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1949-02-12 第5回国会 参議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年二月十二日(土曜日)    午前十一時十二分開会   —————————————  委員氏名    委員長     伊藤  修君    理事      鬼丸 義齊君    理事      岡部  常君    理事      宮城タマヨ君            大野 幸一君            齋  武雄君           大野木秀次郎君            鈴木 安孝君            遠山 丙市君            岩木 哲夫君            深川タマヱ君            來馬 琢道君            松井 道夫君            松村眞一郎君            星野 芳樹君   —————————————   本日の会議に付した事件檢察及び裁判運営等に関する調査  の件  (右件中福島事件に開し証人証言  あり)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではこれより法務委員会を開きます。お忙しいところ恐れ入りましたが、証人として御出頭願いましたですから、証言をお願いする前に宣誓をして頂くことになつておりますから、宣誓をお願いします。宣誓書は各自朗読して頂きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います        証人 清水  直    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います        証人 大島 染吉    宣誓書   良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います        証人 今野 左内
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大島さんから……大島染吉さんですか。
  4. 大島染吉

    證人大島染吉君) はあそうです。
  5. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  6. 大島染吉

    大島證人 六十になります。
  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住いは。
  8. 大島染吉

    大島證人 富山堀川今泉三十三番地です。
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在のお職責は。
  10. 大島染吉

    大島證人 富山地方檢察廳檢事正をしております。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの略歴を簡単に一つ。
  12. 大島染吉

    大島證人 経歴ですか。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) え、経歴を……。
  14. 大島染吉

    大島證人 大正六年の七月に京都の帝国大学法律科を出まして、そうしてその年の八月に司法官試補になりました。大正八年の十月に檢事になりまして、岡山縣の津山区裁判所に初めて赴任しました。その後……詳しく申上げるのでしようか。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや簡單でよろしいです。
  16. 大島染吉

    大島證人 その後岡山地方裁判所檢事局山口地方裁判所檢事局、岩國区裁判所檢事局、下関区裁判所檢事局、札幌区裁判所檢事局、福知山区裁判所檢事局、丸亀区裁判所檢事局、次に福島地方裁判所次席檢事になりまして、一年半程で熊本の地方裁判所檢事局、更に福岡地方裁判所檢事局次席檢事、これは五年半程おりまして、それから姫路の上席檢事になりまして、更に長崎越訴院次席檢事になりまして、そうして終戰の日に福岡控訴院が移つたので、福岡に移りまして、それから同年の九月に佐賀の檢事正になりまして、それから二十二年の八月末に福島檢事正になりまして、本年の一月十日に富山の方に参ることになつて、只今行つております。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが福島檢察廳檢事正をお勤めになつた頃、同地方北島源一ですか、それから矢萩森山とか、こういう者がおりましたのですが、御存じでしような。
  18. 大島染吉

    大島證人 知つております。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これらの者とはいつ頃からどういう御関係でお知合いになりましたか。
  20. 大島染吉

    大島證人 それは二十三年の八月二十八日に着任いたしまして、日ははつきりしませんが、九月の末か十月の初め頃に、あすこ警察後援会というのがあります。その警察後援会で新旧両檢事正をなんといいますか、歓送迎会というものをまあして呉れたわけです。それが矢萩の家だと記憶しておりますのですが、そのときに清水君が仙台から事務引継に來られて紹介がありまして、知合いました。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき清水氏から、何かこれらの者に対して口添えがあつたそうですが。
  22. 大島染吉

    大島證人 それは、自分の見たところで司法保護委員として適任であると思う。で君に決して御迷惑をかけるようなことはなかろうと思うから、まあ公私とも僕同様に面倒を見て呉れと、こういう話でしたが……。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 僕同様に、というのはどういう意味ですか。
  24. 大島染吉

    大島證人 清水君と同様にという意味ではないかと思うのですが。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清水さんの立場と同様にということですか。
  26. 大島染吉

    大島證人 清水君が任命するくらいだから差支えない、適当の人物と見たのではないでしようかと思いますね。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときにこれらの人の人柄について何か説明がありましたか。
  28. 大島染吉

    大島證人 はつきり記憶しておりませんが、ただ北島の件については、元、何というのですか、あれは……、その当時は余り使わない言葉ですが、ボスですね……、けれどもそれは十数年前だつたと思いますが、隠居してもうその方と関係は全部絶つたのだ、それで元の体験を活かして司法保護事業に專念しておられたのだ。そういう話でした。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 矢萩森山に対しては何か。
  30. 大島染吉

    大島證人 矢萩という人は福島市の、その当時としてはなくてはならん人のように話を承つたと思いますが、商工会議所の会頭もしておるし、経済專門学校ですか、或いは中学校女学校商業学校、そういうもののP・T・Aか何かしていて、あの人でなければ学校の復興も何もできない。又実際その後の話ではそういうふうになつてつたようです。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 森山については。
  32. 大島染吉

    大島證人 森山君はただ立志傳中の信仰の人で、非常によい人だというくらいのことしかなかつたように思います。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後先ず北島との交際程度はどういうようでしたか。
  34. 大島染吉

    大島證人 あれはその後私の所にもちよちよい見えておるのですが、非常に忙しい人なので、朝早く五時頃自轉車で知り合いの人の家を廻つて町中を走り歩くのです。そうして五分か十分話をして行くのです。さつさと行つて、だから随分方々歩くのだと思いますが、ときどき見えました。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私的な会合北島と特になさつたということはありませんか。
  36. 大島染吉

    大島證人 私的な会合というものはその当時はなかつたのですが、本人清水君はありましたけれども、私としてはやはりどういう程度の……、司法保護と言えば、どうしても職業の安定を得ておる人でないと工合が悪いので、それでいろいろ尋ねたこともあるのです。そうしますと、本人夫婦に二十七、八にもなる娘があるのです。その娘が戰争中に結婚して、一年して夫が出征して戰死して出戻つた娘が一人あります。女学校行つておる人が一人あるのですが、それから二女がどこかへ縁ずいておるのが一人あつて、それは家の方におらないのです。それから長男が陸軍の技術大尉とかで行つてつたのですが、その人がフイリピンで戰死し、その人の妻君が看護婦に籍があつたので應召されて、台湾沖輸送船が沈んだのです。それで亡くなつて三つか四つの孫が一人ある、それだけの家族なんです。だから夫婦に出戻りの娘さんと、それからもう一人女学校行つておるのと、その孫さんの五人の家族ぐらいなのです。それで私の聞いたところによりますと、あそこに新開座という劇場があるのですが、そうしてその株を大体自分と家内の弟で持つて、一日の賃貸料が夜だけで五千円で、二十日は少くもある。そうするとまあ十万余の収入があつて、弟の方がそれを経営しておるので、自分の方には三割か四割の收入が来るのと、それから森山矢萩の手厚いをしておるので、まあ小遣いと申しますか、俸給と言いますか知らないけれども、月二、三万円ぐらいは入るので、十万近くの收入はあるので生活には困らないと、こういうことでございました。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島との交際がですね……。
  38. 大島染吉

    大島證人 それはそういうわけで出入りしますから、まあ初めからじやないけれども、ずつと行くうちに、私も差支えないと思つたものですから、つまり公的交際の外、私的交際を遠慮しながらではあるけれども続けました。
  39. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどの程度のものですか、それはお話をなさるということですか、会食を共にするというのですか。
  40. 大島染吉

    大島證人 私の所へやはり本人が來て、檢事等も來て私の所で一杯やつておりますと、本人が来て、古くからしておるので他の檢事は知つておるようです。それでは君もというわけでやつたこともあるのです。委員長、別に同人と外に飲みに行つたというようなことは……。
  41. 大島染吉

    大島證人 それは二、三回あると思います。
  42. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か観劇とか野遊びとか、そういうことはなさつたことはありますか。
  43. 大島染吉

    大島證人 それは私は元来そういうことは嫌いでありますので、そういうことはありません。
  44. 伊藤修

    委員長伊藤修君) しばしばお宅へ出入りするわけですか。
  45. 大島染吉

    大島證人 來るのは來ますが、それは短い時間です。
  46. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事局の方には見えませんか。檢事室へは……。
  47. 大島染吉

    大島證人 私の方へは見えません。
  48. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 森山矢萩はどうですか。
  49. 大島染吉

    大島證人 この人は実業家で忙しいものですから、保護委員会あたりへも殆んど出て果れなかつたように思いますが、森山君は保護委員会に出て呉れたように思いますが、保護委員会といつても二、三回しか開いておりません。
  50. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島との間に何かおやりになつたことがありますか、北島の方から何か持つて来たことがありますか。
  51. 大島染吉

    大島證人 普通の交際としてのあれはありますが……。
  52. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 社交上の儀礼的なもののやり取りは……。
  53. 大島染吉

    大島證人 あります。
  54. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外のところのものをやり取りしたということは……。
  55. 大島染吉

    大島證人 それはありません。
  56. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島という男は福島の檢察廰へよく出入りした男らしいのでありますね。そういうことは御存じですか。
  57. 大島染吉

    大島證人 ときどき来るのは聞きました。それでちよつと喋り過ぎては私いけませんと思いまして、何しておるのでありますが、私は実は今経歴を申上げましたように、保護という方は実は本当の素人なのであります。それで次席檢事はしましたけれども、次席檢事というのはとても忙がしくて保護ということはやつたことはありません。檢事正になつて初めてなんです。次席檢事正をしておつて一番困るのは、保護委員事件が何とかなりませんかというので聞きますのが、あれが一番辛いのであります。例えばこういう理由によつて許してやりたいとこう思うのであります……。ところが頼みに來られるとその運動が利いて許されたということになると、檢察廳の威信に関するのでありますから、私は来ないで呉れと泣いて頼むのであります。それで北島は来たときにこういうことを言つておるのであります。私は顔が古いから人から頼まれることがある、だから警察にも勿論檢事局にも顔を出すけれども、出して呉れということは頼まない、ただよろしく頼むというわけで、ただ丁度火事になつて檢事知合いの人が火事にかかつて燃えてしまつて見舞行つたつてうるさいのであつて、何の意味もないけれども、見舞に行く、そういうわけで行くのだけれども、そうでなくても保護委員としては不適格だからと、そういうことを言つて自分は何遍か監獄へ行つたことがあるのだが、強襲の方に運動行つたつて運動は利かない、我々は知つておるのだから御迷惑はかけない。大体その程度ならよいだろうと思つたのであります。
  58. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併しあなたさんはそういうことはないでしようけれども、外に若い檢事さんや何かがしばしば会合されておるのでありますから、呼ばれておるというようなことがあつて、そこで北島からよろしく頼むと、こういうことが心理的に影響を受けるのでありましようが……。
  59. 大島染吉

    大島證人 だから私としてその点は檢事にもよく言うて参りましたし、尚事件は公私混同しては困る。私的交際を断つわけではありませんが、檢事も人間ですから、女房と役所の間だけを行来するというふうに私は制限はしないと、私も実は何です、その酒は沢山飲みませんけれども、好きですから飲みますから、だから君らも酒は飲むなとは言わない、併し職責に疑惑を持たれるようなことはしないで呉れと言つて頼んだ。こういうことだと思いますが、山本という檢事がおられた、あの檢事は私は割合信用しておつたんです。皆信用しておるけれども、あの檢事を特に信用しておつたのですが、あの檢事は皆五十近くで頭が禿げておるから、決して檢事正に御迷惑はかけんということであつたんです。
  60. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ところが聞くところによりますと、ぐでぐでに酔つて北島が介抱して家へ連れて来るようなことがしばしばあるらしいですね、北島自身からはそういうことを言つておりますが、その程度の余り深い飲み食いの附合いになつて來ますと、ちよつと逸脱しておるように思いますがね。そこへ持つて来て出入りして、どうして呉れとは言わんけれども、少なくとも頼むという、そういう頼むという廣い言葉の中には、有利にして貰いたいということは含まれると思いますがね、それによつて職務を曲げるという強い意思も発見できないと思いますが、少なくとも影響を受けるということは考えられるのですがね。
  61. 大島染吉

    大島證人 そうでしようね。まあ私はそういうことはないと思うんですけれどもね、事件檢事だけで処理するのじやないのですから、私も見ますし、公判に出れば弁護士も判事も皆見るんですから、他の仕事とちよつと違うのですから、そういうことはできないと思いますがね。
  62. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 民事事件なんかにタツチしたりなんかしておることもあるように見えますがね。
  63. 大島染吉

    大島證人 私はそれは知りません。
  64. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたとしてもいろいろ御注意をなさつたというわけですか。
  65. 大島染吉

    大島證人 そうです。
  66. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 若しそういうことのないようにと……、何か北島檢事の人が轉任なさつて來る場合、又は轉任して行く場合、そういう場合にはいろいろ世話もし、住宅の世話もしておるらしいですね。
  67. 大島染吉

    大島證人 それはあります。
  68. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一切引受けてやつてつたらしいですね。
  69. 大島染吉

    大島證人 一切というわけではないですけれども、私が行つてから新らしく來た檢事は二人ありますが、それも最近ですが、森田という若い檢事と、弁護士から來た高橋という檢事だけなんですが……。
  70. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島があなたに対してそういうような考えを持つて、いわゆる檢事局へ頼んでも利くもんじやないといつ考えを持つておるにも拘わらず、他面依頼した人ですから、頼まれた方からは報酬を取つておるんですね。そうすると、北島は全然効力のないことに対して金を取っておつたということになるんですね。
  71. 大島染吉

    大島證人 これはですね。自分の不明を恥ずると共に恐しからんと待つておるんですけれども……。というのは実は私がそのことを聞いたんです。君ちよちよつとと言つても世の中はいろいろに考える人があるんだ、報酬か何か持つて來ることはないかと聞いたら、そうしたら北島曰く、ときに持つて來る、併し自分はそれは投げつけたんだ、併しそんならいいが、投げつける必要はないけれども、そんなものを貰つたらそれはいけないぞと私は言つておる筈です。この事件を指さしたわけではないが、ただ概括的に一般的に……。
  72. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今度の問題の起る前ですね。
  73. 大島染吉

    大島證人 余程前です。
  74. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことを御注意になつたこともある。
  75. 大島染吉

    大島證人 そういうことなら大変なことだと……。
  76. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことの報告をお聞きになつたんですか。
  77. 大島染吉

    大島證人 別に聞きませんでした。
  78. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれどもあなたのお考えとして御注意はなさつた……。
  79. 大島染吉

    大島證人 そうです。それは大変なことですからね。
  80. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それまでは北島は金を取つたということは御存知なかつたのですか。
  81. 大島染吉

    大島證人 勿論そうです。
  82. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方に特に頼んで来たような事件はありますか。
  83. 大島染吉

    大島證人 ありません。
  84. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次に関根義徳ですね、これはいつ頃から御存じですか。
  85. 大島染吉

    大島證人 これは私が八月十八日に着任しまして、若松、郡山、白河の巡回を終えて平に行つておるときですから、十二月に入つているんじやないかと思います。そのときにあそこの義徳学院というのはそれまでは私は知らないんです。その前に仙台の方から檢事長とあそこの審判所長、それから清水檢事正義徳学院を見学に見えるから、日程を変更して來てはどうかというので、そうして日程を変更して須賀川行つて初めて知りました。そのときに初めて知りました。
  86. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 同人とのその後の交際関係はどんなふうですか。
  87. 大島染吉

    大島證人 それはただ義徳学院で、元來あれは少年審判所のあれですから、私共行かんでもいいんですが、あそこの長沼町の山林を寄附して呉れた人がある。それでやはり清水君や檢事長が見えたらしいんです。その山林の処分について須賀川ヘ二、三遍行きまして、まあそこで知合いになつたわけです。
  88. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、まあ公若しくは準公の会合以外に御交際になつておられないですね。
  89. 大島染吉

    大島證人 ありません。
  90. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうときに会合なさることはあるでしようけれども……。
  91. 大島染吉

    大島證人 はあ。
  92. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 個人的なお附合いはなかつたんですね。
  93. 大島染吉

    大島證人 別にありません。。
  94. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関根との物のやり取りということは……。
  95. 大島染吉

    大島證人 これはありません。
  96. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありませんですね。
  97. 大島染吉

    大島證人 ありません。
  98. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の月ですか、この義徳学院の問題が朝日新聞に掲載されるその前日、関根があなたの所へ訪ねて来て、何か御相談したことがありますか。
  99. 大島染吉

    大島證人 あります。新聞社が來まして義徳学院子供にいろいろ聴いて行かれたんだが、新聞に出ると思う。そうすると後の運営に……つまりああいうものは信用でございましようから、新聞に出ると、それは事実なら尚更のこと、たとえ嘘のことであつても何ですから、なずかんです子供が……、できるならばというから、それで新聞社支局長さんにお願いして、こういうわけだから、できるならば私の方で改善すべき点があるなら幾らでも改善します。尤も私が改善するわけじやないですが、注意をさせますからと言つたところが、もう原稿が行つてしまつたからお氣の毒ですけれどもと、こういうお話でしたんです。
  100. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとその翌日毛利檢事を派遣されたんですね。
  101. 大島染吉

    大島證人 そうです。
  102. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると新聞社にあなたを通じて了解を得て貰うということの外に、毛利檢事を派遣するということも頼んだんですか。
  103. 大島染吉

    大島證人 いや、それは別個のあれなんです。毛利檢事は私がやつたの記事に出まして、あれは犯罪関係がありますから、それで事実の眞相調査にやつたのであります。
  104. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると一面本人申出新聞社の方に備えてやると共に、他面にはあなたはその内容犯罪事実に関連があると……。
  105. 大島染吉

    大島證人 そういう記事を見ましてですね。そうして記事が出た以上はこれは捨て置くわけに行かんですから、新聞に載つた以上は、その記事について本省に報告する関係もありますから、檢事正は黙つているわけにいきませんから、それで直ぐ調査にやつたわけです。
  106. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは本人申出や要求じやないんですね。檢事さんを派遣して調べて下さい、私は久しいことはないんだというようなことがあるわけではないんですか。
  107. 大島染吉

    大島證人 そうです。
  108. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた個人なんですね。
  109. 大島染吉

    大島證人 そうです。
  110. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたの毛利檢事を派遣する決定は新聞記事が出る前ですね。
  111. 大島染吉

    大島證人 いえ、新聞記事を見てからです。
  112. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毛利檢事新聞記事汽車の中で読んだと言つていますんですがね。
  113. 大島染吉

    大島證人 そうでしよう、私が呼びつけてやつたのですから、直ぐ行つて呉れと言つて、朝連絡を取つてですね。朝早く私記事見ましたよ。私の所は朝日がちやんと入つておりますから、毛利檢事はあれなんですよ、若い人は夜遅くまで仕事すると、朝遅いのでしよう、私は年寄りですから、朝早く起きますから、毛利君は須賀川行つて調べて呉れと言つたが、電話もないしするから、とにかく新聞記事に出ておるから、これを調べて来いと言つて私やつたのですが、毛利檢事はだから新聞記事を見ずに行つたのじやないでしようか、汽車に乗つちやつたのじやないでしようか。
  114. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毛利檢事のあれでは、あなたの話があつて、それで朝一番で出発するときに新聞もろくろく読めんからポケットへ突つ込んで汽車の中でその新聞記事を読んだと言つてい、ますから、記事の出る前にあなたが知つていたのじやないですか。
  115. 大島染吉

    大島證人 そいつは私は朝見てから言つたように記憶しているのですが、朝毛利檢事の所へ使いをやつたように思うのですが、そう言われて見ればそこははつきりしてませんですが、私はそういうように今まで考えておつたです。
  116. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関根行つてからそういう派遣することを決定されたわけですね。
  117. 大島染吉

    大島證人 勿論その後です。
  118. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その毛利檢事調査に対する報告は勿論あつたのでしようが、どんな内容でございますかしら。
  119. 大島染吉

    大島證人 子供のですね、この本人自身毆らんけれども、なんと言いますか、子供に毆らしたのです。言うこと聞かないのを……。
  120. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ……。
  121. 大島染吉

    大島證人 それから何か焼鏝ではないけれども、鏝を……あれは子供でしようかね、関根の……。当てたというような事実はあつた
  122. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 電氣が、電流の通つているソケットを額に当てて暴行を加えたというような……。
  123. 大島染吉

    大島證人 それは電氣は通つておらないやつを、脅迫みたいになるのでしようかね、嚇かしたように、そういう事実はあつたのです。その外食糧事情のこともありましたですがね。その点はあれは私的の、何というか、自分関根個人の経営だつたものですから、例えば今まで十人なら十人おつて配給を受けておると、審判所の方から後十人くらいぱつと持つて來られるのですね、そうするというと移動証明とかなんかの関係で、食糧の方がなかなか準備がないのですね、そういうときには困つちまうわけですね、それでそういうときに関根のうちで作つていたじやが芋とか、或いは闇で買つた麦か米か何かあるのでしよう、それらを混ぜているけれども、いずれにしても足らんものですから、ときどきまずいものが出たと、こういうような報告ですよ、毛利君の報告は……。
  124. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう事実もあるのじやないですか、すでに退院していないのに、子供がいないのに、依然として配給を受けておつた。いわゆる闇配給を受けておつたとかいうような事実もあつたわけですかね。
  125. 大島染吉

    大島證人 あれは逃げたりなんかしますので、あすこが非常に関係がむづかしかろうと思うのです。ああいうのはそれで直ぐ切つちまうわけにいかんのですね、いつ帰つて来るか分らんし、そこ、臨時に來る人もあるから、便宜取つてつたのじやないかと思うのです。便宜と言つちや甚だ悪いのですけれども……。
  126. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでその報告に基きましてですね、立件なされなかつたですか。
  127. 大島染吉

    大島證人 そうです、それは直ぐ軍政部にお伺いを立てたわけです。毛利檢事が渉外ですから、軍政部行つたところが、アメリカの方では、私はアメリカのことは知らないのですが、その係の人はアメリカの方では、皆國家の費用で全部支拂しておるのだ、そうするとあの当時僅か一円ぐらいじやなかつたかと思いますがね。
  128. 伊藤修

    委員長伊藤修君)  手当が……。
  129. 大島染吉

    大島證人  手当幾ら何でも昨年ですか、一月頃一円じやどんなまづい物でもと言つて食わしても置けないし、その他衣料もあるし、焚つけも要るのですから、それは関根の負担になつておるのですね、そういうことを言われたのですね、毛利君が、こういう事実があるので、これは遺憾なことであるけれどもということを言われたらしいです。そうすると、そうか、それはまあ氣の毒なことだ。それじやもう少し何とかしてそれを生かしたらいいじやないかという、こういうお話であつたらしいのです。それで私の方もその方法を聞きましたら、とにかく関根だけは事を起したのだから一線を退いて、代りにやつて実れる人があるというから名義だけ残して、仕事だけ退いて金だけ今まで通り出せ、そういうふうにやつて来た。同時にそのことはこつちの方にも報告しておるのです。
  130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の暮ですね、関根義徳はいろいろな事件で以て、いわゆる婦女に対する暴行とか、或いは横領とかいろいろな事件で幾つかの罪名で起訴されました、すね、そういうような事実はその調査の際に知り得た事情にあるのじやないですか。
  131. 大島染吉

    大島證人 その当時分つてつたのは暴行だけで、婦女に手を出したというのは毛利君の調査では分つていなかつたのです。それはその前の犯行です。一月前の……。
  132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一月前の犯行ですから、その子供のいわゆる親なり何か呼出してお調べになれば分り得る状態ではなかつたでしようか。
  133. 大島染吉

    大島證人 そこまで犯罪があると思わなかつたものですから、調べてなかつたのです。
  134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ毛利氏お言葉によりますと、あなたからただ調査を命ぜられただけだから、調査報告するだけであつて犯罪捜査という観念で行かなかつたから自分はしなかつたと言われておりますがね、あなたの先程の言葉から言えば刑事事件があつたかどうかということを調査して来いというのだから、私調査をするというので、捜査ということは言われておりませんが……。
  135. 大島染吉

    大島證人 そうでしよう私はそういう頭ですが、檢事が捜査以外に出る必要がないのだから……。
  136. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毛利檢事は極力その点を捜査ではない、調査だと、こういうことに……。
  137. 大島染吉

    大島證人 調査というけれども、檢事犯罪捜査で出るのですから…
  138. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうじやないかと思つて申上げたのですが。
  139. 大島染吉

    大島證人 それは毛利君が育ちがこつちでないから、司法の修習のことや何かが内地でないから、百そこに行き違いがあつたか知れないが、私は今まで檢事生活三十年して参おりますが、檢事が出張するのはみな捜査で、それ以外の調査ということはないと思います。
  140. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私共もそう考えますが、御出張になつて事実をいわゆる調査をして、犯罪事実ありや否やということを御調査になるわけです。それはただ捜査であるとこう考えておるのですがね。だから毛利檢事があなたの御命令の御趣旨がそこにあるとすれば、毛利檢事が何かそういう事実を、…昨年起訴されたというような事実をその当時すでに捜査さるべきものじやなかつたろうかとこういうことを……。
  141. 大島染吉

    大島證人 気付けば、材料があればそうだつたでしようが、そのときはなかつたのではないでしようか。
  142. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一旦踏込めば、容易に捜査できる状態にあつたのじやないかと思いますが……。
  143. 大島染吉

    大島證人 それは忙しいとか何とかいう関係があつたのではないか、軍政部に早く報告しないと向うから、向うからと言つては悪いけれども、先手を打たれては困るから、私のはそれで急いだわけです。
  144. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時捜査すればできておるのです。捜査をして知つておるにも拘わらず、殊更に起訴されなかつたのではないでしようか。
  145. 大島染吉

    大島證人 いや、そんなことはありません。
  146. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時子供に対する暴行事件は仮に只今の御趣旨でですね、立件しないというならば、何か行政上の処分をするという考えもなかつたのですか。
  147. 大島染吉

    大島證人 それでですね、実はその当時審判所の方とも相談したのですが、三十何人の子供があつたのですが、これをあすこをぐしやつと解散しますと、子供の持つて行き場に困るのです。実はそのうち今いる者だけを卒業させる、そうしてこの学院を普通ならば、私の考えなんですが、普通ならば直ぐ閉鎖してもよかつたのです。後の子供が卒業をしたのですが、三ヶ月か四ヶ月すると大体片附くから閉鎖してもいいのですけれども、折角、その反別は忘れたのですが、山林を寄附して呉れた篤志家があるのです。その人に折角寄附して呉れたこの土地を返してしまうというのもおかしいことであり、できるならば後の適当な人を見付けて、そして学院を再興する、そして國家の方にでも移管したらどうかと、こういう考えで実は我々は時期を見ておつたわけで、外から見れば少し優柔不断だつたと思います。
  148. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二月頃関根が学院の経営から手を引いて、第一線から手を引きまして、それで院長代理というものを置くようになりましたのですね、それは今のような意味が含まれておるのですか、それとも全然関係なく行れたのですか。
  149. 大島染吉

    大島證人 あの院長代理を置いた意味ですね、それは
  150. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ、丁度その直後に置いたわけですね。
  151. 大島染吉

    大島證人 ええ、そうです。
  152. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういうような事情の下に本人がその地位を去つて代理を置くようになつたのですか。それでもそれとは無関係のことですか。本人申出によりますと、関根の供述によりますと、病氣だとこういうのです。病氣だから一應第一線を退いて院長代理を置くようになつたのです。何かあなたの方から特段に御言葉もあつたのですか。
  153. 大島染吉

    大島證人 私の方から特に言わんですけれども、やはり少年審判所の方に言いましたのですから、とにかく余り仲が良くないのです、あの連中が皆が仲が良ければいいんですが、子供ですから喧嘩しないようにと言つて、そうしてとにかく寄附された財産もあるのだから、これを引伸して行つてそうしてやるのだ、國家移管に持つて行こうじやないかと、そういうふうに話をして呉れと頼んでおつたわけです。
  154. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、院長を辞職さしたのはあなたの御言葉か、若しくはあなたの示唆ではないのですか。
  155. 大島染吉

    大島證人 それはですね、いつであつたちよつと忘れたのですが、私の所へ皆が集つたことがあつたのです。清水君も來てくれたのですが、そうして審判所長官か何か二三人と、それから関根君、内山君、渡辺君というようなものが皆集つたことがあります。日曜でしたか、そのときに將來どうしようかということについて、そのときに話が大体そういうふうでなつたと思いますが。
  156. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私のお尋ねしようというのは、そういうような事実の責任を負わしめる意味において辞任せしめたのじやないのですか。
  157. 大島染吉

    大島證人 結局不詳事件を起しましたのですから、そこへ行き得るわけです。
  158. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 保護事業の一番肝要な少年に対して虐待をしたということは由々しい問題ですから、そういう意味も加味されておるわけですね。
  159. 大島染吉

    大島證人 そうです。私はそう思つております。
  160. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それならば何故そのときに司法保護司とか少年保護司というものも辞任させなかつたのですか。
  161. 大島染吉

    大島證人 司法保護司はなんだけれども、そこまでは考えなかつたのです。まあそれが手落ちと云えばそれまでですが、少年保護司の方の関係は私の方に何らないのですから。
  162. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それに対してあなたの方から示唆するということがなかつたのですか、保護司としては適当でないとか。
  163. 大島染吉

    大島證人 そういうふうな意見も出せば出せるのですけれども、まああすこは少年保護司が常に来ておる場所ですから、私もときどき行くだけのことだけれども、少年審判所は少年を審判もますと、必ず連れて來て、そうして又、おる人の状況を見て帰えられるのですから、私の方よりか向うの方が余程よく知つておるのです。
  164. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関根さんをこの少年保護司に推薦したのはあなたですか、清水さんですか。
  165. 大島染吉

    大島證人 少年審判所の方です。少年保護司というのは私の方に深川に何人かおりますけれども、私共名前も知らないのです。
  166. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二級の少年保護司……。
  167. 大島染吉

    大島證人 それも私知らなかつたのですが、藤井審判所長に聴いたことですが、國家移管になるので今までの私設保護團体の長は功労者として全部全國的に級官にしたという話ですが……。
  168. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 人柄から言つて経歴から言つても二級の少年保護司というのはちよつと異例のように考えられますね。そういうような取扱いについて何か清水さんからか、或いは関根からあなたの方へ御依頼があつて、特にお頼みがあつて、今のようなお取扱いになつたのですか。
  169. 大島染吉

    大島證人 何にもありません。これは学院に対するあれは私の方は実は形式的のものなのですがね、少年審判所長が親しくタツチして、そうして自分の審判した子供を矯正する場所ですから、まあ檢事正というのはちよつと、條文にも出ているだけですから……。
  170. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれどもあなたが進んでお取調べになつたのですから、お取調べになつたことを審判所の方へその事情はお知らせになるわけですね。
  171. 大島染吉

    大島證人 知らせます。
  172. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 知らせれば少年審判所の方は、監督の地位に就くのは不適当として断呼処分しなければならん場合もあつたでしようね。
  173. 大島染吉

    大島證人 ええ。
  174. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かあなたがお口添えなさつたのじやないのですか。
  175. 大島染吉

    大島證人 別に何もしません。
  176. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清水さんから特にそんな……。
  177. 大島染吉

    大島證人 そんなことはありません。
  178. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清水さんの義弟がそこの職員に雇われているそうですね。そういう関係で何かいろいろな情実があつたのじやないでしようかね。
  179. 大島染吉

    大島證人 その人がおるということは、私はつまりリンチ事件がありまして、初めてそういう人が來ておるということを知つたのです。
  180. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは御存じないのですか。
  181. 大島染吉

    大島證人 私はあすこの職員にも一遍も会いませんでした。
  182. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあとにかく保護する少年を如何ように悪いことがあろうと、リンチを加えるということはどうも少年保護司として不適任ですな。だからそれに対する取扱いが非常に生温いからその間にいろいろな情実関係があるのじやないかと、こう世間がいろいろ言うわけです。
  183. 大島染吉

    大島證人 それは私としても自分の方の直轄のものならばやれるのですけれども、まあとにかく少年審判所が直接やつているのですから、それに口を出すということは、檢事正としてはこれはちよつと越権行爲だろうと思いますね。そういうことになつた審判所は独自の権限に待つて仕事はできないと思います。不正があるとかリンチ事件があるかということは檢事正としては言うだけのことは言はなければ相済まんけれども、そうでないことは人事にまで口を出すということは或る意味においてはいいかも知れないけれども、ちよつと向うはお困りになるのじやないかと思います。
  184. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、その当時少年審判所長にあなたの方からお知らせになつた事項は、いわゆる先程のお知らせになつた電流を通じてあつたかどうか分りませんが、電流の通ずるソケツトを額に当ててリンチを加えたということや、食事の問題、或いは犬に飯を食わして少年には……。
  185. 大島染吉

    大島證人 そういうことはありました。
  186. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何だかひどい物を食わしているとか、犬よりも劣つた待遇を與えているとか、或いは一週間も板の間に正坐させておつたとかいうようなことる御報告になつたのですね。
  187. 大島染吉

    大島證人 それは本省に出したのと同じものを出してある筈です。口頭でも私は申上げたように思います。
  188. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関根の婦女に対する暴行についてはその当時……。
  189. 大島染吉

    大島證人 知らなかつたのです。
  190. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 開帳は何らかそうやつて形式的に院長を辞任いたしましたのですが、依然として権力は持つてつたわけですね、経営に対するところの……。
  191. 大島染吉

    大島證人 まあ。
  192. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 実際上の経営者たつたわけですね。
  193. 大島染吉

    大島證人 ええ、そうです。形式的にですな。併しそれも金も自分でやつておるとき程は出さなかつたのじやないかと思いますがね。
  194. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年六月あなたが、先程ちよつとおつしやつたようですけれども、あなた達が学院の再建のために会議を開かれたそうですね。そのときに清水さんが出席されましたね、清水檢事正が……。
  195. 大島染吉

    大島證人 それは私が官舎にいたときのことです。
  196. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあどんなときか、少くとも再建について御協議になりましたね。
  197. 大島染吉

    大島證人 ええ、そうです。
  198. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき、清水さんが御出席になりましたね。
  199. 大島染吉

    大島證人 ええ、官舎にいるとき清水君が見えました。
  200. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう理由ですか、清水さんが仙台行つておるのに……。
  201. 大島染吉

    大島證人 やはり自分が何でございましようね、学院に前に関係しておつたからだと思いますが、頼みに行つたのじやないでしようか、審判所に……。
  202. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 仙台に赴任されている檢事正が、前任地の所へ、わざわざそういう所へまあ事ごとに出席されておるようですが、いろいろなところにタツチされておるようですが……。
  203. 大島染吉

    大島證人 ちよつと待つて下さい。清水君はまだ残つておるのじやないのですか。役員の籍か何かに残つていないのですかね。
  204. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは今の義弟の人がそこに関係しておるために、そういうような関係からして特に学院のことについては配慮されておるのじやないですかね。
  205. 大島染吉

    大島證人 それは分りませんがね、私には……。まあ土地の寄附などは清水君が受けられたのですからね。その土地なんかの処分についても心がかりだろうから出席したんだろうと思います。
  206. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ですが、その席上で渡辺副院長、それから内山常務理事ですね、両名から関根新聞に出ておるような不正を働いておる、同人をやめさせにや再建ができないという申出があつたのに対して、あなた及び清水さんはこれを宥めて、一應関根を留任させるというようなことをおつしやつたのじやないのですか。
  207. 大島染吉

    大島證人 留任……それは法律上の理由に基くのです。私としてはあれは関根個人に認可になつておる保護事業なんですから、関根がやめるということになれば、なくなつてしまうのです。法人ならば理事長がやめてあとが残るのだけれども、あれは関根個人のあれなんですから……。私の法律上の見方が間違つているかも知れないけれども、私はそう見ているのです。それだからとにかくそこを引延ばして置かなければ工合が悪いのじやないか、法人組織にするというお話もあつたのです、そのときに……。ところが法人組織にすると言つても、財産が第一ないのじやないか。そんなようなことで先ず一線からだけ退いて行つたらいいのじやないかということを私が言つたのです。清水君はそうではなかつたように思うのです。私と意見が違つたのじやないですか。関根をこの際やめさしちやつたらどうか、こういう意見だつたのじやないかと思います。私はそうでなく、関根がやめちやつたら実はあと金を出す人がないのじやないか。露骨には言えませんけれども、実はそう見ておる。あそこへ集まつた人の中で自分の金を五万か十万、小さな金ですが、巨額な金じやないのですけれども、それを出してやる人はないのじやないかと私は見ております。
  208. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは先程お話がありましたが、この学院に対して森岡賢作から山林を買収しましたね。これは買収ですか、寄附ですか。
  209. 大島染吉

    大島證人 寄附です。
  210. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 寄附ですか、それでそれを受入れたわけですね、これについてあなた及び清水さんは盡力されましたね。
  211. 大島染吉

    大島證人 私の前の清水君のときに寄附を受けました。
  212. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清水さんが……。
  213. 大島染吉

    大島證人 私のときは学院がごたごたしたから、その森林をどうしようかという問題です。
  214. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはこういうことから出発しておるのじやないですか。要するにその山林は農地委員会で以て取られてしまうのだ、だから、取られてしまうことは非常にあれだから、三鷹学院に譲渡して置こう、それから学院名義にすれば結局保存ができるというところから出発しておるのじやないですか。
  215. 大島染吉

    大島證人 そうじやないでしようと思います。後のためを思つて寄附したのじやないかと思います。とにかく私の行つたときには寄附になつていたものですから……。
  216. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは御存じないのですか。
  217. 大島染吉

    大島證人 知らんけれども、そういうことはないと思います。
  218. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よくありますね。農地委員会に取られてしまうことは馬鹿々々しいから、一應そういう公共事業の財産若しくは公共事業利用目的に供して置いて、農地委員会に取られることを免れるという脱法行爲をやろうという人がよくありますね。
  219. 大島染吉

    大島證人 森岡という人はそんな人でないように見ております。
  220. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 名義が移轉してないのはどういうわけですか。
  221. 大島染吉

    大島證人 関根を疑うわけじやないけれども、関根の名義になつてしまう。そうするとちよつとどうも学院名義というわけに行かんらしい。それで私は登記の方は余りよく知らんのですけれども、できることなら一つの手続で法人なら法人の組織になつたときに、或いは國家の方へさあつと持つて行きたい、こういう考えであつたのであります。だから手続だけは私の責任です。延びておるのは……。
  222. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうでなくて、やはり先程申上げましたような事情の下に、一應そういう目的に供すると言つて農地委員会の買収を免れようというために移転しないのじやないですか。
  223. 大島染吉

    大島證人 それは違います。そんなことをしていたら、森岡君の名義になつて、却つて悪い。
  224. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 実質上の権利がそつちに移つておるということを抗弁すれば、農地委員会の方は免れることがよくあります。
  225. 大島染吉

    大島證人 私はこの問題だけで折衝したわけですから……。
  226. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 学院が共同募金の分配金を受けましたね。これは刑事上の問題にもなつておるようでありますが、これはあなたが御盡力になつたのですか。
  227. 大島染吉

    大島證人 それはそうじやなく、向うから持つて来たのでしよう、縣の方から……。何も予期してなかつたらしいのですからね。
  228. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こちらから申請したわけですね
  229. 大島染吉

    大島證人 申請も勿論しないし、予期もしないのです。こういう金が入るということは予期しない。
  230. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その使い途についてはあなたに別に御相談があつたわけじやないのですか。
  231. 大島染吉

    大島證人 そういうことは私の方は何もしないけれども、ただ関根にこういうことだけは言つていたのです。赤字補填として貰つたのですね。これは何か申請者が学院から直接縣に出て、縣の方から行つておるそうでありますが、とにかく赤字補填ならば、君の今まで出した金の足らんところを呉れた、こういうこになるのだけれども、その金はやはり学院の方に使わなければならんように思う。こういうことだけは言うておりました。
  232. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとその使途については御注意になつたわけですね。
  233. 大島染吉

    大島證人 そうであります。
  234. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何だかその分配金は関根個人に対する分配金だから、その使途については制限を受けていないという見解を取つてつたのじやないのですか。
  235. 大島染吉

    大島證人 そういうようにも考えられるのじやないですか。高橋檢事なんかそういう見解らしい。赤字補填として呉れたのだから……。
  236. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ああいう共同募金の金は、今後の経営に対する資金として募金の分配金を受けられるのではないですか。過去の赤字を埋めるためにくれるのですかね。寄附する一般國民の意思というのはそんなものじやないですがな。
  237. 大島染吉

    大島證人 それはそうでしようね。だからこれはまあ考えようですけれどもね。今年度の予算として十万来たと思いますけれども……つまり昭和二十三年度の予算ですが、それとちよつと性質が違うように私は思つたのですがね。これは法律上のあれですけれどもね。
  238. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では独断でこういうことを許したというわけではありませんね。
  239. 大島染吉

    大島證人 そうじやありません。ただ私は赤字として貰つてもやはり学院に使わなければならん、こういうことは言うたのです。その方に使つているはずですが。
  240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 清水さんがこの義徳学院のことについて仙台の赴任地かちしばしばおいでになることはどういうわけですか。
  241. 大島染吉

    大島證人 しばしばといつても私二編か記憶ありませんが、検察廰に一遍、それから私の官舎に見えたこの二遍しか知りません。会つたことはありません。
  242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 義徳学院の方はときどき行かれるようですね。
  243. 大島染吉

    大島證人 私聞いておりません。
  244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じないですか。北島との会合のときも清水さんは仙台から來て出席されるのですか。そういうことがあつたですか。
  245. 大島染吉

    大島證人 いや、そういうことはありません。つまり先ほど申上げましたように歓送迎会のときだけです。
  246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、私のお尋ねするのは仙台赴任後ですね。福島縣へ又おいでになつて北島会合されるようなことがあるのですか。
  247. 大島染吉

    大島證人 知りませんですな。
  248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと一緒でないときですね。
  249. 大島染吉

    大島證人 ええ、そうです。
  250. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この学院問題については清水さんはいろいろ仙台から来ては発言されるのですか。
  251. 大島染吉

    大島證人 いや、そんなことはないでしよう。
  252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それじやもう一つお尋ねいたしたいのですが、昨年の八月の一日に今野檢事が平に出張するについてどういう理由でこれをお許しになつたのですか。
  253. 大島染吉

    大島證人 これはですね、言葉が違つたのじやないかと思うのですがね。昨年漁業の方の関係で、司令部の方の命令で一斉取締をしたことがあるのですが、その処置について福島縣の方の処置が……私ははつきりしないのですが、公平不公平の問題があるように軍政部が言うたんで、平の方に残りがあるから調べに行つてくれ、こう言われた。こういうのですね。それで私は今野君には、そうか、軍政部の命令とあればしようがないが……その当時は非常に忙がしいときでしたのでおらなかつたが……向うにも檢事がおるので、まあ軍政部のあれならば行つてくれと言うてやつたわけです。
  254. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは事実軍政部のあれだつたのですか。あなたの許可はそういう許可でしようけれども、事実はそうじやなかつたのでしよう。
  255. 大島染吉

    大島證人 軍政部からもあるにはあつたでしよう。ところが幾つもあつたので私はこつちの方だと思つたが、そつちの方だつたんですね。マル公市場とは聞かなかつたのです。
  256. 伊藤修

    委員長伊藤修君) マル公市場については軍政部の方からそういう命令があつたのじやないですか。今野檢事はあなたをだまして出張されたのではないですか。
  257. 大島染吉

    大島證人 いや、そういうわけじやないと思います。そつちの方を先やつたんじやないかと思ひます。
  258. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事実上調査を両方やつたのですか。マル公市場のことだけですか。
  259. 大島染吉

    大島證人 それは私が帰還命令を出しましたから……。
  260. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局出張命令についてあなたを偽って出張して……。
  261. 大島染吉

    大島證人 偽ったというのじやなくて、話の違いでもあつたのじやないかと思いますがね。私も忙しくて……。
  262. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だけれども、あなたのお考えのような趣旨の出張ならば、そちらの事件調査して報告しなければならないですが、そちらはちつとも調査しない。いわゆるあなたの意向の入つてないマル公市場のことを勝手に捜査して……。
  263. 大島染吉

    大島證人 それが勝手というのもちよつと……、命令で行くと言つたからそつちの方が命令だつたのじやないかと私も思つたのですけれども、そこははつきりしないのですが、今野君は、いやそうじやない、こつちで行くと言つた。僕はいやそうじやなくて、キングが言つたというので、私は何も恐れるわけじやないけれどもキングというのは喧ましい人だから、そう言うと今野君は違うと言うので、ああそうだつたかいな、僕は年寄だから私の方が聞違つたんかいなと思つて……。
  264. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、今野氏のあなたに対する出張の要求と、あなたの許可した内容とは喰い違つたわけですね。
  265. 大島染吉

    大島證人 つまり私の頭の中が違つたのですな。まあ今野君の方が若い人ですから確かでしよう。
  266. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併し今野君の方が初めからあなたを錯誤に陷れたのではないですか。
  267. 大島染吉

    大島證人 そんなことはないと思います。そういうことはしないと思います。
  268. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではあなたがその事件で行くんだというふうに思つてつたその事件については、何も報告しなかつたのですか。
  269. 大島染吉

    大島證人 報告できる筈がない。調べて來ないのですから……。
  270. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、その点に対して何かお問いになりましたか。
  271. 大島染吉

    大島證人 それで聞いたのです。「今野君、こういう話だつたじやないか。」「いや違う。こういう話だ。」「おかしいな僕はあのときは忙がしくて君は出張しないでくれと頼んだ。併しキングという軍政部からの話があつたから……」と言つたら、「いや、そうじやない」と今野君が言うのです。そうかいなと思つて……。
  272. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとマル公市場の事件は本当に軍政部から命令があつたのですか。
  273. 大島染吉

    大島證人 ないのじやないかと思いますね。
  274. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると全くあなたを偽って出張して、勝手に事件にタツチしたということになる。
  275. 大島染吉

    大島證人 それは併し事件が幾つもあつたですから、瞞したことにはならないと思いますが……。
  276. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併し最初の出は、軍政部から話があつたのだ、こう言つて、おきながらマル公市場について調査する。調査することも構いませんが、而もその調査が何だか非常に疑惑を持たれる調査ですね。そうすると結局あなたを瞞してやつたということになるのじやないですか。
  277. 大島染吉

    大島證人 私はそうとりたくないのです。私は年寄で少しぼけたから、話が聞き違つた。こう申上げたいですが、併し叱るなら叱りますよ。
  278. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 非常にこれは悪質じやないかと思うので……。
  279. 大島染吉

    大島證人 そうおとり下さるのもいいと思いますけれども、私は併しぼけたかなと思つたのですが……。
  280. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは向うの現地にも檢察廳があるのですから、特に御出張にならなくちやならんというのではない。
  281. 大島染吉

    大島證人 併し今野君ははつきりマル公市場に行くんだと私に言うたと、こう言うのですければも、私は記憶がはつきり……。
  282. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それもマル公市場のことが軍政部の示唆の中にはつきりあればですけれども、それがないのじやないかな。要するに軍政部の名を騙つて、あなたを錯誤に陥れたのじやないですか。
  283. 大島染吉

    大島證人 いやそいつはちよつと困ります。
  284. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではマル公市場の事件について、あなたに事前に何か御相談になつたことがあるのですか。
  285. 大島染吉

    大島證人 私は知りませんでした。
  286. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはその後お聞きになつたでしようが、今野檢事は結局出張されてどういうことをされたのですか。悪評を受けておりますね。あなたのお耳に達したことはどんなことですか。
  287. 大島染吉

    大島證人 つまりあそこへ行つて酒を飲んで、それがどうも私としては酒を飲むそのことを制限するわけじやないけれども、まあ向うが押かけて來たにしろ、とにかく関係者でないとはいえないような人が入つておれば、ちよつとじやなく、非常に工合が悪いので、とにかく新聞のことも聞きましたから、私はすぐ事件は、捜査せんでよろしいからと言うて呼び返して貰つたのです。
  288. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると出張中にそういうことがお耳に入つたのですか。
  289. 大島染吉

    大島證人 そうです。
  290. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで帰還命令を出したのですね。
  291. 大島染吉

    大島證人 出したのです。そうして今野君にはこの事件は頼まない。
  292. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 被疑者及び被疑者と関係ある人と出張して飲んだり何かしておつて事件がちつとも出張しているのに調べているのか調べていないのか分らんのですね。
  293. 大島染吉

    大島證人 とにかく私としてはちよつとそういうことをされては困るのですが。……だからその処分結果も今野君の捜査は打切つたわけです。他の檢事にやつてつた
  294. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他の檢事とは平の人ですか。
  295. 大島染吉

    大島證人 そうですが……。
  296. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 実に乱暴ですね。こんなことはないと思いますが、ちよつと出ておるからお尋ねしておきますが、船橋義介のタイヤ事件について、そういう事件があつたのですね。
  297. 大島染吉

    大島證人 ええありました。
  298. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事件についてあなたがなんだかその当時出張なさるらしかつたらしいのですが、その際毛利檢事に対して自分が帰るまで調べるなということを命じられましたのですね。ところが毛利檢事はそれに従つたとか従わないということはないのですか。
  299. 大島染吉

    大島證人 いやそんなことはないです。それは新聞に出て初めて私も氣ずいたのです。毛利君に聞いたのですが、その事件について処分を待つようにと私が言うたのです。そうしてそれを事務官が書いて毛利君の机の上に置いたらしいのです。そのことらしいのです。
  300. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かそのことについて毛利檢事が一万円貰つたという噂があるのですが……。
  301. 大島染吉

    大島證人 それはとてつもないことです。この間も毛利君と話して大笑いしたのですが、あれは私とも利君と法律で見解の相違があつた毛利君はあれは起訴意見なんです。私は法律上の犯罪は成立しないのだ、併し戰時中には起訴した例もあるのだ。これは専門の方がここにおありですからなんでしようが、船橋義介が古いタイヤを買つたと、こういう事件なのですね。あれは郡山の專賣局に納める煙草の箱を捕えるのですか、それに使うんだと思いますが、トラックのタイヤなんですね。それを買つたという事件なのです。これが犯罪を構成するかどうかという問題で、これは戦時中でも大分議論のあつたところで積極に解釈したところもあるし消極に解釈したところもあるのです。例えばタイヤを売買する商賣ならこれは当然違反なのですね。ところがそうじやないんだ。トラツクだから、而も箱を積むトラツクで、段々縁が遠くなつて來るのですね。そのトラツクのタイヤの古を、而も闇で買つたんでしようけれども、余り高くもない闇なんですね。それが法律に違反するかどうかということについては、いろいろまあ議論があるんで、私が申上げる必要もないのですが、ところがまだその他に雑言が入つておるのですね。船橋の方はそれは買つたんやじない、借受けたんだと言うのです。というのはその間に仲介人が入つておるのですね。だから仲介人と船橋との意思がどうなつておるかも分らない事件なのです。そつちの方で崩れる事件なのですけれどもね。たださつと眞直ぐに行つて法律の解釈の上でどうかな、こういう事件つたのです。それだからそういう事件を急いで起訴しますと、不起訴ならまだいいのですが、起訴されると、後で、なんだい、あの檢事正こんなことも知らんのかと言われますからね。いや檢事がそそつかしくてやつたんだというわけにもいかんですから、どうもならんなということになりますし、物笑いになりますから、それで私が愼重にやつて呉れと、こういうことだつたのです。ところが後で聞いたら証拠がないのです。そつちが行詰つて駄目なんです。
  302. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特に頼まれたというわけではないのですか。
  303. 大島染吉

    大島證人 いや知らん人ですから……。
  304. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではどうもお忙しいところを有難うございました。それではこれで暫時休憩いたします。午後一時半からいたします。    午後零時二十七分休憩    —————・—————    午後一時四十二分開会
  305. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは休憩前に引続きこれより開会いたします。清水直さんですね。
  306. 清水直

    證人清水直君) はい。
  307. 伊藤修

    委員長伊藤修君) たびたびどうもご迷惑です。今お住居は……。
  308. 清水直

    清水證人 佐賀市の松原町中小路。
  309. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが前に御在任になりました福島のことでお伺いいたしたいのですが、北島矢萩森山ですね、この三名と知合になりました理由を一つ……。
  310. 清水直

    清水證人 あれは北島氏とは、私が二十一年の三月にあそこへ赴任したと思いますから、それから半年ばかり経つたときに、檢事正室と檢事室とは別々になつておりますが、その檢事室に参りましたときに見知らん人が來ておつて檢事からこの人が北島源一だ、こういうことを聴いたので、それから知つたのです。それで二十一年の十月か九月ではなかつたかと思います。それから矢萩氏及び森山氏はやはりその頃会議か何かあつた場合に、何の会議か覚えませんけれども、そういうところで知合つたと思います。
  311. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 人柄についてはお聴き及びになつたのですか。
  312. 清水直

    清水證人 これは私があそこに参りましたときは、まだ矢萩氏は商工会議所の会頭ではなかつたと思いますが、間もなく商工会議所の会頭になつた。それから北島源一氏はそれまでに聽いておつたところによりますと、戦時中或いは防空壕を掘るとか、或いは燈火管制というようなものに非常に霊力した。それから又ルンペンとか浮浪児、ああいうものを引取つたり或いは旅費を出してそれぞれの地へ帰してやる、まあ非常に奇篤な人だ、こういうことを聴いております。それから森山耕三久という人はまだ四十にならんぐらいの人ですが、これはいろいろな事業をやつて青年実業家としては費出しの人で、非常に正直な人だ、まあ將来福島縣、特に福島実業家としては矢萩氏とか、或いはその次の時代では森山耕三久氏あたりが背負つて立つような優秀な人だと、こういうふうに聴いております。
  313. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島は何か博徒とかてき屋とかそういうものに関係がある、いわゆるボスと称せられていたのじやないのですか。
  314. 清水直

    清水證人 いや、あの人は以前は親分とか言われておつたそうですけれども、すつかり足をもう十年ぐらい前に洗つて、そうして時には興行ぐらいは年に一、二度やるぐらいの程度で、元は子分とかいうようなものがあつたそうですが、盃を返して一介の人となつて、まあ社会公共事業に一生懸命盡しておる、こういう人です。
  315. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから興行師としても映画館を持つておるらしいけれども、大体は野天興行、いわゆる掛小屋をやつて偶力をやるとか、そういうようなことをやつておるのじやないですか。
  316. 清水直

    清水證人 年に一度か二度やるらしい。それから劇場、活動写眞ではなくて劇場です。
  317. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 從つて香具師とか博徒とか、そういう遊び人間にはいわゆる顔の利くという人柄じやないですか。
  318. 清水直

    清水證人 そうでしような、それは……。
  319. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か昔、間違いがあつたそうですね。
  320. 清水直

    清水證人 間違いがあつた。十年くらい経つてつたのじやないかと思います。
  321. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 従来福島におきましては、司法保護委員に任命するについて、常任委員からあなたの方へ推薦があつて、その推薦に基いて大体任命するというのが慣例じやないでしようか。
  322. 清水直

    清水證人 そういうふうにもやつておりますし、又自分でよく分つておれば任命もこれまでしたことがあります。遠くにおる人、或いは会つたことのないような人は、警察署長とか或いは常務委員とかそういう人が、こういう人だからとこういうことで推薦をして來ますが、みずからよく知つておる、この人は保護委員としては適当だと思えば又任命した場合もあります。
  323. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今申しました三名は、あなたが独裁的にお決めになつたという話ですが、そうですが。
  324. 清水直

    清水證人 独裁的といいますか、三人は司法保護委員には非常に適当であるし、又大いに働いて貰える、こういうふうに思いまして任命したのであります。
  325. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最初北島にあなたさんが大体白励の矢を立てて、そうして又北島森山又び矢萩を推薦したという形になつて來るのですか。
  326. 清水直

    清水證人 いや、そういうわけじやありません。この三人は非常に仲が好いようでした。それで北島も生活に困らんようでしたが、矢萩とか森山という人は、あそこでは相当の金持だ、こういうことになつておりまして、この三人を一緒にして置いて、一方の方の北島なんかは労力的にやつて貰い、それからあとの二人なんか、相当保護の方は金が要るものですから、ルンペンに汽車賃を出したり、或いは食事を出してやらなければならんというようなことあるので、それで三人を一緒にやつたんです。なかなかこの司法委員というのはなり手が少いですよ。いわゆる縁の下の力持で、そうして何ら物質的な報酬はなし、まあひどい仕事なものですからこの司法保護委員の適当な人を選ぶということはなかなか困難な状態だし……。
  327. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ働くことはよく働いておるらしいですが、他面においては、その地位を利用して相当悪いこともしておるらしいですね。
  328. 清水直

    清水證人 それが悪いことをするというような、わし達はそういう人であるということは全然考えませんし、まあ十年もそこらも前科もないし、まあほかの二人は立派な人だ、社会的な地位も相当あるのだ、こういうふうに思つてつたものですから、そういう人がまあ今度のような事件を起そうとはちつとも考えなくて、まあそういう人に保護をやつてつて、あの混乱した状態で不良少年とか、窃盗、強盗いろんな犯罪が出て來たものですから、幾らかでも明るくするというには、保護委員のしつかりした人になつてつて保護の方に一生懸命なつて貰いたいと、こういうことでまあ三人になつてつたんです。
  329. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島及びほかの二名ですね、公の場合の御交際は別として、若くは公に準ずるような御交際は別として、私的な御交際としてはどういうような状態なんですか。
  330. 清水直

    清水證人 私的な交際と申しますと、私はちよいよい会つたことはあります。ありますが、別に特段にいつも交際しておつたというわけではなくて、勿論ざつくばらんに申上げますと、北島氏からいつぞや梨を十かそこら貰つたことがあります。それから粟を貰つたことがあります。併しながら私はそれに対してはちやんと、或いは炭が足らんといいますから、私の方に持つてつた炭を上げたこともあるし、これはまあ四俵ぐらい上げたことがあります。向うにお孫さんがいるというのでお孫んさにはたびたびおもちやを買つてつたり、そのほか今忘れましたけれども向うからして貰つただけのことは自分でもしたとこういうふうにいたしておりました。
  331. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとたびたび北島個人的に何か会食したことはありませんか。
  332. 清水直

    清水證人 個人的に会食したというのは、飯坂に私は何か鉄道の公安官の講義を、あすこの飯坂に鉄道寮とかいうのがありましたが、あすこ行つてつたときではなかつたかと思いますが、そのときに帰りに何という温泉でしたか、温泉の宿に行きましたところが、たまたまそこへ北島が来ておつて、今日会頭と、矢萩ですが、矢萩と一緒にここに会食するように、丁度牛肉を買うて来ておるから丁度いい按配に來られたから一緒に入つてくれと、こういうことでありましたから、まあ私的として御馳走になつたというのは、それ一回じやないかと思います。
  333. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあしばしば会食を共にされておる、しばしば会食を共にされていらつしやるようですがそれは公に……。
  334. 清水直

    清水證人 これはたびたびといつてもなんですよ、私が轉任しますときに、送別会を署長及び司法主任がいたしますからそれで出席して貰いたいというので、次席檢事と共に、次席檢事も一緒に替りましたからそれで何とかいう宿屋へ行きました。そのときに北島も、後で來ておつたことを承知しておりました。それともう一回はお正月に、矢萩氏と森山氏のところで御一緒になりまして、そのときに北島氏が來ておつた。これくらいのものです。他にはないと思いますが、併しながら私もその代り北島先生に來て貰つて、家で御馳走した……御馳走したという程のこともないのですが、やりましたこともありますし、外に連れて行つて御馳走したこともあります。
  335. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがしてやつたことは何回ぐらいありますか。
  336. 清水直

    清水證人 私がしたことは、他所へ連れて行つたことが一、二回と、家へ來て貰つたことが一回ぐらいかと思います。
  337. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると五、六回あるわけですね、北島と同席したことは……。
  338. 清水直

    清水證人 そうです。けれども新聞によると、私が三、四回向うから御馳走になつたというふうに書いてありますが、これは内容はそういうふうになつておりますから御承知願いたいと思います。
  339. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの御家族の方と北島家族は始終往き来しておりましたか。
  340. 清水直

    清水證人 往き來しません。
  341. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 訪ねて来るようなことはありませんか。
  342. 清水直

    清水證人 ありません。
  343. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの次男の方が北島のいわゆるなんというのですかやくざの方の後継者の古市というやくざがありますね。そこへ下宿しておりますか。
  344. 清水直

    清水證人 全然ありません。あれも新聞に載つてつて迷惑したのですが、全然そういうことはありません。次男は福島市外に寮がありましてそこへ行つております。あすこに下宿しておりません。
  345. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこへ厄介になつておることはありませんか。
  346. 清水直

    清水證人 全然ありません。
  347. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島との間の物のやり取りということは先程おつしやつた程度ですか。
  348. 清水直

    清水證人 そうです。
  349. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 職員の方の住宅問題についてはこの北島氏がよく世話したそうですね。
  350. 清水直

    清水證人 私は全然知りません。
  351. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じありませんか。
  352. 清水直

    清水證人 はい。
  353. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ、御存じあるか、ないかは存じませんが、北島関係した事件で、要するに北島に頼まれた事件で、そうして檢事局へよろしく頼むと、言うた言葉程度は分しませんが、一言的に言えば、よろしく頼むと言つて運動したと称せられる事件について二、三お尋ねしたいのですが、古市正夫、先程出て來た、他三十数名賭博事件についてあなたが何かこれを集めて訓戒なさつたそうですね。
  354. 清水直

    清水證人 ええ、しました。
  355. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに北島が丸や三角をつけて、これはどうしてくれ、これはああしてくれというような、何か表みたいものをつけて……。
  356. 清水直

    清水證人 それが又聞違つておりましてね。そういうことはないです。それは私が記録を見て手控えしておつたのはあるかも知れませんが、それではないかと思うのですがね。
  357. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島はあなたにいろいろな示唆をして、こういうふうにして貰いたいとかいうようなことをお話したのではないですか。
  358. 清水直

    清水證人 いやございません、そいつは……。
  359. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この三十数名の中にはしばしば賭博の前科があつて、当然実刑を科せらるべき人々も三、四人あるらしいですがね。これを一様に略式の罰金になさつたというのはどういうわけですか。
  360. 清水直

    清水證人 それは体刑にやる筋合のものではない。それは記録を見て頂ければ分りますが、三年以上経つておる。判例からいいますと、常習は消えておる形になつておる。それで三十何人かおつたのですが、その中には年寄りもおつたと思いますが、混乱した状態のときに、又刑務所なんかもオーバーしておるときですから、そういうのはやつぱり罰金にして、高い罰金を取り、これから一つやらせぬようにするがいい。こう思いまして、連中にいつて聞かして、これからやることはならんということを私は申しましたのですが、体刑にやらなければならんという事案ではありません。勿論前科はあります。体刑の前科もありますが、判例から見ますと、体刑で求刑しても結局罰金になるのではなかろうか、罰金になると思いますが、そういう事件でありますから、それでどうしても体刑にしなければならん事件を、罰金にしたということはないのでございます。
  361. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かこの事件について、北島があなたなり、檢事なりに相当頼んで來て、係檢事と御意見が違つたのじやないのですか。
  362. 清水直

    清水證人 これは後で一致したと思いますが、そこは事件についてはいろいろ話合をしますから、それで或いは直らんかも知れん、そうすると裁判所はどう見ようとも、こちらで体刑にやつた方がよいかも知れない。併しながらとにかくやはり機会を與えてやらなければ、なかなかああいう連中は直るものではないから、機会を與えてやればよい。そうしてこの事件がどうしても体刑にやらなければならん事件ではないのであるから、これは罰金にした方がいいのじやないかということで罰金にするようになりました。
  363. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この事件について北島は何回ぐらいあなたに面会されましたか。
  364. 清水直

    清水證人 私には面会しません。後でそういうふうに決つて博打仲間はやはり押えるものがないというと、又博打をやるから、誰かに引受けさせなければならんというので、罰金にしようということになりましたから北島に引受けさせた。
  365. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島にいわせると、あなたに事前にお目にかかつて、丸や三角をつけてあなたに意見を述べたらしいのですが、その丸や三角の意味は前科があるとか、これは自首して來たという意味でつけたとか、情状の問題についてつけたとか……。
  366. 清水直

    清水證人 それは私記憶しませんが、これは記録を見れば前科とかなんとかということは分りますが、どういう職業をしておるか、又年とかそれを見て罰金の方がこの際よいのじやないかということで、それは前にもちよつとお話したことがあるかも知れませんが、私は奈良におりましたときに、話が長くなるかも知れませんが、奈良におるときに宮崎檢事正という方がおられました。その方がやはり八木町という神宮様があります町で宿屋をしておつた亭主が、えらい博打うちで、それで前にもやはり賭博の前科があつたそうですが、何遍でもやりましてどうしても休刑にやる。こういう事案があつたらしいのですが、宮崎檢事正がその人を呼んで、そうして懇々と言い聽かされて、今まで非常に博打が好きであつたのが直つてしまつた。そうして宿屋業に専念したために、宿屋が非常に隆盛になつた。そのうちに宿屋の主人は死んでしまつて、おかみさんが後を継いで、非常に隆盛になつて行つたので、そのおかみさんが非常に得としておるこれはまあ奈良縣の検察廰に出ておる人はよく承知しておると思いますが、そういうふうでそのおかみさんも非常に喜んで、いつも話しておつたということを聞いておるのです。そういうふうにやはり機会を與えてやるというと、博打も直る。そのまま拠つて置くとなかなかああいうふうの習性ができてしまうものですが、私はそういうふうのことも考えておつたし、まあそういう処分にした。そうしてその内容は今申上げたように、罰金にすべきがまあその事件から見るといいという事案でした。
  367. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か法廷へ集められて、まあ法廷はいわゆる法律上の法廷でなくて、事実上の法廷に集められて訓示をなさつたそうですね。
  368. 清水直

    清水證人 私はそういう所へ出ないでもよかろうと言いましたが、やはり皆を直すためには檢事正が出て話して貰つた方がいい、利き目があるというので、それでは私が出て話をしようということで、三十人くらいだつたと思いますが、他に廣い所がないものですから、そこがよかろうというので、そこへ集めて、私が参りまして、非常に世の中が乱れておるときに博打でもあるまい、皆さんにしつかり働いて貰わなければ、日本の再建もできんじやないか、これからやらんようにして貰いたい、こういうことを申しました。
  369. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから古市の子分の傷害事件があつた。それは事件内容は非常に悪質のものであつて、係檢事の山本檢事は絶対保釈の同意の意見は付けられないと言つたに拘らず、あなたは北島から依頼されて、保釈許可を相当と認めるという意見を、係檢事の反対に拘わらず付するように御命令になつたそうですね。
  370. 清水直

    清水證人 それが又聞違つておる。私はその事件は山本檢事に保釈した方がいい、そういうことは全然記憶しておりませんでした。山本君がそう言うておるから、或いはそうであつたかも知れませんが、私としてはその記憶が全然なかつた。それから記録を見ましたところが、その記録がまあ誰の子分であつたか記憶しませんけれども、とにかく十八歳未満でなかつたかと思います。十八歳未満くらいの者が、あすこの駅前の飲食店で以て、酒を飲んでおつたかどうかしておつたところに、私服の巡査が入つて来て、そこで口論になつて、茶碗がそこにあつたのを私服の巡査、巡査ということは知らなかつたようですが、茶碗が顏にあたつた。それで一週間ばかりの怪我をしたのじやなかろうかと今記憶しております。それでそれは公判の請求をしておつた。そうして第一回の公判が開かれて、そうして全部事実と認めまして、そこでわしが悪かつたということで第一回公判が済みましたものですから、稻塚弁護士から保釈の請求が出た。そういう事案であつた。元来古市の子分であるかどうかも分らなかつたのですが、記録を見てもそこまではわしは氣がつかなかつたのですが、そのくらいの事件つたら大体起訴猶予にするか、重く行つて罰金かというような事案なんです。そうしてすでにそれを認めて第一回の公判があり、それから年若の者であるものですから、記録から見てそれはやはり保釈してやつた方がよかろうじやないかという意見なんです。
  371. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 公務員に対する傷害としてそう軽く考えるのですかね。
  372. 清水直

    清水證人 そうですね。そういう点からいえば、そういう説も出てきますけれども……。
  373. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 年齢の如何に拘わらずチンピラとして相当乱暴者だつたらしいですね。又記録上も古市の子分ということは、大体窺えるのじやなかつたですか。
  374. 清水直

    清水證人 いつのことだつたか知りませんが、その時までは今の親分のボスとかボス狩という時代ではなかつたのですね。昨年頃からボスとか何とかいうような言葉が出て來たのですけれども、まあ通常少年審判所でも送つて、そうしてそこで少年を良くしてやるという方がよいかも知れんというような事案なんです。
  375. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この事件というのは北島があなたに頼んで來たというのでは……。
  376. 清水直

    清水證人 頼んで來たという記憶はございません。私は頼まれた記憶がないのです。
  377. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 太田七右衛門の代用醤油の物統違反事件がありましたですね。
  378. 清水直

    清水證人 ありました。
  379. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あれについても御意見が違つてつたらしいですが……。主犯の方が一万円、いわゆる他の方が相被告の方が五万円ですか。
  380. 清水直

    清水證人 それは記憶がございませんですが……。
  381. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そう言われまして、而も北島は主犯の方の太田七右衛門の方は頼んだ頼んだ奴は安くて頼まれん奴は高い、簡単に言うと……。
  382. 清水直

    清水證人 それは知りませんが、宮後君がやつてつた事件ではなかろうかと思いますが、何か法律上でもこれは起訴されるか起訴されんかという法律上の問題もあるし……。
  383. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 疑義があればむしろ不起訴にした方がいいのじやないですか。起訴する以上は一つのものに対する裏表の事件なんですから、責任は両方同じことであるべきじやないですか。数字が違うわけじやないですし、たまたま不幸にして依頼した側の人、要するに金を出した人が一万円になり、然らざる者は五万円になつている。楯の両面の事件ちよつと区別して処刑している。
  384. 清水直

    清水證人 それは私は記憶しませんですがね。代用醤油を造つた方が一万円でしたか、そうでしたかね、私はちよつと事件内容を覚えませんが……。
  385. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  386. 清水直

    清水證人 それから一方の方は……。
  387. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五万円。
  388. 清水直

    清水證人 その事件の記憶はよく分りません。記憶しませんけれども、何かそういう事件があつたことは承知しております。
  389. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これも係檢事はもつと重い、まあ求刑としては重かつたらしいのですけれども、あなたはそいつを安くしろ、しかも振合を……。
  390. 清水直

    清水證人 それは又事情があつたのではないでせうか、その事件内容が…。
  391. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に事情もあまり窺われないのですがね。
  392. 清水直

    清水證人 それは記憶しませんですが、それを頼まれた記憶もありませんが、頼まれたから安くするとかどうというようなそんなことは全然ありませんがね。
  393. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ事件の取扱い方としても非常に首肯しがたい扱いですね。
  394. 清水直

    清水證人 ところがそれは何か内容を一つ見て頂いたら首肯ができるようになつておるんじやないかと思います。
  395. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 首肯しがたいですね。記録を拝見しましたが……。
  396. 清水直

    清水證人 それは私は法律の内容、事案の内容を……。
  397. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただ極力言われることは、解釈上疑義がある。疑義があるけれどもしたんだ、宮後さんはそういうふうにおつしやつるけれども、その疑義があるということは根本問題ですからね。根本的にそういう疑義があるなら、むしろ初から起訴しないか、然らずんば法律解釈を統一するために公判を請求すべきものじやないかと思います。略式でやるなら疑義を正すということにはならないのですからね。略式でやつても公判裁判所で氣がつけば、正規の裁判を開くだろうというふうに弁解しておられるが、普通取扱いとしては略式の請求をすれば漫然取扱いを以て決定して來るのですから、多年司法界にお携わりでその辺のことはよくお分りですから、略式で出したら公判を開くという裁判はちよつと少いですからね。
  398. 清水直

    清水證人 まあやり得る事件ではあつたんでしよう。何かいろいろ法律の問題があるんだと思います。それから醤油も非常に今考えて見ると、利益が殆どないんだ、先の人が、今思い出したが、何か親類か何かであつて、その人が高く売つておる。こういうことで、こつちは一万円、こつちには五万円か何か今忘れましたが、そういうことになるような事件つたと記憶しております。
  399. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから経済違反は御承知の通り一方に利益があれば、他の人は実質上に利益していなくても、やはり法律上の数字的の利益は認められますからね。自分で実際は取得しなくても、利益の数は同等になつて来るものですからね。
  400. 清水直

    清水證人 その事件は殆どこつちの方で却つて損をしておるくらいで……。
  401. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 三万五千円ばかり利益はございますね。数字の上から見ると……。
  402. 清水直

    清水證人 そんなことでしたかね。私はよく記憶いたしませんが、何かこつちの方が高く売るかどうかしたんじやなかろうかと思います。
  403. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体いわゆる数字的に見ても、利益に相当する罰金に大抵科せられるものですがね。今は罰金が三倍ということになつておりますですが……。
  404. 清水直

    清水證人 まあ千差万別でなかなか……。
  405. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうも同じ一つの事件について取扱いが異なつておる。而も異なられた人は北島が頼んだ人だ、こういうことになつておるものですからお尋ねするわけです。
  406. 清水直

    清水證人 それは私は頼まれた記憶はありませんがね。
  407. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 國分亀吉の食管事件がありましたね。
  408. 清水直

    清水證人 ありました。
  409. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これについても北島はあなたに頼んだと言つておりますがね。
  410. 清水直

    清水證人 結局頼んだかも知れませんが、その事件は体刑か何か求刑したと思いますが……。
  411. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局は執行猶予か何かになりましたね。
  412. 清水直

    清水證人 そうでしたか……。いや、何か罰金か何かになつたのを、又檢事控訴か何かやつたように思つておりますがね。
  413. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この司法保護委員森山耕三久の食管違反事件もあつたですね。れも頼んだと言つておりますがね。
  414. 清水直

    清水證人 それは知りません。私がおらんときじやないですか。向うを出ましてからでしよう。
  415. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの仙台に赴任なさるときに、北島は送別会を催したのですか。
  416. 清水直

    清水證人 北島からというのじやないのです。送別会は福島から仙台へ出ましたときでしよう。そのときには警察署長と司法主任が来て送別会をするからと言つて、司法主任、経済主任、外に一、二名の警察官が来ておつたと思います。
  417. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、北島の主催じやないのですか。
  418. 清水直

    清水證人 主催じやないです。
  419. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島は勿論同席しておつたのですね。
  420. 清水直

    清水證人 來ておりました。
  421. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは司法保護委員としてですか。
  422. 清水直

    清水證人 司法保護委員としてだと思います。
  423. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警察関係の人も皆來ておつたのですね。
  424. 清水直

    清水證人 司法主任、経済主任、それから警察の者と、それから署長と来ておりました。
  425. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島一人で費用を持つて全部したわけじやないですか。
  426. 清水直

    清水證人 そうです。それはしておりませんと思います。
  427. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 皆の会費でやつたのですか。
  428. 清水直

    清水證人 ええ、やつたと思います。
  429. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か北島が餞別あなたにお贈りになつたとか……。
  430. 清水直

    清水證人 いや、私は貰っておりません。
  431. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 引越しに際して、何か北島がトラツクを森山から提供して奉仕されたとか。そのときに米とか木炭とか味噌、そういうものをお世話したとか……。
  432. 清水直

    清水證人 いや、それは全然ありません。自動車は借りたことがあります。それは新車を森山氏が買うたときですね。仙台に丁度用があるから、新車の試運転をするから一つ丁度いい按排だからということです。それは北島から言うて来たのじやありません。森山氏が言うて來たので、それは結構だから行つて貰いたいと言つて行つてつた。その代りに、私は勿論運轉手に何百円か包みますし、それからその後にたびたび私はお礼をしております。
  433. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かその後に、又大島檢事正との歓送会があつたそうですね。
  434. 清水直

    清水證人 ええ、矢萩氏のところでありました。
  435. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは北島が催したのじやありませんか。
  436. 清水直

    清水證人 矢萩氏の招待で参りました。
  437. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは矢萩氏が催したのですか。
  438. 清水直

    清水證人 そうです。あの家は、御承知の通り非常に立派な家でございまして、それで東京辺りから偉い人が來られるというと、あすこへ大抵頼んで、そうして大臣とかなんとかが來られるとやつておりますが、弁護士の方も一緒に私たちとあすこに部屋を借りて、懇親会なんかをやつたこともあります。あれは半公共的なものになつております。
  439. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その際、いわゆる後任者ですね、大島檢事正に対して、北島氏を自分同様一つ頼むというようなお引継ぎがあつたわけですか。
  440. 清水直

    清水證人 さあ、北島氏は保護委員であるということの引継ぎはしたと思いますが、私同様と言うたかどうか……。
  441. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなように伺つておりますが……。
  442. 清水直

    清水證人 そのとき三人は非常に信用しておりましたから、又実際の仕事をやるのに大抵保護委員の方はいろいろ仕事を持つておられるし、なかなかそう眞剣に打込んでやつて貰うような人はやはり少いのです。保護委員になつて頂く人にもなかなか氣の毒なので、併しながら私たちは検察の仕事を勿論十分やらなければならんし、一方に社会にそういう人間が非常に溢れておりますから、併し一人でもやはり余計によい人間を作るという保護の面も相当やらなければならんものですから……。
  443. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 仙台にいらつしてから、しばしば來福されましたね。
  444. 清水直

    清水證人 二度ぐらい行きましたかね。
  445. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島とその都度お会いになつておりますね。
  446. 清水直

    清水證人 いや、その都度会つたのではなく、何のときに二遍会いました。歓送のときに一遍会つたのです。
  447. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局北島檢事局に殆んど出入りしておつて、そこでその度に熱心に頼んだから……、頼んだ程度は分りませんけれども、事件のことをよく檢事なり、何なりにお願いいたすとかいうことはあつたのですね。
  448. 清水直

    清水證人 檢事には頼みに行つたかも知れませんが、私に対しては事件をこうして呉れ、ああして呉れということはないのです。
  449. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一面においては皆さんとよく接近して、しばしば外の檢事さんは泥酔して、北島の介抱を受けなければならん程泥酔したり何かするということもあるらしいですが、そうして親密に交際を続けられた。他面において檢事局に始終出入りするというような立場を利用して、依頼者から……、依頼者というとおかしいけれども、金を取つておるらしいですね。現われただけで二十万円近く取つておるらしいのです。
  450. 清水直

    清水證人 私の聞いておることは、そういう金を二、三年の間ルンペン、浮浪人、そういうものに皆金を賄つてつた、こういうふうに言つておりますですがね。それでそれが今度判決がいずれありましようから、判決を見て頂いて、まあ御批判を願いたいと思いますが、私があの人と保護委員として附き合つたのは、半年ぐらいでしたからね。私の時代に何か二十とかそこらとか、今脅喝ということになつておるそうですが、それで以て私の時代に金を取つたとするならば、一つか二つしかありません。後は私が出てからの話で、私の時代には私はかつちりやつてつたつもりでおつたのです。そういうことがあろうとは夢にも思わなかつたのですが、私が出た後にそういう二十あるとすれば、十八ぐらいは犯罪になるかどうか、判決の結果でなければ分りませんけれども、私のおつた時にはかつちりして、何もそういうことの危惧の念を起すこともなかつた。一つか二つかどうもあつたらしいのです。私の在任中に……。
  451. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島は初めは贈賄という建前だつたのです。その次に詐欺という建前になつてその次に恐喝という建前になつておるらしいが、どうも……。
  452. 清水直

    清水證人 何かそういうふうに私は聞いておりますですがね。内容はよく知りませんですが、私の時代はあの人と附き合いしたのは半年ぐらいでなかろうかと思うのです。その保護委員に任命してから、私は八月の初め頃に辞令が出ましたから……。
  453. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 世間ではそれ程北島檢事局の信用を得ておる。巷間傳わるところによると、北島は私設檢事だと言われておるような、そういうことはお耳に入らなかつたですか。
  454. 清水直

    清水證人 そのときにはそういうことは全然耳には私たちはしなかつた。そういうことが氣がつかなかつたということは悪かつたと思いますけれども、今日でも私の時代にはまあよかつたと思います。それから今までの経歴から言つて見ても、二十年前に前科があつたということは承知しておりますが、非常に世の中の公共事業に一生懸命になつておる状況はよく私たちも分つておりましたから、或いは警察の後援会なんかに十何万円とか寄附したとか、それで留置場を改築するとか、警察官の宿舎を建ててやるとか、女学校が焼けましたにつきましては、一生懸命で復旧工事に全力を尽くして、いろいろ芝居なんかをやつた。ところが又この芝居の問題で私の聞いているところによれば、北島先生が何か傷害と暴行という事実があるそうです。傷害というのは、先生娘さんを連れて温泉に行つたのですね、そこにおかしな話ですけれどもが、男が夜這いに来たものですから、腹を立てて男を撲つてちよつと怪我したというのが、傷害になつているらしい。それから暴行というのは、女学校を建てるために資金を何か調達しなければならんというので、自分は芝居小屋を持つているものですから芝居をして、当り前でしたら金が集まらんというので、税務署に頼んで、こういう事業だから無税にして呉れ、会頭あたりと話合いの上だと思いますが、結局税務署もそういう事業ならば無税にしましよう、併しながら木戸賣りはつ止めて呉れ、木戸賣りをするというと全部に税金をかけますぞと言われておつたものですから、そのことを女学校の校長さんやら先生に申し上げて置いたらしい、ところがたまたま劇場に行つて見たところが、校長さんたちが木戸賣りしているものですから、びつくりして、元も子もなくなつてしまうから、腹を立てて校長さんを二三度突いて、あなた何事ですと言つたのが暴行になつているそうですが、そういうことで社会事業といいますか、そういう方面にも一生懸命になつてつた事実があるのですがね。
  455. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一面社会事業に尽くしておつたことは事実です。そういう美名に隠れて他面に顔を利かして、自分の私腹を肥やしたということも窺えると思うのですがね。
  456. 清水直

    清水證人 私腹を肥やすような人じやなかつたと思うのですが……。
  457. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人の供述を聞いても必ずしもその金を全部社会事業に使つてしまつたとは考えられませんね。
  458. 清水直

    清水證人 私はそういう人だということは知らずにいたということは、私も不明であつたと思うております。思つておりますけれども、私の時代にこの人間がちよつとでもそういうふうなおかしなことをする人間とはちよつとも思いませんし、又現実から見ましても、とにかく期日をいうわけじやありませんが、私のおる間にはそう恐喝ということにつきましても一件か三件かあつたらしいのです。あとのことは私は全然知りませんで、今度いろいろ沢山なことをやつたということで驚いているわけなんであります。
  459. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのお出でになる時分にはそういうことはお耳に入らなかつたのですね。
  460. 清水直

    清水證人 そうです。
  461. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か北島に頼みさへすれば、檢事局はどうにでもなるという地位にあつたらしいね。
  462. 清水直

    清水證人 私が出たあとにそういうことがあつたかも知れませんけれども…。
  463. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから私設檢事という名まで取つてしまつた……。
  464. 清水直

    清水證人 私はかつちりやつたつもりですが……。
  465. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと関根義徳との関係はどうですか。
  466. 清水直

    清水證人 あれはですね、前から保護委員でございました。私の前任者が保護委員にしておつたのです。それで少年保護團体を作りたいというのでして、又現実に福島縣には少年保護国体がございませんので、それは結構な話だ。こういうことで私はそれを須賀川に作るというのですが、それは結構なことであるというので應援しました。それで第一土地と建物がなければいかんというので、それで土地と建物を物色した。ところが、建物はないので、結局土地だけを初めどつからか寄附して頂いたらよかろうというので、町会の決議であすこ須賀川町に公園がありますが、そこの一部分の所を少年保護團体に寄附して貰うようになつたのです。それで結構なことだというので後のいろいろ建物なんかは自分が私費を出してでも作るということで、先生も一生懸命になつてつた。ところがその後様子が変りまして、反対する人があつて、そういう少年保護国体をああいう須賀川の町に作つてつては、須賀川の町民は枕を高くして寝られない、そういうものを作つてつてはいかんという反対が出て來たようでして、それで折角町会でそういう土地まで寄附するということであつたのをおじやんにしてしもうような傾向があつた。それでは折角保護團体ができるのを、土地でおじやんにして貰つては困るというので、あすこの町の町会の方にも交渉をいたしましたけれども、うまく行かなかつた。であすこに縣の所有の乾繭所があつて、一時はそこも盛大にやつて寄宿舎のようなものもありましたから、その土地、建物を貰つて、それが百人くらい少年を收容することができるということで、それをやはり縣廰にもたびたび交渉をしますし、現地にも見に行つて見ましたが、これも亦町会から、その建物は第一町の方で金を出しておるし、丈六・三制の学校をそこに作ろうと思うておるから、これはどうもあなたの方に差上げるわけにいかんというので、これも亦反対が出ましたし、併しいい建物であるし、環境もいいものですから、是非そこにしたいということで、いろいろ交渉したけれども、これもできなかつた
  467. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようにして創設には御盡力になつたわけですね。
  468. 清水直

    清水證人 はあ。
  469. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですね。
  470. 清水直

    清水證人 はあ。
  471. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、この関根司法保護司に、いわゆる二級官の司法保護司に任命されましたですな、これはどういうわけです。
  472. 清水直

    清水證人 あれは私が出た後でございます。
  473. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが推薦したのじやありませんか。
  474. 清水直

    清水證人 大体あれは少年審判所の管轄でございますから……。
  475. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうわけでなつた御存じありませんか。
  476. 清水直

    清水證人 いや、知りません。
  477. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの義弟の方が、なんとおつしやるのですか、この方がここの義徳学院に勤務するに至つた事情はなんですか。
  478. 清水直

    清水證人 あれはですね。四十人も百人も少年を置くということになつて、少年の方の教化というようなことは関根氏やらその他の方がやる。併しそういうように大きくなると事務の方をして呉れる人がないのだ。それで事務のできるような人はなかろうかという相談を受けましたけれども、一向見当りませんし、丁度兵隊から帰りまして、まあ長らく陸軍病院に入つて……、戦地に行つて弾丸が胸にあたつて、肋骨を三本か四本切つて養生して、やつとこさよくなつたという義弟がおりましたから、それは八高から大学まで行つてつたのですが、併し幾らかの病気で中途退学しまして、それが丁度そういうふうに遊んでおりましたから、この先生はどうだということを関根氏に話しましたら、それはもう非常に結構だから、何とか来て貰うようにして貰えんかというお話があつたから、私はその本人に手紙を出して、こういう大事な仕事であるし、余り労働する必要もない。事務だけを執ればいいのだが、來る意思はないかということを尋ねてやつたのです。
  479. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局そこに採用することになつたのですね。
  480. 清水直

    清水證人 まあ三ケ月も四ケ月もかかりましたが、やつとこさやつて來たのですね。それからやつて來まして、半年もおらなかつたと思いますが一結局帰つて行つたのです。それはどうも関根氏のやり方が自分と合わない。それで自分はもう折角来たけれども帰るということで、私はまあ……。
  481. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その帰つて行つたの事件の起る前ですか。
  482. 清水直

    清水證人 ええ、事件の起る前です。それで余談になりますけれども、初めはまあ給料も三千円ぐらい呉れるということでした。ところが向うから旅費も呉れませんし一万円ぐらい旅費をかけて大阪の方からやつて來たのですね。そうして今度給料は千円か千五百円しか呉れないので、どうしても暮して行けないのです。それで仕事もどう日も見て見るというと、思わしくないし、それから又給料がそんなふうじやとても暮して行けんというので、どうしても帰るというので、それじや帰れ。それで又これも旅費も何も興れませんので、自分の持つて来た荷物を少少賣つたり、私も金を出してやつたり、家から金を取り寄せたりして、三万円ばかりかけて、又國の方へ帰つたのです。
  483. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 千五百円は食事附ですか。
  484. 清水直

    清水證人 いやいや食事附ではありません。
  485. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 食事なしで……。
  486. 清水直

    清水證人 ええ。
  487. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 社宅や住宅は與えるのでしよう。
  488. 清水直

    清水證人 ええ、住宅は與えます。それで結局三、四万円の金をこつちでは損をしました。私は一生懸命やつて立派なものにしようという心持でやつたのですが、私も生活費を先生に送つたこともありましたね。
  489. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関根とあなたの間には物のやり取りをしたことがあるのですか。
  490. 清水直

    清水證人 ありません。
  491. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありませんか。何かあなたが贈物したようなことがありませんか。
  492. 清水直

    清水證人 ありません。
  493. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かあなたと私的にしばしば会合したことがありませんか。
  494. 清水直

    清水證人 ありません。向うに行つたこともありません。
  495. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがこの事件に対して非常に興味をお持ちになつて、初めからこれを盛り立てようということはあつたのですか。
  496. 清水直

    清水證人 ありました。それはもう少年保護團体がありませんから……、少年が東北六縣で福島が一番多い。何とか立派に盛り立てようというので一生懸命やつたつもりです。
  497. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが仙台においでになりましてから、事件の起る前に義徳学院においでになつたことがありますか。
  498. 清水直

    清水證人 義徳学院じやありませんが、あれはいつ頃ですか。須賀川から四里ぐらい離れた所に何とかいう所がありましたが、そこに行つたことがありました。
  499. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 義徳学院行つたことがありますか。
  500. 清水直

    清水證人 義徳学院にはありません。
  501. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありませんか。義徳学院に例のリンチ事件とか、いろいろな虐待事件が起つたときに、あなたが馳付けたと言つては語弊があるかも知れませんが……。
  502. 清水直

    清水證人 いやいや全然ありません。
  503. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 義徳学院行つたのじやありませんか。それでその事件に対して御相談を受けたのじやありませんか。
  504. 清水直

    清水證人 いやいや全然ありません。
  505. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事件はいつ御承知になつたのですか。新聞に出てからですか。
  506. 清水直

    清水證人 新聞に出てからぐらいのこと工すね。
  507. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それについて、何か善後措置について御相談にあずかつたことはありませんか。
  508. 清水直

    清水證人 それはどのくらい経ちましたか知りませんが、あの義徳学院を存続すべきや否やという問題について、少年審判所から私にその相談がありました。それで……。
  509. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 再建会議ですね。大月に再建会議を行なつたですね。それまでおいでになつておられませんか。
  510. 清水直

    清水證人 行きません。
  511. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人、義徳があなたに御相談に行つたことがありませんか。
  512. 清水直

    清水證人 ありません。
  513. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 再建会議にあなたがおいでになつたのはどういう資格でおいでになつたのですか。
  514. 清水直

    清水證人 それは、私は相談を受けましたけれどもが、まあ他管内のことですから、私が喙を容れるべきものじやない。それは少年審判所と地元の檢事正でやつて貰わなければならんと、こういうふうに言いましたけれども、大体あなたが作るに盡力しておるのであるから、とにかく顔出しだけして呉れ……。
  515. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたはまあ創設に対して御盡力になつたという関係上お呼びしたということになるんですか。
  516. 清水直

    清水證人 そうです。
  517. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、それは誰が招請したのですか。
  518. 清水直

    清水證人 私は少年審判所から招待を受けましたから……。
  519. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 義徳からじやありませんか。
  520. 清水直

    清水證人 義徳からじやありません。
  521. 伊藤修

    委員長伊藤修君) で、事件についていろいろそのときにお話が出たんだそうでありますね。
  522. 清水直

    清水證人 そうです。
  523. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで院長に義徳を迎えて、やはりそれが又適当であるかどうかということについて御意見を述べられたのでしよう。それはどういう御意見です。
  524. 清水直

    清水證人 これはまあ事件内容なんか勿論知りませんし、けれどもが、もうそういうふうにいろいろ世間からとやかく言われるようだつたら、もうこの際、関根氏はまあいろいろこれについては自費なんか投じて一生懸命やつてつておるんだけれどもが、もう今日としては誰か代りを出して貰つたらどうだという、こういう私は意見でした。
  525. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに事件は刑事事件として立件さるべき立場にあつたわけじやないですかね。
  526. 清水直

    清水證人 いや、それは知りません。
  527. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたたちの御盡力によつて本人が可愛いというわけじやなかろうけれども、事業が可愛いという意味において伏せたという意味じやないですかね。
  528. 清水直

    清水證人 いや、私は事件の方には全然関係しません。そのことに考えも至らないわけです。事件の方は全然別のものです。
  529. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはこの事件と非常に最初から御関係になつておる。一面において、あなたの義弟の方がお勤めになつておる、それから御交際も親密であつた。そういう点を総合いたしまして、この事件があなたたちの御盡力によつて立件されなかつたのじやないかと、こういうふうに世間では疑つておるのです。
  530. 清水直

    清水證人 それは世間でいろいろ間違つておると思いますよ。そういうことは全然ありません。
  531. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他管内に赴任しておるあなたをわざわざお呼びしたり、義徳学院でいろいろ御相談しおるという点から推して、そういうような疑いを受けておるわけじやないですかね。
  532. 清水直

    清水證人 まあ世間の人はどう言うか知りませんけれども、私たちは事件のことは本当にしませんし、それから私は審判所長からそういうことを言われたものだから、再建するものは別な変つた人にさせると、こういうことだけの話をしておつた事件のことなんか結び合わしたりしてなんかちつとも考えません。
  533. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ今日から考えましても、大体立件すべき事犯だつたということは、最近においてそれが起訴されておるのですから、当然その当時においてすでに立件せらるべき筋合のものだつたと思いますね。
  534. 清水直

    清水證人 私たちは全然事件のことなんかには関係ないです。
  535. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことには御相談なかつたですね、あなたに御相談しておるわけじやないでずね。
  536. 清水直

    清水證人 ええ、事件のことは全然聞いておりません。
  537. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か財産にするためか何か山林を寄附を受けたそうですね。それについてあなたは御盡力になつたそうですね。
  538. 清水直

    清水證人 それは私が盡力したわけじやないですが、関根さんがそういう事業に自費を投じてやつておるということは奇篤なことであるし、又そういう仕事は今日の社会状勢から考えて見て非常に必要なことであると、こういうことで、何か須賀川から四里くらい離れた所に何とか、森岡とかいう有力者がおられまして、この人がそういう事業なら自分山林と土地とを投げ出そう。そうしてそれらの土地を開墾し、上にある木を売つたらば、相当な財産になる。それで以てそこに家を建て少年を容れればいいじやないかと、こういう話があつたそうです。関根氏の方に……。それで私はそれを聞いただけです。
  539. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これはあなたが御盡力になつたわけじやないのですか。
  540. 清水直

    清水證人 私は盡力しません。
  541. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは農地法によつて取上げられる、政府に買収される、安く買収されては堪まらんというので、公共事業に使用するのだと言えば、買収が免がれるというので、一時公共事業に寄付するという形をとつておるというのですね。
  542. 清水直

    清水證人 そういうことは聞きません。
  543. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは御関係ないのですか。
  544. 清水直

    清水證人 知りません。
  545. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 共同募金の分配金については、あなたが御盡力になつたとか…。
  546. 清水直

    清水證人 知りません
  547. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これも御存じありませんか。
  548. 清水直

    清水證人 はあ。
  549. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論金の使い途について指示を與えたとか……。
  550. 清水直

    清水證人 全然……、私はそのときはおりませんから。
  551. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが分配金の額とか、そういうことについて強力に折衝して御盡力になつたとかいう話ですが、そうじやなかつたのですか。
  552. 清水直

    清水證人 全然知りません。福島縣にはおりませんから。
  553. 伊藤修

    委員長伊藤修君) おいでにならないあなたが、その福島縣に、任地を離れて種々御盡力になつておるという点が……。
  554. 清水直

    清水證人 全然ありません。
  555. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう噂が我々には思考できないのですが。
  556. 清水直

    清水證人 全くそんなことはありません。話が間違つておるのです。
  557. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岩城熱海という所があるそうですね。岩城熱海という所に檢事会同があつたそうですね、おいでになりましたか。
  558. 清水直

    清水證人 そこで檢事会同をやつたことは私としては知りません。
  559. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じないのですか、そこへ関根を招待したとか、同席で何か会合をやられたという話があるのですが。か
  560. 清水直

    清水證人 それは前の檢事の時代じやないのですか。それは私ではございません。
  561. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大島檢事正の官舎で以て学院の再建を何か御相談されたことがあるのですか。
  562. 清水直

    清水證人 それは先程申上げました。
  563. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 場所は大島檢事正の官舎ですか。
  564. 清水直

    清水證人 そうです。
  565. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが鈴木始という事務官に辞表の提出を求めたことがありますね。
  566. 清水直

    清水證人 これが又違つておるのです。そんなことはありません。
  567. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが辞表の提出を求めたのじやないのですか。
  568. 清水直

    清水證人 いえ、そうじやありません。それは大変話が間違つておるのですが、それは鈴木君がちよつと酒を飲むのでございますよ。それで何か二度程酒を飲んだということを聞きましたから、私は事務局長にどうも鈴木対は酒を余計に飲むそうだから、氣をつけないというと間違いが起る。それで辞めなければならないようなことになるぞということを、辞めなければならんようなことに立至るぞと言うたことは、それは又酒を飲んだ事務官が前におりまして、これが間違いを起したんですよ。それで私は事務局長にその話を、前の例もあるから、余り酒飲んだりしてはいけないと、こういうことを言うたところが、事務局長がどういうことか知りませんけれども……。
  569. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それが誤つて辞めろというように傳つた、こうおつしやるのですか、それならば他の檢事にも沢山あるじやありませんか。
  570. 清水直

    清水證人 沢山あるといつて、私がおつたときに毛利君がおりました。毛利君と宮後君、今の次席檢事中野君はおりませんから、私の出た後ですから、宮後君か毛利君……。
  571. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毛利氏でも宮後氏でもしばしば飲んでるじやありませんか。
  572. 清水直

    清水證人 ええ、外で飲めるということは私は知りませんから。
  573. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事務官が二回ぐらい飲んだぐらいでそうやつて注意なさるならば、むしろ檢事の方が相当飲んでおるらしい。
  574. 清水直

    清水證人 大体そういう例があつたものですから、辞めなければならんような……。
  575. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事が街路で泥酔して北島に助けて貰つて歩いている醜態を演じているが。
  576. 清水直

    清水證人 私が出た後の状況で、私がおつたときは道路で酒飲んで酔つばらつたとか、それから誰と飲んだという話も聞きませんし、私のときは前申上げたようにかつちりやつておる時代です。私か大体酒飲まんから言うのでありますが。
  577. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 酒を飲んで悪いとは申しませんが、社交上飲むことは結構だけれども……。
  578. 清水直

    清水證人 そんなことで私は氣をつけるように局長に言うたのがどういうふうに言つたのか知りませんが、話が間違つておるのです。
  579. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だが北島とか、そういうボス連中が檢事局に出入りして、これらが幅をきかせていろいろ事件について指示する、そういうことについて恋慕を抱いて、いわゆる反抗的な立場に立つているということがあなたの忌韓に触れて、あなたが馘首したというふうに傳つているのですが。
  580. 清水直

    清水證人 いや、事務官というものはよくできる男ですから、前のような聞違いがあつたらいかんというので、簡單にそういうふうに事務局長に注意しただけで、立派な人間で、事件の方でも事務の方でも非常に堪能な人ですから、前のような間違いが起つたらいかんという、こういうことだけです。そういうなんとかかんとかいうことも聞きもしませんし、そういう何も全然ありません。
  581. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他にお尋ねは……よろしゆうございますか。それではお忙しいところをどうもありがとうございました。    〔証人今野左内君着席〕
  582. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今野さんでいらつしやいますね。
  583. 今野左内

    證人(今野左内君) さようでございます。
  584. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうぞお掛け下さい。お年は幾つですか。
  585. 今野左内

    ○今野證人 四十七歳です。
  586. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住いはどちらですか。
  587. 今野左内

    ○今野證人 福島縣信夫郡飯坂町東滝ノ町十六番地。
  588. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの御経歴を極く簡単に……。学校をお出になつたのはいつですか。
  589. 今野左内

    ○今野證人 昭和五年に京都帝大法学部を卒業しまして、昭和十年三月東京弁護士会に所属して弁護士を開業しました。それから昭和十四年八月まで弁護士をしておりましたが、その後大分地方裁判所判事に任官しまして、昭和十八年十二月まで大分、それから長崎、福岡、山形、鶴岡を歴任してその後陸軍司政官となりまして、南方スマトラへ参りまして、昭和二十一年の十号復員しまして、同年十二序福島地方検察臨檢事を拝命し、昭和二十三年九月二日ですか、盛岡地方検察庁檢事に轉じましたが、本年一月十五日退官いたしました。
  590. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 退官のあれは決定になつたのでありますか。
  591. 今野左内

    ○今野證人 発令になりました。
  592. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 発令になりましたのですか。
  593. 今野左内

    ○今野證人 はあ。
  594. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御家庭のお人数は……。
  595. 今野左内

    ○今野證人 家族でございますか。家族は妻、それから養子が一、三人だけでございます。
  596. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 失礼ですがお暮しの方はどうですか、お財産はおありになりますか。
  597. 今野左内

    ○今野證人 ありません。
  598. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お酒は大分いけるのですか。
  599. 今野左内

    ○今野證人 酒はそうですね、福島におりましたときは少し飲みましたが、今のところ二合ぐらい飲めば相当酩酊いたします。
  600. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 福島に御在任中に北島というのはお知合いですね。
  601. 今野左内

    ○今野證人 それは檢事に任官しましたときに、それは一昨年の十二月だと思いますが、大島檢事正の部屋で檢事正から紹介されて知りました。
  602. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 福島にいらしやつたときにですか。
  603. 今野左内

    ○今野證人 いや檢事になりましたときに、一昨年の十二月檢事となりまして、檢事正の部屋で紹介せられました。
  604. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 赴任直後ですか。
  605. 今野左内

    ○今野證人 私はその前福島の判事をしておりましたのです。それは先程放しましたが、南方から帰りまして……。
  606. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 福島へおいでになつたのは……。
  607. 今野左内

    ○今野證人 福島へ参つたのは判事として参つたのです。
  608. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから迭られたのですか。
  609. 今野左内

    ○今野證人 それで一昨年の十二月に檢事になり、轉官したときに紹介されました。
  610. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 轉官と同時にですね。
  611. 今野左内

    ○今野證人 はあ、裁判所におつたときは名前は聞いておりましたけれども、本人に直接会つたことはありませんです。
  612. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは一昨年の十二月ですか。
  613. 今野左内

    ○今野證人 そうです。十二月中だと思います。
  614. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十年の……。
  615. 今野左内

    ○今野證人 上旬頃だと思います。
  616. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その十二月のあなたが轉官された歓送会というのが催うされたそうですね。北島の主催でそのあなたと……。
  617. 今野左内

    ○今野證人 翌年でございますね。
  618. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 宮後檢事の送別会をかねて……。
  619. 今野左内

    ○今野證人 ありました。それは昭和二十三年度の二月頃じやないかと思います。
  620. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときじやないのでありますか。
  621. 今野左内

    ○今野證人 違います。その前に檢事正の部屋で北島というのと古市というのが丁度入つて來まして、盡史を食べておるとき……、これが北島という人と古市という人だということを紹介されたことがあります。その送迎会で初めて……。
  622. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 歓送会は催されたということは事実ですね。
  623. 今野左内

    ○今野證人 あつたわけであります。これは福島の市内の有志が干数名、福島のお歴々ですが、確かにありました。
  624. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは北島の主催でしたか。
  625. 今野左内

    ○今野證人 主催はその当時実は書面で案内が來まして、出席者の名前が三十数名書いてあつたと思います。幹事というのは名前で書いてありませんで、誰が幹事だか知りませんでしたが、あとで聞いたら矢萩森山というのが肝入りだということを聞きました。北島は使い走りをしておるように見受けました。
  626. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 森山矢萩が主催者……。
  627. 今野左内

    ○今野證人 そういうふうに感じました。
  628. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の八月頃中野、毛利檢事とあなたと北島の紹介で飯坂の若喜へいらつしやつたことはありますか。
  629. 今野左内

    ○今野證人 これは紹介されたわけではありません。これ詳しく申上げますと、私は実はその当時今でも飯坂におりますが、飯坂から通つておりますから、その役所が退けまして帰ろうとしますと、玄関に自動車がおつたわけであります。それに中野、毛利檢事が乗つておりまして、飯坂へ行くのだから君は帰り道だから乗らんか、実は若喜へ行つて飲むのだから君附き合わんかというとで、北島の外に小松という人が乗つておりました。福島商工会議所の副会頭であります。この人に紹介されまして誰の主催だか、飲みましたことは確かですが、あとで会費を払いましたから、ですから御馳走になつたわけではありません。
  630. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他に北島矢萩森山から私的に会食の招きを受けたことはありましたか。
  631. 今野左内

    ○今野證人 ございません。
  632. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで何らかの機会で一緒にお飲みになつたことはありませんでしたか。
  633. 今野左内

    ○今野證人 それは公的の場合にはあつたかも知れませんが……。
  634. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私的の場合には。
  635. 今野左内

    ○今野證人 全然ございません。
  636. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一度も……。
  637. 今野左内

    ○今野證人 ありません。
  638. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島から何か物のやり取りをしたことはございませんか。
  639. 今野左内

    ○今野證人 それは全然ございません。
  640. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが北島を御馳走してやつたことはございませんか。
  641. 今野左内

    ○今野證人 それもございません。
  642. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ないですか、あなたが南方からお引揚げになるときに、第三國人の婦人をお連れになつたそうですね。
  643. 今野左内

    ○今野證人 連れました。それは実はここで御許可を得まして詳しく申上げたいと思うのでありますが、終戦の年多分十月十七日だと思うのでありますが、インドネシアが独立したのでございますが、爾來その英軍が兵力が少くてスマトラ島、パレンバン、パダン、この三ケ所だけに向うが進駐したわけであります。それ以外の所には全然英軍が参りませんで、日本軍が警備を委せられておりました。併しながら独立宣言を意味するために武器を獲得しなければならん、そのときに日本人襲撃事件が勃発したのであります。インドネシアとの交渉係というのが必要だというのですが、誰もなり手がない、私当時リオ州地方法院長というのをしておつて人望があるというので、交渉委員長になつて呉れんかというので軍の方から頼まれまして、昭和二十年の十月頃から二十一年一月の末までその交渉委員長をやつてつたのであります。それで結局そのためにいろいろな事件がありまして、日本人が殺されたりしまして、武器を取上げるというのが一番いいというので、向うの代表者と何十回という交渉を重ねた結果六、七千挺という小銃をこつちが取り上げたのたのです。爾來治安が回復しまして、問題がなくなりましたが、却つて私がインドネノアから恨まれまして、当時しばしば君はいつ幾日退去しろ、退去しなければ生命は保障しないというような通告を受けておつたのです。数回私は生命の危険に曝されたことがあります。当時宿舎は、勿論日本人は部隊の宿舎に入りまして、私だけが部外におつたのですが、軍に部員を送つて貰うように頼んだんですが、軍が軍属に兵隊をつけるという規則はないが、若し万一事故があつた場合、こちらから兵隊を差し向けるというわけで、私は仲間三人ばかりで一戸の家を借りておりました。その当時宿舎は危険に曝されておつたので、帰國迄の間転々と方々居所を変えて隠れておつたわけです。その時いろいろ襲撃受けまして、まあ生死の境に立つたことがある。その時に助けてくれたのが今の中國人なのです。それから婦人が当時日本へ行きたい。私たちの仲間も大分行つたから是非連れて行つてくれと言われましたので……。あの当時私はシンガポールに引揚げておつたのですが、その女もシンガポールに帰つておりまして、どうして尋ねてきたのか、私の収容所に訪ねてきたわけです。是非連れて行つてくれ、頼むというので、それならお前の方から願つたらいいだろうというので、女の方から願つて、こつちへ一緒に参つたわけです。それで私の飯坂の家に、お客のような恰好で一年ばかりおつたのです。
  644. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは向うでは何をやつていらつしやつたんですか。
  645. 今野左内

    ○今野證人 私のうちで……。私が交渉委員長をしておつた間、始めからではありません。最初はインドネシアの奉公人を使つてつたが、昭和二十一年の場月の始めからインドネシアが、日本人の家で働くことはいけない。若し働いた場合はお前達には暴行するという、何かインドネシアの方で脅迫があつたので、誰も飯炊きに来る者がなくなつたので、一月の始めから一月の末まで、その中國人を家で使つたんです。二人ばかり使つたがそのうちの一人です。
  646. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いくつ位です。
  647. 今野左内

    ○今野證人 今年三十八位になりますか。
  648. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは身寄りのない人ですか。
  649. 今野左内

    ○今野證人 シンガポールに義理の姉さんというのがおると言つていましたが、他に身寄りがないそうです。
  650. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本國の中華民國に帰らずして、どうして日本へ来ることになつたのですか。
  651. 今野左内

    ○今野證人 身寄りがないためでしようが、友達が沢山来ておつたそうです。
  652. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元日本におつたんですか。
  653. 今野左内

    ○今野證人 今おります。
  654. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 元おつたことはないのですか。
  655. 今野左内

    ○今野證人 始めての日本でしよう。併し日本人とは従来付き合つてつたので、日本語は相当喋べつておりました。
  656. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かあなたと御関係がないのですか。
  657. 今野左内

    ○今野證人 別段特殊な関係はございません。尚内地へ連れて來てから、家内と共に飯坂の家に一年ばかりおつたんです。
  658. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、それが原因で家庭に不和が起きたのではありませんか。
  659. 今野左内

    ○今野證人 土地の新聞でいろいろ書き立てておりますが、そういうことはございません。私は堀切善兵衛さんのうちに御厄介になつておりますが、堀切さんもよく御存じのことですが、決してそういうことはございませんでした。
  660. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かそういうことで不和を生じて、どうしても御家庭の維持上手を切らなくちやならん……。
  661. 今野左内

    ○今野證人 そうじやない……。
  662. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 手切れ金を要求されたということはありませんか。
  663. 今野左内

    ○今野證人 そういうことはありません。大体日本へ來て商売をしようという希望を持つてつたんですが、元何かそういうことをやつていたんではないかと思います。それで華僑連合会の会長ですか、私は名前はよく知りませんが、何という人ですか、その人が資本を出すということで話がついたということで、近く福島市で飲食店を開業するということで私の家を出て行つたわけです。ただ後援の資金が出るまでの間……。何か工事中だつたのですが、店舗を工事中多少生活費を補助して貰えないだろうか。内地に一緒に来た以上私もあなたを頼りにしておるからというので、私の家内を通じて話がありました。
  664. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かそのことについて、その婦人と御関係があり、それで別れるために手切金を非常に苦心してお作りになつたという話ですが、そうですか。
  665. 今野左内

    ○今野證人 いや手切金ではないのです。
  666. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金はどのくらいおやりになつたのですか。
  667. 今野左内

    ○今野證人 金は檢事になつた当時でした。それで日は忘れましたが、十二月の何でも北島に紹介されたその直後ですが、私が役所で仕事をしておりましたら、家内が参りまして、今日の配給物を受取る金もなくて困つている所へその女の人か来て、何とか出して呉れないかと言われたが、そんなわけで私も持つていないので、あなた何とかしてくれませんかと家内が言うのです。その時に北島が來たのですが、家内と相談して、北島さんは困つた人が助けて呉れと言えば、義侠的に助けて呉れるというから、北島さんにお願いしたらどうかというように家内が言いましたが、私はどうかと思いましたが、貸してくれるかどうか分らんのですが、一應話したのです。そうするとその女を私の家によこして呉れませんかというので、私がその女を入口まで連れて行つて、後は北島と二人で話し合いをしたのです。私はその後がどうなつたか知らなかつたのですが、翌日北島が千円ずつどうかというので、実は今日千円渡したとこういう話です。それは実に有難い。有難い話だが、私の方でお返しをすると話したのです。翌日女が来まして、北島という人がお前に千円くれると言つたが、自分は乞食でないから、知らない人から貰うことはできないから返しに來た。あなたの方から貸して下さるならば、私は頂いてもいいと思うが、ああいう知らない人に借りて、後で難癖をつけられても困るというので、それではと私が受取つて、向うの女に渡したというような関係でいき、十二月、一月、二月と三ケ月間を通じて貰つたが、そのうちその女が華僑連合会の方から金が出まして、飲食店を開業しましたので、北島の方は、れつきりになつております。現在は立派に繁昌しておるようでございますが、私はその後は二遍も行つてみないので……。
  668. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそうやつて生活の補助は北島の方の出費でやつたのですが。そうでなくて別に草野という人の方から三万円あなたが借りてやつたという話ではありませんか。
  669. 今野左内

    ○今野證人 いや、二万円借りてやりました。その開業資金というのは、華僑連合会長も幾らか出してくれるという話だつたのですが、詳細聞いてみると、何か四万円ぐらいしか出してくれませんから、二万円足りないので、何とかできないだろうかというのです。その女が福島の野沢町の疊屋の本田という人の二階に居りましたが、その本田の大家さんに草野という人が居るが、その本田という人が、その草野に頼んだらどうかと言うので、私は草野に会つてみました。結局草野という人が二万円出してくれることになつて、私が借りて、資金としてやつたわけですが、これは手切金というわけではありません。
  670. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その金はあなたが借主ですか。證が借主ですか。
  671. 今野左内

    ○今野證人 その女の方で、將來利益があつた場合にぽつぽつ返すという話合いだつたと思います。
  672. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 話合いだけれども、草野はあなたが借りたということですが…。
  673. 今野左内

    ○今野證人 いや、私は仲に立つたということだけです。草野に聞いて貰えば分るのですが……。
  674. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 草野とその第三國人との間の貸借で……。
  675. 今野左内

    ○今野證人 そうです。それで利益があつたらぽつぽつ返すと、こういう話合いだつたと思います。
  676. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何だかあなたが大変お金をお作りになることについて御心配になつたとかいう話ですが。
  677. 今野左内

    ○今野證人 それは身寄のない者がわざわざ内地に來ましたのですから、私もそのまま第三國人を放つたらかした場合、私の立場というものもどうなるかということを考えましたし、それは当然のことじやないかと考えております。
  678. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島からはそれ以外にはその婦人についての金は作られなかつたですか。
  679. 今野左内

    ○今野證人 全然ございません。
  680. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 矢萩は相当持つておりますが、矢萩から取つたことはありませんか。
  681. 今野左内

    ○今野證人 矢萩の私宅に行つたこともございません。
  682. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島というのはしばしば檢事局に出入りしておつたそうですね。
  683. 今野左内

    ○今野證人 そうですね、私の記憶するところでは一週間に二遍ぐらい來ておつたようです。
  684. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでいろいろ事件についてよろしく頼むとか、或いはこうしてくれとかいうような言葉があつたそうですね。
  685. 今野左内

    ○今野證人 私はそういう話を受けたことはございません。外の方はどうだか知りませんが……。
  686. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何だか北島から頼まれた事件に、井上正平と井上庄造かの物統違反事件で……。
  687. 今野左内

    ○今野證人 これは私が担任しました。
  688. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これをお頼みになられたのじやないですか。
  689. 今野左内

    ○今野證人 この事件は大体四件になつておりました。井上正平に井上庄造ですか、それから何とかいうのが二人おりました。その中の二件が中野檢事の担任で、半分が私の方へ来ておつた筈です。私記録を受取つたときに中野檢事が私のところに來まして、これは一連の事件なんだ、こう分けて割当てるのは事件係の方でなつちよらんといつて私のところに全部よこしたわけです。そのとき中野檢事がこれは大体拘留するような被疑者じやない、これは君調べた上でできるならば拘留しないで出した方がよいということをいつておりました。私記録をちよつと見ただけですが、証拠も揃つておる、住所もはつきりしておるし、逃亡の虞れもない。事件としては全部調べが済んでおるように考えましたので、ただ井上正平という奴だけは、物統違反の前科がありまして釈放するのはどうかと考えましたが、いずれ公判でとか、或いは略式の起訴で拘留の求刑をすればこれはよいと考えまして、拘留の請求はしなかつたのです。併し北島からその事件について私にどうこうしてくれということは全然ありません。ただ北島はあの事件は来ておりますかということを私に聞きましたが、私はとりあわなかつたので何らの話もございませんでした。
  690. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島は要領がよいというのですか、上手というのか、諄く頼まないらしいですね、軽くあの事件を一つ頼むというような頼み方らしいですね。
  691. 今野左内

    ○今野證人 そういう調子です。私檢事に転換する当時は、北島というのはどういう人間か分らなかつた。第三國人の問題があつたから山本檢事にこの話をしたところが、山本檢事は、君あれは問題の男だよ、それは早く帰してしまへ、それからあの人間については用心したまへという忠告を受けましたので北島には余り接触しない。彼が寄つて来ても素知らん顏をして事務を執つておりましたので、その事件について何ら別段話はありません。だから私はむしろ、記録を御覧下さればわかりますが、求刑は外の事件に比べて重くしてあります。これは私は盛岡に轉任したので公判に立合わなかつたが、私の記憶としては六ケ月ぐらいの懲役の求刑と罰金刑を併加して求刑するような考えでしたが、あとで聞きますと、次席檢事の中野檢事が立会つて、懲役ニケ月の求刑をしたということを聞きましたが、それは軽く見たと私は感じました。
  692. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島が電話を掛けてこの事件をどうしてくれと言つて來たことがありますか。
  693. 今野左内

    ○今野證人 これは新聞に出ておつたというのですが、これは福島の電鉄株式会社が土湯温泉までバスが通つております。そこの駅長の佐藤兵七という人が電鉄の職員になつておりまして、その男の木炭の闇事件がありまして、北島が土湯温泉に行つておりまして、私のところに電話を掛けてよこしたというのですが、私に電話が掛つた覚えはありません。その日は電源ストで一日中電話は掛りませんでした。だから向うで掛けたというのは芝居じやないかと思います。
  694. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よく檢事さんの名前で、電話を掛けることがあるらしいですね。
  695. 今野左内

    ○今野證人 その日はよく覚えておりますが、電源ストで一日中電話は通じなかつたのです。
  696. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 北島は依頼者に体裁を作るために、そういう電話を掛けるのではないですか。
  697. 今野左内

    ○今野證人 あれは福島の民友新聞に出たというのですが、私は知りません。
  698. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いかにもあなたを部下か友達ぐらいの扱をして……。
  699. 今野左内

    ○今野證人 そういうことを聞きまして、私も唖然としておるわけであります。
  700. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事件は身柄は釈放になりましたか。
  701. 今野左内

    ○今野證人 それはその後どうも契約の当事者がはつきりしない事件で、非常に入り込んだ事件で身柄は釈放しませんでした。私が轉任する当時はまだ調べておりました、その後どうなつたかは分りません。
  702. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 少くとも電話を掛けた当時は身柄は釈放しなかつたのですね。
  703. 今野左内

    ○今野證人 しません。これも私、記憶しておるのですが、その日は電源ストで電話は通じなかつた。後で私の家に電話が掛りまして、家内が出まして、今出張中でおらないと言つて電話を切つた。その後電話は掛つて來ません。面接そういう話も聞いておりません。
  704. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 奥さんに掛けた電話にそういうことを言つたのでしようか。
  705. 今野左内

    ○今野證人 それは分りません。あの新聞記事はおかしいです。
  706. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは昨年の八月マル公事件捜査のために平に出張しましたね。そのとき檢事正お話になつて許可を受けたでしよう。その点の経緯は……。
  707. 今野左内

    ○今野證人 それは四月頃ですが、全國的に漁業会の違反事件がありまして、私その前に小名浜の江名町に参りまして、その事件を検挙しました。八月になつて軍政部に呼ばれまして、キング少佐がおりまして、仲戸川通訳を通じて、漁業会事件をやつておるようだが、君のやつておるのは出荷関係だけを檢挙しておつて、荷受機関はやつておらないじやないかと言われましたので、荷受機関は今検挙するために目下捜査中ですと言つたところ、それは早速やらなければいけない。君の求刑を見ておると、出荷機関と荷受機関の求刑が不均衡じやないかということを言われたのです。荷受機関は実は平の方の炭鉱関係の会社が荷受機関になつておりました。これは君早速やりなさいということを言われた。その外に最高檢関係の指揮で、小名浜町に漁網の大量闇事件があつたわけなんです。これを至急に挙げろというわけで、その前の経済檢事の合同で高檢から指示を受けておつたわけであります。それから又一方平の市長鈴木辰三郎という人ですが、マル公の市場、岩本海産物市場というのですが、そこで非常に闇事件がある、実は平の市民が至急挙げて貰いたいということを、福島に出張される度毎に私のところに来まして陳情しておつたのです。それは私が平方面の今の鮮魚介の闇事件の検挙に行きましたときにも、私の宿に平市の公安委員の矢吹六一郎という人が訪ねて参りまして、今のマル公事件についてこういう証拠がある、警察署に対する報告書みたいなものを持つて來まして、これについて説明しました。それを私は聞き流して帰つてつたのでありますが、それから市長が三、四回、市会議員なども來まして、早くやつて貰いたいという註文があつたわけであります。私は平にも檢事がいるのだから、その平の檢事にやつてつたらどうかと言うと、いや平の檢事はともかく駄目なんだ、全然頼んでも頼み甲斐がない、檢事はやる氣がないし、又やつたとしても、この事件を取扱うかどうか疑問なんだということで、こういうようなことから檢事正に相談した。その前に書留速達で市長から早くやつて貰いたいという手紙が來ておりまして、手紙が來た四、五日あとだつたか、私が食堂で御飯を食べておるときに、今の魚の網の事件は、今のちようど仲戸川通訳から言われたばかりの直後だからかためて檢事正に相談したこの相談のときには山本檢事毛利檢事次席、誰か……。要するに四人位おつたのですが、そういうことならば私に一つやつて貰おうかというようなことになつたので、若し檢事正がそれのどれかを忘れられたとすればそれは忘れられた、記憶がないのじやないかと思います。決して進駐軍の方からも話がなかつたというわけではございません。仲戸川通訳からも平へ行つて仕事をやれというのでなくて、とにかく荷受機関を早くやらなければいかんのじやないかということを言われてやつたのは事実なんでございます。それを檢事正報告したことがありました。その直後にそういうことが決まつたわけなんであります。
  708. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると関係方面からは、荷受機関についての取調べをやつたらどうだろうという話のあつたことは事実なんですか。
  709. 今野左内

    ○今野證人 確かにございました。
  710. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると檢事正に対しましては、どの事件をやるということははつきり言わなかつたのですか。
  711. 今野左内

    ○今野證人 いやそのときに、平のマル公事件は書留速達で檢事正宛に來ておるからその中に今言つたような陳情が書いてありましたので、私のところに回覧に廻して寄越しまして、そのことをよく相談したのですが、檢事正は知つておる筈なんですが、そういうことならば行つてつて呉れ給えということで……。
  712. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 檢事正は他の事件というふうに考えておつたらしいのですがね。
  713. 今野左内

    ○今野證人 それはあとで実は平のマル公事件のことが問題になりまして、話があつたのですが、あのとき申上げたのですと言いましたら、そうだつたかなと……、檢事正は実は忘れられたのじやないかと思います。
  714. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときの他の事件というのはどういう事件を指すのですか。
  715. 今野左内

    ○今野證人 今の平のマル公事件並びに小名浜の漁網……。
  716. 伊藤修

    委員長伊藤修君) の事件を指しておるのですか。
  717. 今野左内

    ○今野證人 そう思います。
  718. 伊藤修

    委員長伊藤修君) マル共の方には余り考えは及んでなかつたらしいですね。
  719. 今野左内

    ○今野證人 勿論考えておられたと思いますが、檢事正がむしろ忘れる筈がないのですがね。何しろ市長が五、六回は直接陳情に参りましたのですし、速達や何かでもしよつちゆう請求しておつたのですから……。
  720. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは命令の内容は喰違いがあるといたしましても、御出張になりまして、お調べになりましたね。
  721. 今野左内

    ○今野證人 調べました。
  722. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お調べ中になんか途中で帰れという命令が下つたそうですね。
  723. 今野左内

    ○今野證人 そうなんで、実はこれは事務官がたまたま新聞記者とちよつと酔つぱらつて争ったということで問題になりまして、それで直ぐに帰れという電話があつたものですから、今の漁網の事件と、それから炭鉱関係の荷受機関ですな、その方の捜査を打切つてつたわけなんであります。
  724. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 新聞記者と事務官との争いというのは、なんだか事務官が酔つぱらつて新聞の支局の戸を叩いてむりやりに……。
  725. 今野左内

    ○今野證人 そうじやありません。私もその前を通つたのでありますが、戸は開いておりました。なにか事務を執つておりました。どんなことをやつたか先に帰つたから分りませんが、大したことじやないと思いますね。現場は見ていないので私には分りません。
  726. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 支局では暴力團でも殴り込んだというふうに考えておつたようですが……。
  727. 今野左内

    ○今野證人 現場を見ていないから分かりませんが、大したことはないと思います。
  728. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 向うではびつくりしたらしいですね。どういう必要があつて訪問したのか……。
  729. 今野左内

    ○今野證人 分りません。
  730. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じありませんか。
  731. 今野左内

    ○今野證人 分りません。
  732. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関係者は全部お調べになつたのですか。その際……。
  733. 今野左内

    ○今野證人 マル公事件も……。
  734. 伊藤修

    委員長伊藤修君) の関係者も……。
  735. 今野左内

    ○今野證人 中途で帰りました。
  736. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 人の数はどのくらいお調べになりましたか。少くとも中心人物はお調べになつたのですか。そこまで行かなかつたのですか。
  737. 今野左内

    ○今野證人 四、五人くらいやりまして中心人物はあそこの専務理事をしているのが伊藤彌平、これを一番最後に調べようと思つて調べる瀬戸際まで行つて止めたと思います。
  738. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 市長かなにか関係しておりますか。
  739. 今野左内

    ○今野證人 これは平の問題というのはなかなか複雑でありまして……。
  740. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 簡単で結構です。
  741. 今野左内

    ○今野證人 非常に政争の激しい土地で、市長というのは、元の政友会の代議士を二期くらいやつた人ですが、今のあそこの土地では旧政友、新政友といつているようでありますが、両者の争いが非常に激しいところでありまして、両方が告発したり、告訴したりしよつちゆうやつております。
  742. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事件関係者ですね。
  743. 今野左内

    ○今野證人 そうなんです。後で聞いたところ事件の情報を提供して貰つたときには、一向……。市長が公安委員を支持してやらせるのが当然かと思いましたから、これは全然知らなかつた…。
  744. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 出張については平区檢へ連絡なさつたのですか。
  745. 今野左内

    ○今野證人 参りました。前に電話で連絡しましたが、ところが私が参りました日に、宮後檢事は休暇で帰つておらなかつた。國分という檢事が居りましたが腹痛で休んでおりまして役所におりませんでした。
  746. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 所管の、管轄の区檢の應援を得なかつたのですね。
  747. 今野左内

    ○今野證人 大体その前……。
  748. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに私のお伺いしたいのは管轄区域の検察廳をなぜ動員しなかつたか。若しくは関與させなかつたか……。
  749. 今野左内

    ○今野證人 私は前から事情を申上げると分るのですが、この前鮮魚介の違反の検挙があつたとき宮後檢事に應援を頼んだ。ところが大体上の方からそういうことを言つてくるのはけしからんじやないか、我々のところには有り余つた職員はないということで、どういうものか宮後檢事は私に好感を持つていない。どういうわけか知りませんが、私には元々好感を持つていないように思われますが、事務官を私の方に手傳いに廻すことを拒否しました。それですからその事件があつたとき参りましたときに連絡しようとしたが、本人のいないときにやつて、なにか難癖をつけられても困ると思いましたから、平の檢察廳から補助を貰わなかつたのであります。國分檢事がその翌々日出てこられたので、必要があるならば借りられるかどうかと話をしたことがありましたが、結局そこまで行きませんでした。併し平の支所からは警部補以下四、五名補助を出して貰つたように記憶します。
  750. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 区檢察廳ですか……。あなたの方じや全然関與させて貰わなかつたのですね。結局は……。
  751. 今野左内

    ○今野證人 そうですね、あのとき、とも角捜査の係の中村という事務官もおりませんでした。
  752. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局いなかつたからさせなかつたというわけですな。
  753. 今野左内

    ○今野證人 檢事が二人ともおらなかつた。捜査の事務官も二人おらなかつたわけです。
  754. 伊藤修

    委員長伊藤修君) がら空きだつたのですね。
  755. 今野左内

    ○今野證人 事務系統しかおりませんです。
  756. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事務系統には連絡しておりますか。
  757. 今野左内

    ○今野證人 連絡してあります。
  758. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事件の中に矢吹とか、松崎、鈴木、比佐、金成、御代ですか、こういうような者は関係者なんですね。
  759. 今野左内

    ○今野證人 いや関係者でない人もあります。
  760. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 直接関係しているんじやないんですか。
  761. 今野左内

    ○今野證人 いや御代なんという人は関係ありませんね。鈴木というのは名前は何という人ですか。
  762. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鈴木市長です。
  763. 今野左内

    ○今野證人 鈴木市長というのは平の市長ですか。
  764. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 平の市長です。
  765. 今野左内

    ○今野證人 平の市長はマル公違反事件の情報提供者なんです。
  766. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今申上げたこの名前の人は、とに角事件関係ある人ですか。
  767. 今野左内

    ○今野證人 関係言つて、その被疑者というような関係はございませんですな。
  768. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関係ございませんね。
  769. 今野左内

    ○今野證人 全然関係ございません。御代という人は、小名浜の人ですから全然関係ありません。
  770. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 矢吹は……。
  771. 今野左内

    ○今野證人 矢吹というのは平の公安委員です。
  772. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 比佐は……。
  773. 今野左内

    ○今野證人 比佐という人は、全然出ておりませんが……。
  774. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金成は……。
  775. 今野左内

    ○今野證人 金成何という人ですか。
  776. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 江名町漁業会の理事じやないんですか。それから比佐というのは……。
  777. 今野左内

    ○今野證人 比佐という人は余然事件関係ありません。理事をしておるかも知れませんが……。
  778. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは、あなたは被疑者という観点からお述べになつているんではありませんか。私の方は被疑者でなく廣い意味関係者です。
  779. 今野左内

    ○今野證人 比佐という人は事件には関係ありませんが、御代という人も平のマル公事件関係ありません。平マル公事件関係者というのは、私の申しますのは情報の提供者というのが……。
  780. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 漁業会事件ですね、漁業会事件でございますか。
  781. 今野左内

    ○今野證人 前の、つまり四月の事件ですか。
  782. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうです。
  783. 今野左内

    ○今野證人 四月の漁業会事件ですと、比佐という人は全然関係ありません。それからその御代という人も関係ありません。これは小名浜という所は詳しく申しますと、農林省の出荷機関に指定されておるのは、あそこに任意組合が二つありまして、その一つは、鰯あぐり網漁業、その漁業組合、もう一つは機船底曳網組合が、小名浜の出荷機関になつているんです。又連合出荷部がありまして、連合出荷部の者がこの事件関係者でございます。御代という人は出荷機関でありませんから全然関係ないんでございます。そして又私はその当時は知りませんでしたが、聞いたんですが、この御代という人は、出荷部の連中とは、背中合せになつている人だそうで、排斥されている人だということを聞いております。ですから勿論事件関係者として出て來る筈はないんです。
  784. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 漁業会に関係しているんですな。
  785. 今野左内

    ○今野證人 漁業会の会長でありますが、小名浜の漁業会というのは……。
  786. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 漁業会は起訴されていないんですね。
  787. 今野左内

    ○今野證人 小名浜の漁業会は起訴しておりません。機船底曳網漁業組合、鰯あぐり網漁業組合の三つの出荷連合会の出荷部長の馬上というのを起訴しておりますが、漁業会は全然事件関係ありませんから起訴しておりません。
  788. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 起訴しておりませんか。
  789. 今野左内

    ○今野證人 しておりません。
  790. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 江名町漁業会は……。
  791. 今野左内

    ○今野證人 江名町は漁業会が出荷機関で、小名浜は漁業会が出荷機関になつておりません。御代は小名浜の漁業出荷。
  792. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金成というのは……。
  793. 今野左内

    ○今野證人 金成文平ですか、それは起訴しております。
  794. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関係者ですか。
  795. 今野左内

    ○今野證人 事件関係者です。
  796. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金成徳治という人ですか。
  797. 今野左内

    ○今野證人 金成徳治は事件関係者でございません。あすこの辺には金成という名前の人が沢山おります。
  798. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは関係者ですね。
  799. 今野左内

    ○今野證人 金成文平は関係者です。
  800. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう人と一緒に宴会をやられたのですね。
  801. 今野左内

    ○今野證人 やつたことはありません。
  802. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ないのですか。
  803. 今野左内

    ○今野證人 ございません。私が外の人と飲んでいるところへ、私はこの金成文平という者の捜査をしている事務官ですね。藤田という事務官に捜査させたので、私は直接会つておりませんが、平のマル公事件で誰かと飲んでいるときに、私の席にちよつと入つた者がある。途中からちよこんと顔を出した者がある。それが後で聞いたら金成文平と聞きました。私は金成文平と飲んだことはないので、よくその点をお聞き願いたいのです。私が外の席で飲んでいるところに文平が入つて來たらしい。私は文平というものは知らない。後で聞きました。五分か十分経つてです。一緒に飲んだ関係はありません。
  804. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十二月二十五日附で宮崎檢事報告書がありますが、報告書にあなたが事件関係者、若しくは事件関係者と推測せられる人ですね。それについての事実がありますが、これはこの通りですか。
  805. 今野左内

    ○今野證人 内容がわかりませんが……。
  806. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こつちから申上げましようか。
  807. 今野左内

    ○今野證人 はあ。
  808. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 八月二日夜平市谷口料亭に於て今野檢事は大和田藤田両事務官と共に、平市公安委員矢吹六一郎の招待を受けて出席し饗應を受けた、その席上にはマル公市場常務理事松崎喜一、マル共共取組合配給、主任鈴木幸平も出席していた。右饗應については矢吹六一郎は今野檢事一行に対して敬意を表したまでであつて他意ないと陳述している。同月五日夜平市大貞料亭において今野檢事は大和田、藤田両事務官と共に鈴木市長三男医師鈴木正男の招待を受けて出席し饗應を受けている。その席上には前出の矢吹六一郎、松崎喜一等も出席していた。右の饗應については鈴木正男は当夜矢吹方の建前の祝に出席し、醉余今野檢事を訪問し、偶々大貞料亭に誘つたまでのことであつて他意がなかつたと陳述している。  二、小名湊町漁業会及び江名町漁業会関係右両漁業会に対する物價統制令違反事件は、何れも本年四月二十四日の逮捕状及び押收捜索令状請求に始まり、今野檢事は五月四日より十八日まで小名湊町所在「なるこ」旅館に滞在して捜査に当り、その後捜査は中絶の状態にあつたが、八月十九日福島地方裁判所に公判請求となつたものである。五月八日江名町氏神祭典の当日今野檢事は藤田事務官と共に杉田松太郎の案内を受けて江名町に赴き杉田の懇意なる大森屋旅館に於て饗應を受けたのである。これは当日たまたま日曜であつて杉田の懇意にしている大森屋旅館より祭礼の祝に招かれたので今野檢事一行を誘つたまでのことで他意なしと杉田は述べている。  同月中旬頃小名濱町松葉料亭に於て今野檢事は藤田、菅野両事務官と共に小名濱漁業会理事比佐政種の饗應を受けているが当日は小名横町警察署長宅に於ける招宴に続いてその列席者の一人が催した二次会の謝礼として比佐が催したものであつて今野檢事一行に対する漁業会の饗應とは認め難い。  八月四日夜平市料亭「のんき」に於て今野檢事は杉田松太郎の招きを受けて饗應を受けその席上にたまたま江名町漁業会理事金成徳治も同席したがこれは杉田が懇意なる右「のんき」料亭へ碁打の疲れをなおすために同檢事一行を招いたところ、たまたま右金成と一緒になりたものであつて何ら他意なかつたと杉田は述べている。  八月六日平市料亭田毎において今野檢事は藤田、大和田両事務官と共に小名濱町漁業会長御代亀太郎、計理士桑原徹の招きを受けて出席し饗應を受けたが、その席上に杉田松太郎も同席している。これについては今野檢事は右桑原計理士と友人であり同人の招待により出席したまでであると述べている。その他飯坂温泉において杉田松太郎より饗應を受けたことが二回あるが職務に関係あるものと認める嫌疑十分でない。告発状記載の八月三日湯本温泉旅館山形屋において小名濱町漁業会長御代亀太郎等の饗應を受けたとの事実は認められない、こういうような事実ですね。
  809. 今野左内

    ○今野證人 それは一應私の方から説明さして頂きたいと思いますが、この最初の谷口ですか、「ヤグチ」と読むのですが、そこへ出て來るマル公の松崎というのは、これが情報の提供者なんです。これがマル公市場に勤めておつて内部の事情がよく分つてつて、この者が非常に情報を持つて來たわけなんです。その者と谷口で附合つたことは確かなんですが、これは私実はこの旅館で税務署から特配を受けた酒を飲んで、谷口へ連れて行かれたとき、私は相当酩酊していまして、なんでも谷口へ行つたときには私盃で二、三杯飲んだのですかね。その程度でもう私大分酩酊しているものですから、なんでも時間にして十五分か二十分で帰つたと思つているのです。ですから饗應という程度行つていないと思います。  それからその次はどこでございますかね。沢山あるので……恐れ入りますが。これは後で申上げたいと思うのですが、大体この問題になる事件ではないので、これは平のいわゆる政争の軋轢から出たもので、私が目標でなく、市長を目標にしているものなのであります。後で御説明申上げたいと思いますが、これは後で私の告発した関係人から聞いておりますが、この鈴木幸平というのは、これはマル公でなくマル共ですから、マル公と反対の立場にある組合なんです。この者もマル公から買つた品物について我々の方ではこういう値段で賣つているが、マル公の方では違う値段で書いてあるらしいという、いわゆる情報提供者の一人なんであります。この饗應というのは今申上げたような程度のものであります。第二の大貞の料亭でありますか、これは宿屋において私と両事務官とが何でも夜の九時半頃と思いますが、もう寝ようかと思つて寝仕度をしておるところへ矢吹とこの鈴木正男という市長の息子が参りまして、酔つばらつて参りまして、何か「すし」の折詰かなんか抱えて持つて來て、馬鹿に君達不景氣じやないか、実は今日建前のお祝で飲んで來たのだが、どうですか私の家へでも行きませんかということで、矢吹が言うものですから、もうつい引つ張り出されて行つたので、この大貞の料亭でも精々私三十分くらい附合つただけと記憶します。これも要するに申上げたいのは、当事者というと、饗應するといつても、この鈴木正男という人は市長の息子で、これは事件に全然関係ありませんし、矢吹というのは公安委員で、このマル公市場の情報を私の方へ持つて來た人間であります。松崎というのはこれもマル公市場の人間ではありますが、情報を、証拠を持出した人間でありまして、まあ被疑者ではございません。  それから第三の小名濱漁業会、江名町漁業会の方の大森屋旅館、これは日曜日と思いますが、何でも祭日なんで仕事が丁度そのとき暇であつたものですからお祭りを見に行こうと杉田から誘われて行つたのでありますが、これは杉田というものは全然事件関係のない人間であります。  それからその次の小名濱町の松葉料亭の比佐政種ですか、これは比佐政種は確かに出ております。併しこの日は小名濱の方の捜査を了えまして帰る前の日と思います。あそこの署長が鈴木龍之助という警部ですが、鈴木龍之助から実に御苦労であつた。私の家でちよつと用意してあるから來ないかというので、署長の家で御馳走になつたのであります。そうすると署長があそこに何とか病院がありますが、その院長の安田という人を呼びまして、安田院長と私と事務官を連れて松葉に行つたわけであります。松葉に行きましたところ、比佐政種という者が参つたのでありますが、これは署長が呼んだらしいので、私は初めてそこで会つたのです。私は勿論署長が招待して私に御馳走しておるものだと考えて御馳走になりましたのですが、後で聞きますと酒は比佐が持つて行つたというわけであります。ところが比佐政種という者が後にも先にも事件関係ないのです。小名濱とか江名町は住んでおる者が漁業者ばかりの剛でありますから、有力者というものは要するに漁業関係でありますから、比佐政種というのは全然事件関係ありませんし、これは署長の招待と考えておるのであります。これは鈴木龍之助署長をお調べ下さればよく分るのですが、高檢からお調べに行つた際、署長は出張をして留守だつたそうで、実は残念に思つております。  次は「のんき」であります。金成徳治というのは江名町漁業会の理事でありますが、実は故郷が福島縣の隻葉郡、石城郡の北になりますが、私の親戚なども平におりまして、かねがね知合いの人でありますし、全然この人は事件関係ございません。  それから最後の田毎における桑原徹という者が、これは私の泊つておる旅館の紅葉館に電話を掛けて参りまして、おいでになつておるそうだ。暫くだから御飯を一緒に食べたいと思いますが御都合如何ですかと電話があつたわけであります。この桑原というのは私の親友でありまして、私は桑原と飯を食うのは差支ないと思つていたのですが、ところがそこに御代亀太郎という人間がおつた。御代亀太郎は小名濱漁業会長をしておりますので、只今も申上げたように、小名濱、江名町は全然漁業会が出荷関係になつておりませんし、事件関係のない人であります。これはどういうわけで一緒におつたかそのとき事情は聞きませんでしたが、何しろ事件関係ない者ですから桑原の招待で誰がおつても差支ないじやないかと考えて御馳走になつたわけであります。杉田松太郎というのは私の家内の故郷の人間でありまして、そういう関係でまあ特に親しくなつたわけなんであります。以上まあ事件関係のないというのはこれは職業が濱でありまして、いずれも漁業関係でありますから、如何なる事件にも関係ありません。  どういうことで私を告発したかと申しますと、その後に告発者の鈴木博明に、外の人が中に入りまして、今野檢事がかわいそうだから取下げたらどうかと勧告したのだそうであります。その人が漏らしたところによると実は今野檢事は実に氣の毒に思つておる。我々平の鈴木市長は実に暗黒政治をやつたから、それを是非やつつけなければならない。我々平政治革新同志会が起つておるのだ、その前に今野檢事を何とか問題にして、市長の責任まで持つて行こうという考えでいるのだ、市長のリコールまで持つて行くという考えでやつておるのであつて、実に氣の毒である、だからその後の調べによつて事情が判明したから、告発を取下げようということを言つておるそうであります。
  810. 伊藤修

    委員長伊藤修君) とにかく事件が、まあ同じ漁業関係事件には関係ないとしても、漁業関係のそういう人からしばしばそういう御招待になりますと、どこからどう手が廻つておるとも限りませんね。疑いを招く虞れもあるし、少し軽卒ではなかつたかと思いますね。お飲みになることは結構ですが……。
  811. 今野左内

    ○今野證人 その点は軽卒だつたと言われれば……。
  812. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 殊に事務官が酒でいさかいをしたとか……。
  813. 今野左内

    ○今野證人 実は私もその点はその後軽卒であつた考えておるわけであります。
  814. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かあなたがこんなような事件のために盛岡へ轉任を命ぜられたというようにお考えになりまして、これくらいのことで左遷されるならば福島地檢の檢事は皆同様だとかいうふうにお述べになつたことはあるんですか。
  815. 今野左内

    ○今野證人 それは私は、或いは言つたかも知れませんけれども、どうも記憶はないのです。
  816. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ御憤慨の余り……。
  817. 今野左内

    ○今野證人 誰に……新聞記者ですか。
  818. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ誰におつしやつたか知りませんけれども、そういうことをお漏らしになつたことがありますか。
  819. 今野左内

    ○今野證人 或いは言つたかも知れませんけれども、記憶はないのであります。
  820. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 平市で宮後檢事が街の顔役の蒲生正俊と非常に懇意であつて事件の処理について不当なことがあるというような風評をお聞きになつたことはないですか。
  821. 今野左内

    ○今野證人 蒲生が檢察廳裁判所に出入りしていろいろなことを運動をやつておるというような噂は聞いておりますが、具体的な事実は存じません。
  822. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなふうな風評はありますね。
  823. 今野左内

    ○今野證人 風評は聞いておりました。
  824. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 食糧営團の事件について檢事の処理に疑いがある旨をあなたが述べられたということがあるそうですね。
  825. 今野左内

    ○今野證人 いえ、そんなことは述べた覚えはございません。
  826. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何だか取扱について非常にあなたは不満を抱いておる。
  827. 今野左内

    ○今野證人 それは私が轉任する直前にバトンを毛利檢事に渡したのですが、要するに最高檢の指示で不起訴になつたので、私としては止むを得なかつたと、思つて考えておるのですが、当時新聞記者が、折角今野檢事が骨を折つて有力な材料を蒐集した事件を、不起訴になつて残念じやないかということを私に話した新聞記者がありました。併し私は、計算の基礎や何か変つたのだとすれば止むを得ないのじやないかということを言つた覚えはありますが、残念だと言うた覚えはありません。併しその後高檢の片岡檢事が、私の集めた資料を基礎にして、更に捜査を展開して具体的な事実を握つたようでありますから、私としては別に何も言うことはございません。
  828. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か西村康長というのですか、判事に対して香ばしくない風評があるというのは、それはどういうことですか。
  829. 今野左内

    ○今野證人 私も判事在職中にいろいろなことを聞きましたが、具体的な事実は一つも聞いたことはありません。風評はありました。
  830. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例えばどんな評判ですか。
  831. 今野左内

    ○今野證人 どうも具体的なことは聞いておりませんですが、要するに闇判事と言われておるというようなことは聞いたことはあります。何か業者と仲よくしておるからじやないでしようか。
  832. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 業者との繋がりが多いというのですね。
  833. 今野左内

    ○今野證人 それもはつきりここで申上げることはできません。
  834. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 風評としては。
  835. 今野左内

    ○今野證人 風評は聞きました。
  836. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでまあ事件について手心するというようなこと……。
  837. 今野左内

    ○今野證人 さあ、そういうことはないと思いますが。
  838. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 闇商人と交際が多いというわけですか。
  839. 今野左内

    ○今野證人 そういう風評はありましたです。私は、判事や檢事としては良心というものがありますから、幾ら交際が深くても、事件を匙加減するというようなことはないと信じております。
  840. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いま一つお尋ねしたいのですが、安田喜治吾の傷害事件というものがありますね。
  841. 今野左内

    ○今野證人 ありました。
  842. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 山本檢事がこれに対して保釈許可の意見をつけた事情を御存じですか。
  843. 今野左内

    ○今野證人 どうも具体的なことははつきり分りませんですが、あの当時私が判事で、その事件を担当しておつたと思うのですが、これは何でも最初山本檢事の意見として、私の求意見書に、山本檢事が不という所に判を捺して寄越したのです。ところが、もう一度書類を持ち帰つて、不というのを消して可というのに判を捺して参つたのです。
  844. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、最初の意見書は不許可という意思が表示されておつたわけですね。
  845. 今野左内

    ○今野證人 そうです。
  846. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、又取戻して許可の意見を附して來たわけですか。
  847. 今野左内

    ○今野證人 そうなんです。その経緯は、私どうも直接見聞したわけではありませんので分りませんが、山本檢事は、これは長官の命だから止むを得ないのだというようなことを言つてつたことだけは記憶にあるように思います。
  848. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、最初の意見が自分の意見であつて、それから次の意見が長官の意見ということになるわけですね。長官の意見だから止むを得ないという意味はそういうことになりますね。
  849. 今野左内

    ○今野證人 まあそういうことになりますね。併し、そのときに長官がそういう指揮をしたかどうかということは分りません。
  850. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそれはそうですが、推理的に考えて行けば、そういうことになるわけですね。
  851. 今野左内

    ○今野證人 そうです。
  852. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたとしては、その意見は至当だと思つたのですか、要するにあなたの意見が……。
  853. 今野左内

    ○今野證人 檢事の立場としても、各人見方の相違もありましようが、別段大した事件ではなかつたように思いますので、あれは保釈を許可しても差支なかつた事件ではないかと思いますが。
  854. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから、安田は的屋の古市の子分で、いわゆる顔役の輩下であつて、警官の公務執行を妨害したと、而も傷害を與えたと、こういうような事案ですから、事件としては……。
  855. 今野左内

    ○今野證人 その後暴力團事件というものが最近はやかましくなつておりますが、当時としては暴力團事件というものは重く扱つておらなかつた時分だと思います。
  856. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 余り関心を持たなかつたのですか。
  857. 今野左内

    ○今野證人 暴力といつても……。
  858. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう街の顔役が公務員に対して、而も治安維持の公務員に対して暴行傷害を與えるということに対して余り関心を持たれなかつたのですね。
  859. 今野左内

    ○今野證人 当時まあ私判事としては余りどうも心証はよくなかつたように思います。
  860. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう者に対して執行猶予に付してあるようですがね。余り重きを置かれなかつたわけですな。
  861. 今野左内

    ○今野證人 まあ初犯でありましたし、要するにただコツプを投げつけたという事件だけでありまして……。
  862. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう暴力團の……。
  863. 今野左内

    ○今野證人 あの当時は暴力團というものを余り重く見なかつた時代なんです。その後暴力團というものがやかましく見られるようになりまして、あの者は私は古市の子分ということは知つておりましたですが、年も二十以下の者でありまして、それで多少酔つてつたのではないかと思いますが、その当時コツプをただ警官を目掛けて投げつけたというだけだから、引受人があればこれは將來のために一應保釈してもよいじやないかと、或いは執行猶予にしてもよいのじやないかという考えで保釈したと思うのですが、実はこういうことがあるのであります。どうもこういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、あのとき担当の檢事は山本檢事だと思いましたけれども、何か毛利檢事でしたかが、実はあれは古市の子分で、自分がマーケツトで酒を飲んでおるときに私の顏を撲つた奴なんだ、後でわしが檢事だということを聞いて謝つて來たけれども、ともかくそういう人間を檢事局で起訴して犬糞的に実刑を科するということになると、わしとしても実はその犬糞的にやつたように思われるので、何かそこを考えて貰えないだろうかというようなことがありましたので檢事の意見に左右されたわけではありませんけれども、まあ私としてもこの事件は何しろ十八、九の若者が軽卒にやつたことで相手は警察官であるけれども、警察官も多少何か非難さるべき点があつたよう事件でありまして、私はまあ執行の猶予は受けるだろうとこういう考えでやつたわけであります。別段何もその間に事情はありません。
  864. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう街の暴力團若しくは顔役、從來封建的な團体ですね、團体の一員に属する者が街でこういう暴行を働いたということはその事実は小さいのですけれども、それが日本の再建に大きな禍をなすということもあり得るのですから、現われた事実は小さいのですけれども他に……それではどうもお忙しいところ……。    〔証人池田九郎君着席〕
  865. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この前に調べました甲府の檢事正の池田九郎さんが再喚問して述べたいことがあるというのでその陳述の機会を與えて貰いたいと、こういうのでずが、許可して御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  866. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは尋ねることにいたします。池田さんですね。
  867. 池田九郎

    證人(池田九郎君) そうです。
  868. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうぞお掛け下さい、何かあなたから先だつて当委員会で証言なさつたことについて何か釈明したいことがあるというお申出がありましたからお聞きすることにいたします。どういうことですか。
  869. 池田九郎

    ○池田證人 この前の一月七日の法務委員会で陳述いたしましたその中に、前科者だろうが何だろうが公共事業のために寄附を貰つても差支ない、こう申立てたことにつきまして、その一点どうも言葉を盡さず誤解を招く虞れがあるので釈明したいと思います。この点につきましては私の考えでは前科者や背徳者から寄附を求めることは好ましくないということは言うまでもないのです。併しそれらの人が本当に改心して懺悔の奉仕として公共事業に浄財を寄附するならそういう寄附を受けるということは道理上差支ないものである、こういう意味に申上げたわけなんです。
  870. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御趣旨よく分りました。我我としても決して過去に間違いがあつたからといつてその人をいつまで経つてもその烙印でその人を評價するという考えはちつとも持つておりません。その人が改められて正しい生活をなさつていらつしやる場合は、その人からいろいろの浄財を得られるとか、その人が公共事業に使うとか、職務に就かれたということに対して何ら異論を挾むものではありませんし、むしろ謹しんでその人のお力を盡して頂くことは結構だと思つております。ただあの事件といたしましては、あなたさんが檢事正というお立場にいらつしやるそれを基本にして考えた場合に、それはいろいろの少くとも商賣上間違いが起り易いいわゆる新興成金の人々らに多額の寄附を求められるということは、世間の疑惑を招く虞れもあるし、且つ又その人達が將來何か起つた場合においては、手心して貰いたいというようなその人達の考えから寄附に應じて來るというような場合もなきにしも非ず、そういうことがまま行われることになりますれば、好ましくないのじやないかと、こういうふうに見ているわけです。
  871. 池田九郎

    ○池田證人 その点は今から考えますれば、幾分か私の方で後から考えて、出過ぎたような行動であつたと、こう批判を受けるような廉があつたかも分りません。
  872. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう御地位にない場合には構いませんけれども、御地位のある場合、且つ又その御地位にある人がその事業の主体になるような場合には、得てして誤解を招く虞れがある。こう考えるのですが……、外に何かお述べになることは……。
  873. 池田九郎

    ○池田證人 私の釈明をいたしたい点は主としてそういう点にあつたのです。
  874. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在はどうお考えになつていらつしやいますか、それで……。
  875. 池田九郎

    ○池田證人 現在といたしましては、勿論前科のあつたり、そういう疑惑を招くような人から寄附を求めるということは、極力いたさないように努めたいと思つております。
  876. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時といたしましてはあなたさんとして、そういう点に思い及ばなかつたというだけに伺つて置いてよろしうございますか。
  877. 池田九郎

    ○池田證人 当時はこういうような批判を受けるというようなことは考えていなかつたのです。
  878. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 多少御思慮がその点に及ばなかつたわけですね……五味ですね。序ですが、五味重造というのが何か誣告で逮捕されたそうですね、その後……それはどの点ですか。
  879. 池田九郎

    ○池田證人 これは最高檢から投書が廻つて参りまして、その事件を取調べで報告せよということだつたので、取調べをいたしましたところが、檢事正に米とそれから餅とモーニングをやつたということを投書に書いてある。その点を調べたところが、それは上村慶一から聞いたと、こういうのですが、慶一なる者は公の席上二、三回顔を合しただけで、何らの附合いがない、そういう事実がない、それで五味を調べたところが、それは次席檢事にやつたのだということを聞いたのだと、それではなぜ檢事正の正を入れたのだと言うと、次席檢事というのでは面白くないから檢事正にしたのだというような事情になつているようですから、誰がそういうように檢事正……池田檢事も、私も池田ですが、檢事正の正の字を誰が入れたのか、それを書いたのは石井というのが書いたと言つたのですが、横内友兼という遊郭の組合長をしておる者ですが、それが、石井というのに命じて書かしたというので友兼を調べて見んと分らない。友兼を呼出したのですが、それは逃走して今おらないので、取調べがまだはつきりしておらないのです。池田檢事としても参議院で取調べがあつたようですし、お米を持つて來たけれども返したという事実があるし、それから餅も返したという事実がある。モーニングなんかも勿論貰つた事実はない。池田檢事にそういう品物をやつたということが間違いである。況んや檢事正とそういうふうにもじつて檢事正にして投書するということも、これも以ての外だというので、それで一應事実取調べのために逮補して拘留しておるわけです。
  880. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今以て留置してあるのですか。
  881. 池田九郎

    ○池田證人 今留置しております。今友兼の行方を探しております。高檢の方へ縣廳の方とも連絡いたしまして友兼を探してよく調べろということで今探しておるわけなのです。
  882. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人がそうやつて自白しておれば、お放しになつてもいいのじやないですか。
  883. 池田九郎

    ○池田證人 本人は自白してないのです。
  884. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それだけの事実がお挙りになつたのですから、今おつしやつたような事実が挙つたのですから……。
  885. 池田九郎

    ○池田證人 そういう事実……そういうように私共は見ておるのです。
  886. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから事実が明らかになつておるのだから……。
  887. 池田九郎

    ○池田證人 友兼を調べたらはつきりするだろうと思うのですが……。
  888. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 友兼が出るまでは留置するわけですか。
  889. 池田九郎

    ○池田證人 留置期間がありますから、期間が來ましたら、その間に出なければ止むを得ない、釈放しなければならんと思つております。
  890. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今おつしやつたところのことだけは、すでにおるものだけで分つたわけでしよう。
  891. 池田九郎

    ○池田證人 その点が本人はどこまでも上村慶一からそういう話を聞いた、こういう主張をしておるのです。上村慶一に聞くと、そういう事実は全然ない、その当時五味重造と会つたこともない、こういう事実になつておるのです。諸般の事情からいえば大体誣告であるということが推察できると思います。
  892. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今逃走しておる者に対してはどの点があるのですか。
  893. 池田九郎

    ○池田證人 それは実際そういうことが間違いであるということが分りながら、投書することが誣告であろうと思うのです。
  894. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれども投書しておることは聞いたというわけでも何でもないのでしよう。書いただけなのでしよう。
  895. 池田九郎

    ○池田證人 書いてやつておるわけです。
  896. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 書いてやつただけのことなのですね。
  897. 池田九郎

    ○池田證人 そうです。
  898. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何だか感じがちよつと酷いようですね。
  899. 池田九郎

    ○池田證人 そうですが。私の方で直接そういう発意をしたわけじやないのです。
  900. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 仮に最高檢がそういうように命令したとすれば、最高檢もちよつと私の方では酷いと思うね。まあ書いてあることは嘘でしよう。我々も調べて見ても、その点違つておる、書いてあることとは違つておると思いますがね。それはそれに対する法律上の責任を與えることは当然のことですから、その点はいいでしよう。何だか留置なさつてやるということはちよつと…まあそこまで明らかになつておれば、最高檢がそういう取扱をしておるということだつたら、ちよつと如何かと存じますね。
  901. 池田九郎

    ○池田證人 それでもう一つは、何故池田檢事の下へ正の字を入れたか、その事実を……。次席檢事じやどうも社会的に面白く、又話が大きくならんので、檢事正を入れたら、正の字を入れたら話が面白くなるというようなつもりで入れたのか、その間の消息を知りたいと思いまして、それも私としては別に関心を持つているわけじやないのですけれども……。
  902. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事はあなたに関することだから、むしろこれは私は要らんことですけれども、思惑はどうかと存じますが、そこまで分つておれば、犯罪の成否には余り関係ないと存じます。如何にも弾圧というふうに感じられますね。
  903. 池田九郎

    ○池田證人 そういうなには毛頭ないのですけれども、そういうような感じが出るとすれば、一つ再考して見たいと思います。
  904. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御再考になつて……。犯罪事実は明らかだと存じますから、我々調べてもその点は明らかと存じている次第ですから、御考慮下すつたらよかろうと存じます。外にお伺いすることは……。
  905. 池田九郎

    ○池田證人 別にありません。
  906. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれを以て散会いたします。    午後四時三十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            大野 幸一君            齋  武雄君            鈴木 安孝君            遠山 丙市君            來馬 琢道君            松村眞一郎君   証人    佐賀檢察廳檢事    正       清水  直君    富山檢察廳檢事    正       大島 染吉君    前盛岡檢察廳檢    事       今野 左内君    甲府檢察廳檢事    正       池田 九郎君