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川上嘉君
九州班は波多野、伊藤両
委員と私の三名でありましたが、視察の
経過を
簡單に御
報告いたします。二月二十五日から約二週間
福岡財務局管内、
熊本財務局管内を視察いたしましたが、
九州地区の特殊な
事情とか、又各
税務署のそれぞれの特別な
事情について詳細に調査するとい
つたような方法ではなく、
租税制度の
全般に亙りまして、限られた短期間内で、一ケ所でも多くの
税務署を訪ねたり、又どんな小さな会合にも出席し、一人でも多くの
納税者に接しまして、廣く
資料を集めるということに努力いたしたのでありまするが、
予定通りの効果を
收めることのできなか
つたことは誠に遺憾であります。
公聽会は
福岡、
鹿兒島で行い、尚
税務署は
福岡、
熊本の両
財務局を初めといたしまして、門司、小倉、八幡、
福岡、博多、久留米、大牟田、鳥栖、佐賀、
熊本、八代、
鹿兒島、加治木、伊集院、宮崎、都城の各
税務署を訪ねました。
公聽会には必ず
税務署長とか、又各
税務署の課長とか、或いは各係長に出席して
貰つたのであります。先ず
九州全般から見まして、
確定決定の通知を発送したばかりのところでありまして、異議を申立てる者が役所に殺到しており、而も
年度末を目前に控えまして、
厖大な
税收入
目標達成に向いまして、どこの
税務署も猫の手も借りたいとい
つたような忙しさで、
目曜も返上いたしまして、
家庭生活も顧みる暇もなく、速日
超過勤務の
惡戰苦鬪を続けていたようであります。この
地方では、
政府が心配しておるがごとき
納税を阻害するような
団体の反
税活動は殆んどないということができます。
納税思想も決して低調ではなく、不利な
條件といたしましては、
全般的に見て
納税資力が非常に涸渇しておるということができます。尚
税務の
事務が非常に
煩雜多忙を極めておるにも拘わらず、人手が非常に不足しておるということであります。
全般的な見方は大体以上でありますが、次に具体的な問答は簡畧いたしまして、
納税者並びに
第一線税務職員の声及び要望を要約して、もう少し詳しく
報告いたしたいと思います。先ず
納税者の側から申上げますと、運用の面につきましては、
税務職員が非常に不深切である。言葉も乱暴で、
納税者を最初から罪人扱いするとい
つたようで、質が非常に低下しておるとの非難が多い。次に実地調査が不十分、不徹底で、各種目間の権衡が不公平である。所得の実額捕捉が曖昧で、國税の権威が失墜しつつあるとのことであります。正直者の申告も、不正直な者の申告も同じように取扱
つておる、又
納税者から提出するいろいろの
資料にいたしましても同樣な取扱いをしておるから、この際是非とも正直な者と不正直な者とを
はつきり識別して貰いたいとのことであります。特に取引高税の更正
決定のごときは、
納税者を思想的にも非常に惡化しておるとい
つたような現状であります。
尚滯納者に対する差押え、公賣等に言
つても、
納税者の苦境を汲み取
つて、正直な者と不正直な者とを見分けして貰いたい。
更に税法がある限り、封建的な税金の割当はあり得ないことでありますが、いうところの收入目標に相当無理があるのではないかとの非難が囂々としております。次に立法面につきましては、第一に税金の負担が非常に重い、
政府は國民所得と税率の割合が英米に比較して非常に低いと発表しておるようであるが、國民所得は仮想の数字であり、税金は実額であるから、ここに矛盾があり、無理がある、
納税者に取
つては死活の問題であるから、國民所得は科学的な根拠に基いて、できるだけ完全に近い正確なものを算出して貰いたいということを強く要望されております。
次に吉田
内閣は取引高税の撤廃、所得税の軽減とい
つたような公約を是非とも履行して貰いたい。衆議院の議席も二百六十六人の絶対多数を占めているのであるから、是非とも公約を履行して貰いたい、國民は心から期待しているとのことであります。
次に申告
納税制度を再檢討して貰いたいとのことであります。
納税者は予定申告、修正申告、
確定申告等、息つく暇もなく
税務署への
報告に追われており、又
税務職員は更正
決定、
確定決定、これにそれぞれ伴う異議申立てなどの
事務で、いやが上にも
事務が煩雜、多忙を極めております。
年度末を目前に控えて
確定決定の通知を受取るのであるから、納期が非常に短かく、而もこの間に一時に大金を
納税しなくてはならない苦境を汲み取
つて、合せて納期の問題も檢討して貰いたいとのことであります。尚これに関連いたしまして附加えて置きますが、税金の負担が重く、その上
納税資力が涸渇しておるから、税金の分納について何らか適当な
措置を講じて貰いたいとのことであります。
次に現在の
税務機構、
税務事務の不備を補うために、公選による所得税調査
委員、名称は
税務協力
委員でも
税務委員でも結構ですから、この際外部からの協力を俟つとい
つたような制度を設けることが必要である、尚これは労働組合や農民組合からの切実なる要望でありまするが、民主
団体と適当に協力して、これを是非とも活用して貰いたいとのことであります。
次に國民の最低生活を脅かすがごとき点を是非
改正して貰いたい。これがためには少額所得者の税率を大幅に引下げる、尚基礎控除、扶養控除の大幅引上げなどが強く要望されております。又これに関連しまして、同居家族の総合所得を檢討して貰いたい、これは昨日油井議員からも
お話がありましたが、大口の所得者は別といたしまして、家族の全員が働きに出かけなくちやならないような貧乏な家庭におきまして、家族の一人々々の僅かな所得を掻き集めてまで合算して課税をするがごときは苛酷である。この点を十分に血もあり涙もある
措置を檢討して貰いたいとのことであります。尚個々の俸給生活者で、家庭で妻子が細々と農業をやるとか、営業をや
つておるとかの場合の総合所得についても再檢討を加えて貰いたいとのことであります。
次に大口の闇所得、大口の脱税者を捕捉して貰いたいとのことです。これがためには最近國税査察法が発足いたしまして、随分活動してお
つたようでありますが、この結果が、却
つて比較的に良心的で眞面目な経営者が槍玉に挙げられまして、隅から隅まで塵一つ残さずとい
つたような筆法で、嚴重な調査を受けて、その結果が、非常に破産するがごとき立場に追込まれている、從いまして大口所得者に対しては依然として大した効果が挙
つていないとのことでありまするので、この点十二分に檢討して貰いたいとのことであります。
次に國税と
地方税との徴税の問題でありまするが、この問題も昨日天田、油井両議員から詳細に
報告があ
つたようでありまするが、法人税の場合におきましても、個人税の場合におきましても、國税と
地方税とを合せると、税額と所得額とが殆んど同額となり、又は遥かに税額が所得額を上廻るとい
つたような変な実例がありますので、この点を大いに檢討して貰いたいとのことであります。尚差押え物件を競賣するような際にも、差押えされた者の住所氏名を一々掲示することは止めて貰いたい。滯納して差押えをされたことが、隣り近所に対して身を切らるる思いでいるのに、一々住所氏名を
税務署の掲示板に公示されたのでは全く自暴自棄にならざるを得ない。この点も特別に檢討して貰いたいとのことであります。尚正直な申告
納税者に対する何らかの報奬制度を設けて貰いたいとのことであります。
次に織物消費税の撤廃、それから特價酒、焼酎の價格の引上げなどが要望されております。以上は
納税者の声及び要望であります。
次に直接
税務の第一線に携
つております
税務職員の側から申上げますというと、先ず第一に
納税者は喜んで、進んで
納税することができ、
税務職員は愉快に健康で十二分に働くことができるような、民主的な
税務体制を一日も早く整えて貰いたいという希望であります。
税務の
機構、制度、施設について根本的な分析、調査、檢討を行
つて、
税務行政を
刷新改善
改革して貰いたいとのことであります。こうした目的を果すために、最近税制
審議会が発足しているようでありまするが、これはまだまだでありまして、
國会の権威者を網羅して特に
税務職員の中から優秀な経験者を参加させて、その機能を十二分に発揮すべきであるとの要望が強く現われております。
次に
税務の
事務は現在非常に煩雑多忙を極めており、一つの仕事が未済のうちに次から次へと新らしい仕事が加重されて來ると、人手が少い、熟練者が少い、徴税費が少い、すべての
法律の中で税法ほど改廃の烈しいものはない、殆んど毎年、それどころか毎
國会、改廃が論議されたり、又事実改廃が行われておる。こうしてこの新税法、
改正税法を十二分に研究する暇のない程多忙を極めている。尚如何なる階級の人に対しても等しく
納税者である以上、相手の所得の
内容、財産の
内容を調査しなくてはならないのでありますから社会的にも経済的にももつとその地位が確保されなくちやならない。こうした
税務職員の職務の特異性を十分に認識して貰いたいとのことであります。
次に所得の実額を正確に捕捉できるような権威のある科学的な調査
方針を立てて貰いたい。こうした目的を果すために
大藏省当局では、主税局並びに
財務局に
税務能率
刷新調査会及び調査室を設けて努力しているようでありますが、これはまだまだでありまして、更に一段の努力と
措置が要望されております。権威のある科学的な調査
方針を立てるために特に要望されている
資料をここに二、三挙げますと、先ず第一に
税務職員の大幅増員を行うこと、それから
税務職員の素質の向上、
納税者カード作成、
資料の蒐集、税法の簡易平明化、業況指数の作成、預金調書の作成、組織
団体の使命を更に一段と活用することなどに万全を期して貰いたいとのことであります。
更に銀行を調査する権限を賦与して貰いたいとのことであります。尚
納税者はその大部分が帳簿もなく、又あ
つても不備であるとか、又は誤
つた記載をしているとかで正確に自分自身の所得を算出できるものが殆んどなく、從いまして自分の所得額の
決定に対して不服があ
つても、正当な
理由が成り立たないとい
つたような次第でありますから、こうした面で
納税者を指導善導する方策を講ずべきであるとい
つたような要望があります。
次に設備の拡充でありますが、廰舍の改善、交通通信の設備、自転車、トラツク、自動車などの設置、その他吏員の増員が要求されております。御承知の
通り税務署はどこに行
つても廰舍が非常に狹くてきたないのでありますが、殊に今回廻
つたところの
福岡縣の門司の
税務署、更に
熊本縣の八代
税務署、更に
鹿兒島縣の加治木
税務署等は非常にひといのでありまして、こうい
つた点については即刻廰舍の改善を講ずべきである、かように
考えます。
尚最近頻りに差押えをやりますのでその差押え物件を運ぶためにトラツクが是非とも必要であるというようなわけで、トラツクも設置して貰いたい、更に乘用の自動車も各署に一台くらいずつ設置して貰いたい。
尚次に
税務職員の職務に応じた待遇といたしまして徴税費の大幅引上を行う、更に旅費の増額、
超過勤務手当の増額、住宅費、交通費の支給、更に福利厚生といたしまして、被服、靴、加配米等の現物支給の外、医療施設の完備などが要望されております。
次に待遇改善と四十八時間制の問題でありますが、これは両方とも現在全財労組並びに日財労組の
二つの組合から強く要望されておりますが、先ず待遇改善について申上げますと、平均三号俸取消を即時撤回しろとのことであります。実は二十三
年度の一月一日現在、職階制号俸切替えのときに、
税務職員は特別職階であるにも拘わらず、
一般職員と同
程度か若くはそれ以下にな
つていましたが、去年の九月頃正確な
資料、基準を掲げまして、その誤謬なることを指摘して、組合として
大藏大臣に訴へましたところ、丁度この頃給与局におきましても調査中でありまして、その調査の結果が、組合の要求なるものが正当であるとの事実を発見いたしまして、財務職員全体に対して大体平均三号俸の引上げを行
なつたそうであります。ところがその後間もなく職階制号俸切替えのときに、又その後におきまして、闇昇給が他官廰において相当なされたとの
理由によ
つて、
昭和二十三年の十二月一日、六千三百七円ベースに切替えの際に闇昇給は一際取消すとの
政府の指令によりまして言うところの闇昇給は皆んな取消に
なつたそうであります。ところが
税務職員は実際正確な
資料、正確な基準に基いて昇給したのにも拘わらず、このとき九月の昇給そのものが、やはり一律に闇昇給であるという工合に見做されて取消されたそうであります。この取消は、飽くまでも不法であるから、早急に撤回して貰いたいとの要望であります。
次に四十八時間制の問題でありまするが、これは現在全官公廰職員が、反対しておりますが、特に財産職員としての反対の理論的な根拠をここに掲げますと、御承知の
通り非常に人手不足である、熟練者も不足しておる、
事務の煩雑、多忙、更に住宅難、交通難等で、仕事の分量が非常に過重である、好むと好まないに拘わらず、最盛期には殆んど一年中の大半は、日曜返上してまで夜勤を続けなくちやならんとい
つたような現状で、特に最近は労働過重から職場には病人が続出しているとい
つたような悲惨な実情であります。尚ずつと以前から
税務職員は早出晩退の
理由があると言われておる程でありまして、今更今頃にな
つてわざわざ四十八時間制を嚴密に適用することもなかろうと思考されます。かかる見地から四十八時間制に対しても更に一段と檢討を願
つて止まないとのことであります。
以上
簡單に
納税者、並びに第一線で日夜苦闘を続けております
税務職員の切実な声、眞摯な要望を
報告したのでありまするが、これを單なる
報告として取扱わず、特に
大藏省におきましては、今後税法の立案更に
機構、制度、施設などの一切の企画の中に、こうした
一般の切実な声、要望を是非共織込んで頂きたい。特に私はこの点を強調して止まないのであります。
尚このたびの税制の調査は、議員が議事堂から外部に踊り出て、國民大衆の中に深く入り込んで行
つて、直接生きた
資料を集めて知識を啓発することができるという点から見まして、又他方、当局と
納税者との摩擦を少くすることができたりするとい
つたような点から見まして、非常に有益であり、今後共かかる計画が実施さるべきとの希望を附加えまして、
簡單でありまするが、
報告を終ることにいたします。