましても、國力の許す限りこれに努力して参る所存であります。
今や
日本経済の重大なる岐路に立ち、
政府は健全なる労働組合の発展を希求いたしますと共に、勤労者
諸君の自覚と努力に多大の期待を寄せている次第であります。ひるがえ
つて農業の面を見ますれば、その生産を増強することが経済安定の基盤を確立し、食糧の輸入を減少する見地からも、現下の
日本経済に取
つて根本的な重要性を持
つており事実に鑑みまして、この際、農民
諸君の食糧増産への一層の努力を要請する次第であります、
終戰以來の未曾有の食糧危機を切り拔けて参りましたのも、主として農民
諸君の努力に負うところが多く、誠に感謝に堪えないところでありますが、
政府は更に供出制度の効率化と公平化とを図るための施策を講ずることとし、すでに実施しました
昭和二十四年産主要食糧の事前割当による生産と供出の完遂を期すると共に、それ以上の増産と供出とを期待することとした次第であります。
政府といたしましては、農業生産力の増強に欠くべからざる土地改良等、生産條件の
改善につきましては、國力の許す限りその促進につき今後の努力を期すると共に、前述のごとき物價水準維持により農家の経営と家計への影響を極力阻止し、肥料その他再生産資材を可能な限り確保する
措置を講じ、(「嘘ばかり言うな」と呼ぶ者あり)又米麦等の價格につきましては、昨年における價格決定後の農業パリテイの上昇分についても迫拂をする等、農業再生産確保の見地から所要の
措置を取る方針であります。併しながら農民
諸君も又徒らに
政府の施策にのみ頼ることなく、消費を節約し、農民みずからの手で、みずからの組織によ
つて資本を農業内部に蓄積し、これを生産的投資に振向けて、將來の農業生産の維持発展への萌芽を育成して行かなければならんと存じます。
次に、輸出振興
対策について申上げます。以上主として國内経済の安定施策について申述べ來つたのでありますが、
日本経済の現状、特に貧困なる國土資源の下に過剩なる八千万の人口を擁し、米國からの巨額の援助資金及び物資によ
つて辛うじて現在の生産水準及び
生活水準を保ち得ておる現状に鑑みまして、
日本経済の自立と復興を期しますためには、輸出の振興と、これによる経済循環の拡大を図ることが、刻下最大の喫緊事であります。竹馬経済の汚名を拂拭し、自力による経済の再建を図りますためには、國内需要はできるだけ節約し、コストの引下に努力し、輸出の伸展、貿易外收入の増大を期するため、
政府におきましては輸出最優先原則を確立し、輸出用資材の優先確保を図りますと共に、貿易金融の円滑化等に努力を拂いつつある次第であります。尚、貿易手続の簡素化を行い、民間貿易の拡大を図り、正常貿易の復帰に努めておりますと共に、輸出市場の積極的開拓及び貿易條件の
改善等、対外的
関係の調整を懇請いたしておる次第であります。
政府におきましては、以上のごとき輸出最重点方針を採用し、これがためにはあらゆる努力を傾注いたす所存でありますが、單一爲替レートの設定に際しまして、輸出補助金の交付による輸出助成
措置は、國際的にも許容せられないところであり、從
つて日本経済が激烈なる世界経済の競爭場裡に伍して、その地歩を確保するためには、峻嚴なる企業合理化の推進、科学技術の振興による技術水準の向上に努めることが絶対の要請とな
つて参つたわけでありまして、輸出産業
関係業界の特段の努力を強調するゆえんであります。(「講演会と違うぞ」と呼ぶ者あり)
以上申
述ベましたごとく、企業の合理化と
國民生活の耐乏とを要請する施策が強力に実施されます結果、購買力は
一般に
相当圧縮され、有効需要の減退が予想される共に、物資の需給
状況も漸次
改善されつつある
状況に鑑みまして、この際物資の割当配給、價格統制等、物の面からの経済統制は極力これを簡素化すると共に、縮減された領域に対しては実効ある取締を行い、流通秩序の確立に資する所存であります。而して前述のごとき企業合理化の推進に当りましては、何よりも企業の自主性と経済性を回復せしめる施策が要請せられるのでありまして、この面から、ややもすれば徒らに煩瑣に堕するがごとき統制はこれを撤廃いたすと共に、必要なる統制の実施に当
つては、競爭原理の導入を目途とする強力性ある方策を工夫して参りたいと存ずる次第であります。今般配給公團制度を整理し、指定生産資材の品目を減少せんとし、蔬菜類の配給統制を撤廃いたしましたのも、以上のごとき見地に基くものでありまして、又懸案の料飮店問題につきましても、
実情に應じた再開
措置が講ぜられる
予定であります。(「耐乏
生活どうした」と呼ぶ者あり)
以上経済安定九原則の
趣旨に則りまして、先ず國内経済の安定
措置を断行し、この経済の安定の基盤の上に輸出の振興を図り、
日本経済復興の萠芽を培
つて参りますならば、爲替レートの設定も又早期に実現し、これを堅持する見通しの下に、内外の信用を得て、民間外資の導入も促進せられ、雇傭機会は増大し、
生活水準は向上し、
日本経済の自立は達成せられるであろうことを確信いたすものであります。かくしてこそ初めて國際社会の友誼的な一員として認められ、独立と平和への途は開かれるものと信ずるのであります。(「嘘をいうな」「矛盾だらけだ」「默
つておればいい氣にな
つている」と呼ぶ者あり)