○
専門員(
竹内敏夫君) では簡単に御
説明いたします。第五
國会に提出せられました
文化財保護法案は短期間に急いで作成されましたふうな
関係で、万全を期しましたけれども尚檢討すべき点が相当ございまして、殊に免税その他の
財政関係の
規定はいろいろな
事情、例えば
シヤウプ勧告案というものの確定がなか
つたというようないろいろな
関係で以て、これを意識的に削除してあ
つたわけでございます。第五
國会におきまして、本
法案は
審議未了となりましたが、直ちに
國会の終了後、その
修正、或いは檢討すべき点につきまして、
専門員、
法制局が共に提携しまして、この研究を始めたわけでございます。この
法案は以上のように
審議未了となりましたけれども、併し
新聞その他で殆んど
一般に周知徹底いたしましたので、期せずして各
方面からこの
法案につきまして、いろいろの
批判、助言、陳情、請願、或いは
意見などが出まして、いわば最も大規模な
公聴会の機会を得たようなわけであります。そういうふうないろいろな各
方面からの
意見の中で、最も注目すべきものとして我々が参考にいたしましたのは、大体次のようなものでございます。
その第一は
近畿都市観光連盟協議会の
意見書、第二番目は
京都府の
教育委員会の
意見書、これは五月九月と、九月十六日とに二回に互
つて非常な詳細な
意見書が参
つております。更にその
意見書につきましては、
京都府の
國宝保存課長が自身二回も上京いたしまして、我々と十分に懇談いたしました次第であります。第三番目は
奈良縣の
教育委員会の
法案改正の
要望意見書、第四番目は
國立博物館職員組合の
意見及びその
修正案、第五番目は
京都府の
観光連盟会長の
要望書、第六は
京都府の古
文化保存協会の
陳情書、第七は
日本学術会議の
意見書、第八番目は東
京都の各
新聞、それから
京都の
都新聞と
京都新聞、
大阪毎日新聞等の各
新聞に掲載されました論説とか或いは社説、第九番目は
文部省の
文化財保存課の
意見、第十といたしましては先般作成されました衆議院の
重要文化財保護法案要綱などでございました。以上の各
方面からの
意見とか或いは
批判を総合し、これを体系化しまして、参議院の
法制局と共に
修正案の
要綱の作成に着手いたしまして、大体先週を以て具体的な
條文化も終りまして、元の
法案の七十五條が百
八條に膨張いたしました。
本日は取敢ずその
要綱につきまして、
修正の要点を
簡單に御
説明いたしまして、更にいろいろな
法律的な問題につきましては、第一部長或いは
岸田課長から御
説明があると
思つております。お
手許に行
つておりますので、
文化財保護法案の
修正要綱を、大体初めの方から
簡單に
説明を申上げたいと思います。
第一は
総則でございますが、この
総則において、元の
法案の第三條には大体
文化財の
定義を述べておりましたですけれども、これを更に檢討いたしました結果、もう少し
文化財の
範囲を拡げるのが適当ではないかというふうな点から、その第一といたしまして、
文化財の
定義を少し拡張いたしております。それはそこに書いてございますように、傍線を附けてあるものが大体追加されたものでございます。例えば庭園、それから書跡、典籍、
民俗資料、それから最後の
考古資料とい
つたふうな点については、大分前の
原案よりもその
範囲が拡が
つております。殊に
考古資料というものが附加わりましたのは、この法希の、後から申上げまするように、
修正案におきましては、埋
藏物というものを包含いたしたいというふうな点から、これは單なる歴史とか或いは藏術とかそういう
文化と、人間の作
つたものというようなもの、例えばいろいろな骨格とかその他のいわゆる
考古資料も含むところの
可能性があるものですから、そこで埋
藏物の
規定を入れた以上は、そういう
可能性も考慮いたしまして、
考古資料というふうな問題もそこに附加えたわけでございます。
更にもう
一つ「
文化の
模範」という
言葉をそこに新らしく使
つたわけでございますけれども、これは前の
原案におきましては、第三條においては
國民的遺産として重要なものというふうな
規定がございました。ところが
文化財保護委員会の下には
博物館というものがおりまして、その
博物館におきましてし、
現代美術のやはり展覧ということも相当大きな
仕事にな
つておるものですから、そういうものを全部含めるという
意味におきましては、
國民的遺産というふうに限定いたしますことは少し狹いというふうな点から、
文化の
模範というふうな
言葉を使
つたわけでございます。
その次(二)の方では「
政府の
任務」の
規定を「
政府及び
都道府縣の
任務」というふうに拡げたのでございます。これは前は
法案におきましては、第
二條の問題でございます。これは後程御
説明いたしますように、
都道府縣が
文化財の
保存におきましては非常に大きな役割を演じております。殊に
京都府とか
奈良縣におきましては、非常に大きな
仕事をいたしておりますので、そういうふうな
都道府縣の大きな
仕事を、大きな
文化財保存行政の
事項を
規定すると同時に、やはりそこに
政府の
任務と一緒に相並んで
都道府縣の
任務というふうな概念を挿入することが適当じやないかというふうなわけで、「
都道府縣の
任務」という
言葉を入れたわけでございます。
その次に(三)におきましては「
政府の
事業」の
規定を削除いたします。それは
政府の
事業と申しますのは、大体現在の
法律的な
用語におきましては、いわゆる
事業官廳というふうなものの場合におきましては、「
事業」という
言葉を使いますけれども、
一般の
行政官廳におきましては「
事業」という
言葉はちよつと行き過ぎではないかと思いまして、そこでこの「
政府の
事業」というふうな
規定を削除いたしまして、その
規定を
委員会の方に持
つて行きまして、「
委員会の
任務」というふうにこれを
規定しようとしているわけでございます。
その次第一の(四)といたしまして、「
文化財の
所有者の心構をも
規定すること。」これは現在の元の
法案の第四條におきましては、單に「
國民」というふうに書いてあ
つたわけでございます。ところがこの「
國民」の中には勿論
文化財の
所有者を含むという解釈だ
つたわけでございますけれども、併し
文化財保存において一番活躍しておるのは、やはり
文化財の
所有者ですから、それを先ず全面的に最初に出して來て、そうしてそれと
一般國民、それから
政府というところのこの三者が協力して
文化財の
保護に当るというふうな
心構えを
規定することが適当ではないかというふうに、いわば
文化財所有者の
主体性というものを尊重して行きたいというふうなことが、その第四條の
規定の中に
文化財の
所有要の
心構えをも
規定したいと思
つたわけでございます。
その次第二でございますが、これは元の案の第二章に相当するわけでございますが、この
文化財保護委員会の
規定を整理いたしまして、更に加えるべきものは加えることにいたしまして、相当そこに大きな
修正を加えたわけでございます。殊にそれを更に四節に分けまして、「
総則」「
事務局」「
附属機関及び
出張所」及び「職員」ということに
はつきりと節に分ける方が理解がし易いのではないかということで、先ず節に分けることにいたしました。前の
原案におきましては節の区別がなか
つたわけでございます。
その次(二)の
委員会の「
所掌事務」というところは先に申しましたように「
任務」の
規定にいたしまして、そこに
はつきりと
委員会のいわゆるすべきところの
事業その他のことを
規定しようというわけでございます。
その次(三)といたしましては、「
総務部と
保存部の
所掌事務につき埋
藏文化財に関する
事項を追加する外若干の
字句修正を加えること。」これは大体
原案の十七條、十
八條の
関係の
條文を更に整理いたしまして、それから埋
藏文化財の所掌をどこに置くかというふうな事柄をここで以て
はつきりと
規定し、それから整理して行きたいというふうに考えたわけでございます。
その次(四)といたしましては「
專門審議会の
名称を「
文化財專門審議会」とし
建議権、
必要的諮問事項及び
部会の設置を明記すること。」これは現在の二十三條に
関係するところでございます。それで
原案におきましては、單に「
專門審議会」というふうな抽象的な
名称でございましたのを、これはやはり
はつきりと「
文化財專門審議会」というふうに
規定する方が至当であろうというわけで、「
文化財專門審議会」という名前をつけたわけです。更に
原案におきましては、この
專門審議会は任意に
諮問に
應ずるというふうに
規定されておりますが、併し実際におきましては、それは必ず
諮問されるでしようけれども、併し
法律上
はつきりと
專門審議会というものを必要的な
諮問機関として
規定して欲しいということが各
方面の
要望でございましたから、そこで
專門審議会の必要的な
諮問事項、例えば
國寶の
指定とか、そういう場合には必ず
專門審議会に
諮問しなければならないというような
諮問事項を列挙して、それを明確にいたしました。更に
建議権というものを認めまして、この
專門審議会にはいろいろな專門家が沢山おります。そこで積極的に今度は
諮問を受ける前に建議をするという、そういう権限を與える、更に
部会の
規定は、前の案におきましては
委員会規則に任しておりましたのですけれども、併しこれを
はつきりと
法律において
部会という
組織を
規定した方がいいんではなかろうかというふうなことで、
專門審議会に関する
條文の
整理修正をいたしました。
その次に
國立博物館と
研究所は、やはりこれは前の
原案におきましては
委員会の規則で定めることにな
つておりましたのですけれども、併しこれも
はつきりと
專門審議会と同樣に、これを政令で以てその
内部組織を
規定する、而も
名称もやはり具体的に「
文化財研究所」というふうに
規定する、それから内部的な
組織の方は、共にこれは政令で
規定することにして、その地位を尊重するというふうな事柄にこれを
変更いたしたいと思たつわけです。これは大体前の
原案におきましては二十一條と二十
二條の
関係でございます。
その次に新しく加えました
規定といたしましては、第(六)としまして、所要の地に
委員会の
出張所を設け得ることとすること。」、これは今度の新機構におきましては、
博物館は
專ら陳列というのが
中心的な
仕事でございますから、
從來各地の
博物館の分館というものもやはりこれに
陳列事務その主要なる
所掌事務になるわけでございます。ところが例えば
近畿地方というような、非常に
文化財の
中心的な
地方におきましては、どうしてもやはり
地方出先機関としまして、直接
地方と接触するところの
委員会の
出張所を設ける方が便宜だろう、これは殊に
近畿方面においては一致した
要望でございましたから、この
委員会の
事務局の
出張所を設けるという新らしい
一つの
方面を附け加えたいと思
つたわけであります。
その次に第三の、
國寶その他の
重要文化財の方の
規定においては
大分修正或いは
変更を加えました。先で等一にやはりこの第三章も、
原案におきましては章だけであ
つて、節の区別がなか
つたわけでございますが、これを更に明確にいたしますために五節に分けまして、「
指定」、「
管理」、「
保護」、「調査」、及び「雜則」というふうな五節の区分を設けまして、その理解を助けるというふうにいたしました。今度内容に入りますと、最の
原案の第二十六條におきましては、
重要文化財の
定義といたしましては、「有形の
文化財のうち特に重要なものとして國が
保護する必要のあるもの」というふうな
規定を設けていたわけでございますけれども、併しながら
重要文化財というものの
價値は、それ自体の内面的な
價値が
中心であ
つて、それを
中心として
指定さるべきものであ
つて、國がこれを
保護することの必要があるというようなことは、例えば非常にいたんでおるとか、そういうふうな
方面から何か誤解され易いというふうな、例えば非常に完全な場合におきましては、別に、國が
保護する必要がないわけでございます。そういう点からその内容的な
價値を
中心といたしまして、これは
有形文化財のうち、重要なものというふうな
方面から
規定した方がいいのじやなかろうか、これもやはり各
方面からそういうふうな
意見が出ましたものですから、それに從
つたわけでございます。それから同樣に今度は
國寶の場合におきましても、二十七條におきましては、前の
原案におきましては、「世界
文化的に
價値の高いもので、たぐいない
國民の宝として國が特別に
保護する必要のあるもの」という、やはりこれが國の
保護ということを
一つの標準としてこの
國宝というものの
指定ということを考えてありますけれども、これもやはりより一層内面的な
價値に
從つてその
國宝というものを
指定する必要があるのではなかろうかというふうなわけで、特に一國が
保護する必要のあるもの」というものを拔かしまして、そうして
規定を
修正いたしました。併しこれは
一つ皆さんの十分な御
意見を承りたいと
思つております。
その次、(四)の問題といたしましては、これは前の
原案におきましては、二十
八條の
関係でございます。これは現在におきましては、
國宝を
指定いたします場合においては、單に一片の
通知書が向うに送られるだけなんでございます。その
通知書もいわば
國宝であるというところの、
一つの
鑑別書であ
つて、その
通知書というもので以ていわば
國宝というものの
價値が世間に公示されるというふうな
関係にな
つておるわけなんであります。ところがその
通知書というのは、いわば葉書一枚であ
つて、これは到底
國宝というものの判別、いわゆる
鑑定書としては実に不十分なものであり、それを紛失した場合におきましては、
文部省の解釈においては、
通知書は二度出すところの必要はないというわけで、紛失した場分においてはそれきりにな
つてしまうというふうなわけなんでございます。そこでこれは、
一般的に是非とも
指定書というものを、
指定した場合におきましては、正確にいろいろな
方面からその
國宝というもののアイデンテイフイケーシヨンというものを
規定した
指定書というものをつけた方がいいんじやないかというふうなわけで、
指定の場合においては、
指定書を交付するというふうに、この二十
八條に更につけ加えて、そういうふうな
規定を設けることにいたしたわけであります。
その次(五)といたしましては、「
所有者に対し
管理方法の
指示をし得ることとすること」これはこういうふうな問題でございます。それは、この
原案におきましてもそうでございましたけれども、
國宝の
所有者の
管理の仕方が非常に不十分な場合においては、
政府の方からいろいろな
管理命令を出すことができるというふうな
規定があけわけなんでございます。ところが一体どういう程度で
管理したならば十分であるかということは、これは
はつきり分らない、そこで必要な場合においては、この
國宝はこういうふうに
管理することが
基準であるというふうなその
管理の
基準を示しておけば、その
基準に照らして不十分な場合においては
政府においてその次の措置をとることができるというふうなわけで、この
國宝の
所有者に対しては
管理方法の
指示をするというふうな必要な場合においては
指示をするとすうふうなことを
規定したわけでございます。
その次に(六)は、「
所有者の
管理責任を明記すること」これは前の
條文で申しますと、二十九條の
管理責任者に関するところの
規定に少しつけ加えたいと思
つたわけなんでございます。それは、この
國宝の
所有者が
管理の
責任を負うということは、
法律上は当然な問題なんでございますけれども、併しながらいろいろな
心構えとか、いろいろな
規定を置く以上は、先ずその
所有者に対して
はつきりと、第一位の
管理責任者は
所有者であるということを特に明記することによ
つて、その
責任の自覚を促すというふうに、これは当然なことであるけれども必要だろうというふうなわけで、この二十九條に更にそういう
規定を一項目つけ加えたいと
思つておるわけであります。
次に(七)は、
國宝とかその他の
重要文化財の
所在の
場所の
変更については、届出の義務を
規定する、これは前の
法案においていわば脱落しておるわけなんでございます。これはいろんな考慮もあ
つたために、拔かしてお
つたわけなんでございますけれども、そうして單にその
所有権が移轉した場合だけは
屆出るという
規定にな
つておるわけでございます。ところが実際においては
國宝とか
重要文化財の
管理は、
所在の
場所が
はつきりしなければ、実際においては、その
保存ということを図ることはできないわけであります。單に抽象的に
所有権者というものの
変更ということでは、
所在を掴むことはできない。そこでその
所在の
場所を
変更した場合においても、
屆出るというふうなことにいたしますならば、
一般の
行政廳におきましても、その
管理において万全を期することができるのではなかろうかというふうにいたしまして、ここに
所有者の
屆出の義務を
規定いたしたわけでございます。
その次に第(八)は
所在者が
管理又は
修理について、経費の
負担に堪えない場合等、特別の
事情のあるときは、その申請によ
つて補助金を交付し得るところの途を設けると共に、
補助の
條件を付し得ることとし、かつ
補助にかかるところの
管理又は
修理については、
指定或は監督し得ることとすること、この第八の
規定は、これもいわば前の
原案におきましては脱落してお
つたわけでございます。それは結局そういう場合においては、
政府が常に
管理又は
修理について心配する、そうして必要な場合においては
命令するとい
つたふうな
方面において、大体うまく行くだろうと
思つてお
つたわけなんでございますけれども、併しながらやはりこの一万何千点に上るというふうなそういう多数の
國宝とか
重要文化財につきましては、やはりその持主みずからが
管理又は
修理について心配する、そうして必要な場合においては、
政府の
命令を待たずして、自発的にいろんな修繕をする、その修繕をする場合において、不足ある場合においては、経費などがどうしても不足するという場合においては
政府に申請するというふうに、これもやはり
所有者の
主体性というものを認めまして、
所有者が
告示管理責任者として常にその維持、
管理について心配しなくちやいけないというふうなことを
はつきりとその
條文に
規定いたしたいと思
つたわけなんでございます。
その次の(九)は、
管理又は
修理の
命令をした場合において、そこへちよつと拔けておるところがございます。「
管理又は
修理の
命令した場合及び
政府による
修理等の直接
施行の場合の
費用は」というふうに、そこに入れて頂きたいと思います。「
全額國庫負担とすることを改めて、
費用の全部又は一部を
國庫負担といること」これは大体前の
原案におきましては、四十一條の第二項四十
二條の第三項、四十三條の第三項に関する
條文なんでございます。これは
政府の方から
修理又は
重要文化財の持主が非常に怠慢であるとい
つた場合には、
却つてその
全額負担をしてやるというふうな、何だか怠慢を奬励するようなことになるんじやないかという疑問も起りますものですから、そこでそういう場合においては、怠慢と認められる場合において、併しながら
修理の必要の場合においては、一部
國庫で出して、あとはその
所有者に補償し、
所有者をしてこれを
負担せしめる、その他いろんな裁量の余地を残すために、全部又は一部の
負担とするというふうにこれを変えたわけなんでございます。
次は第(十)は「
政府による
修理等の直接
施行の場合
修理及び
修理中の
管理の
責任者を定めねばならないこととする。」これはこの前の法隆寺問題において我々は苦い経驗を嘗めておるわけなのですけれども、
政府が直接
修理等を
施行する場合においては明確に
管理責任者を決めて置くというふうにすることが、現在において最も必要であるということは、これは当然なことでありますから、そこで四十三
條関係において、その直接
施行をする場合においては
管理責任者を定めるということにいたしました。
その次の(十一)は、
現状変更の
許可については
條件を附し得ることとし、
條件の違反に対しては
現状変更の一時
停止又は
許可の
取消しを命じ得ることとする。これは前の
法案の三十二
條関係でございまして、
現状変更をする場合におきましても單に
現状変更を許すというだけでは、どの程度に向うが
現状変更するか捕促ができない。非常に行過ぎる場合も随分あるだろうと思いますので、そこで
現状変更の場合には必らず
條件を附ける。その
條件に違反した場合においては
停止又は
許可の
取消しをするということで、これを仰えて行こうというふうなわけなんです。
その次の(十二)は、
管理のみならず
修理についても
委員会が
委託を受け又は
委託の
勧告をなし得ることとすると共に、
所在者の
申出によ
つて管理又は
修理に関する技術的な
指導をすることができる旨を明記すること、これも
原案におきましては單に
管理だけにな
つておりましたけれども、併し実際考えて見ますと、むしろ
委託を受ける必要があるのは、丁度法隆寺のようにして、これは
修理の場合ではなかろうかというふうなわけで、
修理等の場合においても、これは
所有者が自発的に
委員会に向
つて修理の
委託をすることができる。又その場合において
委託の
勧告をすることができる。こういういうふうな
修理を
方面に手を拡げて行こう。更にそこまで行かない場合におきましても
所有者の
申出によ
つて管理又は
修理に関する技術的な
指導をすることができる旨を明記したい。これは
委員会におきましては技術的なエキスパートが非常に多いわけなのでございます。そこでそういう場合においては、いわば
サービスといたしましていろいろな
修理又は
管理についてはできるだけ積極的な
サービス機関たるところの機能を発揮さしてやりたいというふうなわけで、これは全然新らしいところの
規定として技術的な
指導の
規定を設けて行きたいというふうに考えておるわけです。
その次の(十三)は、
出陳という
言葉を
出品にこれを攻めると共に、
出品について
所有者側からの
申出の途を設ける。この
出陳と申しますのは、これは現在の
國宝保存法におきましては、
博物館に品物を出して、そうして
公開するということを特別に
出陳という
言葉を使
つておるわけです。併しながらこれは随分古臭い
用語でございまして、これは
博物館の方からも
出品に変えて欲しいというようなわけで、それで
出陳という
言葉を廃めまして
出品という
言葉に
変更いたしました。更に前の
原案におきましては、常に
出陳の場合には
命令とか
勧告というふうに
委員会の方からいつも動いて行くというふうにな
つておりました。これもやはり
所有者が
一般の人に見せて上げたいとい
つたふうな主体的に動くということは当然考えなくちやいけないというわけで、この
出陳の場合においてもやはり
所有者側の
申出を認める、その場合には
費用その他は
政府が
負担し、それから一定の
補給金は、これは当然與えるというふうに
規定いたしたいと
思つておるわけです。
その次は同樣に(十四)といたしましては、
公開について
所有者側から
國庫の
費用負担において
公開したい旨の
申出の途を設けると共に、その場合の
公開について必要な
事項の
指示権を明記し、且つその
指示の違反に対しては
公開の一時
停止又は中止を命じ得ることとする。
公開の前の
原案におきましてはいつも
委員会の方から
勧告又は
命令するというふうなことにな
つておりましたが、これもやはり当然この
所有者の方で以て自発的な
公開ということを考え、而もその場合には必らず
費用が要りますから、それは
政府で持
つてやることができるということにいたしました。次にこれは
申出た場合においてはいつも
政府がその
公開をしてやるという
意味ではなくして、
政府はその場合においては適当にその判断をいたしまして、
政府がこれの
費用を
負担してやる。その
費用を
負担した場合においては必要な
事項の
指示権というものを明記して、その
指示に違反した場合においてはいろいろな適当な措置を命じ得ることにいたしました。
それからその次の(十五)は、これは全く新らしいところの
一つの
規定なんでございます。これは御承知のように、例えば
新聞社あたりが日本の
國宝などを非常に大量的に集めましていろいろな展示会というようなものを開きます。その場合に若しも万一のことがあ
つた場合には、直ちに大量的にその
國宝というものが滅失又は毀損するというような心配があるわけです。而も現在の現行法におきましては、第三者そういうふうな
國宝の大量的な
公開をするという場合につきましては、何ら取締りの規則かないわけであります。そこで
所有者以外の者の行うところの
公開については、これは
許可制度ということにいたしまして、その
許可の場合においてはいろいろな
條件を附すること、例えば防火の設備とか、それからいろいろな番人とか、その他いろいろな
條件を附する。そうしてその
條件に違反した場合においては、
公開の一時
停止又は
許可の取消を命じ得るということにいたしました。
その次の(十六)は、
委員会は
國宝とか或いは
重要文化財の
指定に当
つては、又は
保護のために
所有者からいろいろな報告を聽取し、或いは実地調査の権限を認めるということは、これは実はこの前の
原案を作成いたしました時においてはいろいろな問題がありまして、一應削除してあ
つたわけなんでございます。ところがいろいろな世論と申しますか、
意見の方では、
所有者以外の一切の
意見といたしましては、実地の調査ということろの権限を認めないと実際は
保護はできないのじやないか、その
指定ができないのじやないかというふうな心配を皆しておられるわけであります。そこでこれは一應そういう
規定と設けてみたらどうでしようというわけで、ここに一應挙げたわけです。併しながらこれは
関係方面とのいろいろな折衝、或いは委員の方々の御
意見によりまして、これは又更に考え直したいと
思つておるわけであります。
その次、第四は、埋
藏文化財の問題でありますが、これはいわゆる古墳とかその他の埋
藏文化財が日本の各所において発見されております。ところがこの埋
藏文化財につきましては日本の現行法におきましては、單に遺失物法というところの
規定がございまして、その中に一ケ條がこの埋
藏文化財について適用されておる。実に不完全な
規定にな
つておるわけであります。それ以外は昔の内務大臣の通牒とか、訓令とか、或いは次官通牒というふうなものとか、そういうもので全部済ましておるわけであります。そこでこれは学界とかいろいろな
方面から埋
藏文化財について詳細な
規定を作
つて欲しいというふうな希望がございまして、これは
法制局の方におきましていろいろな
方面から檢討いたされまして、埋
藏文化財につきましての詳細な
規定を設けることにいたしたわけであります。この埋
藏文化財につきましては、更に後程
法制局の方から御
説明を願うことにいたします。
その次に第五といたしましては、
一般有形文化財につきまして
一つサービスの
規定を設けたい。これは先程申しましたように、
管理又は
修理の場合においても技術的な
指導を求めるということができるという
規定と同一精神で以て、この
委員会も大いに
國宝その他の
重要文化財の
保護に
サービスをして行きたい。現在いろいろな
文化財を持
つておる人が一番問題にしておりますのは、それがどういう
價値を持
つておるだろうか、一体どういう人が作
つたものであろうかということを鑑定し、その他檢定して欲しい、ところがそれはうつかりいい加減な人に檢定し、鑑定して貰
つても実に危ぶないというふうなわけで、幸いこの
委員会は非常にエキスパートが集
つておりますから、その
サービス機関としてそういう檢査を求めることができる、その檢査を求めた場合において非常にこれは埋もれた立派な
國宝であるという場合においては、直ちにこれは
國宝とか
重要文化財の方に拾い上げることができるのでありますから、この檢査というところのこのルートを通じて意外な
國宝というものが発見されるかも知れないというふうなわけで、
サービスを兼ねて同時にこれは
國宝その他
重要文化財の
保存の機能を発揮することができるのではなかろうか。これは全く新らしいところの
規定でございまして、これは
京都の方からそういうふうなサゼツシヨンがございまして、特別にそういう
規定を考えてみたわけであります。そういう場合におきましては、その
有形文化財の
所有者は、当該
有形文化財の
管理又は
修理については同樣に民間に向
つて技術的な
指導を求め得ることといたしまして、その保全の万全を期したわけなんでございます。
その次、第六は無形
文化財でございますが、これも先程から申しましたと同樣に、これは前の
法案におきましては、塩に
政府の方から
命令又は
勧告するというふうな
方面から
規定がございましたけれども、これもやはり当事者側から自発的にその
公開を
申出る、その場合においては
國庫の
費用負担によ
つてその
公開をしてやる。而もその場合においてはいろいろな
條件を附けるとい
つたふうに、当事者側の方の動きももつと尊重して行きたい、それから更に
補助金を交付する場合においてはいろいろな
條件を附け得ることとして、その場合においてはやはり指揮監督をすることが必要ではなかろうか。單に
補助金なんかばかりでは不適当ではなかろうかというふうなわけで、第六の一、二、三というふうな、そういう項目を設けたわけなんでございます。
その次に第七は、
都道府縣の
教育委員会の権限なんでございますが、これは元の
法案の四十四條の
関係なんでございまして、これは先程申しましたように、
近畿地方の
都道府縣におきましては、非常に
文化財保存には
教育委員会の社会教育課が骨を折
つておるわけなんでございます。そこでそういうふうな骨折とか、或いは現在におけるところのそういう活動というものに対應して、この
教育委員会の権限をもつと明確にこれを
條文において
規定することが必要ではなかろうか、これは実はいろんな含みがございまして、そういう
規定が
はつきりといたしませんと現在の
地方自治法、それから
地方財政法の
関係のおきまして、
地方公共團体が
費用を出すということがなかなか困難なわけなんであります。そこでこういうふうに
はつきりと権限を
規定いたしますならば、
都道府縣とかその他の
方面からの
補助もやはり非常に出易いとい
つたようなわけで、これは
地方の
一般的な
要望でございますし、又当然なことでございますから、第七の一から七というふうな非常な廣汎なこの権限委任の明確な
規定をつく
つたわけなんであります。これは大体今まで申上げましたうちの、どうしても府縣の
教育委員会がタツチして欲しいという事柄を
規定したわけなんでございます。
その次、第八は税の減免の問題であります。これは一番最初に申上げましたように、前の
法案におきましては、我々は意識的に削除してお
つたわけなんでございますけれども、一應シヤウプの
勧告案も
はつきりとしまして、そうして大体税制の方の改革の見通しが出來ましたから、そこで是非
文化財保護のためには減免税の
規定を設けたい、その減免税の
規定を設けるということの裏打ちとして、
文化財の
所有者に対しては一定の程度の義務を課することができるわけなんでございますから、そこで是非ともこの税の減免を図
つて、この
文化財が地上の潜るということがないように図りたいというふうなわけで、大体減免税の
規定を設けたわけなんでございます。それは所得税、法人税、それから相續税、入場税、それから
地方のいわゆる府縣民税とか、或いは都民税とかい
つたふうな、そういうふうな項目に亘
つて國宝と
重要文化財と或る程度区別しながら減免税を考えて行きたいというふうなのが第八の大体趣旨でございます。
それからその次、第九といたしましては、次のような処分をするときにおいては
委員会は
公開によるところの聽聞を行う。これは最近の
法律の立法の傾向におきましては非常に聽聞の
規定が多くなりました。そこでこの
法案におきましては相当
國民の権利、その他の
関係するところの
規定がございますから、その重要な場合においては聽聞の
規定を設けて、できるだけ権利の侵害、その他の苦情というものをなくして行こうというふうなので、第一は聽聞
規定を設けた。
その次第二は現在の罰則というものを更にもう少し整備いたしまして、併し余り重くならない程度においてそれを整備する。その次、第三は附則といたしまして、史蹟名勝天然記念物
保存法の
施行を当分の間
委員会に掌らしめる旨の
規定を設けるということ、これは実はこの前の
法案におきましても最初は入れて、その次に出したりなかなかいろいろな問題がございましたけれども、これは最近のいろいろな
方面からの情報によりますと、この
法律は
委員会の下においても差支はないという情勢でございますから、一應これは
委員会の
所掌事務といたしたい。併しながらこれは正面から持
つて來るためには名勝とい
つたふうなちよつち
文化財と縁のないところのいろいろな素材もございますもので、そこで一應附則で以てその
所掌事務といたしておいて、それから然るべくその処置をつけ、或いは
法律を改廃するというような処置をつけて頂くというふうにいたしたわけなんであります。
それからその次(四)といたしましては、先程申しましたように
文化埋
藏物に関する
規定が詳細な
規定ができましたから、現在の遺失物法の中において埋
藏文化財に関するところの
規定は、これは当然改正するところの必要が起
つて來るわけなんであります。
その次備考にございますように、これはお
手許に行
つておりますところの
文化財保護資金特別会計設置
要綱案というものが参
つておりますけれども、この
文化財法にはどうも毎年の
政府の
一般の予算だけに依存するだけでは不十分である。それからいろいろな寄付金なんかが來た場合におきましても、それは特別やはりこの
重要文化財の
保存だけにこれを充てて行くようにしたいというふうな普通財政的な、いわゆる恒常的措置を講ずるためには、やはりこれは特別な資金制度を設けるところの必要があるのではなかろうかというふうなわけで、これは
法制局の方におきまして立案されたわけでございまして、その御
説明は
一つ後から又あれすることにいたします。
大体この
文化財保護法案の
修正、私の方からの
説明はそれくらいにしたしておきます。