運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1949-08-20 第5回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年八月二十日(土曜日)    午前十時四十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会保障制度に関する調査の件(失  業問題、最低賃金制問題)   —————————————
  2. 塚本重藏

    委員長(塚本重藏君) それではこれより委員会を開会いたします。  本日は主として失業問題並びに最低賃金制の問題に関しまして労働大臣鈴木氏、それから齋藤労働省職業安定局長堀労働基準局監督課長出席せられまして、今日政府行政整理を初めとし、民間の企業整備等の進行に從つて失業者が増大して來ます、これに伴う社会不安も非常に深刻になつております。國会としてもこの問題を当然に対処して行かなければなりませんが、参議院の厚生委員会では社会保障制度の一環としてこの問題をも討議の対象にいたしておる次第であります。つきましては大臣並びに関係局課長出席を求めてこの問題を討議したいとかように考えた次第であります。委員各位質疑に対して御説明を賜わりたいと思います。
  3. 山下義信

    山下義信君 先般労相の御出席をお願いしましたが、お差支があつて職業安定局長の御出席を得まして、かなり詳細に御親切な御説明受けたのであります。関連しまして日本大臣から二、三点お伺いたいと思います。  第一点は失業情勢と申しますか、失業状態の分析についてであります。殊に潜在失業者の数の見込の点を先ず伺いたいと思います。これは從來我々が承わつておりまするところでは、凡そ三十万或いは三十八万というふうにお見込になつておりますが、新聞で拜見しますと先般七月の上旬でありましたか、全國市長会議労働大臣の御説明になりましたのでは六十数万というふうに記載されております。この潜在失業者の数を把握いたしますことの困難は本員もよく承知しておるのでありますが、実際は新たなる失業者対策ももとよりでありますが、顯在化して來るこれらの失業者に対するところ対策も実は重大であると考えまするので、これをどういうふうに御覽になつておいでになりませうか。一部におきましては、こういう情勢になりまして顯在化しまする失業者凡そ四百万或いは五百万、共産党にいわせると一千万といいます、非常にその、数字を大きく見るものも相当権威筋にあるわけであります。当局潜在失業者をどういうふうにその実態を掴まえておいでになりますか、又失業対策をどう考えおいでになりまするか、これが第一点でございます。  ついでに私の質疑を申して置きたいと思うのであります。尚その第一の点に関しまして、これは本員の一私見でございますが、政府におきましては、実際の失業者実態を十分にこれは御調査に相成つておられるとは思いまするが、改めて失業者実態を把握するために何らかの方法をお取りになりまする考えがあるかどうか、これはいわゆる緊急失業対策法にもこの点が指摘してあるわけでありますが、例えば失業者申告制度というようなものでもお取りになりまして、この際徹底的にその実情をお掴みになる考えがあるかどうか、こういう点をお伺いしたいと思うのであります。  それから第二点は失業保險法が今や大きく適用される段階になつておりますことは申すまでもございませんが、現在の失業保險法のあの法律内容で十分であるとお考えになりますか、或いは失業保險法中現下清勢に即應すべく或る程度改善改正をなさろうというお考えがあるかどうか、この点伺いたいのであります。  最後の第三点は最近承わりますところによりますと、労働大臣は非常に進歩的なお考えをお持ちになつて、この際的低賃金制確立をやりたいという御意思をお持ちになり、すでに労働省幹部会議においてその御意思の御発言があつたということを承わつておるのでありますが、それについて労働大臣はどういう考えを持つておいでになりますか、或いは近い將來に是非実現させたいというお考えでありましようか、その御構想の御一端を承りたいと思います。この最低賃金制確立なくして社会保障制度の完璧の期し難いことは、これは言うまでもございません。これは三歳の童子の皆すでに知つておることでございまして、この問題を現労働大臣がお取上げに相成るということに対しては、私共も敬意を表するに吝かではございませんが、大臣の御所信をこの際承つて置きたいと、かように考えるのであります。以上の三点につきまして御答弁を得たいと存じます。
  4. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 第一番の潜在失業者の問題でありますが、これは実態を把握するのに極めて困難な対象でございまして、特に日本のようなアメリカとも遠いソ連とは勿論遠い、イギリスともその外ヨーロッパの各國とも社会状態が違うという環境の下におきまして、潜在失業者というものの観念をどの辺において実態を把握するかという問題になりますというと、まだ一定の定説もないらしいのでありまして、明確に潜在失業の把握には、こういつた方式で以てやつて行く、そうしいその結果現われて來た数字はこれこれであるという数字は現在までの日本においてはないというのが実情だと思いまするし、残念ながら近い將來にその実態を把握するだけの大掛りな調査というふうなことも、將來は別として、そういつた確信を以て政策基礎とし得るような数字を抽出して來るということは困難ではないかと思うのであります。ただ曾ての國勢調査、それから内閣労働力調査というふうなものを通しましての一應の、これくらいの潜在失業者日本社会状態に照し合せてあるのではないかというふうな数字は、一應曾て得たことがあるのでありまして、それは四百万という数字が一應曾て出たことを國勢調査においてでありますがあるのであります。この場合においてもいわゆる不完全労働の形で以てこれを潜在失業というようなものをどこからどこまでを取るかということになりますと、幾つかの議論があるのでありまして、明確なこれならば間違いないと思う数字を指摘して御説明申上げる根拠が十分ないと思うのであります。大雜把にいつて共産党諸君が言うような一千万とか何とかいうようなことは考えませんし、又一部で日本失業状態はそんなにひどい状態じやないから安心して可なりというような樂観的な考え方にも賛成できないのでありまして、まあ潜在失業者状態考える場合に当つては今日唯一のよりどころとし得る実態調査数字は今申上げました國勢調査における四百万前後というものを考え、更にそれを正確化するためには当時とつたところ完全就業不完全就業の区別の立て方が妥当であつたかどうかというようなことも檢討して、今日の実情から見て不当であると思われる点に対しては修正を加えて、この基礎数字修正を加えて考えと行く、いずれにせよこの前後の数字というような考え方以上に明確なことを申上げ得ないのであります。  それからこの潜在失業者が本年度におきましてどれくらい顯在化して來るかという問題でありますが、これもあとで申告制の問題を挙げまして実態調査意思があるかということをお尋ねになりましたが、併せて申上げますると、現在急速にこういつた仮に四百万前後にいたしましても、それから潜在失業者がどれくらい出るか、一方において潜在失業者でなくて新たなる失業者がどれくらい出るかという実際数字を全國的に亘つて実態調査をするということは、これも現在の組織調査力とを以つてしましては、少くとも当面の急な失業対策應ずる程度の時間的関係においてそれが完全に出來上るということは期待できないのでありまして、いずれも失業問題に対しましては、各方面に現われて來たところ具体的資料によつて一つの公算の方式を以て推定するという方法を取らざるを得ないというのが実情であります。この間において内閣統計局で発表しているところ失業者数字という問題、あれも一つの抜き取り抽出制度調査でありまして、一應の参考とはなりますが直ちに時間的に遅れずに実態を把握して行くという上においては、まだ幾多の檢討の余地があると私共も考えているわけであります。  お答えを元に戻しまして先程御質問潜在失業者顯在化という問題と潜在失業者という問題と、ちよつと御質問の点が受取りにくい点がありましたけれども、御質問中心潜在から顯在化して來るところ数字はどれくらいかという点であつたといたしますれば、これは前の國会の当時から私たちの大体の見通しを申上げました場合の数字があるのでありまして、それは三十万乃至六十万の間において潜在失業者顯在化という現象が起きて來るでろうという数字をこの前の國会の当時から申し上げておつたのであります。大体今日までの推移を安定所その他実際各地方について調査しておるところによりますると、極めて大幅の今申しましたように三十万乃至六十万という大きな幅を置いての数字でありますけれども、大体この数字を覆えす必要はないのではないか、少くとも三十万は顯在化して來るし、今言つた六十万を起えて七十万、八十万という顯在化現象が起きて來るということは今年度内にはないのではないか。從つて極めて幅を置いた考え方でありますけれども、最初推定いたしました顯在化実数は、三十万乃至六十万というこの推定の基礎に変更を加える必要はないと今も思つておるわけでありまして、失業対策基礎的数字といたしましては、潜在者顯在化という面だけにおきましては、労働省といたしましては今の数字の上に立つて防策及び計画を進めておるわけでございます。  それから申告制の問題でありますが、今までに申上げましたところによりましてお分りのように、日本失業に対するところ調査方法組織調査力、一口にいえば調査力でありますが、これは残念でありますけれども十分ではないどころではない、極めてまだ足りない点が多々あるのでありまして、この調査力不足を補う幾つかの方式を可能な範囲において併用しておるのであります。どういう方法で以て実数調査しておるかということになりますと、ここにグラフもありますし安定局長がそれらの作業の仕事に当つておると思いますので、これらの方法で以て今申しましたように総合的調査力不足を補い、当面の失業実態実数を把握するための方法を取つておるということの御説明は、後からして貰えると思います。  それから御質問中心でありました、この際そういう意味において申告制を採用してやつて行くつもりはなかという御質問でありましたけれども、今のところ全面的に亘るところ申告制という問題を、労働省といたしましては考えておらないのでありまして、安定所を通じての間接的な測定という方法を取つてつたわけであります。但しこの問題につきましては、結論的に私共は將來亘つて、或いは近い將來にこういつた方法を取る意思はありませんということをお答えするのではないのでありまして、國会その他一般の御意見によりまして、現在の日本の財政上又調査技術上可能である限りはできるだけ廣範囲に正確な実態を把握することが必要なんでありますからして、この点につきまして御質疑に、今はそういうことを計画をしておりませんというお答えだけでなく、將來どうするかという問題でありましたならば、十分御意見を拜聽して檢討する用意があるということを申上げます。  それから失業保險法の問題、それに関連して最低賃金の問題を御指摘になりましたけれども、失業保險法は御承知のようにこの前の第五國会において相当大幅の改訂をしておるのであります。例えば失業保險対象となる業種の範囲相当拡大した、それから一方において日雇労働者失業保險制度も成立してこの暮から実施される、十二、三万の日雇労働者失業保險対象として支拂いをして行くことができるという計画も成立つておるのであります。特に問題となる点は、失業保險受取額の問題でありますけれども、実はこの前の國会に、第一番に受取る率を上げようという案を政府としては立てたのであります。併しこれは累次の折衝の結果関係方面の同意を得られませんでした。この問題は、だから失業問題が、樣相がどんどん深刻化して変つて來る、今後においても得られませんでしたというのでほつたらかして、しようがありませんという意味ではありませんけれども、当時におきましても私共の立案は、第一番に受取の率を上げて行くということに置かれたのでありますが、その当時においても困難であつたのですが、今日においても何なり困難ではないかと思います。今度はまだ折衝を開始しておりませんが、事実においては実際的に相当引上げておるのでありまして、從來受取額を算定する場合に、いろいろな手当というものは本給からその点を引離したものの何パーセントという計算でありましたけれども、この前の改訂において諸手当を含めてその何パーセントという計算引上げたのでありまするからして、そのパーセンテージは同じでありましても、実質的には、実際は二、三%の引上げになつておると思うのであります。もう一つはこの前の改訂におきましては、給料の低いのから高いのにかけてずつと段階を置いて、そうして何パーセント、何パーセントとなつておりましたのを、一律に平均の中間を取つて決めました結果、多少の凸凹もありますけれども全体としては引上げとなるということになつておるわけであります。それらの実際的数字につきましては御必要ならば安定局長から詳しく説明して頂きますが、要するにそれらの改訂を加えて來ておるのであります。今若し失業保險法について更に改訂をすると仮定いたしましたならば、どの点が改訂対象となるかを考えてみますると、もう一度その料率を引上げるという改訂を出すか、或いはその失業保險法対象となる範囲を拡げるかというふうな問題が、大きな対象となつて來る部面と思いますけれども、私共の考え方では、失業保險法は今日の失業問題に対処するためには、一應此の前の國会改訂を以てそれに対処し得る程度改訂が行われておると考えておるのでありまして、現在政府におきましては、例えば來るべき臨時國会等失業保險法等改訂政府側から出す意思は持つておりませんし、その準備もいたしておりません。傳えられるところによりますと國会なり野党なりの方面からその考え方が提案があるかも知れないといわれますけれども、そういつた場合は別であります。政府自体は何も政府発案でなければ一切拒否するというような考えは持つておりませんから、事情許し関係方面でも許し妥当な改革であるならば、それは敢し公式論的に何でもかんでも政府側自身発案になる以外は嫌だという考えは持つておりません。現在において政府はそう考えておりませんということだけをお答え申上げます。  それからもう一つ最低賃金問題でありますが、これは実に今日においては重大であると同時に非常に微妙な関係をも持つておりまするのでゐ私自身もこの問題につきましては、敢て今日だけでなくすでに就任の当時から恐らく本年度中に、純碎な意味における労働問題のうちの重要な問題となつて來るその一つは、この問題であろうということは予見いたしまして、密かに労働省当局においては調査をも命じ、私自身考えて來ておるのでありまするけれども、併し今一方において現在の予算関係、それから企業整備関係物價の趨向というふうなものと照し合せますると、この問題は極めて微妙な関係を持つておりますので、將來は知らず今日の委員会におきまして結論的に明確なことを申上げるという点だけは暫らく御猶予を頂きたいと思います。  大体の考え方といたしましては、これは今年度におけるドツジ予算の遂行を中心といるところのデイス・インフレの傾向というふうなものと別に考えましても、新らしい自由な國家における労働者諸君の立場からいつて最低賃金という問題が取上げられて何らか適当な解決をして行かなければならないということは、これはもう言うまでもないところでありまして、すでにそういうような方向を歩むべき関係は從來からも徹底しておつたものと私達は考えております。併し今の場合にこの問題を直ちに取上げるか、それから又全面的な一つ標準となるところ最低賃金制を布くか、それは私よりも皆さんの方が、……山下さんなどはよく御承知だと思いますけれども、最低賃金の中にも一部分の特殊なものに対する最低賃金制を実行して行つて、そうして社会の著しく賃金の面において惠まれないところにだけ先ず社会政策の手を伸ばして行くか、それともこの最低賃金制が全般の産業の賃金一つの動向を決定するような意味の大掛りなものを作るか、二つ三つ方式があるのでありまして、このうちどれかを仮に今檢討対象とするといたしましても、どれを採用するかというふうなところまでは私共の考えも進んでおりません。同時にこの問題につきましては、本來審議会を設けましてそうして一般の知識をも加えて、そうして妥当な結論を見出して行くという方式を取るべきでありまして、政府だけの側に立つて一方的な結論を作り出し、それによつて性急に最低賃金の問題を措置するということは極めて危險も多いと思うのであります。  非常に廻りくどい説明をいたしましたけれども、この問題は極めて微妙でありますので、結論といたしましては私共はこの問題を十分に取上げて檢討する用意を持つておりますということだけを申上げて、その細目についてどういう方式でいつ頃というふうな点につきましては、これはもう暫らく時期を待つて頂きたいと思います。
  5. 山下義信

    山下義信君 大変御懇切な御答弁を得まして感謝いたします。今の最低資金制の問題でありますが、これは只今の御答弁でも言外に労相の牢固たる御決意のあることを伺いまして私共御期待しております。こういう失業情勢に対しまして労働者賃金低下せしめられるということが一方にあり、且又現下経済情勢から考えましても、いわゆる実質賃金低下は不可避の情勢にありますことは、自他共に御承知通りであります。この際労働政策としては十分労働者の御保護を願わなければなりませんので、飽くまで実質的賃金低下は防禦して頂かなければならんと思います。それにつきましては最低賃金制確立の時期に到達しておりますることは労相の御意見に私共全く同感、でこれが延いては社会保障制度國民生活保障の問題、或いは國民生活水準の問題または最低生活水準の問題というようなことに甚大な影響でありますので、我々の方も勉強いたしますが、労働大臣といたしましてもできるだけ御努力を願いたいと思います。  関連いたしまして、只今の御答弁のように当然これは労基法による賃金委員会をお作りになると予想いたすのでございますが、この賃金委員会というのはすでにできておるのでございましようか、或いは最近これを御設置になのでございましようか。その辺も承つて置きたいと思います。  それから失業保險法改正の点でございますが、労働大臣の御答弁含蓄がありまして私共もよく了承いたしたのでございますが、言うまでもなく給付額の点は現行法で満足のし難いことは、当初政府の御方針の通りでありまして、それ以下に落着くの止むを得なきに至りましたことは明らかでありますが、諸般の情勢只今給付額では到底失業労働者労働力維持生活ができなすことは言うまでもございませんので、この給付額引上げまするか或いは特別事情の措置といたしまして、保險料金支拂いまする標準報酬のその額と実際の実收額の差異をこの際断乎として、労働報酬額に引直してやつて支給をするということも考えられ得られるのではないかと私共思う。同時に給付期間につきましても、六ヶ月間で又就職するとか或いは自活の道を発見するというようなことは平素の考え方で、こういうような八方塞がりの状態になつて來ますると、失業者も六ヶ月や七ヶ月では或いは轉回の道を発見し難いということは十分に考えられますので、給付期間延長なども私共も相当に必要ではないかと考えるのでありますが、その間の一つといたしまして少くとも事務局の方も只今おいでになりますから伺うのでありますが、例えば女子が結婚等によりまして退職いたしました場合には失業保險金が頂けないような状態になつていますが、小さいことでありますがそういう点を見ておやりになる考えはございませんか。  それから御答弁もありましたが、日雇労務者失業保險の適用は私共も画期的な御改正で非常に喜んでおるのでありますが、すでに適用されまして幾多便宜を得ているということでありますが、五日間の待機期間というような実施條件につきまして何らか改正の御意見はございませんか、この点も重大な点であると思いますから承つて置きたいと思います。以上の諸点を併せて重ねて御答弁を得たいと思います。
  6. 堀秀夫

    説明員堀秀夫君) 只今賃金委員会設置の問題についてお尋ねがありましたのでお答え申上げます。賃金委員会只今賃金審議会令という政令を実はこの五月に公布施行いたしまして、賃金審議会構想なり骨組なりはすでに固まつておる状況でございます。ただその委員人選につきましては、先程大臣から御答弁のありましたように、最低賃金構想並びにその実施方法等について只今研究しておりますので、その点を睨み合わせて実現をして参りたいというところ骨組が整つておりますが、まだ委員人選はいたしておりません。
  7. 山下義信

    山下義信君 何日頃人選ができそうですか。
  8. 堀秀夫

    説明員堀秀夫君) これは先程御答弁のありましたように、最低賃金実施の時期或いはその実施方法という問題と考え合わせましてまだ最終的には決つておりませんがそれと関連させて考えたいと思つております。
  9. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 失業保險の問題につきまして私からお答え申上げたいと思います。只今お尋ねのように將來失業保險改正をするならば期間延長の問題、或いは給付引上げが問題になるのではないだろうかというお尋ねだと存ずるのでありますが、それにつきまして私共事務当局の者としての考え方を申上げたいと存じます。  先般の法律改正によりまして御承知のように、全般的の保險給付の算定の基礎となる賃金の問題につきましては、先程大臣からお話のありましたように臨時賞與も含めるという改正をいたしたわけであります。それと同時に給付率の問題でございますが、以前の法律でございますといわゆる平均百分の六十という率をとつたのでございます。即ち賃金の高いものにつきましては百分の四十に逓減し、賃金の低いものについても百分の八十まで逓増せしめるという逓増、逓減の方式によります平均百分の六十という方式を採用しておつたのであります。それを今回の法律改正によりましていわゆる総賃金の、これはお話の中に標準賃金と言われましたが、これは標準賃金制ではありませんので総賃金実收で行つております。その総賃金の一律百分の六十という計算方式を採ることにいたしたのであります。それによりましてどの程度の向上になつたかという問題でございますが、大体退職当時の手取賃金の約七三%という額になるのでございます。即ち例えば最近におきまする工場労働者平均賃金を申しますと、今年の三月の勤労統計によりまする工場労働者平均賃金は約八千三百円程度でありますので、本年六月一日以後に離職いたします者につきましては約五千三百円程度保險給付を貰えることになるのでございます。即ち税込八千三百円程度のものにつきまして一率百分の六十、五千三百円程度になりますと手取賃金の約七三%という実は事務当局から申しますと極めて高い率になつておるのでございます。この程度にしましていわゆる最低労働力を維持培養するだけの生活ができるかどうかの問題、これは確かにあると思つておりますが、私共の今の考え方といたしましては、大体において辞めるときの手取賃金の七三%というのであるならばまあ現段階におきましては適当ではないだろうか、こういうふうに考えております。併し將來経済事情変動等もありますので勿論研究しなければならん問題でありますけれども、現在のところでは一律百分の六十で参りますれば手取りの七三%という比率になりますのでまあまあ差支はないだろう、こういうふうに考えておる次第であります。  尚期間延長の問題でありますが、これも先程大臣からお話がありましたようにこういう問題も考えたことがあつたのであります。併し又一方において考えて見ますると仮に六ケ月を九ケ月に延長するということをいたしますと、やはり失業保險の本質から就職促進が大きな根本の理念でありますので、どういたしましても延長いたしました後の三ケ月というものは、前の六ケ月と同じ保險給付の率を支給するというわけには参らないのであります。これはイギリスで曾て保險給付期間延長いたしました例もありますので、後の延長いたしました場合の大体の三ケ月の給付の率は、前の六ケ月において支給いたしました百分の六十という率の、それの百分の八十という率を大体やるのが世界各國のやつた場合の例であります。そうなりますと百分の六十掛ける百分の八十でありますから結局退職当時の賃金の四八%ということになります。そうなりますと退職当時の賃金の半分以下というふうな額になりますのでこの点については余りにも低くなり、そういう事態になりますればむしろ失業対策事業といつたものを起すことによつて、いわゆる失業労働者賃金を高めることを考えることがいいのではないだろうか。こういうふうな考え方からいたしまして先般期間延長の問題につきましては大体そういうふうなつもりで一應見合せることにしようということになつたわけであつたのでございます。併しこの問題につきましても、將來としては考えらるべき問題であるとは思うのでございますが、現在のところでは失業保險給付も、期間延長の問題につきましても大体先般通つた改正法律でここ暫くはいいのではないだろうかというふうに事務当局としては考えておる次第であります。  尚最後の日雇失業保險待機五日の問題であります。実は御承知と思いますが、いろいろ今までの日雇労働者生活実態調査いたしまして、この連続五日、断続七日の待機を設けることとして一應先般法律が制定されたわけでございます。併しこの法律は御承知のように本年十一月から施行されることになつておりますので、この待機連続五日、断続七日という方式が適当であるかどうかということをまだ断定する段階には至つておりません。併しながら私共といたしましては、法の施行される前におきましてもこうした方式日雇労働者生活実態に適するかどうかという点につきまして常時研究を続けております。併しながらまだ法の適用が見ておりませんので、今ここにおきまして、批判する段階にまでは私共は至つていないのではないだろうか、かように考えておる次第でございます。
  10. 山下義信

    山下義信君 日雇労務者の実績はどうですかと言つたのは私のミスでした。日雇労務者につきましては待機期間は実際問題としてやつたときには、いろいろな欠点が出て來るのではないかという意見相当あるのであります。これはお耳に入つておるだろうと思います。例えば月末にやつたときの問題などはすでにこれは受取れないということが起つて來る、この点は考えなければならんという意見がある。そういう点を承わりたかつたのでありますが、これはそれでよろしうございます。  最後に私質疑はこれで打切りますが、労働大臣に伺います。大体政府失業対策、つまり関連いたしましての労働不安というような情勢に対しましては極めて樂観的な態度をおとりになつておるというふうに世人は印象を受けておる。これは國鉄の爭議その他がああいうふうな暴力的樣相から比較的最近は平靜な情勢に移つておる。誰の功績か存じませんが労働大臣も十分御盡力下さつたと思う。私共は社会党の立場でございますが、これは私達もこの傾向はいいと見ておるのでありますが、それを以てして將來も尚且つ樂観するということは、少しく樂観過ぎやしないかということを考える。殊に十一月、十二月段々と退職金もなくなつて來る、いろいろ市中のいわゆる失業者の吸收力というものも社会情勢が乏しくなつて來る、梗塞して來るというような状態に臨んで、尚且つ今日のような樂観的態度をとれるかどうか問題と思うのであります。十二分な対策に御心配下さつておると思いますが、殊にその中につきましては財源がなくては仕事もできないわけでございますが、先般來から政府も御心配でございましたが、これらの対策に対しまする財源の見通し、或いは見返り資金などにつきましてのお見通しなどにつきましては、最近はどういうふうな段階行つておりましようか。この機会に承つておきたいと思います。
  11. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 御質問の後の方が中心のように思いますが、前の方の一般的の労働情勢についての考え方のお質しがありましたので、労働大臣として端的にこの問題について、これはまあ今日の厚生委員会の御質問中心でないではありましようけれども、御質問がありましたから、國鉄の問題があつてから以後國会で以てこの問題について聽かれたのが初めてでありますから、率直に、簡單にお答えしておきます。  私共も山下さんと全く同感でありまして、全逓等の問題がああいうふうな形で以て一應推移して行つたということは、直ちに労働問題に、將來亘つても不安はないのだ、一應これで乘り切つて行けるというようなそんな生易しい性格のものではなくて、これらの問題を改めて眞の労働問題の中に持ち込んで來て、そうして將來に亘る妥当な解決を図つて行くという本当の労働問題の実態は、むしろそのまま後も残されておると考えております。それらの問題は今後の團体交渉にも現れて來ましようし、問題といたしましては、給與の問題、それから今後整理された後の各企業体の中における労働力再編の問題、私共は別に共産党社会党というふうな立場を論じる意思はありませんけれども、労働組合における私共のこの春の國会において提出して賛成して頂いたあの関係法規もそこを狙つたのでありまするけれども、建設的な自由な民主的な労働組合を質、量共に拡大強化して、うんと活動して貰わなければならない。私共は衷心そう考えておるのでありまして、これは政府がそう命じてやるんだというふうな、そんな考えは持つておりませんけれども、この新らしい組合の正しい指導者なり正しい組合員の総意によりまして、この秋頃から本当に組合大衆の中に根を下したところの、終戰後四年間にして初めて到達し得たこの段階に立つて、この新らしい本格的な活溌な組合運動の展開というふうなものをも、私達は切に念願しておるのでありまするし、同時にそれらの組合の活動によつて、今申しましたような幾つかの重要な本來の労働問題が解決されて行かなければならないのでありまして、國鉄、全遍の整理の推移だけを以てして、軽く労働問題の將來に対して結論を下して樂観するというふうな考え考は毛頭持つておらないつもりであります。  ただ昨日も官房長官を通じて吉田総理から話された労働問題の考え方、それは経営者にもこの際整理とか或いは最近の趨勢に乘じて、いわゆる言葉は少し妥当ではないかも存じませんけれども、便乘的追打ちをかけるというふうな態度は、日本再建のために、嚴に愼んで貰わなければならない、同時に組合側におきましても、過去の、今回を指すのではありませんけれども、過去の推移の中に見られたような破壊的な、あの組合運動というものについては、愼んで貰わなければならない。双方がそういう心構えの下に現段階に処する氣持ができ上りましたならば、私共の唱えておりまする労資完全な対等の上に、新らしい民主的な労働組合運動を活撥に展開して貰う、そうして政府の施策などは二義的、三義的な問題であると私共は考えておるのでありまして、この本当の組合の活動を通じてこそ、近い將來日本労働問題解決の第一の拠点にしなければならないという考え方を持つておるのでありまして、この点別に皆さんとそう隔たりはないように思います。  それから失業問題についての財政的の推移の点をお尋ねになりましたけれども、これも率直にお答え申上げます。私共の大体全体としての組立て方の考え方から言いまして、今度のような失業問題に対処する政策というものは例えば昭和四、五年頃行われましたようなああいう失業対策の域を低迷しておつては解決できないのであつて、飽くまでも積極的に國民経済を組み変えて行く、そうして配置轉換をやつて行く、そうして或る部面に雇用力の上昇を図つて行く、その上昇した面に最終的に失業者を安定した形で以て就職して行くようにもつて行く、こういう廣い意味の國民経済の組変えと配置轉換の上に立たなければ、今度のような性格の質、量共に深刻な戰後の失業問題の措置はこれは到底できない。從つて昭和二十四年なり或いは二十五年度の初期なりというふうな短い期間におきまして、今現われつつある失業現象が完全にピリオドを打たれて、そうして安定の状態になるというふうな安易な考え方は到底望め得ないと思うのでありまして、少くとも二年なり二年半なりの一つ期間を置いて計画的に今言つた方式を繰返して行つて年度末に残つておる失業者の尻を少くして行つて、そうして二年半なり三年なり経つたところで以て一應の安定した形の就業状態に持つて行くというのでなければならないと思うのでありまして、從つて現在の考え方におきましては、失業対策の大体は、あくまでも政府計画しておるところの新らしい自由主義によるところの國民経済の再建と、もう一つは千七百億円、今年も來年も再來年も重点的に注入されるところの見返り資金を眞に有効に活用させることによつて、新らしい雇用を見出して行くという点に主力が置かれなければならないと思のであります。大体の計算といたしましては今のような新らしい政策の面において今年において約四十万人それから見返り資金関係から三十万人、千七百億が即定の線に從つて注入されまするというと、合せて六十万人から七十万人ぐらい本年度もあるのであつて、來年度はそれが百二十万人ぐらいになるという計算が、これは綿密に安本その他と計算した結果出ておるのであります。勿論民主自由党の現内閣の経済政策が根本的に破綻してしまつて成功しないという場合には、一切この計算は狂つて來るのでありますけれども、私共のこれは労働大臣の直接のあれではありませんけれども、政府全体の決意といたしまして、この線だけは断乎として確保するというその前提の下に立つておるのでありまして、その前提の下に立つのでありまするけれども、今申しましたような工合であつて今年六、七十万人、來年百二十万人ぐらいの最終安定の形において、新らしい國民経済に吸收されて行くということは十分望み得るのでありまして、その政策は各省において政府全体として進められておることは御承知通りであります。そうして尚且つ残つて來ところ段階において残つて來ところ失業者に対する措置というものが、いわゆる世間で言つておられるところ失業対策という問題になると思うのでありまして、私共の考え方といたしましてはむしろ失業対策の本体は、前段の政策全体と繁がるところの新らしい國民経済の上昇と雇用力の増大がどうなるかという問題の中に、大部分の解決の鍵がかかつておると思うのであります。残つたところの部分が労働省が差当つて受持つて破綻を起さないように持つて行かなければならないところの狹義の失業対策なのでありまして、今年度におきましては明確な数を上げることは今避けますけれども、仮に百万ぐらいの人達が本年度において先程申しました潜在失業者顯在化からも今年出て來る失業者である、今年のうち今言つたような形で以て安定雇用の中に入らない形で残つて行くという人が、仮に百万前後あつたといたしましたならば、それに対してはどういう方法をとるか。第一はいずれのところでも必ずとれるのでありまして、これは失業対策として上乘の策ではありませんけれども、現実には必ず失業保險というものが第一線に押し出されて來る。当面六ヶ月なり数ヶ月その人達の生活を支えるという方式がとられるわけでありまして、現在政府が本年度予算に盛つておるところ予算を以てしては、三十万人ぐらいの失業者に対して保險料を支拂われるという計算になつているのでありますが、併し保險経理は実際は七十万人までは十分受入れられる基礎を持つております。政府の方の支拂は義務費でありまするからして、そういう現象が起きて來れば必ず出す必要のあるものでありますからして、必要に應じて七十万人ぐらいまでは本年度中に失業対策以外の失業保險支拂うことができるということになるのであります。実際に七十万人は恐らく、出て來れば受留めますけれども、出て來ないだろうと思います。予算に計上、予定されておる人員が三十万人、これはどれくらい殖えて來るか分りませんけれども、七十万人までは行かないと思いますが、それで仮に四十万人受止めたといたしますと後の六十万人といつたような人達をどうするか。この人達の中には官公吏で以て退職金を、つまり一般の民間における失業保險と同様に退職金を受取つておられる方もある。それからいろいろな面を眺めて行きますと最後に十万人乃至二十万人くらいの自由労働者等を含めたところの切実な人達に対して、特殊な方式で行かなければならないということになる。それから言うまでもなく失業保險で受止めた人達は、さつき御指摘になりましたが六ヶ月経てば失業者として労働市場に投出されるのでありますからして、來年度は改めて又その人達を失業者として受取らなければなりませんけれども、來年度は百二十万人の雇用があるのでそれと照し合せて段々に減つて行くという工合で以て二年ばかり先に行きましたならば、大体安定の雇用の状態に持つて行けるというふうに考えておるのであります。  それで御質疑中心はまだお答えしませんでしたが、一番裾の底をなす自由労働者を含めたところの切実な人達の失業対策はどうなつておるか、その費用はどうなつておるかという点が御質問中心であつたように思いますが、これは御承知のようにできるならば見返り資金の中から百億円くらい、いわゆる公共事業的のものを実行する、例えば住宅とか鉄道の電化とか都市周辺における道路、港湾等の修築というようなもので百億円くらいのものを出して貰いたいという政府考え方でありました。それを以てGHQのガイダンスとも折衝をいたしました。これについて結論はどうなつておるかといいますと新聞紙上にもいろいろと傳えられておりますけれども、それは絶対にいけないんだという考え方には至つておりません。併しそれを直ちに出そうというところにも至つておらないのであります。必要に應じてそれは出すかもしれない、特に五百億の政府の直接融投資の中で四百億は税減その他とすでに大体枠は決つております。百億は一つのリザーヴとして残して置こうということになつてつておるのであります。残つたところのものを公共事業費にどれだけ繰込めるかということは今後の折衝によるのでありますけれども、率直にいいまして見返り資金はアメリカではインヴェストメント・オンリイといつておりますが、例えば一つの投資されて利息がついてやがて回收されるべきものであるという原則があるのでありますから、この原則と公共事業と結びつけるといつた方法は技術的には非常な困難がある、併しそれはいけないといつてない、現に喰つて行けない人がどんどんいる時に外のところにばかり力を入れてもし方がありませんということは分つておる、この問題は今後の檢討に俟とうということになつております。そういう情勢を睨み合せて積極的に失業対策の問題は二本立にされたのでありまして、もう一つ臨時國会における補正予算の方に適当に金額を計上して、例の緊急失業対策法によりこれをやつて行こう、この場合には今の公共事業から出る場合と違いまして完全に労働大臣自身が必要のところを握つてどんどんやつて行くという形であります。金額等は新聞紙上には多少傳えられておる点はありますけれども、事実は話合いはありましたけれどもまだ補正予算はでき上つていないのでありまするからして、どれくらいということは申上げかねますけれども、大体皆さんの方でも一般のあれで以て聞いておられると思います。その推移はどうなるかという問題でありますが敢て失業対策に限らず、災害復旧の問題、それから公團を打切つてその損失を埋めるための費用、いわゆる今度の臨時國会に出されるであろうと傳えられておる一連の諸政策と同じ意味を持つ、補正予算の今後の折衝がどうなるかという問題にかかつておるのでありますけれども、万々これがすべて駄目になるというふうなことは考えておりません。ここのところはちよつと速記を止めて下さいませんか。
  12. 塚本重藏

    委員長(塚本重藏君) 速記を止めて。    〔速記中止〕
  13. 塚本重藏

    委員長(塚本重藏君) 速記を始めて。
  14. 山下義信

    山下義信君 私の質疑はこれで打切ります。
  15. 塚本重藏

    委員長(塚本重藏君) 外に。
  16. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 労働者の給與ベースの問題ですが、最近聞くところによると人事院の提案で若干増額されるのじやないかという話があり、尚一方鉄道運賃、貨物運賃が増額される。尚米の値段が高められる、これは必至の状況なんです。そういうふうな関係におきまして給與ベースが引上げられることにつきましての労働大臣のお考え、一方経済九原則の関係などがありますが、この枠の中においての賃金ベースの引上げ、並びに物價賃金との悪循環に関する関係などについてのお考えを第一点としてお伺いいたします。  次は関係各省と労働省間における関係事項でありますが、失業対策に関しまして先程もちよつとお話がありましたが、企業家がやはり相当考えてくれなければならないわけで、然るに現在の中小企業状態並びに貿易関係も御承知通りなんであります。そういたしますると先程お話しがありました新らしき自由経済主義そのお話でありましたが、それがどれだけの範囲に納められるものかは存じませんけれども、失業者が出て來る原因の根本が打切られないで、即ち自由経済が持つところの自然の結果として失業者は絶対に止め得られないという情勢、そういう間におきまして單に失業して出て來た者だけの対策に終るということでは、いつまでも繰返して行かなければならない。先程の來年度は百二十万の失業者が吸收されるであろうというお話でありましたが、それは現在の情勢から推しての一種の失業者の救済対策であつて、今からの産業経済の進行過程におきまして、どういう変動が來て又どういうふうな失業状態が起きて來ないとも限らない。或いは併しこれが非常に好轉いたしまして安全雇用に近い方向に向つて來るかも知れませんが、ともかくも失業の根本治療方法というものは講ぜられないで、ただこのままに失業対策というものが流れて行くものである。そうするならば商工業関係企業組織、産業組織というものについての関連性が出て來るわけでありますが、その辺につきましては政府といたしまして又労働大臣といたしましては、どういう考えを持つておられるかということを聞きたい。  尚もう一つは最近アメリカなどを見て來た人の話によりますと、今日の労働は設備と熱意である、技術というものは殆んど機械に任されている、いわゆる技術は機械化して行くのだ、大臣も御承知だと思いますが、廣島におけるA・B・C・Cのカードの整理の機械なども見ましても、誠に想像もつかない程の立派な進歩した状態なんであります。そういうふうに非常に人手を掛けないところの設備というものが生産の能率を増進して行くということから、やはり日本におきましてもそういう線に沿つて進んで行かなければならないと思うのであります。單に労働だから勤労一本、体力一本だということは、文化國家の行くべき進路ではなかろうと思うのであります。そういたしますとここに從來と変つたところの大きな企業態勢、経済機構というものが考えられて行かなければならない、その中においての労働対策というものが生み出だされるわけであります。この辺の構想からいたしまして、これらの関係を、非常にまあ漠としたものでありますけれども、大体どういうふうにお考えになりますかということをお伺いしたいと思います。  そかれらもう一つは同じ関係省との関係におきまして厚生省関係になるのでありますが、労働省で持つておられまする婦人少年局の仕事は主として調査などやつておるということでありましたが、働く婦人、尚一般婦人をも世話をするということも聞いておりましたが、実際はどうか知りませんがそれらの婦人も生活指導をどの点まで手を伸ばして行かれておるのかどうか、その辺はもう御関係がないのかどうか。更に婦人就職につきましては、子を持つたる婦人の採用がいろいろの意味におきまして企業から嫌われ勝ちである、これはどういうふうにしてこの問題を解決して行けばいいのか。又少年労働者にいたしましても、今日世上に流れておりますところの浮浪兒でありますが、これをうまく使つて行かなければならない関係が多分にあると思いますが、彼らも非常に嫌われた情勢に置かれている。やはりこういう部面におきましても労働省として深い関心を持つて、厚生省あたりと緊密な連絡をとつて、この不遇な境地にある婦人並びに少年を生活安定へと導いて行かなければならないと思うのでありますが、そういうことにおきましてのお考えも併せて承つて置きたいと思います。
  17. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 最初の物價賃金関係の問題でございますが、これは極めて重要な問題であり又近い將來に一層重要化して來ると思います。今日は簡單に私共の考え方だけを申上げて置きたいと思います。  この問題に関して労働省といたしまして基本的な立場は、労働者諸君実質賃金を下げないという点にございます。積極的にもつと上げろという考え方もいろいろあると思いますけれども、諸般の日本の実力、現段階情勢等から考えまするというと、先ず努力の中心実質賃金を下げないという点において頑張らなければならないと思つております。從つて物價が上れば労賃を上げなければならないという原則は、実質賃金を下げないという原則を守らんとする以上当然だと思います。我々は物價が上つて賃金も上ると、上つた場合にはそうしなければならないのでありますけれども、それよりは物價を上げないで安定させるという現政府の施策が成功することをひたすら冀つておるのでありまして、考え方中心はそこに置かなければならないと思います。併し御承知のように例えば最近幾つかの基本的の物價が上げられると、それから補給金を切つて行つてその数年後の究極においてはともかくも、中途の段階においては製品の價格の引上げというものを以て補給金を切るという政策に対処するという方法をとつて行きまするというと、場合によつてはそれが最終的の消費物價に響いて來るということもあり得る、どれだけ響いて來るかというふうな問題は、綿密な檢討をしなければならないのでありまして、政府では仔細に檢討して見ました。その結果、或る程度は響いて來る、併し一方においてはあの政策を実行して行きまするというと、政府も屡次約束しておりまするように税金、殊に勤労所得税を下級の人について大幅に引下げるという政策が同時的に行われるのでありまして、從つてこれがどれだけ引下げられるかという問題と照し合せて、初めて労働者諸君実質賃金は維持されたかどうかという結論が出て來るのであります。最近まで傳えられておりますような政策面からの檢討によりまするというと、大藏大臣が現に計画しておる形で以て勤労所得税の引下げが行われた場合には実質賃金低下しないという数字を我々は大藏省から受取つておるのでありまして、併し我々は我々として、そうであれば日本の再建のためにこれに過ぎた幸いはないのでございますから、それで結構でありまするけれども、もう一度吟味して見ようという立場をとつておるのであります。  繰返して申しまするが根本的の立場として、如何なる場合にも労働者諸君実質賃金の維持という線を堅持するというのが労働者の立場でございます。從つて物價賃金との関係はこの点から割出して、この原則から実施されるべきものだと考えております。  それから失業対策のうち一般的の経済政策との関係が、特に中小企業との関係が多いという御指摘は全くそうでありまして、これは他に責任を轉嫁する意味ではありませんけれども、失業者の出て來る最大の原因であるところの経済政策自体が充実してそうして時間的にも遅れずに動いて呉れるのでなければ、ぞろぞろ出て來るところ失業者を、何らの事業も持つていない事業省でないところ労働省がそれらの失業者をやたらに受取つて失業対策をどうしろこうしろと言つても、企業の方でどんどん失業者を出してしまつては到底應じ切れない、この点につきましては、閣議におきましてもしばしば私共の要望を言つております。例えばドツジ・ラインに対し、一般的の企業整備といいますか、全然国民経済全体が三分の一なり五分の一なり取つて小さくなるのではありませんが、要らない方から取つて必要なところへ持つて行くという配置轉換を行うということは当然でありますけれども、さつきも申しましたような便乘的な人員整理というものは嚴に愼んで貰いたいと同利に、中小企業あたりで当然必要であり、金融的な援護をこの際與えれば生き残り、而も生き残つた方が日本経済再建のためによいのだというような面までもこの際破綻せしめてしまつては、後からその数倍の援護をしたところで追いつかないからこの点は十分注意して貰いたいということと、見返り資金を中小商工業に限らずに急速に、失業対策を受持つ用からいつて、浸透して貰いたいということは、私からもしばしば関係大臣に申入れておる通りであります。御指摘のように、失業対策の根本は、敢て一労働省ばかりでなくて、内閣の特に経済関係の各省全体につながるところの、むしろさつきも申しましたように、その基本的な経済政策の方に大きな関係があるのでありまして、これらの点につきましては私共もしばしば要望いたしますけれども、國会においても十分の意見を吐いて頂きたいと存じます。考え方に至つては全く同じ考えでございます。  それから合理化されて來れば労働力というものは段々段々不必要になつて來る、その面からしても極めて重大な問題ではないかという御指摘でありました。この点もその傾向はあるのでありますけれども、率直に申しましてまだ我々はこの点について十分の檢討を技術的にまだ進めておりません。ただ今のところアメリカの例をおとりになりましたけれども、日本の実状を以てすればこの問題がアメリカのような形で以て出て來るというのは、まだ極く少数の基幹産業で以て高度の技術の発達した数箇の事業においてその現象は発見されるのでありますけれども、一般的の中小商工業その他は今のところはそう強烈には現れて來ないと思つておりますが、その点につきましては私も素人でございますので今後の檢討に俟ちたいと思います。  それから婦人少年局の点も子供を持つておる婦人の就労問題、それから少年特に婦人に対してその生活の指導という方面にまで考えておるかというような御質問でありましたけれども、大体論といたしまして私共の了承するところは、労働省の婦人少年局は國民経済の中の労働生産性の維持という観点からの婦人少年問題を扱うべきであつて、そうして一般的な問題についてはむしろ厚生省その他で以てやつておられる方面に重点があると思つております。又國民経済の中の労働生産性を扱うというだけで以て十分過ぎるくらい、如何に有能であつても如何に働いても足りないくらいの重要な問題がそれだけの中に沢山今後残されておると思うのであります。生活指導の問題につきましては、正直のところ今どんなふうに婦人少年局で以てこの問題を取扱つておるか綿密に存じませんけれども、これらの問題につきましては厚生省と十分の連絡をとつてつて行くべきものだというふうに原則として考えておるわけであります。
  18. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 最後の婦人少年局の問題ですけれども局長などの話を聞きますと、一般婦人も対象として考えるのだというような答弁を昨年実は聞いたことがあるのですけれども、それは果してできるかどうか、そうすると厚生省関係はどうなるかというような疑問を持つてつたわけなんです。併し調査はやられましようけれども実際の仕事というものはできないわけですね、労働省としては、今の大臣の言われた見解によるとこれができるそうですけれども、そういう点がありましたからまあ小さい問題ですけれども……
  19. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 今安定局長に聞きますと法律的にはそのようになつておりますけれどもそれは別として、実質的には飽くまでも私の言つたようなところ労働省の活動力の注入するところがあるわけであります。尚細目の点につきましては私あまりよく知らないのに言い過ぎるのもなんと思いますから、相交錯する面におきましては十分厚生省の当局と打合せてやつて行く、まあそういう心構えは持つておりますということだけお答いいたします。
  20. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 それならよく分りますけれども……
  21. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 これは小さい問題でございまして基準局長さんにお伺い申上げたいのでございます。この失業対策には安定局長さん先程のお話では実收入に対して保險給付をなさつていらつしやると、大変結構なんでございますが、これが厚生省方面の健康保險との関係でございますが、健康保險の方の標準報酬月額とそれから保險のかけます、何と申しましようかは額との差額が大変に大きいようなのでございます。御承知のように非常に保險経済の危機を來しておるのでございますが、それで基準局に対して何か厚生省の方では調査方を依頼したり連絡方を依頼しておるようでございますけれども、労働省の方ではこれに対してどういうようなお考えをお持ちになりますのでございましようか。労働省関係の方は経済は円満に行つても厚生省関係の方は赤字になつても危機になつてもいいというようなおつもりでいらつしやいますか。その点どういうようなのでございましようか、承わりたいと思います。
  22. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 失業保險の方の経済は先程來御説明のありましたように非常に強固なことになつております。ただ厚生省所管の健康保險につきましてはいろいろの問題があることは承つております。そこで私共といたしまして保險給付の率を上げまするような場合には、常時厚生省の方と緊密な連絡をとりながら私共の方でいろいろな改正を加えている、そういうようなことであります。だから私共の方の氣持から申しますれば、やはり健康保險の経済も非常に強いものになつて頂いて、そうしていわゆるそうした社会保障的な性格を持つておりますものがお互いに協力してやつていきたい、そういうふうに考えておる次第であります。
  23. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 私の申上げましたのとピントが外れておりましたのですが、労働省の基準局に届けております報酬額と、それから厚生省の健康保險の拂います月額、何と申しましようか、賃金額が非常に差額がございます。六百円から千円、多いところは千円以上の差がございますので、非常に厚生省といたしましても、基準局の方の調査をお願いいたしておられますのですが、この間何らか調整ができないものか。基準局は賃金台帳を作らないといけないとか何とかやかましいのでありますけれども、厚生省の方はそうした権限がないものですか、その点苦しんでおられますが、これは全然省が違いますから別個の問題かも知れませんのですけれども、その点のことをちよつと承りたいと思います。
  24. 堀秀夫

    説明員堀秀夫君) 只今のは労災保險の問題に関係して來るのではないかと思います。この点につきましては労災保險経済の使宜上標準報酬を決めまして、この標準賃金によつて支給しておるわけであります。この労災保險の運用の問題については労、資、中立の三省から構成されまする委員会がありまして、その委員会の御意見も毎月拜聽いたしましてそれによつて民主的な運営をいたしております。尚厚生省との関係は、健康保險と労災保險との性格が違います関係もありまして、多少のずれがあるのもやむを得ない点もあるのでございまするが、この点につきましては、我々の方といたしましても厚生省の保險局の方と十分連絡を密接にいたしまして、余り喰い違いのないようにいたしていきたいと思つております。御了承願います。
  25. 塚本重藏

    委員長(塚本重藏君) 外に御質問はありませんか。
  26. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 私はこの質問も枠から離れておるのでございますけれども、それでも社会制度と又労働賃金などとは根本的に関係がある酒とたばこのことについて大臣に伺いたいと思うのでございます。  私は労働賃金の最高最低によつてその人の生活安定、不安定、幸不幸は限定できない、こう思つております。一例を申上げますが、或る藥屋に相当賃金で働いておりました青年は幼年学校に入学できた程の優秀でありましたが、酒も大好きでたばこは蚊帳の中でも吸いつづけて、はらはらさせられる程でありました。私はこの労働者を見ましてこれ程の金がどこから出るか、月給から出るかと思つておりましたところが、果してそれは丁度不良ジフテリヤ注射液を連想させられますが、最高の注射液の箱とそのレッテルはそのままにして、僞造の注射液を入替えて賣つてつたのであります、これを主人に見付けられたのでございます。現在このような人が幾百万おるかは大臣も御想像できることと思つております。又時には賃金を上げれば上げる程却つて不幸に陷る者も見受けるのでございます。  この社会保障制度の原因となるたばこを又一方には國家の財源として、近頃は他の草の葉で煙草を作り而も脱税を思い出させる民営として一層奨励されると聞きます。又三合配給はさて措き酒と燒酌を増産されようとしております。私は社会保障制度を思うとき政府は昔からなんと薄情のことをするかと思つておりました。先の一松厚生大臣は酒は百藥の長と申され、現厚相は私達の生きておる間は酒の話は止して頂載と申され一向話ができません。折角社会保障制度に力を入れておられるとき、このようなことを聞くべきじやないと思いますけれども、私は大藏、文部、労働大臣に是非この点を聞いて頂きたいと思つておりましたが、その機会を與えられなかつたのです。脱線と思われるかも知れませんが、賃金と酒、たばこの関係について大臣はどう考えておられましようか。酒、たばこを必需品としてか嗜好品として賃金の中に加えられておるのでしようか、加えられておらないでしようか。これが加えられてないとすると先のような事情でいくらでも監獄は忙しくなり、いくらでも警官を殖やさなければなりません。この点をよろしく三大臣に聞いて頂きたいと思います。
  27. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 酒、たばこと國民の健康と或いは道徳性という方面からの問題につきましては、これは大体只今御指摘のようにできることならば少い方がいいし、ない方がいいという考え方に私共は決して反対ではないのでありまして、一松さんのように酒は百藥の長であるというふうに私は言い切る程のあれは持つておりません。お尋ねの点はむしろ厚生大臣なり大藏大臣に聞いて頂きたいと思います。私にお尋ねの点は、賃金の中における重要な部分が酒とたばこに還元されておるという問題を一体どうするかという点にあつたと思います。これは極めて重要な問題でありまして、労働者諸君がそういうことに費すところ賃金の重要な部分というものが節約されるのでありましたならば、当人のために、國民経済のためにそれはいいことでしようけれども、実際問題といたしましてあの激しい労働をしておる人達に、今酒とたばこというものを考えないところ賃金体系なり、生活の樣式なりというものを求めるということは無理だと思います。むしろ私共はこれは叱られるかも知れませんが、成るべく害のないいい酒、いいたばこの安い値で労働者諸君の手に渡るようにし、賃金体系の中からそれに投入されて來る部分を少しでも少くし、肉体的の弊害も除去するという程度ところに今日の私共の政治の限界があると思います。
  28. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 第一回、第二回のときの政府は増産督励用として盛に特殊酒を酒給いたしました。そのときに全國の労働代表者が参りまして酒の効用を聞きましたときに、政府は酒を飯のように思つておる、我々労働者は酒ばかり飲んではおりませんと申したのであります。これは一例であるかも知れませんけれども九州辺の炭坑でもやはりそういうことを言つております。農家はあの特配には大変困つたこともお聞きでございましよう。そういうふうでございましてそういう方面をもう少し何かの方法で以て、節酒節煙は不可能でございましようけれども、何か政府として面倒を見て頂きたい。そうして賃金を有効に使わせ、食うだけの賃金はある筈でございますけれども、その賃金がない場合にさまざまな不祥事が起ると思いますので、どうぞ労働大臣にそのことを少し考えて頂きたいと思います。
  29. 塚本重藏

    委員長(塚本重藏君) 他に質問がなければ私から一つお尋ねしたいのですが、労働大臣は差詰めこの失業保險法改正する考えは持つていない、こう言われたのでありますけれども、失業保險の中の今問題になりました日雇労務者失業保險で、これは十一月から実施せられるのであるが、この日雇労務者失業保險を受けるためには、十一月に始まつて二ヶ月の間に所要の一定日数の掛金をして置かなければ失業手当が貰えない、こういうことになつておるのであります、併し今の日雇労務者の就労状況を見ておると、あの法律に規定しておるような所要日数の掛金が果してできるかどうかという見通しについて深い疑問があるのではないか。あの日雇労務者に適用するように範囲を拡げられたことは非常に結構ではあるけれども、実際には今の就労状況から見ては、失業保險手当を貰うだけの所要日数の掛金ができない日雇労務者が非常に出て來るのではないかというふうに考えられる面があるのであります。そうすると所要日数の掛金のできない日雇労務者というものの生活は非常に困窮を極めるということは言うまでもないのであります。ところがその割合にその資格を取得するところ日雇労務者は、二ケ月の就労日数の多いものだけが失業手当を貰つて、就労日数の少なかつた氣の毎な日雇労務者は、その失業保險の適用を受けられないというような矛盾が生ずると思われるのであります。この点について考慮せられこの点だけは何とか改正しなければならんというような御意思はないでしようか、伺つて置きたいのであります。どうも今の日雇労務者は月のうち三分の一くらいの就労しかない労務者が相当多いと聞いておるのであります、その点を一つ伺いたい。  それからもう一つは應急失業対策でありますが、政府の第五國会で決められたあれで当分押切つて行かれるつもりであるか、押切られる見込みがあるかどうか。私にはもつと應急失業対策というものを強化し、対策を立てて行くように進めて行かなければならん、そのことのためにも臨時國会の早期開催が必要である、こういうことを希望しておるわけでありますが、政府の方はそこまでは考えておらないのか。労働省から見た、その問題の必要から見て臨時國会の開催はどの程度考えておりますか、お伺いしたいと思います。
  30. 鈴木正文

    國務大臣鈴木正文君) 委員長の第一番の御質問の点は少くともあれを実行して行つて、そして必要がありましたならば今のところは通常國会において処置してもいい問題と考えております。というのは只今御指摘になりました自由労働者で保險料を納入することができないような人達に対しましては、緊急失業対策によつて仕事を持たせて行くという方式が取らるべきであり、又御指摘になりました八億何百万円かの殆んど全部をその方面に使われておるのでございます。この問題は第二の御質問と繋がつて参りますが、それで以て押し切つて行けるかとはつきり申しますと、來年の三月三十一日までこれでいいという悠長な考は持つておりません。それらの点は一方において見返資金で間接的であつて労働大臣が直接やる仕事でなくても間接的であつても、例えば都市周辺で以て作られる労働者の住宅建築というものが行われると、こういうものもこの緊急失業対策の性質を持つておりますし、同時にこれもさつき申しましたけれども、補正予算の編成ができましたならば、これらの問題は処置して行けると思います。  最後の御質問はそういつたことをやるときに、今傳えられているような國会の開会の時期において十分であると、労働省の立場からはそう思うかという御質問でありましたが、労働省だけの立場からいいますというと國会を何も十月に持つて行かなければならない関係労働省にはありません。労働省はいつでも開会して頂いて結構でありますし開いて頂いて方がいいのでありますけれども、併し労働者の提出しているところの重要な緊急失業対策の補正予算の件は、他の補正予算の諸件と並んで吟味されなければなりませんし、それから又関係方面の意向は補正予算は二十四年度、二十五年度の通常予算と独立にぴよこんと出て來るものではないので、両方が有機的な繋がりを持つて出て來るので、一方二十五年度予算の概計をも出せと、それが八月二十五日になつておりますけれどもそういうものを睨み合せますと、財政上の詳しい技術面のことは知りませんけれども我々大藏大臣から承つておりますところによりますと、或る程度その間に技術的なむずかしい問題があり時間を食うということも考えなければならないのでありまして、その点におきましては國務大臣の一人といたしまして、十分の檢討を経る時間を政府が必要とするという考え方には賛成しているのであります。それまでに仮に十月までにずれた場合に、この緊急失業対策を持ち耐えられるかという御質疑でありましたが、それはさつき速記を止めてちよつと申上げましたような形で考えておるのであります。
  31. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 このこととピントが外れているかも知れませんが、労働省にお願いする筋でないかも知れませんが、さつき姫井委員からお話が出ましたのでそれに関連して婦人の問題でございます。婦人の問題が緊急失業対策がやかましく叫ばれておりますときに恒久的なことをお願いするのはどうかと思いますが、この頃伺うところによりますと、あちらの進駐軍の家族の方が日本の婦人の方に洋服を縫つて頂きますと安く出來ますので、國に帰りますまでに洋服を縫つて頂いて持つて帰るというように、日本の婦人の洋裁を希望されるということを承つております。そうしたことやらそれから過去の歴史を見ましてもフランスなんか戰爭に負けたときにフランスの宮廷から始まつた家庭工業として、婦人の内職とされたフランス刺繍が世界に廣まつたのでございます。スイスの婦人が家庭工業としてやつておりますスイスの時計がそうであります。そういうことを考えます場合に特に申上げるのでありますけれども、世界中でも日本の婦人の手は本当に器用でありますので、失業対策一つといたしまして婦人の家庭工業といいますか、外に出て男の方と同じように就職するということはこれからむずかしくなつて参ります、もつともつと家庭において婦人が勤労をする意欲を高めまして、そうした方面の生産に從事するように婦人少年局はそういう仕事をなさるのが、これは産業方面が商工省かどつかにお願いするのが至当であるかも知れないのでございますけれども、労働省としましてはそんなことを一つ頭にお置きになつてして頂きたいという希望を一つ労働大臣にお願いいたします次第でございます。
  32. 塚本重藏

    委員長(塚本重藏君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後零時二十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     塚本 重藏君    理事            谷口弥三郎君            姫井 伊介君    委員            山下 義信君            中山 壽彦君            竹中 七郎君            井上なつゑ君            小杉 イ子君   国務大臣    労 働 大 臣 鈴木 正文君   説明員    労働事務官    (職業安定局    長)      齋藤 邦吉君    労働事務官    (労働基準局監    督課長)    堀  秀夫君