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池田恒雄君 この
法案はまあ先程から政務次官が盛んに私を責めるのであります。尤もだと思います。
北村さんも盛んに私を責めます。これは
北村さんが新潟でまあ信濃川なんかあれを見ておりますから、そういうように御熱心なのも尤もだと思います。私も三つの年から水害に見舞われて困
つて來た人間でありまして、私もこういう
法律をできるだけよいものにして通したい、こう思うのであります。それで私は與党である
北村さんにも、それから政務次官にもこの際お願いいたしたいのでありますが、ちよつと修正して貰いたいと、この思うのであります。その
意見を申述べたいのでありますが、私は、この案の修正の
意見を述べますときに、実は
建設省の方も見えて頂きたか
つたのであります。見えられなかつたということが残念だと思います。私は、どう修正するかと申しますと、極めて簡單でございまして、
土地改良組合と國営事業とを分離することであります。これが私は今後の
農業土木問題を民主化して行くところの絶対的な方策である。こういうふうに考えるのであります。このいろいろな点を見まするというとこの
法案では、賦課金をかける、夫役をさせる、
土地の交換分合をやる、
水利権を握る、こういうような工合でありまして、
土地及び農民に対して強力な支配力を持つということにな
つておるのであります。その結果は、この農民によ
つて組織されて行くところの
土地改良区、若しくは
土地改良組合という工合に理解しておるのでありますが、この組織は
土地改良事業そのものが、農民が支配するのじやなくして、農民を支配する、而も奴隷的に支配するような工合に発展する虞れがある、こういうことが先ず言えるのであります。そうして先ず農民の政治力というものでございますが、これは非常に民主的々々々ということを
農林省の
方々は言うのであります。で、私はこれはプライベートでそれじやちよつとおかしいとい
つて、まあ申したこともあるのでありますが、今日の農民の政治力の限界というものはおのずからあるのであります。で、部落とか村とかいう程度において軽い
土地改良というものをやるのでありますならば、その場合は農民がこれを自主的に運営するということは可能なのであります。併しながら農民の自主的に運営し得るという限界は、その程度であ
つて、それを超えて大きい事業を組織してや
つて行くというようなことになりますというと、農民の直接的な組織や、事業に対する労働力というものは弱ま
つて行くのであります。これは非常に明瞭なことでありまして、これは
農林省の
方々よく分
つて頂かなければならないと思うのであります。それから
土地改良区なるものは、
土地改良組合というような権能を持つわけであります、そうして農民から遠去かつた事業者勢力と國家権力が結合いたしまして、農民を逆に支配する、これが私が冒頭に申上げました言葉をつずめて申しますと、こういうふうになるのでありまは。これについては多くの
説明はいたしませんが、行政官は政治については明るいのでありますから、よく御檢討願いたいと思うのであります。
それから立法の経過であります。これは本朝來の質疑應答の結果を見て、この
法案は極く縄張り主義的に行われて來ておる、こういうふうに私は受取るのであります。水の威力というものは天皇の威力というものより強いということは、これは何人と雖もお分りなんであります。天皇に反抗する者がありましても、水に抵抗するなんていうことはできません。水に抵抗するなんていうことは、全く馬鹿氣たことであります。それで、
水利事業、
治水事業というものは、水に抵抗することではないんだと、こう私は思うのであります。從
つて治水とか
利水とかいうものは、一元化した
政策を以て立法されなければならないものである、こう私は考えておるのであります。若しそういう考がなくて、下手な事業をやりまするというと、むしろ水という絶対的権力に便乘して、官僚や
地方のボス勢力が農民を支配する。暴君的に支配する、こういうような事態が生れて來るのであります。こういうことはいろいろな事業の
慣行、いろんな
慣行、今までの
水利慣行その他にもあるのでありまして、そういうことは
農林省の
方々は、
水利慣行調査や何かにおいてよく発表されております。私は今それをはつきり記憶しておりませんから、ここに呈示するわけに行きませんが、とにかくそれは私よりもあなた方の方がよく分
つておる、それから、まあそういつた事態から、
日本では今國土
計画或いは國土
計画法というようなものを必要としておる、こういうふうに私は考えるのであります。このことは
岡田さんの先程の御
意見、
岡村さんの先程の御
意見、その他の
方々もそういうふうに考えておられるようであります。そうしてこの
水利竝びに
土地改良というようなものは、そういう國土
計画の一環としてなされなければならない、こういうものであると思うのであります。ところが又繰返すようでございますが、この
法案については、
建設省当局はちんぷんかんぷんであります。こういうことは非常に私は遺憾だと思うのでありますが、若し
治水と
利水というものが、
一つの一貫したものであるという解釈に立つならば、こういう
法案は一省、一局の中で
立案されるべき性質のものではないと、こういうふうに考えるのであります。それでこのような過程でこの
法案が出て参
つたのでありますが、この際私は
土地改良区と申しますが、
土地改良組合と申しましようか、これは農民が自主的に行ない得る、
農林省がお考えになるよりも簡易なる、又規模の小さいところの組合という工合に限定いたしまして、そうしてそういう事業は何もやかましいことを言わずに、
農業協同組合であるとか、或いは部落
農業團体であるとか、こういうものが自主的に、もつと自由に、簡單に
立案してやれる、それに対して
政府が助成をして行くというような建前をとられることに方が、その方が遥かに民主的であり、農民自身の意欲というものも十分に動かせるし、農民が支配し得るものになる、こういうふうに考えるのであります。そうして私は少くとも重要な水というところに抵触して参りまするところの大規模な
土地改良事業というようなものは、こういう組合における、事業から完全に分離いたしまして、これは國の
予算によ
つて國が全責任を以て一定の
計画的なものを以て、そうしてや
つて行くというふうにしなければならない、こういうふうに考えるのであります。それからそういうような
考え方がなく、そういう
計画がなく、こういう
法律だけが先にぽんと出て來る、こういうことになるというと、どういうことになるかと申しますと、当然この
法律が出たという限りには、こういう
方面に
関心を持つところの人々は、板野君が言われたように、いろいろと考えますから、そこで思惑的にこういう組織を作ろうとするわけです。そうしてこういう組織を作りまするというと、何かやらなければなりませんから、盛んに今度は俺の方を認可して呉れろとか、俺の方に
助成金を呉れろとかいうような工合に、いろいろ補助金や
助成金の分取り競争になる、こういうことになるのであります。そうしまして、それだけならいいのでありますが、そういうことがいろいろ
土地ブローカーとか、或いは政治ブローカーというものに利用される、こういうことにもなるのであります。或いは今度こういう組織をお前達が作れ、そうしたら俺が代議士にな
つて行
つて、
一つがんとや
つてうまくや
つてやるというようなことになりまして、これは党利、党略にも利用されるというように、何らの実態なくしてこういう組織を作ることだけを許したとしたならば、そういう政治やいろいろな問題の思惑に利用される、こういうようになるのであります。
從つて私はそういう思惑に利用する程の大事業というものは國家が握
つておる、その代の國家が責任を持
つてやるというような体制を作りまして、決して思惑や何かに乗せられない、党利党略に乗せられないというような工合にしなければならんということになる。今まで
水利組合とか、或いは
耕地整理組合、こういうものは今まで競馬の話も出ましたが、競馬なんかと同じように党利党略に大いに利用されて來ておるのであります。この弊害をここで断ち切ろうとするならば、やはりこの
法律における組織論を明瞭にして行かなければならないと思います。そこで私はこういうふうに修正して頂きたい、こういうのであります。更に私は農林当局では、
開拓局長なくかはいろいろとこれについていい
説明をするのでありますが、今までの
開拓局長の
説明並びに本日
建設省当局からの
説明等を聽きまするというと、何かこういうような立法過程を通じて見まして、開拓局がとにかくこの
法律を
作つて置けば、後
予算を取るのに都合がいいというような工合に誤解される傾向があると思うのであります。若し開拓局及び
農林省がそういう誤解を受けたくない、とにかく金のかからない
法律を一本
作つて置いて、それから尻をまく
つて予算を取
つてやろうというような考えではありませんというわけでありますならば、そういう誤解はどのような人がそういう誤解をするか分りませんが、少なくとも私はそういうような誤解をさしたくないのであります。それでそういう誤解をされたくない、こういうのであるならば、少なくとも私が今まで申述べたような、非常に筋の通つたそういうことに改めて頂きたい。とにかく筋の通らないような
法律はこの際少し改めて貰いたい、こういうふうに考えるのであります。私は
法律のことも明るくないし、それから行政官のような経驗もありませんし、この
法律を読んで直ちに條文をこういうふうに書き直すというわけにも参らんのでありますが、私としては少しでもこの
法律をよくして、そうして本当に民主的に運営されるものとして、そうしてこれを農民の方に渡したい。こう考えるのであります。この際
開拓局長も必ずしも本当のことばかり
説明したわけではありません。
從つてしつかり考え直して、そうしてそういうところを本当によくしたい、よくしたいとあなたは言
つておるんですから、よいものにして私にも賛成さして頂きたいと、こう思うのであります。
從つて私の
意見は修正
意見ということになろうかと思います。併しこの
法案を
根本的に否定するものではありません。