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政府委員(久下勝次君) 厚生省の立場から、
只今の
質問に対しましてお答えを申上げます。
先ず第一は、
從來國立病院の平均の赤字三割であるが、それにも拘わらず今回の予算によると二割五分の繰入でやることに
なつておるが、この点はどうかという
お尋ねだと思います。お話の通り、大体
昭和二十三年度年間を通じましての
実績は、六七・八%ぐらいまでの
收入に相成
つておる実情でございます。併しながら昨年度の
実績は、年間当初においては
收入が比較的少くて、年度末に至りまして逐次に上昇を見て、年間平均が六七・八%という数字に相成るのでございます。言い換えますると、年度末におきましては、最近の決算はまだ正確に出ておりませんのでありますが、大体私共の確実と思
つておりまする数字は、七〇%を超えておる数字に相成
つておるのであります。同時に、國立病院で扱
つておりまする入院患者の
相当の部分を占めております未
復員者給與法、或いは特別未帰還者給與法の適用を受けておりまする患者につきましては、
昭和二十三年度中は両法によりまして入院患者の賄費の支給を受けておらなか
つたのであります。
從つて病院といたしましては、その分につきまして、入院患者に対して生活保護法の適用を受けて貰うようにし、それのできない場合には、病院におきまして減免の取扱いをいたしてお
つたのであります。それが今年度の四月一日から、賄費につきましても給與法の全面的適用があることに相成りました。それらの点から、病院の改入
状況は、本年においては自然的に好転をするものと
考えておるのであります。尚
從來の惰性も多少ございまして、当然
收入を上げ得る患者につきまして、職員がその面に十分なる熱意を示さなかつた
関係等も、病院によりましてはないとは申されませんのであります。それらの点を彼此勘案をいたしますると、大体私共といたしましては、最近の
実績からと今申上げましたような
事情を推測いたしまして、予算に決められました二五%の一般会計からの繰入を以ちまして、年間國立病院の経営は
從來と実体的には殆んど変りなしになし得るものと
考えておる次第であります。
第二の
お尋ねの、経営が営利化しないか、医療内容の低下を來さないかというお話でございましたが、
只今申上げたような
事情でございまするので、私共としては
從來の國立病院の実体には何ら変更のない経営を続けて行けるものと
考えておるのであります。元來私共といたしましては、國立病院におきましては、医療上支出いたしました必要な
経費の限度におきまして患者から費用を頂くことにいたしておるのであります。若し患者の自費を以て賄えない人につきましては、生活保護法なり、或いは社会保險制度による医療費の受入をいたしておるのでありまして、從いまして実際問題として、本人は自費として拂えないし、又他の制度の恩惠も受けられないという人が事実上ございます。そういう方々につきましては、当然その分だけ病院としては赤字に相成るのであります。さような
考え方で今後とも
運営をして参るつもりでございまするので、その意味から申しますれば、病院の営利化ということはあり得ないと
考えておるのでございます。一般会計からの繰入がありますということも、そうした
事情から参るものであり、又國立病院なるが故に、医療内容の向上その他のために支出いたします
経費、他の病院では
考えられないようなことも、予算の許す限り私共としては今後ともいたして参りたいと思
つておるのであります。それらを含めました意味において、二割五分の繰入を期待いたしておるのであります。
從つて医療内容につきましても、御
指摘になりました、医藥品を制限いたしますとか、或いは
無料患者を敬遠するとかいうようなことは、私共としては全然
考えておらないのでありまして、
從來通り予算の許す限り適正な医療を行うことを根本的な使命として参りたいと思
つておるのであります。
第三に、
無料患者の比率が特別会計になると変化しないか、又変化するような経営方針をとらないかというお話でございまするが、この点は、私共は
昭和二十四年度の予算を折衝いたしますにつきましても、終始一貫
昭和二十三年度の
実績を基礎として、基礎的な比率につきましては何ら変更を加えずに予算上の処理をして頂いておるのであります。從いまして、
只今の二十四年度の予算の建前から申しますると、
昭和年二十三年度の
実績を、即ち
從來の
実績を、
無料患者の比率等におきましても変更する意思は全然ございません。
第四に、有料病院が黒字を上げた場合に厚生省が取上げてしまうということは適当でないというお話でございましたが、國立病院が、御
承知の通りに、旧陸海軍病院から変
つて参りましたものでありまして、中には病院の立地
條件の非常に惡いものもありまするし、或いは又
設備の面におきまして、甚だ不良と申してもよろしいくらいのものがあるのでございます。さような意味合から、個々の病院を一つ一つ別物として
考えますることは、病院全体の
運営上適当でございません。非常に立地
條件等、病院
関係者の同じ努力によりましても、他の病院は非常な成績が自然的に挙
つて参る
條件を備えておる。他の病院におきましては同じ努力をいたしましてもその成果は十分挙らないということは、國立病院の実情から今日止むを得ないものと思
つておるのであります。併しながら、それぞれの病院はそれなりに又その地方の國民全般のためにお役に立
つておるものと私共は信じておるのでございます。そういう意味合におきまして、私共としては、一應やはりこれは特別会計になりましても、厚生省におきまして全体をプールいたしまして、そうして成績の好い病院は、
條件の好い病院と
條件の惡い病院が若干助け合うというような建前は取らざるを得ないかとも思
つておるのでございます。併しながらただ單にそれだけでございますると、折角努力をいたしました病院は、お話しの通りに成績を挙げない結果になる所がございますので、
只今の腹案といたしましては、各病院ごとに
從來の
実績を基礎といたしまして、その立地
條件その他あらゆる
條件を深く考慮いたしまして、病院ごとに大体同じような努力を以て挙げ得る一つの目安というものは、決めたいと思
つておるのであります。その目安を超えて成績が挙りました、それ以上に挙げました病院につきましては、その挙げた分につきましての何割かを病院に還えして、その病院の
設備の改善等に使われるようにいたしたいと思いまして、そういうことによりまして努力をし、成績を挙げました病院が、それだけの、全部でなくても或る
程度の報いのあるような措置を採りたいと思
つておるのであります。
第六の積立金についてのお話でございますが、私共といたしましては
法案にも
規定してありますように、一應一般会計から繰込まれることといたしまして、病院の立場から申せば、繰込まれ分もやはり一種の
收入と
考えまして、病院その他の
收入と一括いたしまして決算上黒字が出ました場合には、その一部を是非とも積立金として残して行くように財務当局とも折衝をいたすつもりでおるのでございます。そうすることによりまして、繰入を受けながらも或る
程度の積立をしていろいろ社会
情勢の変転に應ずる、病院の
運営に支障のないように計りたいと念願をいたしておるのであります。
最後に特別会計の利点を上げておるが、そんなことは特別会計にならなくてもできることであり、厚生省の監督が不十分な結果ではないかというお話でございましたが、確かに御
指摘のような点は私共否定をいたさないのであります。厚生省といたしましては、数多い病院のことでもございますが、確かにそのために監督上の不徹底な面がないとは申しませんので、今後とも國立病院本來の使命を速かに達成しますように、これは特別会計になると否やとに拘わらず努力いたしたいと思
つておるのであります。併しながら特別会計になりまして能率が上るとかというようなことを申しておりまするのは、特別会計制度そのものの当然の結果としまして、一般会計の場合でも
考えられないような努力が、そういう面においてなされるものと期待をするのでございます。一例を上げて申しますると、これは実際あつたことでございまするが、昨年度末になりまして、某病院が
相当多額の赤字を生じまして、何とか補填をして貰いたいということを私共の方に申して参つた家例がありますが、よく調べて見ますと、この病院の一部の担当者が徒らに医藥品等を購入いたしまして、実際目先には必要ないものを買込んで積込んであるというような実情であ
つたのであります。特別会計になりますと、さようなことをいたしますれば、これは直ちに他の病院の
運営に影響して参りますので、お互いの病院がそうした無駄なものを買込まないように、買込んだものにしても無駄のないように使用して行くということが、直接他の病院の経営に響いて参ります
関係上、制度的に能率的な
運営が期待できるという
考えであるのであります。その意味におきまして特別会計制度を実施する上に利点として上げておりまする次第であります。以上お答えいたします。