○大村
説明員 大体概略申しますと、さつき
平野課長が
説明しました
通り、大体放出のときに物價廳の
許可の價格は二千万円でした。それから五つの
百貨店というのは東京の白木屋、横須賀市のさいかや、名古屋市の丸栄、
大阪市の
大丸、同じく
高島屋、この五つの
百貨店で小賣販賣價格の統制額として査定を取りました額は約六千万円でありますが、それが
バザーでは二分の一しか賣れなか
つたのであります。それで四千万円以上の
残品ができまして、その
残品を
処分するのに当りまして、大体若干値引しましたり、或いは値引き以上に行つたこともありますが、三千六百万円に賣
つておるわけであります。そうして厚生省を経由してGHQへ提出した決算書の
残品の販賣價格は二千三百万円である。差額が一千二百八十四万円、私共はこの金の性格を追求してお
つたのであります。これは周旋料としてです。周旋料も物價統制令によるところの價格でありますから、物價統制令にいう暴利價格を受領することはできないという面で、この斡旋者
田中正三辺りについては、東京の白木屋の場合は二百七十七万円取
つております。この五百七十六万円のものを八百五十三万円に賣
つて、その二百七十七万円という差額が隠れておる。この隠れた金は何であるか。経済法令による周旋料の暴利であろうか。或いは背任横領だろうか。この眞相を一生懸命に追求したのですけれども、どうも
はつきり分らない。形式的にはこれは
澤地久男という者が出した委任状を見れば、販賣設の斡旋とそれから代金の
回收ということだけが委任状に謳われておるのだからして、明らかに、形式的には成り立ちますけれども、併し眞にこの
社会事業國体から委任せられておる
田邊氏、及びその協力者の
西村儀三郎、
澤地久男らが、どういうことを
田中の頼んだかということが疑問でありますので、この点を追求してお
つたのでありますが、段々や
つて行きます際にまあ元金もなくな
つてしまつたというふうなことになりましたので、これはもう我々の
調査の段階ではないというので引継ぐことにしたのですけれども、これを具体的に申しますと、東京の白木屋のやつが残金の実際の販賣額が八百五十三万三千五百六十六円二十六銭です。それが厚生省を経由してGHQへ提出されている
田邊氏の作つた決算書では、五百七十六万三千七円三十二銭、その差額が二百七十七万五百五十八円九十四銭、それから横須賀のさいかやの場合には、実際の賣上げ額は二百六十一万三千円二十四銭、それが決算書面には、二百二十八万六千三百七十五円二十一銭、この差額が三十二万六千六百二十五円三銭、これは直接
田邊武雄さんのところの支配人の櫻井源一郎、染谷金藏というものが持
つて参りまして、
田邊氏はこのさいかやの場合には三十二万いくらというものが決算面より多いことを重々承知してその差額を斡旋者や自分のところの店員に分けております。店員の染谷金藏は
田邊さんが十万円取
つておると
はつきりい
つておりますが併しこれは追求しません。これは然るべき機関に追求して貰おうと思いまして私の方ではその
程度で止めました。それから名古屋の丸栄の場合には決算書面では四百九十八万九千六百三十一円二十三銭で、決算面に計上されておる実際の賣上額は一千八十七万一千九百十七円、差額が五百八十八万二千二百八十五円七十七銭、これは先程申上げました江一株式会社の
田中正三氏のやつたことであります。それから
大阪の
大丸の場合には実際の販賣額が七百七万七千九百三十八円四十銭、決算書面には六百六十万一千三百二十円、その差額が四十七万六千六百十八円四十銭、これは
大阪の海外引揚者
連盟へやつた手数料と言
つておりますが、今
大阪管区経済
調査廳でこの点については
調査してくれておりますので、今少しこれは
はつきりするのは書面が來ないと分りません。それから
高島屋の場合には実際に賣りましたのは七百二十八万五千五百八円六十銭でありますが、これは厚生省経由でGHQに出しました決算書が三百八十九万八千五百十二円四十二銭で、その差額が三百三十八万六千九百九十六円十八銭。これで五つの
百貨店で合計いたしますと、
残品の実際に賣れました額が三千六百三十八万一千九百三十円五十銭であります。それで厚生省の方へ出ました決算書類は二千三百五十三万八千八百四十六円十八銭、その差額が合計いたしまして一千二百八十四万三千八十四円三十二銭。こういうふうになりましたので、私共の方といたしましては、この間に経済法名違反として價格超過取引の事犯も
高島屋にありますし、それからこの商品を各地方の新潟、滋賀、福岡あたりの地方の價格査定
委員会で再査定を受けておるのでありますが、この再査定を受けた
理由如何、若し製品を構成しております部分品等の公定價格の変化がありまして、その値上りによ
つて小賣價格の再査定をしたならば、價格差益処理規則によ
つてその差益金は正しく処理されておるかどうか、こういうふうな点などを追求しておりましたのですが、先程申上げましたようにこちらへ帰
つて來て
大阪でこの金は一体誰が持
つておるのかと聞きましたところが、東京都の港区芝高輪北町の
澤地久男というものが全部この金は保管しておる、デパートにはない。事実私共はデパートへ聞いて見ましたがありません。それで帰
つて参りまして、澤豊久男氏についてこの金はどういうふうに保管してあるかということを聞きましたところが、東海銀行の小舟町支店の定期預金の残高証明書を持
つて参りまして九百万円、それから滋賀縣の大津にあります滋賀銀行本店の二百万円の残高証明書を持
つて参りました。そこで私共の方では
本当にその金であるのかどうかということを知ろうと思いまして、公文書をもちまして東京にあります東海銀行の小舟町支店へ行
つて調べて見ましたところが、定期預金の残額は確かに九百万円ある。が、手形貸付口座を見ますとやはりされだけのものが引つ張り出されているということは、九月二十二日に九百万円どこからか持
つて來て東海銀行へ入れて、三ケ月の短期の定期預金にして、その預金証書を担保に三ケ月先の満期日の
約束手形を振出しまして、手形割引によ
つてその金を持ち出している。結局銀行には一銭もないというふうなことが分りましたので、
澤地さんに一体どういたんだと聞きましたところがこれは実は使
つてしま
つたのだということで、今
田邊さんが百六十万円ぐらい、それから
西村儀三郎さんが百万円、
澤地さんが六百万円使
つておるというふうなことを申されますので、もうこれは私共の方の手で処理すべき
事件ではないということが
はつきりいたしましたので、檢察長の方で
澤地さんや
田邊さんや西村さんの言つたことを証拠の裏付等をすることなしに、向うの申立てで一應しようと思
つております。