○
松村眞一郎君 そうでありますから、第九條の第一項がすでに
民法の
規定を除外しておるということがいけないと言うのです、私の議論は……。そこで
特別相続分は
原案によりますというと二十八万円になる。私の修正案は
修正意見と申しますか、まだ修正案を出す域にな
つておりませんから
修正意見によりますと、こういうことになる。
農業資産の金額中
民法の
相続分を超える金額というものは
特別相続分にしようというのです。そこで
原案によりますと、一体各
相続人が自分の
相続分が幾らであるかということが分らない、こういうやり方をするというと……。なぜかというと、四十万円の中から二十八万円先に引いてしまいますから、自分の
相続分は幾らであるかということは分らない。私の案は極めて明瞭であ
つて、直ちに
遺産に対して
民法の
均分相続の
規定を適用してしまう。それでどういう結果になるかというと、各子供達の
相続分は十万円であるということは明確になる。
原案ではそんなことは明確にならない。どこに言
つておるか分らない、それではいかん。
民法の
均分の
相続を無視しておる。私のは尊重して入れてありますから、私の
原案の方が
憲法に適しておるということはこれは明瞭です。そこで修正案によりますと、こういうことになる。
農業資金の金額中の
民法相続分を超える金額は、それは
特別相続分にしよう、だから二十八万というものは
農業資産でありますから、その中から四十万のうちの四分の一が皆の
相続分でありますから、その四分の一を引く。そうすると十八万だけが、どうしても
均分相続の金額では賄いが付かん十八万円というものが出て來る。その十八万円を
特別相続分としようというのが私の案です。非常に明瞭なのであ
つて、その十八万円だけを
農業資産相続人に余計に取つたということははつきり分る。そこであとの人間は、あとの兄弟三人は十万円というものを目標にして、十八万円は我々の中から吐出しておるんだということがちやんとはつきり分る。それを今度は第十
二條の
規定によ
つて請求があつたらお返しする。借りる方も貸す方も非常に明瞭である。
相続分は各自十万円であるということが非常に明瞭なのですね。十八万円がこの
特別相続分である。だから自分達は十万円貰える筈であつた。ところが二十八万円を差引いたところの十二万円を三人で分けたことに
なつたということは、はつきり分る。そこでその次に
農業資産相続人の
相続分價額というものをここに書いておる。どのくらい
相続するのか、
原案によりますと、
農業資産の
全額は
相続分になります。これは
特別相続分であります。その外に
遺産から
農業資産を差引いた
價額の四分の一というものの
相続分があります。これは
農林省の出された
原案の
通り書いたのですが、二十八万円は初めから貰
つて置くわけです。これは
特別相続分です。それから四十万円の中から二十八万円を引いたものが十二万円になります。この十二万円を四人で分け取りするのである。
農業資産相続人が幾ら貰うかというと、私の案は二十八万円貰う。
農業資産が二十八万円だから、それだけ貰えばそれでよいのではないかということが私の意見。私の問わんとするところは、何故
原案のごとく三十一万円にしなければならないのか。
農業資産相続人は
相続税を出さなければならん。
運転資金を持たなければならん。それはそういうことは言えます。併しながらそんなことのために
相続分を多くすることは適当ではない。それは
相続人が無一物であると考えることはいけない。
相続人も或る程度の金を持
つていることも考えなければならない。
農業資産を保護すればよいのであるから、
農業資産全部だけを
相続させて
相続税等は別に考えることにすべきである。
農業資産を担保に供して金を借りることも一
方法であろう。
農業資産を保護するのが主眼であ
つて、
農業資産二十八万円以上に
相続分を三十一万円とする
理由はない。差引の三万円というのは何のために三万円としなければならないのか。三万円とする積極的な
理由はどこにあるか。
農業資産の外に何らかの金があつた方がよろしい。併しそれは三十一万円でなければならんという理論にはならない。根拠にはならない。これは即ち
農業資産相続特例法を適用して、
民法の
均分相続の
規定の
例外を設けるならば、
例外はできるだけ制限をし、明確なる根拠がなければならん。残りの十二万円を
均分したから三万円となるのであ
つて、三万円でなければならんという
理由はない。その次に、他の
相続人全員が
農業資産相続人に対する
請求権がどのくらいになるか。
原案によりますと、三十一万円というものをと
つております。それから三十一万円の中から四十万円の四分の一の十万円、十万円というのは
農業資産の
相続人の自分の
民法上の取り分でありますから、ここで
民法を適用することになります。そうして十万を差引いた二十一万というものを余計取ることになる。そうして二十一万の
計算を出して二十一万を三分する。これが他の
共同相続人の
請求権の
範囲としておるのである。然るにこの二十一万という数字には何も根拠がない。私の案によると簡單明瞭なのであります。
特別相続分の十八万というものを初めから終りまで見ておる。十八万だけが
請求権の金額である。
原案は
民法の
均分相続の
原則を
特別相続分ということで初めから無視してかかる立法態度であ
つて、甚だよくないと思う。修正案は簡單明瞭であります。
民法上の
均分相続金額と
農業資産價額との差額、この例では十八万円だけ見ておればよろしい。十八万円だけ余計なものを貰つた。他の
共同相続人は十八万円余計なものを出した。簡單明瞭である。初めに四十万というものを十万ずつ分けておるから、
相続分は非常に明瞭であります。更にこの
原案の間違
つておるということは第二例で御覧にな
つて分ります。第一例は
遺産価額四十万円、
相続人は兄弟四人、
農業資産二十八万円でありますが、第二例は
遺産價額四十万円、
相続人は兄弟二人、
農業資産二十万円の場合であります。そうすると
遺産が四十万円であるから、
相続人たる兄弟二人の
均分相続分
價額が二十万円である。
農業資産が二十万円である。
原案では
特別相続分として
農業資産價額二十万円というものが先ず出て來る。この
全額を
特別相続分として
農業資産相続人のために除外する。これは即ち
均分相続を無視したことになる。私の案は
民法による
均分相続分
價額が
農業資産價額と同じときは、
民法の
均分相続の
規定だけが適用せられるのであるから、第九條において
民法の
均分相続の
規定を私の案では尊重しておる。即ち
遺産相続價額と
農業資産價額と比べて見て、双方ひとしい場合、
特別相続分なるものは
認めない。然るに
原案では、
農業資産價額二十万円というものを、殊更第九條の中に
特別相続分として、先ず
相続分から除外する。これを
特別相続分として
法律にお書きになるのであるけれども、私の案は、この例の場合には
特別相続分ということはないのであるから、即ち
民法の
均分相続の
規定が九條において適用されておることになるのである。次に、
遺産相続分價額はどのくらいになるかということを見ると、
原案によると、二十万円というものは
農業資産として自分が取
つてしまう。これは
民法の
例外として取
つてしまう。その上に残りの二十万円の二分の一を取る。だから
農業資産相続人は三十万円取る。なぜ三十万円にすることが必要なのか。
農業資産二十万円は必要でしようが、三十万円の十万円というものはなぜ必要であるか。第一例では
農業資産價額が二十八万円であ
つて、
相続する金額が三十一万円であ
つて、超過額は三万円である。第二例では
農業資産價額が二十万円であ
つて、第一例よりも少くな
つておるのである。然るに三十万円が
相続さる金額であ
つて、十万円余計に取
つて、却
つて農業資産が少いのに余計に取る、金額が多いのである。
農業資産保護上から考えて
理由のないことである。前の二十八万円のときには三万円お釣りにな
つて、二十万円のときに十万円がお釣りになるのはおかしい。ただ残額を
均分したから、かくのごとき金額になるというだけのことである。理論上の根拠はない。私の案は極めて明瞭なのである。
相続分の二十万円の
價額の
農業資産を取るのです。結局
民法上の
均分相続分と同じになります。だからちつとも
特例の
規定を適用する必要はない。簡單明瞭であります。
その次に、他の
共同相続人全員が
農業資産相続人に対して
請求権がどのくらいあるかというと、第十
二條の
規定を適用して、
原案によると
農業資産相続人が余計に取つた十万円というものを取り返さなければならん。私の案では余計に取
つていないから取り返す必要はない。そのように簡單明瞭である。如何に
原案が
民法の
均分相続の
規定を無視しておるかということがそこでお分りになると思う。私の修正案第九條は、「
農業資産相続人は、
相続財産の
價額に対する
農業資産の
價額の
割合が
民法に依る
相続分を超えるとき、」超ゆるときだけです。ひとしいか、少いときには
民法の
規定を適用して、第九條第一項それ
自身が
民法の
均分を尊重するということです。よくお考え願いたい。無視した
規定がいいのか、尊重した
規定がいいかというと、尊重した
規定がいいということは当然である。この
規定がなければならんということが分ります。修正案を続いて読みます。「
相続分を超えるとき、その超える
割合を
特別相続分として受ける。この場合には
民法の
相続分の
規定の適用については
特別相続分を加えた
割合を
農業資産相続人の
相続分とみなす」。修正案第九條第二項は、「前項の場合には
農業資産相続人以外の各
共同相続人の
民法による
相続分は
農業資産相続人の組続分を控除した
割合につきこれを定める。」これは当然な話である。残りのものを
均分するということである。これは
原案にもあるわけでありますから、跡始末の
規定、第三項、「第一項の場合には
民法第九百三十九條第二項中「他の
相続人の
相続分」とあるのは「他の
相続人の
相続分(
農業資産相続特例法第九條第一項及び第二項の
規定の適用があるときはその適用による
相続分)」、そのときだけでよろしい。そのときはこの
規定にする、「読み替えるものとする。」第十
一條「第二項中「
相続分」の下に「(第九條第一項及び第二項の
規定の適用があるときはその適用による
相続分)を加える」、これは別にただ跡始末の
規定で、要点は第九條の一項で、この一項が、
原案のやり方は、凡そ
農業資産は全部
特別相続分にしてしまうという意味において、
民法の
均分の
相続の
原則をそこで破壊してしま
つている。これは
政府委員が答弁された。
均分の
相続を破つた。私のは破
つていない。超えないときはそれでよろしい。ひとしいときもそれでよろしい。加えたときには
例外にする。
特別相続分とする。凡そ
例外というものは非常に狭くな
つているが、廣くな
つてはいけない。これは
民法の
原則です。
原則を尊重する。
例外はできるだけ必要な
限度に狭くする。これは当然なことであります。殊に先程申しました三万円とか、十万円というものは根拠がない。根拠がないものを振り廻して、
民法の
均分の
相続を破るということは許されないことでありますから、私の申します
通りにしなければならないというわけです。
そこで
理由を読みます。「
原案は
農業資産全額を
特別相続分とし
原則として」、これは
原則というのは、あとから十
二條がありますから、十
二條で入れ合せて附けて、十
二條が直ぐに適用があれば
民法の
均分相続がそのままになる。直ぐに適用すれば……、そこに五年とか、二十年とかという
規定があるのがこれがこの今度の案の要点なのです。それは今
理由書のあとの方で書いてあります。「
原則として
民法の
均分相続の
規定の適用より一應除外するの思想である」一應除外してしまう。それがいけない。「從
つて農業資産價額が
民法の
均分相続分
價額を等しいか、又はそれより少い場合でも
農業資産相続人は
農業資産を
特別相続分として
相続した上に」ですね、
農業資産を保護すべしということを
法律が要求しているんだから、保護するために全部
農業資産特別
相続人の方に渡す。それで沢山でないか。その上にですね、お釣りを付けることが要らないというのです。そのお釣りが又何ら根拠がないというのです。その上にですね、「
相続した上に残りの
相続財産を
共同相続人と
均分相続するというのであ
つて農業資産保護の上からも不必要であり」
農業資産は
農業資産だけ
相続させればいいのであ
つて、その上にお釣りを付けるということは
農業資産の保護の上からも不必要である。若し必要であるならば、これだけの金額が要るということをおつしやればそれでいいのです。金額も何もないからそんなものはちつとも
理由をなさん。そこで「
農業資産保護の上からも不必要であり且つ
憲法の各人平等の
精神に反するものである」、これが要点です。若し第十
二條の
規定がなかつたならばこれは
憲法違反の
法律で、これは最高
裁判所では破棄されております。十
二條でこれを漸く維持しているが、十
二條がなければ、この
農業資産特別法というのは
憲法違反の
法律であるが故に、前の第一回國会に提案のときに我々は反対した。それはあとに書いてあります。で修正案は
原則として
均分相続の
精神を尊重しておる。先程申したように四十万円を十万円ずつに分けてしまう
均分相続の
精神を尊重し、
例外的思想として、これは即ち
特例なるが故に
例外でなければならない。「
例外的思想として
農業資産の
價額が
均分相続分の
價額を超ゆるとき、その超過額だけを
特別相続分として一應
計算するのである、」これは非常に重点になる。一應
計算させる。これで突張
つてしまうというと十
二條の適用がなくなるから、
憲法違反になるから、一應
計算するだけで、一應
計算するのであります。「
原案は
農業資産相続人に対する
利益分配請求権を
認めることによりて(
原案十
二條)
均分相続制の尊重を表示しているのである。」その
通りなのであり、「
特別相続分を
認める以上はかかる
請求権を
認める等の彌縫処置を必要とするのである」、これがなくちや
憲法違反になります。それでその次、「第一回國会提出案に対する司法、
農林両委員会の小委員会の決定の修正案」のように、これは小委員会で決定してしまつた。修正案をちやんとそこで決定しております。そのごとくに「
特別相続分なるものを全然
認めないことがむしろ適当」なんです。それはどういう意味かと言うと、十
二條は二十年間の期限が書いてある。この期限を付けないということが第一回の國会の小委員会の決定なのです。十
二條の
規定はそれと同じものでよろしい。併しながらこの
規定を三年経過してはいけないとか、三年以内にやらなければいけないとか、二十年内でなければならんとかいう、その期限のない、即時に
請求権が成立しているというのが小委員会の修正案なのです。文字には書いてありません。それに今度三年というものを附けて、二十年以内というものを附けること、それ
自身がよくないのです。よくないが、これは
請求権でありますから、若し
均分相続ということに次男、三男という農家の子弟が日醒めておつたならば、必ずこの
請求を直ぐやる。だからまあ暫く
農村における
均分相続の
精神を、どのくらい
農村人は理解しておるかどうかということを私は暫く眺めたい。元來
農林省はこういうような
法律を作ることによ
つて、これは老婆心的の考えだ。こんなことをして日本の
農業の
細分化というものを保持するというようなことを考えておる。その考え方が兒戲に類する。そんな考え方ではいけない。非常に大事なことは、日本の
農業界には
民主主義政治が徹底していないということが必要点です。むしろ
均分相続ということを徹底して、そうして皆が申合せて第十
二條のような
規定が行われるようにやらなければならない。
法律で書くというようなことをなすということは、これは
農林省がまだ封建的の思想を脱却していない証拠なのです。こんなことで日本の
農村を眺めては間違
つておる。日本の
農村はすでにお節介をしなくても
民主主義政治に目醒めておる。だからこの十
二條の
規定もいけない、こんなことを書くのは……。併しながら暫くこれでや
つて見るのもいいでしよう。
請求権をどういう程度において次男、三男が振り廻すかどうか。それから殊に
配偶者、
配偶者というものは三分の一の
相続分が
認めておる。農家の
配偶者がどんな態度をとるかということを私は暫く眺めたい。そういう意味において、眺めるということで十
二條の意味があるのであ
つて、こんなものがなければ日本の
農業資産というものは維持できないというようなことを考えておるならば、農民を侮辱するものであるということを私は断言いたします。そんなことは考えておりません。もつと進んでおる。こういう封建的思想の、老婆心的の
規定を必要とすると考えておるその頭を脱却しなければならないということを申は申上げます。そういう意味におきまして私は修正の意見を持
つておるのでありまして、修正案として適当なときに提出いたします。
説明を聞く必要はない。私はこの案それ
自身がな
つていないから、そういう意味において修正案がちやんとできておるのでありますけれども、修正案としての提出はいたしませんが、これは討論のときに出しますから、こういう
修正意見を持
つているということで、そこで委員の方々に御研究願いたいのは、
原案と私の案とをよく比較して頂いて、どうちがいいかということを、
言葉は甚だ過激なことを言
つておりますが、それは結局
農村を尊重しておるからです。私は
農村こそ民主主義的に進んでおると思う。御親切ではあるけれども、余り
農村を見くびるような御親切はして頂きたいない。こういうことであ
つて、もう少し
農林省のお考えにも
農村を尊重して欲しい。それで
均分相続の
憲法を
精神をできるだけ尊重しなければならない。それが民主主義を徹底するゆえんであるということを申上げて、一應
修正意見を申上げます。