○
証人(角
永清君) 第一に縣の
計画でありますが、これは先程
和歌山からも
お話がありましたが、
熊野川は國において
総合開発計画をお立てになりましたので、縣としては
計画を持
つておりません。第二番目の問題につきまして、先程
小鹿の問題は
和歌山からも
お話がありましたので、私からは先程
和歌山及び
奈良縣から一部
お話のありました新
日本化学工業の
北山川の
計画について御
説明申上げます。この
北山川の
発電所は現在安本の資源
委員会ですか、あそこでも
総合開発の
一環として御檢討中の由に承
つておるのであります。これは
熊野川の
支流の
北山川、それから大又川というのは
三重縣の方に分れております。この二つの
合流点でありまする先程
お話のありました
和歌山縣飛地の
北山村、それから
三重縣の神川村に土場というところがありまして、そこに丁度縣境に跨
つたところに
堰堤を作る。そういたしまして
奈良縣側の方の
上流の方に
只今三十キロメートル、それから
三重縣の方に向
つて二十キロメートル、延長約五十キロメートルの大
貯水池ができるわけであります。簡單に申しますと、大体全容量九億四千万
立米、有効流量が五億二千万
立米、利
用水深が三十メートル、浸水面積は、二千万平方メートル、つまりこの水の使用方法は標高二百八十メートルから二百五十メートルまでの三十メートルを有効水深として、それから、ずつと
下流の方に下りまして、
只今飛鳥村の佐渡というところがありますが、大分山から下
つたところでありますが、そこから取口を作りまして、約四キロ半ばかりの隊道を作る。そうして
木本町の北の方に泊という村がありますが、そこに
発電所を作ります。更にその
発電所の直ぐ近くに現在のところ泊村に化学工場を作ることにな
つております。いわゆるこれはパブリック・ユースじやなくて
工業用
電力として自家用
電力に使うことにな
つておるのであります。細かい点はいずれ御質問によりまして
土木部長からでも
委員長の御許可を得て
説明させて頂くことにいたしまして、簡單に申上げますと最大有効
落差が二百七十メートル、それの損失がありますので、常時の有効
落差が二百六十一メートル、出力の方は御
承知のように理論と実際と
両方ございますが、理論
水力から言いますとこれはいろいろ計算があるのでありますが、理論の最大が十八万キロワット、それから常時が約十五万三千、これはラウンド・ナンバーで申上げます。実際の
発電力が、最大
発電能力約十五万八千、常時十二万七千ということにな
つております。それから大体水の使用量毎秒最高が七十立方米、最低五十立方米、
堰堤は確か百二十メートルか、百三十メートルだ
つたと思います。延長五百メートル、御
承知のように水域は
流域面積が五百十一平方米で、非常に雨量が多いところでありまして、平均大体四千ミリ、多い所は六千から七千あるようであります。非常に雨量の多い能率のいい
発電地点なんであります。先程も申されましたように、これは
流域変更方式でありますので、どれだけの水が
熊野川本流から出るかということについての計算を実は私自身も知事もいろいろ計算を要求しておるのでありますが、まだはつきりした数字が出て來ないのであります。確かに一部減ることは事実であります。
次に尚
地元民の動向でありますが、
地元民といたしましては、縣全体としては双手を挙げて賛成いたしております。ただこの南牟婁郡でありますが、南牟婁郡のうちで五郷村と飛鳥村でありますが、これは
反対でありますが、神川村と三つありますが、ここに約八百戸、七百九十四戸というのが
水沒するのであります。
奈良、
和歌山は数戸、とにかく
三重縣におきましては八百戸近く
水沒いたしますので、その
部落におきましては
相当な
反対があるのであります。併しながらこの
反対の動機を見ますと、主に非常に精神的なものが多いようでありまして、どちらかと言えば長い間の祖先の墳墓を捨てて他に移轉することが忍びないとい
つた理由が主なようであります。泊村、大本町その他の地区におきましては非常に賛成をいたしております。
次に数字、その他の参考となるべき事項をいろいろ申上げたいのでありますが、実は私共この
計画を聞きまして非常に面白く思いましたのは、
熊野川の二百万キロとか何とか
総合開発計画があ
つたようであります。こうい
つた問題は鴨緑江の
開発問題と非常によく似た点があるのであります。これは御
承知のようにこの
開発の連中のうちには鴨緑江の連中がおるようでありますが、私も実は鴨緑江
関係にお
つたことがあるのであります。
電氣課長もや
つておりました体驗があるのでありますが、丁度今の問題は実は日本窒素が鴨緑江の
開発を最初や
つたのは御
承知の方もここにあると思いますが、赴戰江であります。赴戰江は二十五万キロワットの
発電であります。これは鴨緑江の
支流を、河の名前は忘れましたが、日本海側に
水路せ変更しまして約八千三百メートル、非常な
落差を利用して大きな
発電所を作
つた。そうして興南に化学工場を作り、次いで御
承知のように長津江三十二万キロ、それからその次は盧川江に三十五万キロの
発電所、約百万キロの
発電所を作
つたのであります。その当時もここにおいでの方で御
承知の方が多いと思いますが、鴨緑江の水を利用するとどうなるかと大問題に
なつたことがあるのであります。併しながらいろいろ総合的に
考えまして、百万キロワットの
発電所と共に興南化学工場、世界的な化学工場ができたわけであります。その後御
承知のように水豊とか、
下流におきましても義州とか水豊のごときは七十万キロワットの
発電所が完成して義州、雲峰その他もや
つております。尚やはり江界
水力というものは鴨緑江の
支流を、
流域変更をいたしております。從いましてこれは
相当下流に
影響があるでしようが、そうい
つた点はよく総合的に睨み合せて行く必要があるのではないかと思うのです。殊にこれは関連しておるので御了承願いたいのでありますが、この
電力を使う化学工場は非常に面白い化学工場でありまして、いわゆる塩安と曹達灰に使うのであります。塩化アンモニアが二十万七千トン、曹達灰が十八万トンできます。これは非常に簡單な方法であります。御
承知のように日本の今日の肥料というものは非常に高いのと安いのと差がございますが、まあ非常に高い。この方法によりますと非常に安くできるのでありまして、殊に曹達灰のごとき御
承知のように日本は輸入面に頼
つておりますが、輸送費が高い。それでも内地で作る塩より安いのでありますが、その運賃以下でできます。これは化学処理をする場合に塩を溶かして塩水にするのであります。塩水まで圧縮いたしましてそれによ
つて肥料と達曹灰を作るのでありますが、非常に安いものができるのであります。尚
電力の建設費も、これは私請賣りでありますからお許し願いたいのでありますが、これは貨幣價値が非常に変りましたために以前の
電氣と比較できないのでありますが、
会社の
計画によりますと、大体建設費が全部で四千四百万ドル、ラウンド・ナンバーで申します。
発電所が二千三百万ドル、化学施設が二千百万ドル、これも三百六十円で直すが妥当かどうか知りませんが、大体の日本の爲替相場が多少問題がありますが、三百六十円に直しますと総経費が百六十八億、約百七十億になります。それから
電氣関係が約八十七億、工場
関係が七十六億、こういうことになるのです。
会社の設計によりますといろいろ基礎があるようでありますが、一キロワットアワー百ドルでできる。非常に安いと思うのであります。アメリカでは二百ドル、三百ドル、四百ドルもかか
つているようであります。果して赴戰江や長津江のようにうまく行きますか分りませんが、赴戰江のごときは御
承知の方もあるかと思いますが、一キロワットアワーに五厘とか何とか言
つておりましたが、実際は私共の見るところによりますと四厘から四厘以内でできることにな
つておるわけであります。そうい
つた者が今回の建設に当るのでありまして、或る
程度まで
相当信用し得るのではないかと
考えておるのであります。果して今日の貨幣價値で日本で一キロワットアワー五十銭前後でできるというようなことを言
つておりますが、それははつきりした数字的の何を持ちませんが
相当安い
電力であることは間違いないと思うのであります。御
承知のようにこれは少し縣として申上げるのに大き過ぎる話かも知れませんが、今日の
國土の資源を失
つた日本といたしましては、私國策的に
考えて何としても日本はこうい
つたことから
考えなければならんのではないかと思うのであります。人口が多くて資源のない日本といたしましては、
電力を元としました化学
工業その他を興しまして國力の回復を図るという方向に私は行くべきだと
考えるのであります。從いまして一般
電力の問題その他ございましようがこうい
つたことこそ今日の日本で非常に必要なことではないかと
考えられるのであります。
さて先程いろいろ
お話のありました補償その他の問題でありますが、この補償問題につきましては、今日先程申上げましたように千四百戸ばかりの家屋があり、耕地も田畑合せて百九十
町歩あ
つたわけであります。耕地は割合少いのであります。こうい
つた補償は無論完全にやらなければいけませんし、それから先程
お話がありましたように、この
会社は大体
発電と化学
工業だけでなしに、その他製材
方面、
材木の利用ということも
考えておるようであります。丁度鴨緑江と似ておるのであります。鴨緑江の新義州の製材工場のときも
会社が、補償いたしまして製材工場を
上流に移轉したのであります。この
上流に移轉し尚且つ
会社が直営で
相当なものをや
つておりましたが、その場合でも非常によい点が多か
つたのであります。何となれば御
承知のようにこの
貯水池が生れまして延長五十キロという長い
貯水池の
附近は優秀の森林資源地帶でありまして、林道その他のないところもあるのでありまして、從いまして湖水を利用いたしましてこれらの
材木を船又は筏を利用いたしまして湖水近くの製材工場に運ぶのであります。未利用
材木も
開発されますし、御
承知のように從來は捨てておりました枝とか葉とか、葉は少しなのでありますが、枝とか山元で原木にいたしますのに三分の一以上、ひどいものは半分も捨ててしまうのであります。そうい
つたものも利用できるのであります。そうして湖水長の製材工場でできました製材を電車、これは
工事用に電車をつけることにな
つておりますが電車で運ぶということになります。又先程大雜把に申上げたから落しましたが、枝とか葉とかいうものを利用いたしまして炭酸ガスを得るために炭素をとります。そうい
つた場合の副産物として御
承知のようにメタノールとかアセトンとかいろいろの副産物もできるのであります。そういう工合に完全に利用されるわけであるますが、この
北山沿岸の
材木はそういう工合に完全に利用される。それから
北山から下の方の
材木というものはこれは数字は忘れましたが、
上流より大分少い筈であります。そういうものを一部下に流せば下も一部利用されますが、そういう総合的な対策が必要であると
考えるのであります。そうしてT・V・Aのような
考え方で、地域にこだわらず、私共も敢て
三重縣だからというて
三重縣にこだわ
つて申上げておるのではありませんが、総合的な
考え方で進んだらどうかと
考えるのであります。尚
熊野川の
河口の問題が先程
お話がありました。これは実は現在でもむしろ
和歌山縣より
三重縣が困
つておるのであります。
新宮の方がまだよいのでありまして、私の方は鵜殿という村がございますが、製材工場が沢山あります。
河口が埋ま
つたり、変
つたりするので現在でも困
つておるのでありまして、この問題はむしろ根本的に土木的に解決をしなければならん。放
水路を作るとか、浚渫船を置くとか、最も根本的対策が必要でないかと
考えます。
大体雜然的に申上げましたけれども、要するに私の縣といたしましては、この
計画は外資が入り、或いは見返り資金その他で若し他の方がうまく調節がとれましたならば、総合的に、國策的に御覧にな
つて調節がとれるならば、私の縣といたしましては双手を挙げて賛成いたしたいと思うのであります。併しながらこういうものはいろいろ総合的な問題でございますので、國家的に
考えましていろいろの点を調整しなければならんと
考えております。尚理想的にいいますれば、こうい
つたような
開発は今後の
考え方といたしまして、例えば補償問題にいたしましても対立的な
考え方はいかんと思うのであります。
会社に対して補償を要求する、
会社は又安く値切るという
考え方でなしに、
地元民と一体となりまして、或いは製材
方面、林業
方面に携わる。或いは工場に行きたい人は工場に行く。或いは土地を開拓して農業をやる。いわゆるT・V・A式
考え方が必要でないかと思うのであります。ただむずかしいのはいわゆる國策
会社でやりますと、從來ややもすると戰時中欠点がありましたように非常によい点もありますが、能率という点で悪い点もある。從いましてこうい
つたことはいわゆる特殊
会社的の法律の裏付でやることは或いは望ましいのではないかと思いますが、
開発に当りましては私の縣といたしましてはやはり鴨緑江の何とい
つても大きな経驗を持
つておりますああいう連中をやはり使う必要があるのではないかと思うような次第であります。
もう
一つ申落しましたが、これは
三重縣の希望なのでありますが、地図を御覧になると分りますが、
木本、尾鷲の間に非常に高い山がございますが、矢ノ川峠、そこの間の鉄道が実は貫知いたしておらんのであります。
工事中であ
つたのがたしか今年の春打切られたのであります。隊道も
相当できておるのであります。本
発電所に関連いたしまして、
三重縣といたしましては是非これを中途でやめてある尾鷲、
木本間の鉄道の貫同を促進して頂きたいと思うのであります。これはこの
工事の東にあります小野田セメント工場のセメントを運ぶ上におきましても、これは港を
作つて船で運ぶようでありますが、いろいろの
関係から申しましても鉄道の貫通の完成をして頂きたい。これは附帶希望なのであります。附加えて申上げて置きます。