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1949-07-25 第5回国会 参議院 厚生委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年七月二十五日(月曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会保障制度に関する調査の件  (失業対策及び生活保護法適用状  況に関する件)   —————————————
  2. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) これより社会保障制度調査に関しまする委員会開会いたします。  本日は、去る二十日の社会扶助調査をいたしましたときに、現下緊急を要する重要問題の一つとして、本調査会においては先ず失業対策相当力を注いで行かなければならん、こういう必要に迫られておりまする現況からいたしまして、先ず政府の持つておりまする失業対策全般を一應聽取する必要がある、こういうことになりましたので、それぞれ関係当局出席を求めて置いた次第でありますが、只今官房長官並びに社会局長等は、司令部の方にそれぞれ用件を帶びて出ておられますから、只今労働省職業安定局失業保險課長亀井氏、局長齋藤氏、それから厚生省保險局庶務課長の堀岡氏、それから厚生省社会局厚生課長黒木氏、それから兒童局長の小島氏、以上内席しておりますので、これよりそれぞれの相当事項についての失業対策を聽くことにします。
  3. 山下義信

    山下義信君 これは皆さんにお諮り願いたいのですが、前回失業対策生活保護法適用関係で、政府失業対策方針を聽かなければなりませんので、官房長官政府代表者、或いは労働大臣厚生大臣出席を求めて置きました。詳細なことももとより承知したいのでありますが、大体政府の肚を聽いて、どの程度生活保護法関係について我々がその関係調査をしなければならんかという見通しを得たいというのが主眼点であつたように思うのでありますが、その点どういうふうに今日の議事の運び方をなさいますのですか。
  4. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 今山下委員指摘通り、この前の委員会で、失業対策としての生活保護法を如何に適用せしむるように改正するかというようなことが審議せられまして、それを進めて行く上において、今山下氏御指摘のように、先ず政府対策を一應知つて置く必要がある。それを我々考慮しながら我々の社会保障を如何にすべきかということを審議を進めて行こうと、こういうことで御出席を願つたものと思います。厚生大臣病氣であられまするし、それから労働大臣出席を約束しておられましたが、これ又昨日來病氣とのことであります。そういう関係で両大臣出席のないのは甚だ遺憾でありまするが、さつき申述べましたような方々の出席を得て、一應我々が生活保護法失業対策適用せしむるように進めて行く上に必要と思われる点が中心でありまするから、それを中心にして一應政府の持つておられまする失業対策、今後どういうふうにして行こうという具体案を持つておられるのか、そういうことを聽きたいというのがこの会の趣旨であります。
  5. 山下義信

    山下義信君 了承しました。ですから、その線に副うての御説明を伺いたい。もうすでに新聞に出ておりますることとか、第五國会委員会速記録に現われておりますることとか、或いは本会議で御説明がありましたようなことをここで繰返して御説明願つても、時間的に無駄でありますから、今の線に副うて我々の参考になる点を御説明下さるならば聽取いたしたい。その後で前回なり只今申上げましたような、政府の今後の方針の大体の所見を是非これは聽かなければ、我々は関係調査の進め方がないと思いますので、どうかそういうふうにお取運びを願いたいと思います。
  6. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 皆さん異議ございませんか……。御異議ないものと認めます。官房長官並びに社会局長も、司令部の方の用件、済めば御出席になると思いますから、先ず労働省職業安定局失業保險課長或いは局長、どちらからでもお話を願いたいと思います。
  7. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 私労働省職業安定局長でございます。私から政府の考えております失業対策概要につきまして御説明申上げまして、尚生活保護法との関連で重要でありまする、失業保險につきまして簡單に御説明申上げたいと思います。  私の方の考えておりまする失業対策段階的に申上げますると、これはもう私から申上げるまでもなく第一段階としては、結局國民経済拡充することによつて民間雇用増大せしめるというのが根本であることは当然であります。即ち國民経済拡充され、民間雇用拡充されて参りますれば、当然に失業労働者はそこに吸收されるのでありまして、失業問題究極解決は、國民経済拡充にあるという点は申すまでもないことであります。これがために政府におきまして努力いたしておりまする問題といたしましては、二つあるのでございます。一つは御承知自立経済確立のための輸出産業を急速に振興せしめようという問題であります。この問題につきましては、当初御承知のように本年度六億ドルの輸出計画中心として、諸般の計画が進められておつたと承知いたしておるのでありますが、最近におきまして御承知のように滯貨の累増、或いは解約等の現象も起りまして、我が國の輸出産業見通しというものが、非常に困難な、或る意味から申しますと悪化しておるような状況に相成つておるのでありまして、この点につきましては、現在のところ経済安定本部中心になりまして、我が國の輸出産業を如何に急速に拡充して行こうかという総合的な施策を練つておるような次第でございます。  第二点の問題は見返資金拡充によりまして運用によりまして、我が國國民経済拡張さして行こう、こういうことであります。これにつきましても、御説明を省略いたしまするが、先般來民間投資並びに公供的事業投資というこの二つ方針を決めまして関係方面目下折衝中であります。御承知民間投資といたしましては、我が國の基幹産業でありまする電氣石炭、鉄、造船等拡充を図つて行こうというのであります。こうした民間投資の結果といたしましては、電源開発等によりまして、相当民間雇用量拡充期待されるのであります。それと同時にその外の基幹産業につきましては、さほど民間雇用量増大期待し得ないにいたしましても、少くともそこからこの失業者を生み出すことのないように、即ち失業防止的な大きな効果を持つておるということを期待されておるのであります。それと同時に公共的な投資、即ち労務者用の住宅の建設或いは水道の復旧、或いは電話の復旧といつたふうな公共的な投資につきましても、御承知の百億程度の見返援助資金運用によりまして、或る程度民間雇用量拡充いたしたい。こうした、公供的な事業投資によりまする民間雇用量は、大体十万以上と推定されております。基幹産業における民間投資による雇用量拡充と相俟ちまして、約三十万の民間雇用量増大期待しておりまして、その線に副うて目下のところ関係方面折衝をいたしておるような次第でございます。以上申上げましたことが、いわゆる失業問題究極解決でありまする、國民経済拡充という面についての政府が今日努力いたしておりまする点であるのでございますが、こうした國民経済の中に、將來どの程度失業者が出るかは分りませんにいたしましても、出ました失業者を全部が全部吸收し得るということは、私共といたしましては期待することは困難であるのであります。そこでどういたしましてもここで政府におきましては、臨期應変な失業対策的な事業を、政府の手によつてこれを行つて行くということが絶対必要になつてつておるのであります。これがいわゆる應急的な失業対策でございます。これにつきましては諸外國ともいずれも同じでありますが、金銭給付によりまするところの対策仕事を起しまして、仕事によつて救済して行こうという方法と二つありますることは御承知通りであります。即ち金銭給付によりまして救済をして行こうというのが失業保險事業であり、仕事を授けて一時その救済をして行こうというのが公共事業失業対策事業二つであるのでございます。先ず金銭的給付の方から申上げますると、これが昭和二十二年十一月に我が國に初めての失業保險制度というものが生み出されまして、その後極めて順調な経過をたどつて今日に至つております。尚去る第五國会におきましては、失業保險性改正をみまして、その内容におきまして画期的改正をいたされたのであります。  失業保險事業の今日までの大体の事業の運営の概要につきまして、お手許にお配りいたしてありまする資料によりまして簡單に御説明申上げたいと存じます。失業保險事業概況というお手許にお配りしたしてありまする資料を御覧頂きまして、一枚目の裏ページを御覧頂きますれば、本年四月の適用事事所数と被保險者数が記載されております。即ち適用事業所の数は、四月末で十三万七千七十四工場でありまして、被保險者総数五百四十九万であります。更に失業保險につきましては、この前の臨時國会におきまする改正によりまして、適用事業拡張をみることになりまして、土木建築、映画、旅館、料理店業接客事業もこの適用事業に加えられることになりましたので、八月一日から適用されることになります。これによりますと、適用事業所数が三万三千、被保險者数が五十万でありまして、この改正によりまして、八月一日以降におきましては、約六百万程度の被保險者がこの失業保險制度恩惠に浴し得ることになつたのであります。  尚この事業保險料、これは御承知保險経済として動いておりまするので、收支合するように組立てられております。そこで先ず民間からの保險料徴收成績でございますが、これは昭和二十二年十一月に開始せられまして以來、四月末日までの保險料徴收成績は、五十三億三千二百五十一万五千四百十四円であるのでありまして、給付といたしまして、四月末日までに支出いたしました金は、三枚目の裏ページにありまするように、保險金保險給付、すべてを併せまして約四億八千七百七十万三千三十一円というもの保險給付として支給いたしておるような状態であるのでありまして、前年度、三月末まで約五十億の剩余金を生み出しておるのでございます。この五十億の剩余金は、預金部資金に預けてあるのでありまして、將來企業整備等深刻化に伴いまして、本年度特別会計において賄い得ない状態になりますれば、その預金部資金に預けてありまする五十億を又繰入れまして、これを支出して行こうということになつておるのであります。併しながら現在までのところでは、前年度積立金五十億まで支出するという段階には至つてもおりません。むしろ左様なことが本年度中に起るとも期待をいたしていないのであります。何故かと申しますれば、本年度特別会計の全貌を申上げますれば、本年度特別会計における民間からの保險料徴收は百億であります。成立いたしました予算における國の繰入は二十億でありまするけれども、國の繰入は業務支出でありまするので、民間から徴收いたしまする保險料百億を全部使い切るためには、百億の半分でありまする五十億を政府は支出しなければならないのであります。予算的には二十億の繰入れになつておりますが、將來失業が深刻になりますれば、当然更に三十億を追加して行かなければならないのであります。この三十億は予算の補正を必要とせず、業務支出でありますので、当然それを支出しなければならない形になります。そういたしますと、本年度特別会計といたしましては、民間保險料百億、これに見合う國の業務負担五十億といたしますれば百五十億でありまして、百五十億の金額と申しまするのは、大体六ケ月間給付することになりますると、大体平均三万円になるのであります。そういたしますと、約五十万人の者を半年間救済することができるということになるのであります。五十万人吸收するということは、結局毎月二十五万人の失業保險受給者に金を支給するということでありまして、二十五万人の幅で今年の四月から來年の三月まで吸收救済することができることになるのであります。そこで現在失業保險の支給によりまして、その生活を保護されておる労働者の数はどのくらいであるかということでありますが、昨年の八月、九月頃までには失業保險適用を受けまして救済されておりました数は極めて少なかつたのであります。併しながら最近におきましては、逐次殖えて参つて來ておりまして、お手許にお配りしてあります資料の一番最後の少し長い表になつておりまする失業保險業務速報というのを御覧頂きたいと存じます。失業保險業務速報の裏から二枚目の表のページ初回第二表の一というところでございます。第二表の一のところの(4)に、初回受給者数というのがございます。それを御覧頂きますと、即ち昨年の四月から今年の五月末までにおける初回受給者数がずつと列挙されております。即ち失業保險給付を受けまする‥‥域首せられました後に初めて安定所に現われまして、そうして失業保險給付を初めて受けた者の数、その月において止めて受けた者の数が出ておるのであります。即ち昨年の四月、五月程度は殆んど数はありませんでした。大体において民間企業整備が時期的にずれておりました関係上、昨年大体十二月頃から企業整備が逐次行われて、それが進んで來ております。即ち去年の九月におきまして初めて安定所に現われました数字は九千二百人でありましたが、一月になりますと殖えまして一万人になり、二月も一万人、三月が一万三千、四月になりますと二万三百七人、五月になりますと約三万人という数字に相成つておるのであります。そうして五月に初めて現われましたのが三万人でありますが、これによりまして五月中に失業保險給付を受けた者の実人員の総数は約八万五千人程度であるのでございます。即ち今年五月失業保險給付によりまして、その五月中の生活を保障されたものの数が約八万五千人という数に相成つておる次第でございます。尚御参考のために申上げておきますと、最近におきまする失業保險金額は先般の改正によりまして、退職当時の賃金平均一律百分の六十ということになりました関係上、失業保險給付の額も極めてよく相成つて來ております。一つの例を引いて申上げますと、本年三月におきまする工業労働者平均賃金は八千二百二十五円でございます。そういたしまして失業保險金といたしまして、支給されまする額は五千十円でございます。そういたしますと、工業労働者平均賃金八千二百二十五円でありまして、手取り賃金平均いたしまして六千六百八十二円であります。從つて失業保險給付が五千十円といたしますれば、工業労働者退職時の手取賃金に対しまして、約七四・九%、即ち手取賃金の七五%に該当する金額失業保險金として支給されることになつておるのであります。更に商業労働者の例を引いて申上げますれば、商業労働者の本年三月の平均賃金工業労働者よりも高いのでありまして、一万四百三十一円でございます。それに対する手取り賃金は八千百六十九円でありまして、失業保險金は六千三百円の失業保險給付になるのでございます。尚石炭鉱業分は九千六百三十二円でありまして、手取額は七千六百六十八円、これに対しまして失業保險金は五千八百五十円でございます。これは二、三の例を申上げたのでありますが、本年、三月の工業労働者その他の労働者平均賃金を基にいたしますると、大体におきまして退職当時の手取り賃金の七五%程度に該当する額が、失業保險金として支給されるということになるのであります、この失業保險金につきましては御承知のように税金等が課かつておりませんので、一應失業時の最低生活を保障するには十分なものと私共は考えておるのでございます。尚この失業保險につきましては、先程申上げましたように、保險経済として極めて強固な経済に立つておるのでありまして、私共は本年程中に約五十万人もこれによるものが出て來るとは期待いたしておりませんが、さようなわけで五十万人即ちこれを毎月に計算いたしますと、毎月二十五万人の人々がこれによつて吸收されることになつておりますが、さように失業者が、沢山出て來るとは今日まで私共のところでは期待もいたしていない状態であります。尚失業保險につきまして問題であります日雇労働者につきましては、失業しますと深刻な情勢になりまするので、本年十一月から日雇失業保險制度が我が國において始めて実施されることになつて來ると思うのであります。先般來東京その他で失業問題がやかましく叫ばれておりましたが、主として東京都、或いはその他で叫ばれました日雇労働者のあぶれ問題であつたのであります。しかし日雇員業保險制度が実施されました曉には、いわゆる日雇労働者のあぶれ問題につきまして、極めて大きな効果を奏するものと期待いたしておるような次第であるのでございます。  次にこの失業保險制度金銭によるところの一時の應急措置であります。併しながら失業保險制度は御承知の五人以上の工鉱業につきましての適用でありまして、五人以下の工鉱業には適用はございません、更に又引揚者についても適用ございません。或いは又御承知農村等におきまする潜在しております失業者が、顯在して参ります際にも適用はないのであります。そこでこうした人々に対しましては御承知公共事業と、失業対策事業という二つ仕事を授けるやり方による應急措置を講じておる次第でございます。公共事業につきましては、大体本年度予算約五百億で約四十五万人の実人員を就労せしめる計画になつておりまして、失業者優先の原則に則りまして、この公共事業失業者吸收せしめるごとく努力しております。昨年度実績を申しますと、昨年度におきまして実人員約五十万人でありましたが、公共職業安定所の窓口から約十万人の失業者公共事業に就労せしめておつたのであります。本年度におきましても、先般第五國会におきまして通過いたしました緊急失業対策法による、いわゆる失業者吸收率を法律の規定といたしましたので、この規定によりまして失業者を更に一層公共事業に就労せしめたいと思つて努力いたしておるような次第であります。公共事業はその程度にいたしておきます。  次は失業対策事業でございます。この失業対策事業は御承知にように、最後土壇場においていわゆる仕事を授けて失業者救済して行こうという事業でございます。初めから失業対策事業を起そうというのではないのであります。即ち民間産業に斡旋をし、更に又公共事業に斡旋し、或いは又失業保險制度によりまして民間企業整備等によります失業者を、いわゆる失業保險によつて救済する、そうしてその六ケ月の期間が切れて後、どうしても仕事がないという場合に、始めて発動するところのものであるのでございまして、この事業は飽くまで失業者吸收ということのもを目的といたしまして行われるところの事業であります。この失業対策事業予算は、先般通過いたしました予算におきましては約八億でございまして、これによりまして実人員四万人の失業労働者吸收することができる建前になつておるのであります。この失業対策事業は、先般皆さん方すでに新聞紙上で御承知にように、東京で日傭い労働者があぶれまして、いわゆる東京都知事、或いはその他のところに居座り戰術をやりましたときに極めて大きな効果を奏しましたのであります。当時東京都におきましては本年度公共事業一つも行なわれていなかつたのでありますので、特に日傭い労働者がどこにも仕事がないという状態が今日まで約四・五ケ月程続いておつたのであります。その間あぶれました日傭い労働者の数は約二千から四千人程度であつたのであります。そこでこの緊急失業対策法によりまして、この失業対策事業を急遽五月から約四千人、最初は約二千人、次は三千人、次は四千人というふうに員業者の出る工合に應じてこの事業を起しましたところ、幸いにも一應東京の日傭い労働者のあぶれというものは今日解消するに至つたのであります。併しいずれにせよこの失業対策事業費金額として約八億でありまして、労働者の数も今申上げましたように極めて僅かな数であります。もともとこの事業最後土壇場救済するところの関係上、さようなことになつておるとは存じておりまするけれども、将來の失業情勢と睨み合わせまして、臨機應変措置を取つて参りまするには、この失業対策事業臨機應変に起したり、或いは停止したりして行くというようなことが必要であるますので、この八億程度予算では十分ではないのじやないだろうかというふうに考えております。即ち事務当局といたしましては、今日のところ八億の予算を更に拡充して頂くように目下大藏省その他に折衝いたしておるような次第であるのでございます。私共の考え方からいたしますれば、以上申上げましたように失業対策考え方といたしましては、先ず民間雇用拡充を第一に置き、第二段階といたしましては、いわゆる企業整備によるものはここ暫くの間は失業保險制度により、金銭給付による救済を行ない、更に金銭給付によつて賄い得ない場合におきましては仕事を授ける、これによつて仕事を授けて救済をして行こう、その仕事を授けるのが公共事業失業対策事業である、かように考えておるのであります。而して以上の各措置によりまして吸收することのできない失業者に対しましては、厚生省所管生活保護法によりまして、その最低生活を保護して頂きたい、かように考えておるのでありまして、そうした面から私共の方では厚生省社会局と緊密な連絡を取りながらそうしたことを考えておる次第でございます。  これを要約いたしますれば、私共の將來失業対策として考えて参りたいことは、先ず緊急失業対策法による臨機應変なる措置を執り得る失業対策事業拡充して行くということが一つ、それから第二には、いわゆる民間雇用拡充のために輸出産業振興総合施策を早く作つて貰うということ、並びに見返資金運用についてでき得る限り失業者吸收に役立つような、見返資金の活用ということをやつて頂きたいというふうなことを考えて、目下そうした線に副うて努力をいたしておるような次第でございます。甚だ粗雑でございましたが、以上最近の考えておりまする内容につきまして御説明申上げて次第でございます。
  8. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) お諮りいたしますが、以上の説明で御質問もあろうかと思いますが、一應厚生省関係の方の話も聽いた上で質問いたしますか。如何でございますか。
  9. 山下義信

    山下義信君 只今説明質疑をさして頂きたいと思います。又それで明瞭な点はあとの人が問わんでも済むだろうと思います。ちよつと総括的な御説明でしたから、一、二質疑をさして頂きたいと思います。
  10. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) それでは質疑をお願いいたします。山下委員
  11. 山下義信

    山下義信君 労働大臣が御出席でしたら、伺いたいと思つたのですが、有能な安定局長が見えておりますので、局長に私伺うのでありますが、政府の予想する員業者の数ですね、これは本年の四月に当局予想数をお出しになつたのと、それから第五國会開会中にもいくらかお見込変つて來、又最近新聞で伺いますと、今月の初め頃の労働省の御見解の数字違つて來たように思うのでありますが、この失業者見込数は非常にむずかしいことでありまして、その正確なものとかはつきりしたもの、確定的なものをおつしやるということはむずかしいわけでありますが、最近のお見込数はどういうふうになつておりますか、又その当初の見込数変つて來原因等について若干の当局の御所見を伺いたいと思います。それが第一点です。  それから今御説明になりましたことで、失業保險金のいわゆる平均給付額が五千十円になるということであつたのですが、この給付見込でありますか。実際の実績から出ているのでしようか。その点どうでしよう。この平均給付五千十円を支給することになると、やはり保險料というものも、それに從つて收入があつたかという点なんですが、その点どうでしよう。  それから第三点は今失業保險に関する経理状況が堅実であることは我々も実は意を強うしておるのでありますが、大体まあ五十万人分はあるのだ、大丈夫なんだということでありますが、若しこの失業保險適用者が非常に増大して來ますと、いわゆる被保險者受給者との比率パーセンテージが変化して來ますと、今後の失業保險経済の上にいろいろな又変化が來はしないかと思うのでありますが、そういう点について何か当局見通しとか、計画とかいうものを持つておいでになりますか。先ずその三点を先に聞いて置きたいと思います。
  12. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 私からお答え申上げます。失業者の將來の推定の問題でございますが、先般第五國会におきまして、政府におきましていろいろお答え申上げました数字よりも、その後多少減つて來ている点があります。即ち行政整理の問題であります。これは当初におきましては、約三十万人程度の離職者が出て、その三十万人のうち七〇%の二十一万人程度失業者になるのではないだろうかというようなことを申しておりました。併しこれがその後定員法の改正が行われ、その定員法の実施に当りまして、その後逐次整理されて参つておりまして、今日のところでは地方公共團体における行政整理をも含めまして、大体二十万人程度の離職者が出るものと推定をいたしております。そうして二十万人のうち、失業者の数は大体十五万人程度になりはせんものだろうかと、かように考えております。これが非常に大きな点でありまして、尚御参考のために申上げて置きますると、この失業者十五万人と見ましても、私共の最近の例を申しますと、もつと減るのではないか、かように考えておる次第でございます。即ち、御参考のために國鉄の例をちよつと申上げたいと思います。この二十万人の行政整理のうち、國鉄が約九万六千六百五人を整理したのであります。九万六千六百五人のうち約一万七千程度は、鉄道省関経の鉄道弘済会その他の外郭團体に就職する者もあり、或いは病氣等の長期欠勤等によつてやめた者もありますので、約一万七千程度救済を全然必要としないということになりまして、一應救済する数が九万六千六百五人から一万七千人を引きまして約七万九千六百五人となつております。約八万人となつております。而も関係者からの樣子を承りますと、約八万人のうち、約三分の一程度は自然退職に伴なう帰郷と申しますか、全然仕事をしようという者がない、即ち約八万人の中の三分の二程度が、いわゆる失業者として再就職というものを希望するのではないだろうか。勿論これはまだ全國的には詳細に分りません。分りませんが、即ち十万近い整理を行なつて失業者として八万人の三分の二でありますから、五万六千人、この程度数字になるのではないだろうかと、今予想されております。そうなつて参りますと、現在のところ私共は、地方公共團体の行政整理を含めて二十万人の離職者が出、その約七〇%の十五万人という失業者が出はせんかと考えておるのでありますが、或いはもつとこの員業者として出る数は少くなりはせんだろうか、こういうことを目下のところ考えております。それから尚先般國会で御説明申上げました見込数違つて來ると思われまするのは、引揚人の問題でございます。これは御承知のように当初日本政府におきましては、千島、樺太、サガレン、ロシア等に約三十万人の日本人が抑留されておつて、その者が大部分本年度中に全部帰るものと推定をいたして今日まで來ておつたのでございますが、御承知のように、ソ連邦におきましては、日本人は九万五千きりおらんと言うておりますし、その九万五千きり本年度中に帰つて來ないとするならば、約十万人といたしまして、その七〇%の七万人程度失業者になりはせんだろうか、かように考えられるのでございます。即ちそうした面におきましと、最初に行政整理が、地方公共團体も含めて三十万ということを申上げておりましたし、或いは引揚人につきましては、いわゆる三十八万人帰つて來るものと思つて、その中二十万人が失業者になるということを申上げておつたのでありますが、その点が先般の國会におきまして御説明申上げましたのと、その後の情勢によつて変つて來ているということが申上げられると存じます。尚そのほかの問題につきましては、左程今日までのところは変化はないようでございます。ただ企業整備の問題につきましては、これも最初申上げましたように、最近輸出不振というようなことから、企業合理化が私共の推定よりももつと出はせんだろうかという声が経済安定本部その他の方に一部ございます。ございますが、私共の方の失業保險関係で現われておりまする数字を申しますれば、私らが推定しておりましたものも或る程度多き目な数字であるような感じもいたします。これは併し將來どういうような形で出て來るか分りませんが、一應私らの考えております数字はそう余り多過ぎる数字ではないような氣がいたしております。大体以上が先般の国会で御説明申上げましたものと違う点でございます。  その次が保險金の問題でございますが、大体先程申上げました工場労働者平均賃金は三月の工場労働者平均賃金でございます。家族は三・五人の家族で計算いたしております。三・五人の家族で計算した工場労働者平均賃金でございまして、これが本年六月から先般改正失業保險法が適用になりますので、六月以降は今申しましたような給付になる、こういうことでございます。即ち六月の工場労働者平均給付額が五千十円になり、そういつた給付の率で支給されるものと考えております。これは平均給與でございます。將來はどうだろうか、こういうお尋ねでございます。大体において現在の保險給付を百分の六十という一率に改正いたしましたのは、保險料と見合つてそういう改正をいたしたのでございます。そうして將來どの程度この企業合理化によつて失業者が出るだろうかということを考えて見ましても、先般私共が議会で答弁を申上げました数字でありまするならば、優にこの保險経済によつてこれを賄つて行くことができる、こういうように考えております。本年度保險経済といたしましては、即ち工場労働者平均給與を先程申上げましたように五千十円といたしますと、それを六ケ月掛けると三万円の平均給與になります。そうなると百五十億ございますから、三万円とすると五十万人救済できることになり、前年度積立金五十億がございますので、その五十億も更に使い切るものとして國はこれに対して二十五億支出しなければならん。合計して七十五億になる。本年百五十億に七十五億を足しまして二百二十五億、そうなると三万円ずつ支給するとして約七十五万人吸收するということになるのでありまして、私共現在のところではこれ程失業者が出ることはない。先ず企業五人以上の工場でありますから、五人以上の工場にして、七十万人の企業合理化が本年中に現われるものとは私共は一つ期待をいたしておりません。否むしろ現在のところではむしろ前年度の剩余積立金が五十億もある。本年民間として保險料百徴收するというわけであります。そんなに出るとも私共は期待できませんので、否むしろ保險料を或る程度下げたいという一部の声すらあります。併し現在のところでは將來どうなるか、私共は予想つきませんので、保險料は一應この際下げることは止めよう、一應本年度はこの樣子で行つて本年中の保險事業成績によつて保險料を下げるということは明年度の問題にしたい。こういうように考えている次第でございます。大体今のところでは七十五万人失業保險で出るということは今のところ考えておりません。
  13. 山下義信

    山下義信君 大体了承しました。最後一つだけ、肝腎の我々が調査したいという当面の関係のことでございますが、いろいろ時間的のずれがある。その点も問題になるだろうと思いますが、且つ又当局が大体樂観的の態度でおいでになるのですが、私は先般も或る席で指摘したのでありますが、成る程今は樂観的な見通しになるのでありますが、段々先に行くと段階的の困難性が増して來るので、当初のような情勢で今日の失業が適用できるならば、最後にはいろいろな情勢が困難になると思います。殊に國鉄の今の整理状況は私達も非常に実は内心若干の安心もしておりますが、あれは御承知のいろいろの國鉄の関係仕事があるので救済し易い状況でありますから、その例を以て他の公務員の整理などは適用は一率にはできんと思うのですが、結局最後に今局長の言われたいろいろなもので救済しきれない。最後厚生省関係の公的扶助関係によらなければならんという状態について、そういうことがはつきり見通しのつくのは大体いつ頃のような、時期的に見ていつ頃とお考えになりますか。それはもとよりいろいろな今後の事業計画の変更などにも関連はいたしますが、凡そどう考えられますか。いつ頃のようにお見通し‥‥、それから今一つ生活保護法によつて扶助を與えようとすると、與え方は労働者としてはいろいろな対策によつて救済し得られる。その失業者と同じような生活の保障を希望されますか。いわゆる最低の困窮生活さえ扶助して貰えればいいのだ。そういう考えを持つておられますか。生活保護法に対しまする労働者側の期待はどのような期待を持つておられますか。その点も御所見を聞いて見たいと思います。
  14. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 私共といたしまして生活保護法によつて公的扶助に陷る危機の問題でありますが、これは甚だあれでございますが、全然私共の方で予想は今日のところつきかねるのであります。併しながら私共の氣持といたしましては、先程も私申上げましたように、即ち見返資金運用によつて、例えば民間雇用がいつ頃から拡充されましても、それはその通りにも行くとも思つておりません。そういう時間的のずれをどうするかということが私共の失業対策の問題でございます。そこで私共といたしましては、失業対策事業にどの程度予算が次の國会拡充されるかどうかということに大きな問題がかかつて行くのではないかと私は考えております。尚私共の方といたしましては、生活保護法運用につきまして、特に労働者の立場からお願いをして置きたいことは、生活保護法運用に当りまして、臨機應変にこの金が支給できるようなことにできないものだろうかということを私共考えておるわけであります。御承知のように今年の四月五日以來皆さん承知通り東京都知事が罐詰になつたり、ああした騒ぎがありました。あの記事を見ますと、私達特に感ぜられますことは、特に日傭労働者になりますと、日雇の失業保險制度も現在のところ行われておりませんのは、どうしても臨機應変に、例えば四日間働けなかつた。全然生活が困難だつた。或いは一週間、十日という短い期間しか働けなかつたなんという者に臨機應変措置が取つて頂けないだろうかということを特に四月以降の経驗で痛感しております、私共事務当局といたしましても、社会局の方と常時連絡は緊密に取つておりまして、即ち方面委員その他公共職業安定所にいろいろお願いいたしてありますけれども、それに連絡を緊密に取つて頂くようにお願いしておりますけれども、生活保護法運用について臨機應変に金が支給できないものか。私共失業救済という面を特にお願いをしたいという感じを持つております。その金額は私共は生活保護法金額等はどうかということは承知いたしておりません。私共の氣持といたしましては、失業対策事業に働いておる労働者は一般の労働者賃金より一〇%、二〇%下げるということにいたしております。即ちどどのつまりに最後土壇場にその失業対策事業に働くものは一般の賃金より一〇%、二〇%下げることに低めにいたしております。そういう労働者などにつきましては、家族数についていろいろ計算が現われると思いまするのでありまするけれども、失業対策を一般よりは低目にしなくては惰民要素になりはしないかとそういうことになり、現在の私は生活保護法の批判をいたしておるのではないのであります。一般的の見地から申しますと、その最後救済手段であります失業対策事業賃金は一般よりも低目にしております。それよりも高いというとちよつと拙くはないだろうかという感じを持つておりますので、その点だけ御参考に御答弁いたして置きます。
  15. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 ちよつと二つだけお尋ねいたします。失業対策につきまして輸出産業の点でございますが、これも今のところでは輸出不合格品が余りにも多く帰つて参りますところでございます。これはその筋の專門家がよく審査したものを輸出させるものと思うが、こういうことになるとこの振興を増すことになりませんので、さような憂目になる前に取調べられないものか、これらは失業者を出すばかりになるのであります。この大問題に対する御返事を私頂きたいのであります。二番目は愛知縣の半田の用水期成会のこれは至れり盡せりの失業救済対策の保護制度と申さなければならん、それは用水、畜産、漁業、農業などの有らゆる事業に及んでおります。政府はこれに対して無條件に援助なされていいと思つておりますが、これに対しては如何お考えでありましようか。
  16. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 私からお答え申上げます。  先ず最初の最近の國際貿易の関係でございますが、お尋ねのように相当不合格品等もあり、國際貿易の関係は極めて樂観を許さない状態になつております。これにつきましては、目下のところ経済安定本部におきまして詳細これに対する対策を総合的に練つておるということでございます。私の方の氣持といたしましても、できるだけ早くそうした面に明るい光明を見出すようなそういう施策の樹立することを希望いたしております。  二番目の半田の問題につきましては、私共よく詳細に承知いたしておりません。又帰りまして関係方面ともよく連絡を取つて答弁いたします。
  17. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 まだ沢山ありますが、一應の説明を承わつたらどうですか。
  18. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 保險財政は十分賄えて行くというお答えがあつたのでありますが、失業保險の件失業手当の関係はどうなつておりますか、現に失業手当を貰つておるものが政府から職業安定所の方に金が廻らないので十分に渡せない。或る地方では政府から金が來るまで待つて呉れとか、当分半分くらい持つてつて我慢しろといつた工合で、失業手当を貰う者が不安に襲われている。その点実情はどうなつておりますか。
  19. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 只今の点にお答え申上げます。失業保險金の支給の状況が、政府から金が安定所へ行くのが遅れるからしてまずいのじやないか。こういうお尋ねでございます。確かに一部そういう点があつたことはあつたのでございます。特に本年度の四月の予算におきましては、御承知の半月分の失業保險予算を組んだ関係がございまして、四月は本当に失業している労働者の方々には御迷惑を各方面におかけしておつたような次第でございます。併しその後といたしましては、私の方といたしましては大きな企業整備が行なわれることになりますと、直ぐ会社、工場とも連絡をいたしまして、それで直ぐ金を拂えるように準備を進めております。金の流し方におきましては、最近におきましては大体貰えるのじやないか、さように考えております。今年の四月、五月にかけましては確かに相当ありました。併し資金前渡の関係も順調に進んでおりまして、今日のところでは失業者に金がないから一週間待て、或は半分で辛抱して呉れということは今のところはないと、かように存じております。
  20. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 実際問題として大阪府の池田職業安定所における七月分の手当が半分しか渡つてない。現に私の友人がそうであつて、この状態では先に引続いて貰えるか貰えないかということを尋ねて來、現に手帳を私見ましたが、半分しか貰つてないということは事実なんです。余程うまくやつて貰わぬと相当な不安があるそうです。  次に厚生省の保險局庶務課長の堀岡さんにお願いいたします。
  21. 堀岡吉次

    説明員(堀岡吉次君) 保險局の関係におきましては、当面の失業問題に対しまする対策としてあれこれと言いますものは、只今労働省職業安定局長さんからおつしやいました失業保險に対應しますところの海上の船員労働者に対するところの失業保險の問題が当面の問題でございます。この問題は大体労働省の方からお話しになつたことと大体揆を一にしておりまして、特に船員労働者につきましては、運輸省の方とも連絡をとつておりますが、失業の見込みと言いますものは、大体予想の見込みよりも相当下廻る数字で現在のところ予想されております。從つてその面だけでは取上げて言う程の問題は出ないのじやないかというふうに考えております。ただそれ以外一般の問題としまして、最近における企業整備その他の関係から保險経済全般が非常に大きな赤字になつておると言いますか、逼迫を來しておりますので、それが絡み絡んで疾病その他の面からするところの労働者生活安定を破りまして、不安にする虞があるということ、それからそういうことのために離職後における一部の給付がありますが、それらが非常に不安になる、そういう点と、それが更に発展しまして、一部の給付は制限しなければならぬのじやないかというふうな虞があり、そういうことによつて労働者生活安定というものの根底の一つをゆすぶるのじやないかという虞を現在抱いているのであります。この点につきましては、先般の社会保障制度審議会に取敢ず緊急の問題として最近の状況をお話して、どうしたらいいかという御相談を申上げてその結果に基ずきまして、次の臨時國会に財政上の措置等を講じて何らかの應急対策を立てて行きたいというふうに考えております。將來の問題としましては、國全体の経済の根本的建直しの問題と裏腹の問題として考えなければならぬ点が多々ありますので、十分社会保障制度審議会なり或いはその他の委員会等と相談をしまして、根本的な対策を立てて行きたい、こう思つております。ただ取敢ずの当面の失業対策としては、非常に微温的な話でございますが、大体今申上げたような程度のことしか現在のところとしては、問題といたしておりませんので、御了承願いたいと思います。
  22. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 次に社会局の厚生課長の黒木さんに社会局関係のお話をお願いいたします。
  23. 黒木利克

    説明員(黒木利克君) 社会局長と主管課長が司令部に行かれておりますので、私から代りまして申上げます。失業対策給付をします人達の対象につきましては、厚生省といたしましても、予想がつきかねておるのでありまして、目下のところは現在の生活保護法の対象になつておりまする百六十五万の数の約一割増百八十万程度の人達が生活保護法の対象になるであろう。これは予算の概算を作ります建前からそういうふうな数字は持つておりますが、実のところ基礎はないのでございます。それから労働省から只今お話がありました生活保護法臨機應変運用につきましては、扶養労務者問題について只今研究をいたしておりますが、近く成案ができると思います。その考え方は扶養労務者に対して生活保護法適用のある者に対しては、できるなら毎日生活扶助費を支給するようなことが考えられないだろうかということで、大体成案ができかけておりますが、未だ申上げる程の案にはなつておりません。それから生活扶助の基準額の問題につきましては、現在は五人家族で五千二百円程度でございますが、近く六千五百円程度に上げたいということで案を作つております。簡單でございますが、大体保護課で考えております当面のことについて御答弁いたした次第でございます。
  24. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) それでは以上のお話について何か御質疑はありませんか。
  25. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 労働省関係でお話のありました、失業者の処理につきまして、私は配置問題について伺いたいと思うのでありますが、いろいろな対策が講じられると言いましても、その失業者自身の地方的の関係並びに職能的の関係が非常に大きいものだと思うのでありまして、それが果して適材適所へと配置がうまくできるか、どうか、実はでかさなければならないが、それに対してはどういう考慮が拂われておるか、それを先ず第一にお伺いいたします。
  26. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) お答え申上げます。労働者の配置轉換につきましては、地方的の問題と今いろいろお話のように職能的の問題と二つ私はあると、かように考えております。地方的の問題につきましては、住宅等の関係がありまして、労務者の移動ということが極めて困難な実情にあります。そこで私共の方の考え方といたしましては、失業者吸收するためのいろいろな事業を起しまするときには住宅の変更を來さないように與う限り失業者の多い地域にできるだけ事業量の多い失業対策を起すというような仕組で今日のところ考えております。これにつきましては特に失業対策事業のみならず、公共事業についてすらそうしたことを経済安定本部等にお願いもいたしてあります。労働者の多数存在する地域に大量の失業対策事業公共事業を起す仕組で行きたい、かように考えております。尚地域的の移動を容易ならしめるために失業保護法によりますと、よその地域に職業を見つけて行きまするときに、その移轉に要する旅費を、失業保險の方面において旅費を支給する、こういうことによりまして移轉可能な者についてはその移轉を促進して行くということにいたして行きたいと思います。併し根本的な、御承知のように住宅等の不足、その他等もありまして、成るべく失業者の分布状況に即して行きたいと思います。それから職能的の問題でありますが、これは非常に困難な実は問題でございます。特に御承知のように日本の経済構造が極めて著しい変化をしております現段階におきまして極めて困難であります。併しながら私共の方といたしましては、與う限りその労働市場の動きを見まして、労働市場の要求する職種に適職にはめ込ましめるように私の方で適職を中心としての技能養成と申しますか、職業補導をいたしておるのであります。特に最近におきまして、私共非常に氣がついたのでありますが、事務職員等につきまして、例えば簿記とか製図というような知識を持つておる者は東京でも割合賣れるのであります。ところが一般安定所に現われて來るのが簿記とか製図の知識が全然ないようなそういうよなう状況も最近あります。早速東京都あたりでその簿記とか製図といつたような補導をしてやる、これは大体半年か一年補導をしておるのでございますが、そういうふうに労働市場の要求する職種について職業補導を行なつて、これによつてその職種の配置轉換を容易ならしめて行きたいというように考えておる次第であります。例えば工場等においては非常に技能工の不足を訴えております。これは御承知のように戰爭中養成しました技能工は工場の賃金労働者たることをいやがりまして、自由業になつておるのが非常に多いようでございます。そこで技能工ということになりますと、案外こうした失業難でありましても就職が容易に行つております。そういう面もあります。私共の方といたしましては、職種の轉換につきましては、労働市場の要求する職種の補導ということに力を入れて行きたいとかように考えております。
  27. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 職業補導並びに共同作業場の問題につきましては、幾多の改善すべき点があると思いますが、これはこの際略しまして、次には今年の十一月から実施されます先程お話の日傭労働者に対する失業対策でありますが、これは二ケ月間の実績を持つていなければならない、ここにその條件にあてはまり得ないものが相当ある、殊に日傭労働者につきましては、そういう傾きというのが多いのであります。そうしますと、折角こういうふうな制度ができましても十分それに吸收し得ないようなうらみがないでもない、これにつきましては、もう少し條件緩和についてお考えはありませんか、それをお伺いしたいと思います。
  28. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 十一月から実施いたしまする日傭失業保險につきましては、お話のように二ケ月間に三十日以上稼働するという條件が必要になつて來ております。大体のところ今日まで私共の方におきましては、日傭労働者は一ケ月大体二十一日か二十二日稼働するというのが最近における平均実績でありますので、大体やれるのでないかということで、今日まで來ております。併しながら將來失業情勢が深刻になつて参りますれば、当然二十日平均稼働という線が或いは崩れて來るかも知れません。現在のところではまだそこまで至つていないのでございますが、將來の要請によりましては、改正が私は必要になつて來やしないか、かように存じておる次第であります。法の適用が十一月でありますけれども、それまでにおいてもいろいろな今日までの実情は注意いたしまして見ておるような次第でございまして、それまでの間に二十日稼働という実情が崩れるということでありますれば、当然法の改正をお願いしなければならんと思つておりますが、現在のところではまださようなところには至つていないのでなかろうか、かように考えております。
  29. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 先程のお話のうち、金銭給付を前にして、更に行詰つた場合に職業を與える、いわゆる授職方法を講ずるというお話のように承つたのでありますが、失業対策につきましては、私共はこれを逆に考えたいのであります。即ち、何よりも先ず先に職を與えるということを考え、それに向つて計画、用意をして行かなければならん。然る後に止むを得ないものには金銭給付の方法を取る。これを逆のように考えられるのでありますが、この辺についての御所見を承りたいのであります。
  30. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) お話の通り仕事を受けるということがやはり一番大事な、一番根本だと私も考えております。從つて民間雇用に就職を斡施させるということ、これは恒久的な最も健全な職業でありますので、これが何といつても第一段階でございます。そういう民間雇用に行けない者についていわゆる金銭給付仕事を授けるという方法、この二つを取つておるわけでございます。そうすると、失業労働者の中におのずからここに類型がございまして、即ち民間企業整備の対象になつたような方などは、失業保險恩惠に直ぐ浴し得るのであります。ところが、引揚民のような方々は失業保險恩惠には浴し得ない、こういう問題が起つて來るわけであります。そこで今申上げましたように、その引揚民或いは顯在化して來る失業者に対しては、失業保險適用が全然ないのでございまして、先ずこういう人々には公共事業なり失業対策というものに行つて頂きたい。それから民間企業整備の方には暫くの間は失業保險生活をしておつて頂いて、そうして持つて行く。こういう一應、これは形式的な考え方でございますが、そういう考えで勿論いたしております。併しながら失業保險適用を受ける方々であつても、六ケ月後になると保險がなくなりますから、当然仕事を授ける。即ち仕事に就職をせるということを先ず第一前提として、いわゆる民間雇用に斡施する。これを如何なる場合においても第一次にいたしております。それに溢れた場合の失業者については、一應國の財政面もありますので、失業保險適用あるものについては暫くそちらにして頂くということがいいんじやないだろうか、こういう考え方でございます。勿論根本的に趣旨としては仕事が第一であるという点につきましては、私共異存のないところでございます。
  31. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 更に失業対策で行詰つた最後段階として臨機應変的な措置を取る。この臨機應変仕事でありますが、その場合において取るということはすでに遅しの感があるのではないか。さればと言つて前以て十分に計画が立てられるべきものでもないということは想像されるのでありますが、併し少くとも最後はこういうふうな方面にこういうふうな措置が取りたいということの用意だけは少くともなされなければならない。それがためには地方の行政廳その他に対しましたも十分に用意をさして、或いは段階的に第一の失業者仕事はこれだ、第二の公共事業はこれだ、更にこれでもうまく行かなたときはこういう仕事があるということを予め多少おぼろげな点があるにいたしましても、計画を立てて置く必要はなかろうか。この点に対して御用意がおありでありますかどうか、尚言葉尻を取つてこれは変な言い方でありますが、御説明によりますと、絶えず保險制度の恩惠という言葉をお使いになるのでありますが。私共は労働行政に対しまして恩惠ということの観念は切捨てたいと思うのであります。議論になりますから私は略しますが、やはり労働省はかねて勤労者のためのサービス省だという点から言いましてもどうかと思うのであります。これは附加えてちようつと申上げて置きます。
  32. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 恩惠とい点につきましては御尤もでありまして、取消したいと思います。それから用意があるかというお尋ねでございますが、臨機應変最後の場合に救済して参りますのが先般申上げました失業対策事業でございます。これにつきましては、お話の通り一應全部の主要都市につきまして、一應事業種目について準備いたしておる次第であります。即ち或る都市におきまして、千人程度溢れた場合にどうするかといつた場合の事業種目を予め選定いたしております。即ち第一順位といたしましては、公営運動場とか第二順位に道路清掃事業というふうに数種類の事業種目を收容し得る労働者の数と相俟ちまして、準備をいたしております。そうして將來その土地で五百人程度溢れた者がある場合には第一順位をやる。千人のときには第二順位の仕事まで殖やして行くというようなことをしております。例をとつて申しますれば、東京では現在のところ失業対策事業に四千人程就労いたしておりますが、二万人程度就労し得る事業計画はいたしておりますが、今日は予算の枠がございますので、そういう点に拘束されるとは思つておりますが、この点につきましても先程申上げましたように、拡充方を考えておりますけれども、予算の額と睨合せまして、一應私共の方では事業種目を数種目に亘つて準備をいたしておる次第でございます。
  33. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 現在制度における労働者賃金の給與の中に含められております家族手当、これは將來どういうふうに御処理になるお考えでありますか、お伺いいたします。
  34. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) これは私の局の所管ではありませんですが労働省といたしましては、家族手当或いはその他のいろいろな手当はいわゆる給與体系としては飽くまで理想的なものとは考えてはいないのであります。併しながら現在の経済事情その他の事情からいたしまして、今直ぐ廃止するということはできないし、それは無理なことではないだろうか、賃金の給與の理想的な体系といたしましては、そうした手当はなくして行くのが普通ではないだろうか、併し現在の考えとしては今直ぐ止めようということも考えておりませんし、ちよつとそれは困難なことではないかと考えております。
  35. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 この最後の失業救済事業に対する賃金を一般の給付額の一割乃至二割を引下げたものを以てしたいというお話でありましたが、若しそういうことになりますと、現在の給付が十分か十分でないかは別問題でありますが、とにかく私共は十分でないと先ず考えます。その点につきましては余程研究の余地があるのでありますが、然るにそれよりも更に一、二割減額されるということになりますと、それらの人の人間としての生活はいわゆるどん底生活に落し込まれるのではないか。そういう人を將來起ち上がらせる、いわゆる労働の再生産と申しますか、そういう場合に果してそれが役に立つか、一日も早く労働の再生産の十分な生活環境を持たさせるようにして置かなければならんに拘わらず、一番困つた者が一番困つた生活に追い込まれる。從つてそれらの不遇者は更に不遇を加重されるということになるわけであります。これに対しまして生活保護法との関連もできて参りますが、この点につきましては、何だか從來の古い一つの封建的な考えが残つておるのではないか。やはり國民がひとしく最低生活を保障されるという点から申しましても、この点はもう少し何とか善処の途はないか。何故一割、二割を減額しなければならないかという、その理由を承りたいのであります。
  36. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 緊急失業対策法によりまして、失業対策事業は大体におきまして失業者吸收することを目的とする事業でありまして、大体において何と申しますか、資材を余り使わないで労力だけでやつて行こうという、簡單に申しますと、大体の人々がやれる普通の事業を選んでおります。その事業に働く場合の賃金民間関係の同種事業よりも一〇%実は低くいたしております。これにつきましては、先般の國会でもいろいろお尋ねがあつたところでございますが、私共の根本的な考え方といたしましては、失業対策事業というものの賃金民間賃金というものを同じにするということは、むしろ民間事業を圧迫する形に私はなるのではないか。これが根本の考え方でございます。即ち御承知のように失業対策事業というものは誰でもまあできるといつたようなことが多いのでありまして、本人の能力、作業能力というものが余りはつきり特徴を発揮される場合があることは少い事業が多いのであります。そうなりますと、何と申しますか、失業対策事業にこげついてしまつて民間事業に働いて競爭しようという意識を失わしめるということが多分に多いのでありまして、これは封建的というお話でありましたが、むしろそうでなくて自由競爭に立つところの民間企業というものの立場を考えて行く考え方から実は出ておるのでありまして、若しこれが民間事業と同じような賃金ということになりますと、いわゆる失業対策事業に何かこげついてどうにもならなくなつてしまうという、むしろそちらの虞れが多い。それから民間事業に有能な人が行くということもむずかしくなりやせんか。そういうことからむしろ民間企業より低くしておる、こういう形にいたしております。アメリカ等におきましても、御承知のこうの仕事をやりました時には、やはり同じような政策をとつて來たようなことを承つておるような次第であります。
  37. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 これ以上は議論になりますから止めまして、私の質問は打切ります。
  38. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 社会局の厚生課長に伺いたいのであります。生活保護法による医療費でございますが、この医療費が段々高くなつて來るのであります。この頃まで五四二百円の計算でございましたが、今度六千五百円に引上げるとおつしやつておりますが、この医療費が段々嵩んで参りまして、只今の百六十五万の一割増員する見込だとおつしやつてやられますが、果して予算の範囲内でできるものでしようか、それをどういうふうにお考えになつておられますか、その点ちよつとお伺いいたしたいと思います。先程の生命保險の方もこれらのために失業対策見込簿のようなお話でございます。ちよつとこの点明らかにして頂きたいと思います。
  39. 黒木利克

    説明員(黒木利克君) お答えいたします。先程御説明申上げました四人家族で、基準年六千五百円に上げたいというのは、医療費は含んでおりません。それで医療費の増嵩に対しましては、生活保護法の総予算の枠内で処理するわけでありますから、生活扶助の面と、別に医療の面で生活保護法予算を取りまして、それで運用したいと思つております。
  40. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 外に‥‥。
  41. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 日傭労働者の就労状態、最近の状態というのを、東京のものはお話しになりましたが、その点について一つお答えを願いたいと思います。
  42. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 大体日傭労働者は、はつきり今統計を持つて参つて來ておりませんが、大体に全國といたしますと、延人員にいたしまして二百二十万人程度の求人になつております。二百二十万の求人に対しまして求職の関係は百九十万程度になつて來ておりまして、全國的に見ますと、これは二十日稼働と平均して調べて見ますと、大体人員は十万人が働いておりようになつております。あぶれの状況でございますが、二百二十万で百九十万でありまして、大体年國的にはあぶれは余りないことに今のところなつております。ただ問題になるのは、東京は先般來いろいろな外部的な力の関係もありましたのでいろいろ問題が起りました。現在のところで、多少あぶれておりますのは大阪、兵庫の両縣が多少千人程度のあぶれを今日見ております。人員のあれは神奈川、その他につきましては、今のところは、さして社会不案を激化する問題までは至つておりません。
  43. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 引揚者の問題、いわゆる失業対計の問題について、これは從來から問題になつておりました引揚者は、失業保險の対象にするという点についての、その後の進捗はどうなつておりますか、その点を。もつとはつきり申上げますと、引揚者と雖も、從來俸給を貰つておる、その俸給が引揚げて來た途端に俸給が切れてしもうから、引揚げて來たことは、同時に失業だ、こういう観念も考えられるのではないか。いわゆる解釈の仕方によつてはそれがなし得るのではないか、從つて現在百円でありますが、それをいろいろな方法によつてなし得る途はありはしないかというのが、從來からの論議の中心であるわけなんであります。これに対して、その後どういうふうな見解をお持ちになつてお進みになつておるか、そうしますと、引揚者と失業問題及び失業保險というものが相当解決の途もあり得るわけなんです。
  44. 齋藤邦吉

    説明員齋藤邦吉君) 引揚民に失業保險適用する問題につきましては、先般御承知のように、財政的な問題がありまして、そのままになつておりました。その後も依然としてやはり財政的な問題が解決されませんので、そのまま停頓状態にあるような次第でございます。
  45. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 それから生活保護関係について伺いたいと存じますが、只今のお話で、現在まあ大体五千二百円を六千五百円に上げる、そうして失業関係において、一應一割程度を考えるというお話のようでございますが、実際の状態で、五千二百円にお上げになつた現在におきましても、市町村においての実情はどういうふうになつておりますか。もう上げられただけが相当恩惠と申しましようか、恩沢を受けて相当増額になつておるように、御指導になつておるかどうか、この点を一つ伺いたい。
  46. 黒木利克

    説明員(黒木利克君) お答えいたします。実はその点につきまして、社会局を挙げて指導いたしておりますが、六月中の実績を見ますと、平均増額の支出額が二割程増しております。それから関連して申上げますが、最近におきましては、食の方は余り上つておりませんで、その他の住とか、衣の問題について考慮を拂つておりまして、今度計画いたしておりまする改訂も、その方に重点を置いております。
  47. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 実は都市あたりにおきましても、この前の増額の場合にも、むしろ実際は減額されておるところが多い。今の平均は二割ということにお話しがありましたが、私もいろいろ質問を受けまして、実際はこの増額のために、調査をして、実際においては、減額をされておるというような状態相当多くなつておりまするのと、それからこの二十三年度の表にもありますように、これは実人員でこれを割りますと、大体一日八円余りだろうと思います。それでただ單にむしろ六千五百円に増額するというようなことよりも、もつと現下の情勢においては、この生活保護全般に対する根本的な檢討というようなことをお考えになつておるかどうか。これをやらないと、ただ増額だけをやつても、本当は効果を狙らい得ないのではないか。少くとも百億程度の金を國家が使いまする上において、有効なる使いようが現在の生活保護法によつてはできないというようなことをお考えになつていないかどうか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  48. 黒木利克

    説明員(黒木利克君) お答えいたします。私は実は特殊援護の課長をやつておりまして、そういう大きな問題につきましては、社会局としてのお答えはできる資格がないのでございますが、私の個人的な所見を交えまして申上げさせて頂きます。只今御質問のありました事実において、大都市等において收入にいろいろなる、何と申しますか、收入の見積をいろいろやりまして、生活保護法給付の実際額が減つておるという都市もあることは承知いたしております。恐らく收入の見積の手心によつてそういうことがあるのだと思います。  それから生活保護法の実際の運営におきまして、生活保護法給付を受ける資格を認定する場合に、從來は子供が高等程度の学校に行つておつた、或いは住宅があつた、或いは可なりの財産があるということを非常に嚴重にやつておりましたが、最近におきましては段々自分の住宅で外に轉宅することができない、そういうような場合にも資格があるとか、或いは子供が新制中学に入つてつても事情によつては資格があるとか、そのような資格の問題につきまして段々一面においては緩和をいたしております。これは生活保護法の根本の性格にも段々関連を持つておるわけでありますが、只今の考えといたしましては、生活保護法給付は國が最低生活を保障する責任があるということの反射的な利益だというふうに解されておりますが、段々請求権的な性格を持たせられつつあるのであります。苦情処理機関とかいうようなものも段々各地で置くようになりまして、行く行くは請求権的な色彩を持つようなふうに生活保護法改正がなされるという方向にあると存じます。  それから生活保護法のみならず、これは私の考えでありますが、社会事業体系というものをこの機会に確立する必要があるのではないか。失業政策と生活保護法の間にまだもう一線考える余地はないか、例えば経済保護事業とか、或いは防貧的な社会政策的な金融の措置とか、只今お話のありました各種給付の非常な延滯があるわけでありますが、それに対して生活資金的な、或いは生産資金的な制度を拡充して行く必要はないか。それからもう一つは縦割にいたしまして、傷痍者とか、未亡人の福祉とか、引揚者とか、そういう面の特殊援護というものをもつと強化する必要はないか。つまり從來のいろいろな各種の援護法規が生活保護法で一本になりましたが、更に今度は特殊保護法的なものに段々分化して行く必要があるのではないかというようなことにつきまして、現在社会局としては内々研究いたしております。最近におきましては、生活保護法から傷痍者福祉法、未亡人福祉法というようなものを段々分化さして行つたらどうかということで案を作りつつあります。それから引揚者の生業資金関係をもつと拡充いたしまして、引揚者のみならず、生活困窮者の生業資金というものをもつと制度的に法的な基礎を持つて拡充して行つたらどうかというような考えを持つておりますが、要するに生活保護法を段々分化して行く必要があるのと同時に、生活保護法が請求権的な性格を持つて來る、そうして憲法のいわゆる二十五條の実際の実施というものを段段やつて行く、そういうことで研究いたしております。
  49. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 実は五千二百円が六千五百円に上つたということは、結局今までは五千二百円の生活程度をしておつたものから六千五百円程度生活まで引上げるということになつて、その範囲が廣くなることも考えられるし、同時に全然收入のない者はそこまでやれると、両方の考えがあると思う。併しこれは先にも申上げましたように、ただ予算面においての程度を上げるだけが最近の急務ではないかと思う。先に申上げましたように、実際お調べになると、私今日はその場所は申上げませんが、政府給付の増額を狙つておるにも拘わらず、実際貰つている方は減額をしておる、実際にそういう傾向にあるというに至つては、むしろ逆な狙いであろうと思う。從つて只今いろいろな総合的な社会事業体系の上からの生活保護法の再檢討ということもお考えになつておるようでありますから、この点は本質的な問題においてお考えになつて行かないと十分の狙いを達し得ないのではないか。又一方におきまして、失業対策の中に今年考えられておりまする共同作業施設等におきましても、二十三年度は六百三十ケ所あつて、本年度は四百ケ所に減つて來ておる。從つて最近一つは未亡人の問題等につきましても相当輿論の高潮を來しておりまする際に、今申上げた実際の生活扶助はむしろ減額をしておる、共同作業は数が減つて來ておるというような逆現象が政府の政策の上に現われて來ておるような状態ではないか。これは共同作業の施設等におきましても、六百三十ケ所が四百ケ所に減つたというのは、今後更にこれを情勢によつて相当増加されまする予定でございますか。労働省関係におきましてはこの点を伺いますと同時に、更に今の厚生省関係におきましては、今度増額になりましたら、増額になることが最も妥当なような方法で一つ府縣を指導されるという具体的な行き方をお採りになつてやらないと結果が必ずしも十分でないのではないかと、そういう方法を併せてお考えになつて増額というものをおやりになるかどうかという具体的なお考えがあつたら、この機会に承つて置きたいと思います。
  50. 黒木利克

    説明員(黒木利克君) お答えを申上げます。これも実は個人的な意見に亘りまして恐縮に存じますが、生活保護法を或る程度防貧的なと申しますか、非常に嚴重に生活保護法適用を考えるか、或いは幅を持たして或る程度防貧的な面を考えて行くかということに根本の考え方の違いがあるわけでございますが、或る地方におきましては生活保護法を非常に嚴重に解しまして参つておりますし、或る地方におきましては左程でもない所もございます。これは嚴重に生活保護法適用を考えますならば、それに應じた防貧的な政策というものが並行しなければならないわけでございますが、そういう政策が十分に今完備しておりませんので、或いは生活保護法というものが或る程度防貧的な役割も現にしておるのではないかと思われますから、只今御意見がございましたが、今度改訂いたしまして生活保護法適用ということをどのように考えて行くか、それに並行できる防貧的な政策というものが裏打ちできますならば、生活保護法を嚴重に実施してもよいわけでありますが、その辺の兼合が実はまだ社会局として十分に樹立されておりませんので申上げかねるのでありますが、今のような考え方で今度の改訂というものを考えて行つたらどうであろうかというふうに考えております。御意見の趣きはよく分りましたから、社会局長に十分申上げまして、又後刻御答弁申上げることにいたします。
  51. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 労働省関係の方で、公共施設というのは大分減つて考えられておりますが、これは今年は恐らく一應の予算であつたと思うのですが、具体的にはここのところをどういうふうにお考えになつておるか。実は未亡人の問題等がここに出ておりますので、或いはその他の特殊失業者の問題が出ておりますので、これに対しては去年の六百三十が今年は四百で進められておる、併し更に具体的にはこういうふうに進めるという御計画があるのかどうか。
  52. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) ちよつとその点今斎藤局長が断つて退席いたしましたから専門の方からよく調べさせて置きます。  官房長官なり社会局長が御出席にならず、尚不十分な点がありますが、一應当局の御説明をこの程度に終ることに御異議ございませんか。
  53. 山下義信

    山下義信君 不十分で分りません。今日の調査は余り有効でなかつた、遺憾に思います。分らん。例えばですね、私共はこの失業という重大問題に際して生活保護法中心とした公的扶助がどの程度まで遂行せられなければならないかという点を調査のためにいろいろ政府の肚を聞きたいと思つていたのですが、今日の御説明は極く事務的な説明だけでありまして掴まえることができない。例えば職業安定局は一應失業者の処理を計画的にして或る程度までの……もう本当の一時的の世話しかしないのであります。いわゆる労働者のルンペン化防止ということがこれが最大問題であります。こうした扶助の狙いはそこにある。ですから厚生省労働省とのその失業対策関係厚生省生活保護関係を如何にマツチさせるかという重大な対策をどう政府が考えておるかということを、我々掴むことは到頭今日はできなかつた。でありますから、これは局長課長に聞くということは少し無理だろうと思う、どうしてもその間のしつかりしたつなぎ方というものを政府は考えなければならん筈で、可なり考えておるじやないか、若し考えがなかつたらこれは出たらめな失業対策と言わざるを得ない。我々國民も十分その点を考えなければなんのでありますが、今日はその方針を聞くこともできませんでしたので、私は政府所見を聞きたいので、今日の調査は私はこれを以て終りとは同意し難いのであります。この点は他日の機会まで私は保留して置きたいと思います。
  54. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 山下委員の御説の通りであります。今日は非常に不満に終りましたが、これ以上今日進めることはどうかと思います。
  55. 草葉隆圓

    ○草葉隆圓君 私も今日はこの程度で打切つて頂いて、生活保護の問題と失業の問題につきましてもう少し研究をし、方針を決めて頂いて、他日の機会に御相談し、質問を進めて行きたいと思います。
  56. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 草葉委員の御説のように進めて行くことに御異議ございませんね。それでは本日政府から失業対策について諸般の事柄について質すということは一應打切りまして、本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後零時三十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     塚本 重藏君    理事            今泉 政喜君            姫井 伊介君            谷口弥三郎君    委員            山下 義信君            草葉 隆圓君            中山 壽彦君            竹中 七郎君            井上なつゑ君            小杉 イ子君            穗積眞六郎君   説明員    厚生事務官    (兒童局長)  小島 徳雄君    厚生事務官    (社会局厚生課    長)      黒木 利克君    厚生事務官    (保險局庶務課    長)      堀岡 吉次君    労働事務官    (職業安定局    長)      齋藤 邦吉君    労働事務官    (職業安定局失    業保險課長)  亀井  光君