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1949-08-18 第5回国会 参議院 農林委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年八月十八日(木曜日)    午前十時三十六分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○水稻單作地帶対策に関する調査の件  (化学肥料補給金問題及び昭和二  十四年度産米早期供出奨励金問題)   —————————————
  2. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それではこれから委員会を開会いたします。本日は公報で御案内申上げましたように、議題は目睫に迫つておる早期供出奨励金の問題、それから同じく單作地帶における畑作轉換の問題、それから化学肥料補給金の問題、これらの問題を中心にして政府当局から一つ説明を伺い、又意見の交換をいたしたいと存ずるのであります。政府委員の方の御出席の都合によりまして、最初肥料補給金存廃問題につきまして、御承知のように今いろいろ問題になつており又閣議でも審議されておるようでありますが、その問題についてその経過、或いはそれに伴う農業経済、或いはその他の農業増産についての影響等檢討を必要といたしますので、それらの問題を中心にして先ず御審議をお願いいたしたいと存じます。  最初に申上げますが、御出席なつておる方は農林省から坂本政務次官、それから物價廳から渡邊第一部長、長谷川第二部長安定本部の方から前谷生活物資局次長農林省から藤田農政局長、その外課長の方々もお見えになつております。それでは一應渡辺さんからお話を伺つた方がいいと思いますが……、それでは経過を御説明頂きましよう。
  3. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) それでは、補給金の問題は現在閣議で引続き審議中でありまして、今日も午後一時からの臨時閣議で更に審議することになつておりますので、政府の案としてはまだまとまつた段階に至つておりませんが、一應現在話題に上つております点について簡單に御説明申上げたいと思います。  物價廳の方としまして補給金削減につきましては、いろいろ檢計を重ねて参つたのでありますが、御承知のように今年の補給金は総額二千億、そのうちで輸入補給金八百三十三億、それから二十三年度分の繰越が百五十億、安定帶物資補給金約千億これが一應の予算に上つております補給金の極く概括的な内訳でございます。この二千億につきましては一應予算の上ではこういうように、一つは当時爲替レート設定という問題が重なり合つておりましたので一應こういう予算には組んでありますが、できるだけこをけ節減したいということは政府意向でありまして、同時にその節減によりまして浮び上りました財源を以ちまして、現在これも論議されております税制改正の問題と結びつきましてその減税財源に充てたいとういのが政府意図であると思います。その線に沿いまして物價廳といたしましては、一方において現在設定されております三百六十円のレートの基礎を描かさないという意味の物價水準を堅持するというそうした一つ方針を持ち、同時にそれに支障を來さない限りにおいてできるだけ補給金を打ち切つて行く、こういう意図を以ちまして現在いろいろな作業をやつておりますが、一應の節減額といたしまして議論されておりますのは大体三百億から三百二十億、或いは大藏省の方では三百五十億見当は何とか出ないかといようなところで今審議をされておる最中であります。  話題に上つておりますものを極く簡單に御説明いたしまして、そうして当委員会の当面の関心の的であります肥料補給金の点に移りたいと思いますが、今申しました三百億乃至三百五十億の中で一番大きな金額が出ますのは、何と申しましても鉄鋼補給金であります。鉄鋼につきましては現在鉄鋼補給金、或いは銑鉄の補給金石炭補給金というようないろいろな段階輸入補給金を併せまして全部で七百億、二千億の中で七百億の補給金が出るのでありまして、これにつきましては司令部といろいろ折衝がありまして、現在といたしましては石炭の方は安定帶補給金廃めるというこの線で作業が進めらめております。影響といたしましては鋼材の價格消費者價格で五割程度上るのではないかと思つておりますが、いろいろ細かい作業をしておる最中であります。これによりまして補給金の額といたしましては本年度におきまして百四十五、六億見当というようになつております。それから後は金額がずつと小さくなりますが、ガスに使つております石炭が、これはすでに七月の十日で以てガス用炭に対する補給金は止めまして、このためにガス値段が七月二十一日から七割八分程値上りになりましたが、これによりまして約二十五億の節減、これはすでに実施済みであります。それからコークスに対しても補給金が出ておりますが、これにつきましては八月十六日から値段を三割引上げまして、現在御承知のように石炭統制廃止議論されております。その場合において石炭價格をどうするかということが議論されておりますが、物價廳といたしましては價格の方につきましてももつと統制廃止したいということを希望しておりますし、又そういう時期になりましたらコークスにつきましても補給金廃めていいのではないかという意見を持つております。司令部との折衝がありまして必ずしも決定的なことは申上げられませんが、大体この分で三百六十億程出ます。それから曹達関係補給金を少し出す。大体これは石炭に現在出ておるのでありますが、その石炭に出ておる補給金を打切ることを中心にいたしまして、曹達の四割四分切つて約九億を出す。それから銅は現在予算には二十八億計上されておりますが、最近における銅の市場における状況から見まして、これは半額の十四億出したら残りは打切つてしまう。司令部の方から一應の指示がありまして、大体これは方針が決つております。そういつたようなものとそれからもう一つ輸入補給金についてこまごましたものを相当切ろうということを考えております。石綿でありますとか、コプラでありますとか、油脂、ゴム、そういつたようなものが切られるわけでありまして、この関係で大体現在物價廳で予定しておりますのは約八十億見当のものを予定しております。その外にドル價が最近大分下つておりますので、その関係で以て六十三億程の輸入補給金節減が考えられます。まだこまごましたものがございますが、それやこれや合せまして、それから三百六十円レート設定になりますときに輸入補給金がこの方では一時殖えたのですが、それらを全部差引加算しまして大体三百二十億から三百五十億見当物價廳としましては三百二十億見当大藏省は更にこれに対して三百五十億見当の金を出せんかというのが現在論議されている最中でありまして、まだ最終結論に至つておりませんことは先程申上げた通りであります。  そこで肥料補給金関係でございますが、これにつきましては幾つかの議論がされておりますが、差上げてあります資料をちよつと御覧願いたいと思すますが、肥料補給金としましては、そこにありますように安定帶補給金としまして一應硫安石炭窒素、過燐酸石炭で百九十六億計上されております。その外に特定産業向石炭の分としまして補給金が出ておりましてこの分は七十一億、その関係で両者合せまして二百六十七億、外に輸入補給金が百六十七億出ておりまして、そこの(3)に書いてありますのは三百六十三億、(1)の百九十六億と輸入補給金百六十七億、これを合計した数字が三百六十三億、その外に先程申しましたように特定産業向として七十一億出ておりますから、輸入補給金安定帶補給金全部合せまして四百三十四億出ているというふうに御覧願いたいと思います。この関係によつてどういうことになつているかということをその横の方に書いてありますが、生産者價格硫安で申しますと二万九十九円、消費者價格一万一千百二十六円、八千九百七十三円、補給金單出として一トン当りが出ている。特定産業向石炭関係はいろいろこみ入つておりますので、こういう計算ちよつとやつておりませんが、八千九百七十三円というものが國内の硫安に出ている。又輸入硝安につきましては裸で以て三百六十円レート計算しますと三万七千八百円、これが國内の生産者價格としては一万一千九百五十八円に当りますので、二万五千八百四十二円出ている。こういうのが石炭にこの補給金の効果としましてどれだけ價格が引下げられているかということを示しているわけであります。  そこで次の頁におめくり願いたいのですが、補給金節減する問題、これは相当肥料のようなものにつきましては愼重に扱うべきものであるということは我々考えております。食糧に対する輸入補給金及びこの肥料補給金はそれが撤廃しますときにおきましては直ぐに主食に響き、それが生計費に響き、いろいろな意味におきまして生活費に響くわけでありまして、從いましてこれは同じ補給金節減する場合におきましてもできるだけ愼重に扱うべきものであるということは我々考えておりますが、併し補給金というものがそういつまでも出せるものではない、來年度は大体千億を目標に補給金を考えて行くべきじやないかというふうに我々考えていろいろやつておりますが、そういうことになりますと肥料につきましても或る程度補給金というものの削減檢討されなければならない運命にあるわけであります。  それでそれではどういう線が考えられるか、一番後ろから御覧願つた方がよいかも知れませんが、一番後ろに(3)というのがあります。補給金を全部廃止したらどうなるかという点を先ず檢討して見ますと、全部廃止しますと肥料價格はそこに書いてありますように硫安につきましては二・三二六倍、石灰窒素は二・三二四倍、以下書いてありますが、大体二・三倍から加里の最高三・五倍まで上ります。これは農業パリティにどう響くかと申しますと、現在の計算数字でそのままやつて参りますと二・九三、主食消費者價格については三・六一%、生計費膨脹は〇・五六%、金額に換算しますと、主食消費者数字は九十七億二千九百万円、これによりまして若しそれが平年度計算いたしますと四百三十二億円補給金が減る、秋肥の八月から翌年の三月までこれをやりますと二百九十三億減、春肥からと申しますのは一月から三月までこういうことをすると百二億円、一應こういうものが数字の上では出るわけであります。  これは非常に一遍にこういう措置を行うということはちよつと考えられない線でありますが、そこでいろいろな案が出ておるわけですが、その一つとしまして前のベージにお返り願いまして、先程言いましたように補給金石炭コークスで出ており、肥料で出ており、輸入補給金で出ておる。そこで一應の試計安定帶補給金のうち石炭コークスに対するものを廃止する、そうしますと消費者價格が國内のもので上ります。國内のもので上りますから輸入補給金も國内の肥料値上げ分だけは値上げする、そうすると輸入補給金についても或る程度節約があつてこういう計算をした場合にはどういうことになるか、硫安が六割八分四厘、石灰窒素が六割、過燐酸石灰が六割、硝安が六割、加里が六割、大体六割見当値上げなつておる。この場合においては農業パリティは六・四三%、主食消費者價格は一・六五%、生計費膨脹は〇・二五%、主食消費者に対する支出増加は四十四億円、補給金節減は年間計算しますと、百八十億、秋肥からやりますと、先程お話した通り計算で百十五億、春肥から四十四億の節約額消費者支出増とは相当な開きがありますが、これは主として農民が自家用の手持保有の分に対する肥料がそれだけ上りますので、丁度消費者が米が上ると同じような意味におきまして、農民の食べる米に対する肥料が上る。その意味負担増というのは大体この差の主たる理由だとお考えになつてよいと思います。  それから別の一つの試算でございますが、安定帶補給金廃止したらどうなるか、これは石炭コークス補給金、要するに安定帶補給金廃止して輸入の分で國内肥料等より割高になつておる、その分だけの補給金を出す、こういう考え方計算して見たらどうなるかというのが(2)の行き方でございます。硫安で二・三倍、農業パリティで一〇・七三、消費者價格で三・二〇%、生計費膨脹〇・四九%、主食消費者支出増が八十六億、節減額は年間三百三十二億、春肥からやりまして二百二十一億、秋肥から七十六億。  私の方で議論されておりますのは、一應こういう試計をしておりますが、大体この際実現される考え方としましては(1)にあります石炭コークスに対する補給金廃止するということを第一段階として、來年の春肥ぐらいから実行することにしてはどうだろうかということを中心にしまして、今閣議で御檢討を願つておる段階であります。どういう結論になりますか、今日の一時から又閣議がございますので、結論のことは何とも申上げられませんが、一應私の方で作業しておりますところを御報告申上げまして御参考に供したいと思います。大体以上であります。
  4. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 何か御質問がありましたらどうぞ……
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 肥料補給金の減額或いは廃止という問題は非常に大きな影響を持つ問題であります。大藏方面においては直ちにこれを全廃するような意向のように傳えられておりますし、私共も新聞紙上でそういうふうに見ておるのでありますが、大藏省の考える案についてお聞かせ願いたいと思います。
  6. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) 大藏省で全部の肥料について補給金を全廃するという議論は私共聞いておりません。ただこういう議論がなされておることは私共聞いております。それは主食以外のものに向ける肥料、それについてこの際補給金を全廃したらどうだろうか、その分は大体全肥料の二割見当に当るんじやないかということを我々聞いておりますが、主食以外のものに向ける肥料につきましてはこの際補給金を全廃したらどうかという議論は聞いております。
  7. 平沼彌太郎

    平沼彌太郎君 今の御説明で伺いますと、補給金に対する消費者方面の話だけで、生産者價格即ちメーカーの方がどくらいの節減できるか、又メーカーとしては随分引合わないコストの高いところと、相当補給金を出さなくてもやつて行ける工場とあるんじやないか、そういうふうな生産者方面のことの御考慮がちつともないのでありますが、それはどういう意味ですか。
  8. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) その点につきましては申落したわけでございまして、一應只今申上げましたいろいろな数字は、コスト関係につきましては現在と同じということを一應前提としまして計算はしてあります。併し物價廳といたしましては生産者の面につきましては更に檢討を重ねまして、できるだけ合理的な價格にして行く。最近御承知のように國内産の肥料相当多く増産なつております。そのような意味からしましても相当コスト減が考えられるんじやないか。ただそれに対しましてコスト増の面も幾つかございます。その一番大きなファクターとなろうと思いますのは電力料金の問題でございます。電力料金につきましては前國会当時からいろいろ議論をされておりまして、或る程度値上げは止むを得ないといいますか、むしろやるべきものじやないかというふうに考えられておりますが、その方から言いますと肥料については相当コスト増が考えられると同時に、只今申しましたように相当コストにつきましての檢討……実はこの間硫化鉱値上げをいたしました。約二百七十円値上げしたのでありますが五十円は公團等のマージンで吸收させまして、二百二十円は肥料メーカーの方に実は吸收させました。多少当初決めた当時に比べますとまあメーカーの懷にもまだ吸收余地ありと認めたものですから、そういう措置を講じまして、結局價格の方にも補給金の方にもその影響はさせませんでした。その硫化鉱値上げ影響は結局メーカー公團の方に吸收させてしまつたわけであります。尚それ以上どれだけ余地があるか、この問題につきましては先程申しましたように、電力料金値上げの問題がまだはつきりいたしませんが、同時に、最近における生産が順調に伸びておる点などから考えますと、これはコスト減が考えられる。この点は今我々の方で原價監督などをやりましていろいろ檢討しておる最中でありますので、今数字はまだ具体的になつておりません。從いまして先程來申上げておりますのは、その点は変更なしという点で一應計算しておりますが、別にその点に放つて置こうというつもりでは毛頭ございませんが、大体そういう事情でございます。
  9. 平沼彌太郎

    平沼彌太郎君 例えば工場で先程申上げましたようにコストが高いので、どう採算してもこれは不合理だというふうな工場も沢山あるらしいのでございます。そうして又非常に整理されて生産價格が非常に安くできておるというのもあるのだが、それに対して補助率はその差額だけを補助しておるのでございましようか。
  10. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) 現在は肥料は、硫安につきましては三本建の價格をとつております。大体まあ將來の落着く先としましては、生産者價格は全部一本に纏めるといいますか、條件の悪いところも條件のいいところも、できれば條件のいいところへ全部條件惡いものの値段を引付けて行くという方法をやつて行きたいと思いますが、肥料の需要の関係生産関係から行きまして、そう一時に無視してやるわけにいかんというのでまあ上中下といいますか、一番いいのは安く悪いものにつきましては或る程度その点を考えまして高く、買上げ値段を三本建にすることによりまして、一應條件を加味しそれをプールで以て計算して行くということによりまして、消費者價格を一本にして行く、かような措置をとつております。
  11. 平沼彌太郎

    平沼彌太郎君 そうしますとやはり三段にして保護政策相当濃厚に行われておるのでございますが、そういうふうな補給金その他統制廃止される時代において、引合わないコスト工場などをまだ保護して行くという行き方がいいかどうか。私は少くも生産價格をうんと落さしてそうして食糧消費者方面影響のないような生産價格を作れば、補給金を減らして元が安くなるところまで行き得るのじやないかと思います。この表で見ますると今後は消費者方面に対して大いに研究するとおつしやるがこの表はその逆であつて、私は少くとも先ず生産方面コストを下げる方針の案を立てて頂いて、それから補給金がどれくらい減るかということを考えて頂いた方が、本当の表が出るんじやないかと思いますが、どうも生産者を放つておいて消費者の方に全部ぶつかけるという方針が濃厚と思います。この逆をやつて頂いた方がいいのじやないかと思います。
  12. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) 物價廳といたしましては、お説のようにコストの高いものをできるだけ切つて行くといいますか、肥料生産その他と睨み合せましてコストを低めて行くということにつきましては、先程來申上げておりますように、相当熱心に関心を持つております。從いまして現在の三本建價格がそう長く続くといいますか、今後数年続くという性格のものではなくて、できるだけ早い機会にこれは現在最低の方へ近付けて行くような方向に進むべきものと思いますが、結局問題は肥料片方では確保しなければならん、片方生産がそれにどれだけついて行けるかということでございまして、御趣旨の点は同じように考えております。それをやります具体的の時期、テンポの問題となりますと、これは生産官廳とも緊密な連絡を取りまして、相当愼重に考えて行く必要があろう。それで從いましてこの際物價廳としましては、例えば肥料價格を、補給金を全廃しまして、全部二、三倍に上げるというような精神を持つているわけではございません。片方では消費者價格も或る程度は上げる、併しできるだけ生産者價格の方も落して行くことによりまして補給金を減らして行く、かように考えております。決しておつしやることとそう違つていることを考えているわけじやないと思います。
  13. 平沼彌太郎

    平沼彌太郎君 どうも御説明大分御上手ですけれども、どこから考えても生産者價格をどのくらい減らしそうして補給金をどのくらい減らして、消費者價格はこのくらいになる。三割ぐらい下るとか何とかということを多少織込んでやつて頂かないと、本当感じが出ない。これで生産者價格がうんと下げられた場合には、まるでこの表は無意味なものになつてしまうような感じがするのであります。もつと根本的に考えて頂いた表を出した頂かないと檢討余地がないと思います。
  14. 渡邊喜久造

    説明員渡邊喜久造君) 今日は中間報告だものでございますから、実は最終結論を出しますにつきましては、おつしやるような点は当然問題になると思います。一應時間的に先程申上げましたように原價監督などをやつておりますし、現在の段階においてはそれをはつきり織込んだ数字が出せる段階なつておりませんから、一應この辺で御勘弁願いたいと思います。
  15. 山崎恒

    山崎恒君 只今渡邊部長より肥料生産事情が非常によろしくなつたというような御説明があつたのでございますが、事実最近の事情生産状況はよろしいように聞いておりますが、工場状況を考えて見ますると、すでに或る会社のごときは相当のトン数を製造する能力態勢ができたというにも拘わらず、半分の生産ほか認められていないというような状況があるのであります。こうした面に対して政府は、一方においては生産できる態勢にあるにも拘わらず生産を停止させておつて硝安のごとき肥料輸入しなければならないというような状況はどこにあるか、その根幹はどこにあるかということをお聽きしたいのであります。  それから電力の問題でありますが、先ず日本再建は、日本では恐らく労力電力だけが我々の力によつて日本再建幾ら程でも動員できる問題だろうと思うのであります。人間はすでに八千万もあるので労力は限りなく我我再建のために使える。同時に電力は破壞はされておりまするがこれを整備或いは拡充によつて幾らでもまだ余力がある、こうした電力の面がまだ我我整備が足りないのじやないか。こう思われるのでありますが、その電力事情がどの辺にあるか、肥料等製造に及ぼす影響、これは大きな問題であると思うのであります。例えば九州の東洋高圧のごときは現在増資の域に入つておりますが、この会社のごときは二十万トンの生産能力を現在持つている、すでに三千人の職工を整備しているにも拘わらず十万トンほか造れない。かような状況にあるから從つてコストが非常に高くなつている。これは二十万トン造ればコストが非常に安くなるという状況があるのですが、こういう面が抑圧されている工場が他にもありますが、こういう点はどうであるか、一つ聽きしたいと思います。  それから先程岡田さんからも御質問があつたのですが、一部補給金を止めるというような問題ですが、現在の肥料公團の取つておる状況から考えて果してこの二本建にしたならば、満足なる経営はできないとかように思われるのですが、これはどうしても一本建にする何らかの方法を取らないと、あらゆる損害は生産者が全部蒙つてしまう、かように思われるのですが、この点は閣議でまだ決らないようですが、農林大臣一つ頑張つて頂いてどうしても農家の、消費者の考えるような又方法を取つて貰いたいこう思うのです。又特に肥料の高い物を農家が買いますと、パリテイー計算上どうしても米の價格は上る。上りますならば農家收入は多いようになりますけれども、支出の面でそれだけ税金その他で多いので、結局米價の問題が只今審議会等にかかつて來月は決定の域に入ろうと思うのですが、現在の農家としては米の高いことを望んでおりません。むしろこの税金の面で非常に苦しんでおる。これはもう農林大臣農家の出身であるし長い間の農政経驗者でありますからよく御存じでありましようが、すでに現在の農村はもう殆んど金が出盡してしまつておる。こういうような状況はどこに起因するかというと結局税金であります。いくら物價を上げましても税金で全部取られてしまつて、現在肥料を買うのにすら金がないというような状況です。ところが肥料公園の取つております現状は、公團は当初からこの金融的の措置を構ずるためにできたと思われますけれども、製造会社が苦しいのでずんずん公團に流しますので公團は下へずんずん肥料を落す。從つて消費者は要らない肥料をもうすでに取つて置かなくちやならん、かような状況にあるのです。この間の石灰窒素のごときは、もう四月も五月も先のものをすでに入れられておる、使うまでには濕氣を受けて固まつてしまう。こういうような不合理がまだまだできておるのでありますのでこうした面については極力私共は調査研究いたしまして、議会にもこの問題を一つ投げ込んで皆さんと審議して改善しなければならん。かように存じておりますが、そういう状況でありますのでそうした点についても特に一つ御考慮を願いたいと思います。  同時に肥料の取扱行政でありますが、これも通産省と農林省と二本の監督になつておるのですが、これを一つ一本に持つて行けないものかどうか、これを一つ農林省一本にすることができるかどうか、この問題を一つ大臣にもお聞き願つて大臣の一つ肚の中をお聞きしたい、こう思うのであります。
  16. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) 私の立場として一應お答えしたいと思います。先程來この補給金の問題が出ておるようでありますが肥料の立場から申上げたいと思います。政府といたしましては、現在補給金を各安定帶物資にいたしておつたのでありますが、漸次これは取外して行きたい、いつまでもこの肥料の援助をしておることは財政上許されないのであるから、企業自体において合理化せしめる上から申しましても、補給金は漸次外して行きたい。これを一氣に外すということは非常に衝撃を與えますから、ぼつぼつと区切つて外して行くという方針であるのであります。この補給金廃止しようという問題も論議の中に入つておるのでありますが、これを廃しますと忽ち農産物の價格がそれだけ高騰して参りまして農家は一應ありがたいようでありますが、それがために非常に税金は嵩み、勿論その收穫の全部を、増收の全部を取上げられておるわけではありませんけれども、從つていろいろの消費資材が高くなつて來る。ところが方面を変えまして消費者の立場から申しますと、それだけ食糧が上つて來るのでありまするから労賃等の関係も亦従つて影響をいたして來る。こういう関係がありますから、一概に米の價格を上げる、或いは肥料補給金を全廃して米價影響を及ぼすというようなことは軽率に考えられないのであります。一つを外せば五つも六つもに影響して参りますので最も愼重にこれを考えて行かなければならんのでありまするが、取敢ず生産の方面において主要食糧ということを目標といたした肥料と、それから主要食糧以外に配給いたしておる肥料との二つに分けて、主食以外の肥料に対して補給金を外したらどうかというのが大藏当局としても一應考えられたのであります。今日までお話がありました通り主食以外の肥料補給金は年間を通じて六十三億でありまするが、もうすでにこれらの二十四年度の下半期における肥料農家の手に渡つておりまして、これが今更主要食糧用だ、或いは主要食糧以外の肥料であるというのを区分することは事務的において絶対にこれはでき得ないのでありまして、これは大藏当局もその実情を考えましてどうもできそうもないということは了承いたしたようでありますが、然らば二十五年一月の春肥から主要食糧以外の肥料補給金を外したらどうだ、こういうことを考えておるのであります。併し今山崎さんのお話になりました通り、行政を二本建にいたしますと肥料公團が配給面において非常に複雜化して参るのであります。一方今日この主要食糧以外の肥料がどういうふうに取扱われておりますかと申しますと、勿論公定價格肥料を配給いたしておるのでありますが、「みかん」であるとか「ぶどう」であるとか或いはすいかであるとかいう特殊の作物におきましては相当市價が高いのでありまするから、二万円三万円の肥料を闇で買取つて栽培いたしましても相当まだ利潤が上るというような情勢にあるのであります。それでありまするから二本建で経理することは肥料公團としてはどうしてもできませんし、むしろ政府は主要食糧生産生産計画を立てて命令をいたしておるのであるから、この主要食糧に対する肥料だけは政府が責任を以てこれを配給する。で主要食糧以外の肥料はこれを統制から外して自由な立場においてはどうかという考え方も一應持つて來られたのであります。そういうふうな場合における操作方の問題といたしましては主要食糧へ配給した肥料がそういうほかの方へ廻るというような心配も一つあるのであります。併し又一つにおいては主要食糧に反当り稻にして六貫目とか七貫目とか配給いたしましたが、それじやどうも不足であるからというので自由に販賣されるところの肥料を買取つて栽培する農家もあるかも知れませんが、とにかくこういうふうな自由な立場で政府が責任を持つ配給の立場と、この二つにしたらどうだという意見もありましてまだ結論は得ておりませんが、そういう考え方も一應補給金廃止するという問題に関連して起つて來ておる次第であります。  今平沼さんの御質問にありました通り日本硫安製造の工程がまちまちになつておりまして、これは御承知通り外國のパテントを思い思いに取入れましたがために、その工場によりまして生産原價が非常に違うのであります。現在三つの段階硫安を仕切りましたにつきましては、とてもこの公定價格においては引合わない、脱落せざるを得ないという工場も確か一、二あつた筈と存ずるのであります。これが若しも政府補給金を外しまして手離しすることになれば、恐らくまだ更に脱落する工場ができるのではないかと思います。然らばその生産の償うところの優良なコストの安い工場が、その脱落する肥料の分だけを自分が更に増産する能力があるが、こういうことになりますと、これはなかなか資材なり設備等の考え方から容易にその生産量を増加するということが困難な情勢にあるように察せられるのであります。こういうふうに肥料製造事情が複雜化いたしておりますので、今政府といたしましてこの肥料の買取りを、補給金を全部廃してしまうということには余程愼重にしなければ、却つてその生産を減退さすというようなことになりはしないかという心配をいたしておるのでありますが、政府の根本方針といたしまして補給金というものは漸次これを外すということでありますから、各製造工場においても一層その企業の合理化を考えられまして、相当の能率を將來に上げるような処置をとらなければ、会社自体としても経営が困難であり又日本肥料事情から申しましても非常な支障を來すのではないかということを考えますので、全廃するということについては十分の檢討を加えなければならない問題が残されておると、かように考えるのであります。尚こういう事情でありまするから通商産業省にこれを主管させておるということは、今日非常に不合理な点がありますので、これは行政廳設置法のときに相当論議をいたしたのでありますが、あの時期において十分な檢討を加える余裕もなかつたために、一應現段階においてこれを処置いたしたのでありますが、尚これは政府といたしましても研究を進めまして、肥料の行政を農林省に一元化して行くということに努力いたしたい、かように考えておるわけであります。  尚この肥料補給金廃止につきましては、お手許に廻つておりまする資料にいたしましても、非常に生産者價格或いは消費者價格影響を及ぼしますので、この問題については税制の方面から考慮を拂わなければならぬと思うのでありますが、尚シヤウプ氏の予算編成に対する基本方針も示されておりませんが、税制の改革によりまして主要食糧價格が、よしコークス補給金を外し石炭補給金或いは鉄の補給金を外したがために、相当の上昇を認めましても、これが消費者の生活の上に影響しないように、又生産者農家の立場におきましても、肥料が上り米が上つたために税金が上つたというような結果に終らないように、税制の上においても考慮を拂つて行きたい、かように考えておるわけであります。尚その他の御質問に対する点につきましては、他の関係職員からお答えをいたすと存じますが、一應私の立場としまして肥料補給金に対する今日の事情経過を申したような次第であります。
  17. 岡田宗司

    岡田宗司君 肥料補給金の撤廃が相当農家影響を與えることは、もうすでに明白なことであります。で、この肥料の購入の面におきまして、御承知通り最近農家でも非常に経済が苦しくなつて金詰りの状況を呈している。で、農業手形等が出まして実施されておるのでありますが、本年度のごときは実に百五十億をたしか突破しておると思う。その大部分は肥料に向けられておるのであります。かような工合で農家が自分の現金で買えない、漸く農業手形で肥料を購入する、こういう状況なつている。それにも拘わりませず今日肥料補給金が廃せられまして若し肥料が値上りをして参りますと、農家はその肥料購入の資金に非常に苦しむ。農業手形の方は更にこれを拡大して行かなければならない。その利息だけでも農家にとつて非常に大きな負担になつて來るということが考えられるのであります。これが今後の農業経済の上に及ぼす影響は非常に大きいのでありますが、漸次肥料補給金を撤廃して行くものといたしまして、それについて農林大臣は、農家が資金の上に被りますいろいろな障害、これについてどうお考えになるか。又それの利息が非常に額が殖えて参るわけでありますが、そういうものの負担は農家に非常に大きな影響を持つわけであります。それらについての措置、そういうものについて農林大臣はどうお考になるか。これは一つその対策がございましたらお伺いしたいと思います。
  18. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) 山崎さんの御質問の中にもありまして私お答えするのを忘れたのでありますが、肥料の配給につきまして早く肥料公團から配給して、その倉敷料、利息等が農家の負担になつておるということが不都合ではないかと、これは相当各地で伺つておるのでありますが、先般も肥料公團の方へそういうことは不都合ではないか、お前のところの都合がよいからといつて農家に早く肥料を配給して、その倉敷料なり利息を負担させることはいけないではないかという注意をいたしまして、これは当然肥料公團として負担すべきものでありますと、併し今日までの肥料の配給が非常に遅れておつたがために、やかましく早く配給しろと、倉敷、利息は高くなつても構わんから配給しろと、これは主に関西方面でありますが、関東方面はさように肥料の配給を急がれないのでありますが、関西方面は非常に肥料の配給を急がれるのであります。それで承知の上でそういうふうに要求されますので配給いたしまして、すでに八〇%も秋肥を配給しておるところがあるということでありますが、これは本來の建前から肥料公團が負担すべきものであるということも公團承知いたしておりますので、これは当然公團の諸経費の中に負担されるものとかように考えるのであります。ただこの早期配給ということは、先程も山崎さんのお話のように石炭窒素が固まつて非常に迷惑するというお話もありましたが、そういう事実があるのでありましてこれは適期に配給するということが当然でありまするが、何と申しましても今日の生産状況会社はまちまちになりまして、その会社がその府縣と直結いたしておるならば、この配給の時期等も都合よく勘案されるのでありますが、一つ会社から各府縣にこれをプール的に配給するというようなことで、これはできるだけ近いところに配給するように、運賃等の関係もありますからやつておりますけれども、製造の時期と数量というような関係から意のごとくならないような情勢であります。この早期配給については農業者として希望する向もございますが、本年のごときは非常にこれで失敗をいたしたのであります。農家は、春の肥料が六月の末か七月かに配給が終つてしまうと、今年はこれだけの肥料でやらなければならんと申しまして、十分この肥料の施用の上において勘案するのであります。ところが追いかけ追いかけ秋肥が配給されますと、やれやれ又肥料が來たという安心感を得ましてやらなくてもよい肥料をやる、こういう形勢があるのであります。殊に本年「いもち」が発生いたしております地方はそれなんであります。なぜそんなにお前達はやるべからざる肥料をやつたのかと、そういうことをやつてはいかんではないかと、けれどもどうも手許にありまして、稻の状況がよその田よりわるいとそれは人情としてやらざるを得ません、これは麦の肥料とは承知をいたしておりますけれども、どうもやることになりまして到頭でき過ぎて「いもち」になりましたというようなことを白状いたしておるのでありますが、殊に山間地なり或いは今度「いもち」の発生いたしておりまする高知縣等においても確かにこの事実があるのであります。これは肥料の配給の面において操作するというよりも、むしろ技術の指導を更に徹底いたしましてそうしてこういうときには絶対肥料をやつちやいけないという、このことを技術指導の上から徹底をさせなきやならない。甚だ今日の技術はまだ徹底いたしておりませんので、指導の面が欠けておりますことを遺憾に存じますので、今年は非常にこれを感じまして將來そういう指導をいたしたいと考えておるわけであります。併しどうも肥料公團といたしましても、会社が持つておる肥料が輸送等の都会のいいときにできるだけ早く配給して、自分の責任を全ういたしたいという事務上の氣持を持つのは尤もと存ずるのでありますが、今の状況はそういうふうな情勢で、現在肥料公團の配給のやり方は司令部においても遺憾なき配給をやつているという批判を下しておるわけでありますが、併し実際農業の実状に合せまして今後の配給面についても十分な考慮を拂わしたいとかように考えておるわけであります。  今岡田さんの資金の面でありまするが、肥料價格相当つて参ります、併しこの農業手形はその農家が供出するということを一つの見返り担保として融通いたしておるのでありまするから、資金が今日のように枯渇いたしておる場合といたしましては唯一の農業再生産の上から申しましてはこの手形の方式によるより外ないと思います。何分農地が二十年間手放しができないという担保力のない農業経営でありますので、その他の資金の面が非常に窮屈になつておることは御承知通りであります。今後は農業協同組合というものの力強き結成によりまして協同の力によつて信用を高め、そうして金融の途を図るということより外許されないのではないか、かように考えておるわけであります。そういう面に対しましては中金等の利用を更に一層拡張いたしまして資金の面に利用をいたさすような方法を考えて行きたいとかように考えておるわけであります。
  19. 岡田宗司

    岡田宗司君 この農業手形をやはり拡充して行つてその量が自然に殖えて行くだろう、それで肥料資金の不足が補えるであろうといつた御答弁であつたのでありますが、これも相当いろいろな金融上の関係からいつてそう無限な殖えるべきものでもなし、又恐らく非常に殖えるということになつて参りますというとこれ亦いろいろ制限が加えられて來るようなことにもなつて來ると思います。又收穫が毎年狂いなく非常に順調に参りますれば農業手形を返却することも秋になつて容易なのでありますけれども、やはり農業上には御承知のように災害の問題が相当ある。そうなつて参りますとそこに農業手形の運用だけではなかなかうまく行かない問題も起つた來るように私共には考えられるのであります。そういう場合におけるところの措置をいろいろお考えになつておるかどうか。  それからもう一つ私がお伺いしたいのは肥料價格が非然に上つて参りまして、そういたしますと供出する者はそれだけ或いは米の價格が上つて参りますから、それで以てカバーできるわけであります。ところが御承知のように保有食糧の分は肥料價格の上りましたものをカバーできない、農家が全部負担しなければならない。而も保有の方が比較的多くて供出量の少いつまり零細農家、こういうものは肥料の値上りを全部ひつかぶらなければならんという問題が起つて來る。この問題について農林大臣はどうお考えになるか、それをお伺いしたいと思います。
  20. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) 肥料手形につきましては、肥料のみならずその他の生産資材に対しても利用をさして呉れという希望がありますが、この肥料手形は成る程肥料價格が上つて参りますれば増率して参るのは当然でありますが、併し肥料というものは農業生産價格の幾パーセントしか責任を持つておりませんのでありますから肥料價格が上つて肥料の手形が段々殖えて額面が殖えて來ましても、それが農産物の処理によつて支拂い得ないという理論は成立たんのではないかとかように考えるのであります。万一今のお話のような天災等がありまして不慮の損害を蒙つた、現に今年の鹿兒島地方のごとき、或いは徳島のごとき、ああいう殆んど壊滅に瀕しておる場合には收穫というものは全然ないのでありまするから、投資したものはいずれからこれを償還するかというようなことになるわけであります。こういう救済の場合は特別の場合として、資金の融通、或いは將來更生するような方途を別途に考慮していかなければならんと思いますが、通常の場合にいたしましては、肥料が上つて手形の金額が殖えましても、これは生産物の價格によつてこれが償還し得ないということはないのではないかと思うのであります。  尚次のお尋ねといたしまして、米價の向上に対する零細農家に対しての問題でありますが、これは私の常に憂えるところであるのであります。三反五反と小さい耕地しか所有し得なくて、自分の作つたものは家族の多いために殆んど消費して少しも供出いたしておらないという農家、これは三千円の米を食いましても六千円の米を食いましても結局腹の膨れるところは一つであります。三千円の米が六千円になつたがために買取るところのすべての物價が上つて來るので、米價の上つたことがこういう零細農家に対しては非常な苦痛なんであります。それでありますから米價というものは生産財でもあり消費財でもある。そのところから米價というものを考慮しなければ重大な問題が起つて來るのであります。今日経済上の原則から申しますと、輸入食糧は御承知の六千円程度になります。この六千円程度輸入食糧を内地の三千五百円程度食糧と並行せしむるために、國は殊更に内地の食糧を安くしましてそうしてこういう経済の一環を作つておるのでありますが、この点から申しますと日本の農業者に非常な犠牲を拂わしておるということも理論づけられるのであります。然らば日本の農業を輸入食糧のごとくに六千円程度に上げてどうなるか、こういう問題が起つて來るのであります。忽ち三原則を無視して労賃を上げなければならん、生活基準も上げていかなければならん。こういう問題が起つて來ますので、米價の決定につきましては、生産者の立場ということ自体がすでに二つに考えていかなければならん。こういう意味消費者の立場も考え又生産者の立場も考えていかなければなりませんので、米價の決定につきましては今岡田さんの御意見通り、実に零細農家というものが相当のパーセントを占めておるのでありまするが、そういう人の生活を脅かすことのないように一般の消費物資の價格が上らないようにする、或いはその他の税金を上げさせない、低めていくという方途を考えまして、米價の改正と関連して考慮を拂わるべきものである、かような考え方を私は持つておるわけであります。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今お伺いしましたのは、そういう供出の余りできないもの、全然できない、或いは飯米を逆に還元して貰わなければならないような農家が、この肥料の値上り分を悉く自分が背負わなければならない、こういう点について、何かお考はないか。米價の点でなくてそういう場合における、肥料が高くなつた場合にそういう零細農家が犠牲になる。その点についての何か対象をお考になつておるかどうか、それをお伺いしたわけであります。
  22. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) その氣持でお答えいたしたのであります。肥料が上つて自分がとつておる米が今までは三千五百円であつた、ところが肥料が上つたために自分のとる米が六千五百円になつた、つまり肥料が上つたために自分の食べておる米が非常に高くなつた。つまりそれだけ金を余計支拂つてるということになりますので、それによつて零細農家が高い肥料を買わされて、自分の食糧生産するという面に対しましては、生活品等或いは課税方面等におきましてその負担をできるだけ軽くするような政策を考慮して行きたい、かようにお答えいたしたのであります。
  23. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと申上げますが、農林大臣は一時から、今日が最後になるかどうか分りませんが、肥料補給金の問題について臨時閣議に御出席になるわけであります。それでそれまでにお食事の時間もありましようしいたしますから、できるだけ一つ有効的に御質問その他をやつて頂きたと思うのですが、そこで肥料の問題と、それからもう一つ最初にも申上げたように、主としてこれは單作地帶ですが早場奬励金で問題がやはり大きな問題であろうと思います。この二つを大臣がこの席におられる間に一つ集中的にやつた頂きたい。つきましてはいろいろ質疑をやつておられるのも結構でありますが、長引くといけませんから質疑の方は簡單にして頂いて、むしろ希望的の御意見をこの際大臣に、言葉は適当じやありませんが吹き込んで、閣議のときにもよくそれが或る程度反映できるような方向に持つて行ければ最も有効じやないかと思うのであります。そういう方向で一つお進め願つたらどうかと思います。
  24. 岡田宗司

    岡田宗司君 肥料補給金の問題につきましては極く簡單に申上げますと、肥料生産者生産コストの引上げがはつきりするまでは、現在のまま補給金を続けて行くように御努力願いたい。そうしてその生産價格が下る、それから又それによつても尚且つ上げなければならん場合でも、その影響が農業生産並びに消費者の負担の上に非常に大きく及ばないような措置をとる、その方策が確立するまでは現在の肥料補給金を続けて行くという方針をとつて頂きたい、これをお願いしたいと思うのであります。
  25. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 今の岡田さんのお話は、最後の後の方は主食ですね、主食の方の補給金さえ続ければいいという結論になりますか。
  26. 岡田宗司

    岡田宗司君 主食以外の補給金を外す問題でありますが、これは一面非常に御尤ものように思うのであります。併しこれによりまして配給の混乱が起る、直ちに何と申しますか末端におきまして、つまり配給を受けてからの問題でありますけれども、いろいろ闇の横行を助成するような傾きがある、こういうことも考えられて來るのであります。從いましてもう少しその問題についても愼重にお考え願つて、やはり肥料補給金の問題については、最後まで一つ撤廃を保留しておいて頂きたい、こういうふうに考えます。
  27. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) この肥料補給金をこういうふうに一つ分類してお考え願いたいと思うのであります。  主食政府生産命令をしておるから、この補給金でなしに、肥料を配給するところの責任を政府が持つ。果樹、蔬菜等は政府生産の責任を持つておらないのだから、これは取扱わなくてもいいではないかという一つ考え方と、それから補給金を外す場合において、主要食料は大事だからいろいろの手間賃やら消費者の生活に関係するから、これは或る程度外す。併し果樹や蔬菜はべら棒に勝手に賣つておるからこれは外してもいいじやないかという、こういうこと。尚肥料公團が主要食糧肥料も、主要食糧以外の肥料も今のように取扱つておると、そういうふうに外した場合に肥料公團に取扱わしては混乱する、混乱するから、それでは一層主要食糧だけ肥料公團に扱わして、主要食糧以外のものは外さしたらどうだろう、こういう点が今問題になつておるのであります。ですから補給金はいずれ外される運命にありますけれども、主要食糧だけは残すべきである、併し主要食糧以外の補給金もこの際外してはいけないという御議論か、主要食糧以外は外してもいい、外してもいいが外してしまうと二本建になるから、肥料の配給経路が混乱する、混乱するからそれはできんとすれば、むしろ外すことがよければ、これを自由にさしたらどうか、こういうことが今肥料補給金の問題に関連した論点となつておるのであります。
  28. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) その際に外すという場合には、生産工場コストが違つておりますが、そのコストはプールするんですか。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 そこで非常に問題になつて來るのですが、若しそういうふうにして果樹或いは蔬菜等の方に廻る分が、これは生産計画と申しますか配給計画から外されて行く、こういうことになる。一体肥料は現在あり余る程あるならばそういうことも考えられるのですが、まだ主食肥料の配給不足が考えられますときに、そういうことをして一部を自由にするとどういうことになつて参るかというと、生産計画の上にも響いて來るのではないか、その点についてどういう措置を講ぜられるのかお伺いしたいそれが第一点。  それから第二点は蔬菜の問題、果樹は別としまして、蔬菜は御承知のように自由販賣にいたしましたとたんに、大消費地におきましては非常に價格の騰貴がございました。蔬菜は特に肥料を多量に要するものですから、若しこれが二倍乃至三倍というような肥料價格になりました場合に、蔬菜の價格相当騰貴することは御承知だろうと思います。そういたしますと都市の消費者生計費の上に及ぼす影響というものは非常に大きいのであります。こういうことをお考えになつて頂きますと私は主食以外のものについても肥料補給金を外すということは甚大な影響があると思う。特に最近においては労賃が騰貴がチエックされており失業者も非常に多い事態において、蔬菜價格肥料補給金を外したためにうんと上るということになつて参りますと、実質的に賃金を低下させる結果になつて参るのではないか、その点について農林大臣はどう考えておるか、私は蔬菜に関する場合も肥料補給金廃止すべきでない、こういう考えを持つておるのであります。
  30. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) 肥料生産は今日は相当潤沢になつておるのであります。これは輸入をこちらから要求したのではありませんが輸入される肥料関係もありますが、これは畑地に関する肥料でも生産ができておりますので、今日実際の農家におましては七貫目も八貫目も窒素をやつておる。これは三要素の点から申しましても今七貫目内外配給しておるのでありまするから、これで稻作の面については化学肥料はもう十分できておると思うのであります。それでありますから蔬菜なり果樹なり特用作物方面にも化学肥料を配給いたしておるのでありまして、決して主食生産の上において肥料が不足するということは絶対ないと、かように考えておるわけであります。又今申しましたように自由に処理いたしましても最高價格は無論決めなければならんわけでありますが、東京近郊の蔬菜栽培業者を見ましても配給肥料は殆んど使つておりません。これは都会の人糞尿を主として使つておりまして、殊に蔬菜は化学肥料よりもむしろ人糞尿を使つた方が、非常に育ちがいいのであります。火山灰等の関係から申しましても、人糞尿を主として使つておりまして、なかなか都会の糞尿を全部利用するということは容易ならざる量でありますので、相当この近郊の農家はそういう方面で余り化学肥料に依存しておりません。殊にこの近郊地方の農業蔬菜園藝が、今日は輸送の関係から遠いところから又特殊の他帶から都会地に輸送されておるのでありますが、そういう面においては例えば和歌山縣の玉ねぎが東京に参る、或いは大阪、名古屋に参るという場合においては、人糞尿の不足のところでは化学肥料に依存しております。私は決して蔬菜園藝が必ずしも化学肥料に依存しておらないということを考えんのであります。併し肥料の価格が上りましたから蔬菜の價格が上つて來るということも一應考えられるのでありますが、今日のように自由販賣をいたしておりますと、例えば大根で申しましてもその生産量と消費者の購買力というものに支配されまして、必ずしも生産費を償うような價格で賣れないことがあるのであります。これは自由市場の現状でありまして、これだけ元がかかつておるからこれだけないと大根は賣れない、これだけないと「きうり」は賣れないと頑張りましても、生産が沢山できて消費の量が少くなつて來れば大根は萎びる、「きうり」は赤くなるというので自然その價格は下つて行くという需要供給に支配される價格でありますから、必ずしも私は肥料が上つたから、それがために蔬菜價格が上り都会消費者の生活を脅かすというようなことは、一應理論的には考えられますけれども、実際問題としてはそういうことは恐らくないのではないか。幾分は無論加算されます、加算されますけれども、それで消費者の生活が脅かされるというように値上りをするということはないとかように考えるのであります。
  31. 河井彌八

    ○委員外議員(河井彌八君) 簡單に申上げます。硫安の利用につきまして私共はいろいろ研究しております。そこで今度の、今のお話の大要から判断しますと、これは硫安ばかりではありませんが、主食用は統制するが、その他に使用するものは統制を外すのだというお考えのようであります。確定してはおりませんがそういう御意向であると思いますが、我々は稻の稻熱病を研究しておりますが、結局硫安の利用が間違つておる、これは大臣もさつきおつしやつた事実を発見して、これは長い間の研究でまあそうなつております。そこで、私は主として責任者でありますが、硫安を採草地に使用する、そうすると草が三倍乃至五倍採れます、それを刈取つて堆肥若しくは厩肥にする、これを主食は勿論他の畑作の方面にやります。そうしますとその生産は非常に確実であつて稻熱病のごときものは出なくなる。勿論全部やつてしまうわけではありませんがそういう利用法を我々は考えておる、それの実行を現に進めております。私は直接に硫安をやるということはよくない。むしろ硫安ばかりでなしに三要素ということは私は古いと思つております、肥料は三要素という時代ではない、もつと沢山の養分を持つところの草を通して、それを堆肥若しくは厩肥として使うという方法を私は実行しておる。ところが主食に直ぐやるのではないということから妙な取扱をされると非常に迷惑であります。こういう点についてよくお考えおきを願つて、要するに正しくこの作物が成育する方法を助長するという原則を誤らないようにして頂きたい、そのことをお願いしておきます。
  32. 山崎恒

    山崎恒君 肥料の一部補給金を取るという問題については、その事情はよく分るのですが、大臣の先程おつしやつた一應会社の思い思いにした方がよいという案もあるというようなお話があつたのですが、これを会社の思い思いにしますと、おのおの会社製造能力も違いますし從つてコストも違う。ただここで製造会社の欲するところの電氣なり或いは資材なりのものが思う存分入手できる態勢ならこれは手放しにしても差支ない。ところが漸くおのおの製造会社は起ち上つてどうやら生産の緒についたというような会社が大部分であろうと思います。又補給金によつて生きている会社が大部分でありまして、それを全部手放しにしてしまうということになりますと、これは会社生産が償わないというようなことで脱落して他に轉換するというようなことになりますならば、これは肥料生産上由々しい問題だろうと思います。そこで、どうしても一部の主食のみに補給金を出すということになりますればこうなり、又一方統制を取るということになりますれば会社の自由競爭になりますけれども、農家補給金を受けた安い肥料をわきに流す、こういう点もないでもない。こういうことも考えられると思うのです。同時に肥料会社が満足に立つて行かないじやないか。私は肥料会社の提灯等をやるわけじやありませんが、そうなつて來ると農村の將來が又一連のものでありますので杞憂される問題だろうと思いますが、そうした点等について現在先程申上げましたように、二十万トンの製造能力を持つている会社は十万トンばかりしか作つていない。これはいろいろな会社がそうした現象があるようであります。労働組合等の関係で三千人置く会社が十万トンしか作つていない、二十万トン作れる態勢が立派にできている。これは私は肥料公團の調査に行つて見て來たわけですが、石灰窒素を作つている会社硫安を作つている会社もそうした状況が多い。何故か嫌つている硝安を入れなければならないかという矛盾もあるわけであります。これは電氣事情の点もあるでありましようが、とにかくそうした面等を考えて、これは主食のみを補給するというふうになりますと混乱があると同時に、そこに非常に消費者にとつていろいろ問題が惹起される。こう思われますがそうした点を一つ大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  33. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) これは余程愼重に研究したいと思つております。又皆さんの御意見も十分承りたいと思うのでありますが、硫安日本の沿革から申しますと、昔はこんなものは使つていなかつた、こんな馬鹿な肥料は百姓が横著になつて軽いものだから、砂糖にサッカリンを使つたようなものであるから非常に悪い。五年も十年もやりますから酸性土壤になつて非常に荒廃している土質になつているのであります、できるだけ廃めてしまいたい。石灰窒素の方なれば石灰分を撤くようなものでありますが、硫安は硫酸を撤くようなものでありますから非常によくないのであります。むかしはこんなものは会社が奬励してもなかなか百姓は使わなかつた、それが怠けの百姓になつた。簡單に使えて硫安々々と言い出したのでありますが、將來有畜農業が盛んになつたら現在の硫安工場なんか潰れてしまつても構わない。敢てこんな工場を保護しなければならんということは農業政策の上から考えられない。併し今日は酪農も発達しておりませんからできるだけ害のないようにしてサッカリンやズルチンを使わなければならん、指導して行かなければならん。私の申しておりますのは、三十万トンの製造能力硫安会社に今やつておりますが八割でありますから二十四万トンですが、政府は責任を持つて生産命令をして、後の六万トンだけは自由になる、六万トンのものがその会社工場コストが高いために一般の業者が損をして賣らなければならん、賣らなければならんかも知れないけれども、この八割というものは政府のプール計算によつて補償されている。その会社だけでは作れつこはない、今までのようにできるだけコストを下げて競爭して行くというより……、今では何ぼ生産コストがかかつて補給金を貰つてプールして安易な立場で製造会社はやつておる。その負担は國家が負担しておるわけです。ですから補給金というものは過渡期の制度であつてすべての産業が廃止すべきである。そこで潰れる会社は潰れた方がよい、そうして現在の時價によつて計画を立てて行く、そこに初めて企業の合理化があるんだ。だからこれは私の考え方を推し進めて行きますれば、結局主要食糧肥料だけは政府がこれからプール計算にして補給金を出して確保して行く上においては決して潰れはしない。ただ二割のものを損をして賣るか或いは幾らかの利益で賣るかという問題が残されておるのであります。  又農業生産者につきましても、配給肥料の以外にはそういう自由の肥料があつた場合に買つて來てやつてもよい。こんな肥料は要らん、家は有畜農業をやつておるから厩肥や堆肥を作つておるのだからといつて配給肥料を賣つてもかまわん、そういうことは自由にして差支ないと思うのであります。それをやるから闇で現に私の承知しておるところの田舍の百姓なんか二町程作つておりますが、牛を二匹も飼つて堆肥や厩肥を自分の田にやるほどできる、リンク物資などはこれはしようがないから賣つておる、こういう事実が沢山ある。だから私は農業経営というものは一人々々経営のやり方が違うのでありますからできるだけ自由な経営をやらせ得るように資材の配給面も考えて行くべきではないか、農業者の立場から見れば、肥料工場生産コストがどうだというようなことを考える余地はないと思うのであります。そうしてただ政府は主要食糧生産命令をして頼んでおる以上は、家畜を持とうと持つまいと肥料だけは責任を持たなければならん、こういう氣持を持つておるわけであります。
  34. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 私もこの補給金の配給については反対なんであります。今大臣が申されたように主食は命令によつてなされるのだからこれにはやる必要がある。主食外のものは然らざるものであるからこれは外してもよいじやないか。こういう御意見のようでありますけれども、主食よりも本來は副食物の方が金がかかつて來る。先程大臣は需要供給の関係でそう野菜は高くならんと言われましたけれども、然らばその高くなつたいわゆる肥料價格騰貴によつてその部面を誰が負担するかと申しますと、それは百姓が負担する。それで若しも大臣が言つたように、そ野菜やなんかは安くならんと私は思うのでありますけれども、そうなれば結局これは消費者が負担してしまうのであります。現在の立場からいつて果してそういうふうに上つた價格によつて消費者に負担能力があるかどうか、ないとするならば消費者に対するその面において補給金を出さなければならん、結論において同じなんです。どこかこの補給金を止すことによつて利益を得るならともかく、國民全般が負担するという意味においてどこも違いはない。現在の立場からいつてそう上つたものを負担して生活する能力があるかどうかということを考えた場合に、わざわざこの経済状態を尚更混乱に導くようなことをしないで現在のまま行つた方がいい。又特に農村においても上つた場合においては非常に負担が大きいということは明らかであります。その点について先ず現在の生活面において、これ以上上つた場合に消費者に負担能力があるかどうかということを大臣にお聞きしたいと思います。ないとするならば、補給金の撤廃は止して貰いたい。
  35. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) お答えいたしますが、どういう細かい勘定になりますか私は分りませんが、主食以外の需要と申しましても補給金が年間を通じて六十三億で、それが桑にも「ぶどう」にもお茶にも蔬菜にも行つておりますので、蔬菜の方へどのくらい行つておるか安本は知つておるでしようが、私は細かいことは知りませんが「りんご」や「ぶどう」を食わなくてもいいわけであります、蔬菜は我々日常生活について欠くべからざるものでありますが、この蔬菜は肥料補給金廃止しましたところで、そうまで生活の基準に何パーセントという影響を及ぼすようなことはないのではないかと思うのであります。これは一般の負担だとおつしやるが一体補給金というものは國民が負担してやつておるわけでありますから、それを公正に國民がおのおの生活樣式によつてそれを廃止して、負担は物價の上において負担するということは、今後いずれそういう事態に持つて來なければならんと思うのであります。蔬菜なんか先程岡田さんからも御質問がありましたけれども、需給関係ですからこれは非常に肥料を沢山やつた十分作つたんだからそう安いものに賣れませんといつて頑張つておりましても、消費者がなければあかんのです。今までのマル公でやればそういうことを考えてマル公を決めまして、何は何ぼ、何は何ぼと決めてあるんです。これは非常に肥料をつた「すいか」だから、よその「すいか」は二百円で賣ればこれは三百円だといつて頑張つてつてもお客がなければ何にもならないのでありますから、生産費が高いから必ず蔬菜は高く賣れるというわけではないと思います。それですから生産者というより農家の財政におきましても、そういう馬鹿氣たものを高い肥料を使つてつても賣れない、だから注意しなければならん。生産が減つて來ますと上つて來る、これは又作らなければならんといつて作ると下る、この需給関係によつて上つたり下つたりすることに面白味がある。これが市場價格だと思うのでありますが、三十六億の補給金を全部廃止しましたところで、蔬菜面に及ぼす影響というものは極く微々たるものであろうと思います。むしろ茶であるとか桑であるとか「みかん」であるとか、この桑だけでも確か六億以上の補給金があつたと思つておりますが、そういうふうに非常に特有作物の方に肥料が使われておりますから、蔬菜の面なんかには大した影響がないんではないか。又蔬菜というものの生活に必要なことは申上げるまでもないのであります。補給金を外したがために生活費に非常に影響を及ぼすというようなことは幾らかは無論あろうと思いますけれども、公定價格を外しまして自由價格にいたしておりまする今日といたしましては、蔬菜というものは補給金を外したがために高い値になつたしいうようなことは、需給事情によつて必ずしも理論付けられないのではないかと、かように考えるわけであります。
  36. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 大分時間が経ちましたから、肥料補給金の問題については、存廃問題並びに只今お話になりましたようないろいろの配給方法の問題等、愼重に御檢討を願うことが多いと思いますから、それは政府の方においても十分に万般の事情を御檢討つて愼重に処理をして頂くということにいたしまして、次の問題に移りたいと思います。  次の問題は早場米の奨励金の問題であります。この問題については單作地帯の特別調査の小委員会が主になりまして、先般秋田縣、新潟縣、北海道で現地の公聽会等も開きまして、その後東北地方の篤農の方々の團体でありまする全國水稻單作農家研究会どいう会から代表者の方が大勢お見えになりました、この委員会にも実情の御開陳があつたのであります。その際の結論は、單作地帯については早場米奨励金の制度は一番有難い制度であるから、これについては是非存置して貰いたい。併し一面において又種々の弊害がある、時期が適当でない、併し一面からいうと唯一のこの奨励金を得たいために早く出さなければならん。そこで調整の問題とか、その他いろいろの問題が出て來る。從つて金額は米の値段が上ると当然上げて頂くことを期待するけれども、同時に時期の調整の問題、具体的にいいますと、例えば秋田縣を山形縣よりは十日程常に作が遅れておる、今年は特にそうなんで、秋田縣、青森、岩手のようなところは、十日程延ばして貰いたいとかいうような具体的な事項を挙げての御陳情もありました。政府の方においては、現在早場奨励金の問題について、新聞紙の報ずるところによりますとまだ決定は見ておらないようであります。この問題について一應御説明を伺うと同時に意見の御開陳を願い、又質疑をやつて頂きたいと思います。  大体先程申上げましたように、農林大臣は一時の閣議に出られますから、もう三十分間くらいの間にこの問題をやつて頂いて、あとの問題は、大臣がおられれば尚結構なんでありますけれども、御無理と思いますから、大臣が御退席になつた後で又御審議願う、こういうふうにいたしたいと思います。
  37. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) 一應私この早場米奨励金に対しての考え方を申上げまして、細かいことは事務当局を列席いたしておりまするから、御質問にお答えして貰うことにいたします。  早場米の奨励金を制定いたしましたことは、食糧事情本当に窮迫いたしておりました当時考えましたことでありまして、この端境期をどうして凌くかという問題でありました。甘藷の早堀り、米の早場米についての供出ということをお願いしなければ、この端境期が越えられなかつたという過去の二十年、二十一年の歴史があるのでありますが、幸にアメリカの輸入がこちらの予定いたしておりましたように順調に運びましたのと、供出が農家の御援助と御努力によつて都合よく行きましたために、今日は非常に食糧事情がよくなつて参つたのであります。ところが早出し米の去年の成績を見ますと、或る府縣のごときは全縣全部が早場米供出になつたところがあつたのであります。そうしてその実情を見ますると、今日田に生えておつた稲が明くる日にはちやんと米になつておるのであります。それが食庫の下積みになりましてどんどんそれからそれへと供出になつて來まして、もう下積みの米を出すときには米の形をしておらなかつた。東京へ持つて來ましても「とり」の餌にもならなかつたというような事実があるのであります。これは石当り千円以上奨励金を出しておりますことは、早場米を作るところは例えば農林一号なら農林一号が一番適当いたしておつて、中手、奥手というものは氣候の関係で作れないのであります。作れないがそういうところでは單作地帯であつて裏作ができない、こういう氣持から初めは早く出して貰うという一つの獎励であつたのでありますが、これが今日はむしろ單作地帶幾らかのお見舞、救助というようなことも一面考えられるのであります。それでありますので今年も無論早出し米の獎励金は出す予定をいたして、関係方面と交渉を続けておるわけでありますが、時期を今まで四回に切つておりましたが、この時期をどう見るかということが一つの問題でありまして、これは事務的に今考慮を進めておるわけであります。尚先程委員長からもお話になりましたように、地区的の悩みがあるのであります。或いは東北地方、北陸地方と同じ早稻を作りましても、その收穫時期が非常に喰い違う場合がありますので、これは地区的に考慮を拂わなければならんということを考えております。こういう氣持をもちまして今年度もこの早場米に対しては幾らかの獎励金を出したい。これは昨年と同額に行くか、或いはそれ以上に上りますか、これは米が上つたから必ずしも獎励金を余計出さなければならんという理由はないのでありまするが、そこは又米の價格に関連いたしまして相当の額を考慮して行きたいと、かように考えておるのであります。  ただここでこういう氣持を持つております以上、米であればいいということは断じて許されないのであります。東京へ持つてつて東京の人が食べられる。北海道へ持つてつて北海道の人が米として食べられるというだけの價値を持つ米でないと、政府は買上げないという方針を今年は固く堅持いたしまして、少くとも早場米の檢査等級を或る限度制限いたしまして、或いは一、二等で打切りますか、三等までで打切りますか、とにかく水分で言いますれば一四%半ぐらい以上のものがあつたらこれは早場米でありましても受取らない、或いは奬励金を出さないとう制度にいたしますか、もう昨年までの実績に懲りましたのでありまして、政府も非常な損をいたしたのでありますから、折角できた米を今日あつた稻が明日米になつているというような乱暴狼藉な、米選機にもかからないような米を持出してとにかく俵へ放り込めばいいというような、こういう無責任な生産者に対しましては、こつちは早場米の奬励金を出さないということを考えているわけであります。ただ單作地帶の方につきましてもお考えを願いたいことは、政府單作地帶という一つの対策として考えているという氣持のあることをお考え願いたいのと、又そういう地方は奥手や中手が如何に收穫が多いから作ろうとなさいましても、作り得ないのであります、霜が早く來まして、それは全く作れない。現に石川の加賀根と申しますか、もう八月、九月にはどんどん出ておつた、出ておつたということは、加賀米と名付けられる早稻より後の、收穫が幾らかよいようなところの中手、奥手を作りましても霜が早くて米にならん、仕方がないので早稻を作る、こういうことで加賀米は早く出ておつた。それも今日は加賀米の品種が改良されまして、農林一号という中手、奥手より收穫が多いものが栽培せられているのであります。そういう現実と地方的事情ということもよく考えて貰いたい。又政府といたしましても單作地帶であるということを考えて、又一面にはこの端境期を緩和して貰う、この三つの総合した立場から早場米の奬励金を決めて行きたい、かように政府は考えまして、今地区別はどういうように分ける、或いはその約束する時期をどういうようにしたらいいか、昨年は千円、八百円、六百円、四百円とこれを四つに分けましたが、これを今年は何階級に分けた方が適当であるか、こういうことを今事務当局におきましても研究いたしているのでありまして、関係方面からいろいろ陳情もありまして、よく実情を承知しているのでありますが、政府はそういう氣持で早場米に対する奬励金を処置いたして行きたいという考えを持つているわけであります。この点をお含みの上一つ審議をお願いいたしたいと思います。
  38. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) どうぞ御質疑を……
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 早場米奬励金につきましては、政府で出す方針である、こういうことが明らかになりましたので、恐らくそれがはつきりすれば單作地帶における農民が安心されるだろうと思います。私、單作地帶方面を廻つておりますと、本年においては早場米奬励金が廃止されるのではないか、こういうような一部不安もあつたようでありますが、これを早く解消さすように政府の方ではつきりとした方針を示して頂きたい。尚この奬励金の問題につきましては、これは時期が非常に問題でございまして、昨年はその奬励金を出すのを九月三十日までとこういうことでございます。これは十月十日までにしてくれという意見相当多かつたのでありますが、昨年は九月三十日になつたのであります。本年も十月十五日或いは二十日までにして貰いたいというような意見も多いのであります。特に北海道におきましては、同じ早場米を作つておる所でありますがこれは秋田や山形よりもずつと遅れるわけでございます。そうして九月三十日までということになりますというと可なり無理があるのでございまして、この北海道につきましては特にその期日の点を御考慮が頂ければいいのであります。全体として日がずれるならばそれは結構でございますが、若しそうでなかつたならば北海道については特別に考慮が拂われるかどうか。無論全体といたしまして事務当局で現在幾つかの案をお持ちだろうと思うのでありますが、この事務当局の幾つかの案について、現在お持ちになつておるものが或る程度はつきりいたしておりましたならば、それを御説明願いたいてこう思う次第であります。
  40. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) いろいろ研究をして見ておるわけでありまして、而も予算と睨み合せまして或いは今年は第一回は何百万石、第二回は何百万石というふうに、買入れの限度を凡そ決めまして、早場米の方へ割当てるというようなことも一つの考えのうちに入つておるのであります。時期は昨年度は四回に区切られておつたのでありますが、本年度も地区的にこれは考えて行かなければならんと思いますが、十月一杯までぐらいは早場米として買入れる地方があるのではないか、かようなことも考えておるわけでございます。その間を何段階に分けるかというようなことはまだはつきり事務的にも決定しておりませんのでお答えできませんが、この去年の例を幾らか是正して、幾らかでも持つて來て下さいというような意味でなしに、輸送或いはこれらの配給等のことも考慮いたしまして、本年は総括的に時期的に一定の限度を以てお願いしたいというようなことの含みを持つて、今研究を進めておるようなわけであります。
  41. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと伺いますが、新聞はいろいろの案が出ておるので困る。だから我々も同じ案が出ておると迷わないのですけれども、却つていろいろな案で出ておるから迷つておるが、その中に今年は玄米で供出させるというものがあつたのですが、若しそういう案が事実だとすればこれはもう必ず起る問題は、あとの單作世帶における畑作轉換の問題とも関連するが、飼料、糠の問題、これは私は必ず大きな問題になつて來ると思う。というのは百姓は一方では白米で出したいが併し時期的に間に合わない、併しできるだけ余計出したいから玄米で出す、そうなると今度糠がこつちの消費地へ來て飼料が残らない、こういうことで必ず私は飼料の問題が起ると思います。そういう場合に仮に玄米なら玄米ということであれば、これは私見であるけれども、あとで例えば農業協同組合なら農業協同組合に委託する、そこで白米にして糠をその他場へ残してそうして配給するときには白米で出す。  こういうような方法が設けられるとか何か地場に飼料が残るような方法を考えて頂きたいと思うのですが、今の玄米かどうかという問題はどうなんですか。
  42. 森幸太郎

    ○國務大臣(森幸太郎君) それは申し忘れておりましたが、今年は玄米で買う方針を持つておるのであります。これは早場米といたしましては大した飼料ではありません。ありませんからその地方に米糠の保有ということについては相当その後における処置において確保できるのではないかと思うのであります。この間各縣から糠を欲しいから白米で供出させてくれという陳情がありまして、これは農家といたしましては一應御尤ものように聞くのであります。家畜の飼料がないとか何とかおつしやいましたからそれは一應さように聞き取れるのでありますが、あなたの牛は黒い牛か、赤い牛か、斑の牛かと聞きましたら、私の方は朝鮮の赤い牛や黒い牛が多くて、余りぶちの牛はおりませんとこういうことでありましたから、ぶちの牛がおらんのならどうか手間肥で養つて頂きたい、乳牛ならば飼料に糠というものが大事でありますが、朝鮮牛に米の糠を食わすなど贅沢なことをせんと草を刈つて食わして下さいとそういうことを申上げまして、それがどういうふうに響いたか知りませんが、この早場米は相当数量も制限されておりますしこれは玄米で出して貰いたいと思います。そうしませんと若し二十四年度産の白米がどんどん出て來ましてはこれは玉困る場合があるのでありまして、成るべく二十五年度産も玄米を以て買入れるということにして決めて行きたい。がように考えておるのでありまして、糠の問題はまだ百万石、二百万石全國的に供出して貰いましても、後に相当の米があるのですから糠の農家に必要な量くらいはその後において確保できるのじやないか、こういうように考えておる次第であります。
  43. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) その点がこうなんですよ。例えば單作地帶ではこれはどこでもやつておると思いますが、水稻單作農家の窮乏の救助対策というのん單作地帶に持つて行つたのです。これは結局先程のお話は山形と新潟なんですが、大部分の供出を早期供出として出す、これは制限をするのですが、実際問題としてなかなかそこがむつかしい問題があるのですね。そこで出した後なんかみると飼料の補給として米糠を一俵五百円で買つたとか代用糠一俵を三百円で買つたとか、こういう工合に飼料で悩んでいるのです。大部分は百石生産が上つて九十五石供出しているというような式で大部分のものは出すものですから、それを止めることが今年の早場供出の狙いなんだけれども、実際問題としてはなかなかそこにデリケートな問題があるものですから、ちよつと問題は余程よく考えて頂かないとこういう問題が起ると思いますが……  それじや農林大臣閣議に出られる前の御準備もあるようだしいたしますからこの程度にして、後は事務当局がおりますから、一つお願いいたします。  それじや委員会はこれにて散会いたします。    午後零時三十分散会  出席者は左の通り。    委員長     楠見 義男君    理事            岡田 宗司君            平沼彌太郎君    委員            大畠農夫雄君            星   一君            加賀  操君            徳川 宗敬君            山崎  恒君            板野 勝次君            岡村文四郎君   委員外議員    内閣委員長   河井 彌八君   國務大臣    農 林 大 臣 森 幸太郎君   説明員    総理府事務官    (経済安定本部    生活物資局次    長)      前谷 重夫君    総理府事務官    (物價廳第一部    長)      渡邊喜久造君    総理府事務官    (物價廳第二部    長)      長谷川 清君    農林政務次官  坂本  實君    農林事務官    (農政局長)  藤田  巖君