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1949-06-18 第5回国会 参議院 法務委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年六月十八日(土曜日)    午前十一時二十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件檢察及び裁判運営等に関する調査  の件(米子事件暴力團事件)   —————————————
  2. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) これより法務委員会を開きます、裁判、檢察の運営に関する委員会であります。先ず米子事件について、楢原檢事正から報告をお願いいたします。
  3. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 私の方で米子事件言つておるのは、二つに分けられると思うのであります。  その一つ米子檢察廳証拠金が二十数万円昨年の十二月の二十六日に紛失したという事件であります。今一つ事件はこれに関連して私が米子檢察廳職員を内偵調査した、その方法が妥当であるかどうかという問題の二つに分けられる思います。参議院でお採上げになつておる問題はその第二の問題であろうと思うのでありますが、尚第二の私に対する問題としては共産党鳥取縣委員長龜井氏から私及び部下職員五名について、告発が行なわれたのであります。その告発事件先般廣島高等檢察廳次席檢事鳥取及び米子へ出張して、詳細に関係者数十名を調べて、先般私の取つた取調べ行爲犯罪にならないという理由で処理されております。  第二の盗難事件は、その後調査した結果、職員の元庶務課長をしておりました正木熊雄犯行であるということが明らかになりましたので、この盗難事件の外に、更に証拠金を三回に亘つて一万一千余円を横領しておつた事実も明らかになつたので、併せて米子支部裁判所の方へ起訴しております。現在公判審理中であります。  窃盗事件の概要を申しますと、正木熊雄という被告人昭和二十二年の五月三日から昭和二十四年の三月十一日まで米子檢察廳並びに鳥取檢察廳米子支部檢察事務官として勤務し、特に庶務課長経済関係事務を担任しておつた者でありまして、証拠金領置物件取扱、或いは右檢察廳関係歳入歳出現金等取扱事務に從事しておつたものでありますが、昭和二十三年の十二月六日の午前十頃から翌朝の七時頃までの間に、丁度この日は十六日は日曜日になるのでありますけれども、檢察廳に勤務して、誰も入つていない檢察廳米子支部証拠品倉庫の中に入つて鳥取地方檢察廳米子支部及び米子檢察廳関係領置証拠金として在中しておつた木製の箱及び麻繩を以て縛つてありました柳行李の中に入つてつた現金二十三万六千四百二十九円ばかり、その他の証拠品として同じく柳行李の中に入つてつたクローム側の腕時計や、黒革二つ折財布その他数点のものを窃取したのであります。それから横領の事実は昭和二十三年の六月七日頃に刑事被告人であり朝鮮人ですが、朴基洪に対する強盗被告事件証拠金一万九千円の中から六千円を拔取つて自分の用途に使つて横領したという事実と、次の事実は二十三年十二月の十六日頃やはり刑事被告人である鄭太文らに対する関税法違反被告事件証拠品として領置された機船柿坂丸の引揚用の費用に四千七百円ばかり使いましたが、この金は船を本人に返すことになつたの被告人から金を弁償することになつて、その金が正木の手にあるうちに自分生活費その他に費消したという横領の事実、更に今一つ横領の事実は、昭和二十三年の七月頃、宮本忠行外二名にかかる経済違反証拠品としつつ押收しました「するめ」約六貫七百匁ばかりを換價処分しまして、その代金を千七百七十五円保管しておるうちに、内金一千円ばかりを自己の生活費その他に横領したというのであります。  以上横領の事実三つと、最初に申上げました窃盗の事実を現在起訴しておるのであります。この事実については、被告人正木は第一の窃盗の事実は否認しております。第二の横領三つの事実についてはみずからも認めております。証拠も十分あります。第一の窃盗の事実を否認しておりますけれども、この窃盗の事実については、証拠品を入れておつた倉庫ドアに平仮名で「ざまみろ」と黄色のチヨークで大きく書いてあつたのであります。その筆跡正木事務官從來筆跡、或いはその後事務官報告書等と対照した結果、二回に亘つて鑑定をしましたが、二回共正木事務官筆跡に間違いないという確証があります。又日曜日に拘わらず自分だけ証拠品の入つておる倉庫に入つて、特に柳行李貴重品として麻繩で緊縛して封印までしてあつた柳行李自分で開けたという事実を認めております。ただ封印がしてなかつたという点があるそうでありますけれども、いずれにしてもその日自分が入つてその証拠品倉庫を開けて、更にそこの中の証拠品の入つておる柳行李を開けてこれを整理した、手を触れたという事実は自分も認め、他の者の証言によると、当時完全に封印して入つてつたという事実もあります。又この盗難の十六日の日倉庫を開けた鍵は本來正木事務官が持つておるべき鍵ではなくて、会計係、当時正木事務官会計係ではありますけれども、具体的な実際の会計事務は外の者がやつておりまして、多少病氣靜養中で出たり出なかつたりしておつたのであります。外の会計係が鍵を持つてつたのであります。その鍵を日曜日に來てその机の抽出から無断で取出した開けたという事実もあります。その外本人の持つてつた手帳にいろいろ「ざまみろ」の字を沢山書いておる点、横領金額を記載しておる点、その他傍証が十分あるので起訴しておるのであります。  次に最初申上げた私に対する問題、これは実は私は昨年の八月二十八日に鳥取地方檢察廳檢事正として任地に赴任したのであります。その後御承知と思いますけれども、鳥取縣においては共産党関係する事件が次ぎ次ぎに勃発しまして、米子におきましても、全國で最初に法廷の審理妨害罪が行なわれました佐野川事件という共産党に関連する事件があつたのであります。この事件のために非常に人手が足らないので、一般事務処理が遅滯しておつたのであります。そういう関係で十月頃まで、或いは倉吉犯罪等事件、或いは米子における鉄道員暴行事件等共産党関係で非常に鳥取檢察廳、及び倉吉檢察廳職員は多忙を極めまして、捜査面取調面に忙殺された結果、事務の方の仕事がお留守になつた。又一般事件が多少停滯しておつたのであります。これらを新刑事訴訟法実施になる本年一月一日前に、昨年末までに是非この事務処理の澁滯を一掃して新刑事訴訟法実施を迎えたいという趣旨で、実は十一月頃から全管下の檢察廳事務整理監査をしたのであります。勿論私が直接したのでなくて、事務局長その他事務に精通した者をしてその管内の事務整理監査をさしたのであります。米子は十一月の十五日頃から鳥取本廳の事務官の優秀な者、三名ばかりを予定して事務整理、即ち証拠品取扱状況とか或いは帳簿整理状況、そういうことの監査並びに整理補助というようなことをさしたのであります。その間に実際のところ、最前申しましたように、非常に共産党関係事件で忙殺されて事務が停滯しておつたために、米子だけは十分に整理ができていなかつたのであります。証拠品整理も完全に行われないで帳簿整理も不十分な点があつたのであります。これでは困るので事務局長が特に更に又行つて早く整理をしたいということを督促して、事務局長一緒調べをしましたけれども、一両日では到底完全な整理ができない。で二十三日の日に一應帰つて又二十七日の日に監査に來るから、それまで事情のよく分つておる米子事務官整理をして置いて貰いたいということを言うて帰つて、二十七日の日に米子檢察廳事務局長が再び監査に参りましたところ、監査中の今申しました二十数万円の金、或いは証拠品を完全に柳行李に入れてしまつて、又二十七日來るというのに、二十六日の日になくなつておるということが発見されて、一應次席檢事にまで、鳥取の方に連絡して、次席檢事が現場を調査行つた結果、どうもドアに書いてあるチヨークが檢察官、即ち檢事部屋に掛けてある黒板のチョーク、黄色いチョークでありますから、外のものはすぐ分るのでありますが、その黄色いチョークで書かれておる点、又そういうチョークがあるということは外の人では分らない、特に黄色いチョークは二本あつたうちの一本がなくなつておる点。それから証拠品倉庫というのは普通の者ではなかなか分らない場所でありまして、事務室のすぐ後ろにある部屋であります。而も盜難にかかつておる品物が、そこには外の繊維関係品物とか、いろいろな証拠品も入れてあるにも拘わらず、さようなものには一つも手がつけてなく、現金が入つてつた柳行李中心に紛失しておるというようなことから見てどうしても内部関係らしいという予想がつきましたし、又一般の者の世評もどうもそういうふうなこともあつたので、私丁度当時廣島高等檢察廳に要務を帶びて出張しておりました。二十八日の日に鳥取帰つて來て駅頭で今朝米子支部でこういう窃盜事件があつたという報告を受けて非常にびつくりしたわけです。前から監査の結果多少十分な整理ができていないということを聞いておりましたので、非常に將來しつかりやつて貰いたいと思つてつた矢先にこういう報告を受けて、自分の職責を非常に痛感して、もう二十八日は御用じまいでありますけれども、そういう世間の風評もあり、又私達の目からも内部関係と一應考えられるが、内部の者の調査をして、内部の者でないということであれば、これははつきり世の中にも報告して、一般の人にも了承して貰いたいし、若し内部関係であれば、特に責任上からでも早くはつきりして、事件証拠品でありますから、まあ年末年始にかけて散佚するようなことがないように、早く元に戻して置きたい。かように考えましたので、次席とも打合せて、私米子状況を見ていなかつたので、二十九日の日に米子檢察廳に一應行き、又こちらから監督行つた事務官等もおりましたので、それは次席の方で鳥取調べる。私は米子行つて米子職員に一應事情を聽いて見ようということで米子参つたのであります。米子事情を聽くと言いましても、いろいろなことがあるので、これは私の外に補助的に事務官を二、三名同行して行つたのであります。向う行つて私から直接職員に、そういうどうも職員らしいからこの際出せというようなことを言うよりも、米子には專属の檢事として角田正太郎という檢事がおりますので、角田檢事をして、若し職員の中に今回の窃盜事件を起しておる者があるならば、この際申出て貰いたいということを勧告させるがよいと思いましたので、そういうことを角田君をして、職員一同集つて貰つて話して貰つたのでありますけれども、どうも十分の反響がないということでありましたので、私も亦米子檢察廳行つて職員の者全部集つて貰つて自分としても米子がかような不詳事を年末になつて出かしたということは非常に申しわけないことである。而も証拠金というのは、四百数十通の封筒にそれぞれ入つた金の合計が二十三万幾らになるので、事件として四百数十件の事件に関連するのでありますから、人間としていろいろ魔がさすということもあり、又誤解があつてちよつとしたでき心でかようなことにならんとも限らないので、職員の中に若しそういう軽はずみな氣持から本件を起したものであるならば、この際是非自分でなくても、角田檢事なり、局長にでも申出て貰いたい。できる限りの善処をしたい。又世間でもどうもこの事件内部関係らしいという言葉もあるので、檢察廳としても対外的に明しを立てる必要もある。若し職員でないならばないという明しを立てなければならんと思うということを懇懇話しまして、まあできればこの際自分も一應の事情をそれぞれ個々別々に聽きたいからと申しましたところ、職員全部もこれを了承して呉れました。是非自分達調べて貰いたい。自分達は絶対かような悪いことをしておるものではないということでありましたので、それでは別々に一應事情を聽きたい、尚調べるということになれば、皆家の方もすつかり調べて貰いたいというようなことで、こちらでもまあ家の方も見せて貰いたいということの了解を得て、私職員の大部分を短いものは五分くらい、長くかかつたものでも二、三十分くらい、それぞれずつと一通り当時の状況といいますか、勤務状況等を聞き、又証拠品保管状況処理状況等を聞いたのであります。私がそういうことを聞いておる間に、私に同行して來た事務官その他の者が、正木事務官の家その他五名ばかりの事務官の家に、これも本人達了解を得て、家を見せて貰いに行つたのであります。まあいわゆるこれが告発関係であり、強制的な家宅捜探をしたという告発になつておりますが、見せて貰つて向うにこちらでも事務官行つておるのであります。行く場合にも、若し了解を得て行くにしても、本人はいいと言つても、本人が戸主の場合もありますけれども、まだ世帶員のような者は世帶主でありませんから、向う行つて家族の人なりお父さん方、その他家族の人、管理者の人の了解を得て貰いたい、この頃こういうことは非常にやかましく言われておるのであるから、本人がいいと言つたからと言つてそうやつては困るのである。家族の人、管理者十分了解を得て見せて貰わなければならん。又向う行つて見せて貰つた結果、本件に全然関係のないようなもので、或いは外の犯罪関係があるというような者もあるかも知れん場合がある。まあ人の家で、この頃のことですから、闇米を買うというようなこともあるかも知れんが、そういう関係には全然触れて貰つては困る。又特に行くについても非常に人目に立たないように、成るべく家の前の方でばらばらになつて行つて貰いたいというようなことまで注意しまして、それぞれ手分けして、主として米子支部証拠金関係を扱う者、或いは幹部の人の家五軒ばかりを手分けして見せて貰つたのであります。その結果、その当時は、まだ私はただ役所事情を聞いておつたので、行つた人達がどういうものを持つて來、或いは又どういう態度向う行つた調べなかつたのであります。本件が問題化して調べられた結果によりますと、こちらもやはり同じ檢察廳事務官でありますから、それで向うでも米子で、こういう事件が起つた檢察廳事務官が來たということを了解して内輪同志のことでありますから、どうぞ上つて十分見て呉れとお茶を出したり、或いは帰る時の御苦労さんでございましたと言つて道まで送つて呉れたり、或るところではおやつに、何か芋か何か出すからまあ食べて帰つて呉れというようなことで、非常になだらかな氣持で迎へ、送つて貰つたのであります。押收して來たといいますか、預つて來品物も大したものはなかつたのであります。ただ正木事務官の家から旧紙幣、元の十円紙幣ですね、旧紙幣で証紙の貼つてない十円紙幣二枚ほど紙屑籠の中に入つてつたということで、それを持つて來た、その外一、二のものを持つて來た、又外の事務官の家からは役所の記録を持つて來たものもありますが、盜難にかかつた証拠品というようなものはなかつたのであります。又私の調べは右のような通りで、午後からそれぞれ聞かない人と聞いた人とは部屋を別にしておつて貰いたいということで、一人ずつ來て貰つて事情を聞いたのでありますが、何さま人数も多いことであり、割合に時間がかかりまして、夕食を一緒にしたり、夜の八時頃までだつたと私は思うのでありますが、遅くなつた人は、十時頃までおつた人もおるそうであります。これらはもとよりそれまで是非部屋におつて呉れ、帰つてはならんということでやつたのでなくて、上官である私とか、事務官の一番上である書記長とかが來ておりますから、同じ役所関係の者ですから、上の人が帰るまでは帰らないという慣例といいますか、慣例的な、儀礼的な氣持もあつて、ずつとその意味宿直室で、小使室で雜談しておつてつてつたという状況であります。それが不法監禁したという告発になつております。まあその結果、或いは汽車で通勤する者とかはまあ夜も遅くなつたから、家へ帰つても仕方がないから宿直室に泊るということで、家に帰らなかつた者も多少あるようであります。それらを告発では幾日も夜も畫も監禁したということで告発されておるのであります。併しそういう事情でなかつたのことは、今申しましたような調べ方であつたということ、或いは窃盗事件が、その後本格的に……私がまあ行つて調べた当時は内部的な問題でありますから、同じ役所の威信にも関係する事件であつたから、私の職務上先ず内部の者を一應調査して見る、又お互い一諸になつた氣持職員の方も協力して調べて下さいというようなことで、対外的問題があるから調査を始めたのであります。結果はそういうことで、証拠品はありませんでしたし、まあ正木君は多少私どうもちよつとおかしいという直感をしましたが、犯罪を否認しましたて、認めなかつたので、又強く私は自由させようと思えば、まあその時或いはそういうことに行つたかも知れなかつたのですが、そういうことよりも自発的にこの問題を解決したい、又犯罪として扱うよりも、先ず証拠金を出して貰いたい。若し内部であつたら出して貰いたいということが中心調査したのであります。その当時までは、職員犯行ということをはつきり断定して進んだわけではないので、内部的な調査をしたのに過ぎなかつたのであります。その後筆跡鑑定等の結果、正木事務官筆跡に間違いない、それからいろいろな十六日の状況正木事務官行動等から、どうしても正木事務官犯行と断定せざるを得ない傍証が出て來たので、第一の事実は正木事務官は否認のままでありますけれども、起訴したのであります。私がこの窃盗事件調べた経過は、大体以上のような状況であります。
  4. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) この点について質問はありませんか。
  5. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私の疑問としておるところは令状問題なんです。令状を持たないで家宅捜索をしたということが、私の方では非常に重要ではないかと思つておるので、告発した方面は実は第二点に考えております、共産党告発した関係は……。結局今のお話では、何か行政的にそれが……
  6. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 私は監督者として、たとえば多少何かも知れませんが、田舎の小さい役所では家族同樣にやつております。又監督者としての責任上も、当然或る程度のことは、内部犯罪行爲というか非行があれば、それを糺すという責任も私にはあると思いますが、さような意味合いで、それから本人達も、内部関係ということになれば、対外的に檢察廳の体面上も是非調べて貰いたい、明しを立てるという、正木事務官はそういう氣持はなかつたのでしようが、他の人は正木君がしておるということは毛頭考えておりませんし、正木君は庶務課長で一番上でありまして、他の者は下の職員でありますから、從來正木事務官自分達の上司として立派な人だと思つておるので、まさかそういうことがあろうとは思えない。是非明しを立てたいという氣持もあつたし、又本当に令状を出してまで調べるということは、これははつきり犯罪として完全に取扱うということであれば、令状を出して、その後に正木事務官家宅捜査などは令状を出してやたつのでありますが、まだそこまでに私も行つておりませんし、職員全部も仮にこの程度令状を出してでもそれはできないこともありませんでしようが、私としても部下職員全部がというか、幹部全部が犯罪者なりというような氣持で臨むということは上官としての態度ではない、却つてそういうことをすることは職員達に迷惑をかける。令状まで出して職員調べられるということになれば、これは非常なもう公のことになりますから、裁判所にもはつきり分りますし、対外的にもはつきり分つて來ますし、却つてそれは本人達の名誉を失墜することになります。これがはつきり或る程度の断定し得る段階に達したならば、これは本人の名誉も致し方ありませんけれども、その程度氣持ではなかつたのでありまして、本人達も了承して、家族達にも喜んで迎えて貰つて家族捜索といいましても、それで本式に他のことまで徹底的にやつたということはないのでありまして、向う了解して、どうぞ見て下さいということで、こちらで帰ろうとしても、どうぞこの部屋もということで案内して貰つた程らしいのであります。私は行つておりませんけれでも、事務官の話によりますと、送るときにも特に御苦労樣でございましたと……、どちらも内輪の者同士の仕事でございますから……
  7. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 外部でこの問題を冷靜に眺めますというと、本当に家宅捜索をされたのかどうかというところが要点じやないかと思います。その意味は、そういう捜索をされたその行爲そのものの深さが、家宅捜索程度まで行つていやしないかということを心配するのであります。若し深さが実質上家宅捜索と同じような程度行つておるとするならば、やはりそこまで行き進んだことをやるのは適当でないという疑問が出て來るのであります。というのは深さの問題であります。もう一つそれから幅の関係ですね。若し令状をわざわざ裁判官の方から出して貰つて家宅捜索に臨むとすれば、ここでお調べになつた九人までもやることはできないのじやないか。少くとももう少し範囲が狹くなるのではないかというような方面の又疑問もありはいないか、幅が令状を貰えばそこまで及ばない、令状なしでやつたものだから捜索されない筈の人々でも捜索されたのではないか、こういう疑問が起るのではないかということが実は疑問であります。それで捜索それ自身の性質が先程行政的なものだとおつしやいましたが、若しそれであれば、問題は極く簡單じやないかと思います。その程度つまり深さですね。或いは家宅捜索調書というような類のものでも作つておられるのかどうか、そういうものは作つていなかつたのであるか。
  8. 楢原義男

    説明員楢原義男君) その当時はそこまでの氣持でなく……
  9. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 そういうものは出ていないのですね。行つた人はそういうものを作つていないのですか。
  10. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 作つていないと思いますが、私は直接自分行つておりませんものですから、ただ九名でなく五名ぐらいと思いますが、家宅捜索、それが廣くなかつたという問題……
  11. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 七人ですか。
  12. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 五人か六人か七人になりますが、これはあの人の家を調べ行つて、この人の家を調べに行かないということになると、調べられた人が後から自分だけが特に調べられたというようなことで、了解はしておつたにしても、後で多少氣持的にいやな氣持を持つ人があるかも知れないので、自然形式的に流れて、幹部の人を中心にしてといいますか、そういうことをやつたのであります。
  13. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 そこで問題は深さの問題ですが、深さが家宅捜索程度に進んだとすれば、これはやはり世間で問題にされるのではないかということを心配するのであります。承諾さえあれば家宅捜索をやつてもよいというようなことを檢察廳の方で考えておられるように誤解をされると困りますから、たとえ承諾があつて令状がなければできないことです。家宅捜索ということそれ自身令状がなければできないことに憲法でなつておりますから、憲法違反のことからは、捜索を受ける人の承諾によつて除却することはできないのですが、その点を非常に心配しておるのであります。そこで今おつしやる行政的にという程度を実は知りたいのが一つですが、それから先程申しました幅ですね。令状を持つて行くということになれば七人までもお調べになることはなかろうと思います。結局今おつしやつたような工合に、一人調べて他を調べないというわけには行かない、今もおつしやつた通りです。部下でそういう者があつた場合に、進んでどうしてもその程度までやらなければいけませんが、そうなると、極くお座なり的の家宅捜査になるのじやないかというような工合の感じが私はするのです。それから今いろいろお話を承わると、結局傍証のうちでも有力なものとしては、本人の書いた字、それはむしろ役所にあるべきであつて……
  14. 楢原義男

    説明員楢原義男君) いや、そういうものを持つて來たのじやないのです。後からの鑑定の結果です。役所にあるものは……
  15. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 又若しこういうことが一つ疑問になりはしないかと思います。その家宅捜査をしたときに証拠が出たとしますね。現に何か持つてつた、こちらの証拠品を持つてつたとすれば、それが直ぐにやはり一つ証拠になります。それは押收するかどうかという問題がここに起りまして、若し押收すればやはり令状なくして押收したということになりますね。それですからどうしても深みの点をよく世間に話さないと、家宅捜索というような深いことをやつたんじやない、ただ全体の職員相互の、まあ何といいますか、明しを立てるためにみんな調べ貰つたんだ、こういうようなことで、極く平易な意味でやつたのだということをはつきりしたいというのが私の希望なんです。明しを立てるという方の方面で言いますというと、実は家宅捜索を受ける本人が全然犯罪関係のない人でよく受けますが、その場合に勿論明しを立てるつもりで、どうぞお調べ下さい。私は決してそういうことはやつておりませんということを言つておるのですから、明しを求める意味において家宅捜索を甘受したという意味では、令状発行をしなかつたということの関係を除却しないだろうと思います。ですから先程の仲間の者であるから喜んで受けたからやつたのだと言つても、その行爲は、深みが家宅捜索程度まで踏み込んでおるというようなことになるというと、やはりいろいろな問題が起るから、今おつしやつたような工合に、行政的の程度で止まつておることを実は希望しておるのですが、調書など取つていないことを希望するのですが、そんなものは取つていないだろうと思いますが、どうですか。
  16. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 私も大体今申しましたような氣持で、そういう同じ内部関係のことで、或いは寄宿舎のうちで盗難事件があつたから、地檢のうちをちよつと見せて呉れというようなことでやつた、そういうような氣持でやつて、それでそれと同時にどうも職員事務監査という問題を前にやつてつたものですから、ひよつとして、これは事務監査の結果、初めの状況によりますと、余り芳ばしくないので一應どこにかちよつとかくして置いてですね、一應事務監査を少し延して貰つて、そのうちにこう辻棲の合うようにしてというような事柄でもやつていはしなかつたろうかという漠然たる氣持がありましたから、そういう程度でどこかちよつと直しておるのじくなかろうかというような氣持で見せて貰つた、深くそれを山に持つて行つたり、或いは埋めたりしてかくしておるというようなことまでにその当時は考えてなかつた、軽い氣持であつた。或いは役所のうちの外の戸棚にでも置いてはいないかというような感じもあつて、翌日ぐらい役所もずつとみんなで探して貰いたいというようなことで探したんですから、私の氣持はそういう程度氣持でやつたわけです。
  17. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私の心配しますのは、このやり方でよろしいということになれば、同じ事件の起つた場合に同じようなことをやられた場合に、それでよろしいということになるのじやないかと思います。裁判所などでよく関係者横領するというようなことはたびたびある事件で、いつも決算のときもたびたび出て來ます。そういう事件は必ずしもこの事件に限らないのでございます。將來と雖もこれは起つて來ると思います。その場合にこれと同じような経済を踏んだ行動が行われたときに、それも是認するかどうかということになつておるわけです。私の考えでは、ここまで行つてはいけないんじやないかという心配がある。職員の家宅を七人まで調べるということは、たとえ私が申しました深みが浅くても、横に廣過ぎるんじやないかという感じが私はする。同じ部下だから、承諾すればいいじやないかというやり方はどうか知らんという私は考えがある。これを是認されますと、繰返し繰返し同じことをやつたつても差支えないということになるわけです。そこでやはりここまで行かない方がよくはないか、犯罪は暫く遅れましよう。直ぐに発覚し得たものが幾らかそれで遅れるかも知れません。それは人権を擁護するということになれば、これは止むを得ないことになる。今度の新らしい刑事訴訟法は結局そういうことになつておるわけなんです。それは一般的に人権を尊重する結果起つて來るすべての結果なんですから、そこはもう新らしい刑事訴訟法になり、新らしい憲法の下では、從來のような工合な心持ではやはりいけないんじやないかということを実は思うのです。そこで私が非常に希望するのは、この捜索が極めて軽いものであつたということを事実において知りたいんです。それともう一つはさつき申しましたように、若しその捜索に行かれて証拠品が出た、それを握つたときにどういう処理をするか、証拠品なんですから、これは何とかしなければならん、ところがそれが令状によらずして押收をしたということになつて、正面から引つかかりはしないかという心配がある、ですからそれからいうと、裁判官の忌避のような場合、回避のような場合、あの場合に從來刑事訴訟法なんかの思想では逃げるという態度になつておる。自分が偏頗になるかも知れんというときには逃げる、積極的の態度ではない、その態度で行けばこの捜索もこんなことをしないで、一應ずつと職員の話を聽いて置いて、家宅捜索までやらないで、やはり逃げておるということの方が、或いは刑事訴訟法に適するかも知れないということを考えるんですが、回避の場合はむしろ積極的に從來のような逃げるんでなくて、進んでやるということが或いは必要かも知れない、併しながらこの場合は令状という制度が新らしくできたんですから、むしろ逃げる方がいいんじやないかというふうに私は考える。ですから將來こんな事件があつたときにはここまで進まない方がよくはないかという意味の結論に実は私の考えとしては持つて行きたいんです。それで何処かに置きたい、その限度をどうしたらいいか、そうしますと、將來同じ事件が必ず起りますから……、裁判所に始終起ることです、郵便局にも起りますし、その場合にこういうところまでやるようにしようじやないかということの行政上の雛型ができると、関係者は非常に助かるんじやないか、殊に上官におなりになつて、あなたのお立場に私の体を置いて考えれば、何かそこに或る限界を拵えて貰いたい、ここまでやる、そうすればこれは刑事訴訟法にも憲法にも何らの疑義がない、そうして最も穩当な範囲である、こういうところに実は標準を発見したいんです、それが私今日お伺いする趣旨の要点なんです。余りやかましく申しますと、令状を出した場合には七人までも家宅捜索をしないという一つの幅の問題が起つたときに、そうするというとですね、その甘受した方が義務なきことをやつたのではないかといことになる虞れがあつて、やはり刑法の百九十三條の有罪という方のことになるのじやないかという私の疑問があるのです。
  18. 楢原義男

    説明員楢原義男君) そういう問題になりますと、これは逆に考えますと一体人権というものが本人達が、最前ちよつと触れましたけれども、本当に令状を持つて行つてされたらそれが一体人権の擁護になるだろうか、令状を持つてあれをやれば人権の擁護になるか、それは却つてならない、本人達の人権を蹂躪する結果になるのじやないかと思われるのですね。
  19. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それはですね、裁判所令状を出すのですから、裁判所はそういう場合には出さんと思う。裁判所が出せば人権蹂躪にならん筈です。その裁判所が判断するのですから……
  20. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 裁判所の問題ということは……
  21. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 裁判所が判断するのですけれども、人権蹂躪になるかならんか……
  22. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 実際の実務的の問題になりますと、今まで令状を請求して出さなかつたというようなごとき殆んどないわけで、大概出しておりますね。
  23. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それが今問題になつている。
  24. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 裁判所がいいか悪いかということは別問題として……
  25. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 いろいろの問題が起つているのは檢察官と裁判官との間にいろいろな感情の疎隔とかいうようなことが令状問題から起つていることを我々は実感しているんですね。それは私は一面に復効裁判所裁判員をしているんですが、その彈効裁判所事件でその問題が余程考えさせられることがあるのです。檢事の方で判事に、裁判官に令状を出して呉れと言つたところが出さなかつたしいうことで爭いが起つたということがあるのですから、そこで判断はやはり裁判官がすべきもので、檢察官の方でそれが人権蹂躪なりや否やということを判断すべきものではないと思う。そういうことでありますから、どうしてもやはり裁判官の令状があるかないかということが人権蹂躪があるかないかということの判断の要点になるのですから、檢察官と雖もそれはやはり判断をしは悪い、今にようなお考えが却つて誤解世間に起しやしないかということを私は恐れるのです。
  26. 楢原義男

    説明員楢原義男君) これは私檢察官としての問題でなくて、全然客観的な問題として、私は檢察官として、そういう判断は裁判所がしますけれども、実際において若し裁判所が判断して出るという場合には、大概の場合は出ましようが、出る場合であつて本人のためには出ることが不利益の場合も沢山あると思います。まあ実際において裁判官が判断して令状を出しますがね、全然犯罪を犯していない人にも出し得るのですね、理由が一應立てば出します。そういう場合その人が出されて調べられたのがいいのか、出されなくて調べられたのがいいのか、それは出されなくて調べるというと……
  27. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 自分から進んで家宅捜索をして呉れと言うことはないでしよう。訴訟法上そういう途はある筈はない。家宅捜索をどうぞして下さいという訴訟手続しかないと思う。必ず裁判官が判断をするのですから……それでお尋ねしているのです。この家宅捜索をするだけの深みがあつたどうかということをお尋ねしているのが一つと、今おつしやつた横へ判事が令状を出さないということが明瞭と思われるところまで進んでいないが、上官までお調べになつた檢事調べるというところまで、裁判官が令状を出すかどうか、令状はやはりいろいろ書かなければ令状は出せませんから、こうこうこういうことがあつて証拠を取るがために必要であるから理由を添えて裁判所に要求するのですから、裁判所がその要求を受けて判断してそうして令状を出すのですから、私は恐らく……これは私の判断ですが、七人までの令状は出さないと思う、裁判官は……
  28. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 結局本件捜索とか、言葉の違いのようなことですけれども、具体的な犯罪として或る程度の捜査ということでやつたのではなくて、まあ調査調査と言いますか、内部的な実情調査と言いますか、そういうふうな氣持の下にしておるものですから、そういう意味合から行くと、あれを調べてこれを調べんのはいかんということになつて檢事の家だつてちよつと棚を覗いてみたという程度つたようです。形の上でやつただけで、実際に刑法にいう家宅捜索として又そういう氣持で私はやつたのではなく、向うの人達もそういふ氣持で受けていないので、その点が法律的というか……
  29. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それではその行政的とおつしやつることをもう少し内容を知りたいのですがね、結局先程申しましたごとく、同じ事件が起つた場合に、檢事正のなさつたと同じことをやつた場合に、それで世間が是認するかどうかという点が要点なんです。一つのここに模範ができたわけで、皆を呼んで、そうしてよかろうと言つたときに檢察事務官が出掛けて行つて各家庭を調べるというところまでやるということが新らしい憲法の下に妥当なりや否やということを疑いはしないかということが私は心配なんです。私はもう少しそこまで行かない方がよいのじやないかという頭があるからお聞きするのです。私が希望するのは、だから行政的ということが非常に薄かつたのだということを承知したい。そうするというと、こういう程度ならよいのですか、そうなると出掛けて行く事務官の頭が非常にむずかしくなるので、檢事正が御自身で出掛ければよいが、事務官としてどういう程度檢事の中では調べるか、それから庶務課長程度はこれくらいになる、それから関係ない人達に対してはこれくらいにするという判断をしながら捜索するということは、これは少しむずかしいのじやないか。やはり同じようなことにやつて行かなければ、それこそ折角調べられるという御趣旨が、どこも平等にするということをおつしやつておるのですが、今おつしやつたように檢事のところはちよつと棚を見ただけだということならば、それは平等にやつていないことになる。
  30. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 初めから特別な所に隱しておるということじやなく、内輪同士、友達同士、見て呉れ、見させて呉れという氣持で進んでおるのですから……
  31. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 これは非常に法律的に、理論的にやつて行くと誠にこれはむずかしいことになるか知れませんが、又これは研究問題といいますか、人権の擁護の範囲、人権擁護というものを一体あなたのおつしやる限界の問題ですね。非常にむずかしい問題だと思いますね。私はやはり令状貰つて家宅捜索をするという程度に至らないものならば、たとえ行政的にでも家宅捜索に類するようなことをすることは控えなければならん、こういう頭です。それはいろいろの情状もありましようけれども、問題は法律論ですから、今憲法論を我々は考えておる。いろいろな、こういう場合にはこうしたらよかろうという事情論の方は、これは刑法で言えば酌量の方の議論になるので、有罪か無罪かという議論は法律だけで端的に行く。その違憲は、憲法違反なりやあらざるやということはこれは令状にあるのです。その方面から行けば違憲の虞れがあるということを言われはしないかという心配がある。お互いに内々だからいいじやないかということになれば、今度はそれは総体的にこれは内々だからこういうことで行くのも止むを得ないだろうということになれば憲法違反であるけれども、情状はこれは了すべきであるから不問に附そうということになる。違憲ではあるけれども情状してよろしいというのと、初めからよろしいというのとは大変な違いです。本件は違憲であるという議論が起きる虞れがないかということを心配するのです。檢事正さんに申上げるのはどうかと思いますけれども、この間人権擁護局長においで願つて開いたのです。ところが人権擁護局長令状ということを余り要点としておられなかつた。私は驚いた。実は何かと言えば人権擁護法という法律は、言わば令状の問題ですから、イギリスのレヴィスリットの方から來ておる。ヘィヴィアスコーパスから來ておる。リットが問題なんです。憲法の中には英訳にはウォーラントと書いてあるが、リットのことです。令状ということは法律では非常に大事なんです。この憲法裁判権の発動は令状に出発するということで來ている。裁判官がそこに乘り出すかどうかというスタートになる問題です。軽く見るようなことは私は許させないと思う。ですから私は非常に重大じやないかと思つておるのです。実はそれでできるだけ行政的なものであつて軽かつたということの方のいろいろなことをおつしやつて檢事正自身御存じないかも知れないが、行きました事務官がどういう事情でやつたか、それを一つ第一段として了解したいのです。極く軽く言つて友達同士、それならば余計なことじやないか。そんな程度なら探して見ても分りません。犯罪があるかないかということを眞劍に考えて見なければならない。ある限りは掴んで來なければいかんのです。やはりそれは家宅捜索でないかと思うが、正木君の家へ行かれたときに今の二枚の旧十円紙幣の外に何かあれば持つて帰るでしよう。旧十円紙幣をも持つて帰つておるのだから、証拠品を明瞭に私持つて帰るのじやないかと思う。そうしないと、これは非常に手落ちだと思う。札を持つてつたわけですから、それよりもつと有力な証拠品を持つて帰る。それを裁判所証拠として採用する場合はどうするかということですね。令状なくして押收したということになりはせんか。持つて帰らないというならば、何のために家宅捜索行つたのか。こういうことになるわけです。そういうことは非常にむずかしい問題がここの内藏しておるのじやないかということを心配するのです。
  32. 楢原義男

    説明員楢原義男君) それは自分から進んで出す場合ですね。証拠品といいますか、品物を……
  33. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 これは主人がいないのですから、主人は役所にいるのですから、自分の意思がここに働き得ません。主人の留守中にやつておるのですから……
  34. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 議論になるとなんですが、管理者は妻が一切管理しているわけですね。
  35. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 承諾は主人がして、妻はやつていないから令状を示して呉れということはないわけですね。やかましく言えば、やかましく言う若し妻であれば、なぜいらつしやつたのか、夫から何も通知がないとおつしやるでしよう。そういうときに引き下つて帰り得るかどうか。
  36. 楢原義男

    説明員楢原義男君) そういうことまでするつもりじやなかつたということは最初ちよつと申上げたが、それで世滯主であつても或いは職員だから親がいる場合もありますから、親のいる場合は、親がいなくても、家族の人がおつても、家族の人みんなの氣持が少しでも嫌やだという感じをなさるようだつたらしないで呉れということで始めから行つておるわけです。つまり家宅捜査という言葉を使われること自身が僕はどうかと思う。そういう氣持でないから……
  37. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 これは廣島の檢事長からの御報告の書類の添附書類であると思いますが、それは皆家宅捜索家宅捜索という言葉が使つてありますね。
  38. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 私もここの裁定書というのを貰いましたが、捜査ということを使つてあるし、それから十一時頃か十時頃まで調べたというようなことも書いてありますが、まあ大した問題じやない。結論はなんだか或いはそんなふうに小使室で話したり、そう徹底的な、檢事正がその本当に犯罪者として……、扱うときは僕は本当にそのときの氣持は、出て來れば、そのリットを出して呉れるのじやないか。若しあつたらそうして貰いたい。そうでなかつたら、一應調べをしたけれども、内部関係じやなかつたということで対世間的な明しが立つというような氣持であつたのですがね。今度捜索ということを使つておりますが、そういうのも私としては不服でありますけれども……。調査ということですね。私はそういう氣持ですから……
  39. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それで実際問題としてはその後正木熊雄なる人の家宅捜査をされたわけですね。令状によつて……
  40. 楢原義男

    説明員楢原義男君) ええ。
  41. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 その際は何もなかつたのですね。これは事件は進行中ですからお聞きするのはおかしいですが、なすつたわけですね。
  42. 楢原義男

    説明員楢原義男君) はつきりした何はありませんでした。
  43. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 令状で……
  44. 楢原義男

    説明員楢原義男君) やりました。
  45. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 家宅捜索を実行されたわけですね。
  46. 楢原義男

    説明員楢原義男君) それは徹底的に本当に……
  47. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 行なわれたわけですね。
  48. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 押入から、家の下からすつかりやつたですよ。
  49. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 その際の令状によつて家宅捜索されたのは、七人の人全部に及んでおりませんね。
  50. 楢原義男

    説明員楢原義男君) それは正木事務官だけです。
  51. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 よく分りました。
  52. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 同じ出席関係はつきりしたものですから……。まだそのときは犯罪として扱つているのじやない。犯罪の扱いとして論ぜられると、捜査という言葉が出たり、違憲という問題が出ますけれども、私の方じや誰が犯罪者ということも、はつきり事務官だということでもないし、最初の新聞には密造関係の檢挙を受けた朝鮮人の仕打じやないか。或いは共産党が檢挙されたので、腹癒せにやつたのじやないかということも新聞に出ておりましたし、又多少僞装的なこともしてありましたが、私の方で明しが立てたいという氣持が非常に強かつた。万一それであつたなら、早く出して貰えるならば、多くの人に迷惑をかけないでもいいですから、犯罪捜査の段階として論ぜられることがちよつと私としては腑に落ちないくらいな氣持です。
  53. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 そうすると、何か証拠でもあれば、今度それを本人に出して貰うというような工合にされるお心持であつたわけですかね。何かあれば……。ここで発見した場合ですね。家宅捜索調べ行つたが、そこで何か掴んだ場合は、どんな工合にするというお考えですか。
  54. 楢原義男

    説明員楢原義男君) そこまでの氣持も何もありませんでした。本当に証拠があれは、はつきり改めて令状を出して、本当の犯罪者、被疑者としての取扱をする。それから実際刑事訴訟法に基く捜査を進めて行く。本件においても正木事務官の場合でも関係が出て來たから、はつきり犯罪者として、被疑者として取扱を進めて來たのです。まだそれまでは被疑者的な取扱というまで及んでいないので、そういう氣持でやつていないのですから、僕もこれは非常に人権のむずかしい問題だと思いますね。
  55. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 我々もそう思いますね。
  56. 楢原義男

    説明員楢原義男君) この問題は別に考えても、一体どの程度まで……。人権というものは一体何かという問題を考えさせられるですね。ただ刑事事件的ないろいろな場合があつて、果してそれが法律通りにやるのが人権擁護になるのかならんのかということに関係します。そういうものはここに憲法にいう人権じやなくて……
  57. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 行政的の、どういうように解釈いたしますかな。捜査は別に犯罪についての疑をなくするために行なつたということになりますかね。
  58. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 多少そういう疑問といいますか、多少の疑義を、その内部関係で怪しいという疑問ですかを解く。又片一つ方からは、そうでない人でも自分らの明しを立てて貰うという氣持で、一應内部関係でそれを明らかにしようということで……
  59. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 そうすると、捜査調書というものはありませんね。そんなものは拵えてないのですね。
  60. 楢原義男

    説明員楢原義男君) それはないと思いますがね。
  61. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それで結果は、檢察事務官は御報告したのでしようね。檢事正に対して……
  62. 楢原義男

    説明員楢原義男君) それは勿論しました。
  63. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それは書面で報告していない……
  64. 楢原義男

    説明員楢原義男君) その当時はまだ実際において直ぐ行つて直ぐ報告をするというか、何もありませんでしたというようなことで、書面をはつきり取つてどうというようなこともありませんでした。又事務官も、事務官同士のことですから、そう深く考えていないわけです。
  65. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 併し一應は檢事正にこういう所を探したが、ここはこうだとかというようなことは何か申したのだろうと思います。
  66. 楢原義男

    説明員楢原義男君) それは勿論ここに書類があつたとか、ここでは書状があつたとかということは報告を受けて、そのときはそういう氣持でなかつたけれども、後程こういう事件が出て來たから、或いは書面になつて出て來たのかも知れませんが、本当に被疑事件として扱つて來たから出て來たのかも知れませんが、その最初のときはそういうことを、調書を作つて出して行こうというような被疑事件として、全部被疑者として扱つたのじやないわけですから、何もそういう問題は出ていないわけですから……
  67. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) 正木事務官はいつ起訴しましたか。
  68. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 四月の四日に起訴したと思いますね。それでこの問題も全然問題なく済んでおつたのです。そういうことまで向うの方も考えていなかつたのですが、その後角田檢事だけでは、どうも責任が、この方だけでは責任が取れない。割合に檢察廳事務に慣れない方で、以前に弁護士をされておつた方で、梶川という檢事は新らしく支部長として任命したわけです。それに対して、自分が年が上であつたにも拘わらず、梶川という自分より年の下の人が支部長として呼ばれて監督者として來たことが不満だというようなことと、それから職員の号俸の切替が正月にありまして、その結果今度の新らしい給與令によると、出身学校が小学校であるか、或いは專門学校、中学校であるかによつて初任給が非常に違うわけです。それで自分より今まで下であつた職員が上になつた場合も幾つもあるわけです。その中の一人がこの米子事務官に非常に下になつた人がおつたりして、どうも自分達は特別な扱いをしたというようなことから人権擁護委員の方に、青戸さんとかいう方にちよつとお話したらしい。それが新聞に傳えられて問題になつたので、その当時は問題になつていなかつたわけです。その事件は昨年の十二月に問題になつて、私が調べたのは昨年の十二月末の問題ですが、事件として新聞に出たり何かして騒がれ始めたのはもう二ケ月も過ぎた二月末から三月初旬にかけてであつて、何か外の方面から派生して來たような……本人も了承しておつたわけです。
  69. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) その調べ行つた人檢察事務官ですか、檢事であるか、警察官が行つたのですか。
  70. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 檢察事務官も警察官も多少行つております。
  71. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) 檢事は行かないのですか。
  72. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 船越という副檢事角田君の家に行つたそうです。これは船越君もたまたま事件の應援といいますか、この事件でなくて、昨年末に未済事件処理したいということで、米子に應援に來ておつた、そうしてまあ一遍一緒に行こうというようなことで行つたらしいのです。私は別にそれを言つたわけではなかつたのですが、とにかく行きました。
  73. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) 警察官は何人ぐらい……
  74. 楢原義男

    説明員楢原義男君) やはり家が多かつたので相当、相当といつても十人ぐらい。五ケ所に分けて行きましたから……
  75. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 檢事正の心の中は、こういつたような事件が又々起つたとすれば、同じようなことをなさいますか。
  76. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 一應この問題が非常に問題化して來れば、まあ愼重に、こういう方法でなくてやりたいと思います。私としてはその当時は良心的にはちよつともやましい氣持は持つていないのですが、多少でも問題視されるということになりますと、方法についても考慮したいと思つております。
  77. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) これは令状がなくして家宅捜索をやるということは憲法違反だ、こういう疑いがあるのですから、上司と研究したらいいのじやないですか。こういうことがあつたらどうしたらいいか……。松村さんのはやらん方がいいというわけですね。
  78. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 ええ、私の意見はここまでなさらない方がいいのじやないか。さつき申しました裁判官の回避というような態度はこういう際にはやはり取る方が穏当じやなかろうか。そこまで行かないで……
  79. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) やはり統一して置く必要が……
  80. 楢原義男

    説明員楢原義男君) 將來こういう事件が起つた場合どの程度のことをするかということは、これは始めてでしようから、私としてはただその当時又丁度年末の二十九日ですし、皆職員がおらなくなりますしね。二十八日が御用仕舞ですから、私らも正月とか、年末になりますからして、或いは若しそれが犯罪があつたとして、その前に年末、年始に來て貰つたりなんかしても困る。又氣分が変つて今ならば出したいという氣持であつても、もう少し期間が経てば出したくないというような感じになつて貰つても困るし、一應早く行つて皆の了解を得たいという氣持行つたわけです。それで普通の場合だとそうまで急がなくても……と言いますか、よかつたかも知れませんけれども、丁度年末であつたし、役所が休みになると思うものですから、それに自分責任証拠品というような問題で、普通の職員の何かオーバーがなくなつたとか、金がなくなつたというのと余程違うものですから、大勢の人に関連する、一般の大勢の人の関係がある問題だものですから、まあ上司の方にまで了解を得なくて、一應事情調査に行くということで私は行つたのです。
  81. 齋武雄

    委員長代理齋武雄君) よろしうございます。    〔委員長代理齋武雄君退席、委員長着席〕    —————・—————
  82. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 続いて暴力團事件をいたします。それでは法務府特別審査局長の吉河光貞君の現下の暴力團に対するところの解散命令、並びに解散を命令された暴力團の実態というようなもの、並びにその後の処置及び今後におけるところの全國の暴力團に対するところのお考え方というものをお伺いいたしたいと思います。
  83. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 実はポツダム勅令百一号並びに團体等規正令に基いて暴力團体として解散指定いたしましたものは、現在までのところ十九團体に達しておるのであります。そのうち内務省の調査局当時に解散指定いたしましたのが一團体、その他の十八團体は法務廳特別審査局になりましてから解散指定した團体であります。実は暴力團体を勅令百一号、又は團体等規正令の適用團体として採上げましたのは、昭和二十二年十二月、新鋭大衆党が最初の案件でありました。これが只今申上げた内務省調査局当時に解散指定した唯一の團体であります。その後本格的に暴力團体を対象團体といたしまして採上げて解散をするようになりましたのは昭和二十三年六月からのことでありまして、御承知の通りそれまでは特別審査局の主力が極端な國家主義團体の解散、又は軍國主義團体の解散という面に指向せられておりました。で昭和二十三年六月頃からこれらの超國家主義的な團体、又は軍國主義的な團体と並びまして、暴力團体をも採上げることとなつたのであります。特別審査局で解散指定をいたしました暴力團の名称、解散指定の年月日を簡單に申上げますと、戰災者更生会昭和二十三年六月二日、淺草更生寮昭和二十三年六月二日、朝鮮民主國防義勇團昭和二十三年八月十四日、日本反共連盟大鶴青年部昭和二十三年八月十四日、天拘党昭和二十三年八月二十二日、千束救済会昭和二十三年十一月一日、香月青年壯年同志会昭和二十三年一十月十九日、星櫻塾昭和二十四年一月二十五日、藤田組、これは元関根組といつておりますが、昭和二十四年三月十日、瀬戸一家、通称川島一家と言われておりますが、昭和二十四年三月十日、久留米露店商産合、通称原口一家、昭和二十四年四月二日、北原組昭和二十四年四月二日、太政官香川縣支部昭和二十四年四月二日、志波一家昭和二十四年五月七日、白龍社昭和二十四年五月七日、龍一家昭和二十四年五月十四日、萩島産昭和二十四年五月十四日、関根組昭和二十四年六月十四日、以上十八團体であります。御承知の通り私共が暴力團体と申しておりまするものは、勅令百一号第一條の第七号、及び團体等規正令第二條第七号に該当する團体でありまして、團体等規正令第二條第七号の條文を読上げますると、「暗殺その他の暴力主義的企図によつて政策を変更し、又は暴力主義的方法を是認するような傾向を助長し、若くは正当化すること」を目的又は行爲とする團体になるわけであります。そうしてこれらの團体は御承知の通り、博徒、露店商人、香具師、それから土木請負業者、その他のいろいろのボス的な團体と言われておるものであります。これまで解散指定されましたこれらの暴力團体の具体的内容は、それぞれ特殊な特異性を持つておるのでありますが、これを概観して見ますると、次のような一般的な傾向があるのではなかろうかと結論付けられるわけであります。即ち第一は親分、子分又はこれに類似した結合関係を以て結ばれておるもの、第二は繩張りと申しましようか、地域的な勢力範囲を設定するというような團体、第三は不法な威力を擁しまして國民の生活の自由と安全を脅かし、不法の利を図るというような点が顯著に現われておるのであります。中で特に注目すべき点はこれらの暴力團体の中には表面民主主議を標傍するものが少くない、それから又は反共運動を一應の目的に掲げるものもある。更には暴力團体の活動が單純に不当な利益を図るというだけではなくて、地方行政に多大の影響を與えて、町長のリコール問題等をめぐつて、その不法な威力を発揮するというような傾向のものも見受けられるのであります。私共といたしましては、中正にして健全な民主主義國家として日本を再建するためには、絶対にこの種の暴力團体を一掃しなければならんと考えておるのであります。今後の処理方針といたしましては、全國的に基礎的にデーターを調査蒐集いたしまして、これに基いて組織的に要注意團体を選択し事件の未然防止に努めますると同時に、悪質な事案に対しましては、容赦なく解散を断行して行きたいと考えておる次第であります。而も往々世間ではこういう暴力團体を解散しても何にもならんのではないかというような声も二三聞くのでありますが、私共といたしましてはこういう暴力團体を解散いたしまして、その主要な役職員幹部を追放にいたしますと同時に、これらの一度解散された團体の復活再建を嚴重に取締つて行きたい、それで團体等規正令におきましても、この種團体を復活した場合は、その刑が二倍の罰則を以て臨まれることになつております。復活再建を飽くまで抑えて行きたい。そうして我が國からこの種暴力團体を一掃して、平和な明朗な民主國家を作つて行きたいと考えておるわけであります。從來解散指定いたしました暴力團の具体的内容につきましては、書面で申上げた方が或いは適当ではなかろうかと考えておるのでありますが、委員長の御指示に從いたいと考えております。
  84. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それは一つの書面で出して頂きたいと思います。解散命令を下したことが形式的に流れて、実質的に今お説のような、依然として彼らの間に一脈通じて存在しておるのであるかどうか、その点……
  85. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) そういうところはもう再建復活するまでは動いておりません。一番根強いばくち打の團体でさえもまだ復活の機運は見えておりません。非常に嚴重に調査して……
  86. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 解散命令を出すのにどういうような措置が取られるのですか。
  87. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 解散命令を出しますと、これを示達いたしますと同時に、法務府の民事局第五課がその財産を接收いたしまして、同時に特別審査局は関係府縣或いは全國に通達いたしまして、その團体の支部或いは関係團体の有無を調査いたしますと同時に、主要役職員のリストを作成いたしまして、エビデンスを調査いたしまして、これをパージに指定いたしまして、爾後は全國の檢察廳始め國警、地警に解散指定の日を通達いたしまして、復活再建の嚴重な監視に当つておるわけであります。私共みずからも調査班を派遣してその事務の動向を見るということにやつております。
  88. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 特殊の各府縣には行かないのですか。八ヶ所ですか。
  89. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 八ヶ所であります。
  90. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 八ヶ所の人が常に監視しておるわけでありますね。
  91. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 都道府縣に主管の調査課、地方課というのがありまして、これに團体等規正令の要員として一定数の地方定員を配置しております。この方々がその当該府縣の問題につきまして絶えず注意しておるという状態になつております。
  92. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 財産というのは相当皆持つておるんですか。凡その……
  93. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) あるのとないのとでございます。そこで解散指定するまでは絶対に極秘に取扱います。財産の散逸、隠匿を防ぎますので、そうして押えるのですが、あるのとないのとございます。
  94. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 今まで解散を命ぜられた團体については武器やそういうものに対する何は、備えておりますか、そういうものはどうですか。
  95. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) これは從來解散を指定いたしました團体は数々の刑法上の犯罪を犯しておりまして、その間何回も檢察の手が入つておりまして、武器その他はその際に押收されておりまして、私共が解散して民事局がこの財産を洗うという場合には武器はありません。ただ唯一の解散團体であります朝鮮民主國防義勇團、これは軍服類似のものを以て軍事教練をやつておりまして、これにはそういうふうなものがありましたが、兇器はないのでございます。
  96. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) この種の團体は要するに資金関係は、彼らの構成する人の何か背後関係とか、そういうルートがあるとか、或いは武器についてそういうルートがあるとか、一應目をつけられるとか、家宅捜索を受けるという場合にはそれが隠蔽されるというような虞れはないんですか。
  97. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) ありますですね。大体團体の本部にはそういう武器は置いてないんですから……
  98. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 結局こちらが手を入れるには、解散命令を下すことによつて、そういうような力関係のものが隠匿されるというような傾向はないわけですね。
  99. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) ですから内偵中は非常に秘密にやらなければならないわけですね。
  100. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 人員関係はどうですか。今一番大きいのはどのくらいですか、構成メンバーは……
  101. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) いわゆるその勢力の及んだ者は三千名くらいの團体もございます。併しそれが全部正式のメンバーとはなりませんので……
  102. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 一應の動員勢力……
  103. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) これは非常に力を持つておりまして、瀬戸一家は三千名と号しております。大体北海道から本土に渡れば、瀬戸一家というものに草鞋を脱ぐというぐらいに彼らの仲間では力を持つております。
  104. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 先程の特審の出張所ですか……
  105. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 駐在監視です。
  106. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 駐在監視の人がお出でになつて地方の警察との連絡をおとりになつておるわけですが、調査される警察、それとこれらの團体と常に密接な関係があつて情報が逃れる傾向があるのじやないですか。
  107. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) そういう場合には白龍社の場合ですと、警察を乘取つた、警察の下僚に非常に影響を與えておるというような團体につきましては、警察の力を借りずに特審自身の力で調べる。或いは檢察廳の力、データーを貰う。足りないところは特審で調べるというようにしております。
  108. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 大体我々が見聞するところによればこの種の團体は地方警察に非常に喰入つておるということが実状のように伺われるのですがね。警察の手を借りることが主体であると、実態は把握できないと思われるのですがね。
  109. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 実は特別審査局は警察と指揮、命令の関係はありませんし、又警察を通じて調査をやることはその本來の筋ではありません。調査をみずからやり、都道府縣主管下の手を使つてやる。警察関係は警備の関係の援護を受けるとか、或いは既に警察や檢事局に上つておるデーターをまあ利用する程度です。
  110. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 補助的にお使いになるというわけですね。一言にして言えば……。今まであれですか、この種の團体について取調べられたのですが、その地方警察と結託して、その禍根のために手をお入れになることができないような事実はなかつたのですか。
  111. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) ございません。必要あると本局から十名なり二十名なり派遣しますから、支局に任せて足りませんと、本局から実動部隊を需要に應じて何名でも現地に集中するわけです。
  112. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 大体あなたの方の持ち人員はどれぐらいあるのですか。
  113. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 今度新定員が増員になりまして、本局員が大体三百五十名、それから地方支局員が百五十名、合せて五百名、人数が少いので嚴選してやつて行きたいと考えております。
  114. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 大体三級官ぐらいの人ですか。
  115. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 二級官と三級官です。大部分三級官です。三級官の中にも帝大卒業生も、或いは專門学校卒業者も相当大勢ございます。
  116. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) その程度の三級官の人は前身は警察上りの人とか憲兵隊とかそういうような人は入らないのですか。
  117. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 警察官は差支えないと思います。憲兵は入りません。
  118. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そういう捜査的の何か前歴のある人ですか。
  119. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 全々刑事訴訟法に言われる捜査の前歴のない人も過半数入つております。
  120. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) そいつは大体專門知識は持つておるわけですね。
  121. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) そうです。
  122. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 或いはあなの方で教育するわけですか。
  123. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) はあそうでございます。
  124. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 大体今お伺いした範囲は、いわゆる俗に言う極右團体とかいうのに属する関係が多いようですね。
  125. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) はあ、いわゆる政治的色彩の少い暴力團体と……
  126. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 右翼の方に属する團体ですね。
  127. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 右翼と申しますと、これ又ちよつと違うのでございます。政治的な傾向が相当強いのです。團体でございますから。
  128. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 政治的な色彩が強い右翼團体に対して今までどういう……。今後又は現在何かお考えになつていらつしやるのですか。
  129. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 特別審査局の方針といたしましては、左も右も、まあその政治的な指導理念の如何を問わず勅令百一号、まあ最近は團体等規正令の枠で十分に取締つて行きたい。これに違反する悪質な事犯に対しましては、徹底的に処置して行くようにいたしたいと考えております。
  130. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 結局極右極左を問わず。
  131. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) はあ、多年行政措置として犯罪未然防止という点にも重点を入れておりまして……
  132. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 國民主権並びに民主主義國家というものの再建を阻害するような行爲一切を対象とするという意味にお伺いしてよろしいですね。
  133. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) そうです。飽くまで團体等規正令の枠でやつているわけです。
  134. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 勿論法的根拠はそこにあるわけですね。最初に遡りますけれども、只今のこの事例でお伺いしてもよろしいけれども、暴力團の発生原因について特異性は何かあるですか。
  135. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) これは実はもう少しやりまして、この具体的なデーターに基いて檢討して、一つつた結論を得たいと思つて目下研究中でございます。
  136. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) ああ、そうですか、まだお集めになつているわけじやないですね。
  137. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) はあ。
  138. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) それなら集りましたら我々の参考に一つ頂きたいと思います。
  139. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 承知しました。
  140. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 左翼思想を持つた團体の暴力團というものに対しては、今日お考えになつていらつしやるですか。
  141. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) まあそれを暴力團とは呼んでおりませんが、勿論この團体等規正令の面から考えまして、違反の虞れある團体又は違反の容疑ある團体につきましては調査いたします。そうして嚴重に取締つて行きたいと考えております。
  142. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 今一点、暴力ということは、いわゆる腕力行使のみを指すものではないでしようね。
  143. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) はい、有形、無形の不当な威力を……
  144. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) というふうにお考えになりますね。
  145. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) さようでございます。
  146. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 何か外に……
  147. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 解散團体の財産の接收ということがありますが、私有財産は何の規定で接收することになりますか。
  148. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) これはやはり勅令百一号に一條入つておりまして、解散した團体の財産はこれを接收する。團体等規正令におきましては、特にそれを規定いたしませんでしたが、別にメモランダムが出まして、そうして解散團体の財産の接收等に関するポツダム政令が発布されておりまして、それに基いてやつております。
  149. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それでやりました財産を何かあなたの方で競賣手続か何かで処置しておられるらしいのですが、あの規定はどうしておるのですか。そうしてその財産はやはり國庫に帰属するのだと思うのですが、その方法等を承つて置きたいと思います。
  150. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) これは民事局の五課の所管でございまして、特別審査局は解散した團体の財産の処理には絶対にタッチしてはいかんというふうになつております。私の方で團体を解散しますと、民事局の五課にこれを祕密に通知しまして、民事局の五課が処理することになつております。解散團体の理事会というものが彼処にはできておると聞いております。
  151. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それで最後に一点だけですが、今お読み上げになつた一つと思いますが、上野の不忍池の何という團体ですが、佐々木というのですか、非常に相当大きな建物を淺草に持つておりまして、今は東京都の衞生局が引受けて病院か何か作つておるようでありますが、あれは一例ですが、長い間評判の悪い男で、摘発して貰わなければならんということを地元の者がよく言つてつたのでありますが、何といつても厚生省その他が非常によい團体だというので、物資をどんどんそこの配給して來るのを、片つぱしからどこかにやつてしまう。よい團体という折紙で物資が來るということであつたのであります。それが解散團体となつて、ああいうような御処置を願つた。そうして見るというと、その解散を命ぜられた團体だけの者がお叱りを蒙るということであつて、大体そこにどんどん特殊物資などをやつてつた厚生省なんというものは、後で一体どういうことになつたのでしようか。それは自分の眼違いであつたからというので勘弁して貰つたものか。彼の財産だけ取つてしまう。数回浅草の建物を私は見たのでありますが、非常に大きな立派にでき上がつておる。ああいうものは結局不正の横流しによつてつて來たものと思います。そうするとこの財産は國庫に帰属したが、肥らしたことについては非常に大きい私は責任があるのだと思うのですが、そういうことの後の始末については、そういうような解散されたものだけの処置だけで、外の方に対してこういう工合になつてつたから、こういう点は注意しなければならんということは、適当にあなたの方でやつて貰うようななつていないのか。それともあなたの権限外になつておるのか。
  152. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 実は権限外です。所管廳の行政上の責任を追究するようなことは特審に権限がございません。
  153. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうすると権限のある所にそれを何か御通知願つてつたということはないのですか。
  154. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) ございません。
  155. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうしたらそういう工合にどんどん評判の悪いところでも物資をどんどん出しておつたところの者、或いは多少関係があるのではないかと当時私らは見ておつたのですが、まあそれともお見逃しになつてつたというわけですか。
  156. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 権限がないから、そういう形ですね。
  157. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 接收財産は賠償物資に引当てられるのではないのですか……。ちよつと速記を止めて。    〔速記中止〕
  158. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) 速記を始めて……。他に別にお尋ねになることございませんか。では有難うございました。
  159. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) いいえどうも……
  160. 伊藤修

    ○委員長(伊藤修君) これを以て散会いたします。次回は二十九日、一日、二日と、こういうふうに予め御了承願つて置きたいと思います。    午後一時四十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君           大野木秀次郎君            遠山 丙市君            來馬 琢道君            松村眞一郎君            星野 芳樹君   説明員    法務府事務官    (特別審査局    長)      吉河 光貞君    島根地方檢察廳    檢事正     楢原 義男君