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島村軍次君 我々第一班の
視察は、
岡本委員長と二人でありまして、六月二十一日より二十七日までの七日間で、
青森及び
岩手の両
縣下の
視察を行な
つたのであります。
視察箇所は
縣廳、
市役所等を合して九ヶ所でありまして、
岩手縣においては紫波郡の徳田村、稗貫郡の石鳥谷町及び同郡の花巻町であります。
青森縣においては
東津輕郡の野内村、原別村、横内村でありまして、今回は主として問題にな
つておりまする
地方財政、
税制の改革を
中心としたものでありますが、特に
シヤウプ博士の來國を機といたしまして、
地方行政委員会として、最前線の
市町村の
状況を成るべく詳細に調べる必要を認め、特に
農村地帶における
各種の
資料を得たいという考えを持
つたのでありますが、以下その
大要を説明申上げたいと思います。尚その
外自治体警察の
状況、
リコール制等の問題についても併せて行な
つたのであります。
地方財政の
窮迫情勢に鑑みまして、特に
青森縣は長い
間貧弱縣として知られてお
つたところでありますが、二十三
年度の
決算を調べて見ますると、実に三千五百八十万円の
歳入欠陷を暴露して、
繰上充用の止むなきに至
つております。又各
村ごとの
情勢も殆んど同樣であ
つて、例えば
稻垣村においては三十二万円、相内村では二十一万円、七和村では三十一万円
繰上充用によ
つて辛うじて
決算をした。それからこれらは
一つの例に過ぎないのでありますが、非常に産物も少し、縣民の
情勢が
終戰後更に困窮の度を重ねまして、全
縣下に
亘つてこの
情勢は全く大小の差こそあれ、殆んど同一だと認めることができるのであります。その主たる
理由は、
國会で問題になりました六・三制の
建築問題が癌にな
つておることは爭われない事実でありまして、ここに私がその詳細を申上げることの必要はないのでありますが、要するに
行政の問題は、これを取扱う人の
感じの問題で、又その
現実というものの深刻さというものを本当に把握することでなければならないと思いますが、この現状を以ていたしますれば、殆んど破産の状態に近いと認めざるを得ない。然るに
歳出面においては一昨日も申上げましたように、
從來の
地方財政委員会で取上げられてお調べにな
つた以上に、例えば
通信運搬費の増が非常に多いとか、或いは又
地方職員の日直、宿直の
経費が莫大にあるとか、或いは
超過勤務に対する
増嵩というような問題は、
岩手縣の例を以ていたしましても
予定外に一億数千万円を要する。又国の
負担すべき
人件費等が
國家財政の
窮迫に
伴つて特に節約を強要され、逆に
地方負担にな
つておる。これは
ひとり負担区分の問題以外に非常に深刻さが
地方に移
つておるということは、誠にこれは見逃がすことのできない問題い思うのであります。尚両縣の特徴といたしましては、
寒冷地手当の問題がやはり
人件費の
一つの癌にな
つておるのでありまして、誠に両縣に働いておる
府縣並びに市町村の
職員がこれらの
問題処理のために非常な苦心をし、且つ先行きに何らの光明なくして
地方行政を扱
つておるということに対しては、これは恐らく
自治廳でも大体、御存じだろうと思うのでありますが、私は特に
大藏省の方に御出席を求めたのでありますが、不幸にして得られませんから、この
関係は更に適当な
機会において、
大藏省当局のこの深刻さに対する
感じについて一般的に、ただ抽象的にこれを考えるということでなくして、みずから進んで
地方の
財政を調べるというものは、
光圀公のごとく或いは又北條時頼のごとく行脚して調べて後、初めてこの國の
國家財政、
地方財政を通じて
將來日本の再建が行われるものと思うのであります。このことは私は結論を申上げたいと思いますが、冒頭においても、このことは特に
中央行政担当の方面においても、更に一層認識を改められんことを希望いたしたいのであります。尚
府縣財政が一般的であるようでありますが、
災害復旧費のために殆んどそれに追われておる。これを
岩手縣の例を以ていたしますれば、二十四
年度の
縣予算総額五十二億円のうち三十億円が
災害復旧費だ。而もその
財源というものは全く
見通しが付かない。
金融措置も
見通しが付かない。
從來のような型に嵌
つた泥繩式のようなことでなくして、もつと抜本的な対策が立てられなければ、
災害復旧そのものも去ることながら、縣の
財源が全く行き詰
つてしまう、孜々営々として働いておる
農村地帶の姿を見ますときに、涙なくしては迎えられないというような
感じを深くいたしたのであります。
單作地帶の
農村における
財政窮乏が、
地方財政法が
改正にな
つても殆んど燒石に水の感があるというようなことを考え合せますときに、我々は
地方財政委員会といたしましても、今後
相当のこれらに関する深き決意を要することと思うのであります。その課税の実態について一二の例を挙げて見ますると、西津軽郡の
稻垣村では、
地租家屋税附加税が百分の六百、標準の六倍を取
つておる。
村民税は一戸当り九百円で二倍を取
つておる。又同じく某村では百分の八百、
村民税は千六百二十三円という八倍或いは三倍半というような有樣でありまして、一面においては
供出に対して非常な
負担を受け、而して
國税の
脅威を受け、又
町村民税、
府縣民税の、かくのごとき
脅威を
農村で受けているということは、重ねて申上げまするが、この際
相当の
打開策を講ずることを重ねて申上げる次第であります。
尚、
自治体警察の
予算とその
財源関係を調べて見ますると、
青森縣においては、二十四
年度警察費が一億五百万円に対して、その
特定財源である
入場税の
附加税の
收入見込が一億二千九百万円でありまして、余裕があるように見えるのであります。併いこれは主として市部の
收入であ
つて、
町村では殆んど全部の
町村が
配付税に依存しておる。而もこの
入場税については、先般
地方税法の
改正によ
つて市町村の
收入の制限をいたしまして、もつと
市町村に配付するの
方法も講ぜられたのでありまするので、この点は適当であると思うのでありまするが、尚
自治体警察の設置のため、
町村財政を強化するの必要があると痛感されるのであります。
六・三制の問題について
現地の
調査の
一般論は申上げましたが、
現地の
調査で痛感したことの一、二を申上げますと、
青森縣においては、三千三百学級の一万二千九百九十三人の生徒が正規の
教室がない。仮
教室で不完全な授業を受けている。而もその仮
教室の中には
共同作業場や、物置や廊下や、屋外の
青空教育というようなものがある。尚或る村におきましては、何故
教室の
建築をやらないかということは、これはまあ
財源関係がありますが、実込んで見て見るというと、殆んど倒れかか
つておる。今年の冬が來れば、もはや倒れるかどうか分らん。
地方財政委員会まで行
つて相談すると、倒れてから相談に
來い、こういうようなことで、実に噴飯に値するような話題も承わ
つたのであります。こういうような問題も、これは一体
行政の任に当られる人がどう考えておるのか、誠に寒心に堪えなてところであると思うのであります。数字的に一、二の例をと
つて見ますると、
青森縣の
町村では、二十四
年度においては四億三千万円で、
岩手縣の
町村では一億六千万円の
新制中学建築費を計上したのであります、これが実行不可能にな
つて、
村民に対する
寄附金以外には途がない。
只今例を申上げましたような問題については、一層この
措置について積極的な必要があることを認めたのであります。
遊興飲食税の
收入見積りの過大については、一昨日も申上げました通りでありますが、
政府の
見積高は
総額百二十四億円を推計しておる。
地方財政計画の
基礎として、この数字を
地方まで示しておられるようでありまするが、事実は全くこれに反しておる。即ち
岩手縣では
割当を丁度
國税と同じように七千七百万円の
割当がある。然るに実際は五千五百万円の
收入しかないのに、すでに現在において二千数百万円の赤字を
予定しなければならん。かような点をひとり両縣のみでなくして、私は他の
府縣からも
相当承わ
つたのでありますが、この際これに対する
措置を何らか
政府において講せられることが必要であると思うのであります。
それからその次に特に申上げたいと存じますることは、例の國の
負担と
地方との
負担区分の問題でありまして、実際に調べて見ますというと、我々は尚一層各費目、
各種別についてその弊害がますます顯著にな
つて、大波のごとく押寄せておるという
感じを深くいたすのであります。例えばその一例といたしまして、
盛岡市の
人口十万人に対して
戸籍事務所が凡そ三百万円を要しておる。
町村でも二十万円から三十万円程度を要しておるのでありますが、ところがこの
戸籍事務の
事務費については、
財政法の示すところによ
つて國庫負担にな
つておるのであるが、法務府の
予算要求に対して
大藏省が
査定をして削除されたのだからしようがない。こういうことを言
つておる。若しこれが本当であるとするならば、これは実に大きな問題でありまして、又
戸籍事務のような隱れた
事務に対しての將來の
措置をどうするかということも大きな問題として残るのではなかろうかと思うのであります。それから
統制強化の費用は、
農林省関係にいわゆる
登録制度が漸次
公團制度から変
つて行われて來る。それが
矢継早やに出ましたのでありますが、現在
町村の方で扱
つておるのは十種目も上
つておる。その
事務に対しては非常な煩瑣であ
つて、而も各
部落まで行かなければならん。
部落は
町内会がなくな
つたために沢山の
経費を要しておる。そういうようなために、大体
盛岡市の例にと
つて見ましても五十万円を要しておる。
食糧供出に対しても五十万円を要しておる。然るに初めは業者併せて約十数万円に過ぎない。國はこれに対しては十分なる
措置を講じておるのだというふうに考えておられると思うのでありますが、これに対しても將來特に再調を要する必要があると思うのであります。要するに
税制改正をいたしまして、國と
地方との
負担区分についてはもつと深刻に調べますというと、非常に
町村及び
府縣の
財政を脅やかしておる事実は誠に顯著なものがあるのでありまして、特に
配付税の問題が
國会で論議になりましたが、更に
配分方法について
檢討を加えまして、両縣のごとき
特殊事情にある、而も非常に
廣大なる面積を持
つておるところに対しては、各別にもつと
方法の
檢討を加えて、
貧弱町村に対しても重さを増して
配分するというような
措置を、現在よりも更に一層強化する必要があると存じたのであります。
以上
大要でありますが、
視察の結果と
感想を述べまして本
委員会に御
報告を申上げ、更に詳細なる点につきましては、
資料により、或いは又御質問に應じてお答えをいたしたいと存じます。