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1949-06-02 第5回国会 参議院 水産委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年六月二日(木曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○漁業法案内閣送付) ○漁業法施行法案内閣送付)   —————————————
  2. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。昨日の委員会に引続いて漁業法案審議に移ります。昨日は二十三條までで終つたのですが、二十四條から審議に移ります。松元君の御説明を願います。
  3. 松元威雄

    説明員松元威雄君)  (抵当権設定)  第二十四條 定置漁業権又は区画漁業権について抵当権設定した場合において、その漁場に定着した工作物は、民法第三百七十條(抵当権効力の及ぶ目的物の範囲)の規定の準用に関しては、漁業権に附加してこれと一体を成す物とみなす。  2 定置漁業権は、都道府縣知事認可を受けた場合を除き、抵当権目的なることができない。  3 前項認可をしようとするときは、都道府縣知事は、海区漁業調整委員会意見をきかなければならない。  (区画漁業権讓渡により抵当権が消滅する場合)  第二十五條 ひび建養殖業かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三権区画漁業たる貝類養殖業内容とする区画業権について抵当権設定されている場合において、これを漁業協同組合又は漁業協同組合連合会讓渡するには、漁業権者は、抵当権者同意を得なければならない。  2 抵当権者は、正当な事由がなければ、前項同意を拒むことができない。  3 第一項の讓渡があつたときは、抵当権は、消滅する。  (漁業権移轉制限又は禁止)  第二十六條 区画漁業権は、都道府縣知事認可を受けた場合を除き、移轉讓渡滯納処分強制執行及び抵当権実行による移轉をいう。第二項、第二十七條第一項及び附則第五項において同じ。)の目的となることができない。  2 都道府縣知事は、第十四條第一項又は第二項に規定する適格性を有する者に移轉する場合でなければ、前項認可をしてはならない。  3 前項規定により認可をしようとするときは、都道府縣知事は、海区漁業調整委員会意見をきかなければならない。  第二十七條 区画漁業権以外の漁業権は、移轉目的となることができない、但し、定置漁業権については、抵当権実行による場合及び第二十八條第二項の讓渡の場合は、この限りでない。  2 前項但書規定による定置漁業権移轉には、前條の規定を準用する。  一應ここまでで御説明をいたします。昨日第二十三條で御説明いたしましたが、漁業権は物権でございますが、いわゆる財産権のように、自由な移轉担保権設定を認めてはおりません。最初の頃においては、讓渡制を全然禁じまするつもりでございましたが、その後金融等関係を考えまして、漁業権種類によりまして、多少の移動性を認めております。従つて漁業本日の種類によつていろいろ区別をいたしておりますから、條文が非常に混み入つております。先ず漁業権のうちで、抵当権設定できるものは、第二十三條の第二項によりまして、定置漁業権と、それから協同組合が自営しなくても持てます漁業権、これを除いた区画漁業権、この二つでございますが、これについて抵当権設定した場合には、その抵当権効力がどこまで行くか、こういうことを規定したのが第二十四條でございます。これは非常に技術的な規定でございますが、丁度民法の第三百七十條に抵当権設定した場今に、その効力がどこまで及ぶか、例えば土地抵当権設定した場合に、その土地の上に生えておる木に対して抵当権効力が及ぶのがどうかということを決めた規定がございます。この規定に照應して民法趣旨に做いまして、漁業権の場合には、漁業権抵当権設定したりしましたら、漁場に定着した工作物、例えば区画漁業権漁場に障壁を作るために土や石で壁を作つてつた。そういう場合にはその工作物に対しては抵当権効力が及ぶのだ、こういうように規定しております。これは技術的な規定でございます。  第二項、第三項は第一項と内容を少し異にいたしまして、定置漁業権は一應抵当権設定し得るわけでございますが、その場合にも都道府縣知事認可が要る。認可を受けなかつたならば、抵当権設定しましても、その効力を生じない、こういうわけでございます。これは定置察業権はあとの第二十七條によりまして讓渡することができないわけであります。讓渡できないのについて、普通の法律論から申しますと、おかしい話でございまして、讓渡は禁じておる、ところが抵当権設定してそれに從つて讓渡されることは認めるという妙な結果になりますので、これによつて讓渡禁止脱法になるように使われる虞れがあるわけでございます。從つて應抵当権設定は認めるけれども、設定する場合には必ず知事認可が要る。知事がその認可をします場合にはどういう目的設定するか、本当に金融詰つて借金担保として抵当権設定する、こういうふうな場合に限つて認めまして、それ以外に讓渡脱法として使われる場合は担保設定を認めない、こういう趣旨でございます。第三項で知事認可します場合には、海区漁業調整委員会意見を聞けということを規定したわけでございます。区画漁業権讓渡も一應認めてありますから、抵当権設定につきましても、特に定置漁業権のように認可制を布いておりません。  次に第二十五條、これは区画漁業権は、その中で協同組合が自営しなくても持てる区画漁業権につきましては、協同組合の持つているものについては抵当権設定ができない、個人が持つている場合には抵当権設定ができるというように、同一の漁業権ではありますが、その主体によつて抵当権設定できるかどうか、区別いたしております。從つて個人区画漁業権を持つておりまして、これに抵当香設定するかどうか、それを協同組合讓渡しますと、協同組合有になりますと、抵当権設定できませんから、抵当権は無効になるわけでございます。從つて抵当権者保護のために、そういう場合には抵当権者同意を得るということを規定したのであります。この場合には抵当権者保護趣旨から、一應抵当権者同意を要件にしたわけでありますが、抵当権者が正当な事由がないのに同意を拒んだということがありますと、円滑に協同組合移轉しようと思うことが阻害されますから、正当の事由がなければ同意を拒めない、こう規定したしまして、若し正当な事由がないのに同意を拒んだ場合には、裁判所に訴えて、同意に代る判決を求められるということにしたわけであります。  第三項は念のための規定でございますが、協同組合移轉した場合には抵当権は消滅する。二十三條の二項と照應いたします規定で、念のためでございます。  第二十六條、第二十七條、第二十八條は、漁業権讓渡制制限であります。第二十六條で区画漁業権は一應讓渡できる、併しながら移轉する場合には都道府縣知事認可を必要とするということを規定したのであります。第二十六條の区画漁業権と申しますのは、第二十三條第二項で括弧いたしまして「ひび建養殖業かき養殖業、内水面における魚類養殖業又は第三種区画漁業たる貝類養殖業内容とする区画漁業権であつて漁業協同組合又は漁業協同組合連合会の有するものを除く。第二十四條から第二十八條までにおいて同じ。」といたしまして、ここに使つております区画漁業権ということの中に、協同組合が自営しなくても持てる区画漁業権協同組合が持つているものを除きます。これは以下二十八條まで御注意願います。從つてそういう協同組合の持てまする漁業権を除きまして、普通の区画漁業権認可があれば移轉できる、こういうわけであります。移轉と申します中には、讓渡、これは契的によるのも讓渡でございます。それから本人意思によらなくて強制的に國税滯納処分であるとか、強制執行であるとか、或いは抵当権実行であるとか、そういうような本人意思によらないものも含んであります。從つてすべて本人意思によるとよらないとを問わず、漁業権が移動する場合には、必ず認可が要るわれであります。併し相続の場合又は相続に準じます組合合併の場合、こういう場合には移轉の中に入りません。  それから第二項で、一應移轉を認めてはおりますが、漁業権免許をします場合に、適格性というものがございまして、適格性のない者には免許をしないということが第十三條に規定してございます。從つてこれと照應しまして、一應移轉は認めるけれども、相手方は必ず適格性を持つている者でなければならないということを第二項で規定したわけであります。  それから第三項で認可をしようとする場合に、海区漁業調整委員会意見を聞けということを規定しております。  第二十七條は、第二十六條の規定いたしました区画漁業権、これ以外の漁業権は、定置漁業権でありますとか、共同漁業権でありますとか、或いは漁業協同組合が自営しなくても持てる区画漁業権、これは全然動かしては相成らんということにいたしております。併しながら定置漁業権につきましては、一應抵当権設定を認めておりますから、その抵当権実行して、その結果移轉する場合、この場合は移轉してもよろしい。それから後で第二十八條第二項で讓渡できる場合を認めておりますから、この場合は移轉してもよろしいというふうにいたしております。  第二項で、こうように定置漁業権については或る程度讓渡制を認めておりますが、その場合には前條の規定を準用する、つまり都道府縣知事認可が要る、つまり讓渡すり相手方適格性を持つている者でなければならない。知事認可をする場合には委員会意見を聽け、そういうことにしたしております。  第二十八條は、相続によつて定置漁業権或いは区画漁業権を取得した……相続による取得を認めているわけでありますから、その場合に取得した人間が、若しも適格性のない人間であつた場合にはどうか、そういう場合には、第十三條第一項によりまして、免許してはならん場合でございます。そうして適格性のない場合には漁業権を取消さなければならないという規定が、後の第三十八條の第一項に規定してございます。そういたしますと、相続して漁業権を取得した、ところがその男は適格性がなかつたら、黙つておれば知事は取消さなければならない、こういう結果になつて参ります。從つてこれを調整しますために、相続によつて定置漁業権又は区画漁業権を取得した者は、取得しましてから二ヶ晴以内に一應都道府縣知事に届ける。知事はその者が適格性を持つているかどうかを調べる。即ち適格性があればよろしうございますが、適格性がない場合には、一定期間内に適格性のある人間讓渡しろ、若しも讓渡しなかつたならば取消すぞ、讓渡するまでの間は、第三十八條第一項の取消規定を発動しないわけでございますが、そのように取消規定を発動しない猷予期間を置きまして、その期間内に讓渡を命じたわけでございます。  以上第二十四條より第二十八條までが、漁業権担保制及び讓渡制制限に関する規定でございます。説明を終ります。
  4. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 御質問がありましたらお願いいたします。
  5. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 二十八條の、相続によつて定置漁業権又は区画漁業権を取得した場合は、その日から二ヶ月以内に都道府縣知事に届出ろ、そうしてそうしたときに、道道府縣知事は海区漁業調整委員会意見を聽いて、その者が適格性を有していないときは取消す、こういうのですが、適格性を有していればやるということを意味していると思いますが、適格性を有しているが、その讓渡のときに順位というものはもう考えられなくて、適格性を持つていれば、誰に讓渡してもいいのだ、こういうことになるわけでしようか。
  6. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。適格性があれば、誰でも差支えございません。從つてこの点は漁業権免許適格性優先順位に從う最もよい者に免許をするということに対して多少いわば妥協しておるわけでございます。本來ならばこの場合でも一一調べて認可するかどうかを決めるのが本当でございますが、そこまで一々処置しきれませんので、一應適格性さえあればよろしい、こういたしたのでございます。
  7. 尾形六郎兵衞

    尾形六郎兵衞君 漁業権原則として讓渡禁止されていますね。相続したときはこれを相続人讓渡してもいいのですが。
  8. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。第二十八條相続で得た場合には讓渡してよろしいというのではなくて、若しその人間適格性がなければ取消されるわけであります。その取消されるのを勘弁してやろう、その代り適格性のある人間讓渡しろというのであります。從いましてその人間適格性がありますれば、讓渡はできません。
  9. 木下辰雄

    説明員木下辰雄君) ちよつと私から一つお尋ねいたしますが、第二十四條の抵当権目的になるものは定置漁業権とそれから自営しないでも漁業組合が持てる区画漁業権以外の漁業権ですか。
  10. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。そうでございます。尚補足して御説明いたしますがこの讓渡制担保制を或る程度認めましたのは、主として金融等の便宜を考えたわけでございます。そのために本來ならば優先順位によつて一番よいものを免許をする筈のものを原則を多少覆したわけでございますが、併しながらこのように相手方適格性がなければならないというふうに制限を加えましては、抵当権設定いたしましても、大した効果はないのではないか。むしろこの規定によつて合法的に優先順位を覆して任意に讓渡するという弊害の方が大きいのではないかということも予想されるわけでございます。我々といたしましては本來ならば漁業権担保に入れて金融付けることは期待できない。むしろ漁業権金融は外の見地から考えるべきではないか、いわゆる物的担保金融を考えるのでなくて、事業の收益性に目を付け金融を考える。そういうふうに金融考え方を変えて行かなければならないのではないか、そうしますると、なまじつかここに讓渡制或いは担保制を多少認めて全体の原則を覆すよりも思い切つてこれを削つた方がよいのではないかということを一應考えたわけであります。この点に対してもどちらがよいか、これを議会で愼重に決めて頂きたいと、こう思つております。
  11. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 重ねて問いますが、二十四條の第三項であります。都道府縣知事は海区漁業調整委員会意見を聞いて認可をするということになつておりますが、何かこれに対して認可の基準とか、認可條件とか何かありますか。
  12. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。実は二十四條二項において如何なる場合に認可をするかということを考えたことはございます。併しながらこういう場合には認可をするのだ、これは主として金融のためという場合でございますが、そういう金融のためというような主観的意図によつて効力が決まり、抵当権が有効になる、無効になるということはこれは法律上は非常に不安なわけであります。大人の主観的推測でありますから……。從つて法文として認可條件は書かなかつたわけです。併し認可の方針としては決めているわけでございます。
  13. 尾形六郎兵衞

    尾形六郎兵衞君 第二十八條の第二項の一定期間内に讓渡しなければならんという場合の一定期間というのはどのくらいの期間ですか。
  14. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。この一定期間というのは現在のところかつちりと何日というふうにつめて考えておりませんが、まあこれは讓渡できる相手が見付かるまでくらい待つてやろうというように考えております。その情勢によつて長くしたり短かくしたりして、成るべくならば取消さずに済むように相手方が見付かるまで待つてやろうという氣持でございます。
  15. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 御質問がなければ第二十九條以下に移ります。松元君の御説明を願います。
  16. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 「(水面使用権利義務)第二十九條、漁業権者の有する水面使用に関する権利義務は、漁業権処分に從う。」  これは大して重要な規定ではございませんが、現行法にあります規定でありますから、一應同じように規定したわけであります。これは考え方としましては、まあ漁民権を行使します場合には、一應水面使用しますわけでありますから、水面使用権利義務を持つておる場合が多うございます。その場合には、漁業権讓渡されたら、それに從つて水面使用権利義務も一緒に讓渡されたのだ。こういうふうに讓渡契約を推定して行こう、そういうふうな、漁業権讓渡契約從つて水面使用権利義務がどうなるかという当事者間の契約解釈規定であると解釈しております。これで疑問が出ますのは、現在特に、これは河川等に多い例でございますが、漁業権の外に、公有水面使用許可願いというのを出しまして、これは大体縣廳の土木課あたり許可を持つております。そういう許可が当然に漁業権処分從つて移轉されるかどうかという点、疑問が出るわけでございますが、そういう行政廳許可が、本人漁業権処分契約從つて自動的に移る。そうは考えておりません。
  17. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 今の第二十九條の水面使用に関する権利義務漁業権処分に從うというので、今の御説明の問題は、從來これはもう非常に問題を起しておつた。これは今御承知通り公有水面使用という問題については土木部の主管になつております。ところが漁業権関係は御承知の、從來で言えば経済部の方の仕事であつた。そこで考え方が違うために非常に問題を起しておつたのですが、そうしますと、この二十九條の漁業権処分に從うという場合の漁業権者の場合の最も有利な部門というのはどういう部門があるのでしようか。
  18. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。從つて実は第二十九條では、そういう問題では漁業権者に余り有利な規定ではございません。本來ならば、お説のように現在土木部との間に摩擦も生じておりますし、漁業権讓渡されれば当然公有水面使用権利讓渡されれば一番いいわけでありますが、ただ法律上から申しますと、向うでは許可はいたしますが、自動的に許可するということはちよつと法律上とりにくいわけでございます。で、その処置が、実際の漁業権免許と、公有水面使用許可との間の行政運用上の連絡を以てやつて行きたいと思つておりますが、若しそれで不十分でございますれば、或いは何らかの法制的措置を講じてもよいかと思つております。
  19. 尾形六郎兵衞

    尾形六郎兵衞君 漁業権処分に從うというのはどういう意味です。
  20. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 漁業権が、例えばAとBとが契約いたしまして、Aが自分漁業権をBに讓渡しようという場合には、その讓渡契約從つて当然に水面使用に関する権利讓渡されたものと見る。こういうわけでございます。
  21. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次は第三十條。
  22. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 「(貸付禁止)第三十條、漁業権は、貸付目的となることができない。」  これは、條文は簡單でございますが、内容的には非常に問題になる規定でございます。先ず貸付禁止というふうに規定いたしますと、ちよつと見ますと、不在権利者はいかん、いわゆる不在地主の存在を認めないと言つて、非常にその点ではいい規定のように見えるわけでありますが、漁業の場合には農地の不在地主と違いまして、この貸付禁止というものは漁業制度、これを根本的に覆すような大きな意味を持つております。それは現在協同組合、今は漁業会でございますが、これが漁業権を持ちまして、最もいい経営者を選んで、それに貸付けて経営しておる。こういうふうにしまして、協同組合漁場管理をしていたわけでございます。これが全然できなくなるわけでございます。成る程法律上は漁業会漁業権を持つている。そうして適当な経営者を選んでそれに経営させるということは、民法上から申しますと、賃貸契約になるわけでございますが、内容から申しますと、個人漁業権者漁業権を持つのと違いまして、むしろこれは漁場管理一つやり方である。恰も昔の專用漁業権共同漁業につきまして組合が定款で報酬を決めて経営させる。これと同じような内容である、こう考えられるわけであります。それがたまたま契約貸付契約という形を取つておりますために、この第三十條の規定によりましてできなくなる。そうしますと、協同組合漁場管理しておるという從來やり方は全面的に変えざるを得ない、こうなつて参りますので、非常に重要な規定でございます。この点新らしい漁業制度、これをどう考えて行くか、その根本観念從つてこの第三十條をどうするかを決めて頂きたいと思つております。実際問題といたしましては、現在各地からの陳情等では個人漁業権者漁業権を持つのはいかんというようになつておりますが、協同組合限つて貸付けを認めて呉れ、併しそれは法律上は成る程貸付けであるけれども、内容的には貸付けではないのだからという陳情がございまして、まあ尤もな節も非常に多いわけでございます。それからこの貸付という字句でございますが、これは勿論金を取つて貸しまする賃貸借も、ロハで貸しまする使用貸借も、全部含めておりまするが、併しただ貸付禁止しただけでは漁業権免許を取る人間が必ずしも自分で経営するとは限らない。例えば協同経営ということにいたしまして、実際は相手方に全部経営して貰つて法律上は第三十條に抵触しない。こういうようなことも考えられて、これで必ずしもいわゆる不在地主ということは十分防げないわけであります。從つて我々はこれをもつと拡張いたしまして、何らかの名儀を持つと否とを問わず、実質上は貸付けることはいかんというふうに規定した方がいい。こういうふうにも思つております。説明を終ります。
  23. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ちよつとお諮りしますが、これを逐條審議ますることは漁業法施行法案まで到底二日や三日でできませんが、特に重要事項、若しくは難解事項についてピック・アップして行きたいと思いますが、如何でしようか。
  24. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 私は今の委員長の御意見に非常に同感の意を表するのでありますが、御承知のように漁業法というものは何十年來我々に親しみを持ち、又深く研究されて來ておるのであります。そこで今回のこの改正について特に変つた部門のうちで重要な問題について、我々はいろいろ説明を聞けば十分だと思つておるのでありますが、今回逐條によつて審議されるということはこういう暇があるときは……こんな行き方で行くときは暇さへあればこれに越したことはないのでありますが、今日の情勢ではとてもそういうことを許されんと思うのでありますので、今委員長からもお諮りになつたように、私は最も重要な部門についてということが第一。それから新たに加えられた部門で特に又重要な部門だということにして頂けばいいのじやないか、こう思います。  それからもう一つは私は少し余分なお願いですが、これは私共近く調査に出ますが、その際にいろいろと質問を受けるだろうと思います。その際の参考資料というものを一應準備して置きたいという氣持もありまして、水産廳においても、又この國会においてもしばしば今までのうちに相当の陳情を受けておるのであります。それらの内容も分つておりますから、そういう陳情なり、請願なりに対する意見というものを一應採上げて、そうしてそれに深い関係を有する條文についてもう一遍檢討してみるとか、或いはそれに対して何かの解釈を下した頂した資料を頂ければ、一應この休会中における我々の活動も支障なくやれるのじやないか、こういう氣持でありまして、委員長の今お諮りになつたことを至急に何らかの形式において決定して頂きたい、こう思います。
  25. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 尾形さん如何ですか。
  26. 尾形六郎兵衞

    尾形六郎兵衞君 異議なし。
  27. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 御異議ないようでございますから、松元事務官に対して特に審議事項とか、或いは難解事項とか、特に重要事項とかということをこの二法案からピック・アップして御説明願うと同時に、只今江熊委員が言われたように、成るべく多くの参考資料を提出願いたいと思います。
  28. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 これは三十條は今松元事務官から御説明のあつたような場合に、大きな問題になると思うのであります。私はこれに対する意見はいろいろありますが、後日又ゆつくり申上げたいと思うのですが、どうも貸付目的という意味が今の御説明によつてむしろ非常に散漫なような氣がするのですが、この散漫なようなこの言葉だけで、果して今政府でお考えになつておるような意味が補足できるであろうかということの疑問を持つておるのでありますが、今少しこれについて御説明して頂きたいと思いますが、今の御説明で成る程と思う点もありますが、今は我々にまだしつくりしない箇所もあるのですが、もう少しこれをできるだけ詳しく一つ説明願いたいと思います。貸付目的となることができないという、この目的という場合にいろいろなことが考えられる。その考えられるすべてのものを一應列挙して説明して頂くと、そうかなということで、私共分るのじやないかと思つております。
  29. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これは私もそう思いますが、現在では矛盾した條項で漁業協同組合が自営しなくても持てるということで、ここでは漁業権を貸すことがあつてはいかん、ただ貸してもいけないというところに非常に矛盾があるようですが、これをもう少し詳しく御説明願いたい。
  30. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 そこで今の御説明の中に、例えば協同経営ということでやつて行く。そうすると協同経営者は三人なら三人の中の二名が休んでおる状態にある。そうして一名がやるということもこれは勿論やる。そのようなそれは内容的にごまかしではなくして多少の力は貸すが、とにかくまあ責任の全般が一應ABC三人にある場合に、Aに持たしておいて、B、Cは一應大体において休んでおるという形、ところがそれは非常に善意な場合ですが、作爲的な場合も随分あります。とにかく悪い方面において考えられるわけなんですが、そうしますというと、地方自治の場合でも協同経営等を取つて仕事を起して行けば、必ず貸付目的というものになる得るわけですね。これはまあ幾らでも逃げ道はあるわけだし、そこまでは恐らく行政官廳として行届いた監督はできないのであります。こういう規定を置いたこと自体が既でにもうただお体裁ものである。單なるゼスチュアに過ぎないということになるのじやないかとこう思うのであります。併し私はこの規定の精神が、今御説明になつておる精神が最も重要なものであるということは又一面私は固く信ずるものであります。そこでこの表現というものを今少しいろいろと変えて行つた方がいいのじやないかとこう思う。それは勿論いずれ後の機会においてそういうことについて述べたいと思うのでありますが、一應この三十條の貸付目的という意味がどの程度の意味を含んでおるか、もう少し的確な御説明をして頂くと非常に幸いだと思います。
  31. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。この貸付目的という表現が非常に曖昧でどこまでが貸付か、疑義が出ることは御尤もと思つております。これにつきまして只今木下委員長の方からこれと協同組合が自営しなくても漁業権を持ち得る場合との関連如何という質問がございましたから、これについてお答えいたします。協同組合漁業権を持ちました場合に、それを第三者に貸付ける、こういうやり方の場合と、貸付ではなくて、この法案では第八條でございますが、第八條規定してございまする「各自漁業を営む権利」、これに從つて組合員に行使させる、こういう場合と両方ございます。第八條規定しております場合には貸付ではない、こういうふうに規定したわけでございます。これの法律上から申しますと、非常に面倒なことでございまして、今の法制全体の仕組に亘る問題でございますから、余り詳しくは御説明いたしませんが、とにかく第八條規定してございまする「各自漁業を営む権利」、この漁業を営む場合には貸付ではない、そうしたわけでございます。これにつきましては、少し立ち入つてお話いたしますと、この度協同組合原則として自営しなければ持てない、こうなりましたために、成るべくならば第八條の「各自漁業を営む権利」、こういうことにして、貸付じやないのだ、そういう態勢で協同組合を持たしたいというふうにいろいろ工夫いたしたわけでございます。それで第八條に当る場合には第三十條の貸付禁止、これと抵触はしない、從つて貸付というのは第八條に列挙いたしました事業、つまり共同漁業権でありますとか、ひび建養殖業かき養殖業、内水面における魚類養殖業、第三種区画漁業たる貝類養殖業内容とする区画漁業権、これについては貸付ではない、それ以外の場合定置漁業権の場合、或いは海におきましてやりまする魚類養殖業の場合には貸付である、そういうふうに区別いたしております。それから如何なら場合貸付になるか、これも実際問題としては御説のように非常にむずかしいのであります。例えば貸付禁止という規定を置きましても、いろいろ脱法的にもぐれるわけであります。先ず通常考えられますのは、協同経営ということにしまして、而も大部分は相手方が出資しておる、こちらは漁業権とそれに多少の名目だけの資金を出して協同経営をする、こういう場合が非常に多く予想されるわけであります。それから場合によると極端になりますと、漁業権の出資ということも考えられないではございません。そういう形で、どのようにいたしましてもいろいろもぐれるわけでございますが、それに対して法制上名目は貸付でなくても、何らかの名義を以てしても実体は貸付にならなければいかんということに抑えることも一方にはございます。併しこれにつきましては、協同組合が自営しなければ漁業権を持てない、例えば定置漁業について申しますと、協同組合はとにかく自営しなければ漁業権を持てないのでということになつておりますので、成るべく協同組合に自営さしたいわけでありますが、その場合は協同経営ということを或る程度認めないと、事実問題として自営ができない、從つて協同組合漁業権を持たないという場合が予想されます。実は貸付禁止という規定をどこまで認めるか、嚴密にやるかルーズにやるか、これは協同組合が持てるか持てないかということに関連して嚴重にやらなければならんか、曖昧にしなければいけないかという非常に微妙な問題で、若しこれが協同組合であれば自営でなくとも漁業権が持てるのだということになれば、この貸付ということを非常に嚴重にやつて、たとえ協同経営であろうと或いは委託経営であろうと、漁業権の出資であろうと、とにかく名目はどうでも実際に貸付を嚴密にやつて構わない、この点協同組合との関連でどうするか、むしろ委員会で愼重に審議して頂きたいと思うわけであります。
  32. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これは進めて……決定しない方がよいかも知れない。第三十條に対する御質問はありませんか……。なければ、さきに申しましたように、特に必要なる條項、審議條項について御説明を願いたいと思います。
  33. 松元威雄

    説明員松元威雄君) それでは現行法と変つておりまする点、それから特に重要な事項、それと難解の事項、大体この三つの点に限りまして、説明をさせて頂きたいと思います。  先ず第三十二條と第三十三條、これは現行法と殆んど同樣でございますから、説明を省略いたします。  第三十四條、これは第一項は現行法と同じでございます。ただ第二項におきまして、制限條件付ける場合には從來知事の権限でございましたが、今度は必ず海区漁業調整委員会意見を聞けということにいたしました。この点が相違いたしております。これは全般に亘る問題でございますが、このように都道府縣知事限りで決めてはいかん、必ず海区漁業調整委員会意見を聞かなければならんという條文説明が入つております。第三項は今度新らしく設けました規定で、從來免許するに当つてだけ制限條件付けたわけでありますが、今度は免許したあとでも制限條件付けられる、併しながらこれを余り恣意的に申しますと、免許を貰つた人間としますれば、いつ何時制限條件付けられるか分らない、非常に不安でございます。そのために行政廳は勝手にできない、免許したあとに制限條件付ける場合には海区漁業調整委員会漁業調整その他公益上必要があると認めて、制限條件付けろと言つて申請した場合に限つて、後からでも制限條件付けられる、こういうことにいたしたわけでございます。  第三十五條、第三十六條、これは大した規定ではございませんが、從來漁業法にはなかつた規定でございます。この休業ということは從來も相当あつたわけでありますが、休業になりましても、必ずしも行政廳漁業権を取り消さない、そうすると漁場は遊んでおるわけであります。ところが今度の如許においては予め漁業の計画を決め、適格性優先順位によつて最も良いと思う人間免許したに拘わらず、その人間が休業してしまつた、そうして漁場が遊んでおるということになりますと、漁業調整上非常に無駄がございますから、休業の場合には予め休業届をさせる、そうしてその休業期間中は漁業権者以外の者でも知事許可を受ければ漁業ができる、こういうふうに規定したわけであります。実際問題といたしましては、この規定を発動する場合はそうはないかと思つておりますが、一應予想されますので、念のために規定したわけであります。  第三十七條から第四十條まで、これは漁業権の取消事由であります。先ず第三十七條は休業の場合の取消、これは現行法と殆んど同じであります。第三十八條は新らしく設けました取消事由であります。これは今度の漁業法從來と違つて適格性及び優先順位ということを言つておりますから、免許を受けた当時は適格性があつたが、その後適格性がなくなつたとこういう場合には、漁業権を必ず取消す、こういうことにいたしたわけであります。これは外と違いまして、漁業権を取消さなければならないと規定いたしまして、知事は必ず取消す義務があるわけであります。これは取消することができるという規定は、実際問題はなかなか取消せるものではありません。実際問題といたしても、今まで取消すことは殆んどありません。併し適格性がなくなつた場合に、どうしても取消す必要がありますので、先ず都道府縣知事漁業権を取消さなければならないということにして、知事に義務付けたわけでございます。これが新らしく加わりました取消し事由の第一点であります。第二点は第三十八條第三項でありますが、これは優先順位が変つた場合でございます。併しながら優先順位が変つたからといつて、一々取上げた後から、少しでも自分より優先するものが出てくれば取消されるということになりますと、非常に経営も不安定でございますから、この場合も限定いたしまして、その男が事実上経営をしていなくても、他の者が協同経営とかいう名目で実際上経営しておる、その他の者は優先順位からすればずつと落ちる、そういうふうに脱法的に優先順位を狂わす場合、この場合だけに取消せる、こういうことにいたしたわけでございます。而もその場合は行政廳は勝手に取消さないで海区漁業調整委員会に申請した場合に限つて取消せるということにしております。理論的に申しますと、適格性はなくなつてしまつた、同じように優先順位が多少でも狂つたら一々漁業権の取消しをすべきであるかも知れませんが、同時に経営の安定の面もありまするし、又事実問題としてそこまで一々経営の内容に立ち入ることも不可能でありますために、この程度に止めたわけであります。第三十九條、これは殆んど從來と同樣であります。第四十條、これも從來と同じであります。  第四十一條は、漁業権抵当権設定されます場合に、その漁業権が取消された場合の抵当権者の保護の規定であります。内容從來規定と同じであります。  第四十二條は新しく入れた規定でありますが、実際の効用は余りないかと思つております。一應理窟から申しますと、今度は漁業権の存続期間が非常に短かい、つまり更新制度が認められていない、そのために恒久的な施設をして経営をするという良心的な経営者が、若しも自分が施設をしたけれども、五年後には取消されてしまつたというのでは非常に氣の毒である、併しそういうことでは漁業の恒久的な施設をして、本当に漁業を考えるという人間も出て來ないじやないかということも考えられますので、漁場に定着する工作物、こういうことによつて漁業権の價値を増大せしめて、若しもその次に免許を受けなかつた本人の責任帰すべき事由によつて漁業権が取消された、或いは次に免許が貰えなかつたということは別でありますが、本人の責でないのに次に漁業権が貰えなかつたという場合には、次の免許を貰つた人間に対して買取り請求権がある、こういうわけであります。これは恒久的施設をして立派な経営をなすことを勧める規定でございます。  第四十三條から、四十九條まで、これは漁業権に関する規定であります。  先ず第四十三條は從來と同じであります。第四十四條は、これは訓示規定でありまして、從來なかつた規定であります。入漁権の内容を明らかにするために、一應書面でこういうふうにして呉れということにしたわけであります。併しこれは訓示規定でありますから、これに違反したからといつて罰則は加わつて参るというわけではありません。併し若しもこの規定に違反して、入漁権の内容を書面にしておらなかつた場合には、万一のことがあつた場合に不利になる、そのために書面がなかつたからお前の漁業権はなかつたじやないかというので不利になる、そういうふうな効果はございます。
  34. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 途中からでも御疑問があつたら、一つ質問を願います。
  35. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 第四十五條は、入漁権に関する規定の中では一番重要な規定であります。從つてこの規定は少し念を入れて御説明いたします。  先ずこれの前提といたしまして、第七條、今度の新らしい入漁権の定義でありますが、第七條におきまして、入漁権とは、設定行爲に基いて契約による入漁だけを認めた、從前は慣行入漁権だけであつたが、今度は慣行入漁権は認めていない、つまり慣行だから当然に入漁権があるという制度は、止めたわけであります。一應全部御破算にしまして、一應契約を結ばせる。ところがそうなりますと、漁業権者が強く、相手方が入漁権の設定を求めても拒む、こういう場合が予想されるわけであります。それから慣行入漁権は、慣行だからという理由で認めることはよろしくないのでありますが、その内容は極めて妥当なものがある、むしろ漁業の発展から他人の方へ伸びて行つたということも、むしろ実態に即しておる場合が多うございます。從つてそういう場合には今度新らしく入漁契約を結ばれるときに相手が拒んだということでは、拒まれた方も氣の毒でありますし、又漁業調整上面白くない、これは海区漁業調整委員会が仲に立ちまして、強制的に入漁権煮設定させる、或いは入漁権を変更させるとか消減させる、こういうふうな権限を認めたわけであります。從つて入漁権は一應設定ということであるわけでありますから、一應相手方に話を持つて行き、相手方が拒んだという場合には調整委員会に訴えまして、このような入漁権を設定して呉れということを求めるわけであります。そうしましたら、調整委員会は両者の事情を聞いて裁定を下す、その裁定に從つて入漁権が設定されたとみなす、或いは変更又は消減があつたとみなす、こういうふうにしたわけであります。  第四十六條、第四十七條、第四十八條、第四十九條、この四ヶ條は現行法と同じでありますから、説明は省略いたします。  第五十條は登録に関する規定で、表現を多少変えておりますが、内容的には現行法と同じであります。第五十一條は現行法と同じであります。  以上で第二章の漁業権及び入漁権に関する説明を終ります。
  36. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 今のところで御質問がありましたらお願いいたします。
  37. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 第三十六條の「休業期間中は、第十四條第一項に規定する適格性を有する者は、第九條の規定にかかわらず、都道府縣知事許可を受けて当該漁業権内容たる漁業を営むことができる。」という、この法の精神を一つ少し詳しく御説明願います。
  38. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。これは目的は二つございます。一つ漁場が無駄に遊んでおる。それでは漁場の利用上面白くないから、利用上の見地であります。これは本來ならば休業いたしておりますれば、次の第三十七條によりまして取消すべきが至当でありますが、取消事由に当らないような休業がある。それから取消しまでするのはちよつと酷である、こういう場合もあるわけでございます。從つて或る程度漁業が遊んで無駄にならないようにするということが第一点であります。  もう一つは、これは主として労働者の立場を考えたわけでありますが、今後経営が逼迫し、労働攻勢が強まるに連れまして、経営者が経営を放棄する、今年はもう経営を休もう、こういう場合があるわけであります。そうしますと、労働者としましては一番いたいわけで、お前が経営を休むならば、自分が代つてここえ経営者を連れて來て経営してやろう、このような要求をするわけであります。そういう要求ができるようにといつて、休業期間中でもその人間許可さえあればその漁業を営める。こういうようにいたしたわけであります。この二点が第三十六條を設けました事由であります。
  39. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 そうしますとですね、これは漁業種類によつて違いますが、在る漁場なり、はつきり言うと、漁場に棲息しているところの定着性漁貝草類、殊に海草類の場合においてそれが起ると思うのですが、休業することによつて次の漁場の増産を図るという目途を以て、一應外見上には休業の状態をとるが、次の増産の目的の休業でございまして、つまり言わば輪採法などが考えられる。そういうときもやはり一應の見掛けの休業になるから、この規定が適用されるという危險はありはせんかと思うがどうでしようか。
  40. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。実は第三十六條はそういう場合は全然予想していないのであります。実はその場合は第三十七條漁業権の取消し、これも適用しない、特に今後の專用漁業権、特に海草、貝類等については、わざわざ休むということが非常に多い、その方がいいわけでありまして、そういう場合を予想するのでなくして、第三十六條が発動されるのは定置漁業権限つて考えておるのであります。若し御疑問があればこれを定置漁業に限定いたしても差支なかろうかとも思います。
  41. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 分りました。
  42. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 外にありませんか——。それでは第三章以下を願います。
  43. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 ちよつと待つて下さい。この入漁権のときに、私第何條であつたか記憶ないのですが、今の御説明の中にあつたことを覚えているのですけれども、この慣行による入漁権というものについて考えなくちやならんことはよく分るのですが、慣行でやつてた場合であるときに從來は問題なくやつていたわけですが、今度その慣行というものが全然見られなくて、必要に應じて入漁を申込んだときは認めなくちやならないといつたような意味があつたように思うのですが、何條でしたか。
  44. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 四十五條
  45. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 四十五條ですね。そうしますと、この場合における即ち「入漁権の設定を求めた場合において漁業権者が不当にその設定を拒み、又は入漁権の内容が適正でないと認めてその変更若しくは消減を求めた場合において」云々というやつですね「裁定を申請することができる。」変更又は消減に関する裁定を求めることができる、このところをもう少しどういうところを狙つておるのか、一つもう一遍お願いいたします。
  46. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。第四十五條の第一項は慣行入漁権というものは当然には認めなかつた、その場合の救済がそれでございます。それで慣行入漁権というものは、名前が慣行といつて非常に悪いわけで、古いものは一度御破算になるのだ、とにかく波破算にするという趣旨で慣行人漁権というものを認めなかつたわけでありますが、内容から申しますと、極めて尤もな場合が多いわけであります。慣行入漁権というものは一般に自分の地先以外に延びて行くという場合が多いわけでございますが、そこまで延びて行つたということは、その所の漁民が非常に発展して自分の地先以外に延びて行つたという場合で、今後も入漁権を認めて行つて然るべき場合が多いのであります。大体そういう場合に片方を本権とし、片方を入漁権としたのは間違いであつて、本來ならば入漁権の共有として解決すべきものが多かつたんじやないかと思つておりますが。從つて今後の方針としては成るべく共有にして行きたいわけでありますが、共有では駄目で一旦入漁権の設定を拒まれたときという場合には、第四十五條を使いまして委員会が間に立つて入漁権を強制的に結ばせよう、こういう場合なんであります。
  47. 西山龜七

    ○西山龜七君 私第二章の漁業権を占有者が維持して行くために、経営をして行くために財界その他の変動によりまして、どうしてもその金融上やれないというようなことを何か保護する條項は、この第二章の方では何もないのでありますか。又その他にそういうような場合を考慮して何か織込んであるところがありますか、ちよつとお尋ねいたします。
  48. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。只今の御質問極めて尤もで実はその点はこの法案には欠けております。これは漁業権はどうするかということを決めまして、実体的の裏付は何ら決めておりません、それで一般の批判もこの法律は形だけを決めて何ら実体的なことを盛つていないと、非常に非難が多いわけでございますが、具体的にはこの法案自体に盛るかどうかは別問題としまして、経営の安定につきましては先ず経営自体の実体を十分に明らかにする必要がある、それに基いて或いは漁業保險制度なり、或いは金融措置なりそういう実体的な裏付けをこれから十分に講じて行きたいと思つているわけで、残念ながらそういつた裏付ができなかつたので、水産業者の保護の点から当然包含されて然るべきでありますが、残念ながらそういつたことができなかつたので、裏付を今後どうして進めて行くか、役所の事務的な努力も勿論でございますが、その外に根本はやはり漁民自体の根本的な方で盛り上げて行きたい、こう考えておるわけであります。
  49. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ちよつとお伺いしますが、今江熊委員の疑問の第四十五條でございますが、これは今まで慣行でやつてつた入漁権でその保護規定の御説明がありましたが、四十五條を見れば慣行でなくともどんな人でも入漁権を申込んだ場合に、こういうふうにやらなければならんと解せられるが、どうですか。
  50. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。これはちよつと私の説明が悪かつたので、慣行の関係が多いので慣行慣行と申上げました、慣行だけに限る趣旨ではありません。たまたま慣行の場合を持つて來ただけでありまして、今まで慣行がなくともこれからは入漁権を認めて行つて然るべきであるという場合にはこの規定を適用して行きたい。こう思つております。ただうつかりその点だけ強調して言つたために慣行慣行と申上げましたが、若し誤解がありましたれば訂正いたします。
  51. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) それでは第三章に移ります。
  52. 松元威雄

    説明員松元威雄君) この第三章は指定遠洋漁業で、聊かこの法全体の趣旨からは立法精神を異にする規定でございますので、一番後に廻して頂きたいと思います。
  53. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) それでは第三章は後に廻して第四章に移ります。
  54. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 第二章に続きまして、第四章の漁業調整の章に入りたいと思います。大体漁業調整と申しますのは、この法案全体が漁業調整のことを決めた法律であつて漁業権というものも漁業調整の一つの手段なんでありますが、從つて第四章だけに漁業調算とい名目を付けますのは、内容的に嚴密に申しますとおかしいわけでありますが、一應漁業権に関する規定が厖大でありますので、それだけを別に漁業調整と規定したわけであります。併し内容はむしろ全部ひつくるめましてこれ全体が漁業調整ということを決めた規定である。そうして漁業調整委員会というのはこの漁業調整をどうやつて行くか、その調整をする機関を決めた規定だと、こういうふうに御了解になつて頂きたいと思います。先ず第六十五條漁業調整に関する命令でありますが、これは現行法と殆んど同一であります。現在これに基きまして各種の漁業取締規則ができておりますが、この法案におきましても、從來とその点は同樣にいたしております。罰則の関係その他で多少変更はございますが、内容は大体同一でございます。ただ違います点は一つ、第六項におきまして第一項の規定によつて漁業取締り規則を作る場合には必ず縣の連合海区漁業調整委員会意見を聞け。知事が勝手に決めてはならんということを特に謳つております。第六十六條の「許可を受けない地びき網漁業等の禁止」これは内容上はそうに重大ではございませんが、非常に意味がお分りにくいかと思いますので、多少経緯を御説明いたします。これは第六條第五項におきまして、共同漁業権というものを認めたわけであります。この共同漁業権協同組合でなければ免許をしない、そうしますと、協同組合に入つております組合員でなければ共同漁業内容たる漁業を営むことができない、こうなつて参ります。ところがこの共同漁業の中には第一種の根付漁業は先ずよいといたしましても、第二種、第三種、第四種、第五種、これらにつきましては、組合員でなければやつてはいかんということはちよつと実情に即しない点もございます。例えば第二種の小定置を例にとりますと、從來よその村から來て漁業をしておつたという場合もございます。その場合地元の組合員でないからお前はやらせないのだ、こうなりますと、聊か問題がございますので、勿論こういう場合には入漁権の設定等によりまして措置し得る場合もありますが、それ以外には入漁権ではいけないのであつて、よその村の特定の個人が経営しておつた。今度その個人に或る程度経営を認めるのが至当であるという場合もあり得るわけです。こういう場合も予想されるわけであります。そこでそういう場合には一應第六條第五項第二号から第四号までに掲げる漁業知事許可漁業にいたしまして、若しやりたい人間許可を受けろ。併しながら共同漁業権免許を申請した場合には共同漁業権として與える。そうした場合には免許はいらないと、こうしまして、そこを共同漁業権漁場として地元の組合に與えるか、それとも多少の場所を保留いたしまして、そこを他の個人許可を受けた人間にやらせるかということを具体的な免許の場合の情勢判断によつて決めるようにいたしたわけであります。そういう内容を持つておるわけであります。從つてこの規定を余り発動しますというと、いわゆる地元の協同組合の力が非常に弱まる。何も組合に入つていなくても勝手に知事の所へ行つて許可貰つてできるということになつては困りますから、相成るべくならば、この規定は余り発動いたしたくないと、こう思つております。共同漁業権の範囲を拡げましたことに関する員外者の保護の規定というわけであります。それからこれもちよつとお分りにくいかと思いますが、但し共同漁業権内容となつている場合及び都道府縣知事の定める場合、この都道府縣知事の定めると申しますのは、この第二号から第四号までの漁業は大体が許可漁業でありますが、縣によりましては必ずしも許可を要しない。自由でよろしい。こういう漁業もございます。それを縣によつて許可を受けることを要しないというふうに都道府縣知事が決める。まあ決められるようにした規定でございます。この法案は地元の協同組合共同漁業権というものを或る程度持たせましたために、そうして組合が任意加入でありますために、いろいろと員外者の保護の規定を用けておるわけでありますが、これもその一つであります。  第六十七條、海区漁業調整委員会の指示、これは非常に重要な規定でありまして、実はこの規定が、この法案会体の眼目になつておる規定であります。これは今度の新らしい漁業制度全体の構想でございますが、從來漁業におきましては、漁業権というものを中心にして、漁業権を私人に與える。そうして権利権利によつて漁場の秩序を作つて行く。こういうのが現行法漁場制度の建前であります。それに対して今度はそういうふうな、個人漁業権を與えて、権利権利で維持して行く、そういう私的な規律はやめてそうでなくて委員会というものを相当廣い水面を單位として、具体的には一縣内に三つ乃当四つ置きまする海区でありますが、そういう相当廣い水面を單位としまして、そこに委員会を設置する。その委員会が全権を握つてそこの漁業調整を図つて行く、こういう建前が今度の法案の骨子なのであります。但しこの法案はその思想を必ずしも全面的には貫いたのではなくて、多少いろいろと妥協をいたしております。一番理論的に申しますれば、そもそも私権であります漁業権を與えて、漁業権漁業権で律して行くということは、いわば私的秩序でありまして、それが漁業権の物権としての独占排他性、それに伴う弊害を考えますと、こういう漁業権によつて漁場を規律して行くということは、理論的には望ましくないわけであります。これは日本人全体の問題でありますが、一番意識が進んだ場合にはむしろそういう私権、権利というものを一切なくしてしまつて、むしろ公の規律によつて物事を律して行くという方が正しいわけであります。そこで今度の漁業におきましても、一番徹底した形は漁業権という、そういう私権を一切なくしてしまつて、漁民による漁場管理と申しますか、漁場ごとに漁場管理委員会、調整委員会ではなくて、漁場管理というものを設けて、この管理委員が、そこの漁場の秩序を決めて行く、誰にどの漁場をどう使わせるかを決めて行くということにすれば一番すつきりするわけでありますが、現段階として一挙にそこまで行くことはどうしてもできない。全般的に私権を認めておりますし、又漁業権を與えて、漁業権の力によつてつて行く、自主的にやつて行くということが、具体的には、今の段階としては、うまく行くために或る程度それを認めて行く。併しながら從來のように漁業権が絶対であるということで秩序を維持して行くことはやめまして、一應漁業権を與えるが、それに対していろいろな制限を加える。その制限の具体的な方法は第六十七條であります。從つて海区を單位として海区の漁業調整委員会というものがある。その調整委員会免許をする、或いは許可をする場合に実際上その免許許可の権限を握つておる。免許許可認可を與えましたあとでも第六十七條によつていろいろ指示しまして、漁業権の交渉を制限する。こういう建前にしたわけであります。そうして特定の漁業につきましては、この委員会の指示だけで規律かるのではなくて、委員会の下部機構としまして、市町村乃至部落單位にできる漁業協同組合、これに共同漁業権、或いは特別の許可漁業権を持たして、その範囲内では地元の協同組合にそこの漁場管理さして行く。そういうような下部機構として協同組合作つて行こう。こう考えておるわけであります。そういう委員会による調整のシステム、これの具体的な形式がこの六十七條委員会の指示というわけであります。第一項で「海区漁業調整委員会又は連合海区漁業調整委員会は、水産動植物の繁殖保護を図り、漁業権又は入漁権の行使を適切にし、漁場使用に関する紛爭の防止又は解決を図り、その他漁業調整のために必要があると認めるときは、関係者に対し、水産動植物の採捕に関する制限又は禁止漁業者の数に関する制限漁場使用に関する制限その他必要な指示をすることができる。」これを一口に申しますと、漁業調整上必要があれば指示ができる、こういう非常に廣汎な権限でございます。從つて漁業権を持つておりますからといつて、それを自分勝手に使つていいかというと、そうは行かない。從つてお前の漁業権の行使はこういうふうにしろと指示して、制限を受けるわけであります。若しもこの委員会がおかしな動き方をすると、漁業者は非常に漁業権制限を受けて、漁民のためにならないようにしてしまうことも考えられるわけであつて、今までもずつとその度ごとに触れて來たわけでありますが、委員会の如何ということは、新らしい漁業法の死命を制する、そういうわけであります。第三項以下は、この指示に対して或る程度都道府縣知事制限を加える規定であります。と申しますのは、調整委員会が指示をしましたからといつて、それが直ちに法的効果を生ずるわけでない。例えば具体的に、お前の漁業権はこういうふうに行使しろ、或いは共同漁業権に対して、お前の漁場に隣村の住民が海草を取りに入つて來る、そういう入漁を拒んではならん、こういう指示をする。それに対して違反したという場合にも、直ちに法的効果はない。その場合に海区委員会知事に対して、違反者に対してお前は指示に從えという命令を出して下さいということを申請するわけであります。知事が尤もと思つたならば、お前は調整委員会の何月何日附の指示に從へ、こういう命令を出す。その命令に違反した場合に初めて罰則が加わる。最後の権限を知事に持たしたわけであります。同樣な理由で、犯した場合には知事が全部又は一部を取消させる。最後の決定権を知事に持たせる、こういうような構成になつております。これに対して、これは官僚勢力の温存である、むしろ知事の権限を全部御破算にしてしまつて、全部委員会が決定した方がよい、そうすべしという意見も非常に強うございます。これは敢てこの第六十七條ばかりでなく、漁業権免許、或いは許可にいたしましても、すべて決定権は知事に残して置くということは不徹底で、委員会を全部決定機関にしろという意味も相当あるわけであります。まあ立法者としましては、一應事務的に考えまして、現段階においては、或る程度形式的にせよ、知事に権限を保留して置いた方が妥当であろうと考えたために、決定権は知事に残したのでありますが、この点はどちらがよいか、從つて決定機関にした方がよいかどうか、委員会において愼重に審議を願いたいのであります。この指示が従つてどういうふうに具体的に動くか、これによつて新らしい漁業調整ができるかできないかの境目になるわけでありまして、こういう新らしい方式につきまして、一つ具体的な御檢討をお願いいたしたいと思うわけであります。  第六十八條、第六十九條、第七十條、第七十一條、第七十二條、第七十三條、これは現行法と殆んど同じ規定でありますから、説明は省略いたします。  第七十四條は漁業監督公務員に関する規定であります。これも大体同樣の趣旨現行法規定してございますが、今度違います点は、從來漁業監督吏員、これは何時でも臨檢、捜査、押收の権限を持つていたわけでありますが、これが、新憲法の趣旨からしまして、あのように無制限に認めるのは、聊か妥当を欠くというわけで、今度は任命につきましても、行政廳は勝手に任命するのじやなくて、地方檢事正と協議をして、指名した者に限つてそういう主要権限を持たせる。その手続は從來は現在の國税反則取締法に相当するものによつておりましたのを、これも一般の刑事訴訟法の手続によらせるというふうに、十分主要権限を制限と申しますか、むしろはつきりさせたと言つた方がよいかも知れませんが、從來と多少変えたわけであります。第四章の説明を終ります。
  55. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 第四章についての質問をお願いします。
  56. 田中信儀

    ○田中信儀君 第七十條の採捕した水産動植物の所持又は販賣というのは、採捕する目的を以てした人に限つておるのですか。誰でもこれは所持したり販賣したりすることは禁止してあるんですか。
  57. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。これは敢て採捕した人間に限りません。採捕した人間から将つてつておる人間も含んでおります。併し勿論それが罰則までかかるかどうかはこれは別問題でございますが、一應は含むわけでございます。
  58. 田中信儀

    ○田中信儀君 そうすると、警察なんかに取上げて市場なんかに出す場合にはどうなりますか。全然放棄してしまうのですか。所持したものを取上げて警察なんかで多量のものを市場なんかに出すということが……
  59. 松元威雄

    説明員松元威雄君) そういう場合は想像していなかつたわけでありますが、一應これは現行違反規定でありますから、今までの採用状況を念のためもう一應調査いたしてみます。
  60. 尾形六郎兵衞

    尾形六郎兵衞君 只今の御説明にもありますように、今後は漁業権に関する一番大きな問題は漁業調整委員にあると思います。こういう権限を與えた漁業調整委員の人選につきまして、実際問題としては容易ならんことと思いますが、これに対して当局としてはどういうふうにお考えになつておられるか。この委員の適格者がなかなかあるかないかということについても、これを見ると、殆んど專門にこれに掛つていなければならないと思うのです。会があるのみならず、絶えず調査研究をして、そうして事ごとに起る問題に対してこれを協議し決定しなければならん。今の構想は非常にいいけれども、果してこれを生かしてやり得るかどうかについては非常に疑問に思つておりますが、どういう見通しであるか、一應お聞きして置きたい。
  61. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。おつしやる通りこの調整委員会は具体的にどういうものができ上るか、これにつきましても当局としての見通し如何という点でございますが、これは実は打明けて申しますと、どういうものができるか、一應予想は勿論立たんわけであります。それでこれは委員会の構成にも触れるわけでありますが、この構成は一應漁民の選挙する委員七名、知事の選任する委員三名というふうにして、純然たる公選委員だけには止めなかつたわけでございます。これにつきましては賛否両論あるわけでございますが、これは日本人全体の意識の問題、民主化の問題とも絡む根本問題でございますので、これを漁業だけ取上げてどうこうと言うことはできないわけでございますが、建前としては選挙によつた人間につきましては、むしろ思い切つて信頼して行こう、たとえ過渡的に何か無茶なことをするというような場合がありましても、成る程一時は無理が通つてもそう長く続くものではない、從つて運用を通じて段々と順当な運営方法になるのじやないかというふうに期待しているわけであります。勿論この期待が甘いかどうかにつきましては、いろいろ具体的な御批判があるとは思いますが、一應は選挙された人間は立派な人間である、たとえ仮に間違つても、それは漁民が全部監視しているから、徐々に直されて行くというふうに信頼したわけでございます。この信頼まで疑いますと、民主政治自体に対してもいろいろ問題になつて來る点で、思い切つて任した方がいいのじやないかと思つたわけであります。
  62. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 第四章に質問がなければ、一時休憩いたします。午後一時から再開いたします。    午後零時二分休憩    —————・—————    午後一時十四分開会
  63. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 引続いて開会いたします。第五章に移ります。
  64. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 第十五章の免許料及び許可料について御説明いたします。この章の條文は全部今度新らしく入りました分でございます。從來免許をいたします場合に、別に免許料というものを取ることはなかつたわけでありますが、今回新らしく免許した場合は免許料を取る、許可をした場合は許可料を取る、こういうふうにいたしております。何故免許料及び許可料を取るかと申しますと、この考え方は、最初に免許料、許可料を取ろうと考えた時分と大分変つております。一番最初に免許料、許可料をなぜ取るかということを考えました折には、大体今度の漁業というものは、原則として個人免許される、そうした場合に漁業権というものは数が制限されておりますと、一定の漁場を独占するわけでありますから、通常の平均利潤以上に超過利潤というものがあり得るはずである。これは勿論理論的な形でございまして、現実に超過利潤があるかどうか、一々の定置網についてそういうものがあるかどうか、これは一應別問題でございます。理論的に申しますと、資本主義社会におきまして平均利潤というものがある、これは数が制限されております。免許とか許可につきましては、平均利潤をオーバーする超過利潤というものがあり得る。又現にそういうものがある所があるというわけで、その超過利潤というものを一旦國で取つて、これを漁業に使おうというのが一番最初に許可料、免許料を取ろうという理論的な根拠があつたわけであります。併しながら現実に漁業権につきまして、そういう超過利潤というものは果してあるかどうか、これは経営の内容を分析して見ないとはつきり分らない次第でありまして、特に漁業というものは、実際生じて來ているはずの超過利潤というものは、実際の経営においては、むしろ商人や高利貸の手に入つているんじやないか。実際の経営内容はどうであるかということをもう少し檢討を要するという点もございまして、実際の超過利潤は國で取つて、これを漁業に投資しようという考え方が、段々と変形して來たわけであります。現在の免許料、許可料はむしろそうではなくい、目的から申しまして、今度漁業権に対して補償をいたします。この補償資金を賄うためのものが一つと、もう一つは、漁業法を施行しますについて、調整委員会でありますとか、或いはその他中央及び地方の役人を殖やします、その役人に対する行政費、こういう行政費を賄うというふうに、非常に変形したわけであります。現在の法案では、漁業免許を受けた者は免許料を拂う、許可を受けた者は許可料を拂う、それはどういう額であるか、どういう拂い方をするかというようなことは、施行規則で決めるつもりでおりますが、そうして免許料、許可料で、七十五條第二項でありますが、先ず第一に漁業権の補償に要する費用、これを賄い、次は調整委員会の費その他の行政費用を賄う。こういうふうになつておるわけであります。それから遠洋漁業につきましては、これは直接補償とも関連がございません。又調整委員会その他は多少勿論関係しておりますが、大部分は沿岸漁業に関するものである。從つて遠洋漁業からは、大体沿岸漁業漁業者と同じような負担度合で許可料をとるわけでありますが、その許可料を何に使うという目的は決つておりません。  このように免許料、許可料を取つて補償金を賄う。更に行政費まで賄うということにつきましては、非常に反対がいろいろございます。先ず補償金につきましては、むしろ免許料を現金で納めるくらいならば補償金は要らない。紙に書かれた補償金を貰つて、現金で納めるならば、無補償、無免許の方が実際的であるという意見も非常に強いわけであります。これは理窟から申しますと、漁業権を定めて、それに補償金を與えまして、そうして免許した人間から、免許料を取るということは、農地を國で買上げて、小作人に賣渡す場合とは、形は違つておりますが、内容から申しますと、一旦國で納めて、それを又新らしく與え直すという意味で、農地の買收、賣渡と似ていないこともないわけでありまして、今申しましたように、無補償無免許の実際的な主張があるわけでございますが、先ず補償金を賄う分についてはそれ程反対もあるまい、むしろ補償金の額自体の方が問題になるであろう、こう思つておりますが、併しながら行政費を賄う分につきましては、まだこういう前例はございません。農地の例を取りましても、農地委員会というものは、費用は全部國で賄う、況んや農地改革を実行するために殖やした役人の費用を、農民から取上げる費用で賄うということはないのでありまして、今度の漁業改革についてもこういうことを認めております。これは事務当局としましてもいろいろ交渉いたしまして、最初は國家財政窮乏の折から多少免許料、許可料で賄うのもよかろう、一部負担してもよかろうという話であつたのでありますが、それが今度まあ段々変形して來まして、國家財政の見地という点が一つと、それからもう一つは農地改革と違いまして、これは永続的に続く委員会である、而もこの委員会によりまして、漁民は実際利益を受ける、そこで受益者負担思想におきまして、漁民に負担させることもまあ止むを得なかろうというので、これに落着いたわけであります。併し漁民としましては、このような行政費を賄うということにつきましては、非常な反対がありますので、これを如何にいたしますか、これは委員会において愼重に審議して頂きたい、こういうふうに思つております。実際免許料、許可料の負担はどれくらいになるかということは、お手許にプリントを配布してございますが、現在の机上の計画によりますと、大体平均しまして、水揚高の三・六%くらい、これを全体に平均しますと、定置漁業につきましては、特に重くて大体水揚高の五%くらい、共同漁業が二%内外、平均して三・六%、このくらいの負担になるだろうと思います。これはまあ机上の数字でございますし、それから実際債許料を取りますのは、二年後でありますから、果してこうなるかどうかは分らないのでありますが、一應そういうように推定しております。若しも補償金と委員会その他の行政費を賄うわけでございますが、その額が漁民の負担能力を非常に超えると、例えば水揚高の六%になつた、七%になつたと、非常に負担能力を超える、こういうふうに認められます場合には、全部は負わない、負担限度において負つて、その後は一般國民から出して貰う、このように了解いたしております。実際免許料を取りますのは、二年後でございますから、それまでの間の行政費は、当然一般会計から出すことになつております。  それからこれは念のためでございますが、沿岸と別にして、許可料を納めまする遠洋漁業と申しますのは、第三章に規定してあります指定遠洋漁業とは別でございます。例えば指定遠洋漁業でございますと、「かつお」「まぐろ」漁業は百トン以上でございますが、この方の免許料、許可料は二十トン以上の普通の「かつお」「まぐろ」漁業も含んでおります。從つて現在の法案におきましては、最初に事務当局が考えました平均利潤は、超過する分の超過利潤を國に納めて漁民に還元するという、当初決めた平均よりも超過した利潤を取るという思想は非常に変形されまして、行政的の補償金を賄うとか、委員会経費を賄うというように非常な変形を受けたわけでございます。  第七十六條は減免に関する規定でございます。一應事前に免許料を幾ら納めるとこう決まりましても、この年の漁況でありますとか、或いは災害があつたとか、経済事情が著しく変りまして、負担能力が非常に減退したと、こういう場合に最初決めました免許料をそのまま徴收するのは非常に酷な場合があります。そういう災害が全國に亘るような、又全國でありませんでも、相当廣い地域に亘ります場合でありますならば、七十六條第一項によりまして、中央漁業調整審議会が免許料の徴收を緩和してくれということを申請いたします。政府が必要であると認めました場合には、負担を軽減するための措置を講ずると、こういうようになつております。これに対しまして、そういう全國的とか、全國的でなくても、相当廣い地域に亘る事由でなくて、個別の理由で、例えば自分の網が流れてしまつた、或いは自分の網だけ非常に不良であつたという場合には、海区漁業調整委員会に対して、自分の拂う免許料を少し負けてくれということを申入れ、海区委員会は政府に申請をいたします。委員会が尤もである、本人は非常に努力して経営に苦心したけれども、止むを得ない事由でもつて網が流れた、從つて負担をあのままにするには忍びないという場合には、政府に対してその人間免許料を緩和してくれという申請をいたすわけでございます。若し政府が尤もと認めますならば、負担を軽減するための必要の措置を講ずることができると、こういうふうにして減免の措置をとつております。但し具体的にどのくらいになつたら減免するかということは、これは農地の場合でありますと、その土地の收穫とか或いは税金とかを考えまして、一定割合の以上になつたら軽減するという、はつきりと順を示しておりますが、漁業の場合でありますと実はまだそこまで調査が行届いておりませんので、一應軽減ができるのだという根拠規定だけ置きまして、実際問題となりましたどのくらいになつた場合にどのくらいの軽減をするということは、次の研究に待ちたいと思つておる次第でございます。  第七十七條免許料の徴收を市町村にさせることができると、こういう規定でございます。一應國に納めます免許料でありますから、原則は直接國に納めるべきでありますが、手続上市町村に納めることもできるということにしたわけであります。  第七十八條は若しも免許料を納めなかつた場合の督促及び滞納処分に関する規定でございまして、大体國税滞納処分の例に倣うということにいたしております。  それから第七十九條、これは非常に細かな規定でございますが、万一免許料を拂い切れなかつた。そうして破産をするようになつた場合に、免許料、國税、地方税その他の政府に対する支拂、或いは又一般の税が全部競合した場合の免許料の順位でありまして、先取特権は國税に次ぐものだと、こういうふうにいたしております。  第八十條は書類の送達に関する細かな規定でございます。全般的にこの免許料、許可料と申しますものは、結局こういう経営内容を十分調査して、実態は果してどのくらいの免許料の負担能力があるか、又税金との関連、又非常に税金で收奪を受ける、その上に更に又免許料を納めなければならん、こういう実態であるかどうか。大体はそういう実態であるわけでありますが、そのために、免許料を取るためには、一應税金の負担の軽減をして貰わなければならん、どうせ取られるにいたしましても、免許料で取られた方が、まあ多少は直接に漁業に還元されるわけで、税金のために一般に取られるよりも、漁業のためになるというので、又免許料で災害補償制度を設けるとか、特別の漁業の利益のことも考えられるわけでございまして、その辺のことを全般的に考えまして、実際の免許料額を決めて行きたいと、こう思つておるわけであります。從いましてこの免許料を取ります理由、それから実際問題の漁民の負担能力を考えて、どのくらい取つたら妥当であるかどうかという点につきましては、委員会におきまして愼重に御審議をお願いいたしたいと、こう思うわけであります。
  65. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 第五章について、御質問がありましたらお願いいたします。
  66. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 ちよつとお尋ねしますが、七十五條の場合におけるいろいろの免許料、許可料の、あなたの方の机上計画における補償金の総額、免許料の二年後における総額というものの見積りは、大体どの程度になつておりますか。
  67. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 一應その数字は印刷にいたしましてお手許にお配りしてございますが、念のために申上げてみますと、補償金の総計が年間漁業で大体百六十億、それからこれに利子を加えまして、利子の額が、一應二十五年償還というように仮定いたします。そうしますと、利子の総額が百二十四億、合計いたしまして、大体二百八十四億になると、これを二十五年で償還いたしますから、一年分が十一億三千六百万円、こういうふうになります。それから行政費の方でありますが、これは大体三億二千万円、こういうふうに予想いたしております。そうしますと、一年に大体十五億近くの免許料、許可料を取らなければならないというふうになつて來るのであります。これが大体取れます漁獲高でパーセンテージにして見ますと、平均三・六%、その中で定置であつたら五%くらいになるというわけであります。
  68. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 それから七十七條免許料、許可料の徴收を市町村に大体委任するということですが、それは從來つておるように、これは相当手数料か何か出してやらせるわけですか。
  69. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 一應市町村にさせることができるということを規定しておきましたが、実はまだ果して市町村を使うかどうかということは未決定であります。使う場合は、勿論手数料を市町村に交付いたします。
  70. 尾形六郎兵衞

    尾形六郎兵衞君 今の免許料並びに許可料というものは、大体それを取つて、補償額の償還並びに行政費を賄うという話であるが、当局では相当利潤があると、而も平均利潤より超過利潤まであるというお見込みですが、実際漁業の経営というものは、なかなか近頃特に利益というものはなくなつてしまつた。特に松元事務局のお話によると、定置のような所では自由競爭でなく、独占的な仕事になるから、確実に利益が收め得るというような見通しもありますが、実状はなかなか容易でないということを頭に入れて考えて貰わなければならん。そうしますと、相当にこの年に十五億の免許料、許可料を取るということは相当難儀じやないかと思います。それから又漁業を提供した人が、二十五ヶ年ですか、長い間の、つまり償還を受ける、政府に買收して貰つて償還を受ける。こういう貨幣價値の変動が相当激しいときですから、二十五年間これを待つということは非常に不安定である。そういうことによつて、なかなかこの法律案に盛つたことを実現させるということは実際の漁業経営、或いは経済上の事情からして容易でない。損を來たしやしないかということを私は恐れるのであります。これが遂行できないときは、相当変化というものがあると思うが、どの程度まで当壁はこの実施に当つてつて行くのか、或いはこういうことについてこれは関係方面からも、こういうような意向でもあつてつたのか。その点をちよつとお伺いしたい。
  71. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。先ず第一点で、先程私が平均利潤を超える超過利潤云々ということを申上げましたが、これについての御疑念でございますが、これは先程の説明でもお断りしてありますが、理論的にはそういうものがあると、併しそれが現実には漁業資本の経営であるか、それとも商業資本或いは高利貸資本であるかどうかは、これまでの漁業経営を調べなければならんと申したのであります。而も現実には、漁業経営は商業資本、或いは高利貸資本等によつて経営がむずかしいのじやないか。なぜこれを理論的に云々ということを申上げたかと言うと、これは一應資本主議社会におきましては、自由競爭が原則でございます。資本は自由に利潤が得られるところに動く。利潤がなくなるとそこから他に轉ずる。だから利潤の平均というものが起る。ところが定置漁業は、仮に利潤があつても、他から轉じようと思つても自由に轉じ得ない。つまり定置を経営していると利潤を多く生ずる筈である。多く生ずる筈であるということを今一度念を入れて申上げますが、理論的にはそうなるわけでございますが、必ずしも現実には資本主義が行われていない。資本は利益が多い方に集まつて、損する方から引上げられるというような経済上の理論通りには行つていないから、現実の理論はそうであるかどうかということは疑問がある。これについてはその内容の調査によつて判然とさせて行きたいと、こう思つておるわけであります。併し確かに、現実に漁業経営を見ますと、非常に苦しいのでありまして、今十五億の、果して負担ができるかどうかということは疑念を持つております。若しもそれが負担能力を超える場合には、七十五條の第二項でございますか、免許料、許可料は漁業者の負担能力を超えると認められる場合はこの限りでない。この補償金、委員会経費を全部賄う必要はないと、それで但し書を入れてあります。こういうようにして、無理に負担を負わしめないように措置を講じてあるわけであります。それから二十五年償還の点についてでありますが、これも成るべくならば、二十五年といわずに、願わくば一年で、現金で返したいわけであります。併しながらそれは財政上の見地から、只今百六十億の金が一挙に出るということは、全体の見地からいつて、これは期待できないわけであります。併しこれを極力進めたいということを考えておるのでありまして、今一應二十五年ということを申上げたのでありますが、これは一應の予定数字でございますが、法文では三十年以内においてと、以内でありますから、何年にするとも差支ない。これは今後の二年間のインフレの進行の見通しから考え合せて、決して二十五年と決つたわけではございません。勿論これを多少二十五年なり、十年に縮めましても、尚且つ一應拂われなければならない。インフレがあるという話でありますが、インフレの問題については敢てこの問題だけでなく、全体の問題であります。例えば十年前に保險に入つてつたが、今となつてはそれがほんの紙きれにしかならなかつた。インフレは全体の問題でありまして、その他労賃につきましても問題がある。從つてインフレに対して貨幣價値をどう考えて行くかということは、根本問題を解決しない限り、ここで直ちにどうこうするということは根本的には言えない。併しながら成るべくそういう影響のないように、負担能力に耐え得る限りは、二十五年ということは縮めて行きたいと、そういうわけで、一應計算上二十五年とした場合どうなるか、十五年にした場合どうなるか、いろいろ計算してあります。併しただこれは七十五條によりまして、補償金を免許料で賄うということが建前になつておりますために、あまり一挙にそれを縮めますと、免許料は高くなるわけでございます。從つて免許料と補償金とをからみ合せて、この免許料の取り方と補償料償還の決め方ということが問題になるのでありまして、この点をどうするか、これはこのままにして、償還年数を縮めるということはちよつとむずかしいことかと思つております。成るべくならば、十二年くらいに縮めたいと思つて、その数字も計算はしております。
  72. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 七十五條の第二項のその合計額が左に掲げる費用の合計額とおおむね等しくなるように、毎年、定めなければならないこの意味を少し説明して頂きたい。
  73. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。これはいろいろ経緯があるわけでございますが、最初事務当局といたしましては、先程理論的な超過利潤、これを取ろうと考えたわけでございます。その場合にその方面からそういう超過利潤というものも現在の社会では当然漁業権者が納めてよいものだが、超過利潤をまるまる取ることはまかりならんという話がありまして、目的をむしろ限定しろといつて全体の免許料の総額、個々の免許料、まあ漁業権が何万円とあるわけでございます、その一つ一つ免許料を合計しまして、そのトータルが補償の費用と行政費とブラスしたものに等しくなるように決めろ、その枠然でどう決めるかは自由であるというふうに、総計を等しくするように押えられたわけであります。從つてこの枠内で具体的にどの漁業権の價値はどうだということは、これから決めて行く問題でございます。
  74. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 そこで重ねてお尋ねいたしますが、毎年定めなければならん、毎年定めるのは許可料、免許料である、こういうふうに解釈して差支ないわけでございますか。
  75. 松元威雄

    説明員松元威雄君) そうでございます。免許料、許可料は毎年々々決めるわけでございます。
  76. 尾形六郎兵衞

    尾形六郎兵衞君 さつきの問題と関連して、もう一言お聽きしたいのですが、補償、つまり漁業権の補償金額ですね、これはどういう債券の名目で出されるか、これは國家の補償というような形でなされるのかその点について一つ……
  77. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。國家補償という形でいたします。
  78. 尾形六郎兵衞

    尾形六郎兵衞君 名前は……
  79. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 名前は実際に渡します金は漁業権証券という形の証券で渡します。その性質は農地証券と同じでございます。
  80. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 外にありませんか……。ありませんければ第六章に移ります。松元事務官四時頃までに全部終るようにお進め願います。
  81. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 第六章は漁業調整委員会の構成に関する規定でございます。今までの説明によりまして、この漁業調整をする機関は調整委員会である、新らしい漁業制度が成功するかしないかも委員会の如何によつて決まるということを申上げたわけでありますが、その構成をこれで決めております。この中で重要なる條文といたしまするのは先ず第八十四條の「海区漁業調整委員会は、海面につき主務大臣が定める海区に置く。」この海区は大体一縣を三つ乃至四つぐらいに分けるつもりでおります。この海面の中には琵琶湖、霞ケ浦というような海に準ずる内水面を含んでおります。  第八十五條はこの委員会の構成に関する規定であります。委員会原則として、委員十名で構成いたしますが、その中七名は漁民が選挙する委員、三名が知事が選任する委員、その三名のうち二名は学識経驗がある者の中から選任する、一名は海区内の公益代表から選任するということにいたしております。これにつきまして、むしろこういうような知事選任委員というものをやめて全部公選にしろという要求もあるわけでありまして、これは委員会の運営方法とも睨み合せまして、御審議願いたいと思つております。それからこれは委員ではございませんが、委員会には專門委員というものを置きます。專門委員は勿論正式の委員ではありませんから、議決権はございませんが実際上はこの專門委員が、いろいろ專門的知識を委員会に述べて、この專門委員の知識が事実上の決定になることが多かろうというふうに予想しております。これはあとの選挙の場合に絡む問題でございますが、この委員の選挙は海区全体の延べ選挙でございまして、地区代表或いは業種代表或いは又階層代表という制度を取つていないわけでございます。從つて或る業種によりましては、全然代表が出ない、例えば定置から誰も出なかつたという場合も予想されるわけでありますが、その場合は定置の人間を專門委員にしておいて、この專門委員制度を活用してたまたま定置の人間が出なくても、定置におかしな運営決定はしないようにするというふうに運営して行きたいと思つております。委員会ではその外に事務局といたしまして書記又は補助員で置くわけでございますが、この專門委員と書記又は補助員だけでは事務局は非常に貧弱でありまして、全体の運営の仕方としましては大体縣の水産課というようなところが委員会の事務局になつて進んで行きたいと、こう考えておるわけであります。  第八十六條は選挙権及び被選挙権に関する規定でありますが、選挙権を有しまする者は、海区に沿う市町村に住所又は事業場を持つておるということ、これが一つ。それから一年に九十日以上漁船を使用する漁業を営むか、或いは漁船を使用する漁業に傭われて水産動植物の採捕、又は養殖に從事する者、この二つが要件になるわけであります。一年に九十日を云々と言いますのは、この趣旨は相当程度漁業で飯を食つているという意味でございます。実際上の問題としましては一々、何日沖に出たかということをつけておるわけでありませんし、選挙人名簿を作りますために、九十日以上か以下かといつて細かな論点は起ることかと思つておりますが、その点は漁民の社会通念に任せたい、どうせ一々理窟を言いますと切りがない、どういう線を引きましても農地のように三反歩以上というような明確な線は引き得ないわけであります。そこで九十日ということを一應基準にしまして、通念としては相当程度漁業で飯を食つておるという基準で決めて行きたいと考えております。從つて考え方が相当漁業を飯を食つておるという意味でありますから、特定の漁業におきましては、漁船を使わん漁業でもよろしい、例えば海女のようにもぐつて採る場合でもかまわない。それから九十日でなくても八十日でもよろしい、場合によつては九十日では不足で百二十日でなければならない、こういうことも決め得るようにいたしておるわけでございます。  八十七條以下九十四條までは選挙に関する規定であります。この選挙に関する規定は、大体地方自治法の縣会議員の選挙方法を準用いたしております。で條文の体裁といたしましては、成るべくこの法律を読む者に、直接読んでほしいと思う條文は一々書き上げまして、それから非常に技術的な規定は第九十四條でございますが、地方自治法の準用というふうにいたしてあります。全体の構成は地方自治法の縣会議員選挙と同じでありますから説明は省略いたします。選挙の管理は縣の選挙管理委員会でやる、それから選挙人名簿を作るのは市町村の選挙管理委員会で作る、こういうふうにいたしております。恐らく市町村の選挙管理委員会が、選挙人名簿を作る場合に、いろいろと思いますから、而も選挙管理委員会漁業の実情というものをよく知らないわけでありますから、その諮問機関という形で漁民から出す非公式な委員会でも作つて運用して行こうと考えておるわけであります。それからこの選挙法の特質といたしまして、選挙区ということは採つておりません。農地のごとく階層代表という制度も採つておりません。海区一円の延べ選挙であります。延べ選挙にいたしましたことにつきましては、むしろ実際問題としては委員会は地区帶別にしろ、はつきり地区代表というものを認めた方がいいのではないか、或いは又委員会は業種代表にしろ、特に特定の業種が沢山出て、他の業種が出ないという虞れがある、從つて業種代表にすべきである、これでは零細漁民の委員は出られない、それでやはり農地のように経営者が何名、独立小生産者が何名、労働者が何名というように階層別にすべきであるというようないろいろな論があるわけでありますが、いずれも尤もな節があります。大体この委員会と申しますのは、特定の利害代表という形でなくて、むしろ公平な立場から海区全体のためを考えて行動する者、こういう者を委員にいたしたいと考えて、利害代表制度を止めたわけであります。理窟は海区全体のために公正な人間といううことになるわけでありますが、実際問題としてはいろいろ問題があるわけであります。  第九十五條兼職の禁止。「委員は、都道府縣の議会の議員と兼ねることでがきない、」この意味は、大体立法と行政の分離という意味でありまして、海区委員会というものは大体縣の行政機関のようなものであります。行政権に立法機関がタツチすることはおかしいということで、縣会議員は兼職できないということにいたしたわけであります。  第九十八條に委員の任期を二年というふうに決めております。二年につきましても或いは長いとか或いは短いとか、いろいろ議論がございます。第九十九條及び第百條は委員を解職できる場合の規定をいたしております。第九十九條はリコール規定であります。第百條は知事が選任しました場合に委員を解任する場合の規定であります。手続につきましてはすべて地方自治法に倣つております。その外は委員会の会議に関する規定というようなものであります。  次が連合海区調整委員会に関する規定でありますが、この連合海区漁業調整委員会と申しますのは、原則として常設の機関ではなくて臨時の機関であります。随時必要に應じて特定の目的のために、二以上の海区の区域を合した海区に設置するものであります。これで海区委員会というものに一應海区内の全権を任せるわけでありますが、漁業ではどうしても海区と海区に跨がる問題があるわけであります。その場合或る海区の委員がよその海区から來る人間に対して、冷たい扱いをするということが予想されるのでありまして、その海区々々の問題を調整するために、必要に應じて連合海区漁業調整委員会を設けるのであります。例えば東京湾の「いわし」網について申しますと、東京は何荷、千葉縣は何荷、神奈川縣は何荷というような統制の割振をいたします場合には、東京「いわし」網漁業調整委員会というものを作りまして調整して行こう、まあそう考えておるわけであります。このように原則として臨時の機関でありますが、ただ瀬戸内海だけは極めて入会関係が錯綜しておりますので、これを普通のように海区單位或いは縣單位で調整いたしますことは不可能でございますので、瀬戸内海全般につきまして、瀬戸内海海区漁業調整委員会というものを作りまして、瀬戸内海全般の調整をして行くというようにいたしております。それから連合海区委員会の作り方でございますが、縣知事が作ります場合と海区委員会が自発的に作ります場合と両方ございます。縣知事が作ります場合、或いは海区委員会が作ります場合に、都道府縣知事が同じである、こういう場合はいいのでありますが、若し管轉する都道府縣知事が違うという場合には話合いをいたしまして、万一話合いが纏まらない場合には主務大臣が決める、こういうふうにいたしております。  それから次に連合海区漁業調整委員会の構成でございますが、これは第百六條に規定してあります。委員は、その連合委員会を構成いたしまする海区漁業調整委員会の委員の中から、特に同数の委員を選ばせるというふうにいたしております。その外に必要があります場合には、都道府縣知事が学識経驗者を任命できる、このようにいたしております。從つて原則として同じ委員を出して話合いするというわけであります。その外は大体海区漁業調整委員会と同じであります。  それから小に中央漁業調整審議会でありますが、第百十二條以下に規定してありますが、この中央漁業調整審議会は、漁業法の施行に関する重要事項の諮問機関であります。この点外の委員会が或いは裁定の権限でありますとか、指示の権限でありますとか、或いは漁業免許に関してその意見を聞くというふうに、具体的な権限を持つておりますに対して、これは全般的な事項のみを審議いたしまして、具体的問題には関與いたしません。全般の運営方針の大網を決める、こういうわけであります。中央審議会の委員は漁民の代表が十名、学識経驗者が五名というふうにいたしまして、農林大臣の申出により総理大臣が任命するというふうにいたしております。  それから漁業調整委員会の費用でございますが、これは第百十八条に規定してあります。調整委員会の費用は、先程「免許料及び許可料」の章で申上げましたように、これで費用を賄う、こういうふうにしております。そうしてこの委員会は一應縣の機関でございますために、委員会の経費が支出する形を取る、併しその負担は國が免許料を取つた分で負担する、つまり國が免許料で取つてそれから各縣に補助金を出すわけであります。そうして各縣が支出をして行くというわけであります。この予算でございますが、本当は委員会を十分働かせるためにも十分に予算を與える、委員にも手当や旅費をまあ十分見なければならないわけでありますが、全般の財政的見地からしてその他の委員会と比べて特に優遇してございますが、まだまだ不十分でございます。特に漁業労働者として零細漁業代表が出ようといたしましても、生活が安定できないという面がございまして、委員会の費用につきましては何らかの措置をもう少し具体的に講じたいとこう考えております。その外いろいろ細かな規定がございますが、時間の関係上省略いたします。
  82. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 第六章について質問をお願いします。
  83. 田中信儀

    ○田中信儀君 第八十七條の選挙権及び被選挙権の資格の問題ですが、協同組合法ではこの規定がない、協同組合の役員たるの資格について……。そうすると、漁業協同組合組合長、連合会長でも、この規定のためになれん場合があるのですが、この関係は何かお考えになつたことがありますか。協同組合法はこれが落ちておるように思うのです。理事の資格が……
  84. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。先ず組合法で特にこれを明言いたしておりません。尤も組合でも被選挙権というものについては、定款で規定しております。選挙権については限定いたしておりません。それは先ず第一号の二十年未満の者、これは組合の場合にあつては二十歳以下であつても本当に漁業しておれば、別に差支ないから限定いたしておりませんでした。二番目、禁治産者及び準禁治産者、これはこういう者であれば実際漁業ができませんので、協同組合組合員になることもあるまいというので、規定いたさなかつたのであります。三番目、「懲役又は刑この刑に処せられて」云云、これは協同組合の場合には組合の自主的に決めるべき問題であつて、敢て絶対に資格はないというふうに限定する必要はないであろう、併し調整委員におきましては一應國家の機関でありますから、その他の國会議員でありますとか、縣会議員でありますとかにならいまして、こういうものについては選挙権を認めなかつたのであります。大体そういう理由であります。
  85. 田中信儀

    ○田中信儀君 組合法の役員の被選挙権は法にはないのですけれども、定款で禁止しておるわけでありますか。
  86. 松元威雄

    説明員松元威雄君) そうであります。定款で禁止いたしております。勿論これは定款でございますから、そういう定款をつくるかどうかは組合の自由であります。その点は從つて組合の自主的な判断にまかすというわけでございます。たとえ曾て懲役に処せられた者であつても、立派な人間だから今度組合長にしようと思つたら、それは差支ないと思います。
  87. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 外にありませんか……。それでは第七章をお願いします。
  88. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 第七章を御説明いたします。これは漁業経営上必要不可欠な土地又は土地の定着物の使用に関する規定でございます。漁業業の免許を貰い、又は認可を受けましても、それに必要な土地又は土地の定着物というものがあるわけであります。例えば海草の專用漁業権の場合を考えてみますと、海草はこれを乾さなければ商品として販賣できないのであります。特に「こんぶ」でありますが「こんぶ」漁業につきましては「こんぶ」を乾しまする海草乾場というものが必要不可欠なものであります。或いは又地曳網を曳きます場合に引揚場所が必要であります。このように経営上必要不可欠な土地或いは建物、こういうものがございますが、これに対して強制的に使用権を設定できることを認めたわけであります。  第二十條、百二十一條、第百二十二條、第百二十三條、この四箇條は現行法と同じであります。特に新らしく設けました規定は第百二十四條から第百二十六條までであります。從つて新たに設けました規定について御説明申上げます。  第二十四條の第一項で「漁業者、漁業協同組合又は漁業協同組合連合会は、土地又は土地の定着物が海草乾場、船揚場、漁舎その他漁業上の施設として利用することが必要且つ適当であつて他のものをもつて代えることが著しく困難であるときは、都道府縣知事認可を受けて、当該土地又は当該定着物の所有者その他これに関して権利を有する者に対し、これを使用する権利設定に関する協議を求めることができる。」このように規定しております。これを具体例で申しますと、「こんぶ」を乾す場合に「こんぶ」の海草乾場、これは漁業上の施設として利用することが必要であるわけであります。而も土地でございますから、他に代替性がない。その土地を使わなかつたならばどうしても乾せないというわけであります。而もその土地は大体が海浜地でありまして、宅地とか農耕地というものを使つていない。從つてこれに対して使用権を設定して海草乾場を使わてるのが適当である。こういうわけでありますので、その場合に使用権の設定に関する協議を求めることができるというようにいたしたわけであります。一番多い例は北海道における海草乾場の例で、これには「こんぶ」の場合、或いは「にしん」、「いわし」乾場の場合、こういうのがございます。それから船揚場につきましても、例えば定置網の根拠地に船揚地を造つてやる。そういう場合には定置漁業権だけを貰つて漁業ができないので、船の発着場まで使えるようにしなければならん。特に著しい弊害として從來ありましたのは、福井縣における船入まの問題でございます。これも現在大体解決してありますが、多少昔の名残りとして封建的な関係が残つておるわけであります。漁舎と申しますのは、これは番屋でありますとか或いは漁具倉庫とか、こういう漁業上に必要な建物を意味しております。これも定員漁業の経営については漁業権だけでなく、番屋とか漁具倉庫とか、こういうものが必要であるわけであります。そういうものはどこでも自由に建てられない。やはり海に近いものでなければならん。そうすると、漁業権の外にこういうものが使えるということが経営上必要なわけであります。そこでこれに対して使用権の設定を得るように措置いたしたのでありますが、これに対して一部に所有権の侵害であるとかいうような論もありますために、使用権の設定だけに止めて、收用し得る、所有権まで取り得るというふうにはしなかつたわけであります。  先ず第一に認可を受けまして、相手方と話合をするわけでありますが、話合が調わなかつた場合には、第百二十五條によりまして海区漁業調整委員会の裁定を申請をする。委員会が両者の言分を聽きまして、具体的な裁定をする。裁定があつた場合には、その裁定の定めるところに從つて使用権が設定されたものとなるというようにいたしております。從つてここでも海区漁業調整委員会というものが非常な働きをするわけであります。  第百二十六條は、趣旨は第二百二十五條と同じでありますが、この場合第百二十五條と違うのは、第百二十五條は現在使用権が設定してなくて新らしく使用権を設定しようという場合でありますが、これに対して第百二十六條は現在すでに使用権がある、あるけれども、その内容白どうも適正でない、例えば賃貸料が不当に高い、場合によつては賃貸料が不当に安くてこんな安くては貸して置けんという場合もありましよう、そういうように現在契約があるけれども、契約内容がおかしい、その契約内容を変えようという規定であります。その外の趣旨は第百二十五條と同じであります。  以上で漁業経営上必要不可決な土地建物等の使用に関する規定説明を終ります。
  89. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 第七章について御質問がありましたら、お願いいたします。……それでは第八章に移ります。内水面漁業
  90. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 第八章の内水面漁業について御説明いたします。内水面漁業はこのたびの制度におきましては從來と根本的に行き方を変えております。從來は内水面漁業でありましても海と同じ扱いをして参つたわけであります。これに対して今度は内水面では魚を増殖するということが根本であるという考えで、増殖の建前で規定作つております。現在内水面と申しまとす河川と湖沼を含むわけでありますが、内水面では区画漁業権の外に専用漁業権免許が非常に多いわけであります。ところがこの專用漁業権は本來ならば魚を殖やすというつもりで免許いたしたわけでありますが、事実問題としては魚を別に殖やさないで独占して他人を排除するためにだけ使われておる、そういう独占的なものに変つております。自分だけ独占して魚を殖やさないということは免許を與える趣旨にそぐはないわけであります。而も今までは補助金が出まして補助金によつて或る程度孵化放流をやつてつたわけでありますが、最近は補助金が取止めになつたわけであります。國家財政の全体から考えまして、近い將來において補助金制度は復活するとは考えられないので、何とかして補助金なくしても増殖できるようにしなくてはならないわけであります。そうすると專用漁業権を與えて補助金を與えないで、そうしてそれによつて増殖させようということは、それでは実際の効果が挙らないわけでありまして、むしろ國営で増殖するに如くはないというので國営増殖という建前を採つております。この國が主体となつて増殖をするというのが今度の内水面漁業の基本であります。勿論國が増殖をする、こう申しましても、何も物理的に國の役人を使つて何らか何まで國の手でやるのではなくて、第百二十八條規定してあるのでありますが、今度内水面では料金を納めなければ魚を取つちやいかんというふうになつております。料金収入を一旦全部國が集めましてから各縣に配り、縣が更に地元に配つて養殖をやらせる。從つて実際の養殖をする機関としましては、やはり地元の協力に待つわけでありますが、その金のプールをするのが國である、こういうふうに了解して頂きたい。國営という意味は強く響きまして何から何まで國でやるのだというように誤解されておるようでありますが、國としては勿論養殖もいたします。種苗も國家で管理いたすわけでありますが、日本全國すべて國が手を出すわけではありません。取つた料金のプール、配分をする機関だというふうに了解をして頂きたいと思うわけであります。こういう見地でありますから内水面では原則としてそもそも漁業権免許いたさないわけであります。併しながら國で増殖する以上に効果がある、自分のところに区画漁業権免許して貰えば國がやる上に効果を挙げて見せるというところがありましたならば、区画漁業権を與えて増殖さしてもよいわけでありますが、百二十七條に「内水面においては、区画漁業以外の漁業免許はしない。」こうして区画漁業権だけは免許をするかどうか、或いは國がやつたら増殖の効果が挙るか、それとも地元に漁業権を與えてやらした方が効果があるか両者を天秤にかけまして判断して行きたい、こう思つております。この第百二十七條の但書におきまして「但し、湖沼においては、共同漁業免許をすることができる。」こう規定いたしましたのは、内水面と申しましても、大体三種類ございます。大分類であります。湖沼と河川とありますが、湖沼の中で更に霞ヶ浦でありますとか、琵琶湖でありますとか、こういうような海に類に類する湖沼もございます。そういうものは第百二十七條の「内水面(第八十四條第一項の規定により主務大臣が指定する内水面を除く。)」というふうにいたしておりますが、こういうものは本省の内水漁面業の範疇には入らないわけであります。残りましたそれ以外の通常の湖沼、これと河川両方あるわけでありますが、そのうち湖沼につきましては河川と聊か状態を異にいたしまして、積極的に増殖する以外に、消極的な繁殖方法を講ずるということが必要であります。そこで孵化放流をしまして魚を殖やす以外に、行使方法を制限して繁殖方法を講ずるということを考えまして、湖沼に限つて共同漁業免許することができる。併し河川つきましてはこのような繁殖方法、増殖方法では不十分でありまして、積極的に種を放つて殖やさなければならんというので、湖沼は別にいたしまして、河川では共同漁業免許はできないわけであります。そこでこれにつきまして内水面関係からいろいろ反対論もあるわけでありまして、國が料金を取つて増殖する、こういいましても、大体料金は取れるわけのものでない、内水面で取るのがどれぐらいあるか、百数十万円になるか、それは金は取れるものか。金が取れなかつたならば、國が増殖するというシステムでなくて、むしろ地元に権利を與えて繁殖せしめた方が効果があるという場合も勿論あるわけであります。事務当局といたしましては、飽くまでも料金を取るという線を貫いて、ただ養殖をします場合に、地元を如何に協力さして行くか。その協力の場合に、何も一々漁業権を與えないでも、地元が協力すればする程金が地元に落ちる、地元に利益が上がる。こういう仕組さえ考えればいいのであつて、そういう仕組で考えて行きたいと思つております。  第百二十八條で料金のことを規定いたしておりますが、魚種、漁法、漁場又は時期を指定して料金を納めなければ獲つてはならんというふうにいたしておりますが、具体的に如何なる魚種について如何なる料金を取るか、或いは如何なる漁場で如何なる料金を取るかということは、これは細かなことになりますので、命令で決めたいというふうに考えております。内水面で釣をすれば、全部が全部金を取るわけでありません、増殖しないものは獲つても自由であります。ただ國が増殖するものだけは、その増殖の費用を賄うために金を取る、こういう意味であります。  第百二十九條はこの料金の使い方であります。先ず基本的には今申しました國の増殖費用に充てるわけでありますが、その他にこれは免許料及び許可料の思想と同じでありますが、補助金を賄うのが一つ、その他に内水面漁場管理委員会、その他の行政費用を賄う、こういうふうになつております。  第百三十條に内水面漁場管理委員会のことを規定いたしております。海の場合でございますと、海区漁業調整委員会というのを海区ごとにおくわけでありますが、内水面では縣一本にして、内水面漁場管理委員会は大体海区漁業調整委員会と同じ仕事をするわけでありまして、勿論仕事の内容は海の場合では漁業調整が主で、こつちでは増殖が主でありますから、仕事の内容は違いますが権限としては同じでございます。縣一本に委員会をおいて、果して動くかどうかという点についていろいろ異論もありますが、実際問題といたしましては大体河川ごとに専門委員でも置いて、それで運用して行こうか、こう考えております。  第百三十一條は内水面漁場管理委員会の構成でありますが、海区委員会の場合でございますと大体漁民という者がはつきりいたしておりますから、漁民の選挙ということにいたしたのでありますが、内水面ではいわゆる漁民の外に、商賣でなくて魚を採る者、例えは農民の自家用のための補魚採藻こういうものもあります。それから純然たる専業者もあるということで選挙権ということを掴むことは先ず不可能に近いわけであります。從つて選挙ではなくて知事が選任するということにいたしております。この内水面漁場の在り方、これに関連いたしまして内水面協同組合、これについて海と同じ扱いでよいかどうか、これは再檢討を要する次第でありまして、現状では河川の協同組合というものは協同販賣、協同購賣、そういつた仕事はないわけであります。実際は専用漁業権を持ちまして漁場管理しておるわけであります。今度漁業権がなくなりますと今更協同組合作つて意味はないというわけで、河川の協同組合の設立は殆んど行われていない。今後もどうしていいか分らんうという現状でありますので、これに対してはつきり河川組合かくあるべしという方向を河川漁業のあり方から示して協同組合規定の改正いたしております。それは漁業法施行法の第二十條でありますが施行法の二十條に「第十八條第一項に次の但書を加える」こう規定してございます。第十八條第一項と申しますのは協同組合組合員資格でございます。そこに次の但し書を加えまして組合員資格を拡げております。つまり「河川において水産動植物の採補又は養殖をする者を主たる構成員といる組合、」河川組合でありますが、河川組合では「組合の地区内に住所を有し、且つ水産動植物の採補又は養殖をする者(遊漁業を除く。)であつて、採補又は養殖に從事する日数が一年を通じて三十日から九十日までの間で定款の定める日数をこえるものも組合員たる資格を有する。」、河川組合におきましては漁民以外に組合員の資格を拡げたわけであります。これは今申しました河川漁業のあり方と関連するわけでありますが、河川ではとにかく魚を殖やすということが第一であります。魚を殖やすためには河川を利用しております者を全部ひつくるめまして河川を管理する團体を作らなければならん。その場合に河川を使つておる者は決して漁民だけではなくて農民が自家用に採る、それから又遊漁者が採る、こういう者が非常に多い。主体といたしましては専業の漁民という者は殆んどなくて、それから又兼業であつても魚を採つて販賣する、そういつた法律上の意味の漁民という者は少くて、むしろ魚を採る、生活のために河に依存をしておる、併しながら販賣はしない、大体自分のところで食べる、余つた場合に賣るというように、販賣を業とするという面から見ますと、法律上は漁民ではありませんが、社会通念上は河に依存していて実際漁民とみなされる者が多い。大体農民でありますが、これを組合員に入れなければ河川の管理はできないわけであります。そこでこういう者を組合員に入れまして、そうして河川組合作つてこの河川組合が河川の管理をして行く。縣一円に内水面漁場管理委員会というものを置きまして、その下に各河川ごとに河川組合を作り、この河川組合を下部機構として國営増殖を進めて行く、こういうふうにいたしております。この場合にただ漠然と組合者を拡けますと、純然たる漁民、つまり生活のために河に依存している漁民ではなくて、純然たる釣人或は料理屋の旦那というようなものが入つて参りまして、こういう者に支配されるということは望ましくないので、遊漁者は除いております。これが大体内水面漁業に関する規定であります。
  91. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 第八章について質問がありましたらお願いします。
  92. 田中信儀

    ○田中信儀君 河川に対する入漁料というものは大体の見当もつかないのですか、河川の状態によつて違うのですか、全國……
  93. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。これは種類をいろいろ分けたいと思つております。例えば多摩川で当日だけ通用する切符とか、或は全國どこでやつてもいい切符とか或は縣内どこでやつてもいい切符というふうに大体甲乙丙の三つに分けたいと思つております。甲の河はいくら、乙の河はいくらということはちよつとまだ計算がつきかねております。大体の数字はございます。ごく荒つぽいこれも机上の計算でございますが、大体甲の入漁料、これは全國どこへ行つてつてもいいというやつでありますが、これは四百円くらい。それから乙、これは縣内一円どこでもやつていいという場合でありますが、これが二百円くらい。丙は当日限り、これは五十円くらい、一應そのくらいを仮定しまして計算をいたしております。
  94. 田中信儀

    ○田中信儀君 これは全國でプール計算をするわけなんですか。
  95. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 国が取りまするという意味は全國プールしたい、こういう意味なんでございます。と申しますのは、群馬縣でありますと、群馬縣で釣をする人は非常に多い。併しながら釣る人間は東京都の人間であります。從つて縣限りでやつていたのでは非常におかしくなるので全部プールしたいので國でやるというふうにしたわけであります。
  96. 田中信儀

    ○田中信儀君 そうなりますと、実例を申しますと、私の所で小さな河川が本年もすでに鮎の放流を二十数万円も使つておる。そういうのはプール計算をされると從來のような養殖事業はできない。縣内におきましても私の所は小さな河ですけれども四五年も鮎の孵化放流をやつて非常な成績をあげておる。プール計算をやると從來のような仕事がやれない。こういうものは特例は認めて頂くというわけに行きませんか。
  97. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。お話のように現在河川によりまして非常に成績をあげておる河があるわけであります。こういう所におきましては從來のような漁業権を認めてくれ、こういう声もあるわけで、それが区画漁業権免許し得る場合は免許いたしますが、それで行かない場合にはちよつと共同漁業権免許はできないわけであります。併し一應今プールと申上げたのはちよつと語弊があつたかと思いますが、各縣に全部等しく與えるという意味ではございません。そこは河の必要度に應じてこの河はこのくらい投ずる價値がある、この河はこのくらいというふうに勿論差をつけるわけであります。プールというのは全部等しいという意味ではない、一旦中央に集めるという意味なんでございます。
  98. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 この河の事業は重要な問題で、今田中議員の言われたような事例もその一つと思いますが、そういうようなのを特に國が採上げて適当なる措置を講ずるというところに又行き方のよさがあるのじやないかとも思うのですが、そういうようなことは考えない、從來の実績は特に審査して特殊な特別な成績をあげておる事は、必然的に国が考えるということになればその問題は解決するようにも思うのです。そこらあたりのお考え方はどうなんですか。
  99. 松元威雄

    説明員松元威雄君) これは後の法律の運用でございますが、具体的に一旦プールした金をどう使うか、これは二年後の先の問題でございまして、今私から直接細かくお答えはできないのでありますが、その辺のところは大体運用でよろしくやつて行こうと考えておるわけであります。要は全國的に考えまして、一番増殖の効果の上がるように金を使いたいというわけであります。
  100. 田中信儀

    ○田中信儀君 この河川の維持ということについては、河川を通ずる協同組合に維持させるということにならなければいけないわけであります。協同組合を作りましても、專用漁業権がなければ結局協同組合の財源は全然ないということになる。協同組合組合員が自分の出費によつて、河川の維持をして、漁獲物は他の漁業者に皆んな取られてしまうということになれば、協同組合の價値がないことになるわけですが、そういう点は何とか……
  101. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。実はその点が根本問題でありまして、今までは組合漁業権を貰さて、その漁業権の効果によつて、他人を排除して、自分の金を出して、そういうように効果を挙げた。從つて若しよそから來る人があつたら入漁料を取るとかして、組合の自己の責任において、養殖をさせておつたのであります。それが今後できるかどうか、恐らくできんだろうというのがこの改正をした理由なのであります。というのは、今まで多少補助金も出たわけでありまして、その補助金にプラスして自分達も多少金を出して、そのために非常にいい河川、例えば島根縣の高津川とか、そういう非常にいい河川もあつて大いに増殖費を出して、効果を挙げたという例もありますが、その半面ただ名前だけの養殖をしまして、而も独占しているという弊害の方が多いのであります。それで具体的には今お説のように、專用漁業権を貰えなかつたら金を出さん、他人に取られるから増殖しないという一般の氣分があつたわけでありますが、そこは國のやり方次第でありまして、それを國が全部金を取つてしまつて、國が適当にやるんじやなくて、一旦納めた金をどういうふうにして地元に返すか、地元が協力すればする程利益になる、その仕組を考えたい、そう思つているわけであります。具体的に増殖をします場合、組合が料金を沢山集めて來たから、その料金の中のどのくらいも地元の方に返してやるか、ということを考えるので、その場合は何も権利というものを與えなくて、地元に還元する措置が講ぜられればよいのではないか、こう考えているわけであります。これに対してやはり権利がなければ駄目だうという反対論もありまして、この辺はいろいろ実情に即しまして檢討はいたしたいと思つております。
  102. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ちよつとお尋ねいたしますが、それでは何か鮎の放流などを漁業協同組合でやろうとする場合において、國が補助金を出してやるというような方法の意味ですが、あなたの言う意味は……
  103. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。実際問題としましては、その場合國が料金の中かそれを組合に出す、組合が地元に委託するという形で金を出す、内容從つて補助金という意味であります。内容的には、名目は委託経営ということになります。
  104. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 内水面漁業について、この規則の内容についていろいろ檢討して見なければならん点もあろいかと思いますが、私まだ十分檢討をいたしておりません。併し私はこういつた規則を檢討すると同時に、私共はこういうことを要求して置きたいと思う。それは内水面の増殖計画と申しますか、そういうようなものを、こういう計画を持つているということによつて、この規定が初めて役に立つか立たんかということが見当が付くと思うので、これは非常に技術的な面について関係が深いのですが、私はそういう意見が必然的に出て來ると思う。例えば私共の内水面の増殖という面について、今仕事として「ます」の増殖といつたことが非常に内水面の上からいうば大きな仕事になつていると思うのですが、例えば産卵とか、或いは孵化事業とかいうようなものを、國家でどういうふうにやろうとするのか、或いは地方にどういうふうにやらせようとするのか、そういうようなやり方によつて、この規定でやれるかやれないか、この法律でやれるかやれないかということが決まるのじやないかと、こう思うのです。それでただこういつた委員会があつて、そうしてやるのだというだけでは、どうもぴんと來ない点が多いのですが、次の機会において大体私はこういつた海の場合と違つて、極く小規模の、小範囲の増殖事業というものを考えたこの規則、こういつた規則というものは、その仕事の内容というものをもう少し明らかにして、一つお示しを願いたいとこう思うのであります。
  105. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 只今江熊委員からの御質問にありましたこの法律自体が、いいか悪いかは事業計画を見なければ分らん、これを一應抽象的に取つて見ていいか悪いかと言えないということは御尤もでありまして、一應事務当局として計画を組んであるわけであります。これは数字で説明してよろしうございますか、如何でございましようか。大体の基本の考え方といたしましては、種苗の生産配付、これは本省直轄でやる。実際の放流事業としましては、一應今予定しておりますのは、「こい」「あゆ」「うなぎ」「ます」「わかさぎ」これを大体主体にしまして、その外を自由にして養殖をして行きたい、それを具体的にどの河川にどうということまでは、ちよつと計画は立ちかねております。そこまで全貌を明らかにしなければ、この河川にはこのくらいの「あゆ」を放流する、この河川にはこのくらいの「うなぎ」ということまで明らかにしなければ、全貌ははつきりしないわけでございますが、そこまではちよつとできておりませんで、全体的として種苗の生産をどのくらい「あゆ」はどのくらい流す、「ます」はどのくらい放す、そういうことは、そこまで計画に立つておりません。
  106. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 今のお話で、種苗の配付というようなことを、國費でやるという大きな方向が分れば非常にはつきりして來るのです。この配付をするについては、又例えば府縣に委託するとか、或いは國の直営でやるとか、或いは國がどういう所と、どういう所に本部を置く、支所を置くということになつて來ると非常にはつきりした見通しがついて、いろいろな我々が杞憂しておる問題は、單なる杞憂に過ぎないという点も出て來るだろうと思いまして、今の方向は大体分りましたが、又後の機会に詳しくお尋ねして、尚檢討してみたいと思います。
  107. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) それでは第九章に移ります。
  108. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 第九章を御説明いたします。これは今までの條文に入りませんでした雑多な規定を集めましたので、大した規定ではございませんが、第百三十三條の漁業手数料、これは現在もありますが、免許を申請する場合には手数料を納めます。それに関する規定であります。実際の額は現行に倣つて行きたいと、こう思つております。第百三十四條は、この法律を施行するにつきまして、必要な報告を取ることができる、こういう規定でございます。第百三十五條は、訴願に関する規定で、一應この法律に基きます処分について、不服がある者は、訴願を提起できる、こういうわけでございます。行政訴訟はもとより裁判所法及び行政事件訴訟特例法によりまして、当然できるわけでございますが、その外に訴願もできる、こういうわけでございます。第百三十六條、第百三十七條は管轄の特例に関します規定で、第百三十六條は、漁場が二以上の都道府縣知事の管轄に属しておる、その場合の規定でございまして、この場合は主務大臣がみずからやるか、或いは管轄知事を指定する、こういうふうにいたしております。第百三十七條は、特別市、特別区、地方自治法第百五十五條第二項の市等に関する特例であります。説明を終ります。
  109. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 第九章に対して御質問がありましたらお願いします。……それでは第十章に移ります。
  110. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 第十章罰則、これは全般的な考え方をお話いたします。如何なる條文に罰則をつけましたかということが大体現行法と同じでありますが、勿論現行法にない規定もございますから、それについての罰則は勿論ございますが、つけ方は同じでございます。ただ現行法と違います点は、非常に罰則を強化しております。例えば現行法では罰金だけでありますが、今度は体刑も加えております。而もそれが三年以下の懲役であるとか二十万円以下の罰金というような非常に高い刑罰というふうになつております。これは何も刑罰をひどくしておどかそうというのではありませんが、漁業秩序の面ということも考えますので、現在のような体刑もなく罰金も五千円以下である、こういうものでは漁業秩序は維持できませんので、思い切つて刑を重くしたわけであります。その外箇條について御質問がありましたらお答えいたします。
  111. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 突然でちよつと私内容がよく分りませんが、今のお言葉に罰則を強化したということで、三年以下の懲役、二十万円以下の罰金というお言葉がありましたが、私は漁業制度というものを確立して行こうとするには、これは一つの罰金制度というようなものも無論考えなければならんでしようが、それよりかそういつた行爲をする人の今後における、漁業場における取扱い方というようなものを合せて考慮した方が、私はずつと効果的じやないかというような氣もするのです。この漁業をやりたいという氣持、そのことに対して、いろいろな制約がある方が違反者自身にとつては痛手である場合の方が多いのじやないかと考えますが、そういつた考え方についてはどうですか。一向この規定は先にあるのかどうかよく分りませんが、そういつた通念的なことをお尋ねいたします。
  112. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 只今質問ございました罰則というようなものよりも、行政処分、例えば免許の取消とかこういうものの方が効果があるのじやないかという御質問は、確かにそうでありまして、同じく併用いたしております。罰金も課するが同時に取消或いは停止というものもするというふうにいたしております。ただ問題はその運用なんであります。今まで取消規定もあつたわけでありますが、殆んど発動したことはない、運用方針が非常に問題になるのであります。つまり前提として、果して漁業秩序に違反した者を取締できるかどうか。これは取締能力の問題でありますが、現状では残念ながら取締る者も非常に少い、或いは一般の警察官の援助も十分なくて取締ができなくて無秩序状態になつておる、これをどうするのかというのが一番の根本問題であろう、こう思つております。これにつきましては、現在違反が非常に多いということは、法規自体にも無理な点があるわけでありまして、例えは瀬戸内海漁業でございますと、とても守ることができないような禁止規定をおいております。文鎭漕でありますとか、飛行機マンガでありますとか、このようにとても守り切れないようなものについて禁止をしております。從いまして正直に守つた人間が損をする、守らん方が得である、こういうことになつて取締できません。これを先ず変えるのが一番根本問題であります。漁業秩序を考えて先ず守れるような秩序を作る、守つた以上は取締を強化して嚴重に取締る、そのあとで必要な罰則か或いは行政処分をして行く、こう考えておるわけであります。併し残念ながら取締能力が十分ありや否やにつきましては、まだ必ずしも十分と申せないわけであります。
  113. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 そこで又合せて罰則というようなものに当嵌らんと思いますが、一体漁業秩序の維持という面から見まして、漁業調整委員会といいますか、そういつたものの権限というようなものについて、今少し檢討して見る必要がありはせんかと思う。そういうことについて何かお考えになつたことがありますか。
  114. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。この調整委員会漁業秩序の維持を実際に握つて行く機関でありますが、これにつきましてはそういう取締の権限を認めていないわけであります。これは秩序を維持するといいながら違反した者に対する権限がないというのはおかしいようでありますが、これはこの法全体が委員会を決定機関にしていないわけであります。そこで取締につきましてもその決定機関、例えば行政処分をするかどうか、免許の取消をするかどうかということは、やはり知事の権限を残しておりまして、その点御質問趣旨と若干食違つておりますが、これをどうするかはこの委員会を決定機関にするか、それとも單なる諮問機関にするかについては、ただ全体の運用を考えて、形式上は委員会の権限はありませんが、実質上は委員会が権限を持つて行きたい。知事の権限は單に形式で……、それには委員会が決定するというように運用いたして行きたいと思つております。
  115. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 外に御質問はありませんか……。それでは最後の附則に移ります。
  116. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 附則の説明をいたします。この附則と申しますのは、大体が経過規定、及び漁業法が施行になりましたその後の若干の期間、特例に関する規定でありますが、これはこの附則の部分と漁業法施行の部分と両方に分れて規定しております。大体現存の漁業権に関する規定は施行法で記述し、或いは漁業権に関する過渡的な規定はこの附則で規定するというふうにしております。  先ず第一項は施行期日の規定であります。三項以下は新法が施行になりましても、その施行後若干の期間は本法に決めた原則に対して相当の例外を設けておるわけでありまして、その例外に関する規定でありますが、先ず第一に第三項で新法施行後二年間は漁業免許はしない。この意味は二年の間に準備を整えて、二年後に一斉に漁業整理を行うのでありますから、その間に漁業免許をしますと、混乱いたす期間でありますから新免許はしない、こういう意味であります。第四項の区画漁業権の存続期間の延長の規定は当分の間適用しません。区画漁業権は一應期間の延長を認められておりますが、現在は過渡段階でありまして、本法施行後二年後の最初の免許のときに、漁業権免許を受けた者が、果してその後も期間延長によつて永久に続けていい人間かどうかは問題があるわけであります。これは現在の過渡段階である、そこから來ているわけでありまして、從つて当分の間は区画漁業権は延長しません。で、過渡段階に落着いて判断をする。これにつきましては大体関係方面との話合いでは二回目の新免許のとき、二年後に一回免許をいたし、五年経つて免許をいたします、その二回目の免許の時期からは原則通り行くが、それまでは特別に存続期間の延長はしないのだというふうにしております。
  117. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 この施行後二年間は、漁業免許はしないという御趣旨はよく分るのですが、ところが、一應日本の現在の免許漁業種類というものには、大した変化はない、こういつた実情が、こういう言葉を平氣で使わしておると思うのです。これは年々歳々違うものなら、とてもこういう言葉では実情に即しなくなるのではないか、と思うのでありますが、併しこれは予測のできないようなことがある。つまり変化があるのですが、その変化に適應する措置として、この二年間中の漁業免許の問題が考えられる、こういう場合の特例を置く必要はないかどうか。これは他の沖合漁業においてはしばしば起つている。ところが免許漁業の種願ではなかなか起り得ないだろうという予測があるが、例えば定置漁業のごときは、相当大きな変化が起きた方が、増産上非常に必要であるというような、特殊なことが考えられる場合が相当あるのじやないかということが、又考えられる。こういうふうなことについて、二年というと短いようでありますが、これは重要な時局でもありますし、案外何か特定なものが、考え出された時は、即座にやつてみたいというようなことが随分あると思うのであります。やはり二年間は嚴然として新免許ということは一切考えないのだ、そういうことに固定してしまつて決定されておるわけですか。
  118. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 只今の江熊委員の御質問、確かに御尤もな節があるわけであります。でこれは附則の第三項に限らず、すでに現在漁業権等の臨時措置法によりまして、新免許はしないのだ、それから漁業権の変更は許可しないのだというふうにして、現状をそのまま固定しているわけであります。この先般の問題でございますが、これは御趣旨のように、例えば免許の場合であつても、新免許というものを認めてくれとか、変更をもつと認めてくれというような、確かに漁業の変化、環境の変化に應じまして、いろいろ要望はあるわけであります。いずれも尤もな節があるわけでありますが、若しそれが万一認められました場合には、全体が崩れるのじやないか、それが心配で踏み切れなかつたのであります。特例を認めると、特例を握る人間は誰か、実際運用するのは誰かということを考えなければならない。これを大臣とか、知事とか、実際問題となると、特例が原則になつてしまう。立法の趣旨通り本当の特例だけに限らずして、むしろ二年後の新免許の際の混乱の方が、もつと大きいのじやないかと思つて、多少の無理は目をつぶつたわけでございます。
  119. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 分りました。
  120. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 他にありませんか。それでは十分間休憩いたします。    午後二時五十四分休憩    —————・—————    午後三時十一分開会
  121. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 休憩前に引続き開会いたします。  漁業法施行法案について質疑いたします。松元事務官重要事項に関する説明を願います。
  122. 松元威雄

    説明員松元威雄君) それでは漁業法施行法案につきまして重要條文の御説明をいたします。  先ず施行法の内容を分類いたしますと、第一條から第五條までは、現在ありまする漁業権、この現存漁業権の二年間の繋ぎに関する規定であります。それから第六條が許可の繋ぎに関する規定であります。第七條は先程一應飛ばして御説明を進めました指定遠洋漁業に関する再審査の規定であります。第八條は訴願に関する繋ぎの規定、第九條から第十七條までが補償に関する規定であります。それから第十八條以下が関係法令の改正に関する規定、大体このようになつております。從つて内容的に分類いたしますと、大体規存漁業権の繋ぎに関する二年間の措置の規定一つ漁業権の補償に関する規定一つ関係法令の改正に関する規定一つ、大体この三つに分類されるわけであります。  先ず第一に現存漁業権の二年間の繋ぎに関する規定を御説明いたします。先ず漁業法が廃止されますと、現在あります漁業権はその法的根拠を失いますから同時に消滅するわけでありますが、同時に消滅しましても新漁業権免許が直ちにできませんので、二年間繋げる必要があるわけであります。從つて漁業法施行の際に、現に存する漁業権につきましては、漁業法が施行になりましてから二年間は新法の規定は適用にならず、漁業法規定が適用になり、從つて旧法は尚二年間は効力を有するのだ、こういうふうにいたしております。併しこの二年間と申しますのは、全國を通じまして、旧漁業権の補償、新漁業権免許、この準備が全部整いまするのは一番遅い時期でありますから、地区によりましてはもつと早く整理を終る地区もあります。例えば北海道は非常に簡單でありまして、一年で整理ができる、こういう地区もございます、或いは又漁業権種類によりましては早くできるところもある、例えば專用漁業権の整理は面倒であるが、定置漁業権の整理は簡單で、一年で済むという場合もあります。從つて二年が原則でありますが、第二項で、「漁業権について政令で地区及び漁業権種類を定めて期日を経過したのちに指定したときはその期日以後は前項規定は適用しない」というふうに規定いたしまして、政令で早く終る地区、或いは早く整理のできる漁業権を指定すると規定いたしますと、それにつきましては二年間でも新法が適用になるということになつて参ります。從つて極端になりますと、或る地区は新法が適用になり、或る地区は旧法が適用になる、或いは一地区内でも或る漁業権では旧法が適用になり、或る漁業権では新法が適用になり、錯綜する場合もありますが、成るべく早く全部同一に整理いたしたい、こう考えております。それから第一條の第三項から第四條までは、現在漁業権等臨時措置法で、現状を固定する措置を講じておりますが、それと同じ條文であります。現状ストップに関する規定でありますから、説明は省略いたします。  それから二年間の漁業権をどうするかという場合に、一應現状ストップという建前を採つておるのでありますが、現在漁業権の行使は非常におかしな例があるわけであります。特に現在漁業会漁業権を持つておりますが、一方には協同組合ができますが、漁業権の始末がつかんために前の漁業会がずつと二年間残つておる。而も漁業会を運営しておるのは理事であります。二年も長い間從前の理事に漁業権管理を委しておくということは危ないわけで、新らしい協同組合が折角できましても、漁業権というものに旧勢力が温存しておる、旧勢力がずつと維持されて行くということが予想されますので、漁業会の持つておる漁業権管理を理事に委せないで、何等かの新しい管理方法を考えなければならんわけであります。從つて條文は少し飛びますが、第二十一條におきまして、水産業協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する法律、この一部改正をいたしまして、漁業権管理委員会というものを設けたわけであります。そうして二年間の間漁業会が持つております漁業権管理は理事に委せないで、この漁業権管理委員会が理事に代つて管理をするのだ、こういうふうにいたしたわけであります。勿論漁業権管理は理事だけがやるのではなくて、漁業会には会則で決めております、総会とか総代会というものがありますので、理事はその中の單なる執行機関に過ぎないのでありまして、その点は漁業権管理委員会と同じであります。この漁業権管理委員会がこう決めたからと言つて、総会の決定に反するということはできない、理事に関する限りその権限は管理委員会が行のうのだ、こういうことにしいたしております。現在二年間の漁業権の措置について一番考えなければならんのは、一般的にはもう協同組合法は施行になつて協同組合はどんどんできておる、漁業法の改正も議会を通過したということになると、漁民は今直ぐにでも漁業権の解放が行われると思つておる、これは二年間は現状のままで、二年後から始まるのだと言いますと、折角盛り上つた買上の機運、これが二年間先ではということで以て鈍らせる傾向があります。漁民は今直ぐ解決できると思つてつたわけでありまして、それは確かに二年間できるわけでありますが、二年間の間漁民の盛り上つた買上の機運、これを成るべく覚まさんようにずつと結集させて、必要な場合に発動される措置が必要であります。これは先ず第一に漁業会漁業権に関しては漁業権管理委員会という形で以て、新らしい漁民の意思が反映するようにして行こう、こう考えるわけであります。この前提が現在非常に必要なことでありますが、漁業会に会員である漁民は法律上当然資格を持つておるに拘わらず、漁業会に加入を拒まれておる、こういう例が非常にあるわけであります。そこでこういう例につきましては漁業権管理委員会は大体資産処理委員会にならいまして、漁民の選挙でありますが、選挙するためにはまず自分漁業会に加入しなければならん、こういう必要がございますので、先般水産廳から通牒を出しまして現在不当に加入を拒ばまれている者について、なるべく漁業会に加入させろというような通牒を出したわけでありますが、この通牒の趣旨に從いまして当然漁業会に入る資格のある者は漁業会に加入する。加入したあとで漁業権管理委員会の委員を選挙して、民主的な運営方法について決めて行く、こういうふうに考えているわけであります。漁業権管理委員会は大体資産処理委員会と同樣でありますが、違います点は選挙権及び被選挙権を嚴重に漁民に限つております。資産処理委員会の場合ですと漁業権だけでなくてその他経済的な資産もありますから、一應非漁民であつても全体の四分の一までは委員になれたわけでありますが、これは漁業権に関する限りは、全部漁民でなければいかんというふうにしたわけであります、その外の漁業権管理委員会の選任方法等につきましては、大体資産処理委員会と同樣であるというふうに理解して頂きたいと思います。二年間の間漁民の買上げの意欲を冷まさないように、先ず漁業会に加入さして漁業権管理委員会で運営方法を決めて行く。その外に尚この二年の間でも漁業権の行使方法がおかしいという例が非常にあるわけであります。これは漁業会漁業権に限らず、当然個人漁業権についても同じですが、これに対して二年間口をきけないというようなことは非常におかしいのてありまして、漁業權の所有自体につきましては、現在の漁業権等臨時措置法、今度の漁業法施行法の三條四條によりまして漁業権の所有自体は動かしませんが、行使方法につきましてはいろいろ不当なものは直さして行く必要があるわけであります。そこで第一條の第一項の但書におきまして、一應旧漁業権につきましては新法は適用にならないけれども、新法の六十七條規定、先程御説明いたしました漁業調整委員会の指示に関する規定であります。委員会に必要がある場合には指示できるという規定、この規定だかは発動させて若し行使方法がおかしければ委員会は指示いたしましてこれを直さして行く、漁業調整委員会自分らの代表を送つてその委員会で不当な行使方法を制限して行くというような措置を講じたわけであります。これで二年間の漁民の買上げの意欲を繋いで行く。二年後の再割当のときに買上げの意思を反映させるようにする、こういうわけであります。これが二年間の漁業権管理に関する規定であります。  それから第七條は指定遠洋漁業に関する規定でありますが、指定遠洋漁業で今度はどういう場合に許可をしてはならないかという場合を規定してございます。この指定遠洋漁業漁業権と違いまして、全面的に御破算にするということはいたしておりませんが、併し新法で許可をしないという場合には一應再審査をいたしまして、それに該当するものは取消す必要があるというわけで、一旦御破算という形ではありませんが、一應再審査をするという形を取つているのであります。こうして不当におかしなものだけを取消して行こうという考えであります。その外の許可漁業一般につきましては、本來ならば漁業秩序を全面的に変える、こういう場合には漁業権だけではなく許可をも含めまして、全部旧秩序を御破算にして新らしく委員会を作り直すわけでありますが、何分許可漁業につきましては、現在都道府縣知事の権限に属しておりますし、それに実態もなかなか掴みにくいというわけで、漁業権と同じように一旦御破算にするという方法は採らないで、除除に実態に即して改正して行こう、こういうふうに考えております。これにつきまして実際問題としては許可の方が経済的價値はむしろ漁業権より多いものが大部あるのであります。例えば以東の底曳とか揚繰網とか、こういうものはむしろ定置漁業の價値より経済的價値が多いのでありまして、而も許可漁業のウエイトは、旧法施行当時は大体免許漁業でありますが、現在では、許可漁業の方がウエイトが多いので、而もその傾向は今後ますます甚だしくなります。こういう重要なものに漁業法で何か触れておらないのはおかしいじやないかという意見もありまして、非常に尤もと思いますが、現在のところでは漁業権のように一挙の御破算にするという方法は採らないで、漸次実体を明らかにして、順次買上げの措置を講じて行くというふうにしております。  第九條から第十七條までは補償に関する規定であります。この補償すべきか否かという点につきましては、いろいろ議論もございまして、事務当局としまして最初は無補償ということも考えたことがございますが、憲法の趣旨に鑑みまして、一應補償をするということにいたしたわけであります。この補償金の算定方法は、第十條の第三項各号に規定してございますが、何故このような補償金の算定方法にしたかということは、お手許に配付いたしました資料の中に説明してございます考え方は、漁業権の補償は原則として賃貸料の十一倍であるというふうにしております。何故賃貸料の十一倍というふうにしたかと申しますと、漁業権の價値というものは、つまり平均利潤を超えまする超過利潤であり、平均利潤というものは資本主義社会におきましては何をしても得られるわけでありまして、それを超過する利潤、この超過利潤が漁業権の價値である。超過利潤は現実的には賃貸料という形で拂われる。例えばAという人間漁業権を持つて、BがAから借りて経営します場合は、平均利潤を得られるようにする。でAは平均利潤をオーバーする部分は、賃貸料として取るというふうになるわけでありますから、賃貸料はまあ超過利潤である、こう考えております。毎年々々賃貸料が入つて來る。それが漁業権の價値であつて漁業権の存続期間は一應十五年と見まして、この賃貸料の十五倍、これが漁業権の價値であり、その漁業権の價値たる賃貸料の十五倍を、本來ならば一年づつ十五年間にわたつてつて來るのを一時に拂うわけでありますから、利子分を差引かなければならん、利子分を控除しなければならん。この利子分を控除しますと賃貸料の十一倍、こうなるわけであります。これが賃貸料の十一倍といたした理由であります。これに対して賃借権を持つておりまして経営しておる者につきましては、その漁業権を借りておる賃借権自体からは超過利潤というものは生まんわけであります。経営者は平均利潤をオーバーする部分は、漁業権者に賃貸料として拂う。從つてその意味で賃貸権の價値がない。併しながら賃借権を持つておりますために中均利潤を得られる。この平均利潤は資本主義社会におきましてはどこでも得られる筈でありますが、現実問題としては、その経営ができなくなつて、他に轉換する場合は、轉換資金が要るのであり、或いは他に全然轉換できない場合もあるので、そこで轉換資金乃至作離れ料として、大体この漁業権の補償金の二割を補償しようというふうにしたわけであります。そうして漁業権を持つて自営しております場合には、漁業権自体の價値とこの轉換資金と両方が必要なわけであります。そこで両者を合計しまして賃貸料の十三倍と、こうしたわけであります。  それから專用漁業権の場合でありますと、これは賃貸しております者は賃貸料がございますからこれによりますが、賃貸していない場合には賃貸料というものはないわけであります。そうして存続期間が定置漁獲におきましては、十五年としたわけであります。專用漁業権は大体漁民の永久権である。こういう思想に立ちまして、倍ぐらいにいたしております。そこで賃貸しております場合には賃貸料の三十年分、これを利率で換算いたしますと、賃貸料の十六倍とこうなるわけであります。そして普通は賃貸しないで組合に構成さしておるわけでありますが、この場合には賃貸料はない、併し賃貸料は全國平均で見ますと大体水揚げの六分というのが平均でございます。賃貸しております十六倍でありますから、六分の十六倍といたしますと大体一年分の水揚高ということになります。そこで專用漁業権の補償金額は一年分の水揚げと、こうしたわけであります。この賃貸料及び水揚高は丁度去年の七月一日付で漁業権の調査をいたしております。これは統計法に基きました指定統計でありまして、これは事実を申告いたしたわけでありますから、この漁業権調査規則に從つて各人が報告した金額、これを取ることにいたしております。併しこれは原則でございまして、実際問題としましては賃貸料乃至水揚げはその年一年だけの事情によりますと非常におかしい、そこでそういう場合には類似の漁業権これを参酌いたしまして、適当な賃貸料乃至水揚げ高を決める、それを基準にして補償金を決めて行く、こういうふうにいたしております。実際の方法といたしましては大体漁業権ごとに点数をつけまして、点数制で決めて行く、この漁業権を百点とすれば、これは九十点、これは八十点というふうに実現されるわけであります。そこでそのうち代表的なものを一つ選びまして、それを補償金額はその基準に從いまして、幾らか決める。それをあとは点数によつて配分して行く実際問題としてはこのようにして漁業権相互間の公平をとりたい、こう思つております。これが大体漁業権の補償金額の算定方法であります。こうしました結果が大体先程も触れました沿岸の漁業権の補償金額が大体百六十億、利子が百二十四億、合計して二百八十四億になる見当であります。この外に内水面の補償金額があるわけでありまして、この金額は利子も含めまして、大体十八億というふうに推定されます。第十條の第五項から第十五條まではこの補償を決めまする手続でございます。これは大体において農地の場合の買收の規定にならつております。  第十六條は漁業権に関する規定で、こうして決まりました補償金は現金で一時に拂わないで、三十年以内に償還すべき條件で交付する、こういうわけであります。この償還期限は三十年以内でございまして、一應只今は二十五年というふうにいたしておりますが、これは漁民の補償能力を考えまして、なるべく縮めたい、こう思つております。二十五年償還でありますれば、一年分の償還金額は大体十一億四千万円程度になるというわけであります。第十七條はこの補償を決めます都道府縣委員会に関する規定でございます。これは都道府縣ごとに設置いたしまして、委員として十名知事の選任でありまして、漁民代表が七名、学識経驗者が三名ということにいたしております。以上が補償に関する規定であります。  次に第十八條から第二十二條までが関係法令の改正であります。先ず第十八條水産廳設置法の一部改正をいたしましたのは、瀬戸内海に出先機関といたしまして、瀬戸内海におきましては、非常に縣対縣の関係が複雜である。これを縣ごとに分割して調整していたんでは、瀬戸内海の全体のものはできない。岡山縣は非常に海が狹うございます。目の前の海が香川縣で、香川縣の海は相当廣い、併しながら香川縣は岡山にぐつと喰込んでいる。廣島縣は狹くて愛媛縣は廣いというような、縣によつて非常に面積が違う。これを單位として漁業をやつていたんでは、生産も上りませんし、漁民にとつても不公平である。むしろ瀬戸内海一單位と考えて調整を図らなければ、本当の瀬戸内海全体の漁業はできない、こういうふうに考えまして、特に瀬戸内海に限りまして出先機関を置いたわけであります。この瀬戸内海の漁業調整の事務局の権限といたしましては、一々の細かな免許まではいたさず、大体免許方針は全体に亘る入会関係の調整、場合によつては瀬戸内海全般に亘りまする漁業、例えば動力を使つてやります漁業、瀬戸内海全般に亘つて操業する漁業とか、取締、こういうことをいたしたいと思つております。なるべくは一々縣知事の権限に干與せずに縣知事限りで処分できるものは縣知事でやつていく、全般で調整しなければならんものだけを調整して行くという精神であります。具体的に如何なる許可を事務局で許可するかということまではまだ決まつておりません。事務局は一應公平に行くことにいたしておりまして、これにつきましても、或いは廣島、或いは岡山とか、いろいろ異論もあるようであります。  次に第十九條であります。漁業財團抵当法の一部を改正いたしましたのは、新らしい漁業権は現在の漁業法と違いまして、担保性を非常に制限いたしております。これは本法第二十三條以下で御説明したかと思いますが、これに照應いたしまして、漁業財團抵当法の規定を改正したわけであります。それから第二十條で水産業協同組合の一部を改正をいたしておりますが、これにつきましては、先程説明いたしましたので省略いたします。  第二十一條では、水産業協同組合法の制定に伴う水産業團体の整理等に関する法律の一部改正をいたしておりまするが、これも先程説明いたしましたので省略いたします。第二十二條は農林中央金庫法を改正いたしております。これは農林中央金庫に加入できるのは漁業協同組合でありまするが、今度新らしく生産組合も直したわけであります。今までは生産組合協同組合の傘下にありまして、協同組合が中金に入つてつて、代金から融資を受ける、或いは協同組合が生産組合から融資を受けるということになつておりましたのを、中金と直結さしたわけであります。その方が金融が円滑につく、こういうわけであります。  二十三條以下は罰則につきまして規定してございますが、それ程重要な規定でございませんので、省略いたします。
  123. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 施行全般に対して質疑がありましたらお願いいたします。  ちよつと私から質問しますが、第七條の七の第二項に「瀬戸内海漁業調整事務局は、神戸市に置く。」こう二項に書いた理由は何か根拠がありますか。
  124. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。これを神戸に置きました理由は、ちよつと見ますと神戸という場所は瀬戸内海の端でございますが、ちよつと奇異な感じを受けられるかと思うのでありますが、一應事務当局といたしましては大体むしろ紛爭の中心点には置くまい。これを岡山とか、香川とか、或いは廣島、愛媛というふうに置きますと、却つてその地点に置くために紛爭は非常に激化する。それよりも第三者的な立場に立つて調整し得る所に置いた方がいいのではないかという点が第一点であります。第二点といたしまして、たとえ地理的に中心であつても、実際の交通その他を考えまして却つて不便である、その場合に神戸市は成るどほ地域的には外れておりますが、全体の、会議をするにしましても却つて集まるのに便利であるという点であります。第三点は、事務的になつて参りますが、実際上の事務所とか施設につきましても、神戸市に置いた方が現実的であるという理由の鑑みまして、一應神戸市といたしたわけであります。
  125. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) それからもう一つ申しますが、漁業管理委員会漁業補償委員会と何も関連はありませんか。
  126. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。管理委員会と補償委員会と全然別であります。補償委員会は縣に置きまして縣内の補償に関する事務、管理委員会漁業界内部に置きまして、議事に代るものと全然関連はございません。
  127. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 いろいろ委員会ができますが、これらの委員会はそれぞれ違つた人でなくちやいけないのですか。それとも同一人で数種を兼ねることができますか。
  128. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。別に兼任は禁じておりません。差支はございません。
  129. 江熊哲翁

    江熊哲翁君 これは施行規則に余り関係はないと思いますが、全体的に見まして、いろいろ委員会ができて、而も非常に或るものについては、非常に短かい期間に処理しなくちやならないということになりますが、又極めて重大な問題を扱うという意味からしましても、余程優秀な而も專門的な人に就任を求めなくちやならないというような結果になりそうに私は思うので、小畑君からもそういうようなことについて御質問があつたようでしたが、特に私は予算を組まれる上において十分一つ考慮をして頂いて、漁業調整委員会のごときものは、特に力を入れて頂きたいということをお願いして置きます。別に質問という意味じやありませんが、大変重要な問題でありますから特にお願いして置きます。  それから第二十二條の農民中央金庫の場合に生産組合が直結するということは、御趣旨はよく分りますが、直結によつて各府縣協同組合なり又協同連合会との間に、いろいろな摩擦が考えられないこともないのですが、何かこれの予防というようなことについて今後指導される面においてお考えはございますのですか。
  130. 松元威雄

    説明員松元威雄君) 只今の江熊委員の御質問御尤もでございまして、一時は生産組合法律協同組合の下部機関にしよう、つまり協同組合に加入しなければならない、或いは協同組合でなくちや作つてはいかんというふうに。法律上で協同組合と生産組合を結び付けようとしたこともあります。併し法律でそこまで行きますと、強制的になりますから、それは止めますけれども、基本としては、生産組合協同組合の下部機関であり、その指導は協同組合が指導して頂いて健全に育てるのだ、というふうな指導方針で進んで行きたいと思つております。併し実際御懸念のような協同組合も生産組合もできる場合も考えられないではないかと思つております。
  131. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ちよつと御質問しますが、第六條の第二項「前項規定により新法に基いてしたものとみなされた処分の有効期間については、別に命令で特別の定をすることができる。」というのは、何か根拠がありますか。
  132. 松元威雄

    説明員松元威雄君) お答えいたします。第六條の第二項は、確かにお分りにくいと思いますが、これはこういう意味つたのであります。先程許可漁業につきましては全面的な整理ということはしない、こう申上げまして、徐々に整理をして行きたいのだという考を述べたわけでありますが、その場合に許可の一番最後の期間、つまり許可の終る時期が同一でありますれば、整理が非常にしやすいわけであります。そこで許可を新法に基いてします場合に、現在の許可は終る期間が非常にばらばらでございます。それを同事に揃えるために、オーバーする分については、許可期間を縮め得るのだ、それができるようにこういうふうに「別に命令で特別の定をすることができる。」こういうわけであります。
  133. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 大体終りましたか、まだまだ疑問もあろうかと思いますし、各委員が地方に出張されているので、更に疑問が出ると思いますが、第六國会開会前三日間委員会を開く予定でありますので、その際疑問がありましたら又改めて質疑應答をすることにして、本日の委員会は散会といたしたいと思います。    午後三時四十八分散会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木下 辰雄君    理事           尾形六郎兵衞君    委員            西山 龜七君            田中 信儀君            江熊 哲翁君            矢野 酉雄君   政府側    農林事務官    (水産廳漁政部    経済課勤務)  松元 威雄君