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板野勝次君 そこで、
食糧確保の
修正意見について申上げたいと思います。これは今出されておる
食糧確保臨時措置法の一部を
改正する
法律案だけでなくして、
食糧確保臨時措置法の
全面改正に対しまする
修正点であります。
第二條の第二項の「
農業計画」とは、
主要食糧農産物の
生産数量生産者保有数量若しくは
供出数量又はその
生産に必要な
肥料、農薬若しくは
農機具」この
字句の次に「その他
農業用必要資材」こういう
字句を挿入したいのであります。
事前割当に関しましては、
行政機関と
農業調整委員会との権限上の
改正を伴わなければ民主的なものとは到底ならないのでありまして、
従つて「第三條
農林大臣は、
中央農業調整審議会」の次の「及び」を削除しまして、これを「の
議決を経て」と改めたいのであります。第三條第五項「
中央農業調整審議会に関する規程は、政令でこれを定める。」こういうことにな
つておりますが、この
字句を削除しまして、これは仮称といたしまして、
中央農業調整委員会は、
食糧確保臨時措置法の施行に関する
重要事項について決議する
機関とする。
委員は十五名とし、
都道府
縣農業調整委員の互選とする。
委員は
選挙人の五分の一の請求によ
つてリコールのできるように改める。第四條第二項「
都道府縣知事は、必要があると認めるときは、」の次に「
都道府
縣農業調整委員会の
議決を経て」こういう
字句を挿入しまして、「
農林大臣の
承認を受け、」の次の「
都道府
縣農業調整委員会の
議決を経て、」これを削除したいのであります。この項の終りに但書として、「
農林大臣の
承認は、
中央農林調整委員会の
議決を経ることを要する。」こういうふうにしたいのであります。
第五條の市
町村長の決める
農業計画に対し、地方自治法の準用によりまして、市
町村長のリコールの請求を明文化して、第六條は現行のままとしまして、
異議申立の期間を二十日に改める。これは本
委員会におきまして修正されました点と私の主張する点は完全に一致するのでありますが、遺憾ながらこの
異議申立の期間が十日でありますことには賛成できないのでありまして、どうしてもこれを二十日間の期間を置かないことには、今までの例によりましても、
異議申立というものは、上からどんどん押しつけて來て、十日間の
異議申立期間におきましては到底
異議の申立ができていない。こういう実例に徴して見ましても
農家の苦しい今日の姿を十分に推察して、これをどうしても十日を二十日に改めるべきだと思うのであります。
第六條第七項の末尾に但書として「但し、
農林大臣がこれを
承認するには、
中央農業調整委員会の
議決を経なければならない。」とこういう
字句を追加したいのであります。第七條第五項中「農藥又は
農機具」の次に「その他
農業用特殊
資材」の
字句を挿入いたします。
第八條現行條文中「災害その他眞にやむを得ない理由」を「災害その他の事由」と改めたいのであります。これは「災害その他眞にやむを得ない事由」といたしますと、今のような
官僚的な、天降り的な
政府におきましては、眞にやむを得ないという限界は、極めて限られたもの、災害以外には、或いは旱害等につきましてをどの程度までかということが分りにくい。そこで
農民はどうしても有利にいたしますためには、これを「災害その他の事由」と改めることによりました減額請求の上に十分行い得るような
方法に改めたいからであります。第八條第二項は事実上届出の場合に減額請求を拒否する虞れが多いので、これは削除しなければならません。第八條第四項の「第一項の請求は、」の次に「その請求にかかる変更要求量については、」の
字句に挿入しまして、
食糧管理法第三條第一項の規定による賣渡命令の効力を停止しない点を変更請求量に限りおくことを明らかにして書く必要がありますので、そしてこの
改正を機会に、
食糧緊急
措置令はこれを廃止する必要がありますので、「但し、」という
字句は削除しまして、変更請求の決定があるまではその強権発動によ
つて收用を行わないとしておるが、強権発動そのものが権力の濫用として天降り
割当を強行する肚であります、この強権発動を考え出し、
農民の上に押しつけて参りました
政府こそ正に第一次吉田
内閣であります。この機会に
農民をいじめ、
農民を苦しめ、尚も惡質
農家に強権発動をするんだという暴行、これは傳家の宝刀であるからなかなかやらないのだと言いながらも、これは前に
委員会の
質問の際におきまして、池田
委員が指摘しましたごとく、この棍棒を持ちますことによりまして、
農民に要らざる恐怖を與えて、恰かも
供出を強要しております前代未聞の惡法でありますから、この機会にこれは当然廃止さるべきであります。第九條の「その責に帰すべき事由に因りその指示に係る
農業計画において定められた
生産数量を確保できる見込がないと認めるとき」の
資材配給
数量の削減請求は、
農家経済を危殆に導くものだから削除すべきであります。第十條の
都道府縣知事が
主要食糧農産物の
生産を確保すると称して、農作物の作付制限をすることは、戰時作付統制の再現でありますから、これは当然に削除すべきであります。これ又場業
経済の破壞であります。
農業計画は飽くまで民主的に計画されなければならないのであります。第十二條第二項の中の「
都道府縣知事及び市
町村長の監督に属し」という
字句を削除しまして、市
町村農業調整委員会を市
町村長の隸属から解放して民主的な
機関とする。第十三條第四項「市
町村長は、特に必要があると認めるときは、」の
字句を「市
町村長は、市
町村農業調整委員会の
議決を経て」と改めまして、「
都道府縣知事の許可を受けて前項の
委員の定数を増減することができる。」この次に「
都道府縣知事がこれを認可するには、
都道府
縣農業調整委員会の
議決を経なければならない。」という
字句を追加いたします。第十三條第五項の市
町村長が
選挙以外に三人を限り
委員を選任することができるとの規定は、市
町村長の我がままな選任
方法となりまして、
委員会の民主的運営の障害となるのでありますから削除し、
從つてこれが削除されますれば、同條第六項は当然の削除となります。市町長村が
委員の過半数の同意を得て
委員を選任するとしますれば、これら同意を與えた
委員とグルになりまして、專断的な運営と助長する危險もありますから、このような項は民主的な僞装にしか過ぎないのでありまして、必要な数だけの
委員は全部
選挙すればよいと思うのであります。現行法第十四條の
選挙権並び被
選挙権の制限は全く非民主的でありますので、この
選挙制度におきましても、世帶主、世帶員及び一定の日数、例えば五十日以上
農業に從事する
農業労働者に
選挙権、被
選挙権を與えるように改めて、徹底した民主的
選挙の
方法を採用すべきであることを主張するものであります。第十五條のリコール請求権を現行の有権者総数の三分の一を五分の一と改める。第十七條の市
町村長でありますが、市
町村農業調整委員会の
議決又は処分が行政廳の処分に違反するときは、その
議決又は処分を取消すことができる規定を、知事を
都道府
縣農業調整委員会の
議決を経なければこれを
承認することができないように改めたいのであります。第十九條第二項は「
都道府縣知事は、特に必要があると認めるときは、」の次に「
都道府
縣農業調整委員会の
議決を経て」の
字句を挿入して、地区
農業調整委員会を置くことができるというように、飽くまで民主的な
方法によらしめ得るように改めなければならないと思うのであります。第二十條の市
町村農業調整委員会及び地区
農業調整委員会並びにこれらの
委員会の
委員に関し必要な事項は、政令で定めることにな
つておりますが、これを
中央農業調整委員会の
議決を経てこれを定めることに改め、政令によらないようにするのであります。第二十一條第二項の「
都道府
縣農業調整委員会は、」の次の
字句である「
農林大臣及び
都道府縣知事の監督に属し、」こういう
字句を削除いたします。第二十二條第二項の「会長は、
都道府縣知事をも
つてこれに充てる。」とな
つておりますのを、「会長は、選出された
委員の互選とする。」ことに改めまして、知事の独裁制的な性格をなくするのであります。第二十二條第三項の
都道府
縣農業調整委員の
選挙を、
選挙された市
町村農業調整委員会の
委員の中から互選する
選挙法方を、有権者による一般
選挙に改めたいのであります。第二十二條第四項の知事の
委員選任権は、市
町村長の選任権と同樣民主的でないから削除いたします。同條第五項は第四項の削除と共に当然削除となります。
第二十五條第一項に、
都道府
縣農業調整委員会の
議決を経なければならない。こういう
字句を追加いたします。同條第三項の会長は、地方事務所長又は当該区域内の市
町村長で
都道府縣知事の指定する者をも
つて充てることにな
つておりますのを、「会長は、
委員の互選とする」と、こういうふうに改めます。第二十五條第四項は「
委員は、有権者による直接
選挙とする。」第二十六條は、
都道府
縣農業調整委員会の
議決を経なければならない旨を追加いたします。第二十八條は、行政廳は命令によ
つて農地の面積、地方その他の
状況又は作付及び收穫の実績等について必要なる
報告を徴したり、官吏が農地その他必要な場合に臨んでその
状況を調査するためには、それぞれ
農業調整委員会の
議決を経て行うことに改める。
以上
修正点に関しましてこれを要約いたしますならば、第一に、
農業改革を飽くまで民主的に立てられるように修正することが
修正点の第一であります。第二に、そのためには
中央農業調整委員会、
都道府縣及び市
町村の
農業調整委員会を
議決機関とする。これはどうしても
官僚に実権を握らせるのでなくて、民主的な、このような
機関は現在は必ずしも民主的でないといたしましても、当然これを
議決機関とすること。その
選挙も徹底した民主的
選挙とし、リコール請求権を三分の一から五分の一とする。市
町村長に対しましても地方自治法の準用でリコール制を採用する点。第三に、
農業の再
生産用
資材を確保する責任を
政府において負うことを明らかにした点であります。第四は、作付制限のごとき戰時作付統制の再版であるところの條項を全面的に削除する点であります。強権発動を規定した
食糧緊急
措置令は
官僚的な強奪を合法化し、
裸供出を強要するものであり、人権蹂躪でありますから廃止されなければなりません。第四の主要
修正点を食確法の中に貫かしめることによりまして、初めて民主的
供出制度を確保することができるのであります。併しこれらは飽くまで暫定的な
措置としての修正でありまして、我が國
農業の拡大再
生産を遂行するためには、第一に
農民生活の安定し
農業生産力の発展のために、農地、
農業品、水利及びこれに属する諸施設の
農民管理と、その合理的利用運営を図ることを目的とするところの農地等管理法の制定が最も急務であり、最も必要であります。これに相應ずるためには、自作農創設特別
措置法、農地調整法の
改正が必要でありますことは申すまでもないところであります。第二は、國家は
農業生産力の飛躍的な発展を図りますために、耕地の集團、溜池の造成、水利の改良等、これら大規模化し、その他の建設を直営にし、これに伴
つて在來の農地の私有権を保障することによ
つて整理する等を始め、農地等管理組織、
農業組合などの民主的組織は自発的に
農業改良を行なう場合に、これに対する資金、
資材の優先保証、水力発電の開発と
農業協同組合等への貸與又は賣渡し等々の諸事業を行い得る
農業改革法の制定等によ
つて、始めて全面的の改訂がなされなければならないのであります。第三に、これらを
基礎にいたしまして民主的
供出制度を基本といたしまして、これに配給消費の人民統制に関する規定を加えましたところの
食糧人民管理法をどうしても制定しなければなりません。今回の
食糧確保臨時措置法の改訂案は全くの
農業破壞でありまして、
食糧の外國依存度をますます高める結果となりますので賛成することは絶対にできないのであります。
政府が今回の九
原則を惡用して、このような
超過供出を強要するものは、一に我が國の
食糧依存力を深め、我が國の
農業を破壞して、ひとえに外國
食糧に依存せんとする賣國
政策の現われでありますので、我が党は
只今申上げました
修正点を提案いたしまして、全面的に本
改正案に反対するものであります。
長い時間私が
討論の時間を取りまして、
皆さんの中には随分長たらしくしやべ
つて何か妨害的な
行爲でもやろうとしておるというような誤解をされたかも知れないのであります。これは
皆さんが辛抱して聽いて頂け得るでありましようけれども、このような
超過供出を強制し、
税金の面におきましても、
農業用の再
生産資材の面におきましても、あらゆる面において
農民を奴隸の境地の下に置き、
轉落農家に対しては遅配、欠配によ
つて、そうして餓死状態に放任して置いて、そうして
農村が荒廃に委せられて、これを実際に受ける
農民は、あの参議院の同胞引揚
委員会におきまして取上げられました、その取上げた事のよし惡しは別といたしまして、ウランバートルにおけるあの酷寒の上、曉に祈る刑に処せられたあの苦難なる姿がそのまま日本の現在の
農民の姿ではありますまいか。
法案を
審議することはいと易いことでありますけれども、これが通過した後に、あのような涙を呑んでおる日本
農民の姿を思いますときに、このような血を涙もない改革案に対しまして、断じて賛成することはでき得ないのであります。