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1949-05-21 第5回国会 参議院 文部委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月二十一日(土曜日)    午前十一時開会   —————————————   本日の会議に付した事件國立学校設置法案内閣提出衆議  院送付) ○文化財保護法案田中耕太郎外十六  名発議) ○教育職員免許法案内閣提出衆議  院送付) ○教育教員免許法施行法案内閣提出  衆議院送付)   —————————————
  2. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 只今より委員会開会いたします。國立学校設置法案につき質疑を続行いたします。速記を止めて……    午前十一時一分速記中止    ——————————    午後零時三十九分速記開始
  3. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を始めて……。それでは、これで休憩いたします。    午後零時四十分休憩    ——————————    午後二時三十六分開会
  4. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは只今から委員会を再開いたします。  先ず本文部委員会の多数の諸君の御提案になりましたところの文化財保護法が本委員会に付託されました。その審議を開始いたします。先ず提案理由を主として、この案の原案の起草に御関係になりましたところの諸君にお願いいたします。
  5. 鈴木憲一

    鈴木憲一君 文化財保護法案議員によつて提出される運びになつたのでありますが、主として文化小委員会がその当初よりこれに関係しておりました関係上、私が極く簡單にその要領について提案理由を説明したいと思います。文化財保護法案の主要点及び主要な特色について先ず申上げたいと思います。  本法案の主たる目的はどこにあるかと言いまするというと、第一に文化財保護行政機構統一強化を第一に目的としたというところにあるのであります。  第二点といたしましては、文化財保存に関する國宝保存法と、重要美術品等保存法を廃止して、多くの点からこれらに改正を加えた点にあるのであります。  第三点といたしましては、文化財を單に保護するだけでなく、必要に應じて公開することによつて國民文化的教養向上を図ろうという点にあるのであります。  以上三点に主要な本法案目的を置いたのであります。尚本法案の主要なる点について以上申述べたいと思うのであります。  先ず総則について申上げますれば、第一がこの法律目的であります。「國民の間に存する文化的遺産保存し、且つ、必要に應じ公開することによつて文化國家建設に寄與し、あわせて世界文化の進行に貢献することを目的」としたのであります。  第二といたしましては、文化財保存政府が周到な注意を以て努力し、國民も亦誠実に協力すべきこと及び本法を執行するに際しましては、関係者所有樣その他の財産権を尊重すべき旨を強く規定いたしております。  次に第三点といたしましては、文化財保護委員会の構成であります。委員といたしましては人数が五名、これを決定いたしますには両院同意を得て、文部大臣が任命することにいたしております。事務局につきましては総務部保存部を置く、附属機関としまして專門審議会國立博物館研究所等を設置することになつております。  次に第四点といたしましては、國宝及び重要美術品が過去において非常に多過ぎた、それを再整理する必要があるという点から、新らしい標準によつて嚴選をいたしまして、國宝重要美術品を選択して定めるようにした点であります。  第五点といたしましては、國民文化的教養向上のために、貴重な國宝重要文化財について、所有権を侵害しない範囲内で、新たに公開を勧告し得る制度を設けた点であります。  第六といたしましては、國宝重要文化財について、その保存の完全を期するために、國に委託し得る制度を設けたのであります。  次に第七といたしまして、國宝、その他の重要文化財について、減失又は毀損の虞れあるときは、管理者の選任又は変更、管理方法の改善、防火施設、その他の保存施設、その他管理に関する必要な措置を命じ、又は勧告することができる制度を新たに設けました。その場合に、費用は全部又は一部を國で負担することとした点であります。  次に第八点といたしましては、從來は國宝が破損しておる場合にも、本人から申出がなければ修理できなかつたが、本法案では、國宝及び重要文化財について、修理命令及は勧告をなし得ることといたしたのであります。その場合には、費用の全部又は一部を國庫が負担することといたしたのであります。  次に第九点といたしまして、本法案は、更に國宝について、所有者がみずから修理又は管理ができないときは、或いは不適当なときは、政府が進んで修理管理を行い得ることとした点であります。  第十点といたしましては、環境保全について新たに規定を設けたのであります、最後に第十一点といたしまして演劇、音樂工芸技術、その他無形文化財について、その助成措置を規定し、又政府が全部又は一部の費用を負担して、これを一般に公開させ、以て保存育成を図ることとした点であります。  以上本法案について大畧の提案理由を説明いたした次第であります。
  6. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 外に補足的の説明はございませんか。
  7. 梅津錦一

    梅津錦一君 小委員の一員としてこの法案ができます過程の御了解を頂きたいと思うのです。この法案國会法案であり、而も非常な大部な法案でありますので、この法案作成に参りまするまでに、長い時間と、そうしてあらゆる分野に亘つて調査研究があつたのでございます。特に文化財としての有形無形のものに至るまでの廣汎文化財をこの法案に盛り込みますので、各委員調査研究はもとより、專門、調査員の東奔西走して資料を集めたことに対しましては、深甚の敬意を拂う者であります。尚法制局も、法案に対しまして研究努力を頂きましたことを、この席上から厚く御礼を申上げる次第であります。学識経驗者意見聽取等あらゆる方面亘つて細心の注意を拂いつつ、現在まで参つたのでございますが、その経過につきましては一々申上げなければならないのでありますが、大要左通りに御報告したいと思います。   文化財保護法作成経過文部專門員室)    文部委員会    三回    文部小委員会   四回    文部委員会懇談会 五回    文化小委員会懇談会三回    文部打合会    一回    衆参合同打合会  一回  計十七回(そのほか非公式に衆議院との連絡数回)   内 訳 二月十二日(委)法隆寺金堂燒火に関し政府質問 二月十五日(懇)ブルマー、ギヤラガー両氏を囲み質疑應答 二月二十四日より十日間余に亘り近畿九州、東海、東北、四班に分れ國宝保存状況視察 三月二十四日(委)國宝保存状況視察報告 同   日 國宝及び重美に関する一般調査承認要求書提出 同   日(懇)学識経驗者國宝所有者及び博物館等專門家十三名より國宝保存法改正につき意見聽取 四月一日(文化小委員会保存法改正要綱につき審議 四月二日(打)國宝保存につき文部大臣質問 四月六日(文化小委員会懇談会保存法改正要綱につき博物館関係者懇談 四月七日(文化小委員会懇談会学識経驗者國宝所有者等專門家四名と國宝保存法改正点につき懇談 四月八日(文化西委員会懇談会)プルマー、ギヤラガー両氏懇談 四月十二日(文化小委員会保存法試案につき協議 四月十五日(右同保存法試案につき審議 四月十九日(右同保存法試案につき審議 四月二十七日(懇)学識経驗者國宝所有者等專門家八名より意見聽取 四月二十八日(懇)文化財保存法試案につき審議 五月六日(委) 右同 五月七日(懇) 右同 五月二十日(衆参合同打合会文化財保護法案につき協議  ○本法案は第六次案である。  右申上げましたように、本案ができ上りますまでの原案が六回、只今お手許にありますのは第七次案でございます。七次案ということになつておりまするので、この調査研究の材料はうずたかいものでございますので、それを御覽になりますれば、如何にこの法案作成までに努力を頂きましたかということがお分りになることだと思いますので、以上を申上げまして諸賢の御了解を頂きたいと思います。
  8. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を止めて。    〔速記中止
  9. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を始めて……。
  10. 松野喜内

    松野喜内君 提案理由補足をいたします。新憲法の下に我々議員は、議員の方から勉強いたし調査研究して提案することを必要と考えているものであります。今回の特別國会におきまして内閣側提出法案数は、調べて見れば二百十二あります。而して我我議員の手によつて練つた提出法案の数というものは、衆議院側提出数が十一、我々参議院側提出数が十であります。今日の文化財法案もやはりこの参議院提出法案中の一つであり、過日の年齢に関する法案もその一つであります。我らば議員の使命を考え眞劍考え、先程梅津委員から経過報告がありましたように、我々文部委員会に或いは打合会に、或いは文化の小委員会に、懇談会乃至は衆参合同打合会というふうに、実に十七回もに亘つてこれを眞劍に論議いたしたのであります。でありまするが故に、これこそ國民文化國家建設のために是非提出することが我らの責任であることを思い提出したのでありまして、小委員の一人として、文部委員の一人として、以上提案理由補足をいたし次第であります。
  11. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 私も提案者の一人といたしまして補足的に申したいと思います。  御承知のように最近法隆寺並び松山城その他の國宝的な文化財が燒失し、その他各所に正に消滅に瀕せんとする程荒廃に委しており、一刻も早くこれが保護をいたさなければならない状況のものが國内に多々あるのであります。その上終戰以後聞くところによりますとやはり國民國家の窮乏のためか、重要な文化財國外へ流出するというような虞れも多分にあるのでありまして、この際至急にこの文化財法法案作つて出さなかつたならば、もう時期を失してしまつて、到底後に取返しのつかないようなことに立ち至る。その意味からこの文化財保護法が一刻も早く提出され、そうして公布せられることを必要と思いますので、その点からも私共は今國会にどうしてもこれが成立をして頂きたいという念願の下に、提出した次第であります。  それからもう一つはやはり今までの文化財保護の建前から見ますと、どうも國民一般の関心を集め、それと繋がりを持つような運営が思うようでなかつたというようなことを考えまして、この法案の中にそれらの民主的な氣分を多分に入れるための委員会制を採りましたことも、終戰後日本國情に適應したところの文化財保護の形態を採りたいという切なる希望を盛り込んであるわけであります。  尚この文化財保護を本当にいたしますには、相当大きな財政的な負担が要るのでありますが、現下の國情といたしましてなかなかこれもむずかしい。併しながらこうした法案がなければ、尚そうした裏附けを得ることができないのでありまして、この際やはりそうした意味から、殊にこの二十四年度におきましては、税制改革というような現実の問題が眼の前にぶら下つております。それらの点からもここに大きな財政的な裏附けを必要とするような事業の法案が一刻も早くできておりまして、そうしてそれらの税制改革の一環としてその中へ採り入れて頂くということも非常に必要なことではないかと、むしろそうして行かなければ、この文化財保護も思うようにできない。その意味からもこれは非常に急ぐ問題でございまして、今國会にどうしても提出するように私共議員提出案といたしまして、而してこれが成立希望する意味において提案したものであります。その点皆樣の御賛同を得たいものと思うておるのであります。
  12. 山本勇造

    山本勇造君 幸い大臣が見えておりますのと、それから又大臣衆議院の方に今呼ばれておりますので、大変時間がないそうでありますから、ちよつと私大臣質問をいたしたいと思います。御承知通りこの法案は我々が作つたものでありますから、我々の間においては普通の法案のように質問ということはあり得ない、意見もあり得ないわけでありますが、ただ文部大臣にお尋ねいたしたいことは、非常に長い間多数の回数を重ねまして相当に愼重研究をいたししました結果、この議会といたしましては、恐らく参議院ではこれだけ長い間かかつた議員提出法案はないと思いますが、そういうものを出したわけであります。でこの法案に対し文部大臣としてはどういうお考えを持つておられますか、それが第一点であります。  第二点は、この法案として非常に大事な点でありますが、第九條の、委員会制度になりますについての、その委員の選び方でありますが、「委員は、廣い文化的識見を有する者のうちから両議院の同意を経て、文部大臣が任命する。」こういう條項がございますが、文部大臣が任命するという形になつておりますけれども、実は我々委員の間で非常に研究いたしましたことは、すぐ文部大臣が任命するのでなくて、そうしてできるだけ廣い識見の人を選び上げるためには、文部省文部省考えだけでやるというのではなくして、廣い識見のある人のうちから最もいい人を選び出して貰いたいと、こういうつもりでもう少しこの條文をいろいろ細かに書こうかということが、何度も議題に出たのでありますけれども、併しながら私共もこれを法文化する上でいろいろの困難が生じましたために、大体外の委員会でこういう形式を取つているので同じ形式を取つたのでありますけれども、実際の問題といたしましては、文部大臣高瀬さんのようないい文部大臣のときには信頼していいのでありますけれども、併し如何なる文部大臣が來るか先のことは分りませんので、何か選考委員のようなものでも設けらて間違いのないような形にして、それをあなたが受入れて任命されるというのでもされれば、恐らく委員会同意して貰えるのじやないかと思いますのが、この点が我々としては疑問に思つておりますので大臣意見を伺いたいと思います。
  13. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 高瀬文部大臣からこの法案の提出されたこと全体につきましての御所見を先ず伺い、それから今山本委員の言われました点についての御答弁を願いたいと思います。
  14. 高瀬荘太郎

    國務大臣高瀬荘太郎君) お答え申上げます。國宝その他重要文化財保護の問題は最近非常に重要視されている問題でありまして、殊に法隆寺火災事件以來、各方面からこれが論議され、輿論と殆んどなつているといつてもいい問題だろうと思います。從いまして今までの古い國宝保存法重要美術保存法等では甚だ不十分である。何かもつと強力な、適切な法案が必要であり、これに関する強力な機構、適切な運営が要望されていると考えていいと思つております。從いまして文部省としても、特に法隆寺火災事件以來機構改革運営改革等につきまして極力研究を進めておつたわけであります。そこへ今國会において、特に参議院文部委員会におきまして、この重要な問題を取上げられまして積極的に新らたな法案お作りになるという企てがあるということを聞きまして非常に喜んだ次第であります。次來文部省としても積極的にやるべきことであつたのでありますけれども、文部省がまだ十分に準備もできないうちに参議院文部委員会において非常に面倒なお手数を厭わないで、迅速に法案お作りなつたということにつきましては、文部省、つまり文化財保護責任官廳といたしましては非常に感謝しているものであります。今度でき上りました法文につきましては、私は一通り拜見をいたしておりますが、甚だ結構な法案であると考えております。先程も御意見が出ましたように、無論この法案に盛られております機構運営等につきましては、いろいろのやり方がございまするし、やり方によりましては非常に厖大な予算も必要になつて來るし、又やり方によりますればそれ程予算を要しないでもやれるというものだろうと思います。理想といたしますれば無論これに対する新らたな予算要求いたしまして、十不手の届くような運営をしたいということが当然でありますが、現在の経済情勢からいえばすぐそれも実現不可能でありますから、予算の甚だ貧弱なままで出発しなければならないということで、その点は残念でありますけれども、併しこの新らしい機構によりまして、新らしい運営を強力に適切にやつて参りますれば、今までの國宝その他の文化財保存機構その運営よりも遥かに効果を挙げまして、輿論要求に副い得るだろうと私は確信いたしておりますので、この法案が本國会において是非成立いたしまして、できるだけ早くこれが執行できるように、私自身希望しているところであります。  次に第九條の委員の人選の問題につきまして、山本委員から御質問がありました。無論法案立案者であります文部委員方々愼重にお考えなつてこ法文お作りなつたわけであります。その精神只今山本委員からお述べになりましたところでよく私も了解いたしましたし、又私自身といたしましても、こういう重大な任務と責任を持ちます委員選考は、極めて愼重に行なわなければならないということは当然考えておつたところでありまして、只今山本委員の御意見と全く同感であります。つまり委員選考につきましては、この法文にありますように、その責任が十分果せるような、廣い高い識見を持つた方を選ばなければならないということは当然でありまして、それについて文部大臣独断で以て勝手に選ぶというようなことはこれはできるわけでもありません。やはり法案精神に從いまして、各方面意見を徴しながら、最高の適任者を選ぶという方法を採るより外ないと思います。それにつきましては、山本委員からお話がありましたように、やはりこういう委員選定についての高い識見をお持ちになつておられる方々にお願いをいたしまして、委員のようなものを作つて御相談を願うというより外なかろう、決して文部省独断にこういうことを決めようということは私は考えておりません。そうして又どうせ國会承認を得なければならないというのでありますからして、國会はつまり輿論の代表でありますから、文部省愼重に選びました委員候補者について、又國会國会としても権威識見を以て批判をされるだろうと思います。決して立案の御精神を蹂躪するようなことはないと、又しないだろうと私は考えております。
  15. 山本勇造

    山本勇造君 只今大臣から大変懇切な御答弁を頂きまして我々は大いに安心をいたしました。殊にこれが通過いたしました際は、大いに御努力をされることをお願いするわけであります。そこで今の選考の場合でございますが、これらは希望でございますが、文部省といたしては、大臣独断でやらない、そうして愼重選考委員会作つておやりになるというようなお話でありますが、人によりますと、その選考委員会に又疑問を持つ人があり得ると思うのでありまして、そういう点に疑問をできるだけ少くしますように、これは私の希望でございますけれども、各党から出るというと又なかなかむずかしいと思いますので、取敢ずその選考委員会準備の会としまして、文部大臣両院文部委員長と三人でまず選考委員を選ばれて、そうしてその選考委員によつて適当な委員が選ばれて來るようになすつたら、いろいろこの問題について心配されることも、それだけの用意をされれば、大体御心配がないのじやないかと思う。これは私個人の意見でありますけれども、ちよつと申上げて置きます。
  16. 高瀬荘太郎

    國務大臣高瀬荘太郎君) 了承しました。
  17. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは、文化財保護法案につきまして別に御発言ございませんか。
  18. 大隈信幸

    大隈信幸君 ちよつとその前に一言……。私も文化小委員の一名といたしまして、本案作成に当つたわけでありますが、この際一言希望を申上げたいのですが、先程藤田委員からいろいろお話しがありましたが、その中で、施設或いは天然記念物といつたようなものについてお話しが触れなかつたのでありますが、將來こういう問題もこの法律において取扱われるように我々深く希望していることを申上げたいと思います。それから尚この際この法案作成につきまして非常なる御努力を下さいました文部委員会專門員の三名の方、法制部の方並びに関係事務局方々に対しまして、深く感謝の意を表したいと思うのであります。我々がこの法案作つたのでありますけれども、その陰にありまして非常なる御努力を頂いたということは、委員諸君もよく御存じのことであります。ここに重ねて篤く感謝の意を表したいと思います。(「異議なし」「同感」と呼ぶ者あり)
  19. 梅津錦一

    梅津錦一君 この委員会が当初この問題を取上げたのは、法隆寺の問題によつて刺戟されたことは事実でありますが、先國会開会中、各委員がこの國宝並びに重要文化財方面に対しまして調査したわけであります。この調査の結果が、この文化財が多くは温存されている、非公開のまま温められている、而もそのために重要な國宝であるということは分つているけれども、その國宝の内容を分つておらない、見た者もないと、こういうようなところが、その重要文化財非公開のものを公開して廣く國民の生活の中に滲透させて行く、言い換えれば、こうした文化財を生活して行くというところに狙いがあつた筈であります。尚こうした重要な文化財が、法律ができないために散逸するという、この散逸を防衞しようではないかということも申合わせてあつたように記憶しております。尚正倉院の例も引合いに出たと思いますが、この正倉院のような、ああいう文化財日本に温存されておることは確かでありますが、ただ單に日本文化財ばかりでなくして、廣く人類文化財である、世界文化財であると、こういう廣汎意味が織込まれておる筈なんです。この法案日本法案でありますが、この法案によつて世界文化財保護するための施策でもあるということがこの趣旨にあつた筈であると思う。尚無形文化財であるところの、例えば雅樂だとか文樂とかいうものはすでに衰微の兆にある、こういうものも文化財としてどうしても保存して置かなければならないということを強調しておつたと思うのでありますが、この法案國会を通過いたしますれば、單に日本の仕合せばかりでなく、世界人類のために仕合せである、世界人類のための貢献もできるという廣い意味を持つておるので、ここまで來たことは非常に私は仕合せだと思いますが、この委員会の各位の努力によつて、本國会でこれが満場一致を以て通過するようにお互いの御努力をお願いしたいとこう考えるのであります。
  20. 松野喜内

    松野喜内君 一言速記に留めて頂きたいことがあります。  幾回も重ねられた委員会で述べられたごとく、國宝國宝のみでなく文化財廣まり保存のみでなくこれが利用方面のことにも進展いたし、宝の持ち腐れであつちやならない、即ち文化財をば文化のために文教普及のために活かして活用せねばならん、こういう議が段々委員会の方において度重ねて論議されたことを思い出す次第であります。これは特に我々は文部委員といたしまして、文教普及刷新に鑑み、我々の持つた文化財をより有効に教育上に活用したい点があつたことを、これを記録して置きたいから申添える次第であります。
  21. 鈴木憲一

    鈴木憲一君 先程の提案理由補足いたしまして、一点御了承を得たいと思う点があるのであります。それはこの法案の中に当然加えるべき事項であつた一つは、税の問題であります。その税の問題は御承知のごとく、現在非常ないろいろの関係がありまして、敢て加えなかつた次第でありますが、それは近き將來において当然加えるべきものであると考えるのであります。でこの法案が非常に重要なものであると同時に急を要するものであるという点からいたしまして、若しこれが実施の上修正を要するというようなことがあるならば、近き將來においてその税の部分をこれに加えなければならない、そういう際に修正が行わるべき余地がここに存しておるのでありまするから、そういう意味を以ちましても成るべく早くこの案が全会一致を以て御賛成を得、通過いたしますように特にこの際附加えて申上げた次第であります。
  22. 若木勝藏

    若木勝藏君 私はこの法案の出たことを非常に喜ぶものであります。それは單なる机上で考えたところの法案ではなしに、全く各方面亘つて文部委員が出張調査の結果得たところの資料が全部盛られまして、例えば保存方法につきましても、或いは公開の問題にいたしましても、我々は視察をして実際を見て來ておるのであります。そういうものが血となり肉となつてこ法案に盛られておる、そこに私はこの法案の他の法案に比べて誠に画期的な部面のあるところであろうと思うのであります。我々といたしましては、ぜひこの法案を通したいものである、こういうふうに考えた次第であります。
  23. 高良とみ

    ○高良とみ君 私共の会派といたしまして、この文化財保護法が今日のごとき廣汎又徹底した法案に、一同の努力によつて盛り上りましたことを心から関係諸賢に感謝するとともに、どうかこれがよく國民の間に滲透して、眞に文化財を愛護して行く運動の元になることを希望いたす次第であります。廃墟の中から起ち上つた國家といたしまして、いろいろな改革が行われますけれども、未だ文化を立法によつて基礎づけて行くという努力は僅かしかできておらないと了解いたします。それだけこの福化財保護法というものは、始めの國宝保護法或いは古文化財保護法というような、名前の持つてつた性質からもつと廣くなつて参りまして、今後文化國家、平和國家として國民が守り、以て教育し更に世界の文運に貢献する基礎となる素材であることをよく示しておると思うのであります。私共教育の全般に目を通しておりまして、その枠ができましても、その中に内容として流して行くべきものについては、芸術とし、或いは思想とし、或いは技術といたしましても、幾多世界に認められ得るもののあることを、國民と共に自信を持ちまして、どうぞこの文化財保護法が、更によく発展強化の役を果すことを信じ、本法案両院が眞に理解して一日も早くこれを施行し、又今後十分な予算が取れて、本当の文化國家の実を挙げることを期待する者であります、以て私共の賛成の意を表する次第でございます。  この文化財保護法成立しませんならば、現下の國際情勢及び財戰國の経済事情から、再び民族が得ることのできない大切な文化財が荒廃崩壞に瀕し、海外へ流出散逸する虞れが十分にあります。國民経済の沒落が、文化的遺産をも廃墟に陷らしめることは、子孫に対して又廣く世界文化に対し、我々の重大な責任が生ずることになります。この法律によつて文化財保護愛護して、更に新らしい平和的文化建設に向つて、勇氣と自信とを回復し、教育と産業の源といたしたいものであります。
  24. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 他に御発言はございませんか。
  25. 松野喜内

    松野喜内君 この文化財保護法案につきましては、我々全委員が協同しての提案でありまして、質疑應答又討論この要なしと思いまするが故に直ちに表決に入られることの動議を提出いたします。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  26. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 只今の松野君の提出されました動議に御異議がございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 御異議ありませんければ質疑並びに討論を省畧いたしまして直ちに採決に移りたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 本案に、文化財保護法案に御賛成の方の御起立を願います。    〔総員起立〕
  29. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 全会一致と認めます。よつて本案は可決いたしました。  尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、委員長に御一任願いたいと存じます。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それから議院に提出する報告書に多数意見者の署名を附すことになつておりますから、本案を可とせられる方は順次御署名を願います。   多数意見者署名     松野 喜内   高良 とみ     若木 勝藏   木内キヤウ     鈴木 憲一   藤田 芳雄     深水 六郎   堀越 儀郎     山本 勇造   梅原 眞隆     梅津 錦一
  31. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 署名漏れはございませんか……、署名漏れはないと認めます。  一言委員長といたしまして感想を述べさせて頂きます。第五回國会は甚だ多事でございまして、六三制予算の大問題がございましたし、又多数の教育関係の重要法案が参つておりまして、文部委員の各位におかれましても、非常な御努力を拂つて日夜御奮鬪しておいでになるのであります。その間にです。かような重大な文化財保護法案が、皆様方の眞劍なる御努力により生れまして、そうして今日本委員会で可決せられましたことは、更に感慨無量で、委員会の各位に対しまして、深く感謝申上げる次第であります。又その外感謝申上ぐべき方々は沢山ございますが、先程も大隈君からおつしやいましたからして私は蛇足を附加えません。かような法案、これは私卒直に申しまして、世界において劃期的なものと思います。或るアメリカの專門家がすでに國宝保存法でも非常に優れておる、世界に余り例のないものだということを言つておられました。これは更に更に先程も皆様からお話がありましたように、何歩も進めておるものと存じますので、これこそ本当に日本文化國家としての非常なる体面を維持するのみならず、高めるものじやないかというふうに存じておるのでございます。そうして法案原案作成に当りましては、先程実地調査、專門家の意見を聽く、あらゆる点におきまして用意周到になされて、五次案六次案というような案を重ねたような次第でございます。我々が限られた時間において衆智を集めてなすべき限度にまで達しておるのではないかと思います。ただ本議会におきまして非常に切羽詰つて今日漸く可決せられるようになりましたことはいろいろ原因はございますけれども、併し衆議院に対しまする極めてデリケートな心づかいからこうなつておるのだということも言えるのじやないかと思います。願わくば衆議院の方のおいてもこのデリケートな心づかいを十分アプリシエートされて、そうしてこの法案を通過されるということをこの際我々は特に希望して止まない次第であります。一言私の感想を申上げましてそうして皆様方に感謝いたします。(拍手)
  32. 若木勝藏

    若木勝藏君 大臣が今おいでになる間に、二三分でようございますが、私緊急の事項について伺いたいと思います。一昨の日本会議におきまして、河野議員から緊急の質問があつた事項に関してでありますが、いわゆる教員の地方議員兼職の問題であります。林副総理並びに文部大臣から地方自治法を緩和して改正したい意向であるという御答弁があつたのであります。ところがこれは期限が最早六月三十日と迫つているのでありまして、それまでに間に合うように改正せられるか、その点をはつきり伺いたいのであります。
  33. 高瀬荘太郎

    國務大臣高瀬荘太郎君) 間に合わないと何にもならないということになりますから、間に合わせるという方針で極力やつております。   —————————————
  34. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは次の議題に移ります、教員免許法並びに施行法につきまして審議を御継続願いたいと思います。ところで修正案が前回提出されておりました。これはGHQの方から〇・Kが参りましたそうであります。如何でございますか、これについて審議を進行いたしますか。
  35. 梅津錦一

    梅津錦一君 今のお話では〇・Kが來たということだそうですが、先程ちよつと耳にしたのですが……
  36. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記止めて。    午後三時二十七分速記中止    ——————————    午後三時四十二分速記開始
  37. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは速記を始めて……。審議を継続するや否やについて採決をいたします。  教育職員免許法並びに施行法をこの際継続してやることにつきまして、御賛成の方は御起立を願います。    〔起立者多数〕
  38. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 多数と認めます。それでは継続して審査をいたすことにいたします。
  39. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 只今教育職員免許法並びに教育職員免許法施行法案審議も段々終りに近ずきまして討論を終結しそうになつたのでありますが、ここに両法案に対しての修正案が出ておるのでありますが、若しもこの修正案が通らずに、原案そのものが通つたものと仮定いたしました場合、教育職員免許法の第五條の一項の第四号及び施行法の九條の一項の二号、「禁こ以上の刑に処せられた者」とありますが、一度禁錮に処せられたらすべていけないというのではなしに、刑法及び民法ですでに時効が参り、そうしたものがなくなつたときには、これに縛られないのであるという点を一つ明らかにしておく必要があると思う。それから同じく教育職員免許法案の第五條の第一項の第六号及び施行法案の第九條の一項の四号、「日本國憲法施行の日以後において、日本國憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壞することを主張する政党その他の團体を結成し、又はこれに加入した者」とあります、いわゆる「暴力で破壞することを主張する政党その他の團体」は、今現在現存しておる政党及び團体には該当しておらないのであるというふうに考えるのでありますが、その点に対しての御当局の御意見をお聞きしたいと思うのであります。
  40. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 前段の御質問についてでありますが、禁錮以上の刑に処せられましても、先般の刑法の改正規定によりまして、禁錮以上の刑に処せられて執行を終りました後に、罰金以上の刑に処せられずした十年以上を経過いたしました場合には、刑の言渡しはその効力を失うという規定がありますので、その規定の適用によりまして今申しましたような状態に立至れば免許状を得る資格が生ずるものと解釈いたします。  後段の御質問に対しましては、現にこういう結社があるかどうかは実の分らないのであります。先般御質問にお答え申上げましたように、或いは秘密綱領その他秘密的に策動をいたしておりまする場合もございまするし、又憲法違反等の問題につきましては、問題によりますれば、最高裁判所の判定を得なければ決定しないという法律上の性質を有する場合もあります。そういうようなわけで、現にこういうものがあるかないかは分らないのでございます。
  41. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 店六号の日本國憲法云云の條項でありますが、私のお聽きしましたのは、「政党その他の團体」というのは、これはすでに今現在といたしましてはそれぞれ届出がある筈であります。だから私の聽きますのは、正式の届出をしてある政党及び團体にそうしたものはないのではないか、ないと認めて差支ないのじやないかということをお聽きしましたのであつて、その蔭にまだ何かあるかないかというようなことをお聽きしたのではない。この点に誤解のないようにもう一度お伺いいたしたいと思います。
  42. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) そういうふうに了解いたしまして、只今のお答えを申上げたのでございます。
  43. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 どうもはつきりしないのですが、それならば、今現在届出られておる政党の中にもそうしたものがあるかも知れないというお考えの下に、この條項が入れておるということなんですか。
  44. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 現にはつきりあるという前提の下にこの條項を設けたのではございません。
  45. 梅津錦一

    梅津錦一君 政府の道徳的、人権的な見解を聽きたいと思うのですが、禁錮以上の刑に処せられた者が、その刑を終つて何故に教職員に就けないかという見解を聽きたいと思います。
  46. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) これは長い沿革のあることでありまして、旧小学校令、國民学校令、又中等学校以上につきましては旧免許令が制定いたされました明治十九年以來こういつたような内容の規定があつたのであります。恐らくこういう規定を設けましたのは、教育職員として教育を以て國民全体に奉仕すべき人の資格につきましては、その資格について重要な制限をする必要がある。例えば別に裁判官、或いは判事、或いは檢察官というような官と同様な程度について、こうした欠格條項を設ける必要があるという見解を以て、從來の規定も設けられたんだと考えまするし、今日この規定につきましても、そうした考えを以て制定いたした次第であります。
  47. 梅津錦一

    梅津錦一君 そうするというと、禁錮以上の刑に処せられた者は十年間の期間を経なければ、刑が終らないということになるのですね、教員だけは……。他の職においては就き得ると思うのですが、特に十年という長い期間を置いてそうして職に就けないということは、これは明治憲法、旧憲法によつて作られたところの法律が、まだそういつた法が生きておる。それを政府は是正しないでここに持つて來たのは、聊か了解に苦しむのですが、そういう意味で先程も御質問申上げておりますように、言いかえれば、道徳上の問題と基本的人権の問題である。言いかえれば、一旦刑を受けた者は十年間刑罰を受けた者と同じような取扱いをやはり受けておる。こういうことに対して、政府は新らしい憲法上の解釈からこれをどう考えるか。それに対しての御見解を文部大臣に今度はお聽きしたいと思います。
  48. 高瀬荘太郎

    國務大臣高瀬荘太郎君) 只今の御質問の問題は、実はこの法案だけではありませんで、裁判所の場合でも、警察官の場合でも、制限がおかれておるのでありまして、一般的に基本的人権を排除するというわけではありませんで、特に必要のある場合に制限が加えられるという解釈であります。
  49. 梅津錦一

    梅津錦一君 裁判官或いは警察官は司法官であり或いは行政官である。それでは裁判所の司法官でないところの職員、或いは警察官の中で司法行政官でないその他の職員、そういう者に対してこういう規定があるかどうかをお伺いしたいと思います。
  50. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 裁判官、檢察官、弁護士、或いは公安委員と申しましたように、普通の國家公務員以上にそうした資格について重要に考うべき性質の職については、こうした例があると考えております。
  51. 梅津錦一

    梅津錦一君 その点をはつきりしたいと思うのですが、例えば裁判所の單に事務を取扱つておる者、或いは警察官としても警察官でない警察の事務をやつておる者に対しては、こういう法は適用されておらない。然るに教職員は明らかに行政官ではない、司法官でもないのに、司法官、行政官と同じような取扱いを受けるということの法的見解、或いは憲法上の解釈をお聽きしたい。私はこう思うのであります。
  52. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 教育基本法におきましても、第六條に「学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は尊重され」云々の規定がございます。それ程教職員という者は他の仕事と比べまして尊重もしなければならないし、又その資格についても嚴重に考えなければならない性質のものだと思つております。
  53. 鈴木憲一

    鈴木憲一君 先程藤田委員から質問がありました点でありますが、六号の件ですけれども、これに当てはまる政党や團体は現在ないとお認めになつておるのですが、その点をお伺いいたします。
  54. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 先程の藤田委員にお答えいたしましたように、あるかないか分らないとお答え申上げた次第であります。
  55. 鈴木憲一

    鈴木憲一君 將來に対する心配のためにこういうものが書かれておるのではないかと考えられるのです。現在当てはまるものがあるかないかというようなことは言明されないのでありますが、私の推測するところでは、將來かかる心配があるものを、今ここで規定しておく必要があるのだというふうに思つておられるのじやないかと思うのでありますが、そこまで心配する必要が一体どこにあるのでろうかというふうに私は思うのであります。殊に我が國の本來の新らして行き方から考えましても、そういつたような行き方は実に不明瞭で困る。もつとすつきりした立場を取らなければいけないのじやないかと思うのです。殊に教職員に対してそういつたような不明瞭な氣持を持たせるということは、將來非常に心配の種だと思うのであります。もう少し政府としては、現在これに当てはまるものはないのだけれども、將來を心配するためにこういうものを置くのだとか、或いはその他何人も納得するような有力なここに六号を置く理由を、いま少し明確に挙げられたいと思うのであります。その点をお伺いいたします。
  56. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 繰返して申上げるまでもないと思いますが、日本國憲法は國民の総意を以て成り立つておりますものであり、政府もその憲法の基礎に合法的に成立いたしておつて國政の運営に当つておる。それを非合法な手段で破壊しようと主張する政党、或いは團体に教職員たらんとする者が加入しておるというような状態は、教職として不適格な條件であると考える次第であります。
  57. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 先程から聽いて、非常におかしいと思つて聽いておるのでありますが、現在あるところの政党及び團体でこれに該当するものがあるかないかは分らん、がその反面言いますというと、ないということは言い得ない、あるかも知れない、ということのように聞えるのです。多分そうだと思う。若しそうだといたしますと、これは重大問題でありますが、一体政府として、この新憲法下、暴力で破壊するような疑いのあるものがあるものを、なぜはつきりさせないで、あるかも知れないというような言葉で濁しておくのであるか。若しそういう疑いがあるならば、早速それを糺明して、一日も早くそうしたものは取り除かなければならんと思う。それを現在そうした動きも何もないこのときにおいて、あるかも知れないというような発言があつたのでは、ちよつと聞き捨てにならん問題だと思うのでありますが、何か影にそうした疑いをさしはさむだけの材料なり、或いは資料なりがあつてのことなんであるかどうか。その点もう一遍伺います。
  58. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 或る政党において、明白に綱領として掲げる場合もあるかも知れません。この場合においては、恐らくそういう政党があるかないかは明白であろうと思います。祕密調綱領を掲げる場合においては、現にありましても、それが了知し難いという状態はあり得ると思います。或いは又一連の或る政党の行動が、結局帰するところ一つの基本方針に基くという推定の原因となる、そうした場合には、その政党はこの法規の関係につけられて來る政党であろうと思います。こうした状態は、発達もし変化もする性質のものでありますので、そういう意味において、あるかも知れない、ないかも知れないということを先程申上げたわけであります。
  59. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 この條項は、今ここで免許状を與えるか與えないかという資格を決定するものであります。そのときに、今現在の政党が祕密綱領を持つておるかも知れないというような建前で政党を見たならば、これはどの政党も否認しなければならない、政党と名の付いたところへ入つた者は皆いけない、民主自由党であつても、社会党であつても、共産党であつても政党と名の付いたもので祕密綱領を持つておるかも知れんという予想を持つならばどの政党もこれに該当して來て、いわゆるこの欠格條項に一應ひつかかつて來るということになる。そうすると教員の資格を得ようとする者は、すべてそうして政党なり、團体の中へ入つてつたのでは、ちよつと資格を得るに困難であるということに帰著するかと思うのであります。その点如何でございましよう。
  60. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 只今の御質問は先程の御質問と性質が違つて來たように拜聽いたします。只今の御質問でありますれば、これを適用いたしまするにつきましては、客観的に明らかな場合に限ります。先程の御質問はこの法を制定する趣旨は、現にはつきり具体的に或る政党があるのかという御質問でしたから先程のように御説明申上げました。これを適用する問題とは別だと思います。
  61. 梅津錦一

    梅津錦一君 私は第二國会だと考えておりますが、無所属懇談会の羽仁五郎君が質問演説をやつたのですが、そのときには多分この問題のような日本に地下政府的な、第二政府的なものがあると考えるが、政府はそういうものを知つておるか、或いはそういうものがあるかという質問に対して、完全にそういうものは現在の調査ではないと答えておる。然るにこの免許状の問題に対しては明らかにそういうものを予定しておる、予測しておる。そうするとあの第二國会のときから現在まで非常な情勢の変化がある、そういうふうに政府考えておるのかどうか。第二國会のときよりも、今度の第五國会に至るまでのこの期間において、そうした地下政府的な、言い換えれば祕密結社のようなものが予想される、こういうようにお考えか、お考えでないか、その時間的な問題を取上げて御回答を願いたいと思います。
  62. 左藤義詮

    政府委員(左藤義詮君) 大分微妙な問題になつて來たので私からお答えしたいと思いますが、現在の合法政党と申しますか、正規の手続をしております政党につきましては、私共は第二國会以來変化はない、さようなものはないと信じておるのでありますが、ただ政党の変化と申しますか、如何なる祕密綱領を掲げるるようことが起り得るかも知れませんので、さようなことを申上げたのでありまして、現在の合法政党につきましては、私共はこの條項に当嵌まるものはないと信じております。
  63. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 今の左藤政務次官のお話で明らかになつたようでありますけれども、先程私の質問に少し違いが出て來た。要するにあとの質問は、それは今この法案を適用するについてのものは又別であるというお話があつた。そういたしますというと、現在それを適用するといたしますと、現在届出られておる政党及び團体に入つてつた者、或いは結成したものであつても、現在のものは今これを適用するには何ら欠格に該当しないと解釈してよろしいですか、もう一遍お伺いします。
  64. 左藤義詮

    政府委員(左藤義詮君) 現在の段階におきましては、只今藤田委員が御解釈の通りと存じます。
  65. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 若しそうだといたしまするならば、現在の政党に加入しておつたというようなことで、こうした免許法に該当するような者にはやらないというような事態が若しありとすれば、それに対して政府はどんな手を打ちますか。
  66. 左藤義詮

    政府委員(左藤義詮君) 現在の段階におきましては、さような事実はないと存じますが、併しその政党が將來秘密綱領その他一連の暴力で破壞するようなものと最高裁判所等において認知されました場合にはこれは適用されると思います。
  67. 藤田芳雄

    藤田芳雄君 今現在ある政党ですね。その中に入つてつたために貰われなかつたという事実が若しありました場合に、政府はどう処理なさるのかその点を……
  68. 左藤義詮

    政府委員(左藤義詮君) さような事実によつて免許状を、この免許状を施行いたしまして、免許状を與えないということは政府はないつもりであります。
  69. 若木勝藏

    若木勝藏君 昭和二十二年の三月三十一日にできました学校教員法の第九條に、校長及び教員になれない者が規定してありますが、その欠格條項に比べまして今度の免許法案における欠格條項が、僅か一年ぐらいの間に非常に苛酷になつておる、その理由はどういうところにあるのでしようか。今第六号に該当するような者があるかないか分らんというふうなことが論じられておつたのでありますが、そういうふうな者があるかないか分らんというようなことを言つておられるけれども、大分その方面を予想してこういうふうに苛酷な欠格條項を決めたのじやないか、こういうふうなことも考えられるのであります。その間の事情について……
  70. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) そうした公務員の資格等を定めまするその後の各種の立法令を参照いたしまして、それと比較考量の上こうした原案を決定いたしたのであります。
  71. 梅津錦一

    梅津錦一君 大体話は分りましたが、この第六号の問題ですが、この法案で免許状は結局保障される。併しながら某政党に属する者が教育委員会の横槍で公職に就けなかつた、赴任できなかつたという例がありまするので、この法案とその教員委員会との関連において、こういうことを抑えられるかどうか、その見解をお聽きしたい。文部省にそうした教員委員会に対しての制圧権がないとするならば、これを楯に取つて將來某政党に属する者は採用しないという例が発生する虞れがあるかないかを私はここでお聽きしたいと思います。
  72. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 本法案第十九條におきまして、授與権者のなした処分に対しまする文部大臣の監督の方法はあるのでございます。
  73. 若木勝藏

    若木勝藏君 私の先程の質問に対する答弁に対して非常に私は不満があります。と申しますのは、今度のこの法案において、欠格條項を決める場合に、いろいろなその他の方面との振合に上これを決定した、こういうふうなお答えであつたのでありますが、教育文部省においてはそのように常に考えておられるのかどうか。
  74. 稻田清助

    政府委員(稻田清助君) 教職員と他の一般國家公務員、或いはその他資格を有する者というような点につきまして、こうした資格要件について比較考量をいたしますることは、私共として必要なことだと考えております。
  75. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 如何でございますか。御異議ありませんければこの程度で質疑を終了いたしたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは質疑はこれで以て終了いたします。それで討論に入りますが、御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。尚修正の御意見もございましたらこの際お述べを願います。
  77. 梅津錦一

    梅津錦一君 教育職員免許法に対する修正の動議を提出いたします。    〔「動議に賛成いたします」と呼ぶ者あり〕
  78. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは修正の御意見のお述べを願います。
  79. 梅津錦一

    梅津錦一君 お手許にあるところの教育免許法に対する修正案を提出いたします。提案者は私以下の六名でございます。   教育職員免許法の一部を次のように修正する。  第五條第一項第四号から第六号までを次のように改める。 四 長期六年の禁こ以上の刑の処せられ、刑の執行を終り、又は刑の執行を受けることのなくなつた後、二年を経過していない者 五 長期六年未満の懲役又は禁この刑に処せられ、刑の執行を終り、又は刑の執行を受けることのないことに至らない者 六 免許状取上げの処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者  尚教育職員免許法施行法案に対する修正案も、同樣提案者は六人であります。   教育職員免許法施行法案の一部を次のように修正する。  第十條中第九條の改正規定第二号から第四号までを次のように改める。 二、長期六年の禁こ以上の刑に処せられ、刑の執行を終り、又は刑の執行を受けることのなくなつた後、二年を経過していない者 三、長期六年未満の懲役又は禁この刑に処せられ、刑の執行を終り、又は刑の執行を受けることのないことに至らない者 四、免許状取上げの処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者  以上の修正案でございますが、先程來の政府に対する質問によつて了解が行くと思うのでありますが、以上の問題は、私は受刑者が教育職員にふさわしくないという考え方は、持ちたくないと思う。非常にこの人道主義的な考えかも知れませんが、既に刑を受けたことによつて、その人はもうそれだけの贖罪をしておるのであつて、罪の上に罪を塗る、その罪を負つた者に対して又鞭打つというような考え方は、新らしい憲法の建前から考えたくない、私はこう考える。何故ここに二ケ年という時を置いたかと申しますならば、囹圄の身を六年もやつておれば、大体世の中の状態が暗い、だから直ぐに複職させるということは無理である。だからこの二年間の勉強によつて世の中の変化、並びに忘れておつたこと、或いはその他の教育、教授上必要な素養をそこで作り上げる、この素地を作るということのために、二年をここに置いたのであつて、決して刑罰的の意味で二年と考えたのではない、この二年間の勉強によつて再び教壇に立てる、教育教授ができるに必要な期間であると考えて、二年間を置いたのでありまして、決して懲罰的な意味でこの二年を考えておるのではないのであります。尚第五條の第六項の問題でございますが、こうしたことを、ちようど見ない化け物に驚いているというような日本人の不見識をここから取りたい。こう考える。新憲法によつて大きく飛躍し、民主主義の理解が廣く深まつて行くところの日本國民、特に教育職員の資格を持つ者に対して私は絶対信頼したい。若しこういう考えがあるならば、日本はそのときに破壞されておるのだ、私は破壞ということを考えたくない、建設のみを考えて、そうした消極的な面を考えたくないというので、強い自信と強い信仰とを以て教職に当つて貰いたいために、第六項は削除して貰いたい。こういう意味でこの修正動議を提出しておるのでありますが、御了解頂きまして、教育職員にこうした暗い影、少くもこうした暗いものの考え方をさせたくない。正々堂々と民主主義の大道を歩むということにおいて、何らの影はない。こういうような強い自信と信仰を持つために、こうした消極的な面を全面的に取つて頂きたい。これが私の意思であり、私の教育職員に対する信仰であります。そういう意味で諸賢のこの動議に御賛意を頂くことを強く希望申上げまして、私の提案理由といたします。
  80. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 別に御発言はございませんか。御発言がございませんければ、只今梅津君が教育職員免許法に対する修理案のみならず、教員職員免許法施行法案に対する修正案もお述べになりました。これは便宜上両法案を同時に一括して議題といたしまして、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それではさよう取計らいまして、先ず両法案に対する梅津君外数名の方の修正案につきまして、採決をいたすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは採決をいたします。梅津君の修正案を議題に供します。修正案に賛成の方は御起立を願います。    〔起立者少数〕
  83. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 少数と認めます。よつて梅津君等の提出の修正案は否決されました。   —————————————
  84. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 次にこれは衆議院修正された原案でございますが、教育職員免許法案並びに教育職員免許法施行法案を議題に供します。衆議院修正された原案につきまして採決をいたします。衆議院修正されて参つたところの両法案に賛成の方の起立を願います。    〔起立者多数〕
  85. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 多数と認めます。それでは両法案は多数を以つて議決せられました。尚本会議における手続きその他につきましては、從前の例によりまして、処理することを御了解願います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 尚署名等も型の通りお願いいたします。   多数意見署名     松野 喜内   左藤 義詮     高良 とみ   大隈 信幸     木内キヤウ   深水 六郎     山本 勇造   堀越 儀郎     梅原 眞隆
  87. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) それでは速記を止めて。    〔速記中止
  88. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を始めて。
  89. 鈴木憲一

    鈴木憲一君 動議を提出いたします。只今堀越委員から速記の件がありましたが、次の委員会でも速記は取れるものと思いますので、本日はこの辺で閉会いたされたら如何かと思います。動議を提出いたします。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  90. 堀越儀郎

    ○堀越儀郎君 この問題については早く文部当局の意見も院外に知らしたいという切なる希望があつた筈でありますから、私はできるだけ早い機会においてこれをやられることを希望いたします。
  91. 鈴木憲一

    鈴木憲一君 その件については最前こちらの方でも非常に希望があつたのにも拘わらず、その言を採り上げられないで今の免許法に移られたのでありますから、この際私の動議に御賛成をお願いいたします。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  92. 堀越儀郎

    ○堀越儀郎君 これはこちらの問題だけでありまして、先程海津君の希望で院外に早く知らしたいというふうな切なる御希望もあつた筈でありますから、そのことはお変りにならんだろうと思いますので私は継続を希望いたします。
  93. 松野喜内

    松野喜内君 堀越委員意見に賛成いたします。
  94. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を止めて。    〔速記中止
  95. 田中耕太郎

    委員長田中耕太郎君) 速記を始めて。それでは今日はこれで散会いたします。    午後四時二十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     田中耕太郎君    理事      若木 勝藏君            松野 喜内君            木内キヤウ君    委員      梅津 錦一君            深水 六郎君            大隈 信幸君            梅原 眞隆君            高良 とみ君            堀越 儀郎君            西田 天香君            山本 勇造君            鈴木 憲一君            藤田 芳雄君   國務大臣    文 部 大 臣 高瀬荘太郎君   政府委員    文部政務次官  左藤 義詮君    文部事務官    (学校教育局    長)      日高第四郎君    文部事務官    (教科書局長) 稻田 清助君   法制局側    法 制 局 長 奧野 健一君