○國務大臣(森幸太郎君) 私の立場として一應お答えしたいと思います。先程來この
補給金の問題が出ておるようでありますが
肥料の立場から申上げたいと思います。
政府といたしましては、現在
補給金を各安定帶物資にいたしておつたのでありますが、漸次これは取外して行きたい、いつまでもこの
肥料の援助をしておることは財政上許されないのであるから、企業自体において合理化せしめる上から申しましても、
補給金は漸次外して行きたい。これを一氣に外すということは非常に衝撃を與えますから、ぼつぼつと区
切つて外して行くという
方針であるのであります。この
補給金を
廃止しようという問題も論議の中に入
つておるのでありますが、これを廃しますと忽ち農産物の
價格がそれだけ高騰して参りまして
農家は一應ありがたいようでありますが、それがために非常に
税金は嵩み、勿論その收穫の全部を、増收の全部を取上げられておるわけではありませんけれども、從
つていろいろの消費資材が高く
なつて來る。ところが方面を変えまして
消費者の立場から申しますと、それだけ
食糧が上
つて來るのでありまするから労賃等の
関係も亦従
つて影響をいたして來る。こういう
関係がありますから、一概に米の
價格を上げる、或いは
肥料の
補給金を全廃して
米價に
影響を及ぼすというようなことは軽率に考えられないのであります。
一つを外せば五つも六つもに
影響して参りますので最も
愼重にこれを考えて行かなければならんのでありまするが、取敢ず
生産の方面において主要
食糧ということを目標といたした
肥料と、それから主要
食糧以外に配給いたしておる
肥料との二つに分けて、
主食以外の
肥料に対して
補給金を外したらどうかというのが大藏当局としても一應考えられたのであります。今日までお話がありました
通り、
主食以外の
肥料の
補給金は年間を通じて六十三億でありまするが、もうすでにこれらの二十四
年度の下半期における
肥料は
農家の手に渡
つておりまして、これが今更主要
食糧用だ、或いは主要
食糧以外の
肥料であるというのを区分することは事務的において絶対にこれはでき得ないのでありまして、これは大藏当局もその実情を考えましてどうもできそうもないということは了承いたしたようでありますが、然らば二十五年一月の
春肥から主要
食糧以外の
肥料の
補給金を外したらどうだ、こういうことを考えておるのであります。併し今山崎さんのお話になりました
通り、行政を二本建にいたしますと
肥料公團が配給面において非常に複雜化して参るのであります。一方今日この主要
食糧以外の
肥料がどういうふうに取扱われておりますかと申しますと、勿論公定
價格で
肥料を配給いたしておるのでありますが、「みかん」であるとか「ぶどう」であるとか或いはすいかであるとかいう特殊の作物におきましては
相当市價が高いのでありまするから、二万円三万円の
肥料を闇で買取
つて栽培いたしましても
相当まだ利潤が上るというような情勢にあるのであります。それでありまするから二本建で経理することは
肥料公團としてはどうしてもできませんし、むしろ
政府は主要
食糧の
生産は
生産計画を立てて命令をいたしておるのであるから、この主要
食糧に対する
肥料だけは
政府が責任を以てこれを配給する。で主要
食糧以外の
肥料はこれを
統制から外して自由な立場においてはどうかという
考え方も一應持
つて來られたのであります。そういうふうな場合における操作方の問題といたしましては主要
食糧へ配給した
肥料がそういうほかの方へ廻るというような心配も
一つあるのであります。併し又
一つにおいては主要
食糧に反当り稻にして六貫目とか七貫目とか配給いたしましたが、それじやどうも不足であるからというので自由に販賣されるところの
肥料を買取
つて栽培する
農家もあるかも知れませんが、とにかくこういうふうな自由な立場で
政府が責任を持つ配給の立場と、この二つにしたらどうだという
意見もありましてまだ
結論は得ておりませんが、そういう
考え方も一應
補給金を
廃止するという問題に関連して起
つて來ておる次第であります。
今平沼さんの御
質問にありました
通り、
日本の
硫安製造の工程がまちまちに
なつておりまして、これは御
承知の
通り外國のパテントを思い思いに取入れましたがために、その
工場によりまして
生産原價が非常に違うのであります。現在三つの
段階に
硫安を仕切りましたにつきましては、とてもこの公定
價格においては引合わない、脱落せざるを得ないという
工場も確か一、二あつた筈と存ずるのであります。これが若しも
政府が
補給金を外しまして手離しすることになれば、恐らくまだ更に脱落する
工場ができるのではないかと思います。然らばその
生産の償うところの優良な
コストの安い
工場が、その脱落する
肥料の分だけを自分が更に
増産する
能力があるが、こういうことになりますと、これはなかなか資材なり設備等の
考え方から容易にその
生産量を増加するということが困難な情勢にあるように察せられるのであります。こういうふうに
肥料の
製造事情が複雜化いたしておりますので、今
政府といたしましてこの
肥料の買取りを、
補給金を全部廃してしまうということには余程
愼重にしなければ、却
つてその
生産を減退さすというようなことになりはしないかという心配をいたしておるのでありますが、
政府の根本
方針といたしまして
補給金というものは漸次これを外すということでありますから、各
製造工場においても一層その企業の合理化を考えられまして、
相当の能率を將來に上げるような処置をとらなければ、
会社自体としても経営が困難であり又
日本の
肥料事情から申しましても非常な支障を來すのではないかということを考えますので、全廃するということについては十分の
檢討を加えなければならない問題が残されておると、かように考えるのであります。尚こういう
事情でありまするから通商産業省にこれを主管させておるということは、今日非常に不合理な点がありますので、これは行政廳設置法のときに
相当論議をいたしたのでありますが、あの時期において十分な
檢討を加える余裕もなかつたために、一應現
段階においてこれを処置いたしたのでありますが、尚これは
政府といたしましても研究を進めまして、
肥料の行政を
農林省に一元化して行くということに努力いたしたい、かように考えておるわけであります。
尚この
肥料の
補給金の
廃止につきましては、お手許に廻
つておりまする資料にいたしましても、非常に
生産者の
價格或いは
消費者の
價格に
影響を及ぼしますので、この問題については税制の方面から考慮を拂わなければならぬと思うのでありますが、尚シヤウプ氏の
予算編成に対する基本
方針も示されておりませんが、税制の改革によりまして主要
食糧の
價格が、よし
コークスの
補給金を外し
石炭の
補給金或いは鉄の
補給金を外したがために、
相当の上昇を認めましても、これが
消費者の生活の上に
影響しないように、又
生産者の
農家の立場におきましても、
肥料が上り米が上つたために
税金が上つたというような結果に終らないように、税制の上においても考慮を拂
つて行きたい、かように考えておるわけであります。尚その他の御
質問に対する点につきましては、他の
関係職員からお答えをいたすと存じますが、一應私の立場としまして
肥料の
補給金に対する今日の
事情、
経過を申したような次第であります。