○
中平常太郎君 私はこの
健康保險法の一部を
改正する
法律案につきましては、その
内容を
檢討いたしましたところ、これは重大なる問題といたしまして、今日まで
質問をいたしましたが、その
質問に対しまする
滿足なる
答弁を得ません。この本案につきまして、私は
反対をする者でございますが、
期間がございませんのでこれは
修正案を出して行きたいと思
つておりますが、
政府から話もありますし、極めて
期間がありませんので、このままこれを
討論に入るとすれば
反対せざるを得ないのであります。その
反対の理由の主なるものを申上げますと、
健康保險を政定いたしましたその
趣旨からいたしまして、
労働階級の人々に
医療の開放、
医療の十分なる
機会を與えて、そうして生産の増強に全幅の
労働力を発揮せしめようというのが
目的である。そういうふうな
目的を以て、
健康保險法が
社会的政策とし、又
社会保障の前提として今日まで
行つておるのでありまするが、今日その会計が
赤字が出たからとい
つて、その
考え方に
逆行したような被
保險者から
初診料に相当する金を取立るという案でございまして、それでは
保險法を政定したところの
趣旨に
逆行するというても宜しいのであります。而もその
初診料を出すことを被
保險者が厭う
ために、
病氣が早く診察すれば全快するものがそのままに放置する
ために寧ろ
却つて病氣を重からしめる。その結果といたしまして、生産の減退を來たし、本人の苦痛は固より、業界におきましても、生産の減少を來たす恐れがございます。
趣旨において
逆行であり、生産の増強には固より
反対の結果を招來する恐れがあるのであります。それで
初診料の一部
負担をせしめるとしうことは絶対に
反対でございます。但しそれにつきましてそれに相当の
赤字の補填ができないという
政府の説明でありますが、これは
診療費の
支拂の改善をすれば、五億や、六億は当然優に生み出されるものと私は信じておるのであります。而も今日の
診療費の
支拂状況を見ますというと、一方的の処理をして
支拂いをしております。ただ審査会がありますけれども、審査会は出て來たところの公けの
書類をただ当否を見るだけであ
つて、その公けの
書類に記載された事項に対する何らその裏付けも調べることがない。巻間伝うるところによりますと全部ではありませんが、いろいろ惡い噂が立
つておりまして、お
医者さま必ずしも神樣ではありません。收入を多からし
ためための
方法を採るという性格は人間には何人にも潜在の意識であります。收入を多からしめようという
考えから起きて來る時に、その人格のよくない者はどういうことをするか分らない。これはお
医者のみに私は申上げるのではない。どういうような場合におきましても、今日あらゆる
方面にさまざまな惡辣な
手段が行われておりますが、盡く利己主義から行われて、これが詐取、詰り詐り取る。人はどうでもよい、
自分さえよか
つたらよいという算盤から出発して
考えて、そういうようなことが行われておる。
診療機関だけらそういうことは行われぬとは絶対に言えないのであります。ところが今日の監察状況におきましたならばこれが極めてそういう
方面を十分に監察するところの機能にな
つていないのであります。ただ机の上の
書類の数字、或いはそれの当不当を調べるに過ぎないのでありまして、何ら根柢に触れていないのであります。例えて見れば物を買う場合に金を出す。して見れば、その金の値ほどの物を貰わねばならない。それが如何なる場合でも物を調べてそうして金を出す。これが普通の
金銭の
授受であります。然るに
保險料はどうかとい
つたら、
政府管掌においては特にそうでありますが、
請求して來るところの伝票によ
つて直ちに
支拂いが始まるのであります。その当否を調べるのは、ただその紙面に載
つておる数字のみを以て当否を調べるのでありまして、
内容は果して事実かどうかということを調べる機関はないのであります。そういうような一方的なものを信じてこれを
支拂う。それが少数の
金額ならよろしいが、何十億という
支拂であります。果して然らばその中にどういう不正な行動が行なわれておらないとも言えないのでありますからして、五億、六億というような
初診料の積算された
金額くらいは、
診療費の
支拂に対する適当な改善を行うならば、確かにこれだけの金は出て來るものと私は信じて疑わぬのであります。
政府はかかることを煩瑣な
事務として、これに十分な
方法を研究もせず、又ただ煩瑣の一方で以て、これをそういう
方面に十分な
仕事をしておられないということは、誠に遺憾に堪えません。たとえ煩瑣でありましても、たとえ少々件費が要りましても、なすべきことはなさなければなりません。出そういう場合に、人の金を出しておる。
政府は、
政府管掌の金は人の金である。
事業主から出た金であり、人から出た金を拂うのでありますから、痛くもかゆくもない恰好で拂
つております。又
事業主は
事業主として
一定の
保險料を
負担しておるから、なんぼかか
つても放
つておけというふうに現在な
つておる、被
保險者は被
保險者で、
自分の
病氣さえ直れば、その直
つたために何十円、何百円、何千円かか
つても、
一つの
考えも持
つていない。だから、三者相共に極めて
金銭の額に対する深い注意を拂
つていない。ただこれを受け取るところの
診療機関のみが、その
診療費の多額を望んでおる。如何なる場合でも、金を出す者と取る者との側に、双方の適当な権利
義務が交換されなければならない。それが交換されていない
状態において、他人の金が勝手に
支拂われておるということは、これは又その制度の上において極めて深い大きな
欠陥があると言わざるを得ないのであります。私はその
方面を十分に改善さえするならば、四億、五億、六億の金は何でもないと思うのであります。そうして次に
政府の
負担は僅かに人件費の三分の一でありまして、七千八百万円しか
負担しておりませんが、この大きな社会的な
健康保險法の
保險に対する
政府の
負担が余りに軽きに失する。少くとも人件費を全部、一ケ年間二億程度のものは
負担しなければならない。將來の
社会保障制度を行なわんとする場合には、
政府は相当大きな
負担を將來予期しなければならない。現在急激に敗戰の日本が社会組織を編んで
行つて、少くとも
社会保障に進まんとする通程におきまして、單にこの
費用を民間の労務者のみ、産業者のみに
負担させて、
政府は濡れ手で粟の
仕事として、ただ
事務費の三分の一を
負担しただけどこの
仕事をするということは、全く
政府としては
社会保障に深い
考えを持
つていないと言わざるを得んのであります。少くとも人件費全部は
政府が
負担すべきであります。それをせずにおいて、何も彼も
事業主に掛け被
保險者の掛けて行くということは、その
考え方がすでに大衆を窮地に陥れてもよろしいという結論を殊更に取
つておると言うてよろしいのであります。私はこれに対して
一つの
修正案を
考えておりますけれども、今日
政府の要望といたしまして、成るべく早く案を審議して呉れということでありますので、実際におきまして、議会におきまして、殊に衆議院へ廻さなければならんという先議にな
つておりますから、この際これを押し通されるお
考えならば、我々は
反対せざるを得んのであります。
右の理由を以ちまして、私は
反対の
意見を発表いたします。
〔
小杉イ子君発言の許可を求む〕