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説明員(
松元威雄君) 第十四條(「
免許についての
適格性)
定置漁業又は
区画漁業の
免許について
適格性を有する者は、左の各号のいずれにも該当しない者とする。
一
漁業に関する法令の惡質な違反者であること。
二 労働に関する法令の惡質な違反者であること。
三 海区
漁業調整委員会における投票の結果、総委員の三分の二以上によ
つて漁村の
民主化を阻害すると認められた者であること。
四 前三号の
規定により
適格性を有しない者が、どんな名目によるのであ
つても、実質上その申請に係る
漁業の経営を支配するに至る虞があること。」
第一項と第二項以下は
内容が大分違
つており
ます。先ず第一項で切
つて御
説明申上げたいと思い
ます。
後の三十條で
漁業権は貸付を禁止されており
ますために、
漁業権は
原則として
漁業をしなければ
免許いたさないという、第一項は指令する者の
適格性の
規定であり
ます。この場合に四つの事項がございまして、この四つの事項の一つに引つかか
つた人間は
適格性がないと、こういうふうにいたしており
ます。
適格性と申し
ますのは、いわば最小限度の資格審査と言い
ますか、最小限度の資格要件でござい
ます。先ず一は「
漁業に関する法令の惡質な違反者であること。」これにつきましては、表現が曖昧であり
ますために、いろいろ疑義、又問題が惹起することも予想されるわけでござい
ます。この
漁業に関する法令と申し
ますのは、
漁業法並びに
漁業法施行規則、その他
漁業法に基きましていろいろの
漁業取締規則、中央の取締規則であり
ますとか、縣の
漁業取締規則、そういうものが出ており
ます。これを言うわけであり
ます。よく御
質問があるわけでござい
ますが、價格
関係の統制法規、或いは配給
関係の統制法規は
漁業に関する法令には含まれません。惡質と申し
ますのは非常に曖昧な表現でござい
ますが、若しこれをただ違反者であるというふうにいたし
ますと、これは
漁業法自体非常に欠点がございまして、
現行法の欠点が一々拾い上げればこれはきりがない話でござい
ます。それから又違反をしてその後刑に処せられた者というふうにいたし
ますれば、むしろ運の惡い者が刑に処せられたということもござい
ますし、又数も少うござい
ます。
從つてそういうふうに形式的に違反者とか、或いは形式的に刑に処せられたとか、形の上の要件ではなく、実体を判断をいたしまして、惡質であるかどうか判断する。惡質な場合には
漁業権の
免許の
適格性がないというふうにいたしたのであり
ます。併しながらこの惡質の判断ということは、
條文では惡質と書きましても、実際判断としましては、どの程度が惡質かということは恐らく疑義の出る点であろうと思い
ます。これは実際の
委員会の運用、或いは現地の実際の状況判断によりまして大体見当が付く。例えば食糧管理法違反でありましても、惡質のものは檢事局へ送檢するという
言葉も使
つており
ます。だから社会通念として、一應の修理は立つのじやないかと、こう思
つているわけでござい
ます。それからこれは、一旦惡いことをしたならば懲罰する
意味で
免許しない、こういう
意味ではございません。よく一旦惡いことをしたら二度と
免許を受けられないのかという御
質問がござい
ますが、そういう
意味ではございません。若しこの男に
免許したならば、將來
漁業法令の惡質な違反をするだろう、そういうふうに予想される人間という
意味でござい
ます。ただその場合に、莫然と予想される点が非常に曖昧でございまして、その男が將來惡質な違反をするかどうかという
意味であり
ますので、過去の実績を見て、この男は過去にこういう惡いことをした、而もその後改悛の情もないというような点を判断しまして、
適格性があるかないかを決めるわけでござい
ます。それから第二項の労働に関する法令と申し
ますと、労働組合法であり
ますとか、或いは労働基準法、或いは労働
関係調整法とか、或いは職業安定法、それから三十トン以上の汽船につきましては船員法、船員保險法、それから船員職業安定法とか、いろいろ労働部面の
規定が出ており
ます。これに惡質に違反した者は
適格性はないといたしたわけであり
ます。これは現在の段階におきましては、労働法令は必ずしも
漁民の間に浸透もいたしておりません。又労働法規自体が非常に現状とマッチしないので、直ちに機械的に云々することはできませんが、惡質なもの、例えば十
一條に違反して組合運動をしたから首を切
つたというようなもの、これは
適格性がない、こういうふうにしたのであり
ます。それから第三点、これも非常に問題になる点でござい
ます。これは海区
漁業の
調整委員会で投票いたしまして、これは総委員は
あとで大体
原則として十名というふうにいたしており
ますが、この十名の総委員の三分の二以上、つまり七名以上でござい
ますが、これが投票いたしまして、このものは
漁村の
民主化を阻害する、こういうふうに投票をする場合には
免許の
適格性がないとしたわけであり
ます。何が
漁村の
民主化を阻害するか、これは非常に問題でござい
ます。これをも
つてはつきりして呉れという希望がござい
ますが、これを
法律に具体的な事例で一々列挙するわけに参りませんので、むしろこの
法案自体は
委員会の運用に任かしたい、こう思
つたわけであり
ます。それから第四項は一項二項三項によりまして、
適格性を有すかどうかを見まして、若し
適格性を有しないものが、実質上うしろにありまして、協同経営であり
ますとか、又仕込みをするとかしまして、表面に立たないけれども、裏で経営を支配しておるという場合には
免許の
適格性がない、言わば脱法を防いだわけであり
ます。一應第一項の御
説明を終りまして、
〔理事尾形六郎兵衞君退席、
委員長着席〕
第二項以下は
内容は大分違い
ますので、次に御
説明いたしたいと思い
ます。