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証人(鈴木市藏君) 國鉄労働組合の副
委員長をしている鈴木市藏であります。私は本日
証人として呼ばれましたのは、この
各省設置法並びに
定員法、一口に言いまして、首切りに対して現業の
考え方はどうだということだろうと思います。非現業の問題につきましては、
只今全官の佐藤君から縷縷御説明になりました。運輸省設置法につきましては、私衆議院の公述人として出ましたので重複いたしますから、本日は國鉄を中心として首切りの問題について、労働組合の
意見を、又実際の問題を申上げて、皆さんの是非御協力をお願いしたいと思うわけです。先ず
最初に
考えられることは、首切りをする場合には、当然それに先行してなされなければならない條件というものがあるわけです。それは今までや
つて來た
仕事を減らす、つまり
事業の縮小であるとか、或いは又もつと高度に機械化されて、
能率が挙
つたから、
從つて他の方へ人を廻すとい
つたような、そうい
つた條件、まあスムースに行う首切りには、そうい
つたことを
考えなければならないのでございますが、実際今度の國鉄の首切りの場合には、
仕事を減らすどころか、二十三年度は一億三千万トンであ
つたものを、一億四千万トンにしようと言
つて、これは
仕事を殖やすのです、それから機械化されておるとか、國鉄が復興しておるとかいうようなことが、実際にあるかと言えば、少しもそういうような面はないのです。この間民自党の佐藤政務調査会長、あの方は前に鉄道次官をや
つた人でありますが、國鉄は復興したじやないか、大分世間から國鉄の評判がよく
なつたということを言
つておるのでありますが、國鉄が復興して評判がよく
なつたから、その代償に首を切られるのでは堪らない。実際は國鉄は復興しておりません。これは單に見掛けの上だけでは、成る程列車の旅も楽に
なつたように、お
考えにな
つている方も相当おありだろうと思うのでありますが、実はもう土台が腐
つてしまいまして、腐
つた土台のところえべニヤ板を嵌めて、ぺンキを塗
つたという形が、今の國鉄の実際の姿であります。
從つて本当の國鉄の現状を見て頂くならば、復興したというようなことは、とても言えないものだと
考えるのであります。
從つて今回の首切りは、このよう
なつまり
事業体として、当然あるベき姿における
合理化の
行き方ではなくして、非常に多くの政治的な意義が含まれておるというようなことが
考えられるわけです。さて実際の問題として
考えられることは、ここで人が余
つておるかどうかということを、よく
一つお
考え願いたいと思うわけです。ざつくばらんに申上げますと、鉄道では大体戰前には三十万人程度の
人間でや
つていたのじやないか、今は六十万人に殖えた、一体三十万の
人間を必要とする、それ程の理由が一体どこにあるか、こういうふうなお小言をよく頂戴するのであります。ところが実際は三十万殖えておるとい
つたところの
人間の殖えておる内容でありますが、これは
日本が戰後における特殊的な
事情に基きまして殖えたところの
人員が國鉄だけで概算十八万人おります。これは二十三年度の予算で運輸省当局が認めておる
数字で、十七万六千七百人でありますが、それはどういう
人間かというと、いわゆる連合軍
関係の輸送を担当するところの要員、それから
労働基準法が
実施されまして、それに基くところの適用要員、それから公安官であるとか、保安維持要員であるとか、或いは資材等のために緊急止むを得ず取らねばならない処置として設けられた
人員であるとか、それから御承知のように九州の方へ行くと、戰後國鉄では炭鉱まで
経営してお
つて、石炭を堀
つておる坑夫が鉄道
職員なんでありますが、こういうふうな面を合せまして十八万人に垂んとする人が殖えておる、これが三十万人の中に入
つておるのであります。
從つて今の人が余
つておるというふうなことは、このような十八万人を差引きまして十二万人、三十節から十八万を引くから、つまり十二万人の
人間が戰前の三十万と比ベて多いか、少いか、戰前三十万、今は四十二万で多いか少いかということは、
仕事の量と睨み合せて天秤で計
つて頂かないと一概に人が多いということは、これは非常に問題に本質をぼやかしてしまうということが言えると思うわけです。そこで輸送量の問題について
ちよつと入りまするが、私達がよく
基準年度と言われております日華事変の始ま
つた昭和十二年を見ますると、鉄道は当時貨物におきまして九千六百万トンの輸送をや
つてお
つたのであります。ところが二十三年度はどうかと申しますと一億三千万トンの輸送が九九・六%を遂行いたしまして、これは殆んど完遂に近い
数字でありまして、この面におきましても貨物輸送におきましてはすでに私達は百三十%の
能率を挙げておるわけであります。又乘客輸送におきましては昭和十二年は十億六千万人の乘客を輸送してお
つたのでありまするが、二十三年度は三十五億六千万人と、これ又三・五倍の
能率を挙げておるのでありまして、両者を合せますると貨物、乘客共に昭和十二年に比ベまして、昨年度は二百五十%の輸送量の増大を消化していたのであります。これだけのものを昔の三十万の
人員に比ベて僅か十二万人、実質においては十二万人の
人間で消化していたということは、むしろ國鉄の
経営並びに
事業が、戰後における
日本では最も高
能率を挙げていたとお褒めの言葉を頂く程のものだというふうに自負してお
つたのでありますが、今回これが首切られるということは、誠に以て遺憾千万と言わなければならないと思うわけであります。そこでこの点につきましては、実は当局でも認めているのであります。二十三年度当初予算、或いは二十三年度予算を見ましてもそうでありますが、二十四年度当初、当局が大藏省に要求いたしました
人員にいたしましても、はつきりとこの点を認めておりまして、約六十万人の
人員が必要であるが、而も一億四万人トンの増送をするためには、更に六万数千の超過勤務の
人間が必要である、それに要するところの予算を提出してお
つたのであります。そのように
事務局自体がはつきりと六十数万の
人間がなければや
つて行けないということを認めているのが実情であります。併しながら又この
政府の
方針が首切りというふうに変
つて参りまして、当局は全國の鉄道局及び鉄道管理部に指令を発しまして、人が余
つていないかというので、首切りの材料を集めるために、盛んに人が余
つていないかと、その報告を出させたのでありますが、これは下からは人が足りないという要求ばかり上
つて來てしま
つてどうにもならない。
從つて人が余
つているという口実が実際の調査では遂に出すことができなか
つたのであります。こういうわけで当局自体も認めている実情であります。そのような空氣でありまして、若し一歩私達が足を現場に踏み入れて見て、現場の実際の姿を御覽に
なつたときには、尚一層この点ははつきりするのではないかと思うわけであります。例えば私達の貰
つておりますところのいわゆる有給休暇というものがございます。これは
労働基準法に規定されておりまして、勤続一年以上の者には年次有給休暇として二十日を呉れるというようなことを書いてお
つたのでございますが、実はこの二十日の有給休暇も非常に制限を受けておりまして、実は一管理部のごときにおきましては、僅かに昨年度におきましては、これは九州の小倉管理部の実例でありまするが、昨年度は五十三%しか取
つておりません。つまり約十一日しか取
つていないのであります。又本年はどうかと申しますると、二十三年度でございますが、一月末現在におきまして、三月で二十三年度は切れるのでありますが、一月末現在におきましても五十一%しか取
つておらないような実情であります。全般的に有給休暇は非常に國鉄では取る率が少いのであります。現在の状態を省全体として見ましても、年次有給休暇は二十二年度は約十九万人程度しか取
つておらないのでありまして、それからこのことは全從業員の三割に上る
数字くらいしか取
つていないような状況であります。それから又女子などにおきましては、與えられたところの生理休暇とい
つたようなものも、やはり取れないのでありまして、今女子は生理休暇を三日取ることを許されておるのでありますが、実情におきましても、女子が生理休暇を取るということはできないのであります。そのような空氣に段段追いこ込まれて参りまして、遂に最近におきましては、女子の生理休暇も三日であ
つたものが二日に減らされて來るというような状況下に追いやられている実状であります。
又施設並びに資材、或いは車輛とい
つたような工合に見て参りますと、とてもこれは首切りどころか、もつともつと
人間を殖やすなり、或いは施設、資材を充実して、一日も速かに安心して、
國民の皆さんが國鉄を利用できるように直さなければならないという点にお氣付きになるであろうと思うのであります。例えば施設の問題におきましても、或いは資材、車輌の問題におきましても、この点につきましては篤と御報告を申上げるために、特に参議院の
内閣委員の皆樣に私共の資料として差上げてあるのでありますが、非常に危險な状態であります一例を申上げますると、車輌のごときも、東京近郊を廻
つております電車は、これは戰時中に造られまして、当時の情勢下において、まあ三年持てばいいというような、こうい
つたような設計で、非常に危險な電車であります。一度この電車に事故が起りますれば、電車は忽ち火の車にな
つてしまうことは、火を見るよりも明らかであります。つい最近田端の向うで起きた事故などは、この一例であります。或いは又東海道を上り下りする車輌におきましても、非常にタイヤが傷んでおりまして、使用限度を越えておるタイヤを使わなければならんという状況下に置かれております。つまり最も緊要な
部分の走行
部分、バネとかタイヤとかいう
部分は余り皆さんの目にはつかないので、ただ車輌がよく
なつたということをお
考えになるかも知れませんが、こうい
つたような基礎的の
部分というものは戰時中の酷使、戰後の復旧が遅れたために非常に傷んでおるのであります。又東海道の幹線はともかく、東京駅から発車するところの湘南の汽車を御覽になると分りますが、最近又汽車が非常に暗くな
つて参りました。もうガラスが割れましても、現場には嵌めるガラスが一枚もございません。そうして止むを得ず板を張らなければならないのでありますが、今当局の行おうとするような首切りを強行されては、その板を張る
人間さえもどつからも出て來ないというようなことにな
つてしま
つて、この結果は驚くベき状態に車輌を陷れるでありましよう。或いは又施設の部面を見て見ますと、非常に危險であります。本日ここに持
つて來ることができないのが非常に遺憾でありましたが、実は昨日も民自党の控室へ参りまして写眞を持
つて廻
つたのであります。國鉄の施設はこのように破壞しておる、実際に写眞を持
つて皆樣にお目に掛か
つて是非
一つ考えて頂きたいと思います。
委員長、ここに國鉄の非常に荒廃したところの写眞が全部ございますから、後程
一つ委員諸公に是非御覽になるようにお取計らいを願いたいと思います。例えば有樂町のガードのごときは、もうすでに落ち掛か
つておる。罅が入
つて落ち掛か
つておるような状況であります。或いは大阪駅のごときは沈下して、八十七センチも穴が空いてお
つた、つまり橋脚と橋の間に八十七センチも穴が空いて、どうにもならないから、そこへドラム罐にコンクリートを詰めて、ドラム罐のコンクリートで以て支えておるという状況に施設も置かれておるのです。若し一朝危機が來たときは、これは取返しのつかない人命に対する大きな被害が予想されます。又東海道から九州に至るまでの主要なるところの幹線は殆んど傷み盡されております。皆樣も山陽線の線路の危險なる状態は、すつかり御覽にな
つて知
つておることと思いますが、或いは又東京における山手線、中央線、京浜線等の電車区間の線路は特にひどいのでありまして、さすがの当局もひびれを切らしまして、どうしてもこれは取換えなければならんと言
つて、乏しい予算の中でも今年度は全部京浜、山手、中央線の電車の線路は取換えることに肚を決めたらしいのですが、遺憾ながらそれを取換える
人員、つまり保線区の
関係の
人員を、今度は二〇%首を切
つてしまうというから、この取換えの作業ができるかできないかという点にも重大な支障が生じて來たというわけであります。かようにいたしまして、実に今回の首切りの問題は、一歩現場に足を踏み入れたときには、人が余
つておるというようなことは立ち所に消えてなくなるベき性質のものだというふうに
考えられるのであります。それにも拘わらず、若し当局が強引に首切りをやろうとすれば、一体どういうことになるでありましようか。最近出されました当局の主管であるところの業務局のこの國鉄の首切りの内容を見て見ますと、実に慄然とせざるを得ないようなことを言
つております。例えば
定員削減に伴う処置と言
つて、これは主管の業務局で
考えたものでありますが、
労働基準法関係から一般に亘るまで、大体五項目に亘
つて、大きな項目が五項目、その中に幾多の項目を分けまして、実に五十数項目に亘
つて首切りをするための條件、或いは又こういうふうな
やり方によ
つて、國鉄の首切りをや
つて行こうということを言
つておりますが、これは実に驚くベきことであります。例えば
労働基準法関係におきましては、夜間連続四時間休養を断続させよう。私達の
仕事は、御承知のように夜も晝も眠らずにやる
仕事でありまして二十四時間勤務であります。その二十四時間勤務であります。その二十四時間勤務をする場合には、四時間だけは寢せようということを
労働基準法で決めているのでありまするが、その四時間寢せるのを、今度は寢せないで、一時間ずつ四回に寢せるとか、二時間ずつ二回に寢せるとかいうふうにいたしまして、四時間の連続睡眠さえもできないようにして、そこで
人員を浮かそうということを
考えているのであります。それから特殊日勤駅の指定拡充といたしまして、特殊日勤駅というのは、
労働基準法に規定された八時間以上の労働をすることも特別認めているのであります。これは当局とも組合とも相談いたしまして、前の労働協約で認めたのでありますが、山間の駅のごとく非常に列車の発着が少い所におきましては、十一時間或いは十三時間という長い労働を認めているのであります。ところがこの特殊日勤駅、つまり十一時間或いは十三時間という超労働をできる駅をもつともつと殖やして行こう、こういうことによ
つて労働強化をや
つて、
人員を減らして行こうというようなことを
考えているのであります。或いは宿直をもつと制限しようとい
つたようなことを言
つておりまするが、これはつい最近の交通新聞にも出ておりましたが、宿直を制限されることによ
つて実に各局ともてんやわんやの大騒ぎを続けているとい
つた状況であります。第二点の運轉
関係の項目を見ますと、特に
國民の貴重なる権利義務をはつきりとお握りにな
つている皆さんの、この場合の非常に重大な、つまり人命の危機というふうなものが、この運轉
関係における
定員の削減の中にはつきりと謳われているのであります。つまり通過列車の監視を今度はやめてしまう、今まで列車にお乘りにな
つてもお分りになると思うのでありまするが、どんな夜間におきましても、雨の日でも嵐の日でも、鉄道の急行列車が通過するとか、夜間列車が通過するような場合には、必ず駅長並びに助役が信号を振
つて安全を機関手に報知しいたわけであります。ところがそのような通過列車の監視というのは、これからもうやらなくてもよかろうというようなことによ
つて、非常に保安度の
低下というようなことが予想されるのであります。或いは又夜間併合運轉拡充といたしまして、つまり私達の運轉
関係におきましては、つまり線区が決まりまして、その線区の間には前の列車がある間は後の列車は入
つてはいけないという規則があるのであります。つまり併合の区間があるのでありますが、その併合区間のあれを拡充いたしまして、そうして前に列車が入
つてお
つても後の列車が入
つて來てもいいじやないか、こういうような形にや
つて行こう、つまり夜間併合運轉を拡充して行こうというような、追突事故を起す最も大きな
原因をここに來しているのであります。或いは乘務省略の拡充、つまり機関士であるとか或いは車掌、こうい
つたものを省略しよう、お客さんがどんなに混もうと否とに拘わらず、もう後部の車掌などというものはこれからもう止めてしまおう、こうい
つたようなことまで
考えているのであります。それから発條ポイントの増設、これは今まで殆んど國鉄では使
つていないのでありまするが、國鉄ではすべて轉轍機は
人間が扱うことにな
つております。ところが市電等を見ますると、発條ポイントと申しまして、電車が入
つて参りますと、自然にポイントが開くようにできている、電車が通
つてしまうと自然にバネによ
つて線路がつぼまるというような発條ポイント、バネ仕掛けのポイントがあるのでありますが、國鉄ではバネ仕掛けのポイントは危險であるから使わないのであります。何故かと言えば、一朝間違
つた場合に取返しのつかないことになるのでありますから、必ず轉轍手が行うのでありまするが、このような発條ポイントを増設して轉轍手を少くさせよう。それから踏切道の
整理、これは今でもなかなか踏切事故というものは絶えません。それにも拘わらず踏切を
整理して行こう、こういうようなことを
考えているのであります。これらは運轉
関係におきましては特に
國民の生命に関する重大なる問題だと
考えられます。それから職制の
関係といたしましては、特にやはり今のような問題で、サービス或いは人命に関する問題だけを申上げますると、今言いました踏切道を
整理して踏切警手に今度はポイントを取扱わせる、踏切道というのは、踏切は必ず責任者がいなければならなか
つたのでありますが、例えば隣接したところの踏切は一人の
人間にやらせよう、余
つた一人の
人間にはポイントを取扱わせるということで、踏切警手にポイントを取扱わせよう、或いは駅員に今申し上げましたように乘務省略をやりまして、つまり車掌が後部に乘
つたり前に乘
つたり、車掌などの乘務省略をやる場合には、或いは駅員或いは一部の車掌を兼務させよう、こういうことを
考えているのであります。或いは又乘客係を廃し、案内係にしてしまう、それから巡察員を廃止しよう、そうして特に私達從業員にと
つて重大な問題は、待合せ時間をもつともつと少くしようということであります。御承知のように鉄道の運轉
関係の特に機関車
関係におきましては、水を一ぱい罐に入れたり石炭を積み降したりする時間が沢山かかります。これらはすべて待合せ時間、準備時間と言われておりますが、これをもつともつと少くしよう、できるだけ早い時間に水を入れ、石炭を入れるというのでありますが、現状ではどこにもその施設がないのでありまして、今ので精一ぱいでありまして、待合せ時間をもつと圧縮するということになりますと、勢い檢査が疎漏にな
つて参りまして、直ちに重大事故を惹起する唯一の根拠とも
考えられるのであります。設備
関係におきましては、駅の廃止及び裏口の閉鎖、ここまでや
つて來なければ
人員を生み出すことができない、從いまして今より駅はも
つてもつとサービスが惡くなるのは当然であります。東口、西口があるような駅には、東口は開いて置いて西口は閉鎖してしまう。甲、乙、丙とあれば、乙だけ開いて置いて甲、丙は止めてしまおうと、こういうことをやろうと当局は
考えておるわけであります。或いは信号所を廃止しろ、それから出札窓口及び改札口の一部を閉鎖しよう、或いは手小荷物及び出札取扱時間を制限しよう、これからはいつ
行つても切符を買うとか荷物を置くというわけにも行きません。手小荷物の集約輸送をしよう、今ではお客樣の荷物を預りますと、次の列車便で送るということをや
つておるのでありますが、そういうことをしてお
つたのではとても
人間が足らなくて堪らないから、荷物が一緒にまとまるまで送るまい、こういうのであります。そういたしまして、最後に一般
関係といたしまして、駅員は今度は
一つ日勤制をや
つて少くしよう、駅長を助役に下げよう、この間大屋運輸大臣はそう言
つていました。駅長を下手に持
つて行つて助役にすればいいじやないか、配置轉換をやればいいじやないか、どんどん下さて
行つてこれ以上下らない
人間はどうするのかと言
つたら、それは首切りだと言
つていましたが、こういうふうにどんどん降職をさして行こう。駅長の日勤制の職制をやる、助役を
整理するということを言
つております。それから清掃手を
整理する。今でも汽車、電車は随分汚れていると皆樣からたびだび私達にお小言を頂戴する点でありますが、尚一層清掃手や駅手を
整理することを言
つております。いよいよ豚箱の汽車電車になり下がることが思われます。それから連結手、車掌の見習
定員の廃止であります。これは直接にお客さんのサービスではございませんが、私達にと
つて命に代る非常な重大問題でありまして、連結手というのは突つ走る貨車に飛び乘る重大な
仕事であります。あの貨車の連結手を拜命した者は、明日からでも連結の
仕事をやらなければならないのでありますが、これは実に命掛けの
仕事でありまして、見習
定員がなくなるということが私共にと
つては非常に大きな甚大なこれは問題であります。特に鉄道におけるところの死傷事故の多くのパーセンテージを占めるところのものは連結手の死傷であります。これは見習の期間は一ケ月、昔は三ケ月もあ
つた、こうい
つた見習の期間は止めて、いきなり直ぐに実務に就かせるために、車掌見習を廃止し、或いは連結手の見習を廃止しようということを言
つておるのでありますが、非常に重大であります。
それから八番といたしまして、査定
基準の改正、こういうことは素人耳には分らんのであります。一番大きな問題は査定
基準の改正であります。つまり今まで國鉄は、戰後は大変評判を落しましたが、ともかく國鉄があらゆる惡條件にも拘わらず動き得た、お客さん達を運び得たということは、年來の傳統であ
つたところの諸規定というものが嚴に今日までありまして、この諸規定の線においてできるだけ抑えて行く、正確安全を基礎としたところの鉄道魂というものがあ
つたからこそできたのであります。ところがこの査定
基準を今回改正いたしますると、使用に堪えない限度に達しておりまして、もう紙のように薄く
なつたものでも使
つてよろしいというところまで今度は行くのであります。それから御承知のように、今どんな車でも、電車でも一定期間に入りますと檢査期間というものがありまして、例えば客車にいたしますと三十日には必ず一定期間を定めて檢査することにな
つておりますが、今度その三十日の檢査を四十日にこれを延ばそうというのであります。こういうようになりますと、今までもさえ非常に困
つている、バネとかタイヤとい
つたような枢要な
部分に対する疵を発見して事前に予防の手を打つということが、この檢査期間の拡充によ
つてできなくなるという虞れがありまして、こういうような査定
基準の改正ということは、非常に素人目には分らない点でありますが、私達專門家から言いますと非常に重大なる人命に関する危機を喚び起すと言わなければならないと思うのであります。このような形において当局は五十万人に減らそうということを
考えておりますが、非常に危い話だと思うのであります。だから私達鉄道
職員は非常に体制も嚴然としておりまするし、廣汎な作業
関係を担当しております
関係上、一朝一夕に右から左になかなか配置轉換できないのであります。ところが十万人首切りをするためにはいろいろな職種に対するバランスをと
つて行かなければなりませんので、恐らくは十万人首切りますために、最小限二十五万人の
人間を動かさなければならないことになると思いますが、そのようなことはとても今の状況下においては行われるものではないのであります。このことは業務の大変革であると
考えます。私達がこの問題につきましてこの間加賀山長官に会いまして一体できるつもりか、できるかどうか最後の肚を伺いましたところが、俺はやれるだけやろう、そういうふうに答える外ない、こういうことを言
つております。当局の責任者はやれるだけやろうでよいか知れないが、現場で実際に機関車のレギュレターを握り、或いは車の傷をハンマーで叩いて檢査をする我々の氣になれば、やるだけやろうでは済まされない。鉄道の
仕事は、万が一ということは世間で言われますが、鉄道に関する限り万が一が許されない。万が一があ
つて大きな事故が惹起したらどうするかということで、鉄道の現場においては一にも確認、二にも確認、三にも亦確認と言
つて、私達は長い間鉄道の作業を勤めて來たのであります。又例えばポイントを返すにいたしましても、單にポイントを返してさつと帰
つて來るのではなくして、ポイントが返
つたということを自分が目で見て、手でさす
つて、それが足らないで打撃にポイントが返
つたということを、自分の口で言
つて確認をして戻
つて來るという作業を、今までや
つておるのであります。そういうことでありまして、私達にと
つては実際この万が一とか、或いはやれるだけやろうとか、そういうことではこの尊い人命を預る
仕事というものはや
つて行けない。どうしてもこれでやれるという確信と意氣がなければ鉄道作業というものはや
つて行けないのであります。こういう点につきまして当局自体も責任が負い得ない、自信がないとい
つたようなこういう首切りの問題につきまして、一体誰が責任を負うかという問題に移
つて行くと思うのであります。
從つて事故の続発することは当然予想されます。最近におきまするところの事故を見ましても、実に慄然とせざるを得ないような、目を履うような事故を起しております。特に昭和二十三年度におきましては、事故の件数は三万六千件を突破しておりまして、その割合は昭和十一年に比べて実に四五六%と増大しております。惡性事故と申されます列車の衝突、或いは接触、脱線事故等が四百八件も年間に挙げております。一日に少くとも一件以上直ちに人命に危機を及ぼすというような惡性事故が起きているのでありまして、今の状態でもそうでありますから、これが若し十万人からの首切りが行われ、実際においては六人に一人とか、五人に一人とか首切りが行われて來た場合に、ここに発生するところの事故に、責任を負
つて國民の生命を誰が一体完全に輸送すると断言し得ることができましようか。そういうようなことにつきましては、実際
事務局は口を緘して語らないのであります。何とかやれるだろうということを言
つておるのであります。ここで私達は実際に
行政整理の根本に関しましてもです。もう全く無茶で何らの計画性と科学性がない。無茶である。ただもう首切りするにのみ興味があるように感ぜられます。先程佐藤さんが申されましたが、
財政的な面において、一体では國鉄の首切りをするためはどれだけの金が浮くか、僅かに年間七十五億にしか過ぎない。この七十五億に過ぎないものをもつともつと合理的な、單にこの七十五億のために
人間を首切らなければ七十五億の金は浮かないのか、私達は浮くということをここではつきり申上げることができると思います。例えば消費
節約を行うことによ
つて、その一端を補うことができると思います。昨年度二十三年度は私達が石炭を、実に十億円に上る石炭
節約に成功いたしました。又今の民主自由党の政調会長佐藤さんが当時次官であ
つたときには、國鉄においては石炭を
節約する、八%石炭を
節約すれば一万人の
人件費を賄うことができる、こういうふうなことを言
つておりまして、石炭の消費
節約を行いますれば十億や或いは十五億の石炭の消費
節約を行うことは可能である。これらの
財政上の不合理を十分是正することにより、これから七十五億の財源を浮かすことは左程困難ではないと
考えます。これらの問題につきまして
考えますることは、今の赤字を理由にいたしまして私達の首切りをするだけではない。戰時中に買收した私鉄を拂下げようと言
つております。承わるところによりますれば、もうそういう
法案が出たそうでありますが、実際はお話にならない金額で拂下げるのです。一例を申上げますと、十線区、十の線区を拂下げると言
つた中に、小倉鉄道というのがあります。北九州の小倉鉄道であります。その資産評價におきまして、二十四年度の資産評價におきましては、四億四千万円と資産評價をしております。これが一億九千万円を再評價をされておりますが、拂下げの場合は僅かに二千万円であります。こういうように形において國鉄のこれは都合で拂下げるか知れませんが、國鉄のこれは実際の赤字をカバーするという理由による、買收私鉄の拂下げということは全然
意味をなさないということを申さねばならないと思うのであります。而も亦
経営上においては至る所の沢山の隱退藏物資があります。例えばこれは小倉管理部だけにおきましても、一千万円に上るところの物資がまだある。或いは昨日も衆議院の運輸
委員会に提出された問題だそうでありますが、甲府の管内においては時價二百七十万に上る鉄道用品を八十万円で大阪の或る商人に拂下げておる。こうい
つたことでも
つて実は赤字を理由にして拂下げということを巧みに利用いたしまして、愚にもつかない連中に金儲けをさしておるということを行われておるのでありまして、こういうようなことは却
つて國鉄の
経営、
財政上の不合理を是正することには相成らんと思うのであります。眞にこういう点において
國民の権利を守る皆樣方の絶大なるお力により、國会みずから
経営、
財政上の不合理を是正して行くという
方針に出れば、或いは七十五億どころか、もつともつと大きな
財政上の問題が解明されて、首切りをやらなくとも済むような方法は浮んで來ると思います。そうして大局的に結局首切りをして七十五億の
人件費を遮二無二上げるか、それともできるだけ生命を預かる者として少くとも安全、正確、迅速に皆さんの足が運ばれ、皆さんの財産が運ばれるとか、或いは貨物が傷まないで、又お客さんにサービスがよく
なつた方がいいか、一体
國民全体としてどつちがいいかという、こういう大局的な
立場によ
つて、是非國鉄の面をお
考え願いたいと思うのであります。又私達も
考える点は、五ケ年計画、つまり運輸当局が作
つた五ケ年計画においても、昭和二十四年度の
基準定員は五十六万ばかりおる。それに対して臨時
定員六万ばかりがおるのです。そういうような形において昭和二十二年から始まり五年計画というものを運輸省当局は立てておるのでありますが、それらの基礎的な計画的な又科学的に立てた
定員さえも全然無視して、今回は立てられて行
つたというようなわけであります。特に今回の首切りの問題につきまして、これを
定員法で縛るということは実際無茶な話だと思います。又
各省の
定員法の問題につきましては、佐藤君が縷縷申述べたのでありますが、特に私達
事業体でありますこれこれの
事業をするために、これだけの
人間が要るということは、誰が何と言
つても
事業であります。これを天降り的に二割五分なり二割五分
人間を減らすということが随分無茶な話だということは、
事業を
経営した方は誰でも納得できると思います。公共
企業体である國鉄を
定員法という
官廳の
定員法の枠で一緒に縛るということは、これは矛盾も甚だしい、而も違法であると私は
考えます。なぜならば、公共
企業体労働
関係法が新らしくできたそのときにはちやんと團体交渉権を認められていて、我我の意に反するときは訴願を行い、或いは又團体交渉の
対象になるということをはつきり規定したのは、外ならん民主自由党であります。そうい
つたところにおいて、はつきりと公共
企業体労働
関係法によ
つて労働者の権利を守
つておきながら、非常時だから仕方がないと言
つて、基本的人権を剥奪された、これはみずから憲法に保障されておる我々の権利を踏みにじるものと言わなければならないと思うのであります。こういうようなことにおきまして、今回のこの
定員の首切りは、全く國鉄の公共性ということを全然犠牲にして、單なる
数字の辻褄を合せるだけの、そのような形だけしかとられていないのであります。從いまして私は最後にお願いしたいことがあります。それはこのような形において私達がよし仮に首切られたとしても、一体うつちやり場のない
日本人はどこにも行くところがない。やはり國内で何とかして食
つて行かなければならない。同じことではないか。こういうことでも
つて國鉄を潰す方がいいのか、それとも七十五億円の金を
國民のサービスとしても、皆さんのお力によ
つて國会が認めて頂いても別にそう大して困る問題ではなかろうと
考えられます。それにも拘わらず、ここの独立採算制もできておらん、何もかもできておらん、それにも拘わらずここでも
つて失業者を多数作
つて、一体うつちやり場のない
人間をどうしてや
つて行こうというのでしようか。一体私達は何が何だかさつぱり分らないのであります。そうして
社会不安が激化して参りますことは当然でありまして、この
定員法を作るということは、誠に角を矯めて牛を殺すあの愚挙に何ら変りはないものと私は
考えざるを得ないのであります。どうか國会の責任において、
内閣委員会の皆さんにお願いがあります。先程も佐藤
証人も申しました、人事院でさえもこの首切りについては責任を負うわけには行かない、関與することはできないということを言
つておりますが、かような非科学的な計画性のないところの首切りを、
政府はあなた方の責任において行わせようと今しております。然るに自分達は自信がないものだから、これを國会の責任において
官廳の首切りを行おうとしております。私達もこの問題を……今縷縷申上げた問題について、篤とお
考えに
なつたときに、誰が火中の栗を拾う者がありましようか。どうかこの
定員法の問題は
行政官廳の責任においてやることで、
法律で決める必要はない。公共
企業体に関しましては、この附則から削除して頂きたいということを特にお願い申上げて私の公述に代える次第であります。(拍手)