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1949-06-16 第5回国会 参議院 法務委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年六月十六日(木曜日)    午前十一時四分開会   —————————————   本日の会議に付した事件檢察及び裁判運営等に関する調査  の件  (米子事件少年犯罪問題)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは法務委員会をこれより開きます。米子事件につきまして、人権擁護局長の御説明をお願いいたします。
  3. 大室亮一

    説明員大室亮一君) この事件につきましては、人権擁護局といたしましては、廣島の高等檢察廳に早速報告して貰うことにいたしまして、その報告を得たのであります。併し人権擁護局といたしましても、これを調査するのが然るべきことと考えましたので、早速事務官を派遣いたしまして、詳細に調査いたしたのであります。でその結果に基きまして、昨日申上げましたような結論に到達いたしましたので、現在のところでは再調査いたしますという考えは持つていないのであります。
  4. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私は人権擁護局態度として、もう少し愼重に本件をお取扱いにならなければならんと思うのです。事実上家宅捜索行爲が行われたことはお認めになるか、その意味は檢察事務官が出掛けて行つて、そうしていろいろ家宅捜査をしたようであります。その捜査やり方は、普通の犯罪被疑者に対する捜査やり方と異なることはないと思う。その実質的の行爲はどうですか。
  5. 大室亮一

    説明員大室亮一君) 承諾を得たということは先程も申上げたのでありますが、そのやり方、或いは迅問の仕方なんかにおいて多少遺憾の点があつたということは調査行つた者報告をいたしておるのであります。
  6. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私のお尋ねするのはこういうことなんです。檢察事務官行つて家宅捜索をしたが、その捜索が、やり方は普通の犯罪被疑者の場合と異なるところはないのじやないかと伺つておる。
  7. 大室亮一

    説明員大室亮一君) その詳細の点は、私ちよつと今ここでどういう方法によつてつたか、その点はちよつと今はつきりいたさないのであります。
  8. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それであれば人権擁護に一向ならないと思います。人権擁護局といたしましては、その家宅捜索というものがどういう方法で行われたかということをお調べにならなければ國民権利が侵害されておるかどうかということは分らんじやないですか。
  9. 大室亮一

    説明員大室亮一君) それはお尋ねになりますことが私の方にはつきりいたしておりませんでしたので、それならその点をここに調査に参りました者を呼んでもよろしゆうございます。
  10. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私はそれは人権擁護局としては当然のことじやないかと思います。家宅捜索という事実があるのです。その行なつた家宅捜索が尋常一樣の家宅捜査であるかどうかということを私は伺つておる。特に自分部内から出た職員であるが故にその捜査やり方が違つたかどうかということを伺つておる。
  11. 大室亮一

    説明員大室亮一君) それでは調査に参りました者をここに呼びますから、ちよつと暫くお待を願いたい。
  12. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それは問題がどこにあるかということを少し御了解願いたい。人権擁護であるや否やということは、一番の要点は令状なくしてやつている、令状なくして行なつてつたが、その行爲が内容として普通の家宅捜索であるかどうかということが前提として大事なことなんです。それが令状があつてもなくても、同じことをしたということになるならば、令状なしにやつたのではないかということが、ここに手続上の欠陷ということが生じて來る。ところが家宅捜索それ自身やり方は普通の場合と違つてつて、もつと、家宅捜索と言つておるけれども、実は捜索のようなことをしたんじやないということになれば、問題は又別になるわけだから、非常に大事な問題です。それはやはり局長としてもそういうことまで突詰めて頂かないというと、私は困ると思うのですが、今調査行つた者をお呼びになることは差支ありませんけれども、非常に大事なことなんです。人権擁護関係から申しまして……。それで、一番重要なのは、元來この事件は、檢察廳の支所といいますか、米子で起つた自分の廳内の窃盗事件である。この事件はどうなつておる。事件それ自身は一番大事なんです。元來檢察廳経過を見ますというと、どうしてもこれが部内に犯人があるのだということを先ず認定されたわけです。それだから部内の方をずつと調べた。その認定が誤つているかどうかと分らない。そうすると非常なことをやつておりますが、自己部下被疑者があるという態度で初めから臨んでおるのですから、その問題は非常に大事なことなのです。自己部下被疑者があるかどうかということを、初めに被疑者ありとして考え態度が、早くそれを、寃をそそがなければ部下としては非常に迷惑であると思います。ところがその方の事件の進行は遅々としてまだ進んでいないと思うのですが、どういう程度にその問題を熱烈に檢察廳の方としては動いておられるかということの経過を承わりたいと思います。窃盗事件そのものを……
  13. 大室亮一

    説明員大室亮一君) そのことは私報告を受けていないのでありますが、私の知つている範囲ではそれはまだ挙らないというふうに聞いております。
  14. 岡部常

    岡部常君 松村委員のおつしやるのと関連するのですが、人権擁護局立場でなくて、檢察の立場の方も一つ呼んで聞いて頂きたいと思います。恐らくこれは相当調べになつた筈でありますから、立場の変つたところからも伺いたいと思います。
  15. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それから人権擁護局の方では調べをされたその報告をお取りになつておるわけでありますから、その報告書人権擁護局からここへ提出願いたいと思います。
  16. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 報告書は御提出願えますか。それじや松村委員の御要求にかかる報告書を御提出願うことにいたします。
  17. 大室亮一

    説明員大室亮一君) 提出いたします。
  18. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 如何ですか、松村さん、報告書を頂いてから改めて質問いたしますか。
  19. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私は人権擁護局としては令状のない捜索が行われたいということを非常に重大視せられなければならんのじやないかと私は思つておるのですが、いろいろお調べになつた結果、捜査を受けた方で承諾したのだから大抵よかろうと思つたのであるというようなお心持のように思うのです。併し令状を発しないで家宅捜索を行なつたということは、承諾によつては解決は付かんと思います。承諾することのできない事柄であると私は思います。そういう私の行爲じやないのです。自分所在権を放棄するというようなものじやない。人権擁護というのは権利を……承諾すれば令状を出さなくてもいいという効果は到底生じないと思います。非常に大事なことなんですから、令状は発しなかつたが、その点は余り重要視しないので、内部で起つたのであつて、皆が承諾したから大体よろしいのだというようなお考えのように思いますが、令状を出さなかつたということについてのお考えは、余り重点を置かれなかつたのですか、どうですか。
  20. 大室亮一

    説明員大室亮一君) それは重点を置いたわけです。置きましたので、檢察廳報告だけではどうかと思いましたので、わざわざ調査にやりましたのであります。決してそれに対して重点を置かなかつたというのじやありません。その点非常に重視したのであります。でありますが、その当時の状況その他を考え合せまして、先程申しますような結果に達したのでありまして、その点は非常に重視いたしたのであります。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると只今松村さんのお話の係の檢事正もこつちへ出張して上京しているらしいですから、それを呼んでお聞きすることにいたしたいと思います。
  22. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 当委員会としてどういう程度にこの問題を進めて行くかということも一つの問題じやないかと思いますが、今のところまでいたすかどうかということは委員にお諮り願つて……
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一應実質的なあれを突詰めるところまで聞くという必要があるのじやないでしようか。
  24. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 そうすると委員長のお考え証人として呼ぼうというお考えですか。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、証人としてではなく、御意見を伺う、当時の事情を聽取するという行き方にしたらどうかと思います。
  26. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 私としては異議はありませんが、その形式がどういう形式の……
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 説明員という形式にしても結構でしようが……
  28. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 それは結構でしよう。一應伺つた方が……
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 法務府の檢務長官をお呼びしたところで報告程度で御存じないですから、当面に当つた人に來て御説明して頂く方がいいと思いますが……
  30. 松村眞一郎

    松村眞一郎君 結構ですね。他の委員も御異議がなければ私は結構だと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは少年犯罪に関することにつきまして先ず総論的のものをお伺いいたしまして、それから檢察関係及び裁判関係、その後の処遇問題と、こう三つに各論的にここでお伺いいたしたいと存じます。
  32. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) 少年犯罪と言いましても、結局その基礎になるものはやはり学校局であるとか、労働対策であるとか、或いは一般厚生施策というようなことになりますので、少年問題を本当に総合的に考えるといたしますれば、各般のさような関係官廳機構なり、実際の動き、指導を得ることが必要であると存じます。実はさような点、まだ十分研究いたしておりませんので、到底十分なことを申上げかねると思いまするが、先般衆議院法務委員会から提案になりまして、青少年犯罪防止に境に関する決議案衆議院決議されました。次いで参議院の方におかせられましても青少年不良化防止に関する決議案が出ましたので、政府といたしまして関係官廳の間で数回会合を開きまして、いろいろな資料なり、現在の少年問題を考えるについてこういう点の必要があるとかいうようないろいろな意見をまとめまして、今週火曜日の閣議におきまして青少年問題対策協議会というものを内閣に設けることに相成つております。さような関係で若干資料を集めたのでありまするが、まだ十分消化いたしておりませんので、余り十分なことは申上げることができないと存じます。  少年問題につきまして文部省学校方面、これは学校教育局社会教育局とが学校及び一般社会教育として少年問題にタッチしております。それから厚生省におきましては主として兒童局がタッチしておりまするが、兒童の家庭という関係社会局生活保護法等関係相当重要な関係を持つております。労働省におきましては婦人少年局年少課というのがございまして、学校を休んで街頭で働いているものとか、或いは小学校を卒業して就労するというような点について非常な深い関係を持つておられます。警察方面自治体警察では六大都市においては少年係專從警察官がありまして、相当活曜をいたしておりまするが、國家地方警察の方では、本部には刑事部の中に防犯課というのがございまして、その防犯課の一部が担当しておりまするが、これも專ら少年だけをやつているというのではなくして、外の経済の関係であるとか、いろいろなものを担当いたしておりまして、國家地方警察関係におきましては、自治体警察よりも少年問題に対する力の入れ方が非常に足らないように連絡会議係官から聞いております。それから次に法務府でございまするが、法務府におきましては新らしい機構では刑政長官の下に矯正保護局というものがございまして、刑務所少年院少年鑑別所少年観護所、これらの事項を管理いたしております。それから保護局というのが新らしくできまして、これが犯罪少年或いは虞犯少年をそういう收容施設に容れないで世話をする、或いは收容施設に容れた者を成るべく早く條件附で出して、そうして社会において保護観察保護監督をして行く、こういう事項保護局において担当し、七月一日から犯罪者予防更生法によりまして中央中央更生保護委員会というものができまして、その事務局保護局が入つておるようなことに相成つております。かように少年問題が非常にいろいろな面から関係せられておりまして、それぞれの各省においてもそれぞれの諮問機関を持つておられるのでありますが、文部省においては青少年教育委員会労働省においては婦人少年問題審議会厚生省におきましては兒童福祉審議会法務府においては保護少年対策審議会と、かようなそれぞれの審議会なり協議会を持ちまして同じような問題を或る点においては重複していろいろやりあつておる。而もその間に連絡がないような実情にありますので、今回両院の御決議をいい機会にいたしまして関係省と数回会合いたしまして、結局これは内閣において一省だけのものではなくして、各省が打つて一丸となるような方法がよろしいということで、今回の閣議の決定を見て、近くその準備会をいたしまして、できるだけ早い機会にこの協議会を開いて、そうして根本の対策を立てまして、それに基きまして各省十分連絡をとりながらその施策の実施に当りたいとかように存じておるのであります。その各省会議でいろいろ資料をお互いに虚心坦懐に出し合いまして、相当多数の資料を頂載し、又各省からの意見もまとめて持つておるのでありまするが、これを一々御披露するだけの必要も時間もございませんし、又私自身十分これを消化いたしておりませんので、氣付いている点だけ申上げることにいたしたいと思います。厚生省関係におきましては、各府縣兒童相談所がございまして、兒童相談所兒童福祉法に基いて出ていることは申上げるまでもございませんので、対象となりますのは十八歳未満の不良行爲をなす少年、或いは適当な保護者を持たない十八歳未満少年対象といたしおります。そうして実際は大体において家庭等から通告を受ける場合も相当あるようでありまするが、大体においては警察が一斉取締をいたしまして、そうして街頭なり、駅頭なりから浮浪している子供兒童相談所に連れて参る、そうして兒童相談所が直ちにそれを調べまして、一時收容所に容れる場合が多いのでありまするが、一時收容所に容れてこれを調べまして、それぞれ親許に帰す者もありまするが、收容の必要のある場合には、教護院、或いは養護施設に容れる、かようなことをいたしております。その活動計数もございます。大体兒童相談所が北海道には四ヶ所、東京は六ヶ所、神奈川縣四ヶ所というふうに必ずしも一個ではございませんので、全國では兒童相談所が設置されておる数が九十二ヶ所ございます。それから一時保護所が五十八ヶ所ございまして、二十二年の一月一日から二十三年の年末、丁度二年ということになりまするが、取扱件数が七万三千人、かようなことになつておりまして、この七万三千人の少年を受理いたしまして、里親に出した者が四百八十人、兒童委員指導させた者が六千八百、訓戒、誓約によつて処理いたした者が四千三百、それから收容施設関係では、養護施設に容れた者が九千四百、教護院に容れた者が二千九百、精神薄弱者施設療育施設孤兒院等はいずれも少くて千以下の数になつております。それから街頭浮浪兒状況でございますが、これを厚生省から頂いた資料によりますと、これも漸次非常に少くなつて参りまして、大変この点においては喜ばしい状況であります。二十一年度におきましてのこれは浮浪兒の数でございますが、勿論これには推定の分が相当ございます、全部一斉に取締によつて発見するとか、或いは街頭補導によつて発見するというわけに参りませんので、推定の分が非常に多いのでありますが、その推定の数を加えますると、二十一年の四月頃の計数では、全國の数でございますが、二千三百、かような数になつております。それが二十二年度の末におきましては両方合せまして千七百というふうな数になつております。これは推定でございまして、警視廳等から伺つた石はこれよりも多くなつております。大体警視廳あたりの話を聽いて見ますと、不良少年犯罪少年に三種類の大きな系統があるように私飼つたのであります。その一つはいわゆる街頭におる、或いは上野の地下道におるようないわゆる浮浪兒でございます。これの実態、どんなことをやつておるかということを昨年の九月から十二月まで警視廳において一斉取締をして、東京都の中央兒童相談所に参りました数によつて見ますると、大体これも兒童相談所で取調べただけの……判断でございますから、必ずしも正確でないかも知れません。本人の申立を專ら信用してそのまま聽いただけでございますが、タカリが一番多くなつておりまして、一七%ぐらいがタカリ、それから靴磨きがその次でございまして、靴磨き、煙草拾い、闇市の手傳い、それから何もしていない、貰いをしておつた、新聞賣りをしておつた、女でありますが、賣春行爲をしておる、それからチヤリンコをしておつたというのもございます。キヤンデー賣り、パン賣り、人夫、人から食べさして貰つておる、汽車席取りというのが順に列んでおります。大体浮浪兒状況が漠然としてありますが、かような数字から或る程度窺われると思います。結局かような街頭におります子供達犯罪という面から見ると、小学校の部類でございまして、余り大したことはやらない。本当犯罪少年刑事事件として処理されるようなものは、かような街頭にはいないで、東京でいいますと、高橋でありますとか、深川とかいうような、ああいうところにちやんとした親分を持つておりまして、そうして專らスリをやるという種類子供達が第二の種類でございます。これは犯罪方面にかけても亦一般方面にかけても相当智能性の高い者でありまして、大人を顔負けさせるような犯罪をもやつて、而もこれは街頭には見受けられない少年達であります。それから第三の種類の問題の少年は、警視廳あたり補導係少年係係官が日曜などに淺草あたり取締るとか、或いは普通のウイーク・デーに盛り場を取締ると、鞄を掛けて学校に行くべき時間に活動街にうろうろしておる、こういう少年であります。これは大抵家庭を持つておる少年でありまして、指導の如何によつて十分軌道に乘り得る。又指導がまずいと家を飛出して、先に申した浮浪兒であるとか、本当犯罪の專門家に堕ちて行く、こういう少年達であるようであります。結局少年問題はいろいろなところが原因になつておりまして、先ず第一に私感じますのは、学校の体制が十分に行けば、この犯罪少年の問題の大半を私は学校において食い止る得るのではないか、かように考えております。ところが学校の方の数字を見ますると、相当遺憾な状況になつておりまして、又一般家庭社会生活の困難といいますか、少年であつて、親が生活保護法によつて保護金貰つて辛うじて生活をしておる、そのために学校を長期欠席して働かなければならないというような少年も、労働省の、決して十分ではないと思うのでありまするが、調査によつて相当数ございます。  それから労働省関係のいろいろの問題がございまして、例えば労働基準法が非常に立派な理想的な制度である半面において、余りに年少労働者を雇うことを嚴重に制限をする、その関係から貧困な家庭で上の学校に出られない、併しなかなか雇うのには雇主の方に労働基準法関係でいろいろなむずかしい條件があるために、却つて正規就職ができないで街頭で物を賣つておる。そうすると環境から自然悪の道に染まり易いというふうな面も相当ございます。それから警視廳方面から聞くところでは、少年犯罪に大なる影響を與えるところの出版物であるとか、映画館とかというようなものが、非常に少年教育上悪いものをやつておるのに拘わらず、これに対する取締、これを制止する法的な力が殆んどないというようなことを、警視廳なり警察方面からは申されております。それから法務廳関係で困つておりまするのは、観護所であるとか、少年院施設が極めて足らない点であります。又更に少年保護團体というものが、法制の変革によりまして廃止しなければならないということになりまして、今年三月末を以て廃止したのでありまするが、少年刑務所或いは少年院等に入つておる子供の中には、家庭を持たない子供、或いは家庭があつても親がなかなか引取らない、もう少しあなたの方で面倒を見て貰いたいという親が中にはあるのであります。さような子供がもう收容施設内においては相当教育成績を上げておつて、出してもこれを收容して面倒を見るという施設の足らない点が非常に困難を感じておる点であります。就職等におきましても、極力盡力いたしておるのでありまするが、通勤ならば雇うと言う方は相当あるのでありまするが、住込みでこれを雇うというには、やはり一つの危險を感じて、なかなかそれには應じて貰えない。そのために、先般新聞にも出ましたが、多摩の少年院におきまして、孤兒少年を出すために、いろいろなつてを求めて探して、丁度八丈島の一つの小さな島で面倒を見ると言う方があつたので、最初やつたところが成績がよかつたようで、その後続けでやつたところが、三人やつたうち二人が酷使されて亡くなつて、一人が辛うじて帰つた。これも子供の言うことで、その眞僞は私共は分らないのでありますが、さようなふうに收容施設側で出て來て本人收容して子供の親になり代つた呉れる者が、個人的にはなかなかない。國家としてこれについて何らかそういうことを考える必要があるのではないか、かような点も法務廳としては非常に困つておる点でございます。  尚家庭裁判所のことにつきましては、家庭局長がお見えになつておりますので、全部それに讓りたいと思いますが、私の考えだけを申上げて置きますと、家庭裁判所少年問題について極めて重要な、丁度線路の何といいますか、汽車をあちらの線路に向けるこちらの線路に向けるという分岐点信号所のような、非常に重要な仕事を分担されておると思うのであります。これを厚生省施設に移して、強力な強制力を或る程度認めるというようなことも家庭裁判所がおやりになることであるし、收容施設に対しましては、家庭裁判所が非常にさような面において重要な面を持つておるのでありまして、如何なる施設にどの程度容れたならば一番よろしいかということを、十分家庭裁判所において御認識になりまして、満員になつておるにも拘わらずどんどんそこへ容れられれば、結局それは少年保護にはならない。收容施設の力なり限度なり、或はい実情なりを十分認識してやつて頂きたい。東京観護所が燒けたのでありますが、あの実情を見ましても、昨年は百五十人しか毎月入らないものが、本年は二百五十人平均入つてつて、忽ちにして満員になつてしまつた。それが事故の一つ原因にもなつておるような状況でありまして、家庭裁判所機構出発早々で不十分である。又專從職員の置かれていない地方相当多いのでありまして、漸次充実するものと思いますが、かような方面の充実も十分收容施設なり執行面仕事におきましては熱望しておるような状況であります。甚だ取りとめございませんが……
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次は最高裁判所家庭局長から御説明をお伺いいたします。    〔委員長退席理事岡部常委員長席に著く〕
  34. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 只今齋藤君から少年保護機構の全般に亘つて説明がありましたので、私の所管であります家庭裁判所の問題について、二、三御説明申上げて見たいと思います。  御承知のごとく、本年一月から裁判所法少年法改正に伴ないまして、全國に家庭裁判所が誕生いたしまして、從來少年審判所で行なつておりました審判事務家庭裁判所の方で行なうことになつたのであります。御承知のごとく全國に四十九ケ所の本廳と六十三ケ所の少年審判をやる支部とが誕生したわけであります。家庭裁判所機構につきましては、お手許に差上げました表によつて説明さして頂きたいと存じます。家庭裁判所がどういうような手続によつて事件を受理するかということについては、先ず一番上の欄にあります檢察官から家庭裁判所の方に送致される事件、これは檢察官送致と申しておりますが、この事件があります。この檢察官送致家庭裁判所少年事件の大部分を占めておるわけであります。從來の少年保護機構によりますと、即ち少年法改正前の少年保護機構によりますと、警察から檢察廳事件が送られて参りまして、その事件について起訴しなければ世間が納まらんというような事件とか、又少年が非常に悪質であつて到底起訴しなければこれを矯正することができないというような事件については檢察官が起訴いたしまして、然らざる事件少年審判所の方へ送つて來たわけなのでありますが、現在においては檢察官檢察廳へ來た事件全部を起訴相当と思料する事件についてもそこで判断を下さずして、素通りして家庭裁判所の方に來るわけでありますが、そこで家庭裁判所の方でこれについて審判をするわけであります。尚司法警察員から直接送致する事件があります。これは罰金以下の軽微な事件についてであります。從來はこの事件についても檢察廳を通じて少年審判所の方へ來ておつたのでありますが、現在においてはかような軽微な事件については檢察廳を通ぜずして直接家庭裁判所の方に送致されるのであります。  次に都道府縣知事、兒童相談所長から家庭裁判所の方に送致して來る事件があります。この外に少年保護司、これは家庭裁判所少年保護司でありますが、家庭裁判所少年保護司が事件調査中に他に保護すべき少年を発見したという場合には、家庭裁判所少年保護司が裁判官に報告するというような方式で家庭裁判所事件が來るわけであります。又その外に一般人も犯罪者若しくは犯罪を犯す少年があつた場合に、これを家庭裁判所の方に通告して、審判を求めることができるわけであります。この通告には多く親などが自分子供が不良化して困るというようなことを家庭裁判所の方に相談に参つて、それでは家庭裁判所の方ではこういうような方法保護しよう、例えば少年院に容れようとか、教護院に容れたらどうかとか、又現在の少年審判所の観察に付したらどうかというようなことを相談いたしまして、そうして審判をする場合もあります。かような方法によりまして家庭裁判所事件を受理いたしまして、そうしてこれについて調査審判するわけであります。調査家庭裁判所では少年保護司がこれを行なつております。調査方法については改正少年法の趣旨に則りまして、医学的、心理学的、教育学的というような科学的な方法によつて調査を進めております。法務関係の官廳であります少年鑑別所の鑑別をして頂いている場合も相当件数あります。ただ現在まだこの鑑別所が全國に設置されておりません。又設置されているところでも比較的完備しておりませんので、この点については政府においてももつと力を入れるべきではないかと考えます。家庭裁判所で科学的処理をしたいと思つても、この機関が不十分なために科学的調査ができない、科学的処理ができないというような実情にあるのであります。調査の段階において少年少年観護所に容れる場合もございます。これは少年観護所に容れまして、その少年観護所においてその期間中にいろいろ調査を遂げまして少年の素質、環境等について詳細な調査をするわけであります。この少年観護所は今世間で、又國会でも大いに問題になつているわけであります。この少年観護所が立派なものができませんと、家庭裁判所の運用もうまく行かないという実情にあるのであります。かようにいたしまして調査の段階が終了いたしますと、今度は家庭裁判所少年係の裁判官が審判するのであります。その審判はどういうような審判があるかと申しますと、この図表にありますように、都道府縣知事、兒童相談所長からここに送致する、それが一番多い。それから次に檢察官が送致する、これは先程申しましたように、現在の少年法においては家庭裁判所の方で全部の事件檢察官の方から送致されまして、そのうちどうしても起訴しなければ世間が納まらないとか、又少年の素質が非常に悪質であつて刑務所に容れなければ到底これを矯正することができないというような事件について家庭裁判所意見に從つて起訴するかどうかということを決めるわけであります。そこで家庭裁判所少年審判という形で檢察廳に送致するわけであります。檢察廳に送致された者は又地方裁判所の方へ起訴いたしまして、そうして裁判するわけであります。それによつて裁判を受けた者が少年刑務所に入るわけであります。  次に少年保護司の試驗観察、これはむしろ保護処分というよりも……こういうふうな取扱があるわけであります。むしろこの審判をする前の処分であります。審判をすることが、審判をするに熟しておるかどうかはつきりしない場合とか、又審判を一應見合わして、そうして観察いたしまして、観察の結果審判に付したがよいという場合には、保護処分をする。保護処分を必要としないときには保護処分をしないで、そのまま不処分に付する。そういうふうなことのために、そういう少年保護司の試驗観察というものはあります。次に少年保護委員会の観察、これは現在では少年審判所が観察しておりますが、七月の一日からこれが少年保護委員会の観察になるわけであります。次に教護院及び養護施設に対する送致、これは厚生省関係施設であります。次に少年院送致、これは法務関係施設、こういうふうな方法によつて家庭裁判所審判は行われておるのであります。家庭裁判所といたしましては、かような保護処分をいたしますけれども、何分にも法務関係少年院、又養護施設教護院、これらの機関が、内容が充実しておらなければ到底如何なる審判をしようと審判は画餅に帰するのでありますので、この充実ということが家庭裁判所の死命を制するといつてもよいわけでありますので、私共はこの教護院養護施設少年院の育成強化については不断の関心を持つておるわけであります。國会に対してもこの点については、私の所管でありませんけれども是非とも家庭裁判所の死命を制するという意味においても大いにお力をかけて欲しいと念願する次第であります。  次に家庭裁判所の現在の少年審判実情を申上げて見ます。第一に一月から四月までにどのくらいの事件を全國の家庭裁判所は受理したかと申しますと、その総計は三万三千二百十三件ということになつております。人数にいたしまして三万四千五百九十五人、既済が二万二十件、人にして二万七百二十七人であります。尚一月から五月までの事件の累進状況を見ますと、著しく累進しております。一月は八百七十五件、二月が一千四十九件、三月一千三百二十件、四月二千五百五十件、五月二千六百六十件、失礼いたしました、これは東京家庭裁判所の受理人数であります。東京家庭裁判所の一月から五月までの累進状況であります。かように事件はぐんぐん多くなつております。尚これに対して、どういうような家庭裁判所の人々によつて処理されておるかということについては、現在家庭裁判所少年係の裁判官は僅かに全國で五十二名、少年保護司が三百三十二名、書記が二百六十四名であります。又物的施設について申上げますと、家庭裁判所地方裁判所と全く独立した地方裁判所と同一レベルの裁判所で、地方裁判所とは全く性格を異にした民主的な明るい裁判所であらねばならないということになつておりますので、建物などは全く別個に建設さるべきものであるにも拘わりませず、予算関係などもあつて現在別個に独立して建つておるものは、東京家庭裁判所、而もこれは家事関係のもののみが、家事審判の長短でありますが、それが僅かに一ヶ所建設されておるわけであります。本年度予算で一億七千万建設費として計上されておりますが、到底全國の本廳四十九ヶ所は建ち得ない実情にあるのであります。家庭裁判所の民主的な運営を各所から要望されるのでありますが、建物からして民主的な明るい、今までのような、地方裁判所のような冷嚴というような感じの建物でなく、明るいものでなければならないと思うのでありますが、現在の状態では大部分が地方裁判所に同居しておるような始末であります。以上甚だ簡單でありますが、家庭裁判所の現状を申上げた次第であります。
  35. 岡部常

    ○理事(岡部常君) 御質疑がございましたら……
  36. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 家庭裁判所でお取扱いになりましたこの既済の二万二十件でございますか、この中でこれは少年事件だけでございますね。
  37. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) さようでございます。
  38. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 この中で、不開始のものは何件くらいでございますか。
  39. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 不開始処分、一緒になつておりますが、一万四十一件になつております。
  40. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そうすると取扱つた事件の、受理された事件の殆んど三分の一ぐらいが不開始になつておるわけなのでございますか。
  41. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) そうでございます。
  42. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 この不開始は表面から申しますと、不開始されるくらいな事件でございましたら大変有難いと思いますけれども、もつと裏面を考えますと、いろいろなことがございますのじやないのでございますか、如何でしよう。
  43. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 從來の少年審判所の当時の状況におきましても、この不開始処分というのは非常に多かつたのです。昭和二十三年度の少年審判所の事件の処理についてこれを調べて見ますと、既済が五万千件のうち三万三千九百八十九件が一時処分及び不開始処分の事件になつております。言い換えますと六割の事件がいわゆる継続処分に付せられてないわけであります。ところがこの一時処分とか不開始処分というのは大体現在の家庭裁判所のやつておる不起訴処分に当るのではないかと思いますので、必ずしも家庭裁判所の不開始処分の事件が多いとは言えないと思います。尤もこの数字については細かいいろいろの檢討が必要なんでありますが、現在の状況では不起訴処分が著しく多いということは断言できないのじやないかと思つておりますが……
  44. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そういたしますとお伺いしたいのでございますが、通告や或いは保護司の報告事件はこの中にどのくらいございましようか。
  45. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 保護司の報告は三十八件、一般人の通告が二百三十八件ございます。
  46. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そういたしますと、その事件通告とか、報告事件は非常に割合から申しますと、少いわけなんでございます。全國的に何でしよう、その三十八件、二百三十八件と申しますのは……
  47. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) さようでございます。一月から四月までの全國家庭裁判所における総数であります。
  48. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そうすると継続処分が大分ないとか、或いは中にも不開始になりました事件が沢山ということは、継続処分のものが割と少ないということは、今非常に少年犯罪も段々悪質になつておるということはないというふうに解釈してよろしうございましようか。
  49. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) そうは言えないと思うのです。ただ家庭裁判所に送つて來る事件の総数は昨年までの少年審判所に送つて來る事件よりも遥かに多いのです。これは軽微の事件でも少年に関する事件は全部家庭裁判所に集まるということになつておりますので、非常に多くなつたが、例えば從來軽微な経済事犯なんかは少年審判所に來ることは全くなかつたのでありますけれども、現在家庭裁判所の方には経済事犯なんかも來ておるというようん関係などがあるわけでして、全体としてはそういうことによつて少年犯罪が比較的良質になつたということは言えないと思います。
  50. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 折角家庭裁判所に参りました子供達でございますから、どうにかしてこれをいろいろのこの審判官の診察によつて何とか漏れなく保護したいというようなことから考えますと、少年院を不足するとか、或いは教護院養護施設なんかが不十分だとか、或いは特には保護團体が廃止されましたというようなことが不開始処分で逃れて行くというようなことになるのじやないかというようなことを私は恐れておるのでございますけれども、その点如何でございましようか。
  51. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) その点については、まだこれを判断する資料を今持合せておりませんのでよく研究いたしてお答えいたしたいと思つております。
  52. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それから少年院に送られました者で僞名いたしましたり、それから年齢なんかいろいろ調べて見ますと、その結果年齢が超過いたしておりますという者も多分中にはございますと思います。そういう場合にもう一遍それを家庭裁判所審判のやり直しができるのでございますか。
  53. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 現在の少年法はそういうようなことができないのでありますので、家庭局といたしましては、これについて立法上の考慮を拂つて國会の方で御善処願いたいと思つております。
  54. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そうしますと、檢事局にも送致することができないということになると、抗告の権限は本人だけでございますから、ちよつと困る子供でもそこでもう逃れて行くという結果になるわけなんでございますね。
  55. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) これは法律論になりますけれども、例えば、年齢超過の少年なんかについては、一應審判があつて、年齢超過のことが事実上少年院の教官だとかその他の関係者に分つても、審判がある以上は、その審判に從つて執行して行くのが相当だという考え方を私共持つておりますので、さように少年院、その他の関係において処置して頂いております。併し非常に結果において不当なものでありますれば、これは是非とも先程申上げたように、少年法の一部改正を要するものと思つております。
  56. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そういたしますと、年齢超過だということを、少年院の方で発見いたしましても、そのまま今は処分は継続して行くわけなんでございますね。
  57. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) まあ、そうことになつております。
  58. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そうでございますか。
  59. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) ええ。実際問題として年齢超過かどうかということがなかなか分らない場合が多いんです。本人少年院へ入つてから、俺は年齢の超過でここへ入るべき者でないということを主張して、又少年院を逃れるというようなことがあるのです。今、十八歳以下だと主張して保護処分を受けて、成るべく檢察官の方に送致されないような主張をいたします、そうして今度は少年院の方へ入ると、俺は年齢超過だと言うて又逃れる。そういうようなことになりますので、これは何とかやはり、そういう言い逃れを作られないような考慮が必要だと思います。年齢超過だからと言つて直ぐ出してしまう。併しその事件については一應審判があつたんだから新たに檢察官の方に送致できない、即ち起訴ができないということになります。そういうことが起り易いんです。
  60. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 問題はただ子供が僞名をしたり、年齢を隱したりということでなくて、本当に落ち着いて、少年院調査いたしました場合に、それが発見されたときには、もうどうすることもできないわけなんでございますから、これは早速何とかしなければならない事件でございますね。
  61. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 次の國会あたりにでも御考慮願いたいと思つております。
  62. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 重ねてお伺いいたしますが、只今御説明家庭裁判所の家事審判部と少年審判部とを別にすることがまあ理想だというお話で、私も大変安心いたしましたが、その上に私は願いたいことは、少年審判部と、それから少年観護所、それから鑑別所が是非一緒の所にございますことが大変いろいろな点においていいのじやないかと思いますが、その点についての御構想がございましようか。
  63. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 最高裁判所といたしましても、各地の家庭裁判所が、観護所少年鑑別所と、一体的になつて、そうして、少年保護を行わなければ、到底所期の目的を達することができないと考えております。ただ具体的な建設の問題になりますと、敷地の問題などに絡んで、なかなか思うような結果が得られないというのが実情であります。家庭裁判所の敷地といたしましても数千坪の敷地が必要である。少年観護所においても数千坪の敷地が必要であるということになりますと、なかなか現在五千坪、六千坪というような土地が適当な場所にありませんものですから、非常に困難をいたしております。
  64. 岡部常

    ○理事(岡部常君) ちよつと伺いますが、先程の御説明少年係の專任の判事は六十八人……
  65. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 五十二名でございます。
  66. 岡部常

    ○理事(岡部常君) 五十二名ですか。そうすると、一裁判所で何人か……二、三人のところが何個所かだけで、外はみんな專任が一人ずつでございますか。
  67. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 一人ずつです。
  68. 岡部常

    ○理事(岡部常君) そうすると外の方が兼任されておるんですか。
  69. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) そうでございます。
  70. 岡部常

    ○理事(岡部常君) それで、その少年係の專任のお方というのはどういう方ですか。
  71. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 從來少年審判所少年審判官をしておつた人が二割くらいおります。あとは刑事裁判官などをしておつた人が多うございます。実際は專任の裁判官は、五十二名ではとても思うようにできませんので、地方裁判所の裁判官を兼務の形で沢山置かれて処理しておるわけであります。現在東京家庭裁判所においては、少年係の裁判官が八名おりますけれども、その大部分は地方裁判所の裁判官兼任になつておるわけです。
  72. 岡部常

    ○理事(岡部常君) 将來はどのくらいにお殖やしになるおつもりですか、定員は何かで決まつておりますか。
  73. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 少くとも家庭局の計算によりますと、二百六十名ぐらいは必要じやないかと思つております。
  74. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 この少年保護司の試驗観察でございますが、この試驗観察の時期を個人委託にされている場合がございますと思いますが、委託料はどういうことになつておるのでございましようか。
  75. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 全國まちまちでございますが、大体甲乙丙と分けておりまして、そうして平均七十一円ということになつております。一日七十一円です。これは厚生省養護施設と同一なのであります。
  76. 岡部常

    ○理事(岡部常君) よろしうございますか。
  77. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 もう一遍重ねてお伺いいたします。この試驗観察に付されますところの子供は、個人委託をされますような場合に、只今は警察が連れて行つておりますのでございますが、保護司が連れて行つておりますのでございますか。
  78. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 少年保護司が連れて行つております。
  79. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 保護司だけでございますか。
  80. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) はあ、試驗観察の場合は……。余程例外の場合には警察官は同行について協力して頂いておる場合もありますが、これは非常に例外でございます。
  81. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 その例外が非常に目立つた場合かも知れませんけれども、警察官が連れます場合に、手錠をはめて行つておりますということを随分東京では非難されて私共聞いておりましたのでございます。それでそれは非常に困ることでございますので、いつぞや家庭裁判所の方の会に一遍私申上げたことがございますが、その後もまだ病院に送られました……これは個人委託の形で送られましたらしいのでございますけれども、すぐ近所まで來て手錠を外して、その病院には手錠なしに行つたんだそうでございますが、近所までそういうふうにして連れて來たので、これは大変問題じやないかということを、実際その係の方がお話しになつたのでございますが、万一そういうこともございましたとするならば、余程悪質な子供でございますかも知れないと思いますけれども、一般にはこれは家庭裁判所というものを知らせる意味においても、非常に残念なことだと思つております。一應そういうことがございますかどうか、直接お取扱いになる方々に一度お聞き下さいまして、若しございますれば一つ御注意願いたいと思います。
  82. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 只今の実情調査しております内藤課長からちよつと御説明を願いたいと思います。
  83. 内藤文質

    説明員(内藤文質君) 実は家庭裁判所職員が同行等に全面的に当ることができれば非常にその処理も円滑に行くと思うのでございますが、現在の実情からいたしましては、殆んど同行というようなところまで手を出すことは不可能な状況にあるわけであります。從つて勢い警察員の方のお手傳いを願うということになつております。ところが警察員の方が同行される場合には、若し逃走させたら、場合によつては免職、或いは署長の譴責というふうな非常に大きな責任を負わされておるわけです。從つて我々はいつも機会あるごとに警察員の方に、是非そういう点は少年保護という立場からできるだけ墾切に取扱つて頂きたいということを要望いたしておりますが、併し実際問題といたしまして、万一逃走させた場合には重大な責任を負わなければならんというふうになつておるので、たつて手錠を止めて頂きたいということはできない状況にあるのであります。つまりこれは少年警察というものに対する考え方を根本的に國警当局に改めて頂く、或いは自治体警察当局に改めて頂くということが最も根本問題だと思うんです。恐らく警察員の方々とても、手錠をはめて少年を同行するということは忍びない私情を持つておいでになると思いますけれども、重大責任を果す、或いは逃走の結果について非常な譴責を受けるという制度のために、止むなくそういう措置をとつておられるのだと我々は観察しておるんです。
  84. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 今内藤先生のお話は本当に御尤もだと思いますけれども、警察員の人が譴責を受けるということ以上に、一遍子供が手錠をはめられるというと、子供の一生に拭い難き極印をされたと同じことで、これは保護矯正の立場から、どうしても絶対に止めて頂きたいということをもう一遍重ねてお願いいたします。
  85. 岡部常

    ○理事(岡部常君) ちよつと伺いますが、手錠を今尚使つておるということを聞きまして、甚だ意外に感ずるのでございますが、その際成るべく自動車を使うとか、或いはマスクをはめるとか、或いは編笠を被せるというような御注意は裁判所としてはしておられるでありましようか、どうでございましようか。
  86. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 私共の方といたしましては、現在警察などが使つておりますジープ、ああいうような運送機関によつてウインド等について考慮を拂つて同行したいと考えて、予算その他についてもいろいろ考慮しておるわけなんですけれども、何分にも予算がないのでそういうようなことができない実情であります。理想的にはどうしても少年を同行する場合には、自動車というような文明の利器を利用してこれをすることが、逃走も予防できますし、それから少年を白日の下に曝すということもないと思いますので、是非これを実行したいと考えております。尚編笠を被せるようなことによつて少年人権擁護したらどうかというような御説がございますが、又編笠を被せることによつて非常に大きな劣等感を子供に與えるものどうかと思つておりますので、その点は未だ現地の各裁判所に連絡したことはございません。
  87. 岡部常

    ○理事(岡部常君) これは宮城委員も御心配になつております点でありますが、やはり白晝に顔を人の前に曝すということは、編笠を被せるのとは余程私は違うように考えるのであります。差恥心を尊重するというところに自尊心が生れて來るので、これは余程考えものじやないかと思います。これは少年に限らず、或いはこの刑事被告、被疑者すべてが手錠をしたままマスクも何もなしに裁判所へ歩いて行くあの姿を見ましてどういうふうに感ずるかというと、初めは恥しいような顔をいたしますけれども、段々あれが一つの英雄化して、むしろ肩をそびやかして歩いておる姿を見て甚だ寒心に堪えない、これは殊に年若い者についてはそういうふうなことによつて差恥心を忘れるというようになつては由々しき大事だと考えております。私は実は法務の方々にそのことを実は御注意を申上げたこともあります。法務総裁は、これはやはりマスクでも作ろうかというような話をされておるんですが、私は普通の成人の被疑者、被告人に比して、少年の扱いについてはより愼重に取扱わなければならない、十二分に一つ御研究を願いたい。今のような白日の下にああいう姿を曝しておるということは由々しき重大事だと思いますから、どうぞ一つこの上とも御考慮を願いたいと思います。何とかして頂きたいと思います。  それからもう一つ伺いたいことは、民間の保護團体がなくなりまして、あの後何か官に振り替えるというようなことを考えておられたようですが、どんなふうになつておりますか、民間に振り替えられたものがありますか、どのくらいの割合になつておりますか。
  88. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) その点齋藤説明員の方が詳しうございますから……
  89. 岡部常

    ○理事(岡部常君) 齋藤さんの方ですか、どうぞ。
  90. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) 法務廳設置法附則の十五條によりまして、民間の少年保護團体は本年の三月三十一日を以て廃止しなければならない、こういうことになりましたので、昨年予算を若干大藏省から貰いまして、民間の保護團体に入つてつた少年少年院收容できるような、殊に新らしい少年法によりまして、少年院も初等少年院中等少年院と四種類できるようになりまして、これに充せて少年保護團体と当方でも希望し、又客観的にも主観的にも妥当であるものを選びまして交渉いたしまして、二十八ヶ所程國立少年院の本院或いは分院に轉換いたしました。併しその他は遺憾ながらいかんともなし難いのでありまして、厚生省方面連絡取りまして、できるだけ厚生省の養護設施に轉換するようにいたしまして……
  91. 岡部常

    ○理事(岡部常君) その比率はどのくらいでございますか。
  92. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) 実際動いておつたのは百三十ぐらいでございます。あとは籍だけでございまして、その内二十八ヶ所は國立に変りました。四十ぐらい厚生省養護施設に轉換いたしました。その他成人の保護團体、これは司法保護事業法によつて存続を認められておるのでありまして、その方面に轉換いたしましたものが十程ございます。その他極く小さくて事業を廃止したという、こういうところがあるようでございます。それで現在困つておりまするのは、少年問題として非常に困りますのは、從來小さくても多数の数がございまして、そのためにそれぞれ本人に向いた所に少しずつでも分けて行くということによりまして運用の妙を期し得たのでありますが、今度は大きなものが数少くあるというために少年教育上なかなか困難を併なうようなふうになつております。
  93. 岡部常

    ○理事(岡部常君) その従業員ですね。そういう人々の身の振り方はどんなふうになつておりますか。
  94. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) お答え申上げます。これは予算におきまして四百八十万円予算を貰つたのであります。これは褒賞費ということで貰つたのでありますが、これは予算が可決になつたのでありまするが、司令部におきましてこれをどういうふうに解釈されたのか、使うことを暫く許さないという指令がありまして、結局それは從業員の失業手当と言いまするか、そういう意味合も十分含まつておるのだということを了解して貰いまして、その後使うことを認められましたので、さような意味合を含めまして本年の二月十五日でありましたか、東京におきまして全國の保護團体の主宰者のお出でを願いまして、感謝式というような、さような式典をいたしまして、その際にそれぞれ從來の功績なり職員の数なり、そういうものに應じまして、これも民間の保護團体側の人と協議の上で額を決定いたしました。そうしてその際に感謝状に感謝金を添えてそれぞれの團体に渡して、多分それが行つておるかと思います。それから尚團体側の方から希望があれば、少年院法が創設になりましたので、希望者を募りまして、できるだけ國立少年院の方に收容するようにいたしました。又民間團体が即國立に直つたものについては原則的にその職員は國立少年院職員收容いたしております。
  95. 岡部常

    ○理事(岡部常君) 保護事業関係にずつと関係を保つておる人の方が多いのですが、或いはそういうことから離れた人が多いのですか。
  96. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) 過半数は從事しておられるのではないかと思います。そのまま院長、分院長になつておられる方も相当ございます。
  97. 岡部常

    ○理事(岡部常君) それからその退職の何と言いますか、手切れ金、慰労金、それは一人当り極お僅かでございましようね、感謝状に添えて金一封として出したのですか。
  98. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) そうであります。その際に、渡す際に皆さんに申上げて渡しております。
  99. 岡部常

    ○理事(岡部常君) 一人……
  100. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) 四千円程ではないかと思います。
  101. 岡部常

    ○理事(岡部常君) 外に何か表彰の方法などはありますか。
  102. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) そうですね。保護協会におきまして相当の金額を出しまして、物質的には到底十分なことはできませんので、できるだけ精神的にも從來の功績を感謝したいというので、でき得る限りの式典をいたしまして、更に両陛下に拜謁までお願いいたしました。
  103. 岡部常

    ○理事(岡部常君) もう一つ承わりますが、保護團体の解散によりまして何か財産の分配というようなことで問題を起したような事例は御承知ございませんか。
  104. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) 聞いておりませんです。
  105. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 今日御説明願いましたことを何らか書類にして御提出願いたいと思います。簡單でよろしうございますから……
  106. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) 初めのことでございましようか。
  107. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 ええ、そうでございます。
  108. 齋藤三郎

    説明員齋藤三郎君) 承知いたしました。
  109. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 只今の資料家庭裁判所の方も別にお願いいたしたいと思います。
  110. 岡部常

    ○理事(岡部常君) 家庭局の方も今日の御説明を大体書類にして出してきたいというのですか。
  111. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 統計だけで結構です。
  112. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) はい、分りました。
  113. 岡部常

    ○理事(岡部常君) では本日の委員会はこれを以て散会いたします。明後日午前十時から開きたいと思います。    午後零時三十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君            遠山 丙市君            松村眞一郎君            星野 芳樹君   説明員    法務事務官    (人権擁護局    長)      大室 亮一君    東京高等檢察廳    檢事    (保護局長補    佐)      齋藤 三郎君    裁判所事務官    (最高裁判所事    務総局家庭局    長)     宇田川潤四郎