○
政府委員(
安孫子藤吉君)
酪農業振興臨時措置法につきましては、私共もいろいろ
研究をいたしてお
つたのであります。十分の時間的余裕もございませんので、或いは
十分論議を盡しますならば、我々といたしましても了解のできる点も相当あるだろうとは存じますが、一應
只今まで出ておりまする、主として
食糧操作の面から見ました考を申述べて見たいと思います。現在の
供出制度が、いろいろこの本
委員会におきましても
論議を盡されておりましたように、絶対量の
供出の問題の外にやはり各
府縣間の
均衡でありますとか、或いは町村間の
均衡の問題、或いは
個人の
均衡の問題というものが、やはり
割当の上におきましても、非常に大きなウエートを持
つておると
考えられる次第であります。そうしたことについて
食糧管理局としては、今後ともますます努力をして参らなければならんと思うのでありまするが、この
酪農業振興臨時措置法を
運用することに当
つて、この点に大きな悩みを我々としては持たざるを得ないと
考えておるわけであります。例を申上げますならば、この
法案は
指定地域の
酪農家にのみ
指定作物の保有を認めることになるわけであります。それ以外の
地域の
酪農家、或いは全國の乳牛以外を飼育しております
有畜農家というようなところの間に
均衡を失するというような問題が出て來ると思います。又現在の状況からいたしますと、凡そこの
法案によりまして差当り確保されるだろうと想定されまする
面積が約二万町歩ございますが、この二万町歩は現実の
割当をいたします際には
只今の客観的な情勢からいたしまして、これが
酪農地域以外の
地域に殆んどかぶさ
つて行くというような危險性もあろうかと存じます。又現在の
作付面積を或る
程度飼料として殖やして行くという問題もあるように
考えますが、併しそれはなかなか困難なことでありまして、それだけの
面積を
飼料作物の
作付面積として殖やし得るならば、それは
主食として
考えるべきではないかというような論点から相当議論をされまして、結論におきましては二十五年の
事前割当をいたします際に、その点が非常に
本法の
目的といたしておりまするような
運用が困難でありまして、むしろ
生産者を苦しめ、或いは
酪農家に不利な
状態に追い込まれるような
可能制も我々としては相当
考えられるのであります。そういう点からいたしまして、
本法の通過をいたしました際の
運用について、我々はまだ十分の自信を持
つておらんわけであります。又これは我々の
問題外ではありまするけれども、かように
指定地域のみのこうした
制度を認めますることは
日本の
酪農の
立地條件を固定させるようなことになりまして、
日本の
酪農業全体の見地から見ましても疑問があるのではなかろうかと存じます。併し物事は一歩々々固めて行かなければならんという点から議論いたしまするならば、経過的な
措置としてはそういうこともあり得るだろうと思いますが、もう少しその点についても考究をする点がありはしないか、それから
飼料畑を確保することにつきまして、結局
配給飼料の方がその分だけ減らされるということも一應
考えて見なければならんと存ずる次第であります。
飼料の輸入が相当窮屈にな
つておりまする現状におきまして、やはりこれを十分何といいますか、公正に或いは相当締めて
飼料を
配給するというようなことも予想されますので、そういたしますと、この
法案が
通りますことによ
つてむしろその
方面の圧力が
酪農家の方にかか
つて來ますようなことも憂慮されるのであります。尚この
乳製品の問題について、これは
主要食糧農産物と同樣の
供出管理を
行つて行くというような
建前にな
つておるのでありますが、この面から
均衡論から申しましても、そういたしますれば
乳製品の
配給もやはり
主食差引として
考えるのが適当であろうかとも
考えられます。
政府部内におきましても、その点についていろいろ
研究を遂げたときもあ
つたのであります。併しながら現在の
乳製品價格は非常に高い値段であります。これを
主食とプールいたしますときには、
乳製品を必要としない
主食の
消費者に対しましても相当の負担を轉嫁せざるを得ないというようなことになりまするので、結局
主食の
消費者價格が上
つて來るというようなことも、これは現在の経済情勢から申しまして適当ではないかというふうにも
考えておるわけでございます。又これもいろいろ議論の余地はあろうかと思いまするが、現在
乳製品は相当ストツクされておる状況でございます。原因は價格が高いということと私共は了承いたしておるのであります。やはりこのストツクをはかせるということは結局價格をもつと下げることについての端的ないろいろな施策が行われることが、結局
乳製品を消費面に移す。その結果
酪農関係が活溌にな
つて行くということにも
考えられまするので、勿論この
法案がそうした問題に対して全然
意味のないものではないとは
考えますけれども、その点はもつと別の施策がこれに先行されて
考えられるべきではないかということが、
乳製品の需給の現状から申しまして
考えられるかと存じておる次第でございます。いろいろかような観点からいたしまして、私共といたしましては
酪農業振興臨時措置法がもう少し檢討する余地があるというような
考え方をいたしておるわけであります。勿論
日本の
農業が穀作のみによ
つて成り立つべきではなく、
酪農を十分取り入れまして今後経営をして行かなければならんということについては、
食糧管理局といたしましても十分了承いたしておるのでありますが、この
法案自体につきましては、尚檢討すべき点が相当あるというふうに
考えておる次第でございます。一應私共がこの
法案を拜見いたしまして感じましたことを簡單に申上げた次第であります。