○
証人(關忠志君) 関忠志であります。
自分の
意見を申上げます。
この
法案の立法の
趣旨が、第一條においてはつきり「
教育基本法の精神に則り、」云々とあります。この
教育基本法のそれに該当するところを探して見ますと、第七條に、「家庭
教育及び勤労の場所その他社会において行われる
教育は、國及び
地方公共團体によ
つて奨励されなければならない。」ということが明記されておるのです。ところがこの
法案を見ますと、現実に
社会教育を実施しておる団体というものに関して
規定するところは非常に少ないのです。ということは、つまりその
教育事業に実質的に奨励を與えていないということになるのであります。却
つて例えば
補助金を下附の禁止ということを
考えて、下付ということに反対の面のみが目に立
つていうことを先ず感ずるのであります。そういう実際に
教育運動をや
つておるという
團体については、第二章にいわゆる「
社会教育関係團体」というふうにして挙げられておりまするが、現実に第二條にいうような
組織的な
社会教育をみずから実施しておる
團体というものをこれは「
社会教育関係團体」というよりも、むしろ「
社会教育團体」というべきだと思いますが、非常に少ないのであります。
組織的な
社会教育活動とい
つたようなふうなものは、最低の要件として
組織を持
つておるということ、
指導というものがあるということ、はつきりしたプログラムを持
つておるということ、そういうものは少なくとも最低の條件だと思うのでありまするが、そうい
つたものを持
つて現実に
社会教育というものをや
つておる
團体は、例えば
從來の名前で言うと地域
青年團の中にあるものとか、外にYWCAとかYMCAとかボーイスカウト、ガールスカウトとい
つたようなふうなものがあるに過ぎないのであります。勿論その外に
團体にもその
團体の
組織、
目的というものの一部分に
社会教育的意図を持
つておるというものもありますし、又抽象的に
社会教育を推進するために役立
つておるとい
つたようなふうな、つまりそれこそこの表題にいう
関係團体だと思うのでありますが、そうい
つたものがありますが、直接や
つておるという
團体はかように少ないという外ないのであります。併し最初の
趣旨にあります
社会教育の奨励ということのためには、直接
社会教育をや
つておる
團体が強化されるということが一番正しい
社会教育が奨励されたということになるというふうに我々は
考えるのであります。それで私共の
希望するところは、こうい
つた本当の
社会教育團体というものは、それぞれ独自の
組織と
教育方針というものを持
つておるのでありまして、又それが
本当の
社会教育の在り方だと思うのでありますが、私共の
希望としては、國とか
地方公共團体がそれぞれその特殊性というものを認めて、その強化発達に便宜を付與するとい
つたようなふうなことで
團体を保護、強化して頂きたいというふうに思うのであります。そういうことのために一番適切な問題は、先程來大勢の
証人の方からお話がございましたが、こうい
つた團体の存立に対する先ず一番先の経済的な
意味で
國家的な保障を欲しいということであります。これは
社会教育というものの價値を
学校教育と同じような
必要性、又意義、價値というふうなものを
社会教育に若し認めるとすれば、
学校教育に対して與えられるものと同じものが
社会教育團体に対しても與えらるべきであります。又
社会教育というものは社会
事業というふうな見方からいたしますと、
一般の社会
事業とか兒童福祉
事業、これは何れも
文部省所管でありませんで厚生省所管のようでありますが、これと比べると大変の差がありますが、これもやはり同じような保護を当然受けるべきだと思います。というのは、いわゆる
法律的な
意味の、県在ある
法律でいう
意味の社会
事業とか兒童福祉法、主に救済とか矯正とかいうものを主な目標にしておるようであります。又
國家がそういうことをやるべきことを
民間團体がや
つておるから十分な保余をしてやるというようなお
考えがあるんじやないかと思いますが、併し救済とか矯正とかいうことに至る前の段階で、そういうふうにならないようにしようとする
社会教育に対しても同じように実施されなければならない、特に兒童福祉法なんかの
関係を見ますと、兒童の福祉、兒童の衆合せということから
教育というものを除外することは到底できないのであります。それにも拘わらずこうい
つた学校とか、又社会
事業の
関係に與えられておるような
國家的保護を
社会教育に対しては與えられていないということを
自分たちは非常に感じておるのであります。先つき申上げましたように、國でやるべきことを代りにや
つておるからというふうな
意味でそれを
補助するとい
つたふうな
意味があり、又
社会教育は方は
民間でやるべきだから、これは野放しにして置くんだというふうなことでは
教育基本法の
趣旨にも反するものだと私共は思うのであります。こういうふうな事味で先程
横山さん、又
只今神近さんからおつしやいました
税金問題を先ず取上げらるべきであります。この
税金の問題について実例を申上げれば、兒童福祉決の方では明らかに兒童福祉
施設というものを定めて、これに該当するものはいろいろの
税金、地租とか臨時の取得税とかい
つたようなものを全部免除しております。ところが
社会教育の方にそれが全然ないということについて
一つの実例を申上げて見ますと、昨日聞いたばかりの実例でありますが、YWCAでこういう実例があります。YWCAはアメリカの復興援助資金というものを受けまして、
日本でのこの
仕事を拡張するためにその土地の購入費を貰
つたのであります。都内に四百五十坪程の土地を買おうとしたところが、その土地の取得税は十二、三万円取られる、一年間に地租が一万円強取られるということは計算によ
つて分
つたのでありまして、どうにもならないというのであります。こうい
つたことは、その
仕事の性質上から見ても、当然先つき申上げましたような外の
教育事業、社会
事業と同じように免税さるべきだというふうに
考えます。その理由は税務署でのそういう取得税を概算して呉れた理由は、YWCAというものは宗教
團体でもないし、社会
事業團体でもないし、又
学校でもないかと免税の方法がない、こういうことだ
つたのであります。その外に同じ
團体でのやはり実例でありますが、このYWCAは東京の駿河台に
自分の本館を持
つておるのであります。これは戰前にはその建物の八割くらいを各然
学校ということで
教育事業を行な
つておりましたので、その本館の家屋税は無税だ
つたのであります。ところが現在は進駐軍にそれが接收されておりまして、家賃を政府から支拂われております。
從つて收入の元にな
つておるということで、これの家屋税をこつちから掛けるということを税務署から言われておるそうであります。これはこれまでの
事業実態そのものとちつとも違わないのでありまして、その
團体がそのために非常に財政的な窮迫を告げておるというのであります。
只今申上げましたのは
團体の存立そのものに関する援助がされていないということでありますが、その次の
内容的にもこう言
つた社会教育団体に対しての援助をし、ということをこの
法律の上で現わす方法がないかと
考えます。例えばこの十一條を見ると、何かいろいろ御
指導下さるように思うのでありますが、併し実際中央官廳又は
地方廳公共
團体とか、
教育委員会、そういう力が一体この
法律によ
つてできるだろうかということを私共危ぶむものであります。逆に
考えますと現在の
社会教育の
内容に関して
指導的の
立場をとるような方法が何も講ぜられていないということは心配しないでいられないのであります。これは
委員会とい
つたようなものをもつと充実して
内容的に
本当の充実し得るようなものがなぜできないものだろうかということを
考えます。これは実例を申上げて見ますと、私共は先程
横山さんから発言がありましたが、大体似たような
希望を持
つておりますが、集
つていろいろ
組織を持
つたり、又
文部省にいろいろお手傳いをしておるのでありますが、実際を言うとこの
法律の中に示されたようなお世話、例えば
指導の方面で
指導して下さるとか、物資の斡旋をして下さるとか言
つたようなお世話をまだ一遍も受けたことはないのであります。例えばその物資の面で言いますと、この
法律で物資の裏付けができるのかと言うと恐らく実情から、物資がないからとおつしやるかも知れませんが、外の
事業團体、外の省の、外の役所の
関係なら取れておるものが
文部省では取れていない、当然
教育のために必要な物資がそのために非常に不自由をしておるということが、幾つか挙げることができます。それに反して逆に私共の
團体が
文部省がお世話をしておるというと失礼を申上げまするが、昨年秋以來アメリカ自動車を買
つて貰つと
社会教育の
指導の
講習会というものをや
つているのでありますが、これは実を言うと、私共幾つかの
團体があ
つたから、きたでのであります。今年もそういうことになると思いますが、そういうことならば私共喜んでそれをや
つておる、それが又大事なことなんですが、そういうことをなぜ
法案の中に入れないかということを、疑念を持つのであります。
民間の力を借りて國がやるというふうにすることが
民間の力を強くするということにもするので、そういうふうな
考えが浮ぶのであります。更にその問題に関して附加えますと、何もお世話をして頂いていないということをもう少し申上げてみたいと思います。それは先程
横山証人からお話がありました、この法編のもう
一つ前、ここに提出されたもう
一つ前の原案について、私共
文部省青少年
團体專門
委員会から
建議を出しました、その
建議の
内容についてはこの
委員会の石丸專門員にもお渡ししたのでございます。
文部省にございますからどうぞ御参考に御覧願いたいのでありますが、それは主に
税金問題とかその
團体の独立性を認めると言
つたようなものでありますが、その
建議はこの議案に対して三字か四字以外に入
つていないようであります、ということは單に冷淡であるとい
つたばかりではない、そうい
つた指導能力を疑うということになるのであります。ただこんなふうなことをお願いしていますが、逆に注意をしなければならないと思いますことは、
從來のいろんな形で以てあり
勝ちな形式的な奬励ということが、これからの世の中では何とか協会を作るとか、何とか
連合会を殖やすとかい
つたものを行われるのは困ると思います。それは実際活動をしない実際
教育活動をしていない、極言すればブローカー的な存在を殖やすということになると思います。そういうふうなことがないように御注意願
つて頂く必要があるのじやないかと思います。それからもう
一つ先程
民間團体を直接活用して欲しいということを申上げましたが、例えばこれは
文部省の例でなく、
地方廳の例でありますが、何かこうい
つた社会教育的な
事業を
地方廳が
自分でやるということをやらずに、
民間團体にそれをやるように薦めるということは、やはり
民間團体を強くする
一つの在り方じやないかと思います。これも
一つ例を挙げて申しますと、この例を挙げるのはいけないかと思いますが、極く最近東京都
社会教育課でお伽列車というものをやりました。約二千人ばかりの子供を小田原まで連れて行
つて、東京都でや
つた仕事でありまして実にくだらんことだと思います。そうい
つたことを
民間にやらしたらどうか、そうい
つたことによ
つて民間は強くなるだろうと思います。我々はそんなことをやるために私共は目の飛び出る程
税金を拂
つているのではないのです。
只今申上げましたような
内容の問題又財政的な、
教育内容の問題、こうい
つたふうなことがもつとこの
法案で取上げられるべきだろうと思います。若しそういうものがないとすれば、私共のように現実に、
組織的に
教育活動をしておる者にはこの
法案はむしろ無用なものという外ないのであります。その次の点にこういうことがあります。第六條第二号を見ると
教育委員会の
事業として、
指導者養成といつちようなことを挙げているのでありますが、これは少し小さい問題、具体的な問題になります、と申しますのは私共具体的の問題をや
つておりますので、いろいろなことを
考えるのでありますが、これは
文部省で以て
昭和二十三年の発社第百九十七号というので
地方における
社会教育團体の
組織における通牒というものが出ております。それによりますと、こうい
つたことが特定の運動の
指導者の養成ということにはできないということが明らかにされているのでありますが、今度のこの
法律によ
つてこの通牒が消えるだろうかということをいろいろな細かい疑念を持つのであります。そういうことの通牒が私共
社会教育をしている者に大きな影響を與える沢山な
條文がありますので、この際そうい
つたことを明らかにされる必要がある。それが実際運動をやる者に対する便宜を與えることになるというわけであります。特にこんな小さいことを申上げますのは何ですか、実情といたしまして、
地方ではそういう通牒があるにも拘わらず、縣の費用とい
つたふうなものをカムフラージュして縣で
仕事をやりたが
つて講習会のようなものをや
つて、或いは外の費目からそれをやる、或いはそれを全然表に現われない金でや
つているというふうなことをや
つております。それは全部縣によ
つて違うのでありまして、そうい
つたその通牒に引つ掛かりそうなもののために、非常に不便を感じておる、各種の
民間團体を縣廳が置いてはいけないということを、縣で金を出して置くとい
つたというふうなことが行われております。こういう点を明らかにそれるということが非常に望ましいのではないかと思います。その次の問題も
社会教育團体に対する干渉というものがはつきり禁止されているし、又当然統制というものは禁止さるべきだと思うのでありますが、例えは第十七條第一号を見ますと、
社会教育委員という者の
仕事のうちに、
社会教育に対する方策の立案とい
つたようなことがあ
つて、それが
教育長への助言として現われたということがあります。ところがそれをもう少し外の
條文から
考えて呼んでみますと、この
社会教育委員というものはその前十六條によりまして
公民館運営審議会の
委員を充当してもよいということがあります。併し
公民館というものは非常に間接的な盲のだということは第四章の全條を見てもよく分りますし、その
公民館の大きな
仕事のうちにこうした各種
團体の連絡というようなことが言われておる。そういうことを全部総合して
考えますと、先程來これに関連したお話がございましたし、
社会教育全般の統制機関とい
つたようなことは非常に按じられるのであります、そういう
意味で仮にそれを救済すめば、例えば第十六條そつくり削券してしまうということによ
つて、或る程度までは防ぐことができますが、
公民館そのものの在り方についても、又別に
考えなければならないのであります。併しながら
公民館の在り方についても
横山さん、
江口さんのお話がございましたが、ずつと読んで見まして頃常に
國家の機関だというような色が強過ぎるように思います
國家の
監督下にある町村がそれを作る、又そうでなければ認可を得た者が、それを設置することもありますし、財政的な援助が與えられ、人事についても同じことが言えるということであります。併しながら
國家の
仕事としても勿論必要になるかも知れませんがこれも御
意見のありましたように
本当の
民間の
仕事として行くためには、
本当に民主的な
仕事であるためには、
國家のやる
仕事と並行して、同じことを
民間でもやるような途を講ずる、例えば認可を得たものがやるというような認可の
制度は止めてしま
つたらどうかとい
つたふうなことが
考えられるのであります。尚その
公民館のことについて言えば、この
法案の全部を通じて見て、やはり一番先に感じますのは、この
法案が
公民館法とか、若しくは
公民館設置奬励法とかい
つたふうな感じが非常に多くあるのでありますが、まだそういうふうに発達していないものを奬励するということよりも、既定の事実をもつと尊重しろという
意味で、すでにある一切の
教育團体をもつと強化するということ、この点も重ねて申上げて置きたいというふうに思います。
更にこの
法案全部を通じで感ずることは、こんなことが感ぜられるのであります。それはこの
法案は
社会教育とい
つたふうなものでありながら
國民自身の、何か爲し得る力をつけてやるというふうなことが、これは
考えられていない、その例として申上げて見ますと、第
五條の六号、第二十二條の二号なんかに、いろいろな討論会、
講習会とい
つたふうな、いろいろなことを挙げておりますが、こうい
つたものは全部その上に別な
指導者がいて、結局それが主催者になるわけでありますが、これをや
つて行く、引つ張
つて行くという形を採られるのが多いのであります。これは
青少年團体委員会でも、特にその建築案に入れたのでありますが、なぜ
本当に
國民たちが、
自分たちで以て話合い、
考え合うそういう形をと
つている討議というものを入れて見なか
つたのだろうということを重ねて
考えて見るということは、飽くまで引つ張
つて行こうという形がここにも現われているというふうに言う外ないのであります。重ねと最後にこの
法案の提出理由は、二、三行述べてありますが、
社会教育実施の法的根拠を與うる必要があるから出したということが書いまあります。けれども
只今申上げましたように
社会教育團体に対して、その
團体の在存ということは、社團
法人とか、或いは財團
法人とかい
つたことで、一應法的根拠はあるのですが、
社会教育実施ということに対して何も実際上法的根拠を與えられていないようにこの
法律では見えるのであります。
從つてそうすると、この
法律の提出理由というものは、外のところにも目標があるというふうに
考えなければならないのであります。更に大分逆になるのでありますが、第二條で
社会教育というものの対象を主として青少年及び成人に対して行われる
組織的な
教育活動というふうに対象を掴んで、この
法律の対象とすべきものを言
つておるが、
教育基本法の方では、最初に読みましたように家庭
教育と並べて勤労の場所、その他社会において行われる
教育とい
つたような
教育の場面を言
つている、
社会教育というものは特に赤ん坊から死ぬまで、年寄りまで全部が受けるべきものであり又受けるべき権利を持
つているものでもあります。
從つてこの
法律についても、第二條に
教育の場面を示してその法の適用する範囲というふうに
考えた方がよろしいと思います。
大分いろいろな苦情や不平やらよく分らんような
意見を申上げましたが但しこの
法案の後の方にくつ附いております
学校施設の利用とか、
通信教育とかの点については、共共
團体としても、若しそれを我々がやるつもりなら適用をさして頂ける。又若干の利益を與えて頂けるという点が盛られてあるという点は有難く思います。以上であります。