○
姫井伊介君
只今委員長のお話になりました
九州地方の
水害地視察につきまして、御
報告申上げます。
委員長の
要求によりまして、参議院から
宮崎縣、
鹿兒島縣、二縣下の
風水害の
視察並びにお見舞に
参つたのであります。
視察の日時は、七月六日から十二日まで七日間で、
往復旅行日数を除きまして、実際に
視察いたしました日にちは八日、九日、十日の三日間でありまして、而も三日間とも殆んど毎日雨天でありまして、
視察に出ましたのは、私と
委員部の
上田主事と二人でありました。先ず
宮崎縣の概況を申上げます。
宮崎縣は七月の八日と九日の午前十時まで
視察をいたしました。で
縣廳で大体の
被害状況を聽取いたしましたが、当日までまだ十分なる
調査が行き届いいおりませんで、ただ中間的な
報告資料に基いての
状況を聞いたのであります。
現地の
視察地は
清武川附近と
都城市内であります。
宮崎縣は五月十五日から
雨降り続きであ
つて、私共が参りました日まで、
晴天は僅かに二、三日しかないとい
つたような
状況で、六月十八日、十九日の
豪雨で、先ず第一に河川の
氾濫が起りまして、六月の二十日
デラ台風で、これは縣内を縦断しております。
風速二十五メートルから二十八メートル七、一番ひどい所は四十二メートルに達しております
状況であ
つたのであります。而もそのうち二十六、二十九日に亘りまして、
豪雨がありまして、前後の
雨水量を計算いたしますと、平年の
年間の
雨量が二千五百ミリそこそこでありますに拘わらず、殆んどそれの半分以上を、今申しました時日の間に雨が降り続いておりました。如何に連日に亘る降雨の
被害が大であ
つたかということが考えられるのであります。而もその上
デラ台風の日は雨を伴わないで風ばかりでありまして、海岸から十キロの奥地に亘りまして、
塩分を含んだ海風が非常なる害を及ばしておるのであります。雨を伴いませんから、その
塩分があらゆる
野菜、或いは稻、殊に
煙草に
被害を及ぼしたのであります。而も
デラ台風の翌日から二日間は
晴天であ
つたのです。だからその
塩分を洗い落すこともできないで、窓などを見ますと、ガラスに塩が結晶しておる
状態なんであります。
從つて煙草などの
被害は甚大であ
つたのであります。極く
数字は略しまして二、三の点を申上げますと、
死者は二十三名でありました。
罹災者の全
人員は殆んど三万人に達しております。
耕地の流出、
埋没でありますが、これが千二百五十
町歩に亘
つております。その当時の見込によりますと、
水稻の
減收が一四%、
陸稻三七%、
煙草九〇%、豆類七〇%、「かぼちや」が七五%、「すいか」が八〇%であります。
煙草を初め
野菜類の被課が
相当大であ
つたのであります。殊に御
承知の
通り宮崎縣は
農家の副
收入といたしましては、早物の
野菜、これは
年間の主なる
收入であ
つたのでありますが、それが殆んどもう
全滅状態になりまして、非常に
農家は悲惨な
状態に
陷つたのであります。
被害の
見積額は五十六億八千万円と言
つておりましたが、これはその日までの非常に小さく見た
数字であると
縣廳では話しておりました。この
應急対策といたしましては、それぞれの手が打たれておるのでありますが、何しろ
通信網が破壊されまして、
通信が十分でないために、又殊に道路が破壊いたしまして、救援いたしますのにも非常に
難儀をしておりまして、殆んど自轉車若しくは
徒歩によ
つておるような
状態で、この
調査も二十二日、二十三日になりまして、大体の
輪廊が得られて、漸く
災害救助対策の
協議会を開くとい
つたような
状態であ
つたのであります。
救援物資は成るべく早く
罹災者の手許に行きますようにと
言つて配分の着手いたしたのでありますが、この
物資数量などは別表にありますから略しますが、二十五日、六日に
至つてその処置が講ぜられておるのであります。縣の
備蓄品によりまして大体の
所要量は充したと言
つておりますが、
あと補充の必要がありますので、
相当量厚生省に
要求をいたしております。
地方の警察或いは
赤十字、
民生委員、
連合軍の
民事部、その他の
協力状態も承
つたのぶありますが、大体においてそれぞれ手が盡されておるようであります。
食糧においては余り困らなか
つた。
藥品においても余り困らなか
つた。
衞生方非において消毒、防疫にも努めておるが、
病氣にも心配は今のところはない。殊にこういう混乱時期に往々
犯罪が起りますが、そういうことも今度はなか
つた。ただ疊が非常に
不足しておるということと、たびたびの
水害で稻などが流されまして、稻の苗の
不足に困
つておりのであります。
熊本縣などからも手に入れるようにいろいろ手を盡してお
つたのであります。
この
被害の
原因でありまするが、これは御
承知の
通り、
宮崎縣が
霧島火山系の非常に脆弱な土質でありますがために、非常に崩壊し易い
状況にあ
つた。而も戰時中の田畑の
開懇はずつと山の上まで及んでありまするが、それに併行いたしまして森林の濫伐が行われた。そこに
デラ台風がありまして、若干
土地に濕りを持
つておりました上に、樹木を根こそぎゆすり上げたと、その後更に
豪雨が降
つて來て、非常な崩壊によりまして、
土砂が
氾濫をいたし、
川底は遥かに高くなりまして、一層
水害を大きくした。だから、風害もさつき申しましたように
塩分を伴うた
相当な
被害がありますが、更にこれに伴うより以上の
水害があ
つたわけであります。これが今度の
被害を大ならしめた主なる
原因だと言われておるのであります。
そこで後始末といたしましては、これはできることとできんことがありまするが、
通信機関も
將來は無電によ
つてやる、つまり有線の電話、電信は到底駄目なんでありますから、こういう途が開かれなければ速かなる
対策を立て、
調査をするのには非常に困るであろうと思うのであります。又今まで
治山治水の
工事というものが、
食糧増産というようなことに捉われまして、殆んど自然を無視してお
つた。こういうふうな大
風水害に当りまして、水がどういうふうに流れて行くかというようなことも深く考えられないで、できるだけ
耕地を
拡めるとい
つたようなことに力がいたされました結果、從
つて非常に
被害が大きか
つた。
將來の
復旧工事におきましては、こういうことがよく考究されて、
砂防工事というようなものがよく行われなければならない。殊に
宮崎縣は毎年こういうような
被害に見舞われて、昨年の
被害の
救済さえまだできていない
状況なんで、非常に困
つておる有樣であります。
農家といたしましては、
肥料の買入れにつきましては
相当の
補助を貰わなければ、
肥料も何も流されてしま
つた。國におきましての
補助の増額は勿論急速に行われなければいけないのでありまして、それに伴いまして、
補助も十分できないのでありまするから、起債の許可ということが
相当行われなければならん。又さつき申しましたように、
救済物資の
備蓄でありまするが、現在は縣に一ケ所でありますが、少くもこれは各
地方事務所に分散さして置くの必要がある。その主なるものは釘とか鎹とかセメントとかい
つたようなもので、余り大きな倉庫など要らないわけなんで、それは一ケ所であるがためにそういうことが非常に手遅れになるので、分散させることがよいのではないかと思うのであります。
次には
鹿兒島縣でありますが、
鹿兒島縣は
宮崎縣よりも
被害程度はもつと甚大であります。これは七月の九日の午後参りまして、
縣廳で
状況を聽取いたしまして、翌日の十日一日と一日半だけを
視察に費したわけであります。先ず
市内の
視察をいたしまして、
鹿兒島市の田上川
附近の非常に甚大なる
被害を見ました。更に翌日は谷山町とい
つた、殆んど市にも匹敵するだけの四万幾らの人口を有する町でありまするが、これはずつと山奥の和田とか見寄とか水喰とか、こういう
地方をずつと自動車が参りませんから、
徒歩で見廻
つたのであります。ここは
風速は大体三十一メートルで、
デラ台風は
大隅地方からやはり
鹿兒島縣を縦断しております。
雨量も、
宮崎縣と同じように
年間雨量の半分以上がこの期間に降
つておるのであります。
対策といたしましては、これ亦早速
緊急部課長会議を開き、或いは
協議会を開きまするなど手を打
つておりますが、一番ひどか
つたのは
肝属地方でありましてこの方は陸路で行くことができないで、ようやく舟を
傭つた行
つたということであります。更に種ケ島、或いは屋久島とい
つたような
地方がありますが、これは悉く舟によらなければなりませんので、
調査につきましては非常に
難儀をいたしております。
應急物資も
宮崎縣と余り変りません。
赤十字社は早速班を
作つて救護班を出したのでありますが、
宮崎縣の方はそれ程の必要はなか
つたと言
つております。ここの
食糧、
藥品、或いは
衛生方面、
犯罪方面も
宮崎縣と大体同じようであります。
災害状況は一番ひどか
つたのは
肝属郡の百引町の
持田部落というのでありまして、これは
罹災戸数が三十六戸で、中二十四戸が
流失、
死者が二十二名、これは後で二十四名と訂正してお
つたのでありますが、
重傷者は十一名、非常に悲惨で、その
写眞などを見ますると、二十幾つかの寝棺を並べまして、その弔いをしておるという悲痛極まりない
状況であ
つたのであります。從いまして、
鹿兒島縣は
死者が九十五名に達しております。
被害の
人員は十二万二千人に及んでおります。
耕地は、水をかぶりましたものと併せますと、一万二千
町歩に当
つております。
流失埋没の
町歩は九千
町歩に及んでおります。農作物の
被害は、
水稻が四〇%、「そば」麦が八〇%、
煙草が四五%、蔬菜五六%とい
つた状況であります。
被害総額は百億円と概算されております。
被害の
原因は、
宮崎縣で申上げましたのに加えまして、更にあそこは御
承知の
通りに殊に甚しい全
縣火山灰を以て構成された
山地帶でありまして、奥に行けば奥に行く程山崩れが多くて
被害が甚しく、
從つて調査もまだ徹底していないとい
つたような
状態でありました。それであそこは傾斜がありません。殆んどつつ立
つておる
状況でありまして、さつき申しましたように、
デラ台風で吹かれて
豪雨によ
つて崩れて來る。それが
川底を埋めて行く。而も流れます
土砂は普通のところは石だから重いから沈むのでありますが、ここに含まれておりますものは軽石であります。だからぼこぼこ浮びまして砂諸共遥か末の平地の田地まで及んで行くので、そういうものを除けますことにつきましては非常な人力を要するわけであります。從いまして、
被害は一層大であ
つたということが言えるであります。今度の処理問題につきましては
宮崎縣で申したと大体同じでありますが、殊にここは
災害用の
備蓄用品といたしまして、
輸送用の油が欲しいというのであります。即ちここを
通つた場合には船によ
つて操作をしなければならないのが、そういう
災害の
輸送用の油がない。
海運局と連絡しても思うように行かない。だから是非これはそういう
方面の油の
備蓄ということを考えて欲しい。トラツクに要する油も
不足でありますけれども、殊にそういうことが申述べられてお
つたのであります。
更に
災害救助法につきましての何か欠点はないかということを尋ねましたときに、こういうことが申されてお
つたのでありますが、
災害救助法の三十六條でありますが、
國庫の
補助のことが規定してありますが、それは
標準の
賦課率で算定した都道府縣の前年度における
地租、
家屋税及び
営業税の合計の百分の五を超過するときはその
超過額に対して定められた率の
補助をするというのであります。これでは実際に即應いたしまして、殊に
物價関係その他からいたしましてや
つて行けない、殊に
地方の財政は窮迫しております。この
地租や
家屋税、
営業税と言いましても、
鹿兒島縣などは
土地は悪いし、又この
家屋も非常によくない。
営業などもあそこなどはそう沢山はない。そういういろいろな点からいたしまして、今のような
標準におかれますと、他の
地方と違
つて非常に
應急措置に対する費用にも困るのだから、むしろこういう規定は撤廃して欲しい。かか
つただけはやはりそれを
補助の
対象にして欲しいというようなことを
要求されてお
つたのであります。
以上甚だ概要でありまして、詳細はここに別に印刷物をつけて置きますから、それによ
つてお
承知置きを願いまして、私の
報告はこれで終らせて頂きます。