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1949-05-12 第5回国会 参議院 法務委員会 第13号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十四年五月十二日(木曜日) 午後一時四十一分開会
—————————————
委員
の異動 本日
委員水久保甚作君辞任
につき、そ の補欠として
遠山丙
市君を議長におい て選定した。
—————————————
本日の
会議
に付した
事件
○
弁護士法案
(
衆議院提出
) ○
証人喚問
に関する件
—————————————
伊藤修
1
○
委員長
(
伊藤修
君) それではこれより
法務委員会
を開会いたします。本日は
弁護士法
を改正する
法律案
を
議題
に供します。先ず
提案者
の
提案理由
並びに
内容
の御
説明
をお願いいたします。
花村四郎
2
○
衆議院議員
(
花村四郎
君)
只今議題
と相成りました
弁護士法
を改正する
法律案
について、
法務委員会
を
代表
して
本案
の
提案理由
及びその
要旨
を御
説明
いたします。
本案
は第五
國会法務委員会
の
弁護士法起草委員会
において可決されたものであります。即ち
昭和
二十四年三月二十八日、
弁護士法
を改正する
法律案
を
起草
する小
委員会
が設けられまして、爾來十数回に亘り
懇談協議
がなされたのでありますが、この間小
委員
は勿論、
弁護士会代表者
、
法務廳
、
裁判所等
、
当局者
の出席を求めまして、相互に胸襟を開いて
協議
を盡し、四月二十七日に至りまして小
委員会
の
成案
を得たのでございます。本
衆議院
の
法務委員会
は、この小
委員会
の
成案
を
承認
いたしまして、ここに
法務委員全員
が
提出者
となりまして、過般
衆議院
の本
会議
に
上程
をいたして次第でございます。併しながら回顧すれば、この
法案
の
起草
は由來するところ第一
國会末期
の
司法委員会
にあるのであります。即ち
我が国司法体制
として、
在朝法曹
については既に
裁判所法
、
檢察廳法
ができ上
つて
おるのでありまして、
在野法曹
については
弁護士法改正
を
議員立法
として提出すべしと発議されたのであります。かくて第二
國会会期
中において
法案
の骨子はでき上り、爾
來法制部
において幾度か修正、削除、
加入
を重ねたのであります。第三
國会
、第四
國会
においても、この
法案
の
上程
を急ぎましたが、結局
上程
されるに至らなか
つた
のであります。その
理由
は、この
法案
は何分にも
在野法曹
に運命を左右し、我が
國司法行政
の一翼を担う重要な
内容
を有し、その
條文数
も九十二
ケ條
に及ぶ大
法案
であ
つた
からであります。漸く第五
國会
に入り、本日ここに
上程
される
運びとなつた
次第であります。 次に、
本案
の
要旨
を申上げます。この
法案
の
建前
は、
大綱
として申せば三つの
原則
から成立しております。即ち第一は、
弁護士
の
使命
は
憲法
上の
基本的人権
を擁護することにあるとされたことであります。これにより
從來一部
に存した私益の
代表
の観念は一掃されました。第二は、
弁護士会
及び
弁護士会連合会
に高度の
自治
を認めると共に、
自己責任
を嚴重にしたことであります。これにより
從來法務総裁
の有した
監督権
は全く排除されたのであります。第三は、両
原則
の
調整
に関するもので、
苟くも國民
にして
弁護士
の
資格
を取得した以上、
弁護士会入会
を
拒絶
されてその
権利
が侵害されることのないように、
各般
の
救済措置
を認めたことであります。 以下各章に亘りまして、その
大綱
を御
説明
申上げます。第一章といたしまして、
弁護士
の
使命
及び
職務
においては、
基本的人権
を擁護し、
社会正義
を実現することを
使命
とし、その
使命達成方法
として深い教養と高い品性の陶冶を要求しております。第二章におきましては、
弁護士
の
資格
において、
司法試驗
の合格、
司法修習
の終了を以て
弁護士
とする
原則
を確立し、その
特例
の
範囲
を明らかにいたしまして、その不
適格者
を列記しておるのでございます。第三章においては、
弁護士
の
名簿
のみならず、その
登録
と
弁護士会入会
の
関係
を定めております。即ち
弁護士
を開業せんとする者は、
弁護士会
に入会し、
弁護士名簿
に
登録
を要求されておるのであります。この
事務的一元化
を定めながらも、
苟くも弁護士資格
を有する者が
弁護士会入会
を不当に
拒絶
されることのないように、
登録
を
拒絶
された場合には、
異議
の
申立て
は勿論、
最後
には
裁判所
に訴えを提起することを認めまして、以て個人の
権利侵害
の虞れのないように工夫をいたされておるのでございます。第四章といたしま島ては、
弁護士
の
権利業務
においては、概ね
現行法
と同樣でございます。第五章は、
弁護士会
においては
公法人
たる
組織
と
運営
をいたしまするように
現行法
を修正して、その整備を図りました。第六章、
弁護士会連合会
においては、
全章
新
設條文
でありまして、その
目的
、性格、
組織
、
運営等
を
規定
いたしております。本章の
規定
によ
つて
、
從來法務総裁
の持
つて
おりましたところの
監督権
は、悉く
連合会
に移讓されたのであります。第七章といたしまして、
資格審査会
においては、
弁護士
の
資格審査
に当り、
弁護士会独善
の弊がないように、
資格審査会
を設けまして、その
委員
には
判檢事
、
学識経驗者
を選び、以て
第三者参加
により公平適正なる
審査
を図
つて
おる次第でございます。第八章といたしましては、
懲戒
において、
國民
は何人も
弁護士
に非行ありと思料する場合においては、
懲戒
の
申立
をなすことができることとし、これにより
弁護士
に対する
國民間責
の機会を開放いたしました。併しこれには濫り申入れる
弊害
もありまするので、その
調整機関
といたしまして
綱記委員会
を介入せしめて
懲戒申入
を選択するということに相成
つて
おるのであります。第九章といたしまして、
懲戒委員会
においては、
判檢事
、
学識経驗者
を加え、各
弁護士会
内に
綱記委員会
を設けることにいたしました。第十章といたしましては、
法律事務
の
取締
の章でありまするが、この章はいわゆる
三百代言禁止
の單行法をそのまま本
法案
に挿入をいたしたものでございます。第十一章は
罰則規定
であり、附則は
弁護士会
及び
弁護士会連合会
の経過的の
事務規定
であります。 以上が
本案
の
要旨
であります。さて、小
委員会
及び本
委員会
において
論議
の中心と相成りました点を申上げます。第一は、
判檢事
がその
就職地
において直ちに
弁護士
を開業する場合の
可否
でございます。この点は幾度か
協議
の結果、一年以内に
当該弁護士会
の地域内において常時
勤務
を要する
公務員
であ
つた
もので
弁護士
として適正を欠く虞れある者は、その
弁護士会入会
が
拒絶
されることがあると定めたのであります。第二は、
衆参両院議員
で三年以上
法務委員
たりし者に
弁護士
の
資格
を與えるの
可否
でありますが、これは差当り設けないことに決定をいたされたのであります。第三は、
裁判所
の
弁護士
に関する
規則制定権
の問題であります。この点は各
方面
の
意見
を徴し、
憲法
に牴触しないと思料したのでございます、第四は、
弁護士会
の当然
加入
の問題であります。
医師法
に比較いたしまして、
弁護士会
の
強制加入
はいけないという
論議
もあ
つた
のでございますが、併し
弁護士会自治
の
建前
上、各
弁護士
は当然
弁護士会
に入会し、その
責任
の所在を明らかにすることにいたしたのでございます。尚、
委員会
においては共産党を
代表
して梨木、上村両
委員
より、
弁護士
の不
適格者
のうちに禁錮以上の刑に処せられた者とあるが、
政治犯
による場合は
弁護士
になれるように修正して欲しいという
意見
がありましたが、結局採用されなか
つた
のでございます。 以上御報告申上げます。
伊藤修
3
○
委員長
(
伊藤修
君) では逐條について概略御
説明
をお願いいたします。
福原忠男
4
○
衆議院法制局参事
(
福原忠男
君) 私
衆議院
の
法制局
第二部長の
福原
でございます。この
弁護士法
の立案に際しましてお手傳いした
関係
から、
便宜只今委員長
の御指名によりまして
説明員
として
説明
さして頂きます。逐條的に簡單に申上げたいと思います。 第
一條
、これはこの度の
弁護士法
で新たに挿入しました部分でございます。これは
日本國憲法下
における
弁護士
の
使命
というものを特に強張する必要から第一項を設け、更に第二項は、これは
從來
第二十條で、
弁護士
が誠実に
職務
を行うという点はあ
つた
のでございますが、その誠実に
職務
を行うことを通じて
社会秩序
の維持或いは
法律制度
の改善という大
目的
に邁進するということを明示したものでございます。第
二條
は、これはやはり
現行法
の第二十條に
相当
するものでございますが、その
弁護士
の
職務
の
根本基準
としての心構えを
規定
したものでございます。これも新らしい
條文
でございます。第三條は、
現行法
第
一條
を大体踏襲したものでございます。尤もそのうちの
訴訟
に関する
行爲
というものに今度は
行政訴訟事件
などが加わりましたので、その点明示してあるのでございます。第二項は、これは現在の
弁理士法
乃至は
税務代理士法
で、
弁護士
は
弁理士
、
税務代理士
の
事務
を
登録
することによ
つて
行うことができるのでございますが、その
登録
というような事実をなくして、
弁護士
は
弁護士
としてそのままこれらの
事務
を行うことができるということにいたしたのでございます。 第二章は、
弁護士
の
資格
でございますがこれは
現行法
と大差はございませんが、これも逐條御
説明
申します。第四條は
弁護士
となる
資格
の
原則
を示したものでございます。現在は
日本國民
であるという
要件
をと
つて
おるのでございますが、その点は多少
裁判所法
或いは
檢察廰法
でその
資格
を外しておるような
関係
、或いは
國家公務員法
でその点の明示がないというようなところから、これを
弁護士法
で特に改めて
日本國民
である
要件
を加えることは如何かと思いますので、これを省いてあるのでございます。第
五條
は、
只今
の四條の
原則
の
例外
でありまして、これは
現行法
の四條と大体
考え方
を同じうしておるのでございますが、新時代に即して改めたところがあります。先ず第一号は、「
最高裁判所
の
裁判官
の職に在
つた者
。」とございますが、これらの方には
裁判所法
によりまして
判事
たる
資格
を有しない方がなり得る
地位
でございますが、一体
最高裁判所
の
裁判官
という
地位
にあられたならば、
弁護士
となることを当然認めていいじやないかという
考え方
から新たに設けられた号でございます。第二号は、これは
從來
もなか
つた
点なんでございますが、
司法修習生
となる
資格
を得た後
司法事務
の根幹である
業務
に從事した、而もその從事の
期間
が五年以上もなされたならば
弁護士
として
職務
をとるに十分であろうという考の下に置いたものでございます。第三号は、これは
從來三年
以上
帝國大学
の
法科大学
の
教授
であられた方に認められた
制度
なんでございますがこれを拡充いたしまして、別に
法律
で定めまして、
相当
の高度の
法律学
の專攻をされる
教授
、助
教授
の方には五年以上在職なす
つた
ならば認めてよろしいであろうというところから、こんなふうに改めたのでございます。四号は、これは二号、三号を兼職されたような場合の
年数通算
の技術的な
規定
でございます。第六條は、これは
現行法
の第
五條
と大体似ているのでございますが、これは第二号において、
彈劾裁判所
の罷免の裁判という
制度
が新たに設けられました
関係
から、これを設けました。これから三号の
懲戒処分
による制限と申しまするのは、これは他の
公認会計士法
とか、或いは
弁護士法
などにもございますが、それぞれ
懲戒処分
を受けますと、
一定期間業務
に就くことを制限されている
規定
がありますので、
弁護士
においてもやはり
懲戒処分
などを受けた者については、少くとも三年以内は
弁護士
の重要な
職責
を取らせるには不適当であろうという
考え方
から、新たに置いたものでございます。第
七條
は
現行法
の六條に
相当
するものでございますが、これは
外國
の
弁護士
となる
資格
を有する者が
日本
において
弁護士
の
事務
を取るということの
特例
を認めたのでございまして、一項においてはその
外國
の
弁護士
となる
資格
を有する人が、
日本國
の
法律
についても
相当
の
知識
を有する場合にほぼ
弁護士
と同樣に、三條に
規定
する全般の
事務
を行うことができることといたしました。更に若しその方が
日本國
の
法律
について
相当
な
知識
を有しない場合は、
外國人
又は
外國法
に関してのみ
法律事務
を行わせることができるというようにいたした次第であります。
從來
は
日本
人であ
つて
、
外國
の
弁護士
となる
資格
を有した者に対してはかかる
特例
は開かれていなか
つた
のでありますが、第
七條
においてはそのような人にもその
特例
が認められるようになりますのが新らしい
制度
なのでございます。尚この場合の
承認
については、
最高裁判所
が試驗又は選考した上で認めるということとし、而もその
承認
或いは取消しの場合に
日本弁護士連合会
の
意見
を聽くことを
要件
といたしておるのでございます。 第三章は、これは大体において
現行制度
と似ているのでございますが、ただ
從來法務廰
において取扱われました
弁護士
の
登録事務
というものを、挙げて
日本弁護士連合会
に與えたというところが新法の狙いなのでございます。第
八條
、第九條、第十條、それから第十
一條
などはそれぞれ
現行法
の第
七條
乃至十
一條
に
相当
する
規定
でございます。第十
二條
は、これは
弁護士会
の
進達拒絶
の
規定
でございまして、この点は
從來弁護士会
の
秩序
若しくは
信用
を害する虞れのある者というものについてのみかような
手続
が
規定
されておるのを、それでは余り抽象的に過ぎるということでありましたので、可なり具体的にこれを掲げるという方針でかような
規定
ができたものでございます。
從來通
り
弁護士会
の
秩序
若しくは
信用
を害する虞れある者については勿論これを含みますが、更に
進達
を求めた者が心身に故障があるとき、或いはさつき申上げました第六條第三号で、
弁護士
であ
つて
除名されたとか、或いは
弁理士
であ
つて業務
を禁止されたとか、
公認会計士
であ
つて登録
を抹消されたとか、或いは
税務代理士
であ
つて許可
を取り消されたとか、
公務員
であ
つて
免職されたという者は、その
処分
を受けてから三年までは
資格
はないのでございますが、三年経
つて
から
請求
して來たときにも、尚これを
弁護士
として
職務
を行わせるということが
弁護士事務
の
重要性
から適正を欠く虞れがあると認められたときには
進達
を
拒絶
することができるということにいたしたのであります。更に第二項はこれは先に
委員長
からも御
趣旨
の御
説明
がございました
通り
、
判事
、
檢事
の
在職地
における
弁護士開業
の
弊害
ということが可成り世間でやかましくな
つた
のです。又現在においてもその声は多々あるのでございますが、さような
睨み合せ
から可なりこれは草案においてははつきりした形で、
裁判官
、
檢察官
について二年間は少くともその
在任地
で
職務
を取らせるということは不都合ではないかという
趣旨
の
規定
を置いたのでございますが、又そのような新らしい
規定
を置くことが
法曹一元化
という
観点
から如何かというような点、更に
裁判官
、
檢察官
という
表現
を置くことも如何かという
観点
から第二項が出されたのでございます。尚この場合には
請求
前が一年以内にということに制限し、更にその
職務
を取らせることが特にその適正を欠く虞れがあるとして、第二号よりは多少
條件
を加重しておる
表現
をいたしたのでございます。尚この場合これは
弁護士
としての
資格
のある者が
弁護士
として開業することを現実としては拒否することになりますので、極めて大切な
手続
でございますので、これに対しては
進達
を受ける方からの
保護規定
を置くことが是非とも必要だと考えられます。さような見地からかような
登録
の
請求
の
進達
を
拒絶
するという場合には、これは後に申上げますが、
資格審査会
の
議決
を経ることを
要件
としております。尚この
資格審査会
はその公正を可なり考慮いたしましてできておる
委員会
でございます。更に又その
資格審査会
の
議決
を経て、かような適正を欠くかどうかということの
審査
をする場合には後の五十
五條
において特別に
手続規定
を設けております。更に又そのように
登録
又は
登録換
の
請求
をした者に対して
進達
を
拒絶
する場合は、速かにその旨を通知するという
保護規定
を第三項に置いたわけでございます。第十三條は、
現行法
の十
二條
にほぼ似た
考え方
でございますが、この度の第十
二條
で第一項、第二項において特殊の
進達拒絶
の
事項
を掲げた
観点
から、この点について若し
進達
を求めた者、
請求者
が
虚僞
の申告をしていた場合の考慮をする必要がございますので、十三條を特に設け、
登録取消
の
請求
を
弁護士会
がするという新らしい
規定
を設けた次第でございます。第十四條は、第十
二條
において
進達
の
拒絶
をされた者に対する
保護規定
でございまして、その要は先ず
日本弁護士連合会
に対して
異議
の
申立
をする、更に第二項においては
弁護士会
において
進達
を認められて後三ケ月を経ても尚何らの
手続
しない場合は、
請求者
としては大変迷惑のことでございますので、その場合の処置として
請求者
はこれは
進達
の
拒絶
をされたものとみなして
異議
の
申立
ができるという
保護規定
を設けたのであります。かような
異議
の
申立
がありますと、第三項において
日本弁護士連合会
が適当に
審査
をいたしまして、それぞれ適当に
進達
を命ずるとか或いは
登録取消
の
請求
を差戻すとか、又は場合によ
つて
はその
申立
に
理由
がないと認めれば棄却するという
手続規定
を置いたのでございます。第十
五條
は、今度は
弁護士会
が
進達
をした分について、
日本弁護士連合会
がこれを
拒絶
するという旨を
規定
してあります。そうして十六條では、かように
日本弁護士連合会
がいたしました
処分
について尚不服である場合には、その
処分
を違法又は
不当理由
として、
東京高等裁判所
に訴を提起ることができるという
最後
の
保護
の
規定
まで設けたのでございます。この場合
高等裁判所
に訴を提起することに限定いたしましたのは、これは
日本弁護士連合会
が常に
被告人
となる第三項の
規定
と相俟ちまして、
東京高等裁判所
にいたしましたことと事柄が
相当
重要な
事項
でございまするし、更に全國的に統一するという必要もございますので、これを一つの
裁判所
の
專属管轄
にいたした次第でございます。尚この
訴訟
は本質としては行政
訴訟
的のものと考えられますので、
行政訴訟特例法
に
倣つて必要規定
をこの十六條の三項乃至六項に
規定
いたした次第でございます。第十
七條
は、
登録取消
の事由を列挙いたしましたが、これは
現行法
と殆んど違いありません。ただ
國籍喪失
の場合を除いたのでありますが、これは先程の第四條のとこに申上げた
理由
から削除したのでございます。第十
八條
は、
名簿登録取消
の場合の
必要規定
を設け、更に十九條においては、これを官報を以て公告するというふうにいたしたのでございます。 第四章の
弁護士
の
権利
及び
義務
については、これは
現行法
の第十
八條
以下とほぼ似ておるのでございまして、
違つた点
だけ申上げます。第十
二條
で、特に今までは
弁護士
の
事務所
というもので
表現
してお
つた
ものを、特にこの
法律
で後に述べます
法律事務取扱
の
取締
に関する
法律
を吸收した
関係
から、新たに
法律事務所
という
制度
を置いて、
法律事務所
というものを法定の名称といたしたのでございます。尚第二十
一條
以下で、これは御
説明
申すまでもないことだと思いますが、
監督権
を
法律総裁
から
日本弁護士連合会
に引継ぎました
関係
から、それぞれの監督的な
規定
の場合に
日本弁護士連合会
というものが出てきておる次第でございます。第二十
五條
も、これも
現行法
の二十四條に
相当
する
規定
でございますが、その中に第三号だけは、これは新らしく入れた
規定
でございます。これも
弁護士
の
職責
の公正さを維持するため入れたものでございます。第二十六條、第二十
七條
、これは新たに挿入した
條文
でございます。これはやはり
弁護士
の
職責
の
重要性
に鑑みまして、その公正を維持するというところからその
趣旨
で入れたものでございます。
最後
に、第三十條の
規定
は、これも
現行法
第二十
七條
と照合するものでございます。ただ違う点は
弁護士
が
從來
は報酬ある公職を兼ねることができない、但し
國会
又は
地方公共團体
の議会の
議員
その他
官公署
から特定の
事項
について嘱託された場合を
例外
としたのでございますが、
弁護士
の
職責
が
法律家
としてますます各
方面
に
需要要求
がありますし、且つ又
專門的知識
によ
つて
國家的な各
方面
に進出するということが望ましいという
観点
から、併しながら又一面あらゆる
公務員
というものに就職することを認めれば、これは
公務員
というものが無定量の
勤務義務
を持つということと牴触するものがありますので、そのために常時
勤務
を要しない
公務員
ならば、
各般
の
委員
とか顧問という形の
公務員
であるならば、これを兼ねることができるというようにして、
弁護士
の
活動範囲
を
拡め
た次第でございます。 第五章は、
弁護士会
の
規定
でございますが、これも
現行法
と大体において似ております。その
目的
などは
從來通
りでございますが、これを第三十
一條
第一項で明示した次第でございます。第三十
二條
、第三十三條は特に申上げるところもないと思いますが、第三十四條は、これは新らしく設けました
條文
でございまして、
弁護士会
は
法人
でありまして、
公法人的色彩
を非常に持
つて
おるので、これに対して、
登記
を必要とするということは如何かという説も成立つかと思うのでありますが、
弁護士会
が
從來
に増していろいろな面で活動いたしますし、更に先程
弁護士会
の
進達拒絶云々
というような問題もありまして、
弁護士会
の対外的な
地位
を確立させて置く必要があるというところから、この
登記制度
を認めたのでございます。第三十
五條
、これは
弁護士会
の
会長
を
代表者
とする
規定
でありまして、
現行法
にもあるのでございますが、二項と三項について、特に明文を設けたのは、
会長
、副
会長
の
職責
が公務に從事する職員として極めて
保護
されると共に、その責務が加重されるということになる次第でございます。三十六條以下四十四條までは特段申上げることはございません。大体
現行法通り
でございます。 第六章において
日本弁護士連合会
の
規定
を置きました。これは全條新
條文
でございます。
弁護士
の
事務
について、これをいわゆる官僚的な
監督下
に置くか、それとも
自治統制
として
制度
をとるかということが基本的な問題でございますが、この
法案
で後の
自治統制
をとるという形をと
つて
おりまして、その
自治統制
の
中央機関
として
日本弁護士連合会
というものを設けておるのでございます。第四十
五條
は、その設立の仕方、それからその
目的
、そうしてその
法人
としての人格が與えられておるということを明示したのでございます。そうして会則についてはこれは大体
各地
の
弁護士会
と同様であ
つて
、必要なものを列挙いたしたのでございます。そうしてその本日
弁護士連合会
の
会員
というものは、四十
七條
において、各
弁護士
と、それから
弁護士会
というものが当然にこの
会員
になるということを明示いたしました。そうして四十
八條
では、
日本弁護士連合会
の
職責
と
睨み合せ
まして、その
弁護士
或いは
弁護士会
の指導は、連絡、
監督事務
について
官公署
その他に必要な
調査依頼
の権限があるということを
規定
し、更に第四十九條では、これと対照的に
最高裁判所
が必要と認める場合に、
日本弁護士連合会
を通じて、その
弁護士
或いは
弁護士会
に関する
調査
をするとか、或いは
弁護士連合会そのもの
の行う
事務
についても報告を求められるということを
規定
したのでございます。それから五十條は、
弁護士会
の中で必要な
規定
を準用しておるのでございます。 第七章の
資格審査会
は、これ又全條新
設條文
でございます。これは
弁護士
の
登録制度
と相
俟つて
、
登録
をせし
むる際
の
進達
を
各地
の
弁護士会
はいたしまするし、更に
日本弁護士連合会
は
登録事務
を取扱いますので、ここにおいて
登録
を
拒絶
するとか、
進達
を
拒絶
するという場合に、
必要機関
としてこの
資格審査会
を置いたのでございます。この
資格審査会
は第五十
二條
においてその
組織
を明示してありまするが、
会長
には当然
弁護士会
或いは
日本弁護士連合会
の
会長
があることといたしまして、
委員
にはこれは
弁護士
、
裁判官
と
檢察官
と、それから
学識経驗者
の中から
会長
が委嘱することにいたしたのでございます。即ち
委員
には四種類あるわけですが、そのうち
弁護士
と、それから
学職経驗者
の
委員
は、これはその
弁護士会
或いは
日本弁護士連合会
の総会の決議で
推薦
いたしまするし、
裁判官
については、これは
高等裁判所
若しくは地方
裁判所
の
推薦
、或いは
日本弁護士連合会
においては
最高裁判所
の
推薦
ということにいたしました。
檢察官
についてはこれと照合いたしまして、
高等檢察廳
の
檢事
長或いは
地方檢察廳
の
檢事
正の
推薦
或いは
日本弁護士連合会
につきましては
檢事総長
の
推薦
したもの、それを土台として
会長
が委嘱するという形式をとりました。尚五十三條は、この
審査会
の仕事が非常に重要なものでございますので、
予備委員
を置き、更に
予備委員
の構成も正
委員
と同じにいたして、
弁護士
、
檢察官
、
学識経驗者
からそれぞれの
関係
筋の
推薦
に基いて、或いは総会の決議に基いて選任するということにいたしました。第五十四條は、
会長
と或いは
委員
、
予備委員
の
地位
、
職責
を
規定
したものでございます。第五十
五條
は、その
資格審査会
が
弁護士
の
自治統制
機関としての最尖端の重要
事務
を行う
関係
から、
審査
に関して必要がありますならば適宜当事者、
関係
人は勿論、
官公署
その他に対しても陳述を求め、或いは
説明
を求め、資料の提出を求めるということができることを明記したのでございます。そうして第二項においては、これはそのような
資格審査会
の
審査
によ
つて登録
或いは
登録
の
申立
の
拒絶
というような大きな事柄が行われますので、これの
請求者
に対して
保護
をする、余め
保護
の
規定
を置く必要がございますので、第二項においてはそれらの者に対しては、若し
登録
の
請求
を
拒絶
するとか、
申立
を
拒絶
するとか、或いは
登録取消
の
請求
を可とする
議決
をいたします前に当事者に通知して、その当事者がそれに対しての弁明をする機会を與えようというのでございます。 第八章の
懲戒
は、これは大体現在の
制度
によ
つた
ものでございますが、現在までは
懲戒
裁判所
というものを控訴院の中へ設けていたのでございますが、控訴院の
制度
がなくな
つて
からは空文にな
つて
いるかと思いますが、これはその
考え方
を大体土台にいたしましたが、これも
弁護士会自治
の
原則
から、
懲戒
も他の機関に委ねるということは如何かと思われますので、これも自律的にみずから
弁護士会
或いは
日本弁護士連合会
がこれを一時的にするということの精神で
規定
したものでございます。そうしてこの
弁護士会
或いは
日本弁護士連合会
がいたすのでございますが、その場合には
弁護士会
にあ
つて
も、それぞれ
弁護士会
或いは
日本弁護士連合会
に設置されてあります
懲戒委員会
の
議決
を土台としてこれを行うことを明示したのでございます。先ず第五十六條で、
懲戒
権は第一次的にはその
弁護士
の所属の
弁護士会
が持
つて
おるということを
規定
し、第五十
七條
では
懲戒
の種類を四種類といたしてあります。これは
從來
過料の
規定
がありましたが、これは國家機関でない
関係
から、これを課することが如何かというので除きまして、それに代
つて
退会命令を入れました。五十
七條
三号の退会命令というのはこれは新らしい
制度
であ
つて
、
從來
の十
二條
の退会命令というものとほぼ似た
制度
をここに設けておるわけでございます。第五十
八條
は、これは
弁護士
の
職務
が公務に準ずるような性質から、廣く一般に
弁護士
の
事務
について
懲戒
の
理由
があるということを知悉した者は、何人でもこれが
懲戒
の
請求
ができるということを
規定
したのでございます。尤もこれは
委員長
の御
説明
にもありました
通り
、
日本
の現状においては或いは濫用されるんではないかという虞れも十分ございますので、かような
懲戒
の
請求
がありました場合に、直ちに
懲戒委員会
に付するということは行過ぎであろうというところから、第二項においては綱紀
委員会
で一種の下調べと申しますか、
調査
をさせるということにいたしました。この綱紀
委員会
というのは、後に述べます
懲戒委員会
が大体さつきの
審査
委員会
と同樣に、極めて嚴格な
組織
の下にあるのと対比いたしまして、綱紀
委員会
はこれは
弁護士会
の
会員
相互の間から選任するという、いわば仲間うちのことを仲間うちで先ず
調査
しようという考えから綱紀
委員会
というものができておるのでございます。そうしてこの綱紀
委員会
で
調査
いたしまして、その上で
請求
があ
つた
というようなものについて、やはりこれは
懲戒
することが
相当
だと認められた場合に初めて
懲戒委員会
にかけるというふうにいたしたのでございます。第五十九條では、かような
手続
をして
懲戒
を受けた者について尚
異議
があれば、
日本弁護士連合会
に
異議
の
申立
ができる、そういうことを
規定
し、
日本弁護士連合会
では
懲戒委員会
の
議決
に基いて、これに若し
申立て
の
理由
があれば
処分
を取消す、若し
理由
がないということになれば棄却するということにいたしたのでございます。更に第六十條で、
日本弁護士連合会
においてみずから
懲戒
するということの権限を認めました。これは場合によ
つて
は
各地
の
弁護士会
で殊更に
懲戒
に値するような
弁護士
についてその
処分
権を発動しないというような場合を慮
つて
の
規定
なんでございます。第六十
一條
は、
日本弁護士連合会
がみずからした
懲戒
、或いは
弁護士会
が
懲戒
した者について
異議
の
申立て
があり、それに対して
日本弁護士連合会
がこれを棄却したというような場合、それは棄却した場合にこれは
高等裁判所
に出訴することができるという
規定
を六十
二條
に置いてあるのでございます。併しこれと対蹠的に、今度は
懲戒
の
請求
をした者、即ち五十
八條
で何人も
弁護士
について
懲戒
の
請求
をすることができるのでございますが、この
請求
したにも拘わらず、
弁護士会
がこれに
相当
する
手続
をしないというような場合には、
日本弁護士連合会
にその
懲戒
を
請求
した者から
異議
の
申立
をすることができることにし、更に又
弁護士会
の
懲戒
の
処分
が不当に軽いというときも亦
日本弁護士連合会
に
異議
の
申立
をすることができるということにいたしました。この六十
一條
は五十
八條
の
規定
の
趣旨
を徹底させたものであります。尚六十三條、六十四條は
現行法
にも同樣の
趣旨
の
規定
があるわけでございます。 第九章の
懲戒委員会
及び綱紀
委員会
は、かような
懲戒
の重要な
職責
を
弁護士会
或いは
日本弁護士連合会
が誤まりなく執行できるために設けられた
制度
なんでございまして、
懲戒委員会
の
組織
は、これは大体において
資格審査会
を全く準用しておるのであります。それから第六十
七條
では、
懲戒委員会
の
審査
手続
について
規定
を置いてありまして、この場合の
懲戒
を受ける
弁護士
については、十分に陳述をする機会を與えなければならない旨の
保護規定
を置いたのでございます。第六十
八條
は、これは
判事
懲戒
法の五十四條などにもございます
通り
、
懲戒
が刑事
手続
と同時に進行しておるような場合には、刑事
手続
を先に進める方がいいと認められる場合は、
懲戒
の
手続
の方を中止して置くことができるという便宜
規定
であります。第六十九條では、この
懲戒委員会
の
組織
等を
資格審査会
の
組織
と全く同じにするための準用
規定
を設けたのでございます。第七十條と七十
一條
は、綱紀
委員会
についての
規定
でございます。第七十條では、綱紀
委員会
は、前に申しました
資格審査会
或いは
懲戒
委員
というものが、いわば
弁護士
としては外部の
裁判官
、
檢察官
或いは
学識経驗者
が加わるということと対比いたしまして、
弁護士会
の
会員
みずからの互選でこの綱紀
委員会
を構成するということが、第七十條の、今までの
委員会
と異るところでございます。第七十
一條
では、この性質と相反しない限り、從前のこの
資格審査会
の
規定
を準用する旨の
規定
を置いたのでございます。 第十章は、これは現在の
法律事務取扱
の
取締
に関することを、この
法律
の第九十
二條
、末条で以て廃止いたしますが、これと同じ
内容
のものを第十章に盛り込んだのでございます。 第十一章は、罰則の
規定
でございます。このうち新たに設けられたものは第七十
五條
、それから第七十六條、第七十
八條
でございます。第七十
五條
は、
弁護士
の公の
信用
ということを確保する必要がございますので、
弁護士
となる
資格
を有しない者が、その
資格
について
虚僞
の申告をして
登録
されたというような場合には、これを嚴重に
処分
するという
趣旨
から置いたのでございます。尚これはに未遂罪を罰する
規定
を置きました。第七十六条は、これは
弁護士
としては、官公吏のいわば涜職の
規定
と似ておるのでございますが、受任されておる
事件
の相手方から利益を受けたり、要求したり、又は約束をするということが、
弁護士
の高い
使命
に鑑みて極めて排斥すべき
行爲
なのでございますので、これを重く
処分
することにいたしたのでございます。それから第七十
七條
では、二十
七條
、二十
八條
で、非
弁護士
、
弁護士
でない人を
弁護士
が利用するとか、或いは係爭
権利
を讓り受けて、そうして
事件
を起すというようなことに対する
取締
りをする意味で、二十
七條
、二十
八條
に対する刑を加え、更に從前ありました七十
二條
、七十三條の
規定
の罰則を設けたのでございます。それから第七十
八條
は、これは例の両罰
規定
でございます。若し一定の使用人を使
つて
かような罰則
行爲
がありましたら、これについてその
法人
或いはその人までも
処分
をするという
規定
であります。それから第七十九條、これはやはり從前ありましたものをそのまま踏襲したのであります。尚この罰則については、
從來
七十
七條
については、「一年以下の禁錮又は千円以下の罰金」とな
つて
おりましたのを、「二年以下の懲役又は五万円以下の罰金」とし、更に七十九條の
規定
が、
從來
「千円以下の罰金」であ
つた
のを、「五万円以下の罰金」にしましたのは、ほぼ刑法について罰金等臨時措置法により五十倍の罰金額といたしたことと
睨み合せ
まして、罰金額につき上げ、更にこれと照合する意味で、懲役刑についても多少の年限の延長を認めたわけであります。 それから附則は、これは大体において経過
規定
でございまして、それぞれ現行
弁護士法
からこの
法律
に乘り移るまでの間における
必要規定
を網羅したものでございます。そうして大体申上げますと、第八十條は、この
法律
を今年の九月一日から施行するということにいたしました。第八十
一條
では、從前の
弁護士
の
資格
ある者は、全部的にこの
法律
においても
弁護士
としての
資格
を持つということを明示したものでございます。それから第八十
二條
は、現在
弁護士
試補である人についての
特例
を設け、この方々も勿論
弁護士
として將來活動できるということを明示したのでございます。それから第八十三條は、これは第六條でいろいろと
弁護士
の欠格事由を挙げましたが、この中ではそれぞれ新らしく最近に作られた
法律
の
制度
を掲げておりますが、それと照合する
從來
の
懲戒処分
がございますので、それの一種の読替
規定
のようなものを置いたのでございます。即ち
公認会計士法
の前身である経理士法においてやはり
懲戒
された者であるとか、或いは
國家公務員法
で以て
公務員
としての免職の
懲戒処分
を受けた者は、從前の官吏
懲戒
令によ
つて
免官の
処分
を受けた者とみなすというのがその
趣旨
でございます。それから八十四條から八十
七條
までは、
弁護士名簿
その他が從前の法務総裁から
日本弁護士連合会
に引継がれる
関係
から、必要なことを拾い上げておるのでございます。先ず
弁護士名簿
の
登録
というものは変るわけですが、旧法ですでに
弁護士名簿
に
登録
されておる方々については、又改めてこの
法律
で
手続
きをとるという煩瑣なことを避けまして、さつき申した八十
一條
で、当然從前の
弁護士
の
資格
ある方は、新法においても
弁護士
として活動できることなのでございますので、そのままこの
法律
による
弁護士名簿
登録
とみなし、そうして八十
七條
で、その
弁護士名簿
等は從前法務府に備えられておりましたものを、
日本弁護士連合会
の方に引継ぐことにいたしました。更に丁度この
法律
と乘移る頃に法務総裁に
登録
又は
登録換
の
請求
をしていたような者は、これは
日本弁護士連合会
の方にその
請求
の
進達
があ
つた
というように八十
五條
で決め、更に又從前の
弁護士
の
事務所
をこの
法律
による
法律事務所
であるということにしたのであります。それから八十
八條
は、これは現在ございます弁護会というものを、そのまま新法の
弁護士会
とし、そうして現在ございます
弁護士会連合会
の中で同じ
高等裁判所
の管轄区域内の
弁護士会連合会
ならば、これをこの
法律
による
弁護士会連合会
と見るということにします。尚それに関連する必要な
登記
その他の
規定
を置きます。それから第八十九條は、この
法律
では第三十
二條
で一地方
裁判所
区域に一
弁護士会
という
原則
を掲げておるのでございますが、現在かような一地方
裁判所
区域内に、特殊の事情に基きまして、二個の
弁護士会
の存在するところがございますので、それでは
從來
の沿革と実績等を尊重いたしまして、そのままこれを存続させるということに第八十九條で認めたのでございます。尤もそのことはやはり第三十
二條
の
原則
から言えば
例外
的の措置なんでございますので、今若しかような二個以上の
弁護士会
が將來合併或いは解散するという事態になるような情勢になりますれば、いつ何時でも三十
二條
の精神に則
つて
、合併又は解散することができるということを二項、三項で謳
つた
のでございます。それから九十條は、先程から申しましたように、法務総裁の
從來
取
つて
おります
弁護士
に関する諸般の
事務
を
日本弁護士連合会
が一手に引受けるという画期的な
連合会
の設立というものが考えられるのでありますが、さような場合この九月一日に直ちに発足するということについては極めて時間的に困難と考えられますので、八十條でこの九月一日から施行するということの以前において、すでに準備
手続
を直ちに開始することができるような配慮から、九十條を設けたのでございます。それから第九十
一條
は、これは終戰後の特殊の事情から、外地から戻られた方などの
弁護士
或いは
弁護士
試補の
資格
の
特例
の
法律
がございますので、それを從前の
通り
この
法律
がありましても生かして置くという
規定
でございます。尤もその
法律
の中に
資格審査
委員会
というものがありまして、そこでその
審査
することにな
つて
おるのですが、これは丁度
日本弁護士連合会
の
資格審査会
が行われることが最も妥当と考えますので、それに乘り移らしてあるのであります。それから九十
二條
は、さつき申上げました
法律事務取扱
の
取締
に関する
法律
は廃止する
規定
を明示したのであります。それの違反
事項
については從前
通り
、この
法律
廃止後も從前の
規定
について刑罰を科することができるということを明示したのでございます。非常に簡略にお話し申上げたので、十分この
趣旨
の徹底しなか
つた
ところがございますと思いますので、御質問に應じまして適宜お答え申上げたいと思います。
伊藤修
5
○
委員長
(
伊藤修
君) では本法に対するところの質疑に入ります。
來馬琢道
6
○來馬琢道君 先程
大綱
だけを聽いて、実はまだ
條文
の精読はしていないのでありますが、
外國
という字がありました。私は
司法委員会
のときに、満洲國及び朝鮮等において
法律事務
に携わ
つた
諸君を、我が國における官歴及び業歴と同樣に取扱うという問題について司法当局に質疑をして、そのとき我が國の学説を同じうするから
外國
でや
つて
もよかろうということで、朝鮮のことは後にしますが、そのときに満洲國のことを言
つて
お
つた
のであります。今
外國
という言葉が又ここに出て参りましたが、
外國
が大変終戰後
範囲
が廣くなりまして、シヤム、フィリッピン、朝鮮、中國というような所、まだ
外國
と言
つて
取扱
つて
いいかも知れませんが、ビルマとか、インドネシアとか、佛領インド支那、ああいう國、或いはインドのごときでも、大学こそあれイギリス人の建てた大学であ
つて
、インド人の建てた大学でないのが今あるというような状態の國々におきまして、この
外國
という文字が直ちに用いられることは非常に危い氣がよるのです。こう言いますと、東洋における独立せる國を侮辱するような向きになるかも知れませんけれども、私は自分で踏んで來た土地であるのと同時に、最近の世界情勢に対して一種の危惧の念を抱きますから、その
外國
ということについては何か國によ
つて
区別を附けることができましようか。できなくて、いたし方ないからそのままにして置いて、あとは内地の方で
審査
するときにこれを差別待遇するというようなことにでもいたしますのか、そこを立案者の御
意見
を伺
つて
置きたい。
鍛冶良作
7
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) その点は第
七條
に関する
規定
に
相当
するものと心得るのであります。この第
七條
の第一項は、
外國
の
弁護士
たる
資格
を持
つて
お
つて
日本
の
法律事務
を取扱う者と
規定
いたしました。從
つて
日本國
の法務について
相当
の
知識
を有する者、この
條件
が附いておるのであります。第二項は、
外國
の
弁護士
となる
資格
を有する者で
外國人
又は
外國法
に関し、その人に属しておる國の外でもいいかも知れませんが、主としてその属しておる國人の
法律事務
若しくはその國の
法律
に関する
事務
をやる、そういうものならばよろしい。こういうふうに
規定
いたしましたので、
日本
へ來て
弁護士
をやるからとい
つて
、
日本
の
法律事務
をそのままやれるということではないのでありますから、今の御疑問の点は
相当
解決できるかと思うのであります。その上にいずれ両方とも
最高裁判所
の
承認
を受けなければならないのでありますから、それが第三項において「
最高裁判所
は、前二項の
承認
をする場合には、試驗又は選考をすることができる。」こういうことにな
つて
おるのであります。 もう一つこの
規定
について御
説明
申上げたいのは、この原案と申しまするか、いろいろそこで歴史があるのですが、これには
外國
との相互條約の
規定
が初めにあ
つた
のであります。これはいずれの國にもありまするので、例えばアメリカの例を取
つて
言うと、
日本
の
弁護士
がアメリカへ行
つて
アメリカの
弁護士
になるということをアメリカの
法律
が認めておれば、それに相應して
日本
でもアメリカの
弁護士
をして
日本
で
法律事務
を取らせる、こういうことにこれは
規定
してあ
つた
んですが、ところが戰爭後未だ
日本
は
外國
と対等の
地位
におらんものですから、さような
規定
を設けることになると、すべて
外國人
は
日本
で
弁護士
になれないことになりますから、それで思い切
つて
それを削除いたしまして、かようにな
つた
歴史があるのであります。御参考に申上げて置きます。
來馬琢道
8
○來馬琢道君 曾て中國の人が
日本
の大学に学びまして、
日本
の
法律
は勿論、
日本
人によ
つて
一般
法律
の
知識
を與えられた場合、自分達は
日本
の大学を卒業した者であると言
つて
、私共と交際をしたことがあります。その辺のことを考えますので、何か知らん新らしくできた小さな国の中に、そういう例えばビルマ人、印度人が
日本
に留学することがないとも限らない。ちよつと
外國
という文字にも危惧の念を持
つた
のであります。
只今
のお話のように、第三項においてそれを選考をすればよいかと思います。
鍛冶良作
9
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 今の例によりますと、ちよつとまだ
説明
が足らんかも知れませんが、如何なる
外國人
でも
日本
で
法律
を学びまして、そうして
日本
の
司法試驗
を受けて、それに及第して修習生を経れば、これは当然なれるということにな
つて
おります。そうでなくて
外國
だけで、
日本
の
法律
によらず、
外國
で
弁護士
の
資格
がある者、これをここえ
規定
しております。
來馬琢道
10
○來馬琢道君 大体分りました。
松村眞一郎
11
○松村眞一郎君 第三條の二項の「
弁護士
は、当然、
弁理士
及び
税務代理士
の
事務
を行うことができる。」という意味は、
弁護士
が
弁理士
に、
弁護士
という
資格
のまま行う意味でなかろうと私は思うのである。やはり
弁理士
として行い、
税務代理士
として行うということになるのじやないかと思う。
弁護士
で当然
弁理士
の仕事をするというのではないと思う。それであればこういう
規定
は
弁護士法
に書くべきでなくて、むしろ
弁理士法
なり、
税務代理士法
の方に書くべきであると、私はそう思う、これはどういう意味ですか。当然
事務
を行うことができる、それは
弁護士
として
事務
を行うのであるか、
弁理士
として
事務
を行うのであるか、これは甚だ明瞭でない。こういう書き方をしたのでは、
弁理士
の
事務
を行うことができる、
弁護士
は当然
弁理士
のことができる、こういうつもりであるとすれば、
弁護士
の方は
職務
の
範囲
が廣くな
つて
しまう。それならばここに書くのはおかしいのであ
つて
、
弁護士
はこれこれの
事務
を当然行うということに書かなければいけないと思う。
弁護士
それ自身の
職務
の
範囲
を廣くするというつもりであれば、
弁護士法
に書く
理由
があると思う。当然
弁理士
になるという意味であるならば、これは
弁理士法
に書くべきものであ
つて
、例えば公証人法の中に、
判事
や、
檢察官
はなれるということが公証人法に書いてある。どうも私は余計なことを書いておると思うのですが、その点どういう意味ですか。
弁理士
の
業務
を行うという意味は……
鍛冶良作
12
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) これは随分議論のあ
つた
條文
なんですが、その出て参りまする元は、第三條の第一項から参りまするので、一項の後の方に「その他一般の
法律事務
を行うことを
職務
とする。」こうあります。從いまして、
法律事務
に関するものであるならば、
弁理士
であろうが、
税務代理士
であろうが、何であろうができるのだ、かように解釈しております。ところがあなたのおつしやるように、
弁理士法
とか、
税務代理士法
というのがあるから、そういう疑念が起きたら、どうだということで、或いは当然かも知れませんが、第二項を設けて、これもできるのだ、こういうことを明記した次第であります。
松村眞一郎
13
○松村眞一郎君 それでは甚だ不明瞭であると私は思います。この
弁理士
の仕事は全部
法律事務
でない、
弁理士
の仕事全部が……この意味は
弁護士
は
弁理士
になれるということを書いたに過ぎないと思う。
弁理士
の仕事全部が
法律事務
ではないということが言える。
弁理士
の仕事は
法律事務
であるということは言えない。これはどうしても
弁護士
にな
つて
おれば、
弁理士
になれるのだということの意味にしかとりようがない。
弁理士
の仕事、
税務代理士
の仕事は
法律事務
であるというならば、第二項は要らない。それが
法律事務
ならば初めから書いてあるのですが、一般の
法律事務
を取扱うということが書いてある以上は、何も二項は要らない。これはどうしても
弁理士法
なり、
税務代理士法
の方に書くべきものだと私は思う。少し横に入
つて
何でも彼でも
弁護士
の方で取り込むというような態度の
規定
に感ぜられる虞れがあるという意味において、これは私はいけないと思うのです。
鍛冶良作
14
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) それ以上は議論になりまするが、この前は
弁護士法
に、
弁護士
たる者は
弁理士
になれるということが書いてあ
つた
のです。今あなたがおつしやるように……。ところが
弁理士
の仕事は、
法律事務
に非ずということになると、これは議論になりまするが、
法律事務
である、又
法律事務
に附随したる技術的なことも、これはあるかも知れませんけれども、これは
弁護士
にしたところが、
訴訟
事件
などもいろいろあるのでありますが、そういう意味から
弁理士
の仕事は
法律事務
なり、こういう解釈の下から、これを書いたのであります。
松村眞一郎
15
○松村眞一郎君 そういたしますと、
弁護士
と書いて特許の
事務
の出頭ができますか、
弁理士
ということを書かないで、
弁護士
だけでよいのですか。
鍛冶良作
16
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) そうです。
松村眞一郎
17
○松村眞一郎君 そうすると、
弁理士
を仕事を当然
弁護士
がやる、こういう意味ですね。それではそういう意味に承わ
つて
置きます。そういたしますと、例えば
弁理士
の方が
弁理士
会を作るとすると、
弁護士
は全部入
つて
しまうわけですね。
鍛冶良作
18
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) その点は
弁理士
会にそういう必要があれば入らなければならんと考えます。併しそれこそ
弁理士法
や、
税務代理士法
で決めることでありまして、
弁護士法
で決めることでないのです。
弁理士
会で
弁理士
会に入らなければ、これこれのことができんと
規定
してあれば、入らなければならんと、かように私は解釈しております。
大野幸一
19
○大野幸一君
本案
に対して一册も参考資料というものがないのです。幸い
日本
の大分アメリカナイズした今日ですから、
提案者
の方でアメリカの
弁護士
制度
、若しくは英國の
弁護士
制度
の概略の参考書を提出して貰いたいと思います。この機会にそれをお願いします。それからもう一つ
資格
問題につきまして、「
最高裁判所
の
裁判官
の職に在
つた者
。」以下から四項に至るまでの現在の人員数は、どのくらいあるか、現在の標準としてどのくらいの予定数があるか、いわゆる第
五條
に
相当
するものの現在の予定石と申しますか、そういう
資格
を持
つて
おる者は、どのくらいあるかといす統計、それからいろいろ鍛冶
委員長
は
衆議院
において、この懇談会の所きに問題にな
つた
ということをかねて御承知でしようが、高等試驗を合格していて、そうして各種立法に関する審議会、
委員会
、それは
法律
に基く審議会、
委員会
等に関するものそういう
名簿
、こういうものを一つ提出して貰いたい。
鍛冶良作
20
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 何かメモでも後で貰えませんか……。法に嵌るものがどのくらいあるか。
大野幸一
21
○大野幸一君 それは高等試驗を受けて……、あとで問題にな
つて
來ましてから私が言います。高等試驗を受けて各種立法に対する
法律
上設けられたる審議会、
委員会
そういうような種類に属する……
鍛冶良作
22
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) その高等試驗とは
司法試驗
ではないですか。
大野幸一
23
○大野幸一君 はあ、全部で……
鍛冶良作
24
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) もう一つ。
大野幸一
25
○大野幸一君 最初に申しました英米の
弁護士
制度
に対する簡單なる参考資料。
伊藤修
26
○
委員長
(
伊藤修
君) ではこちらでなるべく早く。
松村眞一郎
27
○松村眞一郎君 第三十三条の二項の十一号に「
司法修習生
の修習に関する
規定
」というのがありますが、
裁判所法
の第六十七条の三項を見まするというと修習に関する
事項
は
最高裁判所
がこれを定めるということが書いてあります。その
最高裁判所
の定める
関係
と
弁護士会
の定める
関係
とはどういうふうになるのですか。
裁判所
の定めることに違反するというやつはおかしいですが、それと違
つた
ことをやるというような場合が私は起り得ると思う。むしろ
司法修習生
の修習に関することはですね。
最高裁判所
がやるべきじやないかと思う。
弁護士会
でこういうことをやるということは、
司法修習生
の修習ということは、これは全部
裁判所
に國家としては委任してある。その
関係
はどうです。
鍛冶良作
28
○
衆議院議員
(鍛冶良作君)
只今
の点はですね。この
弁護士会
の会則は
弁護士会
の活動についての
規定
を掲げるものなんでございます。そしてその
司法修習生
の修習というのは、本則としては
裁判所法
に基いて
裁判所
がこれを
規定
するものでありますが、
裁判所
の方の
司法修習生
に関する
手続
の中には、実務修習には
弁護士会
において当然実務の修習に当るということが予定されておりまするし、その旨の
最高裁判所
の規則なども出ておるのでございます。從いましてここにおきまする
司法修習生
の修習に関する
規定
というのは、三十三條の各外の号もその
通り
なんでございますが、
弁護士会
における
司法修習生
の修習に関する
規定
、こういうふうにお読み願えたら非常に結構だと思うのです。
松村眞一郎
29
○松村眞一郎君 そういうことに読めないということから私は言
つて
おるのです。修習生の修習ということはすべて
裁判所
に今委任している。これは議論になりますからそれ以上申しません。修習生に関する
規定
なら、或いはいいでしよう。併し修習に関する
規定
ということになれば、これは
裁判所
の方では
弁護士
にも向くように、
檢察官
にも向きようにというので修習するのですから、その
裁判所
に任せておることを
弁護士会
の方でかれこれ言うべきことはない筈で、若しそれが不都合ならば
裁判所法
の方を改正しなければならない、それは別の議論にならなければならないと思う。元來
弁護士
にもなる人の修習を、全部
裁判所
にお任せしたという根本論から問題は出発するのでありますが、すでにこういうことにな
つて
おる以上は、修習生の修習のでき上るまではすべて
最高裁判所
にお任せしたという態度で行かなければいかんと思う。これは実は議論になりますが、よくお考え願いたい。なぜ私がこういうことを申すかというと、私の直感が、
弁護士法
が何となく
弁護士
の方に何でも抱え込もうというような印象を與えることにな
つて
はいけないという心配からするんです。それはですね、それは一番問題になるのは十二条の二項です。この第十
二條
の第二項の押録又は
登録換
の
請求
前一年以内に
公務員
であ
つた者
はいけないと、それは場合によ
つて
は
登録
しないことになる。この
規定
がですね。大きな問題である。これはですね。
公務員
としてはよろしいであろうかどうかということは私は伺いたい。これはむしろ
弁護士法
に聽いてもいかないでしよう。外の法に聽いた方がいいかもしれない。国家として
檢察官
が一年以内に
弁護士
になることは
檢察官
として大都会なのかどうかという問題を私は考えなければならない。あとで
弁護士
になるつもりで初め何らかの工作をするというようなことが若し行われ得るものであるとするならば、それは
檢察官
の
方面
で警戒すべきことであ
つて
、それこそ國家の
公務員
なのですから、現に
弁護士
は直接の國家のことをや
つて
おるんじやないのですから、国所しては
弁護士
のことを考えるよりも
裁判官
及び
檢察官
のことを考えなければならない。一年間に
弁護士
になるということが惡いことであるならば、
檢察官
、
裁判官
なりがそういうことをやらないような具合に
裁判所法
の方で書かなければならん。
檢察廳法
で私は書かなければならないと思うのでありますけれども、私の端的な
意見
を申しますと、十
二條
の二項というものはこれは要らないという考えなんです。こんなものは
弁護士法
で書くべきものではない。こういう頭で私はおるわけなんであります。これを尚立法上から申しますと、
弁護士
と
裁判官
というものは私は始程流通するということを考えておる。虚心坦懷に
裁判官
で
弁護士
にな
つて
立派に働ける人は迎えた方がよいんじやないかと思う。何が故に昨日まで
判事
をしてお
つた者
が、その
職務
の土地で非常に名聲があるという人が
弁護士
になるならば、むしろ観迎すべきである、
弁護士
として入るような人があるんであれば、それは
弁護士
として迎えてよいんじやないかと思う。こういうこと、現に
弁護士
が利益を害される虞れのあるような意味のことで、こんな
規定
を置いたということは
弁護士
の権威に関することと思います。誰でもお出でなさいということを私はむしろ考えます。第十
二條
の第二項のごときは、これは削除すべきものである。若しそういう必要があるかどうか、これは私はないと思う。
弁護士
の
職務
を行わせることが特にその適正を欠く虞れがあるか、どういう場合であるか、どういうことを言
つて
おるのであるか、世間ではそういことで騒いでおる。私は
檢察官
なり、
裁判官
などか騒いでおることは私は意味をなさないと思う。
職務
を迫害するとい
つて
おるが、これは
弁護士法
にこういうことを書くことがおかしい。観迎したらよいじやないか、こういう
規定
がなぜ要るか、尚具体的に
弁護士
の
職務
を行わせることがその適正を欠く虞れがあるかということを具体的に承わりたい。その適正というのは何を意味するのか、「その適正を欠く」という「その」は何を指すのか。文字が甚だ曖昧であると思うが、大体思想が曖昧であるから文字まで曖昧にな
つて
來るのじやないかと私は思
つて
おる。そういう
弁護士
の
職務
を行わせることが、その適正を欠く虞はないと私は考えておる。
從來
弁護士
の方でもいろいろこの二項ということで騒いだわけなんです。
裁判官
も
檢察官
も騒いでおる。こんなものを
規定
する必要はない。國の方にお聞きにな
つた
らどうか、
裁判官
なり。
檢察官
の方で惡いのかどうか、在職中の者が一年以内にということは殊に
公務員
法の中に書いてある。営利に
関係
あるものにはなつちやいかんと
公務員
法に書いてあるが、裁初官は特別官であるが故に書いていない。
檢察官
は特別官じやない、そうすると営利の方に入つちやいかんけれども、
弁護士
になるということは國の方としてはむしろ歓迎していいのじやないか。何故私がそういうことを申すかというと、
弁護士
の修練を経た人は、
裁判官
にな
つて
貰いたい。生き生きとした
裁判官
が直ぐに
弁護士
にな
つて
來れば尚生き生きした弁ができると思う。何を苦しんでこういう
規定
を置くのかと世間では思うでしよう。これは
弁護士
が自己の
職務
に不利益なるから、ギルドや何かのように
職務
の門戸を閉鎖して自分さえよければよいという、それこそ営利観念である。そんなことでこういう
規定
が生れておるというような工合に思われやしないかという意味で、むしろ
弁護士
として権威にかかるということを私は考えておる。逆なんです。私は歓迎しようというのです。昨日までや
つて
お
つた
人、生き生きした
判事
であるからこそ
弁護士
として生き生きとしてできるのじやないか。私はそう思いますから、立法論として私は反対であると申上げます。
理由
が分らないということを申上げます。
鍛冶良作
30
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) さつきの修習の点は、成る程この字では曖昧であるとおつしやればそうかも知れませんが、今
福原
法制部長から申しました
通り
、
司法修習生
の中で
弁護士会
でやることをやるのだと、こういう意味で書いてあるのであります。これは
表現
が惡ければ別ですが、意味だけはそういうことであることを御了承願いたいと思います。更に十
二條
のその問題は誠に随分議論のあ
つた
問題でありまして、今の御説は私も全部御
趣旨
としては同感であります。從いまして我々は法曹一元の理論を唱えておりまする以上、御説の
通り
弁護士
はいつでも
裁判官
、
檢察官
になれる。又
裁判官
及び
檢察官
はいつでも
弁護士
になれる。常に人事の交流をやらなければならんことは最も深く考えて立案したつもりであります。從いまして若し
裁判官
及び
檢察官
が
弁護士
にな
つて
下さるときには
弁護士会
は双手を挙げてこれを歓迎するものであることは、ここに私は
弁護士会
の
意見
を
代表
いたしまして明確に申上げて置きます。決してこれに文句を言おうという考えはありません。ただ御指摘のように、
裁判官
並びに
檢察官
の在職中に
弁護士
とな
つて
感心されない
行爲
のあ
つた者
がままあるのであります。これは中央よりも地方に最も多いのでありまして、地方にはそれに対しては数う切れない程の
弊害
及び苦情が現われております。これは誠に遺憾なことである。そこで今御説のように、それなら
裁判官
及び
檢察官
としての適格を欠いておるのじやないか、その方で然るべくやればいいじやないか、こういう御説である。成る程これも
考え方
でありますが、その
通り
びしびしや
つて
貰えばいいのですが、それをやらないで辞めて來るのですから、辞めて來て
弁護士会
を入れて呉れと、こう言うのです。そのときに
弁護士会
から元のや
つて
お
つた
辞めない先のものが惡か
つた
から、いわゆる辞めない先を
裁判所
及び檢察廳でそれを然るべくやれと言
つて
も、ちよつと途はないと考えるのであります。さような人は余程稀でなけりやなりません。又今後はそういうことがないことを我々は希望しておりますが、過去における実例としては実際止むを得ないのです。正直に申しますると、我々東京で初めから
弁護士
をや
つて
おりますから、それ程痛感されないので、まあいいじやないかという議論もして見たのですが、地方では、実際実例を挙げてどうあ
つて
もやらなければならんというので、前に二年というのを入れましたのです。 それからもう一つここで
公務員
というのがありましたのは、これはついこの間を議論があ
つて
改正したのですが、前に
判事
若しくは
檢事
をや
つて
お
つた者
と書いてあ
つた
。それで
裁判官
並びに
檢察官
から
判事
、
檢事
というものを特に挙げて、どうも
判事
、
檢事
をやれば
弁護士
になれない
資格
を持
つて
おるような印象を與えることは甚だ面白くないということで、このように改めたのでありまして、これについても御説のように或いは却
つて
曖昧だという点もあるかも知れませんけれども、いろいろ紆余曲折を経たる結果、かようにな
つて
しまいましたのであります。それから今御指摘になりましたその地域内において
弁護士
の
職務
を行わせることが特にその適正を欠く虞れというその方は、
弁護士
の
職務
を行わせるに適正を欠くという意味でございます。まあ御了承の程をお願いいたします。
松村眞一郎
31
○松村眞一郎君 議論になりますが、そういうことなきを希望するという点なれば、そんな
規定
を置くのは、私は惡いと思う。なきことを希望するなら、それは道徳でやるのがいいのであ
つて
、
法律
で書くということそれ自身恥辱だと思う。そんな者がおるということを示すことになると私は思う。殊に
判事
、
檢事
と書くと困るからというて
公務員
まで拡張することは何のことであるか、意味をなさない。どんな
公務員
でもということになると、それは具体的になるから他の
公務員
は默
つて
しま
つて
、
公務員
はどこまで行
つて
何を考えているかということを伺うのでなければ、
公務員
全体の名誉のために極めてこういう漠然とした……、却て惡くなるのですから、
弁護士
は
判事
と
檢事
だけ兼ねられればいいというところに、
判事
檢事
だけはそういうことになるから困るという議論があるからと言
つて
、それを
公務員
に拡張するということはごまかしじやないかと私は思う。立法がそういうごまかしとか、妥協ということでやるべきものじやないと思う。神聖な
裁判官
の
職務
と並行している
弁護士
の
規定
について曖昧模糊たる態度でやるということは、
法律
の権威を害すると思う。一番大事なことなんです。
弁護士
というものに、そう大事な職を扱う人に対して曖昧模糊たることを被せて
法律
を通すというその態度それ自体がよくないと私は思う。何故
判事
と
檢事
と書いて惡い、惡ければ惡いとそれで堂々と
國会
の方に持
つて
來られて、
國会
の
議員
に判断させたらいいじやないか。惡い言葉を以て使うならば、穏かでないかも知れませんが、妥協してそうして漠然とした言葉を使
つて
いることは、或る意味において
國会
を侮辱していると思う。言い過ぎかも知れませんが、私の心持を御了承願いたい。もう少しまじめに眞劍に行こうじやないか。それが甚だ惡いものであるならば、
檢察官
と
判事
の
意見
を
法務廳
で聞きます。何故そういうことがいけないのか。私はそれよりもむしろ削る案です。削
つて
しま
つて
いいと思います。地方に非常に
弊害
があるという仰せでありますが、それならばその
弊害
を直すべき
判事
、
檢事
が惡いのではありませんか。それならばそういう惡い
判事
、
檢事
のあることを
弁護士
として默認して
弁護士法
を作るそれ自身が私は
弁護士
の態度としてよくないと思う。そういう
判事
、
檢事
があるならば、その
判事
、
檢事
を廓清して貰わなければならないということを先ず唱えるべきであ
つて
、それはそのままにして置く、
判事
檢事
にそういうことがあることは仕方ない、
弁護士
だけ防止するという態度では眞摯な態度ではないと私は思いますから、そういう
趣旨
でそれが書いてあるならば、それは私は反対であります。
鍛冶良作
32
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 余り御議論にな
つて
もいかんですが、
判事
、
檢事
でそういうことがないことを希望しているのは、これは私一人ではあるまいと思います。從
つて
今後はそういうようなことのないように上司においてもそのことを命じ、一般からも注意をして言
つて
貰いたい、こういうようなわけであります。それであるが故にその
弊害
の一遍になくなるとは認められないのです。これは情ないことでありますが、実情であります。その実情からしてこの
規定
を設けたものであることを御了承願いたいのであります。それから先程今まで変
つて
來た例を言いましたが、
判事
、
檢事
を除いて
公務員
にしたということは妥協とおつしやるけれども、そうではありません。向うからの議論では、若しそういう
弊害
があるものとするならば、
判事
、
檢事
ばかりがそういう
弊害
があるものでなかろう、他にも予想できないことはなかろう。こういうことで我々は篤と考えた結果、成る程そういうことも予想できんこともないから、それではそういう予想のできるものがあれば、これを除くということにしてよかろう。かように考えてや
つた
次第であります。
松村眞一郎
33
○松村眞一郎君 議論になりますから申上げませんが、そういうことを希望してお
つて
、経過的にそういうことを考えているなら、附則にお書きにな
つた
らいいでしよう。そんなものを本則に書いて堂々と、こういうものが後で
審査
をして
裁判所
に持
つて
行くなんということは、これは重大な問題です。これがひつかかるのです。これは本文に書いてそういうことを堂々と書くこいうことは、私は感服しないということを申上げます。殊に
公務員
にもあるじやないかということを
判檢事
が言うたからとい
つて
、
公務員
を入れられることは甚だ迷惑な話です。
判事
、
檢事
が他の
公務員
のことを言
つた
からとい
つて
、直ぐ他の
公務員
に
弊害
があるというような漠然たることで
公務員
ということをお書きになるということは、私は非常に立法としても甚だ迂潤であるということを申上げていいと思います。
公務員
というのはどこまで行くのか分らないのです。何を考えておるかということを具体的におつしや
つて
頂かなければ困る。どういう
公務員
を言
つて
おるのか、それを具体的に書きましよう。なぜかというと、これは
権利
に関することなんです。場合によ
つて
は
登録
されないかも知れんということであるならば明確にせんといかんのです。こうこういうものについてはいけないということを、何だか分らないことを言
つた
ならば、
登録
をするときにそれで
拒絶
されるかも知れんという漠然としたことが、人の自由を拘束するということは、私はいけないと思う。
登録
を
拒絶
されるかも知れんということであるならば殊に明確に書かなければいかん、こうこういうものについてはいかんと漠然と書いて、それが後で
登録
を
拒絶
されるかも知れんというがごとき態度でこの二項をお書きになるということは、立法論として感服しないということを申上げて置きます。そういうようなお考えであるならば、殊に
判檢事
においてそういうことが事実あるということであるならば、その方を一つ救済することを一日も私は速かにやらなければならんことだと思います。それは
弁護士
になるだけの問題じやないので、
判檢事
の問題なんです。その人は
弁護士
になるかも知れん、ならないかも知れんと平生言
つて
おる、それでは尚困る。
弁護士
になるという色氣だけ出してお
つて
弁護士
にならない。そうなると尚惡くな
つて
弊害
を起す。それは
判檢事
の廓清の問題であ
つて
、殊に地方でそういうことがあるということは許すことができない問題と思いますから、今までの御
説明
では私は承服しかねるということを申上げて置きます。
來馬琢道
34
○來馬琢道君 今の松村
委員
の御
意見
について、必ずしも松村君の
意見
が参議院を
代表
するものとは思いませんガ、私が実際見て來たことをここに申上げて御参考にしたいと思うのですが、私が過日或る所に私用で参りました。然るところその席におりました人は、その地方において
判檢事
のどちらかをや
つて
お
つた
方である。名刺を見ると東京都中央区
日本
橋に
事務所
がある。而も住所はその任地の所におりまして、私が面会した用件というのも或る刑事問題について、專ら現職の
判檢事
の間を往來して、何か依頼した人のために便利を図
つて
おるというような仕事で、法廷には出ないのです。元の任地にお
つて
そうして活動しておるということを見たのであります。私はかねがね
司法委員会
において聞いておりました問題が、これがやはり一種のもぐりの方法であるということを感じました。先だ
つて
のあの
規定
ができてもまだこういう方法で一年間ぐらいは働くことができれば、実害と言いましようか、
弊害
はおのずから伴うなと感じて來たことであります。こういうことについてお考えにな
つて
おいでになるのか、松村
委員
の言われるようにこれを
規定
することはいかんという程には私は考えないが、何とか制裁する方法がなければならないかとも思
つて
おりますが、その辺について若し御
意見
を承われますれば我々にも研究したいと思います。
鍛冶良作
35
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 松村先生の御
意見
は大抵その前提でおつしや
つた
と思いますから、私は申上げなか
つた
のでありますが、この
法律
の精神は
判檢事
を歓迎するということが、大前提であることに御了解願いたいと思います。從いまして一般の
判檢事
が
弁護士
登録
を
請求
されて
拒絶
するわけがないのです。大歓迎するのです。たまたま甚だ困る人があるのです。これは嫌なことですが、今來馬先生のおつしや
つた
のはまだいいのです。もう俺はこれから
弁護士
をやるのだとこう言
つて
、あらゆる
方面
に渡りを付け、仕事の方で如何にも恩に着せるようなことをしておる人が実際にあります。それを今松村先生は、そういうものがあ
つた
らそこでびしびしやれとおつしやるのですが、なかなかそうは行かない。すぐ止めて
弁護士
の
登録
の
請求
をするのです。それではどうも困るというので、こういうことを考えたのでありまして、前提としては誰でも入れるのだ。併しただここに書いてある
通り
、その地域内において
弁護士
の
職務
を行わせることが不適当というような事情のある場合、そういうときは
拒絶
するかも知れない、こういう
規定
にしております。併しそれでも先程の松村先生のお話のように特に不適当という、特にというようなことはいかんということをおつしやいますが、ここでは
審査会
に
異議
の
申立
ができる途があるから、そこで十分
審査
して貰えると思います。
條文
に現われたところを見ると、そういうことにも考えられるかも知れませんが、実際問題といたしましては、そんなに
弊害
があ
つた
り、特にその
公務員
を侮辱したつもりのないことはお分り願えるかと、かように考えております。どうぞ御了承願います。
宮城タマヨ
36
○宮城タマヨ君 第二十條の第三項でございますが、「
弁護士
はいかなる名義をも
つて
しても、二箇以上の
法律事務所
を設けることができない。」この「いかなる名義」ということは想像できる
範囲
ではどういうことですか、私のような素人が読みますと、如何にもいろいろあの手、この手を以て、それぞれインチキな名前を使
つた
法律事務所
があるかのように読めることは甚だ遺憾だと思いますので、こういう字をここに入れなければならないというのはどうかということを考えたから、ちよつと伺います。
鍛冶良作
37
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 今おつしや
つた
通り
なのでありまして、何々
弁護士
法律事務所
というのが
原則
ですが、それをいろいろ
法律
相談所であるとか、何々
法律事務所
というように、
法律事務所
であるように見せかけた実例が今まであ
つた
のであります。そういうものは、
弁護士
でなか
つた
ら
法律事務所
という名前を使
つて
はいけない。こういうふうに
規定
いたしたのであります。
弁護士
であれば堂々と書けばいいのです。
弁護士
にあらざるものがそういう名前を使
つて
法律事務
を取扱うというと、俗に言う三百の
弊害
というものが現われるのであります。そこで二個以上の
法律事務所
を作
つて
はいかんというのも、それから出て参
つた
ので、これも随分議論のあ
つた
ところです。何とか地方の実情に合
つた
便法はないかと考えたのでありますが、この
法律
を作ります一般の頭はそういうことで、
弁護士
みずからしておる所でなか
つた
ら、もうその
弁護士
の
法律事務所
でということでなか
つた
ら止めよと、それ以外は必ず
弊害
があるということから出て参りましたものですから、前の
法律
からそのまま踏襲して参りましたわけであります。
鬼丸義齊
38
○鬼丸義齊君 私は出席が遅れたので、本
法案
の提考
理由
の経過を伺うことができなか
つた
のでありますが、昨日漸くこの案が私共の手許に参
つた
のですが、聞くところによりますれば、すでに
衆議院
の方は本
会議
を
法案
が通
つた
ということです。一体こんなに会期の切迫したときに突如としてこういう重要
法案
を出される。而もこの
法案
なるものは、すでに数年に亘
つて
我々の最も深い関心を持つ重要
法案
であ
つた
にも拘わらず、この
法律案
を漸く昨日我々の手許に配付するなんてことはどういうことですか。
法案
自体私共の研究する暇がない。それはどういうような経過であ
つた
か、尚又本
法案
を出すに至
つた
経過を一遍伺いたいと思います。
伊藤修
39
○
委員長
(
伊藤修
君) 経過については先程花村
委員長
から詳細に
説明
があ
つた
のです。
鬼丸義齊
40
○鬼丸義齊君 誰から……
伊藤修
41
○
委員長
(
伊藤修
君)
提案者
の花村
委員長
です。
鬼丸義齊
42
○鬼丸義齊君
提案者
は誰です。
伊藤修
43
○
委員長
(
伊藤修
君) 花村
委員長
です。
鬼丸義齊
44
○鬼丸義齊君
衆議院
の司法
委員長
ですか。
鍛冶良作
45
○
衆議院議員
(鍛冶良作君)
法務委員会
から出したのです。
代表
して花村
委員長
が……
鬼丸義齊
46
○鬼丸義齊君 どうして一体昨日まで……
鍛冶良作
47
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) それでは経過について申上げます。これは十何年前から企てまして、そしてこれは全國の
弁護士会
から
意見
を集め、中央において案を拵えまして、それから各省の
意見
も纏めたりして、
弁護士会
の案なるものができて、第一回
國会
のときに、すでに
衆議院
の当時の
司法委員会
にこういうものを元にして出して貰いたいと言
つて
要求しておりましたのです。ところがなかなか機会がありませんので、どの
國会
においても、第四回だけはやらなか
つた
か知れませんが、一回も二回も三回も審議に入
つた
のでありまするが、なかなかいろいろ議論がありまして纏まりませんでした、併しこれは鬼丸さんのところへ届いておらなか
つた
とすれば申訳ないのですが、各
國会
の際に変
つて
、案を作りましたときには、参議院に参考案として廻してお
つた
と心得ておるのでありますが。
伊藤修
48
○
委員長
(
伊藤修
君) それは來ていないということははつきり申上げますから……
鍛冶良作
49
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) あなた方の專門員の方だけですか。
伊藤修
50
○
委員長
(
伊藤修
君) 私は一部貰
つた
だけです。何回変
つた
か知らんけれども、そのうち一つだけこれを貰
つた
だけです。
鍛冶良作
51
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 実は私は参議院の
法務委員会
では、
相当
この
内容
については御承知のことかと思
つて
お
つた
のであります。ところが今おつしや
つた
この議会の切羽詰
つて
ということは、これは一つ御了承願いたいのは、今度の議会でこそ出そうというので、第四回
國会
のときです、すでに原案としてのGHQリーガル・セクシヨンまで廻しました。リーガル・セクシヨンに廻しましたら、リーガル・セクシヨンから改めて
裁判所
、法務廰及び
弁護士会
へ
意見
を求められました。そうすると前には
相当
纏ま
つて
出てお
つた
筈ですが、改めて
意見
を求められると又違
つた
それぞれの
意見
が出ましたので、それがなかなか纏まらんで、とうとうこの
國会
まで持越されて來まして、そこでこの
國会
になりましてから小
委員会
を設けて、我々が度々三者の方々に寄
つて
貰
つて
漸く
弁護士法案
を、つまりこの一週間程前に、今松村先生からお叱りを受けたが、これだけの案を作
つて
、これで漸く三者の
意見
が纏まりましたというて、アプルーヴアルを貰
つて
來ましたのはこの四五日前であります。そこで早速小
委員会
の
成案
として
法務委員会
に正式に提出し、そこで
法務委員会
から本会に正式に提出いたしましたのが、一昨日ですか、一昨々日なんでありまして、そこで漸くこちらに参
つた
次第であります。その前には印刷したものはあ
つた
が、大抵ガリ版刷りの物で、何遍も何遍も刷り変え、刷り変えしてできた。印刷のできたのが漸く四五日前に向うからアプールヴアルして貰
つて
、初めて作
つた
わけでありまして、誠にこの会期切迫のときに出しましたことは我々としても遺憾千万なのでありますが、これでも一生懸命や
つた
ことを一つ御了承願いまして、できまするものならば、本
國会
において通過さして頂くことを特にお願いいたしたいのであります。
鬼丸義齊
52
○鬼丸義齊君 長い間の懸案であり、殊に新
憲法
において各
法案
ともそれぞれ著々整備されつつあるので、残されておりまするこの
弁護士法
の改正
法案
も当然解決しなければならんものだとは私も承知しておりまするが、併しながら
衆議院
の
法務委員会
において非常に長い
期間
に亘
つて
御努力を頂いておることは蔭ながら承知いたしておりましたが、前
國会
の終りだと思いますが、すでに
衆議院
の
法務委員会
においては案を出されて、その案を次回の
國会
の劈頭に出されるというふうなことに決められたことを私共聞いております。定めて本
國会
に出されることであろうと思
つて
おりましたにも拘わらず、すでに会期の終らんとしておりまするときまで、何ら音沙汰がなか
つた
。ところが突如として昨日この
法案
が提案されたのでありましよう。我々の手許に漸く來たのですから、どうも、同じく両院にすでに專門のものの
委員会
があるのです。
衆議院
が
法務委員会
で以て熱心に檢討されておりまするならば、緊密なる連絡をとられて、そうしてこの
法案
に対する両
委員会
の諸君が大体においての帰する点を決めて、そうして進行せられることにしたならば大変よか
つた
のではないかと思います。私共は他の
方面
に対して、
衆議院
の
法務委員会
が非常な御努力を拂
つて
おらるることは今承わ
つて
承知したのでありまするが、紆余曲折の感もあ
つた
ようでありますが、併し少くとも
衆議院
の
法務委員会
に対する全体に対しては、恐らく連繋は余りなか
つた
。故にこの
法案
を手にいたしまして、漸く夕べから覗いておるようなわけであ
つて
、実際は我々最も重要
法案
と思
つて
おりますこの
法案
についての研究については、甚だ隔靴掻痒の感を免かれないのです。遺憾に思
つて
おります。ただ私はこれは一つ私見としてさように申上げたのであ
つて
、
只今
説明
を承わ
つた
ので止むなく御
承認
するより外ないと思いますが、私がちよつとここで氣付きました一節についての疑義を持
つて
おりますることとして、第
五條
の第三号にあります「五年以上別に
法律
で定める大学の学部、專攻科又は大学院において
法律学
の
教授
又は助
教授
の職に在
つた者
。」、この人がそれぞれ非常な嚴格なる
資格
試驗に及第したのと同列な
資格
を得るということに至
つて
は、大学校その他において
教授
或いは助教助の採用
規定
について嚴格なる
規定
があるのでありますが、この五年という年数を経ることは、常住法務に親しみ、そして本当にこの
資格
試驗に合格した者と同列なる実力を有する当然の
資格
を持ちます者のごとき堪能なものにでき得るおつもりであるかどうか、往々にしてありまする大学助
教授
とか何とかいうのも、殊に近來は非常に学校が濫設しております。その場合にただ名目だけの
教授
、助
教授
という名前を持
つて
おりますことも私共聞いております。而も二校、三校が相関連して年数等を通算することにな
つて
おります。非常なこの点について私は定めて用意周到なる研給を遂げていると思いますけれども、如何にもただ大学の
教授
或いは助
教授
というだけのことだけでは、嚴格なる
資格
試驗と同一なる專門
知識
を持
つて
いるものであるや否やということを確認するには聊か足りないのではないか、かように思います。ここに三号に認められました、これについての根拠を一つ伺いたい。
鍛冶良作
53
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 私はこれは個人として申述べられるのなら、鬼丸先生と全く同一の
意見
で、これについても随分これは司法審議会以來、議論に議論を重ねてできた
規定
なのであります。我々は法曹一元の持論をどこまでも堅持し、更に
司法修習生
たる
資格
を得て、修習生を経ない者はいけないのだという、この修習という意味から申しましても、單に
法律学
を知
つて
いるというだけではなくて、
弁護士
として、もつと言えば
法律家
としての高等常識、並びに徳育の備わ
つた者
を養成するという意味でありますが故に、大体においてはこの
五條
のいわゆる
特例
というものには賛成したくないのであります。ところがいろいろな経緯から参りましたのでありますが、この第三号の出て來ました一番の根拠は、
判檢事
たる者は
弁護士
たり得るのである、
弁護士
たり得る者は
判檢事
たり得る、こういう
原則
から、逆さまな議論であるかどうか知りませんが、そういうところから來まして、そこでいろいろな議論が出まして、
裁判所
構成法の第六十
五條
には、三年以下
帝國大学
法科
教授
若しくは
弁護士
たる者はこの章に掲げたる試驗及び考試を経ずして
判事
又は
檢事
に任ぜられることができる、こうな
つて
おります。こういうので
法律学
の
教授
になれば
判檢事
になり得るのだというのであります。
鬼丸義齊
54
○鬼丸義齊君 新法では何條ですか。
鍛冶良作
55
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 新法では四十
二條
であります。今の何は十年とな
つて
おりますが、四十
二條
の第六号に「前條第一項第六号の大学の
法律学
の
教授
又は助
教授
」というのが入
つて
いるのであります。それから四十
一條
の六号は「別に
法律
で定める大学の
法律学
の
教授
又は助
教授
」こういうことにな
つて
おりまするので、これに併せて
判事
、
檢事
になり得る者ならば
弁護士
にな
つて
もよかろう、こういう議論が多数を制しまして、遂にこれがここに入
つて
参
つた
次第であります。
鬼丸義齊
56
○鬼丸義齊君 それはあなたの
説明
がちよつと足らない。だから大学
教授
ですね、大学
教授
になり得るのは、どんな
資格
があるために、一体どういうような閲歴を持つことによ
つて
なり得るのか。ただ
教授
、助
教授
という名前だけじやいけない。名前に合
つて
五ケ年間もあれば、そういう
資格
を持つまでの充実した專門の
知識
と学識を備えているものになるかならんかという根拠ですね、こういうことからこれを同列に扱うべきものだという
趣旨
でなければならないのじやないかと思います。
鍛冶良作
57
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) もつと詳しいことはなんですが、四十
一條
、四十
二條
にありまするこの何には、「別に
法律
で定める大学の
法律学
の
教授
又は助
教授
」、これは大学令によ
つて
大学と定めたる大学であ
つて
、而してその大学令にはすべて
教授
及び助
教授
となる
資格
の
規定
がある筈でありますから、その点を指しているのであります。
鬼丸義齊
58
○鬼丸義齊君 だから私はもう勿論そうであろうと思
つて
お
つた
のであるが、大学令に
規定
しているところの
教授
、助
教授
だけでは、実際五ケ年なら五ケ年というものを皆勤して、本当にその
資格
と同等なる
内容
を持つ
教授
、助
教授
でないと私は思うから、その点をあなたに確かめようとするのです。別に定める
法律
は百も二百も書いてあるから、その
通り
に違いない。併しながらこの
制度
はかくのごときものなるが故に、
資格
を同一に見ても差支えないというのでなければ、
提案者
の
説明
にならない。それを聞くのです。
鍛冶良作
59
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 誠に質問の御
趣旨
私も同感でありまして、余程この点は考慮すべき余地のあるものと思います。大体
裁判所
の方でこれを
裁判官
は十年、
檢事
は三年、こういうところから來たものと御了承願いたいと思います。理論としては
相当
考慮すべき余地があると思います。
鬼丸義齊
60
○鬼丸義齊君 そうしますと、
衆議院
の方でも御檢討にな
つて
勿論今日まで來ているのですが、
衆議院
の大勢としては、この三号を削ることについては、若し参議院の方の
法務委員会
で以てこれを削るとしたら、
衆議院
の大勢はどうですか。これはざつくばらんに率直に、あなたのような有力な人すら賛成して貰
つて
いるのだから、尚以て一つこれは伺
つて
見たいと思います。
鍛冶良作
61
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 今おつしやる、
衆議院
はどうだとおつしやれば、私はそれを答える……
鬼丸義齊
62
○鬼丸義齊君 大変です。
鍛冶良作
63
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) それもちよつと何ですが、私は個人としてはない方が結構な
規定
とこう思
つて
おります。これは随分議論した
規定
であります。
鬼丸義齊
64
○鬼丸義齊君 それから、少しこれは職業柄我田引水の感があると存じますが、他の諸君には聞きずらいか知れませんけれども、一点伺
つて
置きたいと思いますので、
委員長
が曾て
関係
方面
から、近來の公職者がとかくにして、いろいろ
事件
に関與して揉消し運動その他を非常にやるので、この
弊害
は座視するに忍びない、この際何か一つ立案してこの
弊害
を除くべき案を立てたらどうかというようなことが、サゼッションとして出てお
つた
ということも聞いております。それについて非常な努力を拂われておると聞いております。尤も千万な私共はお
考え方
と思
つて
おりますが、併しながら、提案後における両院の運命を洞察されて、まだ具体化して参
つて
おりませんが、私は新らしく單行法として御計画になることは非常な困難が伴おうと思います。幸いに
弁護士法
が新らしく制定されまするのであるならば、この
弁護士法
の
規定
中の、例えば七十
二條
です。七十
二條
の中で以て少くともその滔々として起るべき
弊害
の万分の一と雖も防ぎ得らるべき字句を挿入して
取締
られるならば、或いは
委員長
の企図されまする
趣旨
にも若干副うのではなかろうかと思
つて
おりますが、その点について
委員長
のお考を伺いたい。
伊藤修
65
○
委員長
(
伊藤修
君)
公務員
の斡旋賄路に関する立案の方ですか、それに対しましては御承知の
通り
申上げるまでに至
つて
おりませんが、立案をいたしましてOKもとれる運びにな
つて
おりますが、ただ問題は廣く
公務員
と指した場合におきましては両院
議員
も含まれるために、多くの
議員
の人の賛成を得難いと慮りまして、
法案
通過の見込を考えて、まだ提出していないのでありまして、
只今
鬼丸
委員
のお説のごとく、
本案
の中にその
趣旨
を取入れることは誠に結構だと存じまするのですが、尚よく研究して見たいと思います。
鬼丸義齊
66
○鬼丸義齊君 私もそういうふうに聞き及んでおりまするので、結局両院通過の見通しが付かないのであるならば、
弊害
が滔々として起るのであるならば、少くともこの場合この重要な
関係
のある
法律
ができるときに織り込んでや
つた
ならば、幾分なりとも
弊害
は少くなりはしないかと、こういうふうに感じます。一應一つ御研究願いたいと思います。
伊藤修
67
○
委員長
(
伊藤修
君) 御注意によりまして十分研究したいと思います。
大野幸一
68
○大野幸一君 ちよつと注意しますが、そのとき我々のごとき二つの職を持
つて
おる者が
相当
多いと思うのです。そうすると
弁護士
でも
國会
議員
として
公務員
であれば、
弁護士
の
職務
を停止される、こういう点を一つ考慮頂きたいと思います。
伊藤修
69
○
委員長
(
伊藤修
君) 十分
法制局
と打合せまして研究いたします。
鬼丸義齊
70
○鬼丸義齊君 二十條の3にあります
弁護士
の
法律事務所
、これは大分ぐるぐる持
つて
廻
つて
訳の分らんことにな
つて
しま
つて
おるのですが、但書で「他の
弁護士
の
法律事務所
において執務することを妨げない。」、
弁護士
が一体執務するのに、何も他の
弁護士
の
法律事務所
でなくた
つて
、どこだ
つて
仕事するくらいのことならば差支ないわけなんです。そうすると「執務することを妨げない」というならば、ここで限定したならば、他の
弁護士
の
法律事務所
でなければ執務できないとい
つて
も、法廷でもできる、議会でもできる。執務する場所を指定しただけでは字句にな
つて
いないと思う。然らばこの字句というものは、他の
弁護士
の
法律事務
との共同
事務所
であればよかろうという
趣旨
か、いわゆる他の
弁護士
の家へ行
つて
法律事務所
を何々共同
事務所
と、例えば鍛冶
法律事務所
の家で
弁護士
鬼丸義齊の
事務所
と書いてもよろしいという
趣旨
か。執務することが差支ないというならば、どこだ
つて
執務することは差支ない。天下いずれの場所と雖も執務を制限される
理由
はない。併し
法律事務所
として差支ないというならば、他の
弁護士
の
法律事務所
で、鍛冶
法律事務所
併せて
弁護士
鬼丸
法律事務所
で差支ないという
趣旨
か、その点をお聞きしたい。
鍛冶良作
71
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 如何にも御尤もでございますが、これは前からありましたので、前の
弁護士法
を作るときに、どういうことでしたか、前の
法律
にあるのです。それをそのまま受けたんです。結局、一つの
事務所
を持
つて
お
つて
、よそへ行
つて
又
事務所
と同じようにそこを一定のその人の
事務
をとる場所としてやることはいかん、こういう
趣旨
だ
つた
と思
つて
おります。但し
弁護士
の
事務所
へ行
つて
それをやるならば、例えば私が名古屋なら名古屋へ行けば鬼丸
事務所
で
事務
をとらして貰うんだ、これならば差支ないんだ、こういう意味だ
つた
かと心得ます。ついでに申上げますが、これは参議院の方でもいろいろな連絡をしたときに、又地方の
弁護士
の方々からも、成る程
弊害
もあるか知らんが、地方へ行
つて
はこれを嚴格にされては非常に
事務
をとるのに不便だ。だからせめてもう二個だけをいいということにしたらどうだというので、それで又議論しまして、今あなたのおつしや
つた
ように、鬼丸
弁護士事務
所においてならば鍛冶
法律事務所
というものを設けてもよろしい。これならばそれ程
弊害
がないじやないか、こういう議論が出ましたので、これくらいのことならばいいか知らんと思
つて
、それを挿入するように法制部へ頼んで置いたのであります。ところが法制部でいろいろ研究して見たが、どうもこの
法律
の
建前
はもう
事務所
は一個としてできておるんだから、あらゆる
方面
に行きつかえてとても、根本的に直せばともかく、それだけでは甚だ困ると言われたので、これは理窟よりも実際面からして、
現行法通り
のものを出して参
つた
のであります。尚、立法技術に関する細かいことは、何でしたら、
福原
君がおりますから、
説明
して頂いてもよろしうございます。
鬼丸義齊
72
○鬼丸義齊君 但書の文字に至
つて
は実に法文の体を成していない。執務することができると言
つて
も、執務なんか制限受ける
理由
がない。天下どこでもできなければならん。それであるから、ここに事新らしく
弁護士
は他の
弁護士
の
法律事務所
以外の場合において執務することを得んというような
趣旨
の筈はないと思う。だからここに執旨することを得とあるならば、即ち
弁護士
法律事務所
として執務してよいだろうと思います。そうなければいかんと思う。こんな曖昧なことで以て、但し
弁護士
の
法律事務所
において執務することを妨げないなんと言
つて
、
弁護士
の仕事なんというものは限られたものとは違う。だから
法律
の
事務所
を扱うには天下いずれの場所においてもどきるのだから、必ずしも
弁護士
の法務
事務所
でなければならんなんということはない。殊に現在は簡易
裁判所
が設立されまして、全國殆んど数百の、千になんなんとするものが各所にできて、而も簡易
裁判所
の管轄というものは、二百三十
五條
の三年以下の懲役に当るべき沢山な刑事
事件
が現に審理されておるのである。これに対して
弁護士
が参加しなければならない場合が
義務
として、
訴訟
事務
に参加しなければならない場合が
法律
的にも沢山出て來ておる。そのときに当
つて
特に
弁護士
法律事務所
を一個に限らなければならんということは時代に甚だ合わざるものと思います。聞くところによりますれば、二ケ所以上の
事務所
を許すということについても大分努力されておると聞いております。併しこれは今日の少くとも現状から言
つた
ならば、若し
弁護士
というものが
訴訟
にはなければならないものであると限定いたしましたならば、当然私は二個以上も三個も或いは許さなければ本当に需要を満し得ないと思う。この点を一つ努力されて、どういう
理由
のために一体それが結論としていけなくな
つた
のかということをこの際
提案者
に伺いたいと思います。
大野幸一
73
○大野幸一君 関連して……。鬼丸
委員
の
意見
はそうですが、又
提案者
に聞きたいのは、由來
弁護士
が幾つも
法律事務所
を持つということの
弊害
は、曾
つて
三百代言を許した当時起きたことでありまして、
法律学
に少し素養のある者が各所に
法律事務所
を拵えて、実はその
弁護士
はたまにしか來ない。そこで実際三百が
弁護士
の
事務
をや
つた
ものだというので、これはいかんというので、あの非
弁護士
取締
法、本
法案
によると七十
二條
以下でしよう。こういうものを制定された歴史的由來があるのであります。それで私は第二項はこれを制限し、その
弊害
を除去するために、そういう非
弁護士
の管理する
事務所
はいかんが、併し、
弁護士
が共同してやるような場合は、そういう
弊害
はないだろうということで、私は本
法案
の但書ができたのだろうと思うが、どうですかということをお聞きしたい。例えば名古屋に鬼丸
議員
が
弁護士
をしていらして、東京で頼まれる場合も東京の或る
弁護士
のところに
事務所
も構えておれば非常に便利だろうと思う。こういう点を私も考えまして、この
法案
の
趣旨
はそういうところにあるのではないかと思うのですが、どうですか。
鍛冶良作
74
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 議論としては今おつしや
つた
ようなことも考えられるのでありますが、これは
現行法
の下においても私が名古屋に行
つて
鬼丸さんの
事務所
でいつも來て
事務
をとるというならばよいのですが、鬼丸さんの
事務所
に鍛冶
事務所
と掲げることはいけないと解釈しております。事のよしあしは別として……。ところで今度参議院からいろいろ御議論もありましたし、地方の声もありましたので、
弁護士事務
所であるならば、そこだけにそういう鬼丸
事務所
において鍛冶
事務所
という看板を書いてもよい。併し鬼丸さんが東京に來れば鬼丸
事務所
としてもよいのではないかということも立法的に考えて見たのですが、どうもそういうことを、一体一個の
事務所
のための
登録
その他すべてそういうことにな
つて
おるのだから、到底煩に堪えないということで諦めたのですが、その以上の細かいことは
福原
君から
説明
をして頂きましよう。
福原忠男
75
○
衆議院法制局参事
(
福原忠男
君)
只今
の鍛冶
委員
の御
説明
に補足して申上げます。二十條の第三項は、
現行法
と全く同じものを公文化したに過ぎないのであります。そうしてこれを立案の過程において二つ以上の
法律事務所
においての執務を認めるような
規定
を置いてはどうかということで研究いたしましたところ、
弁護士会
の
関係
、即ち何故
法律事務所
を
弁護士
一人について一ケ所ということにしておるかということを、
現行法
は一ケ所主義をとり、そうしてこの
昭和
八年以前の
弁護士法
では複数主義をと
つて
おるように思
つた
のでありますが、そのときの立法過程を見ますと、この單一主義をと
つた
のは大体四つの
理由
がありまして、その一つはまあ極端な自由競爭を排除するということ、それから二つが
訴訟
遅延の防止、即ち二ケ所以上ありますると、
訴訟
の進行を妨げるものがあるということなのでございます。三番目がいわゆる三百を
取締
る上から言
つて
も、若し数個の
弁護士事務
所を置くならば、そこに三百代言に
相当
するようなものを置かざるを得ないような状況になるのであります。
昭和
八年の
弁護士法改正
の当時三百
取締
りの
法律
ができたのでありますが、その立法の経過から見てもこれは望めないところだ。これも一つの
理由
になります。
最後
に又
弁護士
の数は大変殖えたから、必ずしも二ケ所主義をと
つて
置く必要がある程に
弁護士
の数が少いわけではない。一ケ所主義で十分である。この四つの
理由
を挙げておるようであります。更に又單数主義の利益として、依頼者に対して
弁護士
がその地におるということで、依頼者の便宜が大きいということと、更に
弁護士
に対する監督の面において遥かに複数主義よりはいいという、この二つが掲げられておるようであります。それで今度の
弁護士法
の最大の眼目が、
從來
の官僚的な監督から脱して、
自治統制
をとり、
弁護士会
に一元的に
監督権
を委ねておるという
関係
から申しますと、その
弁護士会
と
弁護士
との繋がりは、前よりも増して緊密なものでなければならないと思うのであります。然るところ二ケ所の
弁護士事務
所を設けますると、その二ケ所というのは、恐らく同一の
弁護士会
であるならば、これは問題は半分は解消されますが、若し設例のように東京と名古屋といたしますと、その方は名古屋の
弁護士会
にも所属し、かたがた東京の
弁護士会
にも所属するという二本建をとらなければならないかと思うのでございます。その場合主たる
弁護士事務
所と、從たる
弁護士事務
城と分けるということも考えられますから、これは煩雜に過ぎるものと考えられます。そうして若し二ケ所の
弁護士会
に所属するということを考えました場合に、名古屋において
弁護士会
でその者が
弁護士会
の
秩序
又は
信用
を紊したということで、やれ
懲戒
だとか、それから又退会というような問題が起
つた
場合に、その方で退会、或いは除名は問題でありませんが、その他のことがあ
つた
。退会というような場合に、外の
弁護士会
におけるその
会員
の身分はどうなるかという点もやはり一應書かなければならん。そういうことになりますと、恐らくこの
法律
の体系から申せば、ちよつと目の子算で見ましても、十
ケ條
ぐらいのいろいろな
関係
規定
を置く必要があるのではないか、こんなことを考えまして、技術的な困難がある。そういうことから現在旧
弁護士法
から
現行法
の單一主義をと
つた
ということは、必らずしも現在でもとれないことはないということで、事なかれ主義で
現行法
を踏襲した、こういうわけであります。
鬼丸義齊
76
○鬼丸義齊君
現行法
をそのままとられたことは、経過としては或いは御尤もかも知れませんけれども、ここに書いてありますることを靜かに御覽にな
つて
見れば、こんなことで以て一体何の法文かと私は思うのです。
弁護士
が、但し他の
弁護士
の
法律事務所
において執務することができるということで、そうすると法務
事務所
以外には執務することができない。そんな筈はないと思います。私はこの簡易
裁判所
のできてから後と、國選
弁護士
人の
制度
もでき、新刑事
訴訟
法
制度
から行けば、國家的
義務
を負わされておるときでありますから、むしろそうした若干の
弊害
が伴うならば、
弊害
は他の
方面
において
秩序
を保つべき軌範
規定
を置き、そうして需要供給に應ずる措置をとるのが、新法を折角作るならばそうでなければならんのでないか、かように思うのであります。例えば今大野
委員
が言われました
通り
、他の
弁護士
の
法律事務所
でよろしいというならば、ここで但し
弁護士
の
法律事務所
は他の
弁護士
のいわゆる
法律事務所
に併置することができるというようなことになれば、何らそこに
弊害
はできない。主であるとか、從であるとかいうようなあれは、便、不便は物の数でなく、今幾つか述べられましたる大部分というものは、操作によ
つて
立派に盡し得られると思う。それは又、私は他の
理由
によ
つて
絶対に不可能な
理由
があるのか、ないのかをこの際伺うだけのことであります……。分りました。尚この
法案
は十分に研究したいと思うのでありますが、本当に見たばかりであるから、今日直ぐ採決にならないように……
伊藤修
77
○
委員長
(
伊藤修
君) 御尤もです。
大野幸一
78
○大野幸一君
只今
鬼丸
委員
の他の
法律事務所
に併置することを妨げないということが一番当を得たものであ
つて
、そこでなければなそれ以外では執務してはいけないということになると、
國会
で
関係
してもいかんというような結果を生ずるから、これはそういう解釈は、そういうことにするか、字句を改めるか、どつちかにして置いて貰いたい。
鍛冶良作
79
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 今申上げた
通り
、我々も御
意見
のようにしてもいいだろうということを考えたのでありますが、そういうわけで何ですが、その解決さえできるならば十分一つ考慮したいと思
つて
おります。ところがただ実際問題として私は驚いたのですが、私は郷里へ行
つて
法律事務所
どころでない、僕の友達の
弁護士
のところで、僕に連絡
事務所
としてあげて呉れと言
つた
ら、そうしないとどこに來るか分らんと言
つた
。それがいかんと言
つて
や
つて
來たのであります。実際問題としてそういう実例があるのですが、併し今のような実際問題からして、
弁護士事務
所においてやるならば、そんなに
弊害
になるのじやないと思
つて
おります。又あなた方からも十分お智慧を拝借して差支えないことかと思います。
伊藤修
80
○
委員長
(
伊藤修
君) 大体伺うことがありますか。十分間休憩いたします。 午後四時十五分休憩 —————・————— 午後四時五十二分開会
伊藤修
81
○
委員長
(
伊藤修
君) 休憩前に引続きまして開会いたします。質疑を継続いたします。
松井道夫
82
○松井道夫君 第一に伺いたいと思いますのは、
弁護士
に
権利
と
義務
に関することでありますが、これは第四章に
規定
してあります。ここにございますことは大体において旧法において認められておることのように思うのでございまするが、私は
弁護士
の
職務
というものが非常に
重要性
を増して参
つて
、且つ刑事
訴訟
法、民事
訴訟
法の改正によりまして、
弁護士
がすべての証拠を申出て蒐集いたしまして、又その主訊問もいたさなければならんというような事態に立入
つて
おるのでありまするから、更に
弁護士
の職権というものを強化いたす必要があると思うのであります。例えば今の事実の
調査
権、或いは証拠の蒐集権というものを認めなければならないと思うのであります。勿論
從來
と雖も当然事実を
調査
し証拠を蒐集して参
つた
のでありまするが、併しながらこの作用は
從來
とかく
法律
上の根拠がありませんために軽く見られ、これに協力を吝む効言が見受けられてお
つた
のであります。但し
弁護士
に
調査
並びに証拠蒐集について強制権を認めというところまで行ければ理想的でありまするが、それは今の状況では不可能に近いと思うのであります。少くとも
弁護士法
の
條文
に、
弁護士
がその
職責
を全うするために必要な場合には、事実の
調査
及び証拠蒐集をすることができる、そのために必要な協力を求められた者は、特別に事情、正当の
理由
がない限り、それを拒むことができない、とい
つた
趣旨
と
規定
を設ける必要があると存ずるのであります。その外いろいろ考えられると思うのでありまするが、立案に当られた方方のおかれてその辺の御配慮があ
つた
かどうか、御
意見
を伺いたいと思います。
鍛冶良作
83
○
衆議院議員
(鍛冶良作君)
只今
の御
趣旨
勿論我々も同感でありまして、是非そうなければならんと存じまするが、ただ
弁護士法
に入れることがよろしいか、刑事
訴訟
法その他これに関するものに入れるがよろしいかは
相当
問題ではないかと考えます。御研究の結果
弁護士法
へ入れた方がよろしいというお考えに到達いたしまするならば、あながち我々も反対せないところでありまするが、刑事
訴訟
法と
睨み合せ
て御研究をお願いしたいと、かように考えます。
松井道夫
84
○松井道夫君 更に先程出ました問題に
関係
いたすことも一点お伺いしたいと思うのでありますが、それは先程松村
委員
から痛切に論難を蒙
つた
ところの、今の第十
二條
の第二項の
規定
に関連してであります。先ずその第一項を見ますると「弁議士会の
秩序
若しくは
信用
を害する虞がある者」という言葉があるのでありますが、更に又「
職務
を行わせることがその適正を欠く虞がある者」という言葉があるのでありますが、その間の差別は一体どういうことであるかということが一つ。 それから
從來
地方の個々の
弁護士会
の規約で、この第二項に
相当
するような
規定
を設けてあ
つた
かどうか。若しあ
つた
とするとその個々の
弁護士会
の規約で
規定
することでは間に合わないで、
弁護士法
自体にこれを
規定
しなければならんというその
理由
を承りたいのであります。 それから初めの質問についての意味をちよつと申上げますが、要するにこの第二項の適用によりまして入会を
拒絶
するという必要のあるような人は、或いは一年の必要がないかも知れんし、或いは二年の必要があるかも知れない、或いはそれ以上のことがあるかも知れない。何まこういう第二項を設けなくとも、この第一項にありまする「
弁護士会
の
秩序
若しくは
信用
を害する虞がある者」或いはその関連におきまして、「その適正を欠く虞がある者」という第一項の適用で、そういう者の入会を
拒絶
するということで十分ではないかという疑いもあると思いますが、その点をお尋ねいたしたいと思います。
福原忠男
85
○
衆議院法制局参事
(
福原忠男
君) 御質問の第一点についてお答え申上げます。 第十
二條
の第一項につきまして前段の「
弁護士会
の
秩序
若しくは
信用
を害する虞がある者」ということは
現行法
にあります
表現
をそのまま採りましたものであります。そうしてその後の「適正を欠く虞がある者」というのは、これは一項の一号、二号に掲げました
事項
に該当する、そうしてその者に
弁護士
の
職務
を行わせることが適正を欠く者ということを附加したものであります。それから二項の方は、一号、二号の
條件
以外の他の
條件
によ
つて
、「特にその適正を欠く虞がある者」と、こういうふうに三段構えにな
つて
おるのでありまして、一項と二項とは必ずしも同一のものを狙
つて
いるわけではないのでありまして、一項の「
弁護士会
の
秩序
若しくは
信用
を害する虞がある者」というのは、これは飽くでも
弁護士会
の立場から考えての判断なんでございます。それからその後段の又は以下の「適正を欠く虞がある者」というのは、その人に
弁護士
の
職務
を行わせるということを判断しい、そうして、その人に特に心身の故障がある、或いは除名とか、
業務
禁止とか言
つて
著しく欠陷があ
つた
というようなとき、或いは見方によ
つて
は、前段の「
弁護士会
の
秩序
若しくは
信用
を害する虞がある者」という中に入るものもありますが、必ずしもそうでない
観点
からこれを後段で律する場合も考えられるというのでこれは入れたものでございます。
松井道夫
86
○松井道夫君 その他に伺
つて
置きますことは、要するに個々の
弁護士会
の規約で、第二項に該当するようなものを
規定
してお
つた
ものがあ
つた
かどうか、それによ
つて
この
目的
は達せられないのか。或いはこの第一項の「
弁護士会
の
秩序
若しくは
信用
を害する虞がある」ということで、第二項の者を
拒絶
することができるのではないかということで、「
職務
を行わせることが適正を欠く虞がある」ということは、当然面を変えて
弁護士会
の方から観察すれば「
弁護士会
の
秩序
若しくは
信用
を害する」ことに相成ると私考える。そういう見方も成立すると考える。それでその点をお尋ねしたのであります。
鍛冶良作
87
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 随分お話のような議論もあ
つた
のですが、現在においても各
弁護士会
において
拒絶
すれば
拒絶
できるのですが、それには非常な議論が出まして、大変実際の取扱において紛糾を生ずることがあるから、それでこういうものを一つ
弁護士法
として設けて置いた方がよろしいという声が、殆んどこれは全國の
弁護士会
から出て参
つた
ので、
弁護士会
の世論と言
つて
よいくらいでありまして、それに應じてこれを設けた次第であります。
松井道夫
88
○松井道夫君 その点についての質問は又後刻いたすかも知れません。一應留保いたして置きます。 次に移りますが、先程來馬
議員
から触れられたのでございますが、
七條
の
関係
であります。將來これは
日本
が國際的に開放されまするならば、こうい
つた
七條
に該当するようなことが沢山出て來るのではないかと思うのであります。勿論交通も盛んになりますし文化の交流が非常に旺盛になると思いますから、それでこういう
規定
についても
相当
愼重な考慮を必要とすると思うのでありますが、第一に、この
弁護士会
の自立といいながら、この件に関しますることはすべて
最高裁判所
でこれを扱うことにな
つて
おるのであります。それで個々の
事件
について携る場合に、個々に
承認
を受けるのだという場合には、これでよいだろうと思うのでありますが、これが
業務
としてやることができるということにな
つて
來ますると、これは殆んど
弁護士
と変りがないことに相成りまするので、それで
最高裁判所
ということにして、
日本弁護士連合会
ということにしなか
つた
理由
はどうか、それが第一点であります。 それからこうい
つた
人が多くな
つて
参りますると、野放しにして置くのは甚だおかしいんじやないかと思います。これは免状か何か呉れるのかも分りませんが、併し試驗又は選考をした場合には免状を呉れるかも知れませんが、試驗又は選考をしない場合もあるのであります。やはりこうい
つた
外國
関係
、渉外
関係
、
弁護士
でありませんでも
法律
從事者
名簿
を
日本弁護士連合会
に備えつけまして、これについて普断の監督と言いますか、或いは誰がそれに当るかということの紛れが起きないようにする、そういう配慮は將來絶対に必要じやないかと思うのであります。その点の御
意見
を伺いたいと思います。
鍛冶良作
89
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) これはお話御尤もですが、今その
法律
がここにありませんが、
外國人
に関するそういうことは官廳でなければならんという
規定
があ
つた
、それでそういうことにしたんだそうであります。後で又
法律
を調べて御答弁いたすことにいたします。それから試驗又は選考し、若しくは
承認
をすれば、
日本
の
弁護士
と同等になるのですから、お説の
通り
であります。從いまして第六項によ
つて
最高裁判所
は第一項又は第二項の
承認
をし、又はこれを取消す場合には、
日本弁護士連合会
の
意見
を聽かなければならんということで、結局
日本弁護士連合会
と連絡をと
つて
これをしなければならん、こういうふうに
規定
したわけであります。
松井道夫
90
○松井道夫君 そうい
つた
人の
名簿
か何か作る、
弁護士名簿
に
相当
するものを作る必要はないのでしようか、その点もお尋ねいたします。
弁護士
にはなるのですか。
鍛冶良作
91
○
衆議院議員
(鍛冶良作君)
弁護士
にはならないのです。
松井道夫
92
○松井道夫君 もともと
最高裁判所
が適切か、
弁護士会
が適切かという問題があるわけでありますが、その点はその
法律
を見せて頂いてからにしたいと思います。 それから第四十九條を拜見いたしますると、「
最高裁判所
は、必要と認める場合には、
日本弁護士連合会
に、その行う
事務
について報告を求め」ということがあるのですが、これは
最高裁判所
が
日本弁護士連合会
に対してある種の監督乃至は指導権というものがあ
つて
、それに基いてこの
規定
ができておるのでありますかどうか。
鍛冶良作
93
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 監督という程のことはありませんが、
憲法
七十
七條
の第一項において、「
弁護士
、
裁判所
の内部規律及び
司法事務
処理に関する
事項
について、規則を定める権限を有する」と、こういうことで監督までは行かないかどうか知りませんが、或る程度まで
弁護士会
に対する権限があるものと、かように考えますから、その
範囲
において必要あると言われるならばそれをしなければならん、かように考えてこの
規定
を設けた次第であります。
松井道夫
94
○松井道夫君 そうするとこの
規定
は必ずしも
監督権
がある、或いは
日本弁護士連合会
の諸
行爲
について、
最高裁判所
で或る種の
責任
があるという意味が少しもないわけですね。
鍛冶良作
95
○
衆議院議員
(鍛冶良作君)
監督権
とは心得えておりません。ただ
司法事務
の
運営
において、
弁護士会
に対してこう望みたいとかこういうふうにや
つて
貰いたいとかいう
規定
を設けますから、その
関係
においてこれだけの指図ができるものと考えております。
松井道夫
96
○松井道夫君 そこでここに一つの疑問があるのでありまするが、
從來法務総裁
が
弁護士会
についての、或る種の
監督権
といいますかを持
つて
お
つた
ので、結局その
弁護士
に関する一つの行政と申しますか、その
責任
を議会において追求する場合には、これは法務総裁が当然それに当ると考えられてお
つた
と存ずるのであります。ところが今回の
法律
ですべてそうい
つた
弁護士
に関する行政は、
日本弁護士連合会
に委讓せられまして、且つその意味でございましよう、明日に
弁護士法
で今の
会長
その他の役員は公務に從事する職員ということに相成
つて
おるのであります。この点はそれでよく理解できるのでありまするが、ただ
弁護士連合会
の
行爲
について、
國会
において誰が一体
責任
を負うか、多少の
監督権
、指導権がありまするならば、例えば総会の決議を取消すということができますならば、法務総裁が
責任
を負うということに相成るのであります。ところがここに
日本弁護士連合会
というものがありまして、
最高裁判所
は勿論その
責任
を負うものじやございませんでしようし、政府亦これに対して
責任
を負わない、全然監督はしないのでありますから、
責任
を負わないということに相成りますると、これが一つの行政的性質を持
つて
おります以外は、頗る分らんことになりやせんか。たかだか
会長
さん、福
会長
さんに
國会
に出て來て頂いて、いろいろ証人として述べて頂くとか、或いは私的にいろいろ聽くとかいうより外に仕方がないのであります。その点國家の行政と國家内における行政的の作用とこの
弁護士
に対する
弁護士会
との
関係
、
國会
における
関係
とい
つた
ようなものが、
最高裁判所
は、これを
國会
法の改正でその職員にも出て來て頂くことができるというふうにな
つて
おりますが、ただ
弁護士会
というものがあ
つて
、それは
國会
もどうにもならんというようなことは、頗る一見奇異に感ずると思うのでありますが、私は
弁護士
でこれでよいのか惡いのか知れませんが、とにかくそういう問題が提出されると思うのでありますが、その点についての御
意見
を詳聽したいと思うのであります。
鍛冶良作
97
○
衆議院議員
(鍛冶良作君)
最高裁判所
が
弁護士
の所掌
事務
の運行においての守
つて
貰うべき
規定
を作ります以上は、その
規定
の
範囲
内において、
最高裁判所
はその部分に対しては監督といいますか、その
法律
に実施されることに対する
責任
があるのじやないかと考えるのであります。その他の
事項
につきましては
公務員
としての
資格
を持
つて
おるのでありまするから、それに從
つて
忌避或いはこれを追求することは、それはおのおのの機関によ
つて
やれるのではないかと思います。ただ議会の実際から申しますならば、議会に
法務委員会
があるのでございますから、法務の一つであることは当然でありますから、
法務委員会
において若しそういうことがあればそれぞれの方法を以て
調査
なり、取調なりもでき得るのじやないかと思いますが、
相当
むずかしい問題ですから、その意味でいえば幾らでも追求する方法はあるとかように思います。
松井道夫
98
○松井道夫君 そうすると成る程
公務員
ということにな
つて
おりますから
公務員
としての監督もできる。そうするとその監督をするものはやはり法務総裁になるのですか、行政上の意味で聞いております。
鬼丸義齊
99
○鬼丸義齊君 それは重要だから一つ研究して見て頂きたい。
鍛冶良作
100
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 今のところでは直迫
法務廳
の監督は受けんことにな
つて
おりますが、予算その他の
関係
からも
相当
重要なことですから、今少し研究してから御答弁申上げたいと思います。
松井道夫
101
○松井道夫君
最後
に四十條に「
弁護士会
の総会の決議が公益を害するときその他法令又はその
弁護士会
若しくは
日本弁護士連合会
の会則に違反するときは、
日本弁護士連合会
は、その決議を取り消すことができる。」ということに相成
つて
おるのですが、これは將來片方が
弁護士会
なのでありまするから
相当
議論が湧くと思うのであります。これはやはり
行政訴訟特例法
によ
つて
取消された
弁護士会
の方で爭うことができる
趣旨
なのでしようか。或いはその辺どういうことになるでしようか。
鍛冶良作
102
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 取消した場合ですね。
松井道夫
103
○松井道夫君 ええ。
鍛冶良作
104
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) その点は
連合会
を以て最高のものと書いておりまする
関係
上、それ以上の何はありません。
松井道夫
105
○松井道夫君 先程の質問にも関連がありますが、
日本弁護士連合会
がこんな間違
つて
ことをするはずがない。最高の
議決
機関でありまするから、そういうことはまあ考えられないわけなんでありますが、併し
憲法
の
建前
からいいまして、
弁護士
の個々の
弁護士
の
権利
義務
にかかわります決議を、
日本
弁護士会
で取消されるということになりますると、これは行政官廳ではありませんが一つの行政を行うところの機関ですから、やはり
訴訟
を以て爭うことができるようにした方がよろしいのではないかという見解も成り立つと思うのであります。勿論特別の管轄
規定
が必要であるかも知れん。單に行政
訴訟
の
特例
法で賄
つて
よいものかそれは疑問でありまするが、その点ここで
日本弁護士連合会
の取消が最終のものであるという根拠を承りたいのであります。といいますのは今の
進達
を
拒絶
せられたというような場合には現に
訴訟
が認められておりますので、いろいろ会則上の疑義が起ると思いますのでこの点をお聞きしたいと思います。
鍛冶良作
106
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 各個人の人権が侵害された場合にそれは当然できるかと思います。殊に
進達
のごときは一種の身分上のものでありますからそれでああいう救済の
規定
を設けたのでありまするが、会そのもののことはちよつと違うと思います。というのはこの
日本弁護士連合会
は
弁護士会
会員
として取扱
つて
おりまするが、主としと全國の
弁護士
おのおのが
日本弁護士連合会
の
会員
なので、從いましてその
会員
のあることによ
つて
これを決める
建前
でありまするから、どこまでも自活権を以て、その代り民主的に決議をやらなければならんことはなりますが、そういう考えからよろしいのではないかとかように考えております。
松井道夫
107
○松井道夫君
弁護士会
の
自治
、最も賛成いたしますところで、今の御
説明
は尤もであると了承する次第であります。ところでそれに関連してもう一点伺
つて
置きたいのでありまするが、この
懲戒
のことでありまするが、
懲戒
の場合
判事
と
檢事
を混えるということは、これは從前の
制度
はともかくといたしまして、この
自治
精神からいいまして頗るおかしいのじやないかと思うのであります。これは
判事
の
懲戒
では恐らく
弁護士
は入れて頂けない。
檢事
の
懲戒
は、今度
國家公務員法
におきまして法務総裁がやることになりましたが、そこに仮に
委員会
を作るといたしましても、
弁護士
としてそれに参加する必要もありましようが、事実参加するようなことにならんのじやないかと思うのであります。この三役であります
判事
、
檢事
、
弁護士
、
弁護士
の
懲戒
のみに
判事
と
檢事
の立会をするのは頗る
自治
の点から言
つて
おかしいのじやないかと思いますが、その点を一つお聞きいたします。
鍛冶良作
108
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) お説御尤もで最も議論の多か
つた
点でありまするが、ただ今までも実例を申しますと
弁護士
に関する
懲戒
を
弁護士会
そのものでや
つた
ら嚴格にやれるかどうか、こういう疑念もあるし、又いろいろ批判もあ
つた
ものですから、それに鑑みまして勿論
懲戒委員会
は
弁護士会
の
自治
でやるんだが、それにはこれに関連したる最も正当なる人を一名加えて頂きたい。こういうことで
裁判官
及び
檢察官
を加えると、かように言
つた
わけであります。
松井道夫
109
○松井道夫君 鍛冶さんの個人の
意見
は如何なんですか。それから結局妥協ということにな
つた
んですか。
鍛冶良作
110
○
衆議院議員
(鍛冶良作君) 私ですか、まあそのくらいのことはやろうということで……
伊藤修
111
○
委員長
(
伊藤修
君) それでは本日はこの程度にいたしまして、尚……
鬼丸義齊
112
○鬼丸義齊君 この九月一日から施行とな
つて
いるのは何か準備があるのですか。施行について例えば本法は両院を通過した場合、最も早く施行しなければ
判檢事
が辞めるというふうな影響があるから、やるならば或いは即日施行でやる方がいいと思うが、その点何か特に準備があるためにそうやるのかそれを伺いたい。
鍛冶良作
113
○
衆議院議員
(鍛冶良作君)
相当
準備は要りますです。
日本弁護士連合会
の設立その他についてもありますので、果して三月やそこらでやれるかという疑念はありましたのですが、もう一日も早く施行したいというのだから、まあそれくらいのことであれば何とか無理でもやれるだろう、こういうので決めました。その代りどの
規定
でしたか、
日本弁護士連合会
の
組織
については、施行前と雖もこれをなすことができるという経過
規定
を設けておきました。
相当
名簿
であるとか、その他の
事務
局という大きなものを準備してかからなければできないのじやないかと思
つて
おりますが、無理かも知れないが、やりたいとかように考えております。
伊藤修
114
○
委員長
(
伊藤修
君) では本日はこの程度にいたしておきます。尚
本案
に対しまして、
学識経驗者
の御
意見
を伺いたいと存じますが、その人選及び数、日にちは
委員長
に御一任願うことにいたして御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
伊藤修
115
○
委員長
(
伊藤修
君) ではさよう決定いたします。では本日はこれを以て散会いたします。 午後五時三十四分散会 出席者は左の
通り
委員長
伊藤 修君 理事 鬼丸 義齊君 岡部 常君 宮城タマヨ君
委員
大野 幸一君 齋 武雄君 鈴木 安孝君 來馬 琢道君 松井 道夫君 松村眞一郎君
衆議院議員
法務委員
長 花村 四郎君 鍛冶 良作君 政府
委員
法務政務次官 遠山 丙市君
衆議院
法制局
側 参 事 (第二部長)
福原
忠男君