○
國務大臣(
池田勇人君) 御
承知の
通りに所得税が明治二十三年に
施行されましてからずつとこの方、納税者の選出いたしました所得
調査委員会というのがありまして、
税務署長が所得税、営業税、或いは営業收益税、臨時利得税を決定いたします場合には、納税者の選出した所得調再
委員会に諮問して決定するということに相成
つてお
つたのであります。この所得税には
從來前年の実績によりましてその年の所得税を納める、いわゆる実績課税のときに行われてお
つたのであります。然るに一昨年來、前年の実績というのでなしに、その年の
予算によ
つて課税するということに相成
つたのであります。即ち
予算によ
つて納税者が自分の所得を自分で申告して納める、こういう建前になりました
関係上、所得
調査委員会を廃めたのであります。別に
予算申告納税制度ということに変
つたことと、もう
一つはこういう思想があるのであります。事税に関する限りは國家と納税者とは利害相反しておる。利害相反しておる場合に、納税者の選出した
調査委員会が決めるというのでは、取ろうとする國家の方を制肘することになるというので、理ぞ的によくないという
考え方もあるのであります。私は当時
主税局長で、この問題につきましては
関係方面と十分
意見を鬪わしたのでありまするが、理論的には向うの言うことが通
つております。併し実際面におきますると、御覽の
通りうまく行
つておりません。これは
一つの税務官吏の素質が低下しておること、又経済界が非常に
複雜多岐に
亘つていること等、いろいろな問題がありまするが、うまく行
つておりません。
從つてこの
施行の結果を見まして、納税者の選出した委員以外の者も入れて、公正な判断のできるような人を以て
組織するいわゆる諮問
機関を作
つてはどうかということに
考えておるのであります。そうすると問題の
予算申告納税の制度とどうマッチするかという問題になるのでありまするが、先般來いろいろな研究をいたしました結果、いわゆる確定申告が出て、それを構成する場合に付議するような
機関にしてはどうかという説もございますし、又御
承知の
通りに
予算申告納税制度にいたしましても、今年は六月中に出すのでありまするが、第一回の
予算申告納税をいたした後、一度付議するというような
方法をと
つてはどうかというようないろいろな
考え方もありまするが、私は今の情勢から言えば、理論的には置かないことがよいかも分りませんが、実質的には是非とも必要な
機関だと
考えておりますので、実は一昨日シヤウプ氏に会いましたときにも、私の
意見は十分言
つて置いたのであります。できるだけこういう
機関を置くような
方法で折衝いたしたいと
考えております。