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証人(津々良渉君) 今日は
配炭公団法の問題で各位におかれましては、特に御熱心にこういう会合を開かれまして、実情に聽いた頂くということは聞きまして、我々労働組合として非常に嬉しく存じております。よく我々の申上げることをお汲み取り願いまして、是非今度の法案に対しましては愼重なる態度で御決定をお願いしたいと、こういうふうに望んでおる次第であります。
先程來
証人の各位が申されましたが、今度の
配炭公団法の
改正と関連いたしまして、メリット
炭價の問題もすでにお話が出ております。又
公団法の
改正の中に現われた四千
カロリー以下の低級炭の取り外しの問題、或いは
公団の機構の改変に伴うところの今後の
販賣機構の
在り方、これについても皆様がお触れにな
つておりますが、このいずれもが実は非常に関連の深い
一つの共通な要素を持
つておるのでありまして、その点につきまして逐次申上げて行きたいと
思います。
大体メリツト
炭價は、この
配炭公団法の
改正と併行いたしまして、七月から実施されるということにな
つております。これは実は五月に暫定的に行われる予定でありましたが、これが延び延びになりまして、結局七月以後でなければ実施できないだろうという見通しだそうですが、その
炭價は、先程
鈴木さんも言われましたように、いわゆるメリットの
方式が純炭
カロリーと言いますか、要するに
カロリーだけを主たる要素といたしまして
炭價を設定する
方式が採られるようでありまして、これによりますと
中小炭鉱、特に
常磐とか
宇部とか、こういう
炭鉱におけるその
石炭の持ち味というものが全然無視されて、灰分の問題とか、その他いろいろ地理的條件とか総合的な効率というものが全然無視されてしまう、こういう点におきまして、非常に
中小炭鉱には不利益がもたらされる、これに対しまして、もともと大
炭鉱の方は優良な鉱区、高品位の鉱区を占有しておるのでありますので、このメリツト
炭價が施行された場合には恐らく大
炭鉱は、五、六百万円のプラスが出て來るだろう、
中小炭鉱はこれに反しまして二、三百万円のマイナスが出て來る、これは單にメリツト
炭價を計算した、彈き出したということ、それ自身でそういうような開きが出て來ます。もともと現在の
炭價はコストを
中心にしてや
つておりますので、このコストも御
承知のようにインフレの昂進に基いて、大
炭鉱であろうと、
中小炭鉱であろうと、コストは依然として上昇する一方でありますから、
お互いに苦しいところは、同じような比率で苦しくな
つて來ておる筈であります。それがこのメリツト
炭價で一挙に逆轉いたしまして、大
炭鉱はいながらにして莫大な利益を受ける、片方の
中小炭鉱は一挙にして破滅のどん底に陷れられる、こういうような結論がこのメリツト
炭價によ
つて行われようとしております。これは非常に重大な問題でありまして、この問題につきましては、もうすでに七月以降の
炭價につきまして、大体作業を済み、
方向も大体結論付けられたようでありますが、これは
配炭公団法の
改正と合せまして、
中小炭鉱に対する危機を招來するものであると思うのであります。尚これに基くいろいろな
影響は、
公団法の
改正の中で申上げたいと
思います。
公団法の
改正の
一つのポイントである五千
カロリー、四千
カロリー、或いは無煙炭、煽石、その他のものを除外する、こういう問題につきましては、今いろいろお述べになられましたように、これによりまして被る
影響は恐らく二百四、五十
炭鉱がこれによ
つて影響される、月産では恐らく三十万トンの
石炭がこれに引つ掛かるのではないか、こういうふうなことが言われております。これに基いてどういう結果が起るかということは縷々述べられましたように、この
統制から除外された
石炭が実際賣りどこがないというのは、
自分が
販賣機関を持
つておらないわけであります。又
中小炭鉱がたとい
販賣機関を持ちましても、現在の状況で果してこれが賣れるかどうかといいますと、現在では
配炭公団の手で一手に賣取りまして、そのリスクで賣
つておりますから問題はありませんけれども、
自分のリスクで
需要家を探すということになりますと、非常な問題が起きて來るわけであります。先程來資金の面について縷々お述べになりましたが、先程
鈴木さんが言われたように三ケ月分の
金融を必要とする、こういう
販賣業者が仕事をするには三ケ月分の
金融が必要だ、これを仮に計算いたしますと、仮に四百万トン、中小
業者の
炭鉱が四百万トンと仮定いたしますと、これは外されたものばかりで、
販賣機構の改変に基いて起るところの數量でありますから、少し違いますけれども、それだけでも三百六十億ぐらいの金額が要るわけであります。そういうようなことが前提になりますが、この
中小炭鉱が
統制から除外されて、恐らく
影響されるところの
炭鉱の從業員は約九万人ということが称せられております。九万人の人々は、ただ九万人だけが、そこで死活を制せられるというのでなくて、その九万人の
労働者、その企業と共に生活を維持しているところのその
町村が、全面的に崩壞をする、これは
炭鉱が郷土の主要な産業であるところの場所におきましては、その
影響は実に甚大なるものがあるわけであります。つまりその郷土が全面的に崩壞するかどうかという大問題、社会問題が起きようとしている、ということが言われるのであります。無煙炭についても同じことが言えるのではないかと
思います。
第三点といたしましては、
販賣機構の問題でありますが、
販賣機構については
只今の四千
カロリーの問題はたといどういうふうに
解決されましても、衆議院あたりでは三千七百、三千五百という特例が設けられるそうだという情報が入
つておりますが、これも亦非常に難関に現在遭遇して、本会議でどうなるか分らないという情報が今入
つているような
状態で、どうなるか分りませんが、たとい三千七百なり三千五百に來ましても、例えば
販賣する場合にやはりその他の炭は
統制して
販賣するのであります。その
統制を除外した炭はどうなるかと言いますと、先程
村木さんの言われたように
レツテルが貼られてないから分らない、それから
統制外の
石炭であるからということについて全然区分のしようがない、若しこれを区分をしようとすれば大変な手間が掛かるわけであります。同じ
炭鉱で三千五百も、三千六百も一緒に出る、或いは四千も一緒に出る、その
石炭を一々一社毎に調べなければ、どれが
統制外であるかということは分らない、仕入れの
需要家に持
つて行くまでそれを
はつきりさせなければ、いつどこでごつちやになるか分らない、こういうことは実際問題として大量貨物を見ただけで分らない、
石炭のような貨物ではやはり
統制するなら全面的に
統制しなければならない、一部を外すということは
統制を
混乱に陷らせる何ものでもないと
考えるのであります。又それは別といたしまして、
配炭機構は先程
政府の意向としてはこうなるであろうという予定で話が出ておりましたので申上げますが、大体
配炭機構は
公団はもう要らない、
公団は卸賣に卸しまして、あとはそれが小賣を使
つて販賣する、つまり一手買取
販賣はなくなるという、こういうことなのであります。これはもともと
公団ができるときに
配給統制をする建前におきまして、どうしても一手買取
販賣、買入れから末端までの配給が一人の人間がやらなければ十分な
統制ができない、こういう理論から來ているのでありますが、それは單なる理論でなく、戰時中の
日本石炭という
配給統制会社が今度
改正されようというような
販賣機構であ
つたから、というのは
日本石炭会社は
山元で
石炭を一手に買取りまして、それを
業者に賣り戻しまして、そうして
販賣の指図だけするわけです。指図を受けた
業者が各工場に配
つた、こういう実績があるわけです。これはや
つたところが非常に具合が惡か
つた、というのは配給の指図をいたしましても、実際の炭は握
つていないという
関係から、やはり
石炭はその
業者の縁故
関係とか資本
関係とか、そういうような方面に
石炭が流れてしまう、流れてしま
つたら、実はこれだけ流してしまいましたから指図を変えて貰いたい、こういう指図の変更については山のように來ることを整理するのが
日本石炭の配給業務だ
つた、これでは倒底計画的な配給ができない、少い
石炭を合理的に配給できん、こういうことになる、賣戻制の廃止、いわゆる自配という一貫的
統制方式が生まれまして、これが今日まで続いておるのであります。それがどういうわけでありますか元の形態に還る、つまり一貫
統制を廃しまして、二元的或いは三元的な形で
販賣機構と買取機構を離すことになりますと、今度の
改正の
原則として
消費者選択の原理を使うという話で予約注文をと
つて販賣するという話を聞いております。そうしますと、昔の制度のようになりまして、縁故があるもの或いはそういう
方法のついておるもの、そうでなければプレミヤムのついた工場でなければ、いい炭が、
自分の欲しい炭が廻
つて來ないという現情が出て來るのじやないか、この点について問題があるのじやないか、例えばそれならばいい
石炭にばかりそれが集中して
石炭は非常な利益を得るのじやないかという一面におきまして、あの下級の炭、
中小炭鉱の下級の炭がどうなるかと言いますと、これ又やはり同じような結果にな
つて、これはまあ産業によりまして違いますけれども、これは喜んでどの工場でも欲しがるというわけではございませんけれども、それにしても先程お話がありましたように、
中小炭鉱なら中小炭を
販賣する
機関におきましても相当な資金が要りますので、その資金を潤澤に持
つていれば別でありますが、今日のような
状態ではそうは行きませんのでやはり
石炭代金というものは
嚴重に取立てなければ、その
会社は成立
つて行かない、こういうことになりますというと、
炭代の
回收を強化しようということになれば、どういう結果になるかというと、現在すでに
公団におきましても、
石炭の代金というものは大体二ヶ月半、多い
業者では三ヶ月も四ケ月も溜
つておりますが、まあ平均して二ケ月半
炭代の
回收が溜
つておりまして、これでは大変だというので今
政府の
命令で
回收の強化ということをや
つておりますが、そうなるというと全然引取り手がなくなる、やはり
中小炭鉱の炭は中小企業が使うのが
原則でありますが、そういうところでは金繰りの
関係で若しそれを
炭代の
回收が非常に強行されれば、それじや
石炭を引受けないような情勢が起きて來る、それで貯炭数量が自然に溜
つて來る、併しそういうのを見越されて、ダンピングして引取るという人も出て來るか知れませんが、要するに
中小炭鉱の炭というものは、現在の金繰りの状況から行きましては、恐らく叩かれて引き取られるというのが落ちではないか、そうしますというと、
中小炭鉱は非常に不利な
状態に陷
つて來る、メリツト
炭價の問題で今問題にな
つておりますけれども、それと同じように今度は
需要家の方から叩かれて來る、実際は資金繰りの
関係から貯炭の激増ということで叩かれて來るのではないか、こういうことが予想されるのであります。現在すでに
統制を除外する理由といたしましては、貯炭が上
つたということを言われておりますが、この点につきましては、すでに東京の附近、関東では十五万トンの貯炭が上
つておる、近畿では三十六万トンの貯炭が上
つておる、これは実はこんなに溜らないうちに大問題にな
つて、又これが
統制除外の原因にも
なつたということを聞いておりますが、それが実は今
公団ではどういうことにな
つておるかと言いますと、今まで十五万トンなんというのは大変な貯炭でありまして、これならば恐らく
貯炭場もないし
公団としては大問題だということにな
つていたのが最近では関東では三十五万トンぐらいはよいということで盛んに貯炭計画を進められたのである、どういう方面からやられたかということは知りませんが、そういうことを言われておる、又近畿では三十五万トンで大問題に
なつたと思
つたところが、実は五十万トンの貯炭も支障はないであろうと、そのために
貯炭場を今搜しておる、こういうようなことを言われております。こういうようなことがいいかどうか行われております。或いは資金繰りの
関係で工場の引取りが上
つて來た、
炭代の
回收が強化されたため荷渡しの停止をする工場が殖えてこういう結果になるかも知れませんが、そういうような
状態が僅々一、二ケ月のうちに家現されたとするならば、
中小炭鉱の
販賣を
業者というものが、こういうような貯炭の圧迫の中で受配を開始しなければならない、こういうことになればもう最初からダンピングされることは明らかであります。運轉資金は幾らあ
つても足りない、こういうような
状態が起きて來るのではないか、こういうふうに
考える次第であります。その点につきましては、私共は大体技術的に計算すれば、非常に莫大な資金が新たに需要される、つまり現在
公団でや
つておりました資金需要よりもこの二元機構に
なつた場合の方がより多くの資金が、これは二重になりますから、当然資金が殖えるわけでありますが、先程も
鈴木さんのお話のように、若し
中小炭鉱の
販賣業者が殖えるとしても三百六十億ぐらいの資金が新たに必要である、その資金は現在の金繰り状況から出るということは恐らくむずかしいのではないか、私は
金融界の人に聞いてみたのでありますけれども、それは非常に大問題ということを
言つておりましたが、若しこの三百六十億の金が仮に出るとしても、この金を單に
販賣機構をいじ
つて、
公団の機構を縮小して、
販賣機構が二元化せられるということによ
つて新たに起るところの資金の需要を、若しこれを生産面に使
つたならばどれだけ利益があるか、この機構の改変によ
つて利益するところが全然ないという観点から
考えますと、この金の使い途というものは実に勿体ない話で、例えば最近の情報では賠償の撤廃ということが言われておるが、これによ
つて日本の産業が又更に新たに発展する素地があるのではないかと
思いますが、これについてやはり資金がなければこれに基くところの工場の再開ということは困難です。これに関連する下請工場等が、中小工場が当然起
つて來ると思うのですが、それに対して十分なる資金がなければこれは再開できないわけです。こういうような資金を、この貴重なる資金を單なる流通面の機構いじりに使うということは甚だ遺憾な点ではないか、この点は特に皆樣方にお願いしたいのでございますが、私は專門家でございませんけれども、
金融界の現状を把握して頂くという
意味におきまして、そういう方面の方々を、実務を担当しておる方々をお喚び
願つて、現在の資金の
状態というものをお調べ願えれば非常にいいのではないか、こう思うのであります。こういうようなメリツト
炭價の問題にいたしましても、四千
カロリー以下の
石炭の取外しにいたしましても、
販賣機構の取外しにいたしましても、何れも
中小炭鉱が、或いは中小工場が、或いは中小
販賣業者、大体
販賣業者というのは
大手筋の
生産業者が御賣
業者になるだろうと
思います。それ以外の小賣
業者というものは中小企業になると
思います。そういう中小企業が全面的にこれによ
つて打撃を受ける、たといそこで商賣を始めても先き行きは恐らく成立たない、これは亞炭の
統制の撤廃のときに名古屋で関西光燃という
会社が我々職員の中から作
つて発足したのでありますが、それは亞炭を
販賣するためにや
つたのでありますが、もう数ケ月経たないうちに全部の資金も使い果たしてしま
つた、これは勿論今度の
石炭の
販賣にも乘り移れる筈なのでありますが、全然使い果たした
会社には誰も金を貸して呉れる人もない、これは破産の寸前にある、こういうようなことが実例としてあるわけです。今後先き行き現在の中小工場の非常に苦しい
状態を見ますと、こういうような機構の変化によ
つて生ずるところの
販賣業者も、もう先き行きは見えておるということは断言できるのではないか、こういうような
状態が非常に悲観的な見方でありますが、私共としては見通しができますので、この
公団法の
改正、メリツト
炭價の問題については、別個の見解を持
つております。
政府に対する反対の態度を持
つておるのです、というのはこういうようなやり方はやはり現在の
政府の集中生産の
政策、それに基くところの結果じやないかと思うのですが、集中生産
政策はおのおの他の企業においても行われておるのでありまして、いわゆる集中生産に該当する工場以外の工場では、続々と企業整備、
労働者の首切りこれが行われておるわけですが、それが
炭鉱にも
配炭公団法の
改正と如何にも
関係なさそうな法案の
改正案の中から、実は現われて來ておる、実に
はつきりと現われて來ようとしておるのであります。これは中小企業を育成するという、いわゆる民自党の
政策とは全く相反するのではないか、この点について衆議院におきましては、この問もやはり公聽会におきましても、民自党の代議士の方も集中生産
政策による
炭鉱の場合は
公団法の
改正によるところの中小企業の倒壊破産という見通しに対しまして、徹底的な反対をなされた、その点は皆さん方においても是非御考慮願いまして、これが
日本の産業を破壊し、中小産業が全部破壊されて、それに從事するところの
労働者が全部生活の窮乏に陷れられるということは、決して
日本の再建に役立つものではない、こういう
意味におきまして御考慮を願いたい次第であります。尚
公団の職員は、これによりまして約一万二千の從業員のうち、約半数がこの機会に整理されて
販賣業者に行くことにな
つております。
販賣業者はそのような
関係で恐らく吸收力はないわけです。又殘
つた六千人の人間が、
配炭公団法が來年の三月以前に廃止されるというので、もう不安
動搖の中に突落されているわけでありますが、これに対しましても、現在
公団の職員が、
販賣業者にできるだけ接收されなければならない、そうしてそこで失職する人のないようにお願いしているわけでありますが、この点につきましても、これは
政府の今後の措置でありますが、この参議院におかれましても、その点についていわゆる
労働者の生活を守られるような御
意見を出して頂きたいということをお願いしたいと
思います。
又公務員につきましては、私共は公務員にな
つておりますが、この間政令が出まして、退職金が全然出ないことにな
つておりますので、万一これによ
つて退職したいという人がありましても、全然生活の目処がつかない、こういうような現状にな
つておるわけであります。こういうような悲慘な現状は、單に
配炭公団法のいわゆる機構いじりをやるということ、全然そこに何らの意義のないような機構いじりをやることから出て來る結果でありまして、而もそれが戰時中にや
つた実績で、すべての
配炭の
統制を
混乱させるという
経驗のある、その惡い組織に逆戻りをするということから來る結果でありまして、而もそれには多くの資金が、無益な資金がここで吸收されて、その資金が若し生産面に利用されたならば、どのくらい
日本の産業の再建に役立つかというような、その貴重な資金が、この機構いじりの爲に使われるという
意味において、
配炭法の
改正、特に
販賣機構の
改正については、我々は是非皆さん方に反対して頂きたい、こういうふうに
考えておる次第であります。
簡單でありますが、以上を以て
公団法改正に関する私の
意見を申上げた次第であります。