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1949-09-13 第5回国会 参議院 地方行政委員会 閉会後第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年九月十三日(火曜日)    午後一時二十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件地方行政に関する調査の件(治安問  題)   —————————————
  2. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) これより委員会を開会いたします。  今日の議題は治安に関する問題であります。先ず最初樋貝國務大臣から警察法改正問題のその後の経過と政府の方針についてお尋ねいたしたいと存じます。九月の二日にマツカーサー元帥声明中、警察問題に触れられて、現在のような機構と陣容の警察制度では治安維持ができないという危險は全然ないと、こういうふうに言及されております。又九月十日にアメリカのヴオーリーズ陸軍次官新聞記者との会見におきまして話しておられることに、これは読賣新聞の記事でありますが、現下の情勢では、日本警察力を増強するという問題についての努力はなされないであろう、現在の警察力の大きさは日本官憲自体が要求した数量と一致している、こういうふうに新聞には出ております。こういう問題につきまして説明を聞かして頂きたいと思います。
  3. 樋貝詮三

    國務大臣樋貝詮三君) この問題はいつかも申上げました通り、非常に國際的にも國内的にもデリケートな関係を持つておりまするので、私の口から表明することは憚つておりましたが、実を申せば、三月初めからして非常にこの問題には苦心しておりました。又今日も依然として苦心しておりますけれども、而も尚その結論その他について絶対に言明を避けておつたようなゆえんでありまして、九月二日のマツカーサー元帥声明にいたしましても、ヴオーリーズ次官の発表にいたしましても、それらを受入れ得るように私共はすべてのことを運んで行きたいと考えているのでありますが、別にこれと反対するような事情はなかつたわけであります。併し昨日も丁度衆議院の方でその質問がありましたけれども、與えられた條件の下における現在の警察力では、この治安が、過去の治安及び將來の治安が、言換えれば日本治安が保つて行けないだろうということをよく聞きましたけれども、そういうことは断じてないということを申上げたわけであります。もつとベター方法は、よくする方法はありますけれども、併し與えられた條件でも今日想像できるところの治安を乱かものに対しては十分の力はある、こういうことを考えて、恐らく元帥の言われたのもそういう意味であると思います。私らの考えることは犯罪も多衆的になり、それから兇暴性帶びて來た今におきましては、即ち客観的の事情が変つておるから、それに対應できるように、言換えればもつと人においても物質においても経済的の措置が取られるじやないかということを考えまして、その意味においては現在のこの状態に対應するように、新たなる処置が取られるじやないかということは考えられます。これが現実のオペレーシヨンの問題であるとか、或いはシステム、組織の問題だとか、両方面にそれが考えられると思つておりますし、現在でも考えております。その與えられた條件で最良を盡す、それで決して治安は心配はございませんということを言つておるゆえんは、それは実行方面考えておりますので、現在の攻撃が過大に放送をされておりますけれども、併しながら実体はそんなに大きいものと認められないから、從つて現在の力を以ても十分に治安維持できる、こういうことを考えておりますが、さればと言つて今の情勢に対して、今のやり方というより、むしろ組織がそれが最上のものであるかどうかということについては、尚十分の檢討をしなければならないと私は考えております。先程から申上げました通りに、その方面でも尚我々の財政を救い、又我々のそれにつきましての人の方面も救えるではないかということを考えておるわけであります。ですから元帥の九月二日に言われたことは決して否定するものでもないし、のみならず我々の考えと牴触するものでもないのですが、私共が要求することは、更に今日以上のベター方法があろうかということを考えて、それに副いたいということを考えておるようなわけであります。從つて米陸軍次官言つてつたことも、それからマツカーサー元帥が言つたことも頷けるつもりでおります。決して牴触していることはないつもりでおります。ただ今の例えばシヤウプ博士財政論等につきましても、実行もしないでどの程度であるかということは言えんことであるのですから、そこでその実際の結果を見て更に考えてもいいではないか、抽象的、演繹的によいとか悪いとかということを言うべきではなくて、もつて具体的に、もつと機構的に考えても救われないだろうか。現在の攻撃に対する治安維持という点から言えば、それを待つていても遅くはないだろうというようなことが考えられると思つております。そういうようなわけで、改革のことに対してもすべてを進めるわけでありまして、如何なる内容を持つているかということはちよつと申上げることを憚つておるような次第であります。
  4. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 樋貝國務大臣に御質問がございましたらお願いいたします。國務大臣閣議の都合で二時までしかここにおられませんから、そのおつものでお願いいたします。
  5. 藤井新一

    藤井新一君 速記を止めて、もう少し詳しく、イン・デイテールに話すことは願えますまいか。ぼんやりとして我々は把握し得ないのですが、速記中止にして一つもつと徹底的にお伺いできませんか。
  6. 樋貝詮三

    國務大臣樋貝詮三君) 差支えない程度では成るべく細かくお話ししてもよろしいと思いますが、今申上げましたことが、直ちに日本のみならず世界に及ぶということを一つ考え願いたてのでして、それがどんなふうにか若し誤解をされると困るから、そこで私も非常に言葉を愼んでいるわけで、その点御了承を願いたいと思うわけであります。そこでこの間においても、すでにそういうことを私に言つて來ましたけれども、それは樋貝大臣及び政府においてこの問題についての取扱は非常に自重していることはよく知つておる、併し港間に非常によく傳えられておるところを見れば、何だか現勢をアタツクするような、攻撃するような形が現われておる、それではおもしろくない、それは日本人に対しても損じやないか、そういうことを言つたらばどいうようなことが言われておりますので、結局私共の慮れるところは、誤解されるような場合があるというと非常に困ると思つておりまして、そこで言いたいことも言わないでおるというのが今日の事態です。從つて実を言えば、閣議にも細かいことは一遍も話さんようなことでありまして、それから総理大臣に対しても極くデイテールなことに関しましては言わなかつたくらいに、実は三月初めからして非常に自重をしておつたような、殊に前議会においても案を提出するとか、考えるとかいうようなことをしなかつた理由ですから、その中におけるところの少しく抽象的になりますけれども、苦心の程を考えて頂きたいと、こういうわけでございます。
  7. 藤井新一

    藤井新一君 了承いたしました。
  8. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 樋貝國務大臣只今縷々説明のありましたことは、こういうふうに了解していいのでございましようか、只今のこの治安状況から考えて、又連合軍が現在駐屯している、それから考えて現在の警察制度警察力と、そういうもので以て治安維持をやることに決して不安はない、だから現在の治安状況から考えて、現在のこの連合軍がおる限りは先ず大丈夫だ、但しこの警察制度というものにもこれは完全無欠ということにはいかんから、もう少し改良するように努力はしつつある、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  9. 樋貝詮三

    國務大臣樋貝詮三君) 大体そういうふうにお考え願いたいのですが、その方面に私も努力して頂きたいと思つております。ますますよき警察を、明るき警察を、そうして弱くない強いところの警察、これを欲しいと思つていろいろ考えておるわけであります。それで昨日も丁度衆議院でそんな質問があつて、次々に日光事件、或いは平事件、或いは國鉄スト事件等が起りまして、この間に國民現実に不安を感じた、今後もこの不安を感ずるようなことがあるかというような趣旨の御質問がありましたので、決して不安を感じて下さるなと言つたところで、今まで不安を感じたことは事実だと、こういうのです、それは数時間でしよう、或るところで暴動が起つたと仮にします。そうするというと、その地方占拠をするということは、これは数百人かかればやれるかも知れませんけれども、数時間後にそこに沢山集まりますから、直ぐそれを退治てしもうことは雑作ないのでして、だからそれが一時間と思つたやつが五時間粘りついたというようなことがありましよう。一日ということが、或いは二日になるというようなこともありましようけれども、その程度のことで幾日も占拠されてそのままいるというような、一週間も十日もいるという、そんなことは絶対ないことで、日本全体としてあり余る力がありますけれども、併しながら一地方だけを取ると、例えば平市のごときような土地を取りますと、そこに騒動を起したということになると、こちらの方は五十人しかおらん、押かけて來るのは二百人おつた、或いは千人おつたというような数が多くなつて來ますと、数時間のというものは、それに対する抵抗力がないというようなことになりますけれども、例えば東京管区から應援が二百人行つたというようなことになりますと、平まで三時間東京からかかる。それからいろいろそういう人を狩出しますまでに一時間半ぐらいあります。最初の電話から人を全部自動車に乘せて連れて行きますと、一時間半上野の停車場までかかります。汽車に乘せてその先が三時間、四時間半というものはどんなに急いでもかかります。それから又縣の地区警察を出しましても、それだけでは人数が足りないというような場合におきましては、今騒ぎの最中に人数を出せば、却つてその場合には窮境に陥るようなこともあります。騒ぎをますます大にするという場合もありましようから、人を十分に備えて行つて、時間の問題で、さあどうだというと沈黙してしもう。そんなことで一時的にそういうような場合も混乱を起すようなこともありましようし、日本全体を通じて見ると、今日はまだ比較にならないウエイトを持つていると私は考えております。だから私の言う、この場合マツカーサー元帥の言われたごとく治安は大丈夫であろうと考えておることは、今言つたよう日本全体を通観した場合に大丈夫だと考えておるようなわけであります。今回のこれまでの騒ぎにおきましても、國家非常事態考えたこともない状態、いずれ公安委員の方から勧告して來るでしようけれども、それを受入れてどうするかということも、まだあの程度では考えませんでしたようなわけであります。併し無論非常事態の不安からして、そういう場合はこうする、ああするということは考えておりますから、これは抽象的に考えていたわけで、この間のような事件非常事態が起きるというようなことは考えたことはありません。
  10. 柏木庫治

    柏木庫治君 今の大臣お話で、不安が拭い去られたとは実は考えられないのでありますが、それはこの前齋藤長官がここに見えまして、委員会のときにこういう質問をいたしたのでありますが、今平事件と申しますが、平が代表しているけれども、ありときは福島縣殆んど全部でありますが、あの福島縣に起つた事件に対して、福島縣警察力ではあれを鎭圧することはできなかつたと、福島警察力はあの福島縣全体鎭めるだけの力がない、他の力であれが鎭圧されたのかと言うとそうだと言うのです。そういたしますと、恐らく当局福島全体がああいうことになるとは考えられなかつたのだろうと思うのでありますが、あの福島縣でやつたことが、あの五、六縣というか、七、八縣が同時に若しやつたとすれば、他から應援に行くことはできない。ともかくそういうことはあり得ないと今では思うておるというお答えであつたのですが、それでは福島縣の問題でもああいうことがあると私は思うておつたのじやないと、少くとも自分達の計算以外のあれはでき事じやないかと思うのですがね。それであるならば、福島県全体がああいう羽目になつたということから考えて、あれが福島だけでなく全部周囲七、八縣に一遍に起ることも考えられないことではない。けれども治安を保てるという、暗に日本警察力だけでなくて、日本には現在強い力があるわけでありますが、こういう点について日本警察力日本だけは少くとも治安が保てるだろうか。現在日本治安が乱れてしまうとは私共考えていないのですけれども、福島縣のあの事件から考え日本の持つている警察力だけでは、警察力から考えるというと私達の考えていることが、そこに大きな開きがあるのです。というのは、福島縣にああいう事件が起つて明らかに警察の力、福島縣の力で事件を鎭圧できない、むしろ暴動通りになつたという形じやないかと思います。これに対する樋貝國務大臣のお考えを伺いたい。
  11. 樋貝詮三

    國務大臣樋貝詮三君) 私はその点では少し考え方が違うのですが、今例で福島縣のようなことが数縣で同時に起つたらどうこうと言うのですが、日本全体同時に起り得ないのです。それで日鋼で起せばそこでやり、又國鉄ストで起せばそこでやる、それから福島で起せば更に福島へ轉じ、千葉で起せば千葉でやるというように、同時に一遍に起せない事情に今日はあります。それで実例を御覧になりま島てお分りでしようけれども、次々に起している。そうしてそれに参加した人としては、別の人もありますけれども、大部分同じ人がそれに関係していると言える。そういうふうに同時に一遍に起るくらいなら、日本の全國を通じて起り得るならば、それは又とても警察力くらいではどうこうできますまいけれども、そのときには日本の大多数というものがその方向へ向いたときですから、況んや少数の者の意見從つてどうこうということは、それ自身は騒ぐかも知れませんけれども、併し今の状態では数府縣同時にということはできない、次々に起す外はない、例えば福島縣にしましても、当時は一番防備の薄かつた所ですけれども、そういうような所を狙つては次々に起して行くというような有様だつたのです。だから私の判断しまするには、警察力を以てしてもいいじやないか、只今のその点からもう少しいいところの警察力を持つことができる余地があるということを考えまして、そうしてそれらについても檢討いたして参つたようなゆえんでありますけれども、併し與えられたる條件の下にも、尚その実情を見れば今日の力で防げるじやないか、数時間という時間は稼がれることは分つていますけれども、而もその時間が経過いたせば、それでもう國が引つくり返つてしまうということは絶対にない、こういうゆえんです。それだからそれの起つた地方の不安を來すことは夥しいですけれども、それに対して目下はどうすることもできない。日本だけではどうすることもできない事情にあるとは思いますけれども、而も終局的にはそんな不安を起さんでも大丈夫だと、こういう考えでおります。
  12. 柏木庫治

    柏木庫治君 樋貝國務大臣はああいう福島縣のこの間の調査、それからここでの委員会の話からしますと、全然、私は仮に暴動というならば、暴動に圧倒された、そういうことを曾て一度でも福島縣又その他の縣で起り得ると予想なすつたことがあるかないかということが一つ。それからもう一つは、私も樋貝國務大臣の今の説明でよく分りました。日本全國が一遍に引つくり返えるということはあり得ないということでありますが、それは日本全國が一遍に引つくり返らなければ、それでいいのだというのでは、私は治安という意味がないのじやないか、ああいう福島のようなことが幾縣にも亘つて一度でも起るということが、もうすでに非常に不安じやないか、人心の不安じやないか、日本全國で引つくり返らないからいいじやないかというようなことではどうも安心がならないですね。だから一縣というだけでああいうことがあるということが國民に向つて非常な不安を與えるのだということなんで、言わば取締当局の少くとも予想が外れたのじやないか、ああいうことが或いはあるとお考えになつたのか、全くお考えじやなかつたのかということを同時に聞きたいと思つております。
  13. 樋貝詮三

    國務大臣樋貝詮三君) 福島縣には確か東北におきましても進駐軍がおらん縣だと思うのです。そうして早くから福島、殊に郡山がある福島といたしましては注意をしておつた縣一つであります。それから山口縣とか、青森縣とかいうものも末端で注意しておつたところであります。土佐などと同じように取扱つたわけじや無論ありません。相当な注意を與えておつたのだが、併しあの騒ぎがどこで起るかということは予測をしておるというわけには参りません。今日の人員では事件が起つたとか、或いは起りそうだと言えば國警の方から差廻しますし、又可なりの廣い範囲だとすると、その縣でも十分に動かせないから外のところから運ばなければならんというようなことになります。例えばあの山口縣におきまして朝鮮人同志の喧嘩がありました。あれに対しても最近におきましては、例えば山口縣ですが、全部國警を或いは市警等において狩出したとしましても人数が足りないのです。それのみならず多数あれば、或るところで事件を起して置いて、同時にその縣内の外のところにも事件を起せば奔命に疲れてしまう、こつちへ行つたりあつちへ行つたり、それじやたまらんから、自治体警察におきましても自分のところも注意をしなければならんということで、現に山口縣におきましても、一旦行つて人間自分町村へ返したというようなこともあるのでして、そういうふうなその自治体等につきましても、自分町村を護らなければならんということが起りますために、廣島縣の管区から、或いは福岡縣管区から警察官吏を派遣したというような状態でありまして、どうも福島縣を心配してはおりましたけれども、併しながらそれが平に起ろうということは御説のごとく考えておらなかつた。而もあの長時間に亘つて騒ごうというところまで考えておらない。事件が起つて初めてそういうようなことで福島縣の方からも人はそう沢山やれない、こつちも残さなければならんというようなことで、東京からはるばると送らなければならんというようなことも、ひとり財政のことばかりでなく、そういうようなことも考慮したわけです。同時に若し日本中から起ればそれは非常に日本警察力だけではとてもいかんということになりましようけれども、まあ今日においてはお話のようなことは確かそうかも知れませんけれども、暗々裡に外の勢力が入つておりまして、日本軍隊を持つてつた時代のように、軍隊の発動がなかつたにしても、暗々裡にその力が加わつてつたと同じようなことはあると思います。
  14. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 樋貝大臣に尚伺いますが、この警察法による制度におきまして、小さい自治体警察というものの微力であることは、もう平事件その他各所の事件で証明されておるのであつて、小さい自治体警察制度維持して行くということは、これは日本治安維持の上において大きな障害をなして來ておるということは、政府は御認識になつておると私は思うのであります。でそういう騒擾事件その他それに類似した大事件が起つた自治体公安委員長から、私の方に続々いろいろの報告を寄越しております。そうしてこれに対する欠陷、所感、今後の対策というようなことにつきまして、是非とも小さい自治体警察は止めて貰わなければいけないということを、自治体公安委員長自身が申しておる。これは政府についても同じようなことの申出があると思います。この点は樋貝國務大臣においてどういうように御認識になつておるか、その点を伺つて見たいと思います。
  15. 樋貝詮三

    國務大臣樋貝詮三君) お説の通り小さい自治体が非常に困難を加えておる。財政方面におきましても、警備の点についても、非常に困難を感じておるということは考えられます。丁度昨日も考査委員会におきましても私証人として出ましたけれども、その類似のことも聞かれましたけれども、財政方面シヤウプ博士の勧告によつてどこまで緩むかという点であります。その点も多々ますます弁ずるのだから、それで緩めばもとより警察制度においても緩ました方がいいじやないかということも言われましよう。それからそれで足りるならばいいじやないか、そこまで止めろというのも一つ考えでありましようが、併し他方面の、今いう警察の能力を発揮できないじやないかという点ですが、小自治体につきましては、むしろ事件も余り起るまい。事件が起るのは大抵都会じやないか、大きな事件というように考えますと、小自治体ではなくて大きな都市ではないかと考えられますから、実際において小自治体において問題になるのは強盗や窃盗、或いはボス、いわゆる日本意味におけるボス、それと当局とが馴れ合いになりはしないかというような懸念、それがかかつておると思います。それらについて認識の相違もありましようけれども、いろいろの角度から私共はそうでないことを欲するわけで、いろいろ苦心しておりますような次第であります。
  16. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 経済上の問題は解決の途があるとして、今おつしやるように小自治体警察などというものの致命的な欠陷というものはどうしてもその町から任命されたものだから、ボスというものができ勝ちの小自治体においては、その影響を蒙むり勝ちである。それで嚴正な警察力が発揮できない。それから常には要らない人員、例えば人口五千の所なら十人も警察官がいる必要はない。せいぜい二人の警察官が居ればいいのでありますが、それを常に十人も常置して置いて何もすることがないから、町民の間には警察は何をしておるかという不満で困つておるということが言われておる。ところが少し大きなことが起ればその十人ではどうにもできない、他から援助を求めなければならない。隣の自治体警察から援助を求めれば、その隣の自治体警察の本体は、その隣の自治体を守るべき人なんでありますから、それが應援行つたということについて隣の應援に赴いた町の一部の町民から責められる。なぜそういう應援行つたか、これが福島事件において顯著に起つておるのであります。こういうことを考えて見ると、小自治体警察というもの存立意義というものはない。どうしても改善いなければならんということを私は深く考えるのですが、これは恐らく樋貝國務大臣、その他閣僚の方々も同意見であると私は確信しております。この点についてもう一度伺つて置きたいと思います。
  17. 樋貝詮三

    國務大臣樋貝詮三君) 確かに御説のような考えも言えると思います。問題はもう少し経驗を積んで見たらどうか、私共はこの面からも努力いたしておりましたし、今後も努力して行きたい。最後最後まで努力して行きたいというつもりでおりますので、それで今御説のようなことも頷ける節も十分ありますから、特にそれらも取入れて研究したいと思います。尚その他に亘りましても、沢山な事例もありまするし、いずれシヤウプ博士勧告案も出て参りましようし、それらを総合した上でもう一遍振返つて考えて見たいと思いますが、併し必要に應じて急轉直下するかも知れない。どちらとも私共は今ここではちよつと警察法改正云々ということに関しては、申上げることができない事情におりますのを御了承願いたいと思います。
  18. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 少くとも小自治体警察の廃止、つまり國家警察への振替えというものができないとしても、或る甲の自治体へ対して乙の自治体警察から應援に行き得る明文警察法中に設けなければならない、これは設けなければ非常な欠陷であります。この点平事件でもその周囲の湯本町の自治体警察、内郷という町の自治体警察、それなんかも町民の一部に随分責められて弁解できないで、非常に困つておるという事例がありますから、これは大事なことだと思います。そういうようなことは一例に過ぎませんが、まだまだ本質に触れないで警察法欠陷明文欠陷というものは沢山ありますから、それを補う意味においての改正には、努力されなければいけないという希望を申上げて置きます。  御質問ございませんか、樋貝國務大臣は二時までしかおられないのですが……。それでは有難うございました。  次に、法務総裁に対して朝鮮人の團体の解散命令についての質疑をいたしたいと思つたのでありますが、やはり閣議で出られないということでありますから、その代理に法務府の特別審査局長の吉河光貞君がお見えになつております。それから同じく法務府の刑政長官の佐藤藤佐氏、それから檢務局長の高橋一郎氏が見えております。実は閣議は午前の予定であつたので、昨日この委員会も、本日は午前に開く予定で御通知を申上げておつたのですが、閣議の都合で出られないというので午後に延ばしたのですが、閣議が午後に変更になつたということで、残念ながら見えられないのです。それではお三方のどなたか、過日團体等規正会によりまして、朝鮮連盟などの関係の四團体の解散がありました。それにつきまして一應御説明願いたいと思います。尚新聞に詳しく出ておりましたが、あれは皆拜見いたしておりますから、新聞に出ておることは要点をおつしやつて頂き、そうして新聞に出ていないことについて詳しくお話し願いたいと思います。
  19. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 実は今度の四團体の解散につきましては、新聞紙上の詳細に出ておりますので、私といたしましては自分の所管外でもありますが、法務府の民事局の所管であります財産接收の状況も併せまして、実施の状況を御説明申上げたいと思います。
  20. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 吉河さんにちよつと申上げますが、時間はどのくらいかかりますか。
  21. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 大体一時間くらいですが。
  22. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) それでは恐縮ですが、海上保安廳長官が三時から別の会議に御出席になるそうでありますから、その方を先にいたしますから、ちよつとお待ち願いたいと思います。それでは順序を変更いたしまして、海上保安廳関係を先にいたしたいと思います。  最近密入國、密貿易が甚だしく殖えておるということを聞いております。その取締状況、それから過般新聞に報道されました支那海において日本の漁船等が拿捕されたり、許された漁区内において漁業をしておりながら不正に拿捕されたのじやないかというような噂もあります。だからそういうことについて御説明願いたいと思います。尚この前も要望して置きました海上保安力の増強法がどれだけできたか、どういう計画であるか、それを御説明願いたいと思います。
  23. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 只今委員長からお示しのありました密航状況、拿捕船の状況並びに海上保安廳の強化対策という点につきまして御説明いたします。御便宜のために本日印刷物を作りまして差出しておりますが、これで御覽願いますように、海上保安廳ができました当初、昨年海上保安廳は先ず九州の関門海峽におきまして一齊臨檢、檢挙を始めたのでありますが、当時は非常に九州方面において檢挙されたものが多かつたのでありますが、その後海上保安廳の船舶の配置状況或いは行動状況等が逐次先方にも分つて参りまして、密航船がその特有の海上の機動力を発揮いたしまして、逐次密航船の内地上陸分野が非常に廣範になつてつたのであります。即ち日本方面は山陰から舞鶴、更に昨年末は能登半島から伏木方面に参りますし、本年になりましたならば、それが更に佐渡から新潟、山形縣方面にまで達する、かようになつて参りますし、又九州の天草から鹿兒島、更に九州を迂回して豊後水道、紀伊水道、名古屋方面、更に長駆いたしまして房総半島から仙台、塩釜方面にも及ぶといつたような関係でございます。これらの密航関係は殆んど九〇%は朝鮮関係でございます。極く僅かに台湾関係が含まれておるのであります。そこで今年になりましてから、幾らか密航状態が減つております。勿論密航船が非常に小型の船舶になりまして、非常に集團密航をして参ります関係上、どうしても天候に左右される点が多いのでございまして、春から夏にかけましては非常に多いのでございます。冬の荒天時期になりますと減つて参ります。本当は四月、五月は割合に少なかつたのでありますが、六月になりましてからぐつとそれが増加いたしまして、更に七月、八月、九月、台風の影響にも拘わらず、集團密航が増加する傾向がございます。即ち集團密航の点について記載しておりますように、朝鮮の治安問題からいたしまして、最近徴兵忌避或いは將來の治安に関する見通しより、日本に密航して参りますのが非常に増加しておる情報を受けておる次第であります。これに基きまして非常警戒をいたしておりますと、僅か二週間程度で二、三百人の檢挙があるといつたような状況に相成つておる次第であります。この外に相当の集團密航があるようでありますが、遺憾ながら海上保安廳の船舶がまだ十分整備しておりません点と、保安廳船舶の裝備が完全でないために、これを海上において逃走せしめておる事例が相当多きに上つておりますことは、甚だ残念であると申さなければならないと思います。尚又最近の特別の傾向といたしましては、密航密輸の犯人が、むしろ積極的に海上保安廳の船隊に対しまして抵抗するという傾向が多くなつてつております。即ち大砲裝備が密輸船等についてございまするので、この船は國警等と打合せまして、かねて手配中の船でございましたが、海上保安廳の警戒網を突破いたしまして、神戸の西灘に砂糖の揚陸をいたしておつた次第であります。この船舶は主砲といたしまして捕鯨砲の四十ミリ一門、予備砲といたしまして三十六ミリ一門、即ち合計二門の大砲を裝備いたしておりました。且つ裝填用の実彈二発を所有しておることが判明した次第でございます。これは沖繩縣の與那國島、これは台湾に一番近い所にある密航の中心地でございますが、ここを経由して参りましたものでございます。その後高知で逮捕いたしました密輸船の北見丸も、海上保安廳の船舶に対しまして積極的に抵抗いたしました。これに対しましては格鬪の後、これを逮捕いたしましたような次第でございます。更に捕鯨型の船團が北上中であるという情報に接しまして警戒をいたしておりましたが、この船團と覚しきものが五隻、捕鯨船型五隻、豊後水道の南方に現われたのであります。九月四日午後三時でございます。これに対しまして海上保安廳の港内艇の「きさらぎ」をして追跡をせしめました結果、足摺岬の東側におきまして、この船團に追付いたのでありますけれども、船團が或いは石を投げ、或いは漁網を流しまして、海上保安廳の船舶が接近することを妨害をいたしまして、遂に船團が北方に遁走をいたした次第であります。大砲を裝填しておりましたのが捕鯨砲でございまするし、あとから北上しました船團が捕鯨船型でございます。これらの集團密航につきましては、十分警戒をいたしておる次第でございます。更にこれは一つの情報といたしまして、新潟縣及び山形縣の境に、百トン型の機帆船に二百名乃至三百名乗つた朝鮮人が接岸上陸を企図したけれども、海上に逃げ去つたという情報も出ております。これらの点につきましては関係本部の船舶を総動員いたしまして、非常警戒捜索をいたしておりますような次第でございます。以上が密航密輸の状況でございまして、一年間における数字を申し上げますと、海上保安廳が昨年の五月創立いたしまして、本年四月の末日までの丁度一年間の検挙件数を申し上げますと、密航におきまして百四件、人員二千六十四名でございます。密輸は九十件人員四百八十五名、合計いたしまして、百九十四件、二千五百四十九名と相成つておる次第でございます。  次に、拿捕船の状況について御報告申し上げます。日本船舶の拿捕は昭和二十一年以來頻々として起つておりまするが、その八月末日までの統計はお手許に差出してありますところの表にございますように、二十一年において合計七隻、二十二年において十一隻、二十三年においてぐつと増加いたしまして四十五隻、二十四年が八月末日までにすでに三十九隻に及んでおります。その後九月に入りまして、すでに又数隻を出しております。もう二十三年の約倍くらいに本年は達しはせんかというような状況でございます。即ち八月末日までの総合計は百二隻に及んでおります。この船舶のうち未帰還船舶総数は四十四隻でございます。未帰還船員の数は二百七十名に及んでおります。死亡者は九名でございます。未帰還船員は更に調査未了のものがございますので、これより遥かに多きに及ぶものと想像されるのでございます。そこでこれらの捕獲されました船舶は、ソ連関係において三十五隻、中國関係に二十八隻、朝鮮関係に二十二隻の外、更にその後追加されましたものが、ソ連関係四隻、中國関係四隻、朝鮮関係九隻というふうに相成つておる次第でございます。そこでソ連関係で拿捕されましたものは、從來主として北海道の根室区のノサツプ岬と千島との境におきまして拿捕せられておる次第でありまするが、最近は樺太と稚内の間におきましても数隻の拿捕船を出しておるような次第でございます。そこでソ連関係の根室並びに千島との間の水道は非常に狹隘であります。その上に岩礁が沢山ございまして、その根室のノサツプ岬と貝殻島との中点にマツカーサー・ラインが設定してございますけれども、これは殆んど航行が実際上非常にデリケートで困難でございます。そこで現在実際上において大型船がこの水道を通過していないという状況でございまして、北海道の網走方面に参ります船は、ぐつと稚内を廻つて行くといつたような状況でございまして、この迂回航路からいたしまして、現在船腹において約十万トン、バンカーにおきまして数千万円の日本の余分の負担をいたしておりまするような次第であります。更にこの附近における漁業に從事しておりました漁船は年間二千隻に及び、漁獲物は二十億円に達しておつたということが言われておりまするが、この方面におきましては、殆んど日本船舶が現在影をひそめておるといつたような状況でございます。  次に、東支那海の状況について申し上げますと、支那関係は本年に入りましてから急激に増加をいたしまして、而も六月、七月、八月において最もその拿捕状況が頻繁になつてつたのであります。最もそのうち重大なる被害を受けましたのは第一〇五号明石丸の撃沈でございます。本船はマツカーサー・ライン内において漁労に從事しておりましたところ、全然軍艦旗を掲揚せざる軍艦と覚しき、而も艦名を抹消しておりまする一艦が近付きまして、そうしていきなり射撃をして本船を拿捕いたしました。そうして随行を命じておつたのでございますが、随行途中においてこの軍艦が漁船を撃沈をいたしました。筏によつて逃れんといたしました船員に対しまして機関銃の一齊射撃を加えるといつたような残酷なる攻撃を加えた次第であります。極く僅かの、四名の船員が救助せられました。この船員が帰國いたしまして、この被害状況が判明いたしたのでございます。中國から拿捕を免かれて帰りました船員或いは一旦拿捕されまして途中で命懸けで脱走いたしまして帰還しました船員並びに漁業会社からの陳情によりまする報告等を総合いたしまして判断いたしますと、これら拿捕されました船舶は最近若干の軽武装をして支那の軍事任務に服されておるものもある、或いは支那の將兵の軍需品輸送に從事しておるものもある、或いは支那軍のために漁撈に從事しているものもある、かような報告を受けている次第でございまして、未帰還船員の多数の家族を思いますと、一日も早くかような船員を安全に帰還せしめることが必要である。かように存じまして、海上保安廳ではこれらの船名、船員のリストを作りまして、過般外務省を通じまして関係方面に、船舶並びに船員の返還方につきまして正式の文書を提出いたしましたような次第でございます。尚朝鮮関係におきましては、主として済州島附近において拿捕されたものが多いのでございまして、これらの拿捕船はその原因といたしましては、マツカーサー・ラインを越えたか越えんかという点にかかつているわけでございます。この点につきましては一應日本側といたしましては、マツカーサー・ラインを正式に遵守する責任がございますので、船舶に対しましては航海日誌を完全につけること、或いは十分に天側をすることというような点につきまして、十分注意を喚起しているような次第でございます。ただマツカーサー・ラインを越えたが故に、これが直ちよ撃沈されるか、或いは拿捕されるかというような点につきましては、いろいろ國際上の判断があろうかと存じますが、日本側といたしましては一日も早くこれらの船舶並びに船員の返還保護につきまして万全を期したいと考えておりますような次第でございます。  海上保安隊の強化状況につきましては、本委員会におきましてもしばしば御激励を頂きまして、海上保安廳といたしましても大いに御趣旨を体しまして努力をいたしておつた次第でございます。御承知の通り海上保安廳は昨年の五月一日、木で作りました木船、旧海軍駆潛艇二十八隻を以て出発いたしました。この二十八隻の船は戰爭時代に海軍が大体港内及び港外、即ち港の附近が潜水艦が哨戒する意味におきまして作りました極く間に合せの船でございまして、約二時間ぐらい保てばいいというので作りました木造船でございます。それを終戰後におきまして二十八隻引継ぎました。すでに終戰四年に達して今日まで使つておるのでございますから、この船が如何に不完全でありまして、使用に困難を極めておるかということは御想像願えるだろうと思つております。この非常に老朽しまして船を以て、先般の新聞にもちよつと出ましたように、海上保安隊の船舶は、最近煙幕を張つてまで闘爭をいたしまする密航船や密漁船、或いは海賊船に体当りをしているというような、前線が行詰つて、せつぱ詰つた、こう思われるのでございます。そこで非常にこの船隊の不利を痛感いたしまして、その後しばしば関係方面並びに予算等におきまして折衝を重ねて参りました結果、現在までに五十三隻の警備船に持つことになつた次第でございまして、この中の三十五隻が木船でございますが、残りの十八船は鉄船でございます。これらは比較的速度も優秀でございまして、約十二ノツト乃至十三ノツトは出るのでありまして、木船の八ノツトと比較いたしますと、幾分海上保安廳の力も強化されたと考えられるのであります。更に今年度の予算におきまして、海上保安廳は六隻の新船と十隻の高速内河艇を新造することに相成りました。鉄船におきましては七百トン級二隻、四百五十トン級三隻、百八十トン級一隻でございます。これはいずれも十五ノツトの速力を有しておる次第であります。高速内河艇は十隻を新造いたしまして、これは十八ノツト程度は出るつもりでございます。更に予算が許せば本年度におきまして数隻の内河艇及び船舶を追加いたしたい、かように考えており、目下考究折衝をいたしておりますような次第でございます。來年度におきましても、この海上保安隊の装備強化は絶対に必要な点でございまして、海上におきましては、船舶が出合いましたときには、全く一対一の裸相撲と同じでございまして、こちらの速力が遅ければ絶対に相手に追付けませんし、装備が弱ければ、これは殆んど問題にならないといつた状況でございます。急に援助の依頼もできない海上におきましては、どうしても船舶自体の性能装備というものをよくいたしませんと、警戒任務は完遂できないのであります。勿論現場の職員には現在持つておるもので最大能率を発揮できるよう努力をいたしておりますが、來年におきましては、計画といたしましては新船を十六隻、高速内河艇を四十隻程度造りたい、かように考えておる次第でございます。いずれ又來年は予算において本委員会の御支援を頂きたいと思いするが、尚今後におきましても極力強力に努力いたしますと共に、更に超短波その他の新式無線装備を完備いたしまして、來年におきましては、海上治安に飛躍的な事態を招來いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  24. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 武器の点は……。
  25. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 海上保安隊法によりまして、海上保安隊は武器を携帶することはできると相成つております。海上におきまして船舶の速力が違いました際に、これは何らかの武器を持たなければ、相手の船を強制停船させることができないことは、これは皆樣もう御案内の通りでございます。それにも拘わりませず、海上保安隊は一挺の拳銃すらも持たないといつた状態でございまして、相手の船を止めますために、先程申しましたように体当りをする、或いは船内捜索をする場合に、「まき」や棍棒を持つて乘り込んで行くといつたような、前線は決死の覚悟を持つてつておりますような次第でございます。そこで法律上許されました武器につきましては、私共は成るべくこれを充実いたしまして、前線の法律上の責任を有しておりますところの職務が完全に果されますように懇請をいたしておる次第であります。
  26. 藤井新一

    藤井新一君 三つばかりお尋ねいたします。一つは拿捕された人に対して、ソ連或いは中國人或いは朝鮮人が人質料として要求するようなことはないでしようか。それに対し若しあるとすれば、一人に対して何万円の要求をしておつたか。マッカーサー・ラインは日本のどこからどこまでであるか、マツカーサー・ラインにおいては、アメリカの船が絶えず何ぼぐらいの船で航行して警戒しておるかということであります。
  27. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 罰金問題につきましては今まで余り聞いておりませんでしたが、極く最近ソ連から帰りました船員の報告によりますと、約二十万円の罰金を申付けておるというのを聞いております。そこで罰金問題が合理的に成立しますかどうかは、相当議論の余地があると思います。目下関係方面と打合せいたしまして、できるだけスムーズに船員が帰港できますように交渉中でございます。それからマツカーサー・ラインにつきましては、各緯度、経度に亘りまして、太平洋から千島、北海道間、樺太、北海道間、更に日本海を縦断いたしまして対馬の北端、それから東支那海を中断いたしまして台湾、台湾の北端から太平洋、かようなマッカーサー・ラインが設定されております。この中で一番マッカーサー・ラインの非常に複雜なものは、先程申上げました根室と千島間でございます。この点は昨年の日本の拿捕船問題を契機といたしまして紛争が起りました。これは私共関係方面を通じましてソ連側と交渉いたしました結果、一應暫定的には線が決まつたのでございますけれども、先程申しましたように非常に岸礁の多いところでございまして、このマッカーサー・ラインは非常にデリケートな問題であります。かように考えられます。それからマッカーサー・ライン内の航行船舶の保護状況でございますが、マツカーサー・ラインに出ております船舶の保護につきましては、一番マツカーサー・ラインの遠い太平洋の先端が横浜から取りまして千五百海里、それから北方の太平洋の一番遠いところは釧路から取りまして約九百海里、台湾方面は鹿児島から取りまして六百五十海里であると記憶しております。日本海は新潟から取りまして二百五十海里でございます。これらのマツカーサー・ラインの先端ぎりぎりのところまで出て漁獲物の確保に努力しております日本船舶の保護並びにラインを越えることについての監視並びに台風その他において、このライン内において遭難しました漁船の救難というような問題が起るのでございます。そこで海上保安廳の船舶の現在主力をなしておりますところの駆潜艇は、遺憾ながら速力八ノットで航続距離は八百海里に過ぎないのであります。そこでこの八百海里の船舶を以て行動いたしますと、どうしても往復並びに先方における哨戒任務というものを合せますと、せいぜい二百海里ぐらいが関の山であると考えるのであります。私共はマッカーサー・ラインの先端においてしばしば遭難いたしました漁船のSOSを聞きながら、海上保安廳の船舶が現場に行かれないというような実に残念な事態に逢着するのでございます。どういたしましても足の長い力のある船を持たざるを得ないのでありまして、この点は今度の新船が建造できますれば、この任務が達成せられると存ずる次第であります。尚又海上保安廳の船舶が第一線に出ますことにつきまして、諸般の尚残された研究問題が残つておりますので、現在は水産廳におきまして若干の船舶を傭船いたしまして、マッカーサー・ラインの漁船の監視任務に当つている次第であります。水産廳と海上保安廳と協力いたしまして、極力船舶の被害を最小限度に防ぐように努力中でございます。
  28. 藤井新一

    藤井新一君 もう一つ聞きますが、仄聞すれば、中國、朝鮮人は領海と公海の区別を混同して、國際法による三海里を十マイルまでの範囲を要求しているということですが、事実ですか。
  29. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 領海の拡張をしているかどうかということは、私つまびらかにいたしておりませんが、マッカーサー・ラインを越えたという理由で捕まえました船は、先程御説明いたしました百二隻に及んでいるのであります。そこでマッカーサー・ラインを越えたが故にこれを拿捕し、或いは撃沈し、或いは罰金を科することが合法的なりや否やということにつきましては、相当これは檢討を要する問題ではないかと考えます。
  30. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 二、三日前の新聞であつたかと思うのでありますが、朝鮮の密航者の取締ですけれども、これは海の上においては大体ずつと下の方、船底か、そういうところに隠れているので、海上においてはなかなかそれを見付けることが困難である。大体密航を見付けるのは陸上の國家警察なり自治体警察方面でそれを見付れているというようなことが書いてあつたように記憶するのですが、その点の事実はどうなつておりますか。
  31. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 先程申上げましたように、日本の海岸線一万海里を五十三隻の船で哨戒いたしているわけであります。勿論五十三隻の船が常に稼動いたしておりませんので、先程申しましたように非常に古い船を使つておりますので、稼動率は約五〇%でございます。そうしますと二十五隻乃至三十隻と考えなければなりません。この船が一万海里の海上を哨戒いたしておりますので、一隻の哨戒区域というものは莫大な廣さに上つているのであります。それで廣い海上におきまして、相手のせいぜい三十トン、五十トンといつたような密航船を探しますためには、殆んど装備不十分の現在の船舶では実に言語に絶する困難があるのであります。而も最近は殆んど日本の近海に近付いて参りますのは、すべて夜間を利用いたしております。夜間におきましてかような船舶の発見は、これ亦非常に困難を極めております。次に、対馬のマツカーサー・ラインは、殆んど対馬の下島の先端すれすれをマツカーサー・ラインが通つておりまして、このマツカーサー・ライン近くまで相手の船が近付いておりますことは、これは密航船なりや否やを疑う余地はないのであります。ここまで近付いておりまして、それから夜に入りましてから対馬を目指しまして接岸して來るという船舶につきましては、実にこれは警戒が困難でございまして、そこで遺憾ながら私共の逮捕状況は、これは尚大部分のものはまだ漏れている。陸上に接岸上陸しましてから、陸上の警察官においてこれを逮捕せられていると考えるのであります。まあ私共の推定では大体三割程度ではなかろうかと、かように考えている次第であります。
  32. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 警察法を制定するときに、朝鮮人の密航取締の責任主管廳はどちらにあるかということがいろいろ檢討されておさたわけでありますが、警察方面の水上警察というようなものは全部無くしてしまつて、海上保安廳の方に吸收さすというふうにした方がよいというような考え方もありましたし、それに関連して朝鮮人に対する密航取締の責任主管廳というものは海上保安廳にあつたように考えておりましたのですが、今はどんなふうに朝鮮人の密航取締の責任主管廳、それを統計したり、それの対策を講じたりするのはどちらが主としてやつておるのですか、ちよつと一言聞きたいと思います。
  33. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 現在海上におきまして逮捕しましたものの統計並びにその分析は海上保安廳がいたしております。陸上におきまして逮捕されましたものの関係は國家地方警察においてこれを処理しております。そこで海上保安廳の海上取締と、陸上の警備とはそれぞれ非常に関係はございまするし、而も密航、密輸はそれぞれその犯罪計画等が陸上において行われることが殆んど大部分でございますので、この間の情報、連絡その他は非常に緊密を要する次第であります。そこで國警とは常に情報、連絡の緊密性を非常に保持いたしまして、お互いに情報を流し合うと同時に、共同捜索を必要とする場合におきましては、共同捜査班を作りまして逮捕に当つておる。かような状況でございます。密航に関しましては最近外務省に一つの機関ができまして、そこにおいてこれを総合して整理をすると……。
  34. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 外務省……。
  35. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 外務省ということに相成つております。かような機関ができれば、或いは密航につきましては、その連絡調整をやるということに相成るかも知れませんが、苟くも現場の仕事は非常に緊密を要る次第でございますから、常に國警とは二者一体のつもりで今後におきましても取締りに当るつもりであります。
  36. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 現在水上警察、陸上警察國家警察は陸上だけの警察が主眼であるが、陸上の延長であるところの水上警察というものも、これ又そういうふうに密航朝鮮人なんかを細密に亘つて檢挙をしたり、調査をしたりする場合に必要なものであるように考えます。海上保安廳は主として海上の大きいところを狙つておるのであるが、それだけでは接岸、海岸に近いところでいろんな犯罪についてのことはできない。檢挙なり捜査はできない。そこで陸上警察を本体としているところの出先の水上警察というものを、やはり警察の一部として残して置くことが海上警察を掌つておる海上保安廳としても必要のように考えるが、現在においてもこの二つで行われておるようでありますが、警察法を制定する場合に、海上保安廳というものができるから水上警察というものを全部無くして、そして海上保安廳の責任において、すべて海上についてのものは行わせるような考え方もあつたように思うのですけれども、或いは水上警察というものがあるということが必要であるかどうか、これを海上保安廳の方の立場から一つ意見を聞きたいと思います。
  37. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 現在水上警察のありまする自治体警察との間におきましては、最近一つの実際上の仕事の協定を結びまして、大体この港の防波堤の内側でございます。防波堤の内側におきましては司法犯罪は主として自治体の水上警察でやつております。海上保安廳はそれ以外の犯罪につきましてこれをやつております。勿論現行犯につきましては海上保安廳も司法犯罪その他を取締つております。防波堤の外は一切海上保安廳が当る、かような協定を結んだ次第でございます。最近全國その協定を終りまして、両者緊密にやつておるという報告を受けておる次第でございます。尚又自治体の水上署のない全般の沿岸水域に亘ります海上警察、これは海上保安廳の高速内火艇を整備いたしますと、これは非常に効率を発揮するのであります。あとは國警との常時緊密な連絡によつて強化することができはせんかと思うので、私共は一日も早く高速内火艇の整備に目下最大の始力をいたしておるのであります。
  38. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 只今の御説明を聞きまして非常にいい方針だと思いました。両方の協定ができた。そしてお互いにその権限或いは義務を護りつつやるというように協定が進んだということは非常にいいことだと思います。それでこの海上保安廳の問題ですが、先程のお話では十六ノツトのものができると、やろうというお考えのようですが、その程度の速度で以て現在の海上の密航船その他の海賊というようなものを追いかけて、そして追い付くという程度の速度になつておりまするか、或いは外の委員からも質問があつたかとも思いますが。
  39. 大久保武雄

    説明員(大久保武雄君) 巡視船の方は遺憾ながら法律で速力が十六ノツトに制限されております。法律制限のぎりぎり結着まで速度を上げて行つております。どうも海上の追跡は人間の足と違いまして、こつちの速度を向うが知りまして、それよりも優秀な船を以て参りますれば如何ともいたし方がないのでありますが、最近におきましては密航船の状況を見てみますと、十五ノツトあれば密航船の追跡ができるだろうと、かように考えております。
  40. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 外に御質問ございませんか。
  41. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 警察の装備について聞いて見たいと思つたんですが、これは終つたんですか。
  42. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) いやまだ、これはあとに願います。それでは海上保安廳長官に対しまして外に御質問ございませんか。なければ、次に法務府の吉河特別審査局長。
  43. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 今度の朝鮮人関係四團体に対する解散措置は、本月の八日午前十時から開始されまして、この解散に伴う財産の保全接收もこれに続いて行なわれたのであります。御承知のように朝連、即ち在日本朝鮮人連盟は中央に中央総本部がありまして、その外全國の都道府縣にそれぞれ本部が四十八ございます。更にその下に支部が六百二十八ございまして、更にその下に分会が千二百二十六あるのであります。又民青、即ち在日本朝鮮民主青年同盟は朝連と同樣中央に中央総本部があり、各都道府縣に本部が置かれて、更に本部の下に支部、分会が置かれておるのでありますが、この本部の数は四十八ケ所、支部は四百五十一、分今は二百六の多きに及んでおるのであります。特別審査局におきましては、解散措置といたしまして、朝連、民青のそれぞれの中央総本部に対しましては総裁名義の解散指定通知書なるものを持参しております。又これと同時に解散せられました在日本大韓民國居留民國宮城縣本部、略称しまして民團宮城縣本部並びに大韓民國建國青年同盟塩釜本部、略称いたしまして建青塩釜本部に対しましても、それぞれ法務総裁名義の解散指定通知書を示達しておるのであります。更にこれら朝連並びに民青の全國の都道府縣本部に対しましては、特別審査局員が全國都道府縣主管課の職員を帶同いたしまして、この解散指定通知書の写しを以て示達しておるのであります。支部以下分会には示達しておりません。財産の保全並びに接收はこれらの示達に続いて行なわれたのでありまして、朝連並びに民青の東京都内の中央総本部、それから都本部、支部に対しましては、法務府民事局の職員が東京都主管課の職員と共にそれぞれ事務所に参りまして、この処分をいたしました。その他の朝連、民青、民團、建青に対しましては、全國都道府縣主管課の職員が出掛けまして財産の保全接收処分を行なつたのであります。今日これら財産の保全接收処分は大体終了を見たのでありますが、各地の状況を簡單に申上げることにいたします。  北海道から申上げますと、朝連におきましてはそれぞれ各支部長が不在で、その代理者にそれぞれ通知書の写しを示達したのでありますが、これの受取書は幹部会議又は役員会議の決定の上でなければ出すことができないと言つて、受取書を拒否したわけであります。財産の接收は八日の午後五時一應終了いたしました。更に民事局長から接收した建物の保全について具体的な指示がありましたので、六時から、これを実施することになつたのでありますが、反抗のためにこれを執行することができず、九日の午前六時を期して再びこれに著手しましたが、更に事態が紛糾するというような状態でありまして、多少処分に手間取つたのであります。尚九日中には道内の十六支部に対して全部財産の保全、接收を執行する予定になつておりました。これが予定通り今日は完了しております。青森の朝連、民青縣本部並びに支部の財産の接收は十日の十三時三十分に完了いたしました。重大なる治安上の動きはございませんでした。岩手縣は、財産接收に関しましては相当紛糾を極めたのであります。十日の十二時七分に至りまして、朝進本部、縣本部一、支部十七、及び民青本部一、支部十四に対しまして、財産の接收を完了いたしました。宮城縣は、同日八時三十分に関係官と連絡会議を開きまして、縣廳主管課の職員と特別審査局の職員とを以て四班に分れて朝連、民青両本部、民團縣本部、建青塩釜本部、朝連塩釜支部等に対して、それぞれ十一時から十三時四十分の間に通告を開始いたしました。建青塩釜本部は十三時三十分通告接收を終りました。朝連塩釜支部は十四時四十五分の通告接收を終りました。民團縣本部は一時は強硬に拒否的態度に出ましたが、十四時四十五分頃になりまして、大韓民國駐日代表部の仲介によりまして、極めて協力的な態度を示すようになり、十六時から一切完了いたしました。朝連、民青両本部は同一場所にあつたので、二班を以てこれに当り、特別審査局員が中心となりまして通告を始めたのでありますが、非常に議論が沸騰いたしまして、結論を得ることができず、四時間話合つた後、十五時三十分に縣から総務部長、地方課長などがこれに参加しまして、遂に実力によつて接收せざるを得ないような状態に立至りました。その旨通告いたしましたところが、相手方は飽くまで接收を拒絶しまして、交渉を打切つて相手方全員は事務所より退去いたしました。そこで接收を開始しまして一切終了いたしました。その後日本共産党又は民青東北地方協議会並支局に來まして、今回の解散に対する抗議をいたしました。併し支局長が只今申上げた通り現場にまだ残つておりましたので、そのまま退去しましたというような状態であります。
  44. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 主なところだけ、治安上大きな問題の起つたところだけをお願いたします。
  45. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) そういうような状況でありまして、秋田、山形、福島等もそれぞれ処置を終り、東京におきましては朝連、民青各中央総本部並びに都本部に対しましては、十時十五分に指定書を交付いたしましたところ、いずれもこれを拒絶しましたので、直ちに財産接收をいたそうといたしましたところ強硬にこれ亦拒絶されました。ついに警視廳から予備隊の出動を見るようになつたときに、当所におりました日本共産党員の金天海氏は自動車にていずれかに立去つたというような状況でございました。その間財産は多少外部に搬出されたような模樣でありますが、目下その搬出先につきましては十分に調査中であります。午後四時に至りまして退去命令を下しまして、二百数十名の警官を動員をしまして、これを包囲いたしまして四時四十分に全員が退去、財産接收に当つて、十日には全財産の完全な接收を終つて建物を閉鎖したというような状況になつております。その他神奈川、山梨、岐阜、長野、新潟等におきましても大体支障なく行われたのでありますが、この間に行われました犯罪につきましては、後に檢務局長から又申上げるはずになつております。富山におきましては多少檢挙が行われたのでありますが、これは朝連縣本部に対しましては、九日の午前六時三十分に財産の接收を開始いたしました。尚縣下の七支部、二十六分会に対しましても、十日十二時四十分に接收を終りました。まあかような状況で、同じような状態が繰返し全國各地に行われたりのでありますが、財産の接收をいたしましたのは主として事務所に対してでありまして、朝連、民青は地方本部は全部これを実行いたしました。支部は約二百数十ヶ所についてこれを行いました。それから分会は三百数十ヶ所に対して保全処分を行つたのであります。爾余の支部又は分会は非常に数が多いのでありますが、殆んど財産とういものがないような状況でありましたので、接收保全処分は行わずに済んだような状況であります。極く簡單に切りつめまして申上げたわけであります。
  46. 高橋一郎

    説明員(高橋一郎君) 私から極く簡單に今回の措置につきまして、発生いたしましたごたごたの中で刑事事件として取扱われております概要だけ申上げます。全國の各地方檢察廳からの報告は、昨日現在でありますが、全部を集計いたしまして、檢挙された者の総数が三百二十人になつております。これは取調の完了次第々々に釈放されておりますものですが、昨日現在ではそのうち百四名ということになつておりまして、実際に拘束されておつた者は二百名余りということになつております。罪名といたしましては公務執行妨害が絶対多数でありまして、二百九十四名。その外に暴行その他の罪名がございます。檢挙された者の数から申しまして注目すべきところは大阪管内の四十一名、金澤管内の三十八名、福岡管内の百十五名、熊本管内の四十六名等であります。ただこの点は、そのときの檢挙の方針なんかでも人数の多少を生ずるのでありますから、全國的に見て数の多いところが特に重大であつたというふうに、結論はまだ具体的内容を調べて見ませんとよく分らないのであります。特に先般下関の騒擾事件を起しました山口縣におきましては、十六名の檢挙を見ておるのでありますが、この中には警察官を襲撃しまして、これに負傷者を生ぜしめるような事案も含まれております。その他大多数の者はいわゆる接收手続に際しまして、これを妨害したという犯罪になつております。大体の報告でございます。
  47. 佐藤藤佐

    説明員(佐藤藤佐君) 只今特別審査局長並びに檢務局長から御報告申上げました程度以上に、私から特に申上げることはございませんが、ただこの際に一言申上げたいことは、今回の朝連以下の解散指定につきましては、急速に、而も極く秘密裡に断行いたしましたために、事前において各都道庁縣等に対する連絡が十分でなかつた恨みがあつたのでありますけれども、接收の指定並びに財産の接收等に当りまして、各都道府縣が非常に愼重に事を運んで下さいましたので、全國的に見まして先ず順調に事を運ぶことができましたので、この点各都道府縣の御協力に対しまして、非常に法務府といたしましては感謝いたしておるのであります。又他面朝連、民青等におきましても、解散の指定についてその理由の解明を迫られ、又財産の接收について一部拒んだというような極く局部的なごたごたはございましたけれども、先ず順調に事を運ぶことができました。この点は治安の面から見ましても大して支障なく進んだことについて私達は非常に満足しておるのであります。
  48. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 只今法務府三関係官の御説明がありました。それに対して御質疑をお願いいたします。
  49. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 只今法務当局から所管についての御発表がありましたように、今回の解散というものは非常に大きい仕事であつたのですが、この解散の経過、財産の接收その他を見ますというと、実にまあ何と言いますか、手際がよかつたということを私は感じておる一人であります。犯罪者も比較的少く、これだけの大きいところの團体、而も平素相当いろいろな活動を活発にしておりました團体が、現在のような状態の下にお終りを告げておるということは非常に手際よかつたというふうに感じておるわけでありますが、その接收した財産の中に不動産と動産に分けまして、不動産は殆んどないようなお話でもありましたが、不動産は價格に見積れば一体どれくらいの額なのか、現金とか、そんなものはどんなふうに処理されたのですか、という点を一つお聞きした見たいと思います。
  50. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 接收財産の問題は法務府の民事局の所管でありますが聞き及んでおる範囲内において申上げますと、実はまだここで接收した財産の集計が終つていないわけであります。動産並びに不動産はどの程度のものが接收されたか、金額を申上げることができないような状態にあります。ただ一般的に申上げますと、意外に少いという事実が報告されております。非常に動産は少ない、預金類が非常に少いという状態で、御了承願いたいと思います。
  51. 西郷吉之助

    ○西郷吉之助君 少いというお話は、例えば東京の本部の預金がどのくらいでありますか。
  52. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) まだ預金金額は、銀行に民事局長名を以て拂出しの差止めを命じた直後でありまして、まだ報告を聞いておりません。全般を通じて預金額は、数十万円くらいの預金は殆んどないという状態であります。
  53. 三木治朗

    ○三木治朗君 新聞で見ますと、青年同盟の方は、こういう結果になるのは余儀ないだろうと言つて承服したような記事を見たのですが、勿論滿足をしておるはずはありませんが、大体の観測として、強く、何と言うか、反抗心を持つておるのか、又は余儀なしとして締めておるのか、凡その観側がどの辺にあるか、ちよつとお聞きしたいと思います。
  54. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 朝連、民青におきましては、その幹部が只今刑政長官の申した通り、極力事態の暴発を仰制する措置を取つておられまして、現在もいろいろ若い構成員に対しまして、抑制するような措置を取つております。こういうような事態から暴発或いは暴力的事犯というものが、解散された後に極めて僅かしか行われていないとう状況になつておりますが、徹底的に最後まで争うということを私共の所に参りましても明言いたしておりまして、私共といたしましては、公正な言論を以て民主的にこれを主張し、争われんことを期待する、こういうふうに申しまして、秘密組織の建設とか、或いは解散された團体の再建というような点についは嚴重に取締るからという注意や警告を與えております。併し今後この問題は相当活発に言論の上において戰われるだろうと思います。
  55. 三木治朗

    ○三木治朗君 大体において素直に承諾するはずはないと思うのですが、恐らくこれは何らかの形で、やはり地下的な運動になるのじやないかということが想像できるのでありますが、それについては十分な御配慮を願いたいと思います。岡大体今までこの連盟が朝鮮人全体の指導に当り、いろいろ生活困窮者なんかの面倒も見て來たような面もあるので、この團体が解散されると、そういう連絡、指導、救済というような面が恐らくなくなると思うのです。そういう組織を失つた結果、生活の困難な者等が多くなるのじやないかということが憂慮されるのですが、そういう点に関して何か御配慮があるかどうか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  56. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 実は政府の存日朝鮮人に対する福利厚生の施設につきましては、私所管外ですから今申上げ兼ねるのでありますが、特別審査局におきましては、從來朝番、民青の構成員がいろいろな團体に参加しておりまして、例えば露店商組合その他純然たる営利経済團体に参加しておるのがありまして、これらの團体につきましては、今般朝連、民青が解散されますと、その構成員が、只今申上げました経済営利團体等の構成員が、四分の一以上解散團体の構成員に達したときは解散さるべき團体と認められるという規定になつておりますから、こういう規定の運用につきましては十分これを愼重に調査して、個々具体的な事件につきましては十分に調査して、在留鮮人が日本において生活に窮するような措置は講じたくないというふうに考えておりますが、他面におきましては、これらの團体を利用して再建的蠢動をやるという場合には断乎として取締り、今後朝連、民青の構成員が新らしい福利厚生團体とか、或いは純営利團体、経済團体等を建設する場合におきましては、一々特別審査局において具体的にその團体の内容、目的、性格等を考えて善処して行きたいと考えております。この点を申上げて置きたいと思います。
  57. 三木治朗

    ○三木治朗君 いわゆる四分の一のメンバーが揃えば解散されるということになるのですが、朝鮮人の連盟員という者は殆んど大部分が連盟に入つておるわけですから、朝鮮人が外の厚生事業とか、何かの組織を作れば大低それに該当するのじやないのですか。
  58. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 大体そういうことになると思います。大体八割くらいは朝連に参加しておるように考えております。
  59. 三木治朗

    ○三木治朗君 そうすると、朝鮮人だけは何も團体を作ることができないという結果になり、趣旨のよいものであつてもいけないということに承知してよいわけですか。
  60. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 実は規定は、團体等規正令の第五條の規定によりまして、そういう建前になまつておりますが、この規定を適用して、嚴格に運用の面においてこれをこの通り適用するわけではございません。そこに黙認、或いは更に問題になるものにつきましては法務総裁の指定という措置によつて除外というような、いろいろな措置を講じられると思います。それから朝連、民青の構成員が又主要な各團体の幹部になりますと、それもいけませんが、團体の性質によりまして、実害のないものと認めたときは、敢て五條の規定を適用しないという建前を取つております。併し一般的にこういうことを公表することはではないので、具体的な事案に即して解決して行きたいというふうに考えております。
  61. 吉川末次郎

    ○吉川末次郎君 先程財産のお話が出ましたが、やはり金に関してですが、非常に大きな團体であつたのでありますが、十分にそれは表面に現われていないかと思いますけれども、解散を命ぜられるについては、いろいろ事前の御調査が完全に行われておつたと思いますが、実際上大体右の團体は一年の経費、團体の経費というようなものはどれくらい使つてつたのか、どうかということについてのお答えを伺いたい、それから第二には、共産党との関係でありますが、今度の解散について、新聞記事等から承知いたしますところでは、先般行われました大阪、神戸等における騒擾事件、例えば兵庫縣廳に暴力を以て知事その他の公務員に対して脅迫的な行爲をしたこと、或いは大阪の警察との間にいろいろな格闘を起してというような、そういう騒擾事合もやはりそれらの團体が主体となつて行われたのであるということが書かれておるのでありますが、あの問題につきまして、この委員会で我々が調査いたしましたときにも、特に日本共産党の人がこの委員会へ列席しまして、委員長の許可を特に求めて、いろいろそれについての日本共産党の建前からの朝鮮人團体の弁護をせられたのであります。大体の私の記憶に残つておる印象からいたしますというと、あの大阪事件、神戸事件等においても、悪いのは日本の官憲当局であつて、朝鮮人は何も悪くないのだというような大体の建前からの弁解があつた。又それについてはアカハタの記者諸君なども特にこの会場へ來られていたのでありますが、日本共産党の党員で、それの資料があつたということは新聞にも出て、今も報告があつたのでありますが、もう少し突込んで具体的に、日本共産党と朝連、その他の今度解散された團体とが、具体的にどれくらい実際上の関係があつたかというようなことについての御説明を願いたいと思います。例えば日本共産党の一つの大きな財源に朝鮮人の團体がなつておるというようなことが世間で噂されておるのでありますが、日本共産党の選挙費であるとか、或いは党の費用というようなものについて金を出しておつたかどうか、党員はおるのでありますから、そういう朝鮮について御調査が大体推察でも結構でありますが、どのように睨まれていられるかというようなことについて、もう少し具体的に詳しく一つお話願いたいと思います。
  62. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 実は御質問でありますが、十分なお答えができないのを非常に残念に思うのであります。朝連の年間月々の経理状態につきまして、それからその所有の財産関係につきましても、十分な何らの資料も入手しておりません。目下調査中でありまして、纏まつて御報告するようなものは殆んどございません。今暫くお待ちを願いたいと思います。ただ噂に聞くところによりますと、少くとも收入は極めて巨額に達しておる、数千万円に達しておるというような風説が流布されていることも聞き及んでおります。それらの状態につきましては、まだ纏まつて報告するような具体的な資料はございません。それから第二の日本共産党と朝連と及び民青との関係につきましても、特別審査局といたしましては、完全に解散された團体につきましてと同樣、一通り調査をいたしておりますが、まだ十分に御報告申上げるだけの資料を持合せていないのであります。ただ朝連、民青の構成員の相当数の者が、やはり日本共産党に加入しているのではないかというふうには考えられておりますが、財政上の関連につきましては実は全く資料がございません。非常に申訳がございませんけれども、目下調査中で、何らの十分なお答えができないのをお詑びいたします。
  63. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) ちよつと速記を止めて。    午後三時二十七分速記中止    —————・—————    午後三時四十一分速記開始
  64. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 速記を始めて下さい。
  65. 三木治朗

    ○三木治朗君 いろいろの建前を、本部初め支部分会というものを接收したのでありますが、この接收した中に武器のようなものは接收されたでありましようか、どうでしようか、相当いろいろな騒擾事件に武器を使用する例が多分にあるのですが、その点如何でしようか。
  66. 吉河光貞

    説明員(吉河光貞君) 殆んど武器は接收されませんでした。朝連東京都本部事務所の中から拳銃のサツクが発見された、それから場所は今記憶しておりませんが、朝連の地方組織の米子だつたと思います。支部事務所から日本刀が一挺発見されました。これも目下当該支部の委員長に追及中であります。この外には武器らしいものは発見されておりません。
  67. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 私はこの間全くまあこれは知名の人ではない、一般の人ですが、それから話を聞いたのですが、朝鮮人の團体に解散を命ずるということは、これは吉田内閣の右翼内閣だからそういうことをするのだろう、殊に朝鮮人の團体だからと言つて、そういうふうにいじめるということは少しひどいではないかというような質問を受けたのです。そこで成る程我々はその團体の解散ということは、團体等規正令というものがあつて、そうしてその團体がその法令に反する存在だという意味において、民主的な國家においては團体そのものの性質がよくないということからして團体に対して解散を命じておるのであつて、朝鮮人というものを何と言うか、いじめておるということではないということを我々は常識的に考えておつたのですが、國民達は、或いはひよつとすると私に質問した人のような考え方を持つているのではないか、朝鮮人連盟というと朝鮮人全体が皆入つている。そうして朝鮮人たる者は團体を作つておつちやいけないのだというようなことで、いわゆる朝鮮人全体というものの團体に解散を命じたのである。いわゆる朝鮮人というものをいじめているのだというようなふうに、どうも誤解している國民もこれはあるのかも知れないということを実は感じたのです。そこで私は朝鮮人連盟というのは朝鮮人全体の入つている、いわゆるそういうふうな朝鮮人一つの團体ということではなくして、これは大部分の者は入つておるけれども、併しながらその朝鮮人連盟というものの性格が民主國家にふさわしくないような性格であるために、それに解散を命ぜられた、朝鮮人に対して、朝鮮人そのものを非常に虐待しているというものではないのだから、朝鮮人というものが本当に立派な團体を作つて行くならば、これは当然存在の理由があるのだからというようなことを申上げた。政府声明を余り読んでいないと思うのですけれども、政府声明だけではどうもそういうふうに思つておる者が相当あるかも知れないということを感じたのであつて、朝鮮人全体が作つておる朝鮮人の團体であるが故に解散を命じたというふうに解釈されないようなことを、その点をはつきりやはり説明して頂いて公表して置く必要があるだろうということを感じたわけです。その点を一應御参考のために申上げて置きます。  第二は、先程から問題になりました、この團体を解散する上において治安問題とか、そういうものを比較的うるさくして、解散そのものはうまく行つたように自分考えております。実体になつて行くと、動産は分つておりますが、現金のようなものはこれは余りない、或いは兇器のようなものがあるかないか分らんというようなふうになつて、團体の解散ということはまあやつておるが、その事前において團体の現金、その他の所在というものを突止める点においてはどうも十分でないように私は考えておるのであります。相当現金を持つておるという点も聞いておるし、それはどの部局がやつてつたのか分りませんが、その点が拔けておるのじやないかと思いますが、どういうものでありましようか。その点に今後力を入れて頂く必要があると考えております。
  68. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 外に御質問ありませんか……。三木委員から御質問になりましたこの朝連なんか、やはり朝鮮人のためにいろいろ生活の、家の世話をしたりしてやつてつたのは事実なんですから、解散をしたら一層日本の方でもこれまでやつてつた以上に生活保護をやつてやらなければならんということは非常に重要な政府の仕事だろうと思います。それで私調べて見たのですが、生活保護法によつての生活保護、これは朝鮮人でも與えておるのでしようが、これはまあ極力やつて頂かなければならない。生活の保護に値するような者は生活保護法によつて朝鮮人でもやれると思いますし、現に小野田市におきまして朝鮮人が千二百世帶おる。それは非常に困つて來ておるので、現在は八百世帶ぐらいは生活保護法によつて生活の保護を與えておるということです。これはいつまでも與えるわけに行きませんけれども、こういうふうになつて過渡期で困るときには、そういう方法で生活保護を與えて、そうして公正を期するというような方策を取つて貰うという意向を申上げて置きます。  それでは時間が経ちましたけれども、國家地方警察の方が見えておりますから、それにつきまして説明を聞きたいと思います。國家地方警察の方から長官が見えませんで、武藤刑事部長、樺山警備部長、二方が見えております。それで先程鈴木委員から御指摘のありました密入國につきまして、海上保安廳の方では、今の警備状態では網を張るどころか、網が張れないで、どんどん陸の方へ朝鮮人が入つて來るという現状なんで、それをどういうふうにして國家地方警察の方で押えておるか、又その状況がどうであるか、それを第一に聞きたいと思います。
  69. 樺山俊夫

    説明員(樺山俊夫君) 密入國の状況は、先程海上保安廳長官からも御説明がありましたが、日本海側、太平洋側におきまして、だんだん北上しておることはお話通りであります。海上におきまして逮捕しておりますのは、これも先程のお話で、昭和二十三年の四月から一年間に約二千人というお話でございました。陸上におきまして逮捕しております数は、昨年の一月から昨年一杯の一年間におきまして檢挙いたしました数が六千二百人、逃亡いたしました数が二千人、合計八千二百人という数になつております。本年に入りまして相当増加しておりまして、具体的な数字はまだ纏まつておりませんが、三割乃至四割の増加を見ておるようであります。從いまして密入國の取締りにつきましては、数の点から申しますと、全体の檢挙いたしました数の約六、七割以上を陸上において逮捕しておるという勘定になつております。そこで海上と陸上におきまする取締りの連絡、その他の問題でございますが、これも先程お話がありましたけれども、海上保安廳と常時緊密な連絡を取つて現在やつておりまするが、御承知の通りに大きな自治体警察におきましては水上警察を大体持つておりまして、而も船も持つておりまして、これを以ちまして海上の檢挙につきまして或る程度できるのでありますが、ただ中小の自治体になりますと、水上警察を持つておらず、尚且つ船も持つておらない。而もそういうところにこの密入國が入つて來るという公算が非常に大きいのであります。それに加えまして國警の管内にありまする町村におきましては、國警は船を持つてはいけないということになつておりますために、密入國船が海岸に着きまして、上陸して來たときに初めて手が出せるというような状態に現在なつているのであります。ただ時といたしまして、附近の一般の船を借上げまして使つておるという例は多少ありますけれども、とにかく陸上に上つて來てからでなければ、これを檢挙できないというのが現状であります。建前といたしましては、先程も海上保安廳の方からお話がありましたように、海上保安廳の船舶、人員その他の関係が十分整備されまして、その曉に我々の方とも十分密接な連絡を取つて行くということでありまするならば、相当効果が期待できると思うのでありますが、現状におきましては海上保安廳の船舶、人員その他の裝備等が不十分でありますために、その間隙を縫われまして陸上に上つて來るという率が多いのでございます。併しながら現在の状況におきましては、やはり海上保安廳と十分緊密な連絡をいたしまして、相互に共助をいたしまして、海上陸上の檢挙の網を完全にいたすということによりまして、この成績を上げて行くより外にないのじやないかという感じを持つております。
  70. 武藤文雄

    説明員(武藤文雄君) 密貿易の関係を申上げますが、警察で扱いました数字でありますが、本年の一月から七月まで七ケ月間に、件数にいたしまして三百三十二件であります。檢挙の人員が千二百五十八人、それから檢挙いたしました船舶が二百三十三隻、押收物資の金額が五億を超えております。結局海上保安廳の方面においては、海の上において捕まえておるわけでありますが、結局密貿易関係は陸上において相当、むしろ多くを檢挙しておるという結果になるわけであります。殊に密貿易関係は経済犯関係と非常に関係を持つております。そういつた意味において経済警察の一環として特に密貿易の方に力を入れておるわけであります。特に多い府縣といたしましては、兵庫、岡山、山口、福岡、佐賀、長崎、熊本、それから鹿兒島、こういつた地方が特に檢挙が多くなつております。どういう物資があるかと申しますと、特に目ぼしいものを挙げて見ますと、入つて來るものは、ゴム、皮革、砂糖、藥品類、そういつたものがございます。出るものとしては機械、文房具、その他雜貨類、こういつたものがあるわけであります。搜査技術としては、この関係は立証が困難であるために、搜査は困難を極めております。殊に非常に廣い地域に跨がつて、單に兵庫縣なら兵庫縣だけではなくして、それが各地と結び付いておるというような点、人的にもいろいろ繋がりがあつて多数の者が関係しておるというようなこと、いろいろの点から非常に複雜な犯罪になつておるために、その檢挙については特に苦労しておるというような次第でありまして、我々警察内としてはお互いに情報の交換、援助というようなことによつて、これはカバーし、同時に税関、海上保安廳とも連絡を取つて、この方面努力しておるという状況であります。
  71. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 今の密入國、密貿易関係について御質問ございませんか……。  それでは、八月十七日の福島縣の松川駅附近における列車顛覆事件の搜査状況、八月二十日の下関における朝鮮人の集團騒擾事件の概要を御報告願いたいと思います。
  72. 武藤文雄

    説明員(武藤文雄君) 福島の列車顛覆事件を御報告申上げます。八月十七日の午前三時十分であります。場所は東北本線の福島の直ぐ近くでありますが、松川駅と金谷川駅との間であります。丁度上野駅を起点として二百六十二キロという所であります。事故のあつた列車は青森発奧羽本線廻り上野行四百十二号、これは客車七両に郵便車、それに小荷物車が二両、これの連結になつております。この列車は福島を出ましたのが午前二時五十分、金谷川駅を定刻の三時六分に通過しております。現地は大体三時九分ということになつております。機関車は脱線箇所から七十メートルばかり引きずつて、そうして顛覆しております。その後ろの小荷物車二両、郵便車一両、客車二両が脱線して、機関車は完全に顛覆しております。その他は四十五度傾斜して止まつたのであります。死傷者は機関士が二名、助士が一名、これが機関車の顛覆した下敷きになつて即死しました。その他に幸いにもすぐ後ろが郵便車等でありましたために、乘客の方については比較的被害が少くて、八名が擦過傷、打撲傷程度の負傷をしているという状況であります。現場は丁度松同時と金谷川との境界でありまして、やや上り勾配、若干五百メートルの右カーブであるので、見通しが非常にきかない場所ということになつております。妨害の手段としては、レールとレールとの継目に鉄板を付けてありますが、それを左右両方四枚外し、それから犬釘を拔いておるという手口であります。これにつきまして、どういう搜査をしておりますかと申しますと、先ず犯行に使われたと思われる物件についてでありますが、これにつきましては、現場附近に犯行に使われたと思われるような大型のバール、スパナーについてその出所を追及しましたところが、その出所が明らかになりましたので、從つて現在この方面からの搜査を進めているわけであります。  次に、現在指紋の関係でありますが、これは非常にあいにくなことで、前後に雨が降つた、又附近が水田だつたというような関係から指紋を取ることができませんでした。尚そのバールが、保管しておつたところの倉庫の中から掌紋を発見しておりますが、これは併し現場には多数の人が出入りしておりますことでありますので、果して誰のものか、これは断定することは困難だろうと思います。その次には、現場に非常に明るい者、これについての搜査を進めているわけであります。次に、犯行現場の情勢から見て、顛覆脱線行爲の容易且つ的確に遂行できる場所を予め知つてつた者、そういう場所についての知識がある者ということが考えられますので、こういつた方面から現在捜査をしております。それから次にもう一つは、事件当夜当地を徘徊しておつた者があり、それについてのその方面からの捜査、かように各四つの方面から捜査を進めておるわけであります。併し何しろ現場が非常に不便なところでありましたために、事故の届出が相当遅れた、それから應急復旧に直ぐ多数の職員が行つた、或いは又その列車に乘つてつた乘客が多数おつたというような関係で、現場が非常に荒されてしまつたというようなことが、捜査に非常に大きな障害になつております。そういう関係から、現在依前として捜査をあらゆる角度から進めておるわけでありまして、いろいろの容疑の点は随分出ておりますが、これだというところまで、結論を持つまでには現在まだ至つておらない、引続き捜査中であります。列車妨害については御承知の通り最近非常に件数が多くて、又その手口等についてもいろいろのものがあるのであります。この方面については特に我々としては捜査に力を入れておるわけであります。この事件につきましても我々の方といたしましても、特にこの方面の知識を持つた者も現地に行つて貰いますし、又鑑識方面も現場に行つて督励をして捜査を続けておるという状況でございます。以上が概要でございます。
  73. 樺山俊夫

    説明員(樺山俊夫君) 下関の事件を簡單に申上げます。事件が起りましたのは八月の二十日の午前二時半からでございますが、その前に七月の三十一日に、宇部でやはり朝連の民團の対立のために傷害の沙汰がございました。その後八月十五日に朝鮮の独立記念祭が小野田で行われまして、その際やはり双方の衝突がありまして、下関からトラツクに乘りまして小野田に向つておりました民團側に対しまして、朝連の方から襲撃をいたしまして、双方とも負傷者を出したという事件が八月十五日に起つております。その後八月二十日までの間に、先程申しました小野田の関係の事件が多少不穏でございまして、多少ごたごたがあつたようでありますが、八月二十日の午前二時半になりまして、下関に在住しております朝連員約二百名が、民團の支部の建物並びにその附近にありまする民團員の住宅十九戸を襲いまして、次々に破壊した。尚被害の家屋より金品を奪掠いたしまして、市内の治安が一時的に全く擾乱されたのであります。NRPといたしましては、現地よりの應援の要請を午前の五時に受けまして、急遽下関に出動いたしましたが、下関の朝鮮人の居住者は非常に沢山ありまして、軽々に檢挙に着手することもどうかという状態でございましたが、警察官の態勢ができ上りましたので、午後になりまして檢挙に着手いたしました。その後数次の檢挙によりまして、九月五日現在において檢挙いたしました数は、百五十六名、そのうち六十三名を釈放いたしまして、七十七名を送致いたしております。尚未逮捕になつております者が二十数名ございます。これが引続き現地におきまして捜査を継続しておるわけであります。極めて概要でありますが、大体下関におきましては、昨年の大阪事件或いは又神戸事件の際に、学校問題をめぐりましてあれ程の問題にはならなかつたのでありますが、いろいろ問題がありまして、その後引続いて御承知の徳山、小野田その他におきまして、いろいろ民團、朝連双方におきまして対立がありまして、事ごとに問題を起しておつたのであります。下関に在住しておりまする朝鮮人の数は明確でありませんが、大体一万人内外の朝鮮人が居住いたしております。而もその居住しておりまする地域が、下関の北端の極めて不便な所に集團的に居住いたしております。この部落の治安問題というのは、前から下関市におきまする治安の非常に大きな部分を占めておつたのであります。從いまして今回の問題に対処いたしまするために、大体下関市の警察には三百幾らの署員がおりますが、NRPに対する應援に基きまして、一番沢山出動いたしましたときにおきましては、NRPから九百名、合計千二百名の警察官を下関に動員いたしまして、この檢挙を容易ならしめたのであります。尚檢挙いたしました者の中には、朝連の縣本部の委員長、民青の支部の総務部長でありますとか、朝連の下関の学校の校長、それから下関の支部の委員長というような幹部を檢挙しておるのであります。それから檢挙に際しまして押收いたしました物品の中で注目されますのは、日本刀が一振と竹槍が三十三本、鉄棒が二本、鉈が一本、棍棒八本、ハンマー三、庖丁七、かような品物を押收しております。
  74. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 御質問ございませんか。
  75. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 松川事件というのは、そうするとまだ犯人の見通しが付かないのでございますか。
  76. 武藤文雄

    説明員(武藤文雄君) 先程から申上げておるように、いろいろの角度から捜査を進めております。從つていろいろの角度から容疑者というものは浮んでおりますが、断定いる段階まで行つていないということを申上げて置きます。
  77. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 今度の刑事訴訟法の改正によつて、外部からいろいろと証拠を探して、この人は間違いないという段階になつて行つたときに初めて檢挙を始めるというような段取りに行くために、いろいろな外部から証拠を集めて確証を得るまでにやつて行くために、非常に遅れたのか、最近の事件は何にしても確かに犯罪があつたに違いない、勿論下山総裁のごときは他殺か自殺か、自殺の嫌疑もあるからですけれども、三鷹事件とか、今度の列車顛覆事件というのは犯人があるに決まつておるのだから、非常に簡單にその犯人が分つて檢挙されそうなように考えられるのですけれども、これが非常に愼重であるか、或いは捜査能力において足りないのか、どうも不思議に思うのですけれども、あの事件なんか、もう相当時間が経つておりますから、常識から考えても誰が犯人であるかぐらいのことは目星が付きそうに思うのですけれども、理由はどこにあるのですか、はかばかしく行かないのは……。
  78. 武藤文雄

    説明員(武藤文雄君) 非常にその進捗が悪いようにお考え下さるので恐縮でございますが、問題はお話通り訴訟の関係でございます。御承知の通り警察の持時間は四十八時間に限られておる。その間に白か黒かをはつきりしなければならないという時間的な制約、これが一番大きなものであります。それから御承知の通り被疑者については黙秘権があります。從つて本人の供述に基いてこれを云々する、乃至は本人の供述がありましても、それだけを以てはこれは起訴することはできません。從つて十分に証拠を集めるということが何よりも大事になつて來る。これは新らしい訴訟法における当然の行き方として、どうしても外部から証拠を集める、そうして動かないところになつて初めて檢挙するという段階に進まざるを得ないのであります。そのために捜査上非常に苦労をしておる点は御承知の通りでありますが、併し我々としては、この訴訟法を忠実に守るために、かような苦労を忍んでも十分に愼重に事に臨んで、そうして確信を持つた際に本人を檢挙するという態度で臨むことにいたしております。非常にはがゆくお思いになることは誠に恐縮でありますが、現行訴訟法に忠実であるためには、かようにするより外にいたし方ないと存じます。
  79. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 三鷹事件のごときは、先ず二人ばかり起訴をした。そこで弁護士が付いた。その弁護士がその犯人と言いますか、被疑者に対して自由に接見することができる。そうして二人だけで会つてはいろいろ情報を聞いて、弁護士がその情報を聞いては、むしろ外部にあつて犯罪を隠匿するような役割を、外部の犯人と言いますか、そのグループとやつている。いつも弁護士は中に立つて、そうして刑務所の中にいる被疑者と会つてはヒントを得て、そうして外部の者に又会つて、そうして話を合せる、口を合せるというようなことをしているために、非常に証拠を掴む場合に困難を來したというような話を聞いておつたのですが、そういうことがありましたかどうか、それが一つ。それから今度の福島県の列東顛覆事件においても、まだ起訴をされていないようでありますが、そういう外部の者が中に入つて、証拠湮滅的なような連絡を取つているという者はまだ現われないように思うのですが、そういう事実があるかどうか、この二点、三鷹事件の場合と今度の場合と……。
  80. 武藤文雄

    説明員(武藤文雄君) 三鷹事件の場合に最初二人檢挙がありました。これは檢察官において令状を判事に請求して、檢事が発したのであります。警察においてはその後は十分証拠を固めて、後になつて七名を警察において令状を請求して檢挙いたしました。そようなちよつと違つた方法が入つたために、さようなことがあつたようなわけでありますが、今回の事件におきましては、平事件に引続いて捜査官がくたびれておりましたが、主力を松川の方に持つて行つて事件の捜査に当つております。その間いろいろ問題が大きいだけに世上非常に関心を持たれて、相当その点では捜査上も苦心をいたしておりますが、特に積極的にどうこうというようなことは聞いておりません。
  81. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 只今お話の黙秘権ですね、これは大いに疑問に思うのだが、ああいう場合に、調ベるためにいろいろ聞く、本人に不利だからと言つて黙秘権を行使するということは、黙秘していることによつて一つの何というか、本人に不利益なことがあるなということが推察できるのであつて、そこは何とかうまく解釈できないのですか。何でもかんでも黙秘をする、それじや調べができないのであつて、それでどんなことでも黙つているということは、如何に新刑事訴訟法であつても、その精神じやないと思う。そこまで保護することはできないのですか。
  82. 武藤文雄

    説明員(武藤文雄君) 黙秘権の問題は、本人が自分に不利益なことは絶対に言わないという関係で、これは人権尊重上当然のことだと思います。証人の場合でも、自分に不利益なことは証言しなくてもいいということになつているくらいでありまして、本人が言わなければ、これは蓋し止むを得ない。ただ本人が頑強に黙秘しているという場合において、これは怪しいというような心証を捜査官において得ることはできると思いますが、それを以て直ちに証拠にすることは困難だと思います。問題は、いわば黙秘権というのは当然の権限である、ただ訴訟法上においては一々調べておいて、あなたは言わなくてもいいですぞと言つてから、さてどうですかと言つて、物を聞かなければならないというところに、調べ技術としては非常にそぐわないものが出て來ている。甚だ笑い話みたいになつて恐縮でありますが、あなたは言わなくてもいいですが、さてどうですかと聞いた場合に、黙つていた。最後になつて、喋つちやいけないかと思つてつていましたというような、実は笑い話もあるのであります。非常に調べの途中において、言わなくてもいいですぞということを一々断わらなければならない最いうところに、非常にそぐわない点がある。我々の申すのは、黙秘権はこれは止むを得ないかも知れませんが、捜査のときに、あなたは言わなくてもいいでずぞと一々断わる必要が果してあるかどうか、これが捜査上妙なところで心理的に大きな影響をしているということを我々は問題にしているわけであります。
  83. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 最後にちよつと聞いて聞きますが、先般來の行政整理の強行、從つて官吏を辞められたものは労働組合に入つちやいかんとか、そういうようなこと、それから今度の朝鮮人團体の解散、そういうようなことで、各地でいろいろ又内訌が起きている。で治安上以前よりも不安な状態が起りつつあるように國家地方警察の方では認められているかどうか、その点如何でしようか。
  84. 武藤文雄

    説明員(武藤文雄君) 実は行政整理等に伴つて相当治安上大きな影響があるのではないかといえ点は私共相当心配した点でありますが、國鉄の場合も地方において、例えば馘首された者が毆り込みをしたとか、器物を毀棄したとか、そういつたような事案は相当各地にございました。又逓信関係の場合においても若干そういつた暴行、或いは業務妨害的なものが出まして、國鉄の場合程ではありませんでしたが、相当件数はございました。併し大体大観いたしますと、かように地方的に散発的にそういう事件が起つたものが大部分でありまして、非常にそれが内燃して大きくなつたというものは、さほど現われて参りませんでした。件数といたしましては、相当そういつた業務妨害、暴行、傷害、脅迫の件数は上りましたが、全体として散発的な地方的なものがその大部分であつたというところで、治安全体に大した影響をするものというものは出て來なかつたのであります。そういつた情勢で現在まで來ております。今回の朝連の解散の問題でも、先程檢務局長もお話になりましたが、大体現在まで三百五十六名檢挙しておりますが、うち百十九名釈放しております。從つて身柄を送りましたのが現在百四十二名、書類で送りましたのが四十四名、五十一名が取調中という現在の状況で、割合に平穏に済んで参りました。一應行政整理というものは片附いたような形になつておりますが、今後或いは失業問題或いは税金の問題、供出の問題しいろいろの問題が引続き予想されるわけであります。殊に相当不況になつて企業整理等の段階になりますれば、相当深刻な問題が起ることは予想されると思います。その情勢如何によつて、又我々の判断も変えて行かなければならないと思いますが、まあ私個人の感じから申上げますれば、七、八月、私共が非常の関心を持つておりました時期は、先ず今申上げたように非常に大きな影響はなくて過ぎておりますが、今後と雖も我々重大な関心を持つておりますが、併し非常に全國的に治安が乱れるというようなところまでは行かないで済むのではなかろうか、これは私個人の氣持という程度でございますが、これだけ申上げます。
  85. 岡本愛祐

    委員長岡本愛祐君) 外に御質問ございませんか……。それでは今日はこの程度で散会いたします。    午後四時二十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     岡本 愛祐君    理事            吉川末次郎君            岡田喜久治君    委員            三木 治朗君            藤井 新一君            柏木 庫治君            西郷吉之助君            島村 軍次君            鈴木 直人君            小川 久義君   國務大臣    國 務 大 臣 樋貝 詮三君   説明員    國家地方警察本    部部長    (警備部長)  樺山 俊夫君    國家地方警察本    部部長    (刑事部長)  武藤 文雄君    法務府事務官    (檢務局長)  高橋 一郎君    法務府事務官    (特別審査局    長)      吉河 光貞君    刑 政 長 官 佐藤 藤佐君    運輸事務官    (海上保安廳長    官)      大久保武雄君