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中西功君 私は
日本共産党を代表いたしまして、只今上程されました
財政法の一部
改正法律案に対して
反対の
意見を述べんとするものであります。
財政法が
憲法附属の
法律であり、我が國の
財政の
根本をなす極めて重大な
法律であることは、これは申すまでもないのであります。而も今
政府はこれを
改正するに当
つて、この
改正は極めて技術的なことであるというふうに
説明しておりますが、決してこれはそのような簡單なことではないのであります。我々は今度の
改正が、むしろこの
財政法の
根本を変えてしまう程の重大なものであると思いますが故に、ここにその数点に
亘つて、その詳細な
意見を述べたいと思うのであります。
九十二議会において、この
財政法が通過いたしますときには時の
石橋藏相は、この
財政法は、極めて民主的な
財政法である、その見地から十分
國民に推奬し得るところの
財政法であるというふうにはつきり明言いたしましたし、当時の
議員も、すべてこれを我が國の
財政の
民主化のために非常にいい
法律であるとして、全部
賛成したのであります。併しその後、この
財政法がやはり種々二三回に
亘つて改正されました。その
改正は主として
改惡の
方向でありました、例えば
財政法第三條の
特例に関する
法律のごときは、これはやはり大きな
改惡であ
つたのであります。而も又
現実にこの
財政法のすべての
條項が、今までの
政府によ
つて十分履行されなかつたということも事実なんであります。それは恐らく現在の
日本の
経済情勢と、それからこの
財政法規との間に
ギヤツプがあるということが起るのでありますが、併し問題は、そのように
財政法のいいところの諸面を十分に履行することができないというのは、それはいわゆるそれに当
つておるところの
政治勢力の無能を表明するものであります。決して、だから
財政法が惡いというわけじやないのであります、然るにこのたび
民主自由党の
内閣が
改惡をなそうとするのは、この
現実の
ギヤツプをみずからが努力して、もつと立派な
政治を布くことにより、努力することによ
つてこの
法律の
精神に合して行こうというのじやなくて、逆に
法律が惡いのであるかのごとく、
財政法自体が惡いのであるかのごとくにして、これを
改惡しようとするのであります。私は第一にこういうふうな
態度これが一番よろしくないと思う。これは今日
労働法規の
改惡が
企図され、或いは又その他幾多の
法律の
改惡が
企図されつつある場合には、
憲法の諸
條項さえも無視されておる
現状、こういうふうなこと一連必然的な関連があるのでありまして、我々は第一にこのような反動的な
意図を以て
財政法のみならずあらゆる
法律を
改惡して行こうとする
企図に対しまして、第一に
反対するのであります。
第二は、この
財政法の
改惡を
説明するに当
つて、
政府は本当の
意図を隠しておるのであります。今
委員長の
説明の中にありましたごとく、過去二年來の
経驗に鑑みてとか、いろいろのことが言われておりますが、実際にはそうではないのであります。むしろ
根本問題は、二十四
年度の
予算の
編成並びに
執行の問題に関連してこの
財政法の
改惡が
企図されておることは、他の面において
政府みずからが語
つておるところであります。それは
財政法が單なる技術的なものであるならば、当然もつと早く
國会に
提出ができて十分な
審議ができた筈でありますが、
政府の
説明するごとく、これは
予算の大体の見通しが立つまでは
法案を
提出することができなかつたというふうに
説明しておるところによりましても、これが決して過去二ケ年云々に関連あるだけではなくて、もつと
根本的には二十四
年度の
予算の
編成と
報行に
関係のあることは極めて明白であります。然るに
大藏大臣はこういう問題を質問されましても、殆んどこの問題については
答弁しようとしない。そうして
從つて又このたびのこの
改惡の眞の
企図を、
意図をいわば隠蔽しておるわけであります。このようなことは実際にこの
條文の中の至る所において発見されるのでありますが、我々は先ずこのような
政府の不明朗な
意図に対して、何よりも
反対しなければいけないと思
つております。
第三に、この
改正の最も大いな眼目はどこにあるか。それは各款項間の
流用を許しておるということ、或いは又
予算の
配賦において、
目節を附せなくても
配賦ができるようにしておるということ、ここに大きな問題があるのでありまして、我々が今後
提出されるであろう二十四
年度の
予算を、新聞の傳えるところによりまして見ましただけでも、今度の
予算が極めて重大な
内容を持
つているということは、もう誰しも感じております。
公共事業費が非常に大きな削減されたということ、或いは又見返り
物資のこの費用が特別な
会計として今後
編成されて行くということや、或いは厖大な
價格調整費が組まれて、この
予算の
執行面については極めて重大な問題を持
つて來るということは誰しも知
つておるところであります。若し
予算の
配賦、そうした問題において、
政府から出されたこの
説明書に書いてあるところのこの
終戰処理費、
賠償施設関係費、
公共事業費、
價格調整費或いはその他
特別会計を
配賦の場合に除いたならば、一体
予算の中で何が残りますか。極めて僅かな、何パーセントというようなものだけしかが
目節を付しては渡されない。大
部分が何にもなくして渡されて行く。而もこの
執行に関しては極めて重大な問題を孕んでおるということは、すでに
國会議員諸君のよく知らるるところであります。このようなことがこの度の
改正と関連しておるのでありまして、
從つて單なる
流用でないのであります。我々はこういうふうな
日本の
政府の
自主性の問題に関する重大なる問題を考えますが故に、我々この
國人の將來を考えますが故に、我々はこの度のような
企図に対して、もつと問題を明瞭ならしめ、そうして
日本國民の奮起を促さなければならないと思うのであります。
更に、第四の点は、この
予算がそのような
流用や、或いは
一つの項目の結果といたしまして、
目的別予算をなくした点であります。
石橋前
大藏大臣のいろいろの
答弁を見ましても、この
目的別予算と
部局別予算を並べて出したものこそ、
予算の
民主化を保持するものであると彼らは誇示してお
つたのであります。然るに今やその流れを汲むところの
民主自由党みずからに、この
目的別予算が削られて行くという歴史の悲劇を繰返しておるわけでありますが、それならばこの
目的別予算がなくなるということは、一体何を意味するか、皆さんは今更申上げるまでもなく、何故に
目的別予算が必要であつたか、そうして又それと並んで
組織別予算が必要であつたか、これは
一つの
政府が民主的であると共に、同時に集権的であり、即ち
政策を決定するに際しては、大多数の
國民の
人々の
意見を尊重すると共に、その
執行に当
つては果敢に迅速に事を運ぶというふうなこの二大
條件、この二大
條件が、いわばこの二つの
部分に現われておつたわけであります。特に
政治家として、政党として、
政府として必要なことは、何よりも如何なる
経費を使うか、本当に
國民のためにどんな
経費を組むのか、或いは又必要な
経費を組むのか、そういうふうな大きなことを考えるべきなんであります。その大綱を決定するのが
國会でもありましようが、又
政治なんであります。そのような大きな問題を現わすところの、
政策を現わすところの、この
目的別予算を今正になくそうとしております。(「何分間やるつもりか」と呼ぶ者あり)そうしてこの
予算の
部局別予算だけによりましても、今まで非常に憂慮されておりましたような、新らしい
官僚主義がここに復活することは極めて明瞭なんであります。私は、このように
目的別予算をなくすることは、
政府よりの
説明では如何にも技術的のことのように
説明されておるのでありますが、このような(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)
目的別予算をなくした
意図の、こういう
政治方向は、明らかにその
政府が如何に
政策について考えていないか、
政策について貧困であるか、無能力であるかということを非常にはつきりと示しておると思うのであります。我々は
民主自由党がこのように、曾てみずから積極的に提案したようなものを今正に踏みにじ
つて行くというところに対して、
民主自由党のこのような
反動政策に対しては、絶対に
反対せざるを得ないのであります。
最後に最も大きなことは、これは
國会と
執行部の問題であります。以上申しましたところによりまして、この度の
國会議員の
権限を少くし、そして
執行部の
権限を非常に大きくしておるということは、これは極めて明白であります。ますます
國会の
予算審議権に対して大きな
制約が加えられつつあるのであります。この案に対しましては、
衆議院においては
民主党の
人々も
反対いたしました。即ち少しでも
日本の
民主化について関心を持たれる人ならば、このような
國家財政の
基本法が改変されて行くということにつきましては、
反対するのは当り前だと思うのであります。(「分つたぞ」と呼ぶ者あり)我々はこの度の
財政法は一部
改正案とは書いてありますけれども、決してこれは一部ではない、旧來の
財政法の
根本精神をここにおいて改変しようとするものであり、
全権委任法案のようなものをここで作ろうとするものであります。そういう意味において、明らかにフアツシヨ的な
財政法の
方向に向
つておるということを指摘せざるを得ないものであります。(「そうそう」と呼ぶ者あり)以上のような
理由によりまして、我々
日本共産党は、この
財政法の一部
改正案に対して断乎として
反対するのであります。終ります。(
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