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1949-05-18 第5回国会 参議院 内閣委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年五月十八日(水曜日)    午後二時十三分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○行政機関職員定員法案内閣送付)  (右法案に関し証人の証言あり)   —————————————
  2. 河井彌八

    委員長河井彌八君) これより内閣委員会を開会いたします。行政機関職員定員法案、この法案議題といたしまして、これに関係いたしまする事項を、本日証人として御出頭を願いました六名のお方々にそれぞれのお立場を以て十分御自由なる御意見を御発表願いたいのであります。本日御登院を願いました各位には非常に御多忙のところをお繰合せ下さいまして御出席を頂きましたことは、内閣委員会といたしまして深く感謝を申上げる次第であります。行政改革ということが目下の実に一大問題となつております。これが審議をば内閣委員会において続けておる最中であります。そこで政府関係職員定員法が提出せられたのでありまして、相当に複雜な利害の対立した問題でありますので、特に証人のお方をお煩わし申しまして、それぞれのお立場から率直な意見を御開陳願いたいというのが今日の委員仕事であります。どうぞさようなお含みを以ちまして、御腹藏ない御意見の御陳述を願う次第であります。本日は誠に有難うございました。  そこで只今前田一君から早く御退席になる必要があるというお申出がありましたから、前田君に御発言を願います。尚申上げて置きますが、証人の御発言の時間は大体三十分までの程度にお願いいたします。その前に宣誓書捺印をお願いします。    〔証人宣誓書捺印
  3. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 前田一君。
  4. 前田一

    証人前田一君) 私は日本経営者團体連盟常務理事前田一でございます。本日議題となつておるまする行政官廳職員定員に関する法案につきましては、私共民間におりまする者といたしましては、直接の関係はないわけでございまするが、私共民間経営者の側におりまする者といたしまして、その立場からこの法案に対する感想とでも申しまするものを述べさせて頂きたいと存じます。申すまでもございませんが、國民が等しくその所を得まして文化的にして幸福なる生活を営むということは、これは民主政治理想であり、使命でなければならんと存ずるのでございます。併しながら敗戰日本の現段階を眺めて見ますると、その理想境地に達するための非常な苦しい陣痛のもがきを続けておるのが現状でございます。御承知の通り昨年末マ書簡によりまして九原則発表があり、更にドツジ旋風によりまして、これが一段と強化せられた日本におきまして、すべてのものの見方、又考え方というものは、この段階にふさわしい、この段階を乘切るためにどうであるかという、この観点から判断をせなければならない、かように考えるのでございます。本年の初頭、一月の末でございましたが、司令部の主催で労使協議会というものが持たれまして、これを三つの分科会に分けて審議せられましたが、その中の第二部会、即ち雇用関係を扱うところのこの部会におきまして、今日の九原則を嚴密に実施をしなければならんというこの段階においては、非常に嫌なことではあるが人員整理ということは、九原則実施の途上においては避くべからざるところのものである。而も人員整理失業というような問題は現に起りつつある事実であるし、又將來考えれば不可避の問題であるから、その事実の上に立脚して、むしろこれに対するところの対策をどうするか、こういう問題を議論する方が現実的であるというような点におきまして、労使両者意見の一致を見たのでございます。それで政府行政整理という問題も同じくこの九原則実施下におきまして財政收支の均衡を保つという観点から見ますれば、非常に大きな部分を占めておりますので、この人件費節約及び官廳事務能率化という点から考えまして、どうしてもこれは断行しなければならんという段階にあるものと考えられるのでございます。こういう見地から、私は今回の職員定員法というものは速かにこれが通過を見まして、一日も早くこれが実施せられ、その計画が実行に移される日の速かならんことを冀う者であります。労働者の側から常に私共聞かされますことは、やはり完全雇用の一線でございまするが、これは理想としてはそうなくてはならんと思いまするけれども、今日の段階においてそういうことを議論することは、誠に時代錯誤感じを持たせられるのであります。現段階に対する認識の点において非常に遺憾に考えるわけであります。私共の考え方といたしましては、この荊棘の段階を乘越して、そうして一國の経済を與隆せしめ、社会の繁栄を招來することが、それが結局完全雇用への途である。つまり今日の不完全雇用ということは將來完全雇用への一つ陣痛のもがきである。かように私共は考えているのでありまして、この段階においての人員整理というのは誠に泣いて馬謖を切るという感じを持たせられ、避くべからざるところの一つの現象である、事実である、かように考えているわけでございます。私共が経驗をいたしましたことから考えましても、誠に官廳機構というものは屋上屋の感がいたされまして、その仕事の運び方というようなものも極めて非能率的な感じを持たせられているのであります。もうちよつとした許可認可というような問題にいたしましても、莫大な手数を掛ける、非常な日本を要するというようなことは、今日までしばしば経驗せられたことでございます。これは結局余剰人員の摩擦によるところの能率の減退であるというふうにしか考えられない。もう少しすつきりしたものにすれば、今少し能率的に運営ができるのではないかという感じを持たせられているのであります。今日の官廳に人がだぶついているということは、これは殆んど世間の常識のごとくになつている問題であります。数字を詳らかにいたしませんが、新聞紙上あたりでちらほらしておりまするところによりますと、國民六人について一人とか、何人について一人とかいうような数字を出しておりまするが、そういう大勢の官吏を國民が税金の負担において養つておるということは、これはとても今日の税負担の限度に達しておるこの段階においては、もはや許されることではない。これはもうはつきりしておると思うのであります。財政收支のバランスを取らなければならんという九原則下におきまして、先ずこの人件費節約をやり、そうして事務運営能率的にやつて行く、すつきりした官廳の姿にして行くということのために、この法案が一日も早く通過いたし、実施に移されますことは最も望ましいことである、かように考えます。況んやこの問題は吉田内閣、これはその民自党の公約の一つでもあります。どうしてもこの内閣によつて断乎として実現をして貰わなければならん、かように考えるのであります。  ところが一体この行政整理ということに対する現内閣は何か一つ確乎たる方針を持つておられるかどうか、この点について私共は多少の問題を抱かせられるのであります。と申しますことは、当初いろいろな方面発表されました行政整理対象となる人数は或いは五十七万と言い、或いは五十万と言いいろいろのことが言われております。それが今日は又大分減つて來たような状況を見ておる向きもあります。こういうことは確乎たる一つ方針があつて、その方針によつて整理人員というものが彈き出されるといたしたならば、そうぐらぐら変るべき性質のものではないというふうに思いますが、これがどうも極めて方針があやふやではないか、こういうことでは誠に困まると思うのでございます。日本経済実力の中において行政機構というものは如何があるべきかということを先ず檢討をいたしまして、この上に乘つかつて本当に行政整理人間を彈き出すということでなければならんと思うのでありまするが、ただ單に機械的に、現業は二割とか三割とかいうようなことをただ機械的に彈き出して整理対象とするということは、これは極めて軽卒行き方じやないか、かように考えるのであります。むしろ行政機関そのものを仔細に檢討いたしますれば、減らさんでもよい、むしろ殖やさなければならん部面もあるかも知れません。又三割、二割どころじやない、全廃しなければならんところもあるかも知れない。そういう点について今少し綿密な檢討が望ましいと思うのであります。ちよつと思い付いたことでございまするか、例えば保險仕事にいたしましても、健康保險があり、或いは厚生年金保險があり、失業保險があり、労災保險があり、各省にこういういろいろの保險局というようなものがあつて、同じ保險料徴收事務というようなことを各方面でやる、こういうような仕事の仕方がそもそもすつきりいたしません。社会保障法というようなものに一つにまとめて参りますれば、これに即應するところの行政機構もおのずからすつきりしたものができて來るのではないか。又今日人間が非常にだぶついておるという原因一つは、やはり統制事務の必要以上な存在ということでありますので、これは現内閣主義でもございますので、もう不用不急統制というようなものはこの際須らく外して、こういう面に使用されておる者の整理ということを考えて行くということは必要なことだと思うのであります。大体官廳がやりまするこのことは、從來ともこの私共民間人に取りましては、常にお手本になつておる場合が多いのでございます。何千円ペースというような賃金でもです、すべてこれは一つ民間賃金基準に採択援用される場合が多い。今回の行政整理の問題につきましても私共民間人といたしましては、その成行きについて非常な関心を持つて見ておるわけであります。現にもう経済界におきましても企業合理化ということが焦眉の急務となつておりまして、それに着手いたしておる向も多いのでありまして、これが行政整理成行きと睨み合せて、非常な関心を持たれておるわけであります。そういうわけでありますので、政府行政整理に対して一つ確乎たる方針が樹立されたならば、時を移さずこれを毅然として断行するというだけの熱意と勇氣を持つて頂きたい。途中でいろいろな攻勢に押されてうやむやになる腰碎けになるというようなことでは非常に迷惑至極と思うのでございます。又退職手当発表のようなものも余り根拠のないようなことを無茶苦茶に早く発表すると、四ケ月だ、或いは六ケ月だというようなことを不用意に発表するというようなことは、これは、民間企業合理化の場合においても非常に影響するところが多いのでございます。いま少しこういう点に愼重な態度を持して頂きたいと思うのであります。ただ私はこの職員定員に関する法律が出されるときに非常に淋しく考えますることは、この法案法案として非常に重要でありますが、この裏付けになるところの法律が、これに比例的に用意されていない、即ち失業対策に関する具体的の方策が十分に考慮されてないということはこれは誠に私は淋しい感じを持たせられるのであります。定員法が審議されまするならば、同時にこの失業対策の具体的な方策についての用意がなければ、これは誠に重大な問題だと思うのでございます。この点は今日この政府は十分にお考えであることとは思いますが、いろいろの事情失業対策の具体的な手が打たれないでおる、そういう事情は幾分御察しできまするが、それにしてもこういう法案を出されます限りにおいては、どうしても一面において、その失業対策の面に十分なるその考慮が拂われてなければ、これは片手落ち法案であるというふうに考えるのであります。私は最初申しました通り、この法案に対しましては直接の関係がございませんので、内容についてあれこれ申上げる資格はございませんが、民間人といたしましての一つの客観的に見た感想とでもいうようなものを申述べたに過ぎません。そういう意味で、お聽取りを願つた次第であります。  総括いたしましてこの法案が、一日も早く通過いたしまして、実施に取掛かられる日が速かであるということを切望する。これを私の結論といたしまして、私の所見の開陳を終らせて頂きたいと存じます。
  5. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 有難うございました。前田君は三時には御退室なさるということでありますから、前田君の只今の御陳述に対して何か御質疑がありまするが、若しありますれば、極く簡單委員諸君の御発言を請います。  委員外羽仁君から質疑をしたいという御要求がありますが、委員長委員諸君の御質疑終つた後にお許ししよう、かように考えておりますが、委員諸君において御発言はありませんか。……それならば羽仁君に簡單質疑を許そうと思いますが、御異存ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 御異議ないと認めます。羽仁君。
  7. 羽仁五郎

    委員外議員羽仁五郎君) 日本経営者團体連盟專務理事前田一君の只今の御陳述に対して二、三の点をお伺いしたいと思います。  最初に伺いたいと思いますことは、現在政府が行なつておる行政整理最初只今意見がありましたように、その根本的な目的においては異存がないといたしましても、最後におつしやつたように失業対策裏付がないというような重大な欠陷を持つておるのでありますが、その結果こういう失業対策が中途でおつしやつたように民間企業にも非常に重大な影響がある、或いはその影響をおつしやつてつたわけですが、その結論として極く簡單に申上げますと、いわゆる日本の全体の労働條件低下する虞れがあると考える、この点につきましては、去る四月の九日の日本タイムスにも出ておりますが、司令部労働課ヘプラー氏が日本労働基準法が変えられるようなことがあるならば、日本は全世界によつて非難を受け、日本輸出商品というものは、世界市場からシヤット・アウトされるであろうということを警告されておられるんですが、成る程労働基準法は変らないんですけれども、併し今申上げたような点で企業対策を持たないで行政整理が行われる結果、失業者が溢れ、その結果日本労働賃金というものが低下し、実質において労働基準というものが後退する、その結果いわゆる日本が再び過去において陷つていたようないわゆるチープ・レーバーの上に輸出貿易をやろうとしても、これは國際市場からシヤット・アウトされるということをヘプラー氏が警告しておられるわけですが、こういう点につきましては、つまりチープ・レーバーによつて日本の生産が行われるならば、日本経済再建にとつて、重要な國際貿易市場というものを失う虞れがあると考えるのでありますが、この点について、経営者團体連盟專務理事をしておられるあなたのお考えはどうですか。
  8. 前田一

    前田証人 お答え申上げます。前田でございます。私はこの行政整理、或いは企業合理化による人員整理の結果、労働條件低下するとは考えておりません。むしろこういう方策を採りますことは、少数精鋭主義という考え方で高能率高賃金という線に持つて行きたいために、人員整理ということを考えておるのでございます。人員整理いたしました結果は、必ず高能率高賃金という政策が採られる。こういうふうに考えております。むしろ完全雇用をいたしますることが低賃金原因になるわけでありまして、今日民間におきまするいろいろの整理の場合において、よく労働者側から申出がある場合があります。整理をすることは止めて貰いたい。その代り我々は賃金を或る程度下げてもよろしい、つまり低賃金によつて完全雇用をやつて呉れというような申出があるのであります。これでは日本経済再建方策としてはよくないという考え方を持つております。甚だ残念な行き方ではありますが、一應整理をして、そうして少数精鋭の者の高賃金を拂うと同時に能率を挙げて頂く。こういう方式が経済再建のためにはどうしても採られなければならない。かような考え方を持つておる者であります。で失業対策が立てられないで、定員法というものを断行することは、誠に片手落ちであるということは、これは私先程申した通りであります。併し対策がないから行政整理の方も止めてよろしいか。こう言われれば私はそれをノーと答えたい。甚だ残念ではあるが、先ず一歩一歩前進をする意味において、定員法実施というようなことは、これは止むを得ない今日の段階においての行き方である。かように私共は考えております。
  9. 河井彌八

    委員長河井彌八君) ちよつと、実は荒木さんがお出でになりまして、お帰りを非常に急ぐのですから、荒木さんに御発言を願いたいと思いますが……
  10. 堀眞琴

    堀眞琴君 ちよつと前田さんに……
  11. 河井彌八

    委員長河井彌八君) では簡單に。
  12. 堀眞琴

    堀眞琴君 では簡單に、只今精鋭主義でおやりになるというお話でありますが、行政整理が行わるれば企業整理も当然行われるということは、前田さんのおつしやつていた通りだと思います。そういたしますと、失業者が巷に氾濫するということになりますと、労働賃金低下するということは、経済上の原則だと私は思うのですが、その点と今おつしやつた精鋭主義ということとどういう工合に関連さしてお考えになつておられるのであるか。この点です。  それから先程確乎たる方針が立つてないではないか。今度の行政整理については全く機械的なものであつて、この機械的な方法で整理することは軽卒だ。こういう御発言があつたように思うのでありますが、そういうような軽卒行政整理でもこれをやつた方がよいとお考えになるのでありますか、その点です。この二点を簡單にお伺いしたいと思います。
  13. 前田一

    前田証人 お答えいたします。少数精鋭主義労働條件低下との関係はどうかという第一点でありますが、私は民間企業においての今日までのやり方を見ておりますと、少数精鋭主義で参ります場合には、少くも残つておる者に対しては労働條件低下を來していないのが実情でございます。むしろ高能率高賃金という建前が実行されておる。かように見ております。失業者が成る程巷に溢れますことは、労力の需要供給関係から労働賃金低下することも一應御尤もなことと思います。併し今日の実体、又今日の事業経営して行きます場合には、そういう労働事情需給関係のみから見て賃金を改めるということはできないのでございまして、而し能率を挙げて貰おうということのためには、やはり高賃金政策で、いわゆる少数精鋭主義でやつて行くということでなければ、本当の事業能率が挙らないのであります。そこで今日の経営立場にある人達はやはりその考え方を以て進んでおりますし、今後もその方針で進むだろう。ただ徒らに労働事情需給関係からのみものを考えるということはしないだろう。こういうことを私は確信いたしております。  尚第二点の、こういう確乎たる方針がないのに、こういう法案は通過させるということは軽卒ではないか。こういうことでございますが、これは私はその方針がないということは誠にやり方は遺憾であるということを政府に対して非難を申上げたのであります。望むらくは確乎たる方針を持つて行政整理という面に向わなければならん。これは理想でありますが、私はそれだからと言つて行政整理を止めてもいいから言えば、私はノーと答えたいのであります。たとえ不完全ながらも無きに優る一つの立派な方策であると思いますので、行政整理断乎としてやらなければならない。かように考えております。
  14. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 次に荒木光太郎君に御発言を願います。大体御発言の時間を三十分までと御了承願います。
  15. 荒木光太郎

    証人荒木光太郎君) 御指名によりまして申上げます。  本日行政機関職員定員法につきましての意見を求められておるのでありますか、私は今日の日本事情におきまして、第一にやはりなさなければならないことは、この行政整理の問題だろうと存じます。申すまでもなく、戰後におけるいろいろの、戰時中からでございますが、いろいろの行政機構の膨脹に伴なつ統制強化とかいろいろの問題がございますので、ここにいろいろの人々が多く必要になつて來ました。この意味において非常に多くの人人がこの規模の中に入つて來たということは、これは止むを得ないことだろうと思います。併しながら今日この事情というものは非常に違つて來たのであります。この戰時統制というものが撤廃され、又すべてのことについて簡素化ということが叫ばれて來て、いろいろ産業上のそれに対する障碍というものが起つて來ておる。それを除去するということが今日日本再建の上において、重要なる一つ意味を持つて來ておるということは、これは申しまでもないことと存ずるのであります。この意味において、私は十分行政の上において、先ず第一に簡素化されて行かなければならないのではないかと思うのであります。併しながらただ簡素化と申しましても、一定の方針の下になさなければならないと思うのであります。それは一つ経済行政総合統一という見地からこれがなされて行かなければならないと思います。各省企画機関を統合して、そうしてこれを例えば内閣総合的企画機関に持つて行く。そうしてそこで全部のことを決めて、そうしてこれを実施企画ということを分離して行つてならばいいではないか。こういうふうな面において、これが一つ目安となつて方針となつてこの整理がなされなければいけないと思います。それから又もう一つは、これを決める際において、一つの焦点となるものは、経済情勢重点化ということだろうと思います。今日日本自立経済再建しようという立場から考えますと、勿論いろいろの点はありましようが、ドツジ・ラインにおいて挙げられたごとく、貿易というこの通商の進展ということに重点を置くべきものであろうと思います。この意味においてこれを中核として、そうして経済行政が漸次改善さるべきものでなければならないのであつて、この意味から又ここにいろいろの整理統合という問題が起つて來るものと考えます。  それから第三の点は、経済統制の改善というこの点から一つ又問題にしなければならないと思います。これは自立経済への遂において、從來いろいろの戰爭並びに戰爭以後の統制というものがございますが、これはその本質において戰爭のときと戰爭後においては、統制という同じ言葉で言つておりますが、これは違つております。從つてこの不必要になつたものはどんどんこれを廃止して行つて、そうしてこの統制の必要な部分においてのみこれを留めて行く、そうしたならばここに從來のごとき大勢の人でなくとも、もつと簡素化された形においてこれがなされて來るであろうと思います。非常に厖大で官僚的な、又非能率的な從來の人というものは、これによつて非常に削減されて行くのではないかと考えるものであります。それから又もう一つは、官業という立場からもこれを考えることが必要と思います。從來鉄道、その外電信電話等官業でありますけれども、これらの処置においても亦私はものによつては具体的に檢討したならばこれを民間の手に移してもいいようなものがありはしないか。これらのものについても亦ここで人の整理というものも出て來て、もつと少数の者によつてもつと能率化したことができるのではないかと思います。又それと同時に財政上の負担というようなことも軽減し得るのではないかと思うのであります。尚次の点については、これはいろいろの共管並びに許可認可の問題であります。これらも從來非常に細かく分れておりますがために、一つのことをするにしてもいろいろな方面と折衝をし、又これの認可許可を受けなければ仕事ができないというようなことでありますが、これらのこともできるだけ整理して、少くして來るというような方向に向つて行かなければならん。これも一つのなすべき場合における一つ方針であろうと考えるのであります。例えば今度のあれをちよつと拜見いたしましても、いろいろな部局等が少くなつておりますが、これは非常に結構なことであつて、これを非常に多くするならば、從來言われておるところのセクショナリズムの問題が起つて來て、この問題はどれ程あるというようなことが起つて参りますので、これらはもつと部局を非常に少くして、そうしてそこで以て片付け得るというようにすべきものではないかと思います。殊に從來の公務員というものができた二十二年という年は、非常に経済的な動搖のときでありまして、これのできましたことにつきましてもいろいろな、つまり考うべき問題があるのではないか、これを運営する場合において從來非常に問題が起つておるようでありますが、これらも共に、例えば使う方面、使われる方面で両方面からこれを平等に見て行つて、そうして個々の最も能率あるところのことができるのではないかと考えるものであります。これらの点について國家的見地並びに公務員の立場、両方面からこれを見て行つて、そうしてここに平等な形においてこれが整理をせらるべきものではないかと思うのであります。その他地方出先官憲の問題がありますが、これらもやはり場合によると非常に権限が少くて、そうして或る場合には徒らにその手続を繁雜にするというようなことで、これを他に委讓してもいいという問題が起りますが、併しこれに権限を與えて行くならば問題は別だろうと思います。併しながらやはりこれは個々の問題についてもつと檢討して見なければならない問題であろうと思います。かくのごとく考えますと、私は今日の場合においてやはりこういうような一つの方向というものは、先ず第一に、先程も申しました日本経済再建という立場からも、又第二は財政上の見地から申しましても、重要な問題であると考えるのであります。ただ先程もお話がございました通りに、これによるところの失業対策というものがどうしても立つていなければならん。これがない場合においてこれをやるのは無茶ではないかというお話でございますが、勿論これは失業対策というものが十分に立てらるべきものであろうと思います。併しながら若しこれが確立されない場合においてはそれではどうであるかということになりますが、これはやはり或る一つの、例えば病氣にしましても、その病氣が非常に惡いために手術をしなければならんという場合に、その手術が次の病氣を起すというような場合に、これを恐れておつたのではその病氣を癒すことができないのではないかと思います。從つてここにそういうような一つの大きな問題、殊にインフレというものは、すべての日本再建において邪魔をしているならば、これを直す上において重要な問題である。この一つの一還としての行政整理の問題というものがなされ得るならば、これは先ずやることによつて問題が変つて來る。失業という問題においてこれが出て來るならば、その形においてそれを救済して行く、直して行く、こういうような意味においてこの問題を解決して行くということであるのでありまして、失業問題をどうするか、これの見通しがつかなければどうもむずかしいということで、これを躊躇しているというと、やはり依然として問題は長く、病氣が続いて行くのであつて、その病氣はますます重症になつて行くのではないかと考えます。この意味において私は先ず第一にこれをやり、問題が失業なつた場合に、ここに第二の問題としてこれを取扱うべきことであつて、これにはいわゆる生産という方面にこれを用いるということによつて、國家的事業或いは又生産的の方面にこれを吸收するような方策を採つて行くならば、そこに又解決の途があるのではないかと私は考える次第でございます。大変簡單でございますが、私の意見だけを申上げて置きたいと思います。
  16. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 議員諸君におかれて、只今の御陳述に対して何か御質疑がありますれば、御質疑願います。
  17. 三好始

    ○三好始君 先程統制整理統制方式の変更、許可認可或いは共管事項などの檢討が必要だ。これによつて人員整理し得るのではなかろうか、こういうよう意味の話があつたのでございますが、我々が委員会で政府に尋ねて見ますと、これらはいずれもその方針であるとか、或いはその予定であるとかという程度でありまして、問題によつては目下その筋と折衝中である、こういう程度の段階にあるわけでありますが、本來から申しますというと、統制整理その他が一應結論が出てから、初めて合理的に人員をどの程度減らせるものかということが出て來る問題ではないかと思うのであります。そういう意味において、人員を先に整理した後で統制方式その他事務の問題を檢討するのだということでは、順序が逆ではないかと一應考えられるわけでありますが、これに対して荒木さんのお考えを一應お聽きしたいのであります。
  18. 荒木光太郎

    荒木証人 只今の御質問に対してお答えいたします。成る程おつしやること御尤もでございますが、若しそういうふうに考えますというと、一應整理をされた後にということになると思いますから、そうするというと、これらの問題にとても手を着けることができいなのじやないか。そこでやはり今後いわゆる経済統制というものは漸次少くなつて行く、從つて認可許可とかいろいろな問題が漸次簡素化される。こういう前提の下に先ず少くともこれくらいのものでやられるのではないかというようなことを目安をつけてやつて見て、それで駄目だつたら又初めてそこに問題を起してやつた方がもつと実効的であり効果的であると考えるものであります。
  19. 三好始

    ○三好始君 私の氣持では、統制整理その他事務檢討を先ず行なつて、それから後にゆつくり人員整理考えて行くのだという意味なので、少くとも同時に考えらるべきものではなかろうか、こういうふうな氣持がいたすのでありますが、今のところ実は事務檢討の方がずつと遅れておるような実情なんであります。これは私としては不自然のように思うのですが、荒木さんのお考えを承わりたいと思います。
  20. 荒木光太郎

    荒木証人 その時間的な関係でありますが、非常にこのどういうふうに事務檢討して、そうしてこれだけならできるかということを、非常に長い時間かかるというならば、これは別に徒らに時間を空費するのであつて、その行政整理という目的が同じ目的であるというならば、それを達するためには非常なまずい手段であろうと考えます。從つて若しそれが同時に行われるというお考えならば、これは結構と思いますが、これはもつと具体的にお伺いした方がいいのじやないかと思います。
  21. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 質疑ありますか、……羽仁君に御質疑を許します。
  22. 羽仁五郎

    委員外議員羽仁五郎君) 荒木君のお答えは、荒木君が学者としてではなく、日本商工会議所の專務理事としてお答えになつたように思うのですが、失業対策を持たない行政整理をやつて失業対策の問題が起つたらそれを考えたらよいということを、あなたはやはり学者としてもお考えになるんでしようかどうか、その点を一つ伺いたいと思うのです。それからいま一つ伺いたいのは、商工会議所としては貿易を中心になさることは勿論だろうと思うのですが、さつき前田君に伺いましたように、結論といたしましては、堀委員からも御発言があつたような失業者が非常に殖える、從つて日本労働賃金というものは非常に低くなる、チープ・レーバーになる、更にヘプラー氏が計画されておるように、日本の商品というものは國際市場からシャット・アウトされる、そうなると再び武力を以てこれを解決するという考えであるのか、その二点をお答え頂きたい。
  23. 荒木光太郎

    荒木証人 只今のにお答えいたします。失業の問題、貿易重点ということは、これは私自身も考えておりますし、又官省としても当然考うべきことと信ずるのであります。それから失業の問題でありますが、これは勿論失業者が出ていいということを私は申上げたのではないのです、失業対策は当然考うべき問題であつて、自然にこれができるならば非常に結構でありますが、ただこの対策のみを考えて徒らに日を過ごすということは、これは今日の日本経済再建という点から考えて行くならば、これは問題であろうと考えておる。その意味でございます、從つてその場合に若し早くできてこういうような対策ができるということであるならば、それは私最も賛成するところであつて、それを決して否定するものではありません。それを考えて直ぐやれ、こういうのではありませんが、ただ失業対策を確立して、これがどうしたらよいかと最後の目安までつけて、そうして初めてこの問題に入るというならば、これは私少しその対策というものは、恐らくいろいろな議論を生じ、そう簡單に片附くものではないと思いますので、そこでその第一の條件というものが徒らに延びるということは、これは私自身といたしましてもやはり考えべき問題であろうと思います。この点について只今私申上げたところは、私自身といたしましても又官省といたしましても、共に同樣な考えを持つておるということを申上げたいのであります。
  24. 羽仁五郎

    委員外議員羽仁五郎君) 第二の点につきまして貿易の点について、日本チープ・レーバーで……、貿易企業をシャット・アウトされるということが明瞭なんです。
  25. 荒木光太郎

    荒木証人 これは從來日本貿易というものは、レーバーが安くて、そのために貿易というものが進んでおつたのでありますが、今日そういうような事情なつた場合に、今度どういうようになるか、恐らくそういうようなことも懸念する場合も起つて参りましようが、と申しましても日本の國際場裸に出る場合においては、コストが安いということが私は問題であろうと思います。第一の條件になろうと思う。この意味において、若し労働を搾取して、そしてそういうようなことになるならば、これは私問題だろうと思いますが、その仕事に應じた賃金というものを拂う、そして仕事をして行くならば、ここにその問題というものは、私は十分それに対する方便というものは國家としてはなし得るのではないかということを考えておる次第でございます。
  26. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 次は佐藤安政君の御発言をお願いいたします。
  27. 佐藤安政

    証人(佐藤安政君) 全官連の佐藤であります。先ず定員法各省設置法案というものは、非常にうらはらの問題でありますけれども、こういうふうな観点から意見を述べたいと思うのでありますが了承して頂きたいと思います。時間が余りございませんから、詳しくは御質問によつてお答えしようと思うのでありますが、今度の各省設置法案でも定員法案でも、これが我々官廰労働者を首切りするところの、非常にこの合理化するためのカモフラージであるということが非常に露骨に現われておるのではないか、と同時に官僚の性格と官廰の表面的な民主化も合せてカモフラージをしておる。この場合に官僚の性格の変化ということは、買弁化に向う新官僚がこれによつて作られるのではないか、こういうようなことを感ぜられるのであります。政府では機構改革の場合に、政治的な面と國民大衆の生活面をたまたま制限されておりますが、これは今度の定員法、或いは設置法案では、この政治的な意味については、政府で言つておるいわゆる経費の面が非常に官吏が多いと負担が多いから、減らすんだと言つておりますが、これは後で質問にお答えしようと思つております。予算の数字の上ではナンセンスに近い程零細なものである。政府のこの問題に対する意図というものは、こういうような面から全然なつておらんのではないか、更に一番私達が考えなければいけないのは、この機構改革、或いはこの定員法とか、設置法案の性格を考えて、政府も我々も考えなければいけないことは、人民大衆の生活がどういうふうな機構に、或いはどういうふうな措置をとるならば最もいいかというようなことが、むしろこれは非常に大きな問題じやないかと思います。ところで人民大衆の生活の場合に、この官廰機構がどうなればいいのかというようなことを中心には考えておりません。それから政府では國民公約云々の問題を言つておりますが、國民に対するこの公約は、國民政府に対する官吏が非常に多いから首切れというようなことの感情的なものを考え、或いは氣持的なものを考えると、例えば郵便局の窓口とか、駅の改札口に行つて場合に、非常に不自由を感じておる。そういつた面から大衆はむしろこういう部分の実質的なサービスの面がむしろ望まれるのであつて政府で言つておるような行政整理とか、或いは機構改革の面を必ずしも望んではおらないのじやないか、こういうことが言われると思います。從つてこの定員法或いは設置法案の中心的な問題は、私達とそれから私達を使つておる政府が一緒になつて、人民大衆へのよき公僕となるためには、どういうふうなことを先ずしたらいいかというようなことが、むしろ中心問題ではないかと考える。こういうふうなことを全然政府では考えないで、ただ首切りのための設置法、定員法というようなものを決めておるということと、それからこの人民大衆の要望に應えるものも、或いは政治的な意後からの意味も、全然ここでは問題にならないのではないかそういうようなことは國鉄の場合とか、或いは外のいろいろな現業官廰の面にそういうふうな例が非常に顯著に出ておりますから、これは後で公述する鈴木君がいろいろこの問題については触れるだろうと思つておるのであります。こういうふうな私は前提に立ちまして、今度の定員法なり設置法なりの持つておる特長的な三つの点を挙げたいと思うのであります。  一つとしては、官廰の三割首切りの場合、官廰労働者の非常にそれに対する勿論不満や不平や反撃があるのを恐れて、國家公務員法で手も足も出ないように縛りつけ、而もこの機構なんかをいじる場合に、非常に問題になる特権官僚というものが依然として全然そのままになつている。その例は、局、部の数が非常に殖えております。これが目立つております。これは官廰労働者の反撃はこういうふうなものによつて抑え、それから特権官僚の人の場合に、局や部、そういうようなものを、不必要なものを與えて、反政府的な氣分を抑えているのではないかというようなことが非常に目立つと思います。だからこれは、政府で言つている意図と、このとつたものは非常に矛盾があります。これは機構改革の場合に当然排除されなければいけない、一番癌になるものが温存している典型的なものじやないか。こういうようなことが一点と、第二点としては、國民大衆の人が生活する場合に、絶対的に必要な機構を、今度の場合には非常に縮小しております。從つてこういうふうな機構の縮小の面から、相当の部門の点も非常に減らしているということが顯著であります。その例をあとで申上げようと思いますが、氣象台の例なんかは、よくそれを証明していると思います。それから各省の基礎調査機関は、これは独立の形態を全部拒否されたのであります。それから技術方面の部門も非常に縮小されている。それから非常に今の日本の状態に重要な問題は医療の問題、この医療の問題を解決する医療機関が非常に縮小されている。それからやはり國民大衆が生活する場合に聊かでも與えられておつた苦情申請の機関が非常に縮められております。それと反対に、こういうようなことを一方にしながら、一方でも人民を彈圧するような部門が非常に大きくなつておりますことは、委員会で問題になつて、多分訂正されたわけですが、法務廳関係の中にそれが見られます。例えば特別監獄というようなことは、治安維持法時代の予防拘禁に等しいものじやないか、こういうようなことが今度のそういう二つのものから今度のそういう二つのものから出ておりました。  それから三番目には、各省に非常に、簡素化というようなことを提唱しておりながら、審議会が多いことが見られます。この審議会の多いことを、我々が官廳に生活して氣がつくことは、古手の官僚がそこの中に全部救済されて行く。それと今のこの客観的な一般の政治情勢の中では、この審議会が必ずしも我々の望み、或いは政府で意図しているような民主的な運営は非常に困難じやないかというようなことが言われると思います。そういうような危險が非常にあるのではないかということが言われます。まだあるのでありますが、こういう非常に大きい三つの面から結言できることは、審議会とかいうものが多くなりまして、簡素化を叫びながら、一方にこういつたようなことをやつて、つまり執行機関というようなものが非常に頭の方で大きく出ている。その下には当然執行させる事務の面がこの執行機関に從属した形で常識的にはなければならないのでありますが、執行機関だけが非常に大きくなつて事務の面は非常に能率を欠くような形が出ている。こういうようなことが言われると思います。從つてこういうような結果から出て來る官廳の一般の現場の問題としては、非常に仕事が停滯しておりますし、依然残つているのは官僚の機構である。それでいろいろ國民や我々が要望し、政府が如何に國民に声明をしましても、姿を変えた官僚の機構とか官僚が依然として残つているというようなこと、これは非常に重大な問題だと思いますが、更にこの問題よりも大きいのは、こういうような結果によつて、これはそういうような形態は徐々に出て來ておりますが、職員全体が非常な労働強化に追い込まれております。これも國鉄の例を見ると、非常によく分ると思いますが、同時にこういうようなことをしながら、一般的な機構の中で、非常に、何と言いますか、私は敢て警告は申上げないのでありますが、最近非常に人民大衆を彈圧するというような政策が現われております。それから人民層を全部犠牲にしての政策が非常に顯著になつて來ておりますことは、こういうような面と合せて軽視のできない問題じやないかというようなことが言われております。  それからこの定員法が非常に法的にも、或いは理窟の上からも疑問の持たれるのは、設置法全部、これは定員法について言うのでありますが、定員法に当然つくべき筈の馘首の場合の訴願権というものは、全然これは政府ではつけないと言つておりますし、ついてはおりません。だから苦情の途を全然拒否しております。でありますから、これはいろいろな見方もあると思いますが、明らかに憲法を無視した違憲行爲ではないか、こういうようなことが言われると思います。それからこういうような場合に、政府の人は、よく公共福祉の面から、これは憲法違反ではないというようなことを言つておりますが、この憲法違反まで敢てして、具体的にどれくらいの公共福祉の面があるかということは発表しておりません。それから各省設置法、定員法によつて首を切られた公務員に対して、政府の非常に枢要な機構の一環である人事院の態度と、それから政府の態度には理解できない疑問の点が残されておるのであります。これは御参考までに申上げて置きます。昨日の東京新聞に、この問題について、一般的な輿論ともなつていると思いますが、非常に重大な意味のことが載つておりますから、御参考までに申上げます。この人事院と、それから政府のこの問題に対する食違いというものは、結局政府が何ら合理的な内容を持つていない政策だとも言えることになりますし、人事院は人事院で、これを政治的なものとして政府に責任を押し付ける。人事院の埓外だというのでは、これは人事院のこの問題に対する科学的な檢討もまだなされていないので、この問題を人事院の埓外に出されているような形になつております。これはやはりこの問題は、何ら内容的にもいろいろな点から、余り根拠になる問題は少くとも持つていないという、こういうようなことの明らかな立証だろうと思われます。それから私が今非常に散発的に申上げましたが、こういうふうなものを非常に根拠付けるために、一つ、二つの各省定員法と設置法に現われたこの点を申上げます。これは農林省の場合、商工省の場合、それから運輸省の場合に、非常に皆さんに申上げてお分りになる問題があると思いますので、農林省の問題と、氣象台の問題を数字をまじえて申上げて見たいと思うのであります。  農林省の設置法案の中で、これは問題になつたろうと思うのでありますが、統計調査局を農業改良局の一部とするということがあります。從つてここで扱う農地の面積とか、生産力調査の基礎調査ですね、これが独立した見地からは行えなくなつております。これは政治的に左右される余地がこの中にあります。その結果どういうふうなことが現われるかというと、非常に問題になつております供出の合理化が、全然不能になるということ、それから農地改革の場合なんか問題になると思うのでありますが、かくし田の摘出が非常にこれによつて支障を來すということ、それから科学的な合理化な供出の調査の方法が非常に欠けるので、前に申上げたように政治的に左右されるというようなこと、これは今でも沢山ありますが、村のボス権力に左右されて非科学的な情実供出が非常に出て來るのじやないかということが言われると思います。それから一昨年か、一昨昨年かと思うのでありますが、農林省の米穀の收穫予想について、一千万石程違つたことがあります。これは現在の日本の大衆が社会生活をする上の面では、非常に大きな問題だと思うのでありますが、これがたまたま関係方面から指摘されたことは、皆様も御記憶だろうと思われます。こういうふうないろいろの面がこれによつて出て來るということ、それからこれも非常に今直ぐ関係のある問題であるのでありますが、農政局の農地部というものと開拓局を一括して農地局を作る。これによつてどういうふうなことが出て來るかというと、前とも関連がありますが、農地改革をその政策の面から全然切り離して、技術的な取扱にする関係上、農地改革の不徹底をこれによつて相当程度深化させるというようなことが言われております。それからもつといい例もあると思うのでありますが、ここの資料がありませんから……  食糧廳関係を見ますと、経理部が全然落されております。食糧廳の経理部ではどのくらいの全額を扱うかというと、五十億を扱つておるそうであります。でありますから、この食管の特別会計を事実上非常に混乱に陷れるというようなことが、この面から出て参ります。これは別に申上げたのでありますが、定員法の場合、こういうふうな状態の中で、食糧関係を二割首切るというようなことを今度の定員法では決めておりますから、今の一町村当りの供出なんかの場合の檢査員ですね、これは一・八名であるそうであります。それが減員されれば一・四ぐらいになつて、一日村で扱う俵数が供出期は千五百俵から二千俵の檢査をどうしてもしなければいけない。併し今の状態でも、この供出がそういうふうな面から遅れておるのに、こういうふうな人員が減つて來ては非常に不可能というより、非常に混乱が起きて來るということと、差当つてこれは皆樣は御存知だろうと思うのでありますが、大麦、小麦それから馬鈴薯の供出に重大な支障があるというようなことは、非常に明らかな事実であります。それからもう一つ申上げたいことは、林野局関係定員の二割減であります。これは定員法によつては二割減になつておりますが、現在のままでやつて行つても、政府の皆さんが言うのでありますから間違いないと思うのでありますが、日本の山は今のように住宅が非常に拂底しておつたり何かする状態では、五年後には丸坊主になるということを言つております。日本の今の國土から山林がそういうふうになることは、事実上非常に大きな國の存亡に関する問題が出て参るのであります。こういう場合に山林管の現場では人が足りないで、非常に嚴密に選定をして山林を伐採したり植林したりすることができなくなりますから、これは直接的にも間接的にも、國土を破壞して行く速度が非常に早められて、非常にこれは大きな問題じやないかというようなことが顯著に出ております。これと関連しますから申上げるのでありますが、氣象台の場合を考えて見ると、今度の設置法では、氣象台には今九つの地方ブロックと二百ケ所に測候所、観測所を持つておりますが、これが運輸省の附属機関になつてしまうのであります。そうするとこういうふうな廣汎な、西南諸島や台湾に近い島にも及んでおりますから、外局というような形が飽くまで採られて独立した運営がなされない限り、非常に困難な問題があります。この場合に、それでは氣象台の定員はどんなふうになつておるかというと、これは新聞でも御存じだと思うのでありますが、この中から今度の定員法では二千人を首切るということを言つております。これは私達の、私は氣象台から出ておりますから申上げるのでありますが、戰後日本には非常に、洪水期が來れば洪水に対して非常に予想外の水が押し寄せまして、非常に大きな災害を被つておりますし、地震はこのところ非常に遠引いておりますが、この地震の予知なんかに対しても全然できくなります。これは極端に言うと、或る個所では暴風警報は出せません。絶対に出せなくなります。それから水害のいろいろな前からの國民大衆への予報というようなものもできなくなります。この民生寄與の面が全部こういうふうなものによつて拒否されて行くという形が、氣象台の場合には言われます。氣象台の仕事は暴風警報とか、地震予知……地震予知も参考までに申上げて置きますが、第一、年九千五百円であります。これは数字ちよつと間違つたかも知れません。九千五百円です。九千五百円の経費を以てはとても日本のように、氣象変化は世界一なんでありますから、この地震の予知とかなんとかいうことはできません。産業氣象、農業氣象、漁業氣象、これが二千人首切られた場合には、機能が半身不随みたいになつてしまうというふうなことが言われております。それからこの場合に、私達は皆さんと一緒に直ぐ実感に來る問題なんでありますが、この二千人を首切つて、実際に運輸省の設置法、或いは定員法、経費の面で幾ら浮き上るかというと、九千五百万円であります。九千五百万円と非常に氣象変化の多い、農林省のいろいろな問題とも関連しまして、氣象変化の多い日本のこの國に生活する限り、この九千五百万円とこの七千八百万の人民大象がこの國土で生活する場合の天秤、比重を考えますと、これはてんで話にならないことが分るのであります。  それからこの間の閣議決定の氣象台の整理内容は、標準予算定員が六千二百六人、それから新定員が五千二百五人、実員が六千六百三十六人でありますから、結局千三百二十六名、これはもつと大きくなつて、千八百名になつておるそうでありますが、こういうふうな数字が出ておるのであります。  だから、今度の定員法なり設置法案というようなものは、これ程我々國民生活に、非常に生活の大事な要件であるものが全部拒否されておる、こういうような観点から見ると、これは全然出たらめであり、全然政府で言つておるのは根拠がありません。それはこういうふうな面から非常によく分ると思うのであります。  この外に、定員法と設置法案によつて被害を受ける省は沢山ありますが、その中でも商工省、特別調達廳、厚生省、大藏省、こういうふうな、大体各省定員法と設置法案の性格と内容、傾向というもうは皆同じでありますから、これは詳しくは申上げません。  それから最後に私は言いたいのでありますが、先程官僚の質の変化が買弁化しておるというようなことを申上げたと思うのでありますが、いつの場合でも官僚制度というようなものは、絶対性の権力の下において絶対性権力と國民の間の仲介役になり、資本主義成長の過程でも、それだけの役割を中へ入つてしております。結局官僚制度は國家の政策自体の支配権力に利用されるという面、それから奉仕するという面がいつもあると思うのでありますが、現在の一般的な情勢の中で特に國内外の独占金融資本及びその権力者に対しての官僚制度に、或いは官僚の質に、変化して行くのじやないかということが、私達は言われると思うのであります。それから國内的には階級対立の激化に対して、やはり何と申しますか、支配政権の再編成は、我々の望んでおるような形が今非常に顯著に出て來たということを指摘したいと思うのであります。それからこれはたまたま言われておりますが、今回の設置法案定員法の性格は、結局政府の皆さんが言われておる外資導入の政策を取る場合に、非常に必要な要件として、官位制度を活用して來たのじやないかというようなことが、言われると思うのであります。それからここで私達が皆さんと一緒に考え、それから警告したいのでありますが、こういうような形は初期的に現われて來る現象だということを感ずるのであります。だからこの次のこういうふうな制度の改革は、どういうようなことを日本の國にもたらすかということが、これは暗示みたいなことになるのでありますが、非常に重大な問題であつて定員法各省設置法案の初期的にただ首を切るというだけの問題と、これは人事院の問題もあり、或いは首を切られた後の保障も、いろいろ経営者連盟の皆さんが言われたように、全然なされておらない現状で、非常に嚴しい問題でありますが、こういうような問題が重大な問題であると思います。でありますから、こういうふうないろいろな問題があると思うのでありますが、結論としては私は首切りのために、わざわざいろいろな内容でカモフラージをくつ付けて出て來たこういうような法案には、根本的に今の現状を見、今の日本の人民本衆の生活が要請するものと、余り数字的には根拠はないのでありますから、こういうような問題を中心にして、どういうふうなものが、一番妥当なものであろうかということを、考え直して、当然首切りのために首切りというような、こういうようなものでなく、根本的にもう少し合理性を持つた、内容を持つた、科学性を持つたものに、御編成替えして頂きたい。だから結論は一行で済むと思うのでありまするが、こういうような今出て來たこの問題について、飽くまでも反対でありますし、又こういうような問題を、参議院の皆さんは是非再編成するように、議会の中で是非御努力して頂きたいということを、私は最後に申上げて、私の意見を終ります。
  28. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 次は鈴木市藏君の御発言をお願いいたします。
  29. 鈴木市藏

    証人(鈴木市藏君) 國鉄労働組合の副委員長をしている鈴木市藏であります。私は本日証人として呼ばれましたのは、この各省設置法並びに定員法、一口に言いまして、首切りに対して現業の考え方はどうだということだろうと思います。非現業の問題につきましては、只今全官の佐藤君から縷縷御説明になりました。運輸省設置法につきましては、私衆議院の公述人として出ましたので重複いたしますから、本日は國鉄を中心として首切りの問題について、労働組合の意見を、又実際の問題を申上げて、皆さんの是非御協力をお願いしたいと思うわけです。先ず最初考えられることは、首切りをする場合には、当然それに先行してなされなければならない條件というものがあるわけです。それは今までやつて來仕事を減らす、つまり事業の縮小であるとか、或いは又もつと高度に機械化されて、能率が挙つたから、從つて他の方へ人を廻すといつたような、そういつた條件、まあスムースに行う首切りには、そういつたことを考えなければならないのでございますが、実際今度の國鉄の首切りの場合には、仕事を減らすどころか、二十三年度は一億三千万トンであつたものを、一億四千万トンにしようと言つて、これは仕事を殖やすのです、それから機械化されておるとか、國鉄が復興しておるとかいうようなことが、実際にあるかと言えば、少しもそういうような面はないのです。この間民自党の佐藤政務調査会長、あの方は前に鉄道次官をやつた人でありますが、國鉄は復興したじやないか、大分世間から國鉄の評判がよくなつたということを言つておるのでありますが、國鉄が復興して評判がよくなつたから、その代償に首を切られるのでは堪らない。実際は國鉄は復興しておりません。これは單に見掛けの上だけでは、成る程列車の旅も楽になつたように、お考えになつている方も相当おありだろうと思うのでありますが、実はもう土台が腐つてしまいまして、腐つた土台のところえべニヤ板を嵌めて、ぺンキを塗つたという形が、今の國鉄の実際の姿であります。從つて本当の國鉄の現状を見て頂くならば、復興したというようなことは、とても言えないものだと考えるのであります。從つて今回の首切りは、このようなつまり事業体として、当然あるベき姿における合理化行き方ではなくして、非常に多くの政治的な意義が含まれておるというようなことが考えられるわけです。さて実際の問題として考えられることは、ここで人が余つておるかどうかということを、よく一つ考え願いたいと思うわけです。ざつくばらんに申上げますと、鉄道では大体戰前には三十万人程度の人間でやつていたのじやないか、今は六十万人に殖えた、一体三十万の人間を必要とする、それ程の理由が一体どこにあるか、こういうふうなお小言をよく頂戴するのであります。ところが実際は三十万殖えておるといつたところの人間の殖えておる内容でありますが、これは日本が戰後における特殊的な事情に基きまして殖えたところの人員が國鉄だけで概算十八万人おります。これは二十三年度の予算で運輸省当局が認めておる数字で、十七万六千七百人でありますが、それはどういう人間かというと、いわゆる連合軍関係の輸送を担当するところの要員、それから労働基準法実施されまして、それに基くところの適用要員、それから公安官であるとか、保安維持要員であるとか、或いは資材等のために緊急止むを得ず取らねばならない処置として設けられた人員であるとか、それから御承知のように九州の方へ行くと、戰後國鉄では炭鉱まで経営しておつて、石炭を堀つておる坑夫が鉄道職員なんでありますが、こういうふうな面を合せまして十八万人に垂んとする人が殖えておる、これが三十万人の中に入つておるのであります。從つて今の人が余つておるというふうなことは、このような十八万人を差引きまして十二万人、三十節から十八万を引くから、つまり十二万人の人間が戰前の三十万と比ベて多いか、少いか、戰前三十万、今は四十二万で多いか少いかということは、仕事の量と睨み合せて天秤で計つて頂かないと一概に人が多いということは、これは非常に問題に本質をぼやかしてしまうということが言えると思うわけです。そこで輸送量の問題についてちよつと入りまするが、私達がよく基準年度と言われております日華事変の始まつた昭和十二年を見ますると、鉄道は当時貨物におきまして九千六百万トンの輸送をやつてつたのであります。ところが二十三年度はどうかと申しますと一億三千万トンの輸送が九九・六%を遂行いたしまして、これは殆んど完遂に近い数字でありまして、この面におきましても貨物輸送におきましてはすでに私達は百三十%の能率を挙げておるわけであります。又乘客輸送におきましては昭和十二年は十億六千万人の乘客を輸送しておつたのでありまするが、二十三年度は三十五億六千万人と、これ又三・五倍の能率を挙げておるのでありまして、両者を合せますると貨物、乘客共に昭和十二年に比ベまして、昨年度は二百五十%の輸送量の増大を消化していたのであります。これだけのものを昔の三十万の人員に比ベて僅か十二万人、実質においては十二万人の人間で消化していたということは、むしろ國鉄の経営並びに事業が、戰後における日本では最も高能率を挙げていたとお褒めの言葉を頂く程のものだというふうに自負しておつたのでありますが、今回これが首切られるということは、誠に以て遺憾千万と言わなければならないと思うわけであります。そこでこの点につきましては、実は当局でも認めているのであります。二十三年度当初予算、或いは二十三年度予算を見ましてもそうでありますが、二十四年度当初、当局が大藏省に要求いたしました人員にいたしましても、はつきりとこの点を認めておりまして、約六十万人の人員が必要であるが、而も一億四万人トンの増送をするためには、更に六万数千の超過勤務の人間が必要である、それに要するところの予算を提出しておつたのであります。そのように事務局自体がはつきりと六十数万の人間がなければやつて行けないということを認めているのが実情であります。併しながら又この政府方針が首切りというふうに変つて参りまして、当局は全國の鉄道局及び鉄道管理部に指令を発しまして、人が余つていないかというので、首切りの材料を集めるために、盛んに人が余つていないかと、その報告を出させたのでありますが、これは下からは人が足りないという要求ばかり上つて來てしまつてどうにもならない。從つて人が余つているという口実が実際の調査では遂に出すことができなかつたのであります。こういうわけで当局自体も認めている実情であります。そのような空氣でありまして、若し一歩私達が足を現場に踏み入れて見て、現場の実際の姿を御覽になつたときには、尚一層この点ははつきりするのではないかと思うわけであります。例えば私達の貰つておりますところのいわゆる有給休暇というものがございます。これは労働基準法に規定されておりまして、勤続一年以上の者には年次有給休暇として二十日を呉れるというようなことを書いておつたのでございますが、実はこの二十日の有給休暇も非常に制限を受けておりまして、実は一管理部のごときにおきましては、僅かに昨年度におきましては、これは九州の小倉管理部の実例でありまするが、昨年度は五十三%しか取つておりません。つまり約十一日しか取つていないのであります。又本年はどうかと申しますると、二十三年度でございますが、一月末現在におきまして、三月で二十三年度は切れるのでありますが、一月末現在におきましても五十一%しか取つておらないような実情であります。全般的に有給休暇は非常に國鉄では取る率が少いのであります。現在の状態を省全体として見ましても、年次有給休暇は二十二年度は約十九万人程度しか取つておらないのでありまして、それからこのことは全從業員の三割に上る数字くらいしか取つていないような状況であります。それから又女子などにおきましては、與えられたところの生理休暇といつたようなものも、やはり取れないのでありまして、今女子は生理休暇を三日取ることを許されておるのでありますが、実情におきましても、女子が生理休暇を取るということはできないのであります。そのような空氣に段段追いこ込まれて参りまして、遂に最近におきましては、女子の生理休暇も三日であつたものが二日に減らされて來るというような状況下に追いやられている実状であります。  又施設並びに資材、或いは車輛といつたような工合に見て参りますと、とてもこれは首切りどころか、もつともつと人間を殖やすなり、或いは施設、資材を充実して、一日も速かに安心して、國民の皆さんが國鉄を利用できるように直さなければならないという点にお氣付きになるであろうと思うのであります。例えば施設の問題におきましても、或いは資材、車輌の問題におきましても、この点につきましては篤と御報告を申上げるために、特に参議院の内閣委員の皆樣に私共の資料として差上げてあるのでありますが、非常に危險な状態であります一例を申上げますると、車輌のごときも、東京近郊を廻つております電車は、これは戰時中に造られまして、当時の情勢下において、まあ三年持てばいいというような、こういつたような設計で、非常に危險な電車であります。一度この電車に事故が起りますれば、電車は忽ち火の車になつてしまうことは、火を見るよりも明らかであります。つい最近田端の向うで起きた事故などは、この一例であります。或いは又東海道を上り下りする車輌におきましても、非常にタイヤが傷んでおりまして、使用限度を越えておるタイヤを使わなければならんという状況下に置かれております。つまり最も緊要な部分の走行部分、バネとかタイヤとかいう部分は余り皆さんの目にはつかないので、ただ車輌がよくなつたということをお考えになるかも知れませんが、こういつたような基礎的の部分というものは戰時中の酷使、戰後の復旧が遅れたために非常に傷んでおるのであります。又東海道の幹線はともかく、東京駅から発車するところの湘南の汽車を御覽になると分りますが、最近又汽車が非常に暗くなつて参りました。もうガラスが割れましても、現場には嵌めるガラスが一枚もございません。そうして止むを得ず板を張らなければならないのでありますが、今当局の行おうとするような首切りを強行されては、その板を張る人間さえもどつからも出て來ないというようなことになつてしまつて、この結果は驚くベき状態に車輌を陷れるでありましよう。或いは又施設の部面を見て見ますと、非常に危險であります。本日ここに持つて來ることができないのが非常に遺憾でありましたが、実は昨日も民自党の控室へ参りまして写眞を持つてつたのであります。國鉄の施設はこのように破壞しておる、実際に写眞を持つて皆樣にお目に掛かつて是非一つ考えて頂きたいと思います。委員長、ここに國鉄の非常に荒廃したところの写眞が全部ございますから、後程一つ委員諸公に是非御覽になるようにお取計らいを願いたいと思います。例えば有樂町のガードのごときは、もうすでに落ち掛かつておる。罅が入つて落ち掛かつておるような状況であります。或いは大阪駅のごときは沈下して、八十七センチも穴が空いておつた、つまり橋脚と橋の間に八十七センチも穴が空いて、どうにもならないから、そこへドラム罐にコンクリートを詰めて、ドラム罐のコンクリートで以て支えておるという状況に施設も置かれておるのです。若し一朝危機が來たときは、これは取返しのつかない人命に対する大きな被害が予想されます。又東海道から九州に至るまでの主要なるところの幹線は殆んど傷み盡されております。皆樣も山陽線の線路の危險なる状態は、すつかり御覽になつてつておることと思いますが、或いは又東京における山手線、中央線、京浜線等の電車区間の線路は特にひどいのでありまして、さすがの当局もひびれを切らしまして、どうしてもこれは取換えなければならんと言つて、乏しい予算の中でも今年度は全部京浜、山手、中央線の電車の線路は取換えることに肚を決めたらしいのですが、遺憾ながらそれを取換える人員、つまり保線区の関係人員を、今度は二〇%首を切つてしまうというから、この取換えの作業ができるかできないかという点にも重大な支障が生じて來たというわけであります。かようにいたしまして、実に今回の首切りの問題は、一歩現場に足を踏み入れたときには、人が余つておるというようなことは立ち所に消えてなくなるベき性質のものだというふうに考えられるのであります。それにも拘わらず、若し当局が強引に首切りをやろうとすれば、一体どういうことになるでありましようか。最近出されました当局の主管であるところの業務局のこの國鉄の首切りの内容を見て見ますと、実に慄然とせざるを得ないようなことを言つております。例えば定員削減に伴う処置と言つて、これは主管の業務局で考えたものでありますが、労働基準法関係から一般に亘るまで、大体五項目に亘つて、大きな項目が五項目、その中に幾多の項目を分けまして、実に五十数項目に亘つて首切りをするための條件、或いは又こういうふうなやり方によつて、國鉄の首切りをやつて行こうということを言つておりますが、これは実に驚くベきことであります。例えば労働基準法関係におきましては、夜間連続四時間休養を断続させよう。私達の仕事は、御承知のように夜も晝も眠らずにやる仕事でありまして二十四時間勤務であります。その二十四時間勤務であります。その二十四時間勤務をする場合には、四時間だけは寢せようということを労働基準法で決めているのでありまするが、その四時間寢せるのを、今度は寢せないで、一時間ずつ四回に寢せるとか、二時間ずつ二回に寢せるとかいうふうにいたしまして、四時間の連続睡眠さえもできないようにして、そこで人員を浮かそうということを考えているのであります。それから特殊日勤駅の指定拡充といたしまして、特殊日勤駅というのは、労働基準法に規定された八時間以上の労働をすることも特別認めているのであります。これは当局とも組合とも相談いたしまして、前の労働協約で認めたのでありますが、山間の駅のごとく非常に列車の発着が少い所におきましては、十一時間或いは十三時間という長い労働を認めているのであります。ところがこの特殊日勤駅、つまり十一時間或いは十三時間という超労働をできる駅をもつともつと殖やして行こう、こういうことによつて労働強化をやつて人員を減らして行こうというようなことを考えているのであります。或いは宿直をもつと制限しようといつたようなことを言つておりまするが、これはつい最近の交通新聞にも出ておりましたが、宿直を制限されることによつて実に各局ともてんやわんやの大騒ぎを続けているといつた状況であります。第二点の運轉関係の項目を見ますと、特に國民の貴重なる権利義務をはつきりとお握りになつている皆さんの、この場合の非常に重大な、つまり人命の危機というふうなものが、この運轉関係における定員の削減の中にはつきりと謳われているのであります。つまり通過列車の監視を今度はやめてしまう、今まで列車にお乘りになつてもお分りになると思うのでありまするが、どんな夜間におきましても、雨の日でも嵐の日でも、鉄道の急行列車が通過するとか、夜間列車が通過するような場合には、必ず駅長並びに助役が信号を振つて安全を機関手に報知しいたわけであります。ところがそのような通過列車の監視というのは、これからもうやらなくてもよかろうというようなことによつて、非常に保安度の低下というようなことが予想されるのであります。或いは又夜間併合運轉拡充といたしまして、つまり私達の運轉関係におきましては、つまり線区が決まりまして、その線区の間には前の列車がある間は後の列車は入つてはいけないという規則があるのであります。つまり併合の区間があるのでありますが、その併合区間のあれを拡充いたしまして、そうして前に列車が入つてつても後の列車が入つて來てもいいじやないか、こういうような形にやつて行こう、つまり夜間併合運轉を拡充して行こうというような、追突事故を起す最も大きな原因をここに來しているのであります。或いは乘務省略の拡充、つまり機関士であるとか或いは車掌、こういつたものを省略しよう、お客さんがどんなに混もうと否とに拘わらず、もう後部の車掌などというものはこれからもう止めてしまおう、こういつたようなことまで考えているのであります。それから発條ポイントの増設、これは今まで殆んど國鉄では使つていないのでありまするが、國鉄ではすべて轉轍機は人間が扱うことになつております。ところが市電等を見ますると、発條ポイントと申しまして、電車が入つて参りますと、自然にポイントが開くようにできている、電車が通つてしまうと自然にバネによつて線路がつぼまるというような発條ポイント、バネ仕掛けのポイントがあるのでありますが、國鉄ではバネ仕掛けのポイントは危險であるから使わないのであります。何故かと言えば、一朝間違つた場合に取返しのつかないことになるのでありますから、必ず轉轍手が行うのでありまするが、このような発條ポイントを増設して轉轍手を少くさせよう。それから踏切道の整理、これは今でもなかなか踏切事故というものは絶えません。それにも拘わらず踏切を整理して行こう、こういうようなことを考えているのであります。これらは運轉関係におきましては特に國民の生命に関する重大なる問題だと考えられます。それから職制の関係といたしましては、特にやはり今のような問題で、サービス或いは人命に関する問題だけを申上げますると、今言いました踏切道を整理して踏切警手に今度はポイントを取扱わせる、踏切道というのは、踏切は必ず責任者がいなければならなかつたのでありますが、例えば隣接したところの踏切は一人の人間にやらせよう、余つた一人の人間にはポイントを取扱わせるということで、踏切警手にポイントを取扱わせよう、或いは駅員に今申し上げましたように乘務省略をやりまして、つまり車掌が後部に乘つたり前に乘つたり、車掌などの乘務省略をやる場合には、或いは駅員或いは一部の車掌を兼務させよう、こういうことを考えているのであります。或いは又乘客係を廃し、案内係にしてしまう、それから巡察員を廃止しよう、そうして特に私達從業員にとつて重大な問題は、待合せ時間をもつともつと少くしようということであります。御承知のように鉄道の運轉関係の特に機関車関係におきましては、水を一ぱい罐に入れたり石炭を積み降したりする時間が沢山かかります。これらはすべて待合せ時間、準備時間と言われておりますが、これをもつともつと少くしよう、できるだけ早い時間に水を入れ、石炭を入れるというのでありますが、現状ではどこにもその施設がないのでありまして、今ので精一ぱいでありまして、待合せ時間をもつと圧縮するということになりますと、勢い檢査が疎漏になつて参りまして、直ちに重大事故を惹起する唯一の根拠とも考えられるのであります。設備関係におきましては、駅の廃止及び裏口の閉鎖、ここまでやつて來なければ人員を生み出すことができない、從いまして今より駅はもつてもつとサービスが惡くなるのは当然であります。東口、西口があるような駅には、東口は開いて置いて西口は閉鎖してしまう。甲、乙、丙とあれば、乙だけ開いて置いて甲、丙は止めてしまおうと、こういうことをやろうと当局は考えておるわけであります。或いは信号所を廃止しろ、それから出札窓口及び改札口の一部を閉鎖しよう、或いは手小荷物及び出札取扱時間を制限しよう、これからはいつ行つても切符を買うとか荷物を置くというわけにも行きません。手小荷物の集約輸送をしよう、今ではお客樣の荷物を預りますと、次の列車便で送るということをやつておるのでありますが、そういうことをしておつたのではとても人間が足らなくて堪らないから、荷物が一緒にまとまるまで送るまい、こういうのであります。そういたしまして、最後に一般関係といたしまして、駅員は今度は一つ日勤制をやつて少くしよう、駅長を助役に下げよう、この間大屋運輸大臣はそう言つていました。駅長を下手に持つて行つて助役にすればいいじやないか、配置轉換をやればいいじやないか、どんどん下さて行つてこれ以上下らない人間はどうするのかと言つたら、それは首切りだと言つていましたが、こういうふうにどんどん降職をさして行こう。駅長の日勤制の職制をやる、助役を整理するということを言つております。それから清掃手を整理する。今でも汽車、電車は随分汚れていると皆樣からたびだび私達にお小言を頂戴する点でありますが、尚一層清掃手や駅手を整理することを言つております。いよいよ豚箱の汽車電車になり下がることが思われます。それから連結手、車掌の見習定員の廃止であります。これは直接にお客さんのサービスではございませんが、私達にとつて命に代る非常な重大問題でありまして、連結手というのは突つ走る貨車に飛び乘る重大な仕事であります。あの貨車の連結手を拜命した者は、明日からでも連結の仕事をやらなければならないのでありますが、これは実に命掛けの仕事でありまして、見習定員がなくなるということが私共にとつては非常に大きな甚大なこれは問題であります。特に鉄道におけるところの死傷事故の多くのパーセンテージを占めるところのものは連結手の死傷であります。これは見習の期間は一ケ月、昔は三ケ月もあつた、こういつた見習の期間は止めて、いきなり直ぐに実務に就かせるために、車掌見習を廃止し、或いは連結手の見習を廃止しようということを言つておるのでありますが、非常に重大であります。  それから八番といたしまして、査定基準の改正、こういうことは素人耳には分らんのであります。一番大きな問題は査定基準の改正であります。つまり今まで國鉄は、戰後は大変評判を落しましたが、ともかく國鉄があらゆる惡條件にも拘わらず動き得た、お客さん達を運び得たということは、年來の傳統であつたところの諸規定というものが嚴に今日までありまして、この諸規定の線においてできるだけ抑えて行く、正確安全を基礎としたところの鉄道魂というものがあつたからこそできたのであります。ところがこの査定基準を今回改正いたしますると、使用に堪えない限度に達しておりまして、もう紙のように薄くなつたものでも使つてよろしいというところまで今度は行くのであります。それから御承知のように、今どんな車でも、電車でも一定期間に入りますと檢査期間というものがありまして、例えば客車にいたしますと三十日には必ず一定期間を定めて檢査することになつておりますが、今度その三十日の檢査を四十日にこれを延ばそうというのであります。こういうようになりますと、今までもさえ非常に困つている、バネとかタイヤといつたような枢要な部分に対する疵を発見して事前に予防の手を打つということが、この檢査期間の拡充によつてできなくなるという虞れがありまして、こういうような査定基準の改正ということは、非常に素人目には分らない点でありますが、私達專門家から言いますと非常に重大なる人命に関する危機を喚び起すと言わなければならないと思うのであります。このような形において当局は五十万人に減らそうということを考えておりますが、非常に危い話だと思うのであります。だから私達鉄道職員は非常に体制も嚴然としておりまするし、廣汎な作業関係を担当しております関係上、一朝一夕に右から左になかなか配置轉換できないのであります。ところが十万人首切りをするためにはいろいろな職種に対するバランスをとつて行かなければなりませんので、恐らくは十万人首切りますために、最小限二十五万人の人間を動かさなければならないことになると思いますが、そのようなことはとても今の状況下においては行われるものではないのであります。このことは業務の大変革であると考えます。私達がこの問題につきましてこの間加賀山長官に会いまして一体できるつもりか、できるかどうか最後の肚を伺いましたところが、俺はやれるだけやろう、そういうふうに答える外ない、こういうことを言つております。当局の責任者はやれるだけやろうでよいか知れないが、現場で実際に機関車のレギュレターを握り、或いは車の傷をハンマーで叩いて檢査をする我々の氣になれば、やるだけやろうでは済まされない。鉄道の仕事は、万が一ということは世間で言われますが、鉄道に関する限り万が一が許されない。万が一があつて大きな事故が惹起したらどうするかということで、鉄道の現場においては一にも確認、二にも確認、三にも亦確認と言つて、私達は長い間鉄道の作業を勤めて來たのであります。又例えばポイントを返すにいたしましても、單にポイントを返してさつと帰つて來るのではなくして、ポイントが返つたということを自分が目で見て、手でさすつて、それが足らないで打撃にポイントが返つたということを、自分の口で言つて確認をして戻つて來るという作業を、今までやつておるのであります。そういうことでありまして、私達にとつては実際この万が一とか、或いはやれるだけやろうとか、そういうことではこの尊い人命を預る仕事というものはやつて行けない。どうしてもこれでやれるという確信と意氣がなければ鉄道作業というものはやつて行けないのであります。こういう点につきまして当局自体も責任が負い得ない、自信がないといつたようなこういう首切りの問題につきまして、一体誰が責任を負うかという問題に移つて行くと思うのであります。從つて事故の続発することは当然予想されます。最近におきまするところの事故を見ましても、実に慄然とせざるを得ないような、目を履うような事故を起しております。特に昭和二十三年度におきましては、事故の件数は三万六千件を突破しておりまして、その割合は昭和十一年に比べて実に四五六%と増大しております。惡性事故と申されます列車の衝突、或いは接触、脱線事故等が四百八件も年間に挙げております。一日に少くとも一件以上直ちに人命に危機を及ぼすというような惡性事故が起きているのでありまして、今の状態でもそうでありますから、これが若し十万人からの首切りが行われ、実際においては六人に一人とか、五人に一人とか首切りが行われて來た場合に、ここに発生するところの事故に、責任を負つて國民の生命を誰が一体完全に輸送すると断言し得ることができましようか。そういうようなことにつきましては、実際事務局は口を緘して語らないのであります。何とかやれるだろうということを言つておるのであります。ここで私達は実際に行政整理の根本に関しましてもです。もう全く無茶で何らの計画性と科学性がない。無茶である。ただもう首切りするにのみ興味があるように感ぜられます。先程佐藤さんが申されましたが、財政的な面において、一体では國鉄の首切りをするためはどれだけの金が浮くか、僅かに年間七十五億にしか過ぎない。この七十五億に過ぎないものをもつともつと合理的な、單にこの七十五億のために人間を首切らなければ七十五億の金は浮かないのか、私達は浮くということをここではつきり申上げることができると思います。例えば消費節約を行うことによつて、その一端を補うことができると思います。昨年度二十三年度は私達が石炭を、実に十億円に上る石炭節約に成功いたしました。又今の民主自由党の政調会長佐藤さんが当時次官であつたときには、國鉄においては石炭を節約する、八%石炭を節約すれば一万人の人件費を賄うことができる、こういうふうなことを言つておりまして、石炭の消費節約を行いますれば十億や或いは十五億の石炭の消費節約を行うことは可能である。これらの財政上の不合理を十分是正することにより、これから七十五億の財源を浮かすことは左程困難ではないと考えます。これらの問題につきまして考えますることは、今の赤字を理由にいたしまして私達の首切りをするだけではない。戰時中に買收した私鉄を拂下げようと言つております。承わるところによりますれば、もうそういう法案が出たそうでありますが、実際はお話にならない金額で拂下げるのです。一例を申上げますと、十線区、十の線区を拂下げると言つた中に、小倉鉄道というのがあります。北九州の小倉鉄道であります。その資産評價におきまして、二十四年度の資産評價におきましては、四億四千万円と資産評價をしております。これが一億九千万円を再評價をされておりますが、拂下げの場合は僅かに二千万円であります。こういうように形において國鉄のこれは都合で拂下げるか知れませんが、國鉄のこれは実際の赤字をカバーするという理由による、買收私鉄の拂下げということは全然意味をなさないということを申さねばならないと思うのであります。而も亦経営上においては至る所の沢山の隱退藏物資があります。例えばこれは小倉管理部だけにおきましても、一千万円に上るところの物資がまだある。或いは昨日も衆議院の運輸委員会に提出された問題だそうでありますが、甲府の管内においては時價二百七十万に上る鉄道用品を八十万円で大阪の或る商人に拂下げておる。こういつたことでもつて実は赤字を理由にして拂下げということを巧みに利用いたしまして、愚にもつかない連中に金儲けをさしておるということを行われておるのでありまして、こういうようなことは却つて國鉄の経営財政上の不合理を是正することには相成らんと思うのであります。眞にこういう点において國民の権利を守る皆樣方の絶大なるお力により、國会みずから経営財政上の不合理を是正して行くという方針に出れば、或いは七十五億どころか、もつともつと大きな財政上の問題が解明されて、首切りをやらなくとも済むような方法は浮んで來ると思います。そうして大局的に結局首切りをして七十五億の人件費を遮二無二上げるか、それともできるだけ生命を預かる者として少くとも安全、正確、迅速に皆さんの足が運ばれ、皆さんの財産が運ばれるとか、或いは貨物が傷まないで、又お客さんにサービスがよくなつた方がいいか、一体國民全体としてどつちがいいかという、こういう大局的な立場によつて、是非國鉄の面をお考え願いたいと思うのであります。又私達も考える点は、五ケ年計画、つまり運輸当局が作つた五ケ年計画においても、昭和二十四年度の基準定員は五十六万ばかりおる。それに対して臨時定員六万ばかりがおるのです。そういうような形において昭和二十二年から始まり五年計画というものを運輸省当局は立てておるのでありますが、それらの基礎的な計画的な又科学的に立てた定員さえも全然無視して、今回は立てられて行つたというようなわけであります。特に今回の首切りの問題につきまして、これを定員法で縛るということは実際無茶な話だと思います。又各省定員法の問題につきましては、佐藤君が縷縷申述べたのでありますが、特に私達事業体でありますこれこれの事業をするために、これだけの人間が要るということは、誰が何と言つて事業であります。これを天降り的に二割五分なり二割五分人間を減らすということが随分無茶な話だということは、事業経営した方は誰でも納得できると思います。公共企業体である國鉄を定員法という官廳定員法の枠で一緒に縛るということは、これは矛盾も甚だしい、而も違法であると私は考えます。なぜならば、公共企業体労働関係法が新らしくできたそのときにはちやんと團体交渉権を認められていて、我我の意に反するときは訴願を行い、或いは又團体交渉の対象になるということをはつきり規定したのは、外ならん民主自由党であります。そういつたところにおいて、はつきりと公共企業体労働関係法によつて労働者の権利を守つておきながら、非常時だから仕方がないと言つて、基本的人権を剥奪された、これはみずから憲法に保障されておる我々の権利を踏みにじるものと言わなければならないと思うのであります。こういうようなことにおきまして、今回のこの定員の首切りは、全く國鉄の公共性ということを全然犠牲にして、單なる数字の辻褄を合せるだけの、そのような形だけしかとられていないのであります。從いまして私は最後にお願いしたいことがあります。それはこのような形において私達がよし仮に首切られたとしても、一体うつちやり場のない日本人はどこにも行くところがない。やはり國内で何とかして食つて行かなければならない。同じことではないか。こういうことでもつて國鉄を潰す方がいいのか、それとも七十五億円の金を國民のサービスとしても、皆さんのお力によつて國会が認めて頂いても別にそう大して困る問題ではなかろうと考えられます。それにも拘わらず、ここの独立採算制もできておらん、何もかもできておらん、それにも拘わらずここでもつて失業者を多数作つて、一体うつちやり場のない人間をどうしてやつて行こうというのでしようか。一体私達は何が何だかさつぱり分らないのであります。そうして社会不安が激化して参りますことは当然でありまして、この定員法を作るということは、誠に角を矯めて牛を殺すあの愚挙に何ら変りはないものと私は考えざるを得ないのであります。どうか國会の責任において、内閣委員会の皆さんにお願いがあります。先程も佐藤証人も申しました、人事院でさえもこの首切りについては責任を負うわけには行かない、関與することはできないということを言つておりますが、かような非科学的な計画性のないところの首切りを、政府はあなた方の責任において行わせようと今しております。然るに自分達は自信がないものだから、これを國会の責任において官廳の首切りを行おうとしております。私達もこの問題を……今縷縷申上げた問題について、篤とお考えなつたときに、誰が火中の栗を拾う者がありましようか。どうかこの定員法の問題は行政官廳の責任においてやることで、法律で決める必要はない。公共企業体に関しましては、この附則から削除して頂きたいということを特にお願い申上げて私の公述に代える次第であります。(拍手)
  30. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 有難うございました。圓城寺君と淡路君、このお二人はまだお見えがないのであります。何かこちらに登院される途中らしいのであります。そこで只今陳述になりました鈴木君と佐藤君に対しまして、委員諸君から御質疑がありますならばこの際願います。
  31. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 佐藤さんにお尋ねいたしますが、先程のお話の中に、國民医療が縮小されるというお話がありましたが、極く抽象的でよく分りませんので、どういうふうに國民医療が縮小されたのか、具体的の材料がございましたらお示しを願いたい。
  32. 佐藤安政

    ○佐藤証人 これは昨日医療の関係のお医者さんが参つて申上げてあつたと思うのですが、資料が皆さんのお手許にお配りするのがなくて非常に困るのですが、國立療養所と、それから元の結核の療養所ですね、兵隊さんの時代にあつた……、その國立療養所と、前國立病院ですね、あの二つが独立採算制になるというようなことを政府考えておるですね。そうするとあの病院では、昨日も申上げたように、お医者さんが非常に優秀なところにはお客さんが沢山來る。そうするとそこは一應独立採算制になつても、経費がうまく浮んで経営が続くというような状態があるわけです。ところが辺鄙な田舎とか、或いは大きな町で、お医者さんが非常に、下手とか上手とかいうのはおかしいのですが、大体そういうふうな状態だとお客さんが余り來ないので、國が保障して呉れれば下手なお医者さんでも一應療養はできるが、独立採算制になるとお客さんが來なかつたら経費が浮いて來ませんから、そこは自然潰れる。そこで困るから黒字になつた病院からそつちの方に廻すことになつています。そうすると全体的にはいい経営ができなくなつてしまうのじやないかというようなことがあると思います。そういうふうな場合が非常に医療関係では問題の点だと思いますが、それから國民医療の問題で、これも問題になつておるのですが、厚生省の傳染病予防局ですか、この面が非常に縮小されまして、いろいろな場合のときの措置が非常に困るということが現実にあると思います。そういうふうな場合が今思い付いた問題ですが、もつと大きい、而も深刻な問題があると思うのであります。
  33. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 只今のお話は今大藏委員会に掛かつております國立病院の特別会計法案、これに関係するものでございますが、これにつきましては、私は前に予算委員会においても政府によく聞いたのでありますが、若干考え違いがあるのじやないかという感じもいたしますが、個々の病院において独立採算制を取るのじやない。國立病院、療養所、全体をまとめてこれを特別会計に移すのだ、決して一つの病院の経営を独立採算制にするという考えはない。で私が考えましたのは、独立採算制を強行すると、今お話の通り辺鄙な所とか、或いは交通の不便な所の國立病院というものは、これに現に赤字が出ておるわけです。これこそ國の経営においてやるべきだ、決してこういうものを潰すということじやない。そういう意味で、全体を特別会計にするので、そういうことはないと明らかに申しております。それから尚臨時に厚生委員会に出て、そうしてこれも聞いておりますが、やはりその通りの答弁をされておりますので、そこは少し今のお話は食違いがあるのじやないかと思います。尚もう一つ御参考までに申上げて置きます。國民医療の方面においては、今非常にうまく行きつつある段階に進んでおるのじやないかと考えております。と申しますのは、國民健康保險にいたしましても、又外の社会保險にいたしましても、今利用は非常に多くなつております。殊にあなた方の御承知のように、公務員健康保險組合なんかも被保險者自身並びにその家族の診療にまで及びまして、非常に廣範囲に利用されております。その一つの証拠としては、御承知の診療報酬支拂基準額……、利用者が非常に多かつたために支拂いが遅れて、医療担当者が今非常に苦しんでおる。これ程利用が殖えて参りました。そういうふうな状況でありますので、まだこれが完全なものとは勿論言えませんが、むしろ國民医療の点においては全般から見まして好轉しつつある段階に入つたのではないかと我々は考えております。御参考に申上げて置きます。
  34. 三好始

    ○三好始君 先程の鈴木さんのお話は、非常に具体的で実状がよく分りましたが、その中で小倉管理部における隱退藏物資のお話がありましたが、この実状はどういうものであるか、具体的にどういう物がどういう形で存在しておるのか若しお分りでありましたら、おつしやつて頂きたいと思います。
  35. 鈴木市藏

    ○鈴木証人 小倉における約一千万円に上る退藏物資というのは、軍拂下げの自動車及び電機、それらの部分品だということであります。これは私は実際に見に行つたものではありません。併しこの資料を提出されましたのは、小倉における労働組合の業務部長をやつておりました方が、こちらへ見えまして、是非この問題を知らせて呉れというお話で、先程一例を申上げたのであります。
  36. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 鈴木さんにちよつと伺いたいと思います。國鉄の十二万人の整理をいたしまして、私共巷間これについて聞いておりますのは、大分そういうふうな機会に女の人を、十二万人という数の中で大分補つて行こう、女の人の犠牲でそちらへのしかかつて行く、というような傾向があるということを聞いておりますが、若しも國鉄としてそういうことがございましようか。若しありとするならば、どういうふうな理由で女の人というものを國鉄としましては、犠牲者は女の人を、この際どんな條件で、どんな理由でしておるということが、お分りでございましようか。先ずその二つをお聽かせ願いたいのでございます。
  37. 鈴木市藏

    ○鈴木証人 お答えいたします。只今資料を出されたのは、うちの労働組合の婦人部長でありますが、河崎先生にも確かにお手許を差上げてあると思うのでありますが、定員法反対の第二資料の中に、國鉄におけるところの総人員と女子職員の割合が載つておるのでありまするが、昭和二十三年における月別の総人員と、女子職員の割合を見て参りますと、刻一刻と女子はパーセンテージが減つております。これは現在におきましては、國鉄の全職員の中で約五%程度が女子職員であります。この五の女子職員は、これは現下における國鉄の作業の内容からいたしまして、どうしても女子であらねばならん、又女子の方が能率が挙ると言われておるところの部門に属しておる職種の人達であります。それから第二は、今まで戰時中から長らく勤めておつたり、又生活事情、その他の関係で、どうしても辞めさせることのできないような境遇下における女子であります。大体二つが約五%の三万人に上るところの女子職員の大きな内訳でありまするが、この問題につきましては、例えばその一例を申上げますると、女子職員でよく現場で働いておる女子職員の中には、駅員の方もおるのでありますが、非常に少いのであります。むしろ看護婦であるとか、或いは電話交換手であるとか、清掃手であるとかいつた者が実は多いのであります。実はこの廣島檢車区等におります清掃手は、清掃手として働いておるところの女子は殆んど未亡人でありまして、戰災の未亡人でありまして、八十%程度が未亡人であります。若しこれらの方が鉄道を辞めるようになりますると、これは非常に生活に大きな脅威を生ずるわけでありますが、実際辞職勧告という形でやられております。女子についてはそれとなく、これとなく、陰陽の手を用いて辞職勧告をやられて來ておるということは、否定することができないのであります。例えば新潟鉄道局においては、現在女子が三千五百名程勤めておるが、これを一千名にしたい、二千五百名首切りたいために、辞職勧告という手を一番用いて來るのであります。ところが辞職勧告されたところの女子が、比較的におとなしいと申しますか、女の内氣なせいと申しますか、表面に強く出て來ないのでありますが、これは婦人同士の間では非常に大きな問題となつておるわけであります。それから女子の職場を男子にどんどん替えて行くといつた仕事が、戰時中から戰後にかけて非常に多くやられておりまして、例えば男子は職場へ女子は家庭へといつたようなポスターが貼られたりして、仕事をしていても非常にいずらい環境を作るといつたことや、できるだけ出て行つて貰いたいというような環境を作るというようなこと、目に見えない辞職勧告というようなこともやられているわけであります。それから今女子の場合で非常に困つておるのは、実は看護婦でございまするが、これはもう東京鉄道病院とか、大阪鉄道病院とかは、代表的なところでございますが、看護婦の補充を今殆んどやらない、非常に超過労働でありますが、又早急の病人が出たりいたしましても、怪我人等が出たりいたしましても、手が足らないために、みすみす死んで行くという状況があることを、東京鉄道病院の看護婦が、控室で民自党の代議士先生にお話ししておつたのでありますが、とにかくこういう形で女子職員は非常にいずらくなる、年一年と國鉄から少くなつておるという状況下にあると考えます。特に今回の整理対象には、女子は眞つ先に上げられるだろうということは、東京鉄道局のこれは壁に貼つてつた整理対象になる第三番目に女子が入つておるわけです。第一番目が老朽者、第二番目が長期欠勤者、第三番目が女子職員、こういうな形で女子は整理対象では優先的な順位を得ておるような状態で、非常に危險であるということをこの際申上げて置きます。
  38. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 そういう事情で、いろいろお尋ねしまして、よく分りましたが、そのうち、今お言葉の中に女子でなければならない看護婦とか、電話交換手だとか、或いは清掃手だとかいうのは、女子でなければならんに近い仕事は、多少強みがあるということも、今お話の中で伺いましたが、この定員削減に伴う國鉄にこういうふうにやり繰りをするということを、あなたが國鉄のいろいろ各種の方策をお話しになつた中に、一般といたしまして清掃夫及び給仕、駅手の整理、それから電信係、電話係の圧縮、この二つの中には大分女の子があると私は解釈しておりますが、殊に清掃夫の方は、今あなたは、未亡人が多いと言われたが、実際に清掃しておるのは大抵三十五、六歳以上四十前後の、國鉄には年頃の若い女の人が多いのですが、その人達から見ればいわゆるおばさん階級の方、子供の二、三人ある方が寒い日でもよく汽車のガラスを拭いたり、掃除したり、出る前に綺麗にしたり、帰つて來た汽車をいろいろと手当しております。そういう姿をいつでも汽車に乘る前に遠くで見ておりまして、そういう人達の生活を考えておりましたが、ああいう人達の境遇を見ると未亡人が多い。私の調べでも未亡人が多い、そして子供がおるということを知りました。それでそういう人達が今度は整理とか圧縮の対象に入つておるということにおいて、國鉄は女の人の最後の足場であつたそういうところも尚且つ圧縮して行こうと、こう了解してよろしうございますか。余り私の独断であつてはいけないと思いますから……
  39. 鈴木市藏

    ○鈴木証人 河崎先生がおつしやつたように今回の整理対象には、女子なるが故に特別やるという言明は当局はしておりません。併し先程も申上げたうよに、非常にやり易い條件下に女子が置かれておるであろうということは想像に難くありません。從つて当局がこのような形において首切りをやつて行こうとする條項の中に該当する職名の中では、どうしても女子が優先的にやられるであろうということはこれは想像でありますが、殆んで既定の計画の中に入つておると言つても差支ないではないかというふうに考えられます。
  40. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 先程、女の人は生理休暇が今まで三日であつたのを二日にされた、それでも尚且つ休まずにおれというようなお言葉がありましたが、そのところをちよつと伺いたい。
  41. 鈴木市藏

    ○鈴木証人 お答えいたします。生理休暇の問題でありますが、これは二日になつたのは、三月二十五日の達第百四十二号によつて、今まで三日であつた女子の生理休暇が二日になつたそうでございます。
  42. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 尚産前産後は十五週間と基準法に定められておりますが、それは変りありませんか、十二週間になつたとか聞いておりますが……
  43. 鈴木市藏

    ○鈴木証人 産前産後も同樣であります。今申上げた達第四百十二号で産前産後十五週間が十二週間になりました。
  44. 河崎ナツ

    ○河崎ナツ君 そういうようなことを犠牲にしてもお前一生懸命働けと言つても、働くことには一定の限度があります。産前産後と生理休暇のことは母体の上から言つても非常な大事なことでありますから、そういうことを聞いたということを確認して次のことを考えさせて頂きたいと思います。
  45. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 鈴木さんに一つお尋ね申上げたいのですが、先程のお話の中に民自党の佐藤さんは大分國鉄は復興したじやないかと言われたが、國鉄は全然復興はしておらん、寸亳も復興しておらん、こういうお話がございましたが、私共は山陽線並びに東海道線を、議員になりまして以來通つて、段段國鉄のよくなる、又輸送状況も皆さんの努力によつて非常によくなつたことを心密かに喜んでおります。勿論戰爭のために破壊されたすべてが一時に全部よくなるとは考えませんけれども、日々、汽車で通る度によくなつているということに対し、あなた方に非常に感謝もし、又議員としても喜んでおつた次第であります。併し今國鉄に一つの復興もないというお言葉を聞いて聊か何と申しますか、腑に落ちないと申しますか、樂観したと申しますか、そういう感じがします。例えて申しますと、極く卑近な例でありますが、私共が最初に東京に参りました時分なんかは、駅によりまして機関車に水をさすあれがなかつた、そのために可なり遠方からホースを引張つて來て水を補給しているようなことを見受けましたが、最近においては、どこの駅につきましても、大きな太い何か給水器というようなものから入れられているのを見ましても、これはもう直ぐ窓から見えることですから、非常によくなりつつある、そういうことが見えて、これはもう非常に皆さんの努力だ、こういうふうに考えておつたわけであります。それでその点について、どうもまだ私共に納得が行きませんので、どういうわけで國鉄に寸亳も復興がないかということを承わりたい。  それからもう一つは、仕事の量が殖えているにも拘わらず人員整理し、首切りをするということは、これは穏かでないという、このことはよく我々も分るのでありまするが、それにつきまして若しあなた方の方で、殊に現業方面で、政府がこういうところをこういうようなふうに、施設をおいて直すとか或いは機構において考えるとすればこの人員整理というものはできるかも知れない。併しそういうことをやらないで、仕事は殖えておるには拘わらず首を切るというようなことは無理じやないかという、こういうふうに何か根拠になる点がございましたら、これをお話し願いたい。それによりまして我々も政府に、こういうことをやれば幾ら幾らの整理をするということは尤もだけれども、仕事の量を殖やすのは無理じやないかと、政府と話合いますのに強い論拠にもなりますので、若しそういうところに何か具体的にお考えをお持ちでございましたら御発表願いたいと思います。
  46. 鈴木市藏

    ○鈴木証人 御質問は二点でありまして、一つは、國鉄の復興は少しもやられていないと私が申上げたことについて、見るところによると國鉄は大分復興しておるのだが、この点はどうかという御質問であります。私は先程証言の際にもそれを車へ乘つて見るだけのところは、これは中が腐つてつても上面にベニヤ板を張つてペンキを塗つたという意味においては鉄道はよくなつておる。併しながら中はすつかり腐つておる、特に車輛においても上つ面はよくなつておるが、走行部面……大切なバネであるとか、それから運転部門のブレーキ関係或いはタイヤ関係といつたものは却つて傷んである。私鉄はどうかというふうな点についても、私は私鉄も復興の速度は進んではおらぬ、非常に惡化しつつある、こういうことを申上げたわけであります。それが具体的に一番よくお分りになるのは事故件数であります。事故件数を見ますると昭和十一年の事故は五千五百二十五件で、これを先ずパーセンテージで七十と押えますと、昭和二十三年は三万六千二百八十五件、パーセンテージ、四百五十六%というふうに増大しております。御承知のように若し鉄道が復興しつつあるということならば事故は却つて減少の傾向を迫るのが当然でございます。若し成る程これは車の中に乘つてつてお客さんが直接事故によつてどうのこうのということではないのでございまするが、つまり走行部門とか或いは線路や何かの部門における危險なものは非常に事故にとつて大きなパーセンテージの原因をなすのでありまするが、そういう部面がつまり完備されていないために、事故件数というものは依然相当の量に上つておるわけです。この一事を見ましても、必ずしも國鉄の復興がその皆さんが樂観する程人を減らしてもいい程進んでいないという論拠の一つになると思うわけであります。それから具体的には、例えばこれは運轉関係から出されました全電車の鉄道当局運轉局の発表でありまするが、こういうのを見て見ましても、例えばブレーキにおける事故の原因、事故件数のごときは、昭和十六年は二十六件にしか過ぎなかつたものが、二十三年度には二百三十二件、実は八百九十%に上る事故の増大を示しておる。これは非常に危險なブレーキ関係でございまするが……、ここにある表は運轉脇自体が発行した表でありまするが、どの部面を見ましても、盡くそういうことが言えるわけです。それから施設の方の関係では、これは線路の状況ですが、ちよつと遠いのでお分りにくいと思いますが、山手から京浜、中央線、それから総武線といつたようなこの附近における電車線のすべての線路の状況が書いてあります。ここでは例えば速度の制限個所をどこどこに置いておる。而も速度の制限をしなければならない理由はどういうところにあるか。例えば地盤が軟弱であるとか、或いは又線路が非常に腐蝕しておるとか、損耗しておるといつたようなこと。それから車輛の動搖の調査、これを調査するためには駒を皆車の上に載せまして、駒の倒れた数の如何によつて動搖の調査を行なつております。この動搖の調査、それから徐行個所の一覽表、こういつたものをすべて調べき見ますると、決して施設の根本が立直つておるということは毫も言えない。むしろ私は先程証言いたしました通りに、今の運輸省当局もなけなしの予算ではあるが、五千万円も注ぎ込んで、この東京近辺の線路を全部二十四年度中には取換えてしまわなければ駄目だということを自身認めているわけですが、そのような事実が今日は少しもやられてはいけないということを申上げたのであります。このようなことをやる人員が現在ない。それから國鉄復興のためにという國鉄白書で、これは衆参両院議員にすべてお配りしたからお分りだろうと思いますが、こういうような北海道から九州に至るまで酷使に酷使を重ねて來た施設が、今では、命脈が盡きなんとしている状況が、例えば橋にいたしましても、トンネルにいたしましても、すつかり具体的に書かれているわけです。ですから私達の現場に携わる者の眼から見ると、全く虫の喰つた土台にペンキを塗つてごまかしている。それが上つ面だけ見て國民には復興したかのごとく見えるけれども、内実は却つて病状は惡化している、こういうふうなことを申上げたわけであります。  それから作業量、つまり仕事量の問題、それから何かそれらに対して合理的な問題については、こうすれば人も少くなつてつて能率が挙つて行くのじやないか、それらの具体的のものがあれば示して貰いたいという御質問でありましたが、これは実は定員法反対第一資料といたしまして、ここに國鉄復興五ケ年計画試案、國鉄復興五ケ年計画の五年後昭和二十七年度の國鉄の姿といつたようなことが書かれております。國鉄復興の五ケ年計画の職員需給計画、こういうふうにすべて基礎的な数字に基きまして、昭和二十二年度から昭和二十七年度を以て終る五ケ年計画を発表しております。この五ケ年計画の内容そのものにつきましては、現在のところ國鉄当局も亦我々組合としても、一應理論的に或いは科学的に信用に値いするものである、一應そういうふうに考えております。この資料がございますので、非常に内容が具体的であり、又細くなりますので、大切なところを一、二拾つて見ますると、例えばどういうふうにしたならば、鉄道の人員が少くなつて行くのか、一番大きな問題は電化であります。御承知のように全線を電化することは望ましいのでありますが、電化をどんどん行なつて行きますれば、國鉄の物件費の大宗を占める石炭の消費節約が非常にでき、それから從つて電化を行なうことによつてどのくらい程度國鉄の経営財政が樂になつて行くかという具体的事実も書かれております。或いは又國鉄の機械化でございます。こういつたような事実も書かれておりまするが、それに伴つて日本経済の状況が改善して参りますから輸送力が増大するであろう。昭和二十四年度の輸送力というものは、大体想定できます。從つてそれらに対する職員の需給の割当をこうやつて行く。こういつたようなものがここに書かれてありますので、ちよつと簡單に申上げて置きますが、職員五ケ年計画によれば基本定員と臨時定員とに分れており、これがそれぞれ工事勘定、損益勘定、中間勘定に計上してありますが、一例を挙げてこの職員五ケ年計画の損益勘定を見て見ますると、昭和二十三年度は四十五万、二十四年度は四十六万、二十七年度が四十七万というふうに基本定員か増大しておりますが、それに比較いたしまして臨時定員が減少して参ります。それから中間勘定の定員も亦一應殖えて行くといつたような形で、職員の五ケ年計画自体を見ましても人員整理していいというようなことはないのであります。併しながら輸送力の増強と國鉄を本当に改善して行く、復興して行く姿というようなものは非常に良好な非常に目覚しいものになつて行くということも具体的に数字を挙げてここに書いてあるわけでありますが、長くなりまするのですべてお読みすることは省略いたします。
  47. 佐藤安政

    ○佐藤証人 先程非常な間違いを数字を上げていたしましたので訂正して置きます。農林省の関係で食糧廳の経理部が落されるという問題と絡んだのでありますが、先程五十億と申上げたのですが、それは非常に間違いでこれは四千四百十一億円の間違いです。四千四百十一億円というと殆んど予算に非常に大きいパーセンテージを占める経理部が落されるというを申上げましたが、数字だけ訂正して置きます。
  48. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 諸君にお諮りいたします。証人の圓城寺君、淡路君がお待ちしておりましたが、まだお見えがないのみならず、ちよつとお見えになるかどうか分りませんので、これで以て本日の委員会を閉会しようと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 河井彌八

    委員長河井彌八君) 御異議ないと認めます。それではこれを以て閉会いたします。  ここに委員長といたしまして、この多忙のときにわざわざ本委員会に御出席下さいまして、率直な御意見をお述べ下さいました証人の方々に対しまして深甚なる謝意を表する次第であります。これを以て散会いたします。    午後四時五十三分散会  出席者は左の通り。    委員長     河井 彌八君    理事            カニエ邦彦君            中川 幸平君            藤森 眞治君    委員            河崎 ナツ君            城  義臣君            佐々木鹿藏君           深川榮左エ門君            岩本 月洲君            下條 康麿君            新谷寅三郎君            鈴木 直人君            堀  眞琴君            三好  始君   委員外議員            羽仁 五郎君   証人    全國官公廳職員    労働組合会議委    員長      佐藤 安政君    日本商工会議所    專務理事    荒木光太郎君    國鉄労働組合本    部副委員長   鈴木 市藏君    日本経営者團体    連盟專務理事  前田  一君