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1949-09-08 第5回国会 参議院 建設委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年九月八日(木曜日)    午前十時二十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○建設事業一般並びに國土計画に関  する調査の件  (熊野川水系開発に関する件につき  証人の証言あり)   —————————————
  2. 石坂豊一

    委員長石坂豊一君) これより建設委員会を開会いたします。一言御挨拶を申上げます。再建途上の我が國におきまして、未開発区域開発が重要なる案件であることは今更改めて申上げるまでもございません。殊に未開発区域の中で、治水関係に関する総合開発が重大であつて、本委員会はこれに関して深い関心を有しておる次第であります。つきましては、今日は熊野川水系に関する奈良縣和歌山縣及び三重縣の三縣の当局の方に御出席願つて、その証人を煩わすことにいたしておるのであります。この際先に要請いたしましたる証人は変更されておりまするから、それを御承認願いたいと思います。即ち三重縣においては副知事又は土木部長、又奈良縣和歌山縣においては土木部長にそれぞれ証言願うというふうに変更いたしますから御了承願います。  つきましては、熊野川水系に関する開発問題に関し、只今御承認を得ました各証人の方から御証言を願いたいのであります。その次第、順序といたしまして、各縣がこの水系開発問題に関し計画をお持ちになつていることと存じますが、それに関して御開陳を願いたいのであります。第二といたしまして、民間企業のうち重体なるもので本地域内に設立計画あるものがあつたならば、これに対し如何なる行政措置を採られつつあるかを御発言願いたいのであります。第三は、又以上に関連して地元民意向が如何にあるかということをも御発表願いたいのであります。その他参考となる御意見ならば、十分に御発表をお願いしたいのであります。  本院の成規によりまして宣誓をお願いしたいと思います。総員起立を願います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣 誓 書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 神尾 守治    宣 誓 書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 角  永清    宣 誓 書  良心從つて眞実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 和田 秀夫
  3. 石坂豊一

    委員長石坂豊一君) それでは奈良和歌山三重順序で御発言を願いたいと思います。先ず奈良縣土木部長にお願いをいたします。
  4. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 今お示しの第一項についてでありますが、この件につきましては熊野川水系に関連しまして熊野川支流十津川及び川原樋川流域変更いたしまして、大和平野のいわゆる大和川水系分水するという計画案をもつてこれに向つて計画を進めるようにいたしておるのであります。附加えて申しますが、これはもう一つ紀ノ川十津川総合開発計画、このうちの一環をなすものでございます。それからもう一つ十津川地内におきまして民間企業者水力発電の目的の下に企業を縣の方に申請しておる件が一件あります。もう一つ北山川支流におきましてこれ又民間から水力その他水力を利用いたしましての企業が出願されておるのであります。以上三つの件であります。
  5. 石坂豊一

    委員長石坂豊一君) 只今奈良縣土木部長から利水問題に関して計画を御発表になりましたが、これに関してもう少し詳細にその内容を御説明願いたいのであります。即ちこの水力のうちでどれだけの水量を取つて奈良縣に対する利水の影響がどういう状態になるのであるか、その点をもう少し詳しくお話願いたい。それからこれが下流に及ぼす影響等について奈良縣の見られるところも開陳して貰いたいと思います。
  6. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) それでは奈良縣計画について概略申上げます。先程申しました紀ノ川十津川総合開発計画一環をなします奈良縣営として計画いたしております河水統制事業、即ち十津川から分水して電氣を起し灌漑用水水道用水工業用水の用に向ける、こういう計画、これは総合開発計画が本年の二月二十八日に一應調査が完了いたしまして、こういうことが決まつたのであります。それは奈良和歌山両縣に配分する水の総量というものが一應決まりました。奈良縣は六千五百万立方メートル、和歌山縣は六千六百万立方メートルであります。それからそれの水源地が四つ決まつたのであります。川原樋川から水を取水堰堤等によつて直接持つて來るということが一つ。それから天ノ川の、これはいずれも熊野川支流十津川の又支流でありますが、天ノ川廣瀬という所にダムを拵えましてこれに水を貯溜して、これを又水路によつて導いて分水する、この貯水池。それから吉野川筋では津風呂という所にこれ又堰堤作つてこれに貯溜しそうして灌漑時にこれを放出する。もう一つはその上流の川上村にあります大迫附近貯水池作つて、そうしてこれ又電力を起し又その水を灌漑その他の用水に使用する、こういうことが決まつたのであります。これで一應調査階段は終りまして今度実行ということに相成るかと思つております。その実行に当りましては関係縣とよく話合つて仕事を始めるように、こういう希望條件が附いて最後の調査委員会終つたのであります。そこで奈良縣計画しておりまする分水問題、水利問題は、一番先に申上げました川原樋川の水を取水すること及び廣瀬堰堤を設けましてこれを貯溜して、この水を水路で導いて只今川原樋川の水と合せまして、これと吉野川流域に持つて來まして、そこで吉野川流域の生子というところにおいて発電する。この落差が第一、第二と二つありまして、両方合せまして三百三十米の落差を持つている。そこで発生いたしまする電力が約最大四万五千キロ、これに灌漑時にこの計画が完成した曉には、灌漑時六、七、八、九月に送ります水の量が毎秒十五トン乃至十六トン、こういうことになる。これに要します費用が概略現在までの調査階段では、総計二十六億というふうに考えております。これは総合開発計画一環をなしておりまするが、先ず縣の計画といたしましては、吉野川に触れずにその発電所から放流いたしました水は水路で受けて、そうして吉野川の上を立体交叉によつて導いている、そうして大和平野の方に送ろう、こういう計画であります。これは昔から吉野川、いわゆる紀ノ川というものは、和歌山縣水利権がついておるのでありまして、奈良縣においては水利権を持つておらない、こういう旧慣にあるのでありまするからして、先ずこれに触れずに行く方がよろしい。又その分水、その他の問題に対して非常な複雜性もないという趣旨からいたしまして、吉野川水利権を尊重いたしまして、大和平野熊野川水系から水を持つて行くと、こういう趣旨にあるのであります。これで大和平野に送りました場合には相当効果が挙る。電力に対しては、只今凡そ概略申上げたような電力を得られるのでありますが、さてその水を受けまして奈良平野に導いたときには、灌漑用水といたしまして早速役立ちます。奈良縣考えでは奈良平野には二万二千町歩の田地があります。このうち一万町歩が早害の年には水がないのであります。非常に水不足で苦しんでいる。約九トン、十トン、九立米乃至十立米というものは灌漑用水としてどうしても必要であります。尚中枢部の大和高田市を中心といたしまして上水道、飲料水に非常に枯渇して困つております。これが僅かでありますが、水道用水も充当できる。尚この附近が軽工業地といたしまして、地理的に発展すべき要素を備えておる。現在紡績、晒、その他の工場があるのですが、何分水が絶無というような状態でありますので、非常に工業の発展を阻害しておるのであります。これが水を非常に要求しておる、こういうようなことであります。尚これを灌漑し得まして集まつた水淀川に出ますので、これは大阪府に否でも應でも出る、かくいたしますると、現在河内、淀川附近の水田というものは、年々水の不足で全く只今つておりますので、奈良を潤したその後の水は、好むと好まざるとに拘わらず、これの四分の一は下に流れるのでありますから、而も又反復利用することができる、こういう違大なる効果をもたらすと思うのであります。又この発電に対しましては、近畿地方における電源の少い、而も大阪市から約四十キロで達する地点発電所ができまするので、これが電氣の價値というものは非常に貫いものである、價値ある電力であります。電力を通じて産業の進展に非常に役立つ、かように考えておる次第であります。概略こういつた程度でありますが、この中で奈良縣といたしましては、第一期、第二期に分けております。第一期は川原樋川から水を若干取りまして、そうして吉野川及び十津川分水嶺の天辻峠を越しまして、トンネルで越しまして、そうして吉野川流域の丹生川という川の上流に落します。この間が約八キロでありまして、これまで持つて來ますと、この川を利用して水が吉野川に流れる、この水を下で受けて、一應奈良平野に送る、こういたしますと、一番短年月にして全体計画の一部の水が灌漑用水として役立つのでありまして、非常にこの点を考慮いたしまして、これを第一期工事といたしております。第二期工事廣瀬堰堤を拵えて、そうして全体の計画に合わせる、こういうふうに考えておりますので、取り敢えず第一期工事をやりまして、それから第二期工事を進めるというふうに考えておる次第であります。  それから次に、十津川におきまする北口という民間の方は企業発電計画でありますが、これは十津川村の南、和歌山縣から十キロくらいの地点平谷という部落があります、その平谷の少し下に相当高堰堤を設けまして、これに貯溜して、そうして專ら水力を起す、こういう企てであります。これは発電は主に電力の少い冬季約半年発電する。そうして後の半年は大体水を又溜めて置いて、そうして來年のその時期に発電する、こういう大体の計画が立てられております。  それからもう一つ北山川におきまする企業でございますが、これは三重縣とも関連いたしまして、新日本化学工業株式会社計画であります。これは三重縣内北山川下流三重縣地内ダムを拵えまして、そうして貯溜し、この貯水池奈良縣北山村という一村を殆んど地底に埋沒されるというようなことに相成りますので、そしてこの堰堤に貯溜した水を木本分水しまして木本に落して、そして作業を起すのでありまして、私の方ではまだ詳しいこれに対する調査研究はいたしておりませんので、さような企業申請を一應頂いて会社の御説明等を聞きたいものと思い、詳しくそういつた技術上の問題、その他会社計画、科学的な計画等について御説明を得て、地元関係しました訴訟問題とかその他について調査しようと思つておるのでありますが、そこまで達しておりません。こういうものを受付けて関心を以て適当な時期にはこれに対する調査をいたしまして、そして何分の縣の意向を決めたいとかように考えておる程度であります。以上甚だ大体でありますが、簡單に御説明申上げます。
  7. 石坂豊一

    委員長石坂豊一君) 只今発表になりました御意見に附加えて地元民の要求及び地元民実態調査をやつている点があろうと思いますが、その点についてもう少し言及して頂きたいと思います。
  8. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 少ち落ちましたところを補足させて頂きまして私の意見を申上げます。縣の縣営としております十津川分水のことに関しまして、御承知のように熊野川は非常に豊水時期に沢山水が出まして、非常に荒れた川であります。下流新宮附近におきましては年々上流からの土砂に埋沒されまして、舟運その他に非常な不便を來たしております。現に河口が塞がりまして舟が外洋に出られないような状態が昨年にもあつたのであります。これは一に十津川方面におきまして支流では非常に地質が崩壤期にあるので、砂防等を完全にやつておりませんので、非常にそういう砂利を下に流すのであります。現に小鹿ダムには三十数メートルの断層があることが調査の結果分つたのでありますが、この計画をやりますると、川原樋川上流の土石を流すので、廣瀬ダムを作りまして、天ノ川土砂を下に流すということがなくなりますので、この点は非常に効果がある、下流に及ぼす好影響があると考えております。それで地元野迫川村におきましてはさような関係もあり、又流筏等を以て生命としておるのでありますが、若干の水を上流で取られても流筏に更に支障がないと、こういう意見に到達いたしまして、地元といたしましては本計画に双手を挙げて賛成して、この完成実現の一日も早からんことを希つておる次第であります。尚現在長殿の発電所がありますが、これの上流には九尾の堰堤、約二十五メートル位の取水堰堤、これは取水堰堤程度でありますから低い堰堤でございますので、一旦雨が降りましたときには、小洪水のときには直ぐ溢れて、下にときならぬ水を上流から非常に一時に流しますので、人命を損じたり、又これがために途中の立木を流すということが非常に多い、それで非常に不安定でありますので、廣瀬貯水池ができまして、その水をキヤッチして、そうしてそれを調節して流筏のときに流す、こういうことが調節できますので、かようにいたしますれば、新宮の方に送つておる材木の輸送に対しましても非常に安定感ができる、こういうことを材木業者及び林産業者は申しておりますので、その点からも悪影響が極く少くて利益の方が多いということを考えまして、非常に賛成しておるような次第であります。野迫川村においても同様であります。又第二に北口さんの民間の案は、これは十津川村の人家連檐、いわゆる人の沢山住んでおります平谷、折谷、これは二つとも一番大きな部落でありますから大事でありますが、その外の小部落は殆んど地底に埋もれるという結果に相成りますので、非常に大きな國家的な見地から、大きな考えから出直すということでなければ、一民間の方の企業では到底承認できない、又本当に切実な問題だということで絶対に反対しておる次第であります。それから北山川日本化学工業の方におきましても、事の詳細をよく地元は知らんようでありますが、いろいろ心配いたしまして杞憂も加わり又いろいろなデマも多少加わりまして、地元民は非常に不安の感に駆られておりまして絶対反対であるということであります。  尚最近におきまして実は十津川分水問題について和歌山縣と交渉しておるのでありますが、これは今申上げております通り紀ノ川には関係なく、又熊野川方面では灌漑用水として少しもこれを利用しておらない、利用は絶無でございます。その外舟運及び流筏の問題についてもさしたる影響はない。これすら分水が一、二の或る反対によつてできないというときに、我々全村が水に浸る、こういう実際問題が現実にこういう出血があるのに、これを分水するということがあつたならば、それこそ絶対あり得べきものではない、先ず十津川のそういう合理的な計画……和歌山縣に対しても水を少し両方に流すというようなことに相成りますれば、総合開発計画一環の先ず一部ができることでもあるし、和歌山縣奈良縣両方利益になる。このことすら分水問題に対して政府がこれの認可を與えないというときに、この北山川方面認可を與えるというようなことはこれは絶対不合理である、こういうことを最近村民が申しております。この点は縣といたしましても説得と言いますか、了解説得に当りまして大変苦慮しておる次第でございます。地元の都合は以上のような現状であります。   —————————————
  9. 石坂豊一

    委員長石坂豊一君) それでは次に和歌山縣の方から……。
  10. 神尾守治

    証人神尾守治君) 和歌山縣といたしましては熊野川水域に対しまして発電水路等計画一つもございません。ただ建設省におかれまして総合水利調査計画を立てられまして一昨年からでございますか調査をされておるのでございます。    〔委員長退席理事原口忠次郎委員長席に著く〕  この関係和歌山縣内に直接にありまする今の予定地点といたしましては、熊野川本流新宮から上流約十数キロの小鹿ダムというのが本縣に直接に関係のあるダムでございます。この計画につきましてはすでにその調査委員会の一應の概案発表されておりますが、場所は只今申しました高田村と思いますが、高田村の小鹿という所に作りますダムでございますが、このダムの高さは約二百メートルでございます。大体の発電力は七十万キロぐらいだと思つております。これも十分まだ調査されたものでないので正確なものではないと思いますが、こういう発電計画があるわけであります。この計画につきましてはこの上流は非常な水豊地帶でございまして、特に目ぼしい村といたしましては本宮村、これは官弊大社熊野座神社のありまするところでありまして、官弊大社熊野座神社水沒いたしますし、尚その附近には湯ノ峰、湯川等の温泉もございますが、これらも全部水沒いたします。それから熊野川北山川合流点には熊野炭田がございまして、この炭田も全部水沒いたします。又北山川を少し上りますと紀州鉱山があります。これは硫化鋼を出しておりますが、その鉱山水沒いたしますし、尚それをもう少し上流へ行きますと國立公園吉野熊野國立公園の最もいい中心でありますところの瀞八丁が完全に水沒してしまうわけであります。その他熊野川本流北山川流域におきまして数千戸の農家が水沒いたしますし、山林田野水沒は莫大なものがあるわけでありまして、民間といたしましては絶対反対を表しておる次第であります。ただこの計画におきまして新宮市の関係者はこのダムができますことによりまして、今まで年に十万石か二十万石の材木供水のために海に流されております問題が、こういう完全なものができますと防止できまして、新宮市に少し近い所で以て、そのダムによつて材木をキヤッチし、新宮市に水路或いは道路によりまして運ぶことができますので非常に経済上有利になりますことと、そういうふうにダムができますと先程もお話がありましたように熊野川が非常に砂を流しまして、特に河口にありますところの新宮港が砂に埋まりまして船の出入りに不便を感じておりますのが、このダムができますことによつて非常に下流部新宮港を初め、その間の水路が良好になりますので、新宮市としては非常な賛意を表しておるようであります。尚この計画総合開発関係がありまして、和歌山縣奈良縣との境附近にも尚外の発電候補地などもあるようでありまするが、これらの点につきましては本年度中に調査を完了されるという御様子のようでございまして、今私といたしましてははつきりしたことを承知いたしておりません。それで先程奈良縣からお話がありました平谷民間ダムにつきましても、この小鹿ダムを作れば上流民間のものができません。併し上流民間のものをやるといたしますれば小鹿ダムは意味をなさないという因果関係を持つておることを御報告申上げます。  それから今御説明のありました北山川上流和歌山縣三重縣奈良縣関係の新日本化学申請によりますところの発電計画につきましては、多分ダムの位置は和歌山縣の戸口であります北山村の地点と思つておりますが、和歌山縣といたしましてはダム上流水沒地帶は民家もありませんし別に反対はないと思いますが、この発電計画が実施されますと、先程御説明のように北山川本流の全部の水を三重縣木本の先で太平洋に落してしまいますので、今まで本流の方に落ちておりました水が一滴も來なくなるわけであります。そういうような関係で先程申しました瀞八丁の風景は完全に破壊されます。尚その附近の沿岸の國立公園地帶も非常なる風景の破壊を受けるわけであります。それから最も困りますことは全然北山川の水がなくなりますために、合流点宮井から瀞八丁の直ぐ上の北瀞八丁まで新宮からプロペラ船が行つておりますが、これが全然通れないことになります。このプロペラ船は單に遊覧ばかりのものではございません。合流点宮井から瀞八丁に至ります間の人家はこのプロペラ船が唯一の交通機関でありまして、このプロペラ船交通できないということは交通上完全にその使命を制せられることになりますので、代案といたしましては、自動車が入ります道路を作ればいいわけでありますが、これは莫大な金がかかると思います。又宮井から下新宮河口に行きます本流水量北山川の水も全然なくなります。まだこれは私の方といたしまして調査が完了いたしておりませんが、本流の水が非常に減水するわけであります。すでにお出でになつた方は御承知と思いますが、現在におきましても少し水が減りますと、二、三十人乘つておりますプロペラ船の客も瀬に行きますと船から下りまして、船を空にしまして辛うじて船は瀬を乘切りまして、それから船を上の淀に乘り出しまして乘つて行く、こういうことを数回やつておる次第でありまして、現在本流の水がこれ以上減るということは、これ又プロペラ船の運航に対しまして致命的な悪影響があると思つております。尚この新宮河口新宮港でございますが、これは海岸の漂砂河口が埋まりまして、少し雨が降らないと本流の水が減るわけであります。そうしますと河口漂砂が強くなりまして河口を閉塞いたしまして、中に入つた船は何十日も出られなくなる。外の船は折角荷物を持つて來ても沖で漂つておる、こういうふうな非常に困難な事情にありますので、この熊野川水系の水を少しでも減らすということは非常に嬉しくないことなのであります。尚最も下流といたしまして反対いたさなければならない理由といたしましては、この北山川上流から來ております流木が全然熊野川下流へ流れて來なくなります。そうしますと、この材木によつて生きております新宮市及び対岸の三重縣の鵜殿村などは、非常なる経済的の打撃を受けるということを御承知願いたいのであります。尚プロペラ船ばかりでございませんので、十津川本流から流れて來ます筏などの流送につきましても、相当支障が殖える、こういうことが考えられるわけでございます。  以上のようなことによりましてこの新日本北学工業でできまするダムから下流和歌山縣関係者は非常なる反対をいたしておるわけでありまするが、又一方におきましては、こういう画期的な熊野川開発事業に対しましては、大いにやるべしというような意見がなきにしもあらずでありまするが、この点につきましてはまだ縣といたしましては、尚十分將來研究を要する問題だと思つております。  それから奈良縣から御説明のありました十津川大和平野及び紀ノ川流域に対する分水問題でございまするが、この問題につきましては先程御説明がありましたように、奈良縣とこれは安本が中心になられまして、十津川紀ノ川総合開発計画といたしまして、長い間委員会を作りまして研究をされた問題でございまして、この総合開発といたしましては、一應先程御説明のありましたように、二月の二十七日か二十八日に委員会が異議なしにそういう線で以て大和平野及び紀ノ川流域灌漑を良好にするようにしようということは決まつた次第でございまするが、これの実施に対しましてはどこから工事をやるか、どんなふうに負担をするか、どんなふうな分方法を採るかということにつきましては、これから研究されるべき問題でありまして、目下奈良縣及び和歌山縣といたしまして、十分今研究中でありまするが、相当にむずかしい問題だと我々は想像いたしております。この今の十津川分水問題につきます地方民意向といたしましては、只今申しましたように、総合開発といたしましては、ただこれも委員会として賛意を表したのでございまして、まだこれが全部完全に和歌山縣意見として收まつたわけではないのでありまするが、特に分離しての事業につきましては、まだ当局だけでも十分審議は盡しておりませんので、地元意向につきましても、相当にむずかしい問題があると想像いたしております。  それからこの十津川の水を奈良縣及び紀ノ川分水いたします問題につきましては、これは先程も御説明がありましたように、十津川上流の、十津川本流に対しまして僅かな水量ではございますが、下流といたしましては決してこれは有難いことではないのでございまして、相当反対意見もまだあるわけでございまして、ただ総合開発として大々的に大和平野及び紀ノ川流域が生きるというなら、まあ或る程度熊野川下流も犠牲になることを我慢しなければならんかと、こういうふうな空氣があつたわけでございます。これ又十分まだ意向をまとめたわけではないのでありまして、これが総合的に完全にできるのならば結構だけれども、本当に一部的に名目的な事業をやるのであつたならば、そう簡單に賛成できるかどうかは……むしろ賛成できないという意見が強いのではないか、こういうふうな感想を持つております。以上。   —————————————
  11. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) 三重縣の方をお願いいたします。
  12. 角永清

    証人(角永清君) 第一に縣の計画でありますが、これは先程和歌山からもお話がありましたが、熊野川は國において総合開発計画をお立てになりましたので、縣としては計画を持つておりません。第二番目の問題につきまして、先程小鹿の問題は和歌山からもお話がありましたので、私からは先程和歌山及び奈良縣から一部お話のありました新日本化学工業北山川計画について御説明申上げます。この北山川発電所は現在安本の資源委員会ですか、あそこでも総合開発一環として御檢討中の由に承つておるのであります。これは熊野川支流北山川、それから大又川というのは三重縣の方に分れております。この二つの合流点でありまする先程お話のありました和歌山縣飛地の北山村、それから三重縣の神川村に土場というところがありまして、そこに丁度縣境に跨つたところに堰堤を作る。そういたしまして奈良縣側の方の上流の方に只今三十キロメートル、それから三重縣の方に向つて二十キロメートル、延長約五十キロメートルの大貯水池ができるわけであります。簡單に申しますと、大体全容量九億四千万立米、有効流量が五億二千万立米、利用水深が三十メートル、浸水面積は、二千万平方メートル、つまりこの水の使用方法は標高二百八十メートルから二百五十メートルまでの三十メートルを有効水深として、それから、ずつと下流の方に下りまして、只今飛鳥村の佐渡というところがありますが、大分山から下つたところでありますが、そこから取口を作りまして、約四キロ半ばかりの隊道を作る。そうして木本町の北の方に泊という村がありますが、そこに発電所を作ります。更にその発電所の直ぐ近くに現在のところ泊村に化学工場を作ることになつております。いわゆるこれはパブリック・ユースじやなくて工業電力として自家用電力に使うことになつておるのであります。細かい点はいずれ御質問によりまして土木部長からでも委員長の御許可を得て説明させて頂くことにいたしまして、簡單に申上げますと最大有効落差が二百七十メートル、それの損失がありますので、常時の有効落差が二百六十一メートル、出力の方は御承知のように理論と実際と両方ございますが、理論水力から言いますとこれはいろいろ計算があるのでありますが、理論の最大が十八万キロワット、それから常時が約十五万三千、これはラウンド・ナンバーで申上げます。実際の発電力が、最大発電能力約十五万八千、常時十二万七千ということになつております。それから大体水の使用量毎秒最高が七十立方米、最低五十立方米、堰堤は確か百二十メートルか、百三十メートルだつたと思います。延長五百メートル、御承知のように水域は流域面積が五百十一平方米で、非常に雨量が多いところでありまして、平均大体四千ミリ、多い所は六千から七千あるようであります。非常に雨量の多い能率のいい発電地点なんであります。先程も申されましたように、これは流域変更方式でありますので、どれだけの水が熊野川本流から出るかということについての計算を実は私自身も知事もいろいろ計算を要求しておるのでありますが、まだはつきりした数字が出て來ないのであります。確かに一部減ることは事実であります。  次に尚地元民の動向でありますが、地元民といたしましては、縣全体としては双手を挙げて賛成いたしております。ただこの南牟婁郡でありますが、南牟婁郡のうちで五郷村と飛鳥村でありますが、これは反対でありますが、神川村と三つありますが、ここに約八百戸、七百九十四戸というのが水沒するのであります。奈良和歌山は数戸、とにかく三重縣におきましては八百戸近く水沒いたしますので、その部落におきましては相当反対があるのであります。併しながらこの反対の動機を見ますと、主に非常に精神的なものが多いようでありまして、どちらかと言えば長い間の祖先の墳墓を捨てて他に移轉することが忍びないといつた理由が主なようであります。泊村、大本町その他の地区におきましては非常に賛成をいたしております。  次に数字、その他の参考となるべき事項をいろいろ申上げたいのでありますが、実は私共この計画を聞きまして非常に面白く思いましたのは、熊野川の二百万キロとか何とか総合開発計画があつたようであります。こういつた問題は鴨緑江の開発問題と非常によく似た点があるのであります。これは御承知のようにこの開発の連中のうちには鴨緑江の連中がおるようでありますが、私も実は鴨緑江関係におつたことがあるのであります。電氣課長もやつておりました体驗があるのでありますが、丁度今の問題は実は日本窒素が鴨緑江の開発を最初やつたのは御承知の方もここにあると思いますが、赴戰江であります。赴戰江は二十五万キロワットの発電であります。これは鴨緑江の支流を、河の名前は忘れましたが、日本海側に水路せ変更しまして約八千三百メートル、非常な落差を利用して大きな発電所を作つた。そうして興南に化学工場を作り、次いで御承知のように長津江三十二万キロ、それからその次は盧川江に三十五万キロの発電所、約百万キロの発電所を作つたのであります。その当時もここにおいでの方で御承知の方が多いと思いますが、鴨緑江の水を利用するとどうなるかと大問題になつたことがあるのであります。併しながらいろいろ総合的に考えまして、百万キロワットの発電所と共に興南化学工場、世界的な化学工場ができたわけであります。その後御承知のように水豊とか、下流におきましても義州とか水豊のごときは七十万キロワットの発電所が完成して義州、雲峰その他もやつております。尚やはり江界水力というものは鴨緑江の支流を、流域変更をいたしております。從いましてこれは相当下流影響があるでしようが、そういつた点はよく総合的に睨み合せて行く必要があるのではないかと思うのです。殊にこれは関連しておるので御了承願いたいのでありますが、この電力を使う化学工場は非常に面白い化学工場でありまして、いわゆる塩安と曹達灰に使うのであります。塩化アンモニアが二十万七千トン、曹達灰が十八万トンできます。これは非常に簡單な方法であります。御承知のように日本の今日の肥料というものは非常に高いのと安いのと差がございますが、まあ非常に高い。この方法によりますと非常に安くできるのでありまして、殊に曹達灰のごとき御承知のように日本は輸入面に頼つておりますが、輸送費が高い。それでも内地で作る塩より安いのでありますが、その運賃以下でできます。これは化学処理をする場合に塩を溶かして塩水にするのであります。塩水まで圧縮いたしましてそれによつて肥料と達曹灰を作るのでありますが、非常に安いものができるのであります。尚電力の建設費も、これは私請賣りでありますからお許し願いたいのでありますが、これは貨幣價値が非常に変りましたために以前の電氣と比較できないのでありますが、会社計画によりますと、大体建設費が全部で四千四百万ドル、ラウンド・ナンバーで申します。発電所が二千三百万ドル、化学施設が二千百万ドル、これも三百六十円で直すが妥当かどうか知りませんが、大体の日本の爲替相場が多少問題がありますが、三百六十円に直しますと総経費が百六十八億、約百七十億になります。それから電氣関係が約八十七億、工場関係が七十六億、こういうことになるのです。会社の設計によりますといろいろ基礎があるようでありますが、一キロワットアワー百ドルでできる。非常に安いと思うのであります。アメリカでは二百ドル、三百ドル、四百ドルもかかつているようであります。果して赴戰江や長津江のようにうまく行きますか分りませんが、赴戰江のごときは御承知の方もあるかと思いますが、一キロワットアワーに五厘とか何とか言つておりましたが、実際は私共の見るところによりますと四厘から四厘以内でできることになつておるわけであります。そういつた者が今回の建設に当るのでありまして、或る程度まで相当信用し得るのではないかと考えておるのであります。果して今日の貨幣價値で日本で一キロワットアワー五十銭前後でできるというようなことを言つておりますが、それははつきりした数字的の何を持ちませんが相当安い電力であることは間違いないと思うのであります。御承知のようにこれは少し縣として申上げるのに大き過ぎる話かも知れませんが、今日の國土の資源を失つた日本といたしましては、私國策的に考えて何としても日本はこういつたことから考えなければならんのではないかと思うのであります。人口が多くて資源のない日本といたしましては、電力を元としました化学工業その他を興しまして國力の回復を図るという方向に私は行くべきだと考えるのであります。從いまして一般電力の問題その他ございましようがこういつたことこそ今日の日本で非常に必要なことではないかと考えられるのであります。  さて先程いろいろお話のありました補償その他の問題でありますが、この補償問題につきましては、今日先程申上げましたように千四百戸ばかりの家屋があり、耕地も田畑合せて百九十町歩つたわけであります。耕地は割合少いのであります。こういつた補償は無論完全にやらなければいけませんし、それから先程お話がありましたように、この会社は大体発電と化学工業だけでなしに、その他製材方面材木の利用ということも考えておるようであります。丁度鴨緑江と似ておるのであります。鴨緑江の新義州の製材工場のときも会社が、補償いたしまして製材工場を上流に移轉したのであります。この上流に移轉し尚且つ会社が直営で相当なものをやつておりましたが、その場合でも非常によい点が多かつたのであります。何となれば御承知のようにこの貯水池が生れまして延長五十キロという長い貯水池附近は優秀の森林資源地帶でありまして、林道その他のないところもあるのでありまして、從いまして湖水を利用いたしましてこれらの材木を船又は筏を利用いたしまして湖水近くの製材工場に運ぶのであります。未利用材木開発されますし、御承知のように從來は捨てておりました枝とか葉とか、葉は少しなのでありますが、枝とか山元で原木にいたしますのに三分の一以上、ひどいものは半分も捨ててしまうのであります。そういつたものも利用できるのであります。そうして湖水長の製材工場でできました製材を電車、これは工事用に電車をつけることになつておりますが電車で運ぶということになります。又先程大雜把に申上げたから落しましたが、枝とか葉とかいうものを利用いたしまして炭酸ガスを得るために炭素をとります。そういつた場合の副産物として御承知のようにメタノールとかアセトンとかいろいろの副産物もできるのであります。そういう工合に完全に利用されるわけであるますが、この北山沿岸の材木はそういう工合に完全に利用される。それから北山から下の方の材木というものはこれは数字は忘れましたが、上流より大分少い筈であります。そういうものを一部下に流せば下も一部利用されますが、そういう総合的な対策が必要であると考えるのであります。そうしてT・V・Aのような考え方で、地域にこだわらず、私共も敢て三重縣だからというて三重縣にこだわつて申上げておるのではありませんが、総合的な考え方で進んだらどうかと考えるのであります。尚熊野川河口の問題が先程お話がありました。これは実は現在でもむしろ和歌山縣より三重縣が困つておるのであります。新宮の方がまだよいのでありまして、私の方は鵜殿という村がございますが、製材工場が沢山あります。河口が埋まつたり、変つたりするので現在でも困つておるのでありまして、この問題はむしろ根本的に土木的に解決をしなければならん。放水路を作るとか、浚渫船を置くとか、最も根本的対策が必要でないかと考えます。  大体雜然的に申上げましたけれども、要するに私の縣といたしましては、この計画は外資が入り、或いは見返り資金その他で若し他の方がうまく調節がとれましたならば、総合的に、國策的に御覧になつて調節がとれるならば、私の縣といたしましては双手を挙げて賛成いたしたいと思うのであります。併しながらこういうものはいろいろ総合的な問題でございますので、國家的に考えましていろいろの点を調整しなければならんと考えております。尚理想的にいいますれば、こういつたような開発は今後の考え方といたしまして、例えば補償問題にいたしましても対立的な考え方はいかんと思うのであります。会社に対して補償を要求する、会社は又安く値切るという考え方でなしに、地元民と一体となりまして、或いは製材方面、林業方面に携わる。或いは工場に行きたい人は工場に行く。或いは土地を開拓して農業をやる。いわゆるT・V・A式考え方が必要でないかと思うのであります。ただむずかしいのはいわゆる國策会社でやりますと、從來ややもすると戰時中欠点がありましたように非常によい点もありますが、能率という点で悪い点もある。從いましてこういつたことはいわゆる特殊会社的の法律の裏付でやることは或いは望ましいのではないかと思いますが、開発に当りましては私の縣といたしましてはやはり鴨緑江の何といつても大きな経驗を持つておりますああいう連中をやはり使う必要があるのではないかと思うような次第であります。  もう一つ申落しましたが、これは三重縣の希望なのでありますが、地図を御覧になると分りますが、木本、尾鷲の間に非常に高い山がございますが、矢ノ川峠、そこの間の鉄道が実は貫知いたしておらんのであります。工事中であつたのがたしか今年の春打切られたのであります。隊道も相当できておるのであります。本発電所に関連いたしまして、三重縣といたしましては是非これを中途でやめてある尾鷲、木本間の鉄道の貫同を促進して頂きたいと思うのであります。これはこの工事の東にあります小野田セメント工場のセメントを運ぶ上におきましても、これは港を作つて船で運ぶようでありますが、いろいろの関係から申しましても鉄道の貫通の完成をして頂きたい。これは附帶希望なのであります。附加えて申上げて置きます。
  13. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) それでは質問を続行いたします。
  14. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 奈良にちよつとお尋ねしたいのですが、僕はこの前奈良の知事さんに詳細に聽いて、この計画はなかなか立派な計画だということを感じたのですが、これを実際実現するのにどういう方法で実現しようとして、金の問題をどう考えておられるのか、若し腹案がありましたら聞かせて頂きたい。
  15. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) お答え申上げます。これは先程ちよつと申上げたように第一期第二期がある。第一期の総工費が約十億であります。これをやりたい。これは流域変更という認可が必要でありまして、これが幸いにして三重縣和歌山縣の御同意を得て認可になりますれば、本年直ちに縣会に純縣費を以ちまして、二千万円乃至三千万円を工事費として計上することになつております。そうして工事を始める。それからその後のことにつきましては、これはちよつと前後しますが、これは農業用水関係と、それから電氣関係のものと、この二つに分れております。電氣は取敢えず電力を発生するまではできませんが、農業用水の方は、地元の分担と縣の分担、こういうように考えておりますので、尚和歌山縣に水を分けるというようなこともありますので、この分に対してはまだ水の量に應じて和歌山からの分担金が出るわけであります。尚工事を進める計画といたしましては、明年度以降は或いは特別な融資或いは外資等又は電氣関係のみでないのですから公共事業に加えて頂いて、農業用水の見地から農林省の援助を得、或いは河水統制の意味から多少でも建設省の補助を得るということも併せて考えております。若しこれができません場合には、自力を以ていわゆる建設費を何らかの方法によつて集めます。最近奈良縣においても勿論これは縣営としてやつておりますので、天理教とか或いはその他のいろいろな團体、又は利益を蒙ります大阪方面い、いろいろな方面の團体における資金的の援助を期待し得ると思います。大体そういう……。
  16. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それからもう一つ、十五トン乃至十六トンとおつしやいましたが、これは年間を通じてでしようか。
  17. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) これはでございますね。農業用水ということに非常に重きを置きまして、六月十五日から九月十四日まで灌漑期の九十日、この間に成るべく沢山放水するという建前をとつて十五トン送り得る。こういうことなんで、その他の春、秋等はずつと少くなるのであります。
  18. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 分りました。それから洪水防禦とかに特殊なるお考えはないのですね、別に……
  19. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 洪水防禦は幾分か能野川の水系の放水を上流において一部セーブしてこれを調節いたしまするから、さつき申上げたように流木の流れるのは防止したり或いは河口の埋沒を少なからしめる。途中の不時の洪水によつて沿道の水害工作物の壞れるのを防禦するという意味においては勿論でありまするが、何分天然の河川でございますから、上流に貯水をするのには森林を作つて貯水して洪水を防禦する程度で、あの沿道には何分田地を持ちませんから、あの程度ではそういつた意味で普通の河川のような防水が少し薄いように思つております。
  20. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 分りました。これについて和歌山三重の両縣にお尋ねしたいのですが、今お聞きのような程度で水を上流から取るということに対して、両縣はこれに対してその受ける影響その他につきまして何か御意見がおありじやないでしようか。
  21. 神尾守治

    証人神尾守治君) 今の十五トン十六トンという数字は、これははつきり我々も調査いたしておりませんが、十津川本流水量に対しまして現在取ろうといたしまする川原樋川及び廣瀬を通ります天ノ川水量は、大したものではないということは言えます。ただこれはおかしな言い方でございますが、水の問題になりますと、一般の民間人は非常に神経を高ぶらせるのでありまして、我々の数理的ではなかなか説明しにくい問題もあるかと思いますが、大体和歌山縣といたしましては、そうひどい反対ではありませんが、まだ釈然としていないというふうな状態であります。
  22. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 三重縣は如何ですか。
  23. 角永清

    証人(角永清君) 三重縣はまだ十分研究していないそうでありまして、結論は出ていないそうであります。
  24. 安部定

    ○安部定君 ここに我々が頂いておる政府筋から出たと思われる熊野川総合開発計画というものがあるのですが、この中に本年の総合開発として四つある。一つ建設省案、一つ通商産業省案、一つ野口研究所案、一つ日本発送電案、これは日発であります。この四つあるのですが、この四につきまして各縣におかれてはどういうふうにお考えになつておられますか。内容は詳しく只今お伺いしたのでありますが、各縣別にこの案には賛成とかこの案は考えさせられるというふうな要領をこの四つの案につきまして一應各縣お答え願えませんか。
  25. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 奈良縣といたしましては、今の新日本化学工業の案に対しましては先程申上げた実状でありまするが、原則といたしましては、奈良縣としても十分三重縣同樣御協力申上げたい、こういうような考えを大体持つております。北口氏の民間のものに対しては、これは縣としても地元としても反対であります。
  26. 安部定

    ○安部定君 質問して置いて途中で甚だ失礼でございますが、今新日本化学工業という御説明があつたのですが、そうして私も新聞ではそのことも存じておりますが、政府筋から出された総合開発にはその案は載つていないのですか。それかに今の北口案という案が奈良縣から言われましたが、これは全然ありませんが、奈良縣から出された案でございますか。これはどなたか政府筋の方に伺いたい。つまり五つの案になるわけですか。
  27. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) これは私からお答えいたします。これは奈良縣和歌山縣両方に出しておる案でございます。そうして例の熊野川水系総合開発委員会に出しまして委員会でもこれを取上げて他の計画構想と共に研究しておる案でございます。
  28. 安部定

    ○安部定君 そうでございますか。これは甚だ失礼なことを申しましたが、我々が政府筋から頂いた資料には現在は先程申上げた四つの案した上げておらないのですが、あなたの方の北口案というものは相当以前から出ておる筈ですが、そういたしますとこれは我々の方として調べますが、それはよろしうございます。それはこちらのことになりますから……。では一つ次をお願いいたします。
  29. 神尾守治

    証人神尾守治君) 済みませんが今四つの案というものをおつしやたのですが、もう一度……。
  30. 安部定

    ○安部定君 建設省案はダムで言いますと熊野、風屋、池原、の三ケ地点です。通商産業省案というのが二番目で、これはダムとしましては、風屋、鹿淵、池原、七色、下瀧の五つを言うのです。建設省案に対して通商産業省は五つ、それから野口案は例の新日本化学工業の分と思います。それから日発の案は十津川及び北山川に七つの堰堤を建設して小原、鹿淵、音枝ですか、それから大瀬、北山第一、二、三の七つの堰堤発電所を作るというような案なんです。これは各縣元に恐らく示されたかと思いまするので、それらについて檢討されたところの賛否でございますが、そういつたところをお伺いいたしたい、こういうわけでございます。
  31. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 先程も申上げましたが、私は四つのことについて考え違いをしておりましたので訂正いたします。今おつしやいましたので、この四つの案ということを初めて知つたのでありまして、これはいずれも奈良縣地内における風屋のごとき、その他も北山第一、二、その他の発電所地点奈良縣地内に大分あるものがありますので、影響があると思いますので申上げますが、これは建設省案について私も地元の委員となつているので多少二、三知つているのであります。日発案は大阪の日発支店長からこういう案があるということを研究的に非公式に聞いております。その他については聞き及んでおりませんので、建設省案も纏つてこれが如何であるかというようなことの御喚問もありませんので、その他の案も同樣であります。これに対する縣の態度とか賛否に対してはちよつと研究も不十分ですし、又申上げられないと思います。
  32. 神尾守治

    証人神尾守治君) 和歌山縣といたしましても今の風屋とかいうのはどこか知りませんし、七色というのは大体調査しつつあるということは聞きましたが、まだそれらの具体的の案について御説明も聞いておりませんので、何も我々といたしまして御意見は申上げる材料はございません。
  33. 角永清

    証人(角永清君) 三重縣土木部長からお許しを願います。
  34. 大林勇治

    説明員(大林勇治君) 奈良和歌山の二縣からお話がありましたように建設省案とか、通商産業省案という内容については我々も承つておりませんので、何とも申上げられませんが、ただ野口案と申しますか、新日本化学の案と日発案の一部は北山川におきまして我々の方で水利権を得ております、その野口案と日発案の水利権を得ておるものとの間について考えますと、日発案で申しますが、もうすでに昭和四年頃に水利権を得たものでありますから、随分前の形態におきまして発電計画でございます。それから野口案と申しますか、新日本化学の案は新らしく流域変更による新らしい構想の下に企てられたものであります。我々といたしましては野口研究所で出しております新日本化学の案がアメリカにおきますT・V・Aのような形態で以て進んで行かれるならば、日発案よりも非常によいのではないかという考えを持つております。
  35. 安部定

    ○安部定君 もう十二時のようですが、昨日の例もありますし、一應休んで午後に質問することにして頂けませんか。
  36. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) それでは午前の委員会をこれで止めまして、午後は一時から開会いたします。    午後十一時五十七分休憩    —————・—————    午後一時二十四分開会
  37. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) それでは午前に引続きまして委員会を開会いたします。
  38. 仲子隆

    ○仲子隆君 この熊野川関係の問題は、三縣が立場が三通りであるというようにも考えられますが、案が建設省案であるとか、安本案であるとか、その他いろいろな案があるとすれば、この三縣は総合開発的な問題について、一緒になつて相讓り相助けるというようなことについて、御相談が行われておるのかどうか。或いは今朝お話があつたかも知れませんが、これが今朝から伺つておりますと、おのおの若干反対的な立場もある。まあ左程大したこともないというように伺われます。この三縣の縣議会とか、或いは縣行政関係が一緒になつて、如何なる案を國家的な立場で受入れるかということについて、どういうふうな樣子であつたかということを一つお伺いいたしたい。  それから奈良縣の方から訴訟問題というお言葉がありましたが、何か訴訟問題というようなことが今現に起つているのであるかどうか。かねて我々はこの地底に沈む人達がからさざまな陳情を受けておるのであります。そういの事柄について、事実どういうことがあるかということをお伺いいたしたいと思います。
  39. 角永清

    証人(角永清君) 三縣に関連いたしておりますけれども、私からもお答えいたします。無論関係の方が見えております土木課長会議は、ときどきやつておられるようであります。ただ例えばこの北山川の問題にいたしましても、お説のように総会開発計画の中に入れられるかどうかということを只今安本で審議中のようであります。多分入るようにも聞いておりますが、そういつた問題が一つと、第二に外資の導入ということが相当向うの方でも熱心に、何でも近く視察にも見えるそうであります。併しながら御承知のように、日本の経済界全体の安定といいますか、外資を受入れるような態勢になるかどうかというような事態と睨み合せなければなりません。外資が殆んど確実になるということになれば問題ないのであります。そういつたことが一つ、それからもう一つは第三には、御承知のようにこういつたような問題は非常にデリケートでありまして、何と言つても先程申上げましたように水沒の戸数が相当あり、又流筏その他いろいろの方面影響がありますので、忌憚なく申上げますれば、そういつたような政治的顧慮もありまして、具体的には土木部長さんあたりの技術的な会議に止まつているような次第であります。勿論総合開発計画の中に入り、例えば一つの例だけ申上げて恐縮なんでありますが、外資の導入が確実になるというような態勢になりますれば、國策的な見地からも、大きい見地から恐らく各三縣の縣議、知事あたりも、もつと大きい立場から相談されて、或る程度実現するのじやないかと思われますが、こういつた公開の席で余りざつくばらんに申上げ過ぎたかも知れませんが、大体どの問題でも、私先程もちよつと申上げましたようなもつと大きなT・V・A式な考えで行つたならば、必ずしも解決が不可能でない、すべての問題も、外も恐らくそういうことじやないかと思います。無論いろいろな補償問題、それからあとのいろいろの附帶的な施設等につきまして、各縣利害の関係が違いますので、表面上なかなか簡單に行かんと思いますが、私共の見るところでは、大きな立場から、いよいよやらなければいかんということになれば、必ず協力できるのじやないか、これは私、一例を北山川に取りましたが、外の問題でもそういつた見地に向つて行くのじやないかと考えております。
  40. 神尾守治

    証人神尾守治君) 大体今、三重縣の方から今の野口案につきまして御説明があつたのでありますが、熊野川全体の水系開発計画につきましては、先程私ちよつと御説明申上げたように、名前をちつと忘れましたけれども、熊野川水系調査いたしまする委員会が建設省を中心にいたしまして近畿地方建設局にございまして、近畿地方建設局が中心になりまして熊野川水系の水利発電の総合調査委員会が今進行中なんであります。これを具体的に経過を申上げますと、昨年の暮頃でございましたか、先程説明いたしました小鹿ダムをどうするか、小鹿ダムが若し非常によくてあれをやるがいいということになりますと、上流の殆んど全部のダムが潰れてしまうわけなんであります。だから小鹿ダムを先ず診断をして、これがいいか惡いかということを先ず決めようというので、昨年の暮に小鹿ダムを取上げまして、一体これがものになるかならんかということの審議があつたわけでございます。そのときの審議の内容といたしましてはまあそういう水沒地帶反対ということも考えに入るけれども、尚技術的に両岸の岩盤は非常に立派なのでございますけれども、簡單に見えた砂利層が地下三十メートルから四十メートルぐらいありますために、これを技術的に解決することができるだろうかどうだろうかということが最後の問題になりまして、ちようど日本の技術と日本の機械では誰もやつて見せますという人がその委員会にはおりませんでして、結局はアメリカの技術とアメリカの機械を持つて來たらばできるのかも知れないなというふうな結論だつたわけでございます。併し何分にも岩盤はいいし、地理的條件はいいのだから何とかこのダムを生かすようにお互いにもう少し研究しようじやないかとこういう意見がありますし、一方ではそんなに地元反対もあるのだし技術的にもむずかしいのだから、これは一應棚上げしてしもうて、小鹿ダムがないものと考えて、次の上流の方の調査をしようじやないかという意見もありまして、両方相当に議論をいたしましたが、結局小鹿ダムは技術的にもむずかしいようだから、或いは將來の研究として研究はする必要あるけれども、一應棚上げして、それで上流の方の調査をしようということで別れたのであります。その後一遍も末だ委員会をお聞きになつていませんで、一二ヶ月前に本年度において後の調査審議を完了しようと思うというふうな大体の予定計画が参つておるだけであります。恐らくこの次の委員会が開けまするときには、多分今のこの新日本化学の案も、或いは先程奈良縣から説明のありました北口案だとか、或いは風屋案とか七色案とかそういうようなものも全部出揃つて審議されるのじやないかと、こう我々思つておりまして、そのときには大いに我々もできるだけ協力申上げようというような氣持でおるわれであります。
  41. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) さつきの訴訟というのは、これはさつき私の口の廻り方が工合惡かつたので、訴訟ということはありませんです。補償問題について十分お示しを願つて、そして具体的に地元民に相談したならばというような意味のことを申上げたと思います。それから私の方は十津川の問題でありますが、これについて和歌山縣の方との折衝でございますが、これは農林省が委員会を拵えまして、両縣の委員を以て委員会を組織してたびたび折衝しておることが一つでございます。そうしてこの二月の二十七八日に結論を得た、これが一つ、他は奈良縣和歌山の間で私共農地部長さん、耕地課長さん等と二回ばかり会いましてお話は交換しております。それから尚あそこの縣会議長さんにもお会いしまして話をしたのであります。その外当初に、一番当初でございます。農林省がまだ総合計画として取上げる前に十津川分水問題というのが非常に和歌山縣を刺戟した際に、私と副知事で和歌山縣に参りまして、知事さん及び縣会議長さんに、これは吉野川から取るのじやない、十津川から取るのだという御了解と御説明を申上げまして、その直後に和歌山の議員の方が五名だつたと思います。それから事務局長が現地に視察に來られまして、廣瀬十津川を見られて、そうして帰りに新宮へ出てお帰りになつたのでありますが、このときは私の方の縣会議長初め縣会議員も数名行を共にしまして、そうしていろいろ話合つて、大体このくらいの水ならいいのじやないかというような個人的の話でありますが、話合いましてお別れしたような次第であります。その後は何分農林省が調査の指導をされておるので、その方のお指図によつて、大体直接の了解とか直接の交渉などは先ず御遠慮申上げるような形に相成りましたので、さまで深い何はありません。が、併し当方の縣会議員の方においても個人的に或いは道路の問題とかその他の問題に対して和歌山の縣会議員の方とも個々にお会いしましていろいろ話合つて技術的にも奈良縣計画に対する御了解も得て相当の認識も得られておるように聞いておるのでありまして、こういうことは二三に止まらないのであります。正式に今回建設省の方へ流域変更を書類を以て申請いたしましたので、その後は去月の二十九日に奈良縣当局、それから和歌山当局土木部長、副知事さん等と河川局長のところでいろいろこの問題についてお話合をいたしたというのが最近までの経過であります。
  42. 安部定

    ○安部定君 只今前質問者の質問で凡その連絡状況は分つたのでありますが、私はそのことをもうちよつとお尋ねしたいのであります。それは昨日もこの委員会で東北の只見川の開発についていろいろ話がありましたときに、近畿以西の方に非常に電力需要が大きいが、その電力の電源には熊野川淀川を当てればよいではないかというような意見も昨日の委員会の間に随分見られたのあります。そういう観点から考えまして近畿地区は現在水力の設備が全國六百何万キロという場合に十八万四千七百キロ、僅かに十配電地区の中で三・一%であつて、これより少い地区は他の八地区には見られないというくらに水力は少い。併し包蔵水力は非常に多いので、昨日もそのような話が出たのだと思うのでありますが、さような意味合におきまして單に三縣のみならず阪神地区の、つまり電力を非常に強力に需要するところの阪神地区の人々は、そういう人々とも相寄つてこの熊野川水力開発をして近畿地区に役立てるということについては話合いはしたことはありませんか。或いはこれからそういうことをなさろうという話合いが縣應と縣知事さん以下首脳部の間に動いていないかどうかということを、今のに連関して一つお尋ねしたいのであります。これはどちらか御一縣の方で結構でございます。  次には八月十六日に読賣新聞がこの熊野川水力開発について随分詳細なことを、これは新聞の報道でありますけれども載せたのであります。これによりますと先程三重縣の副知事さんの言われました新日本化学の、あの北山川ダム木本発電所につきましては、これは主として財界人の間で計画されておるというようなことがその記事の中に書かれてあつたのであります。財界人というのは野口研究所が主体になつておるのでありましようけれども、どういう財界人で、何のだれそれというのじやありませんが、主として三重縣内の人であるか、或いは阪神地区の人であるか、お差支なければお尋ねしたい。と申しますのは、更に第三といたしましてお尋ね申上げたいことがあるからであります。それは先程の証言によりますと副知事さんの証言では建設費もそれからキロワット当りの費用につきましても、すべてドルで証言なさつておる点から考えまして、多分に外資導入に備えての準備をここですでになさつておるのではないかということになると、財界人として可なり突込んだ上で進められておるのではないか、その点についてお答えが願いたいと思います。  更に今度は細かいことになりますが、私共がここに頂いております別の資料によりますと、新日本化学工業の建設費は一キロワット当り七万九千円となつておるのであります。尚全國の安本の建設費は調査によりますというと、近畿地区は大体ダム式で五万二千七百円、水路八万円、総平均五万四千円というのが、これは現在二五%増しになつておるくらいの時期に発表しておるのでありますが、それと合せますと先程の御証言の一キロワット当り百ドルと申されたのに、二万六千円で余りにもその差がひどいので、これはどういうわけであるか、どういう計算の相違からであろう、疑うというわけではありませんけれども、地元の副知事さんの証言は一キロワットに当に三百六十円で三万六千円、建設省の方或いは政府の方から出てあるのは七万九千円、これは北山ダムについてではないが、近畿地区の総平均としてダム式ならば五万二千円、水路ならば八万というのは余りに掛離れておるのでありますが、その間の御説明を伺いたいと、こう思いますのでお願いいたします。
  43. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 奈良縣計画につきまして大阪府が……先程もちよつと申上げたつもりでありますが、大和川の下流大阪府を通じて堺に注ぐという関係からこの水の問題が不可分の問題であるのでありまして、大和川上流に水が殖えれば非常に河内平野四千町歩の田地が助かる、こういうことで非常に計画の実現を期待しておるのであります。最近も民間の水利組合、町村長の方で先月中頃、現地を視察に來られたという事実があるのであります。そうしてこれの実現方を建設省、安本等に陳情しておられる次第であります。大阪府知事又農地関係の方も再三こういつたことについて問合せなりいろいろ精神的の協力を願つておる次第であります。
  44. 角永清

    証人(角永清君) 新日本化学工業のいわゆる発起人と申しますか、私共のところに出ております人数は非常に沢山おられるのであります。御承知かと思いますが、中橋武一さんが代表者になつておる。その他小林一三氏などの古い関係の方もあります。関西の財界人が相当つておられる。それに日本窒素の鴨縁江関係の元のスタッフも入つておる。私共としましてはそれ以上余り詳しく知らないのでありますが、ただ野口研究関係の方が実際的な仕事の上では働いておるように見受けられます。財界関係の方はどの程度の方かはよく分らないのであります。御了承願いたいと思います。  それから先程のをちよつと訂正したいと思います。さつき一キロワットアワーと言つたように憶えておりますが、後刻速記録を一キロワットに御訂正願いたいと思います。お話のように非常に安い。先程私もその節お断り申上げたことがありますが、会社の出して來た計算書によると申上げたのであります。それで私が計算書によると申上げた上に、尚多少安くできるのではないかと申上げたのは、日本窒素が赴戰江あたりの開発をされた場合、四、五厘でできておる、その当時としては日本では安い電氣であつた。それからドルで出しておるが、日本貨幣でいえばどれだけかかるかということですが、私ちよつと漏れ聞くところによりますと、安本の或る方が百億以上かかるのではないかというようなことをおつしやつたそうであります。それは十分技術的に責任を持つて申上げるわけには行きませんが、ただこういつた会社のなんによれば百ドルでできるというのは、赴戰江あたりの例からいつて先生等の技術を信用するとすれば或いはうまく行くのではないか、その点まで漕ぎ付けるのではないか、これは私共として確実に檢討した数字ではないのであります。とにかく比較的安くできるということだけは間違いないように思われます。三万六千円でできるかどうか、これは今までの発電計画でもそうでありますが、実施の場合と相当違う場合があります。保証金なんかの関係でうんと膨らむ場合もあり、或いは計画よりも安くできる場合もあります。お話の通り三百六十円で計算して三万六千円ということになれば非常に安いのでありますから他の地点よりも相当安くできるのではないかというようなことを私共も感じられるという程度で御了承願いたいと思います。
  45. 安部定

    ○安部定君 それからドルで計算されているところは多分にあつちのことを考えての御計算ですか。
  46. 角永清

    証人(角永清君) そのようであります。そのドルによつて計画も向うの方に提出したらしいのです。向うの電氣とか化学工業の專門家、これは向うも專門家ですから、恐らく会社も杜撰なものは出していない筈だと思います。或いは会社相当の中堅の方の言う話によりますれば、アメリカの專門家が見て、日本に來て初めてのコンクリートのいい計画だということを言われたということを言つておるのであります。だからドルで出した計画というものが向うの電氣なり化学工業の專門家が見るのでありますから、そう私は杜撰なものじやないと思うのです。私は技術者じやありませんけれども、そういうふうな点を私お取次している次第であります。
  47. 安部定

    ○安部定君 ちよつと要らんことですが、安本が今百億ぐらい要るのじやないかということを言われたということですが、ここに我々が頂いているのは三百億と書いてある。そうして七万九千、こういうことになつている。御参考までに……
  48. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) 私からお伺いいたします。三重縣にお伺いいたしますが、先程のお話では縣としては考えていない、こういうお話であつたと思います。そうして二番目の新日本化学計画を御説明なつた。縣としては新日本化学計画に対して縣の当事者は賛成しておられる。全面的なお話を承つて非常に賛成しておられるということが察知できると思うのですが、併しお伺いしますけれども、縣として何も案がなくて、一会社から出されたその案を、そのまま鵜呑みして賛成しておられると承知してよろしうございますか、その点を一つ……
  49. 角永清

    証人(角永清君) 鵜呑みにしてと言われますけれども、私は前提を置いたと思いますが……。何といつてもこういつた重要な熊野川総合開発計画というものは全國的な問題でありまして、私確かに前提を置いて申上げたと思うのですが、これが総合的に先程もちよつと或る委員からお話がございましたが、近畿ブロック全体としての十津川から大きくいえば琵琶湖まで入ると思いますが、そういつたような総合開発計画の上から見て、これは日本のために関連されましていいという前提になれば賛成する。無論縣といたしましては、先程もお話しましたが、近畿ブロックなり何かでそういうふうな各縣が相寄りまして、総合的な開発計画というふうな、これは電力だけじやありません、そういつた域に実はまだ達していないのであります。從いまして縣としましては縣の立場から一應見るより仕方がないと私は現在の段階においてはそう思うのであります。從いまして縣といたしましては、大体安本なり、それから建設省なり、そういつた方面総合開発計画一環として御覧になり、それが妥当だということになれば、そういうところでこそ本当に根本的に檢討されると思うのであります。尚且つ私誤解を生じては非常に困るのでありますが、会社の何か代理店みたいような感じを持たれては非常に心外であります。一應あのスタッフが先程申上げましたようにああいつたような流域変更式のダムなり、化学工業の関連性における仕事において、日本ではやや経驗のあるスタッフである。でありますことと、先程申上げましたように、ドルによる計画書を出して相当の向うで賞讃を得たということを聞きますれば、縣として一應それを或る程度信頼するよりしようがないのじやないかと思うのであります。從いまして縣といたしましては、どういう全計画から見ても無理だとか、或いはもつといい方法があるということになれば、これは三重縣としてもそれを押してまで主張すベきではないと思つております。
  50. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) 先程の御説明の中にこの新日本化学工業の案は地元民は双手を挙げて賛成している。ただ部落の方が精神的に反対をしている、こういうふうに非常に軽く取扱われているように私は拜聽したのであります。前國会におきまして新日本化学工業の水没地帶の方から本院に、参議院に請願でしたか陳情でしたか忘れましたが、出たのであります。それはダム建設絶対反対という意味の請願であつたと思います。本委員会にかかりましてこの請願をどうするかということが問題になつたのでありますが、これは委員会として何も知らない。一体新日本化学工業ダムの建設がどういうことにどう使うのか何らの知識がないので、建設委員会が現状を視察しよう、こういう案が出ました。そうして本年の六月だつたと思いますが、私と島津委員が委員会から現地を踏査に行きまして、その上でその請願を取上ぐべきか、或いはどうするかということを決めようということになつたのであります。私は島津委員と共に奈良縣の方から三重縣を通りまして和歌山縣を拜見したのでありますが、そのときに私共が参りますときに奈良縣の町を泊りますとその町へ約四十名くらいの市民が陳情に参りました。そうしてダム建設の絶対反対をいろいろ陳情しておりました。それから翌日三重縣に入つて行きますと五郷といいましたか、あの部落で二百名近くの村民が大挙いたしまして、そうして私共を引止めまして十分間でいいから話をしてみて呉れという話でありましたが、約三十分間くらいの陳情を受けたのであります。あの樣子は私共何も知らんではない、大体反対があるだろうと思つたのだけれども、それでも非常な驚きを感じた。私共が参ります道路の脇にあります農家或いは町家すべての人家の前には全部反対のビラが貼つてございまして、墳墓の地を守れとか、或いは租先の地を守れとかそういうような私共が行くということが分つたのでありましようけれども、それがためにいわゆる反対陳情の大きなビラが書いて貼つてございました。それからその次の村に行きましたところがやはりそこでは小学校へ立寄りましたところが六十名くらいの陳情團が参りましてやはりこれも絶対反対という陳情が出ました。それで私共が感じましたことは、先程三重縣証人からお話のことは地元民は双手を挙げて賛成し、部落民は精神的に反対をしているという軽く取扱われているけれども、私共は非常にもつと大きな深刻な問題があるのじやないか。苟くも一会社から出された案を縣廳として支持される上には今少し縣民の意向を尊重されて発表される方がいいのじやないか、こういうふうに私は感じました。それはなぜかといいますと、まるで私共が新日本化学工業の廻し者みたいような質問を沢山私は受けた。私は、この個々の質問を許して呉れということで各人の質問を許しましたところが、私個人がまるで化学工業の廻し者に來たような質問が非常に多かつたのであります。それで本日の委員会もこういうふうな経緯が本委員会としてございますので、一体これはどうなつているのだろうということを聞くのも一つ委員会の目的でございます。それからもう一つ三重縣はそのようにして賛成をしておられるようであるが地元民は非常に反対をしている。それから隣接している奈良縣和歌山縣意向を忖度いたしますと私共現地におきましての考え方も、今日の奈良和歌山証人の方からの言葉の内容を判断いたしましても余り賛成をしておられない、こういうふうに見受けるのであります。これは非常に私はむずかしい問題と思いますが、縣の縣廳として新日本化学工業発電計画に賛成せしておられるけれども、それが果して資金をどうするか、こうするかというところまで行かなければできるかできんか分りませんが、これは私個人の考えですが、先程來の御証言の中には、野口系統の人達が指導をしておるから非常に、分り易くいえばでき易いと、こういうようなお考えのようでありますけれども、私は外の方面から聞きますと、野口系の人達は朝鮮満洲において各部落を取扱つたと同じような考え方で、日本内地の農民或いはそういう人達を取扱う傾向があるのではないか。いわゆる地元民の意思を全然無視して、國策だとか何とか言つて、日本が生きて行くためにこういう科学を興さなければならんという美名の下にやつておるのだというようなことを言つておる人が多いように私は聞いておる。それですから半面におきましては、却つて朝鮮満洲でやつてつたために、そういう経驗を持つておるために日本内地においてもあちらの方でやつてつたと同じような方法でやられる、それがために却つて地元民の刺戟が大きい、こういうことに半面私はなる虞れがあるのではないかというふうに感じております。それで先程の御証言は非常にやさしいように伺つておりますが、私が現地を見ました状態では非常にむずかしい。而も千二、三百戸の水沒地帶の移轉をしなければならんということは容易なことではないという感じがしております。こういう点について三重縣廳としては自信がおありになりますか。それともどういうお考えがあるか、その点を伺いたいと思います。
  51. 角永清

    証人(角永清君) お話の点は大体御尤もであります。私もその点が一番問題だと思います。非常に開発の経驗なり能力も相当つておることは事実でありますが、そういつた点につきましては多少聞いております。從いまして殊に今お話の通り埋沒地帶におきましては非常に反対の氣勢が上つておるのも事実であります。從いまして補償の問題は簡單な、現在の何が考えておるようなことではとてもかいんと思います。從つてそういう点につきましては私共も折に触れ、めつたに会うことはありませんが、言つておるのであります。從いまして先程も申上げましたように、こういつたような問題は経営形態についてむしろのT・V・A式に、少くとも特殊会社くらいの形にした方がいいのではないかと申上げたのもそこにあるのであります。全く從來向うでやつおつた個人会社式のいわゆる資本、ちよつと語弊があるかも知れませんが、いわゆる資本家的な立場でやられましたならば、恐らく非常な混乱が起ると考えております。その点私全く補償問題その他につきましては全然同感であります。
  52. 安部定

    ○安部定君 その新日本化学工業というのはもうできておるのですか、或いは仮称といつたようなものですか。若しできておる会社であるとするならば、他にどういう事業をやつておりますか、或いはまだ何もやつていないのでありますか。
  53. 角永清

    証人(角永清君) 大体仮称程度のもののように思います。
  54. 久松定武

    ○久松定武君 お伺いいたしますが、熊野川水系開発につきまして、水利権というものが各縣どうなつておるのか。殊にその支流北山川十津川水利権はどうなつておるか。その点につきまして各縣の御解答を願いたいと思います。尚今度の開発につきましても水沒地帶というのは特定地区を、一地区でも最も大きい水沒の土地じやないかとこう考えますのですが、各縣の埋沒地帶としての埋沒された戸数は凡そどのくらいありますか、各縣の御答弁を願います。
  55. 大林勇治

    説明員(大林勇治君) 水利権お話でありますが、北山村に関しては日発がすでに今日新日本化学から出願しております。下の方に日発から水利権が三ヶ所出ております。それから新日本化学水利権は今申請中であります。これは三重縣奈良縣、和歌縣の三縣と関係いたします。それで三縣に書類が出ております。これはまだ決定されておりません。それから水沒地の戸数のお話がございましたが、これは新日本化学の案に対する水沒の戸数と存じますが、それは一應会社調査によりますと、三重縣が七百九十四戸、奈良関係が六百四十五戸、合計で千四百三十九戸となつております。これは一應会社の資料でございまして、それをこちらが檢討したものではございません。その点お含みを願います。
  56. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 奈良縣を申上げます。奈良縣では川原樋川の平というところに鉄道省が曾て水利権を出願しておるのであります。併しこれは出願しただけで勿論許可を與えておりません。今日では失効したと解釈しております。それは鉄道省の機構が改革になりまして、運輸省になりまして全然変つたものでありますから、この分はこれで差支ないという解釈をいたしております。もう一つ十津川風屋附近に日発の水利権の出願があるのです。これも許可は與えておりません。それで今日に及んでおりますが、その出願しておるという事実は今日継続しておりますので、過日日発の方に行つてお話しまして了解を求めておるのであります。鉄道省の出願に対しては鉄道よりも縣の方が出願という形ななつております。前の何は自然に消滅しておる、こういうふうな形にな誠ております。実際問題としてもお話はないので、むしろ將來の電氣問題に対しては日発或いは鉄道の方と提携してやるという話合いがすでに昨年あたり或る程度できておるのであります。これは電氣廳あたりの御指示に從いまして、有効に発生電力を使うということに対して鉄道も十分御了解があるのでありますから、その点は何ら支障はないと存じております。
  57. 神尾守治

    証人神尾守治君) 和歌山縣には大体ないと思つております。
  58. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) 和歌山縣の方にちよつとお伺いしますが、天ノ川流域変更総合計画ならば賛成するけれども、施行の如何によつては賛成しかねるというお話ですね。
  59. 神尾守治

    証人神尾守治君) そうでございます。
  60. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) というのは、第一期第二期工事というようなやり方ではなくて、その中のいい部分だけやれば後は反対だというふうに解釈していいのですか。
  61. 神尾守治

    証人神尾守治君) 結局熊野川水系関係者といたしましては、十津川の水を奈良縣なり紀ノ川の方へ取られるということは非常に面白くないことだ、併し総合開発で以て大和平野和歌山縣関係紀ノ川流域が非常に立派なものになるのだという、そういう立派な計画であるならば、自分達も犠牲になつて水を分けて上げようと思つている、こういうふうな氣持なんです。それが一部計画であつて大和平野も大して潤わないし、紀ノ川平野もちよつぴり有利になるという程度のものであるならば、今一度考えさせて貰いたいというふうな氣持だと思つております。
  62. 安部定

    ○安部定君 これは私聽き落していると思いますので、甚だ失礼でありますが、天ノ川川原樋川流域変更分水は、これは紀ノ川には全然落さない。それから又紀ノ川筋のものは一つも合計もしないのでございましようか。
  63. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) そうでございます。
  64. 安部定

    ○安部定君 全然紀ノ川には影響を與えないわけですね。
  65. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 範ノ川には全然触れません。併しこれを紀ノ川に落して、その上流吉野川にどれだけ取つて行けという、これは仮定ですが、和歌山においてそういうことをお許しになり、御要望があれば、これも亦十分考えてさようにいたしてもよいと思つております。併し何分紀ノ川に手を着けるということは、和歌山上流において手を着けるということは非常に問題でありまして、これこそ紀ノ川沿岸の農民の方が非常に心配されることだと思いますので、私の方は一應紀ノ川には全然触れずに、十津川の水は眞つ直ぐ持つて行く方法がありますので、そういうような方法を採つたのでございます。
  66. 安部定

    ○安部定君 今のお話の中にありました紀ノ川の水の交換ですね、その場合は上市くらいで減るというふうになるのですか、その上流で減るというのは……
  67. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 五條のちよつと上で眞つ直ぐ行きますと……、それから減るのはちよつと上の下市ですね。
  68. 安部定

    ○安部定君 そうすると下市、五條間で一應水が少くなるのですね。
  69. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) 少くなる……
  70. 安部定

    ○安部定君 影響はないのですね。
  71. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) それは奈良縣の地内でございまして、奈良縣としてはここには影響が少いと思つている。それから五條から下へ行きますと水が同じになりますから、その水も、これは総合開発一環でありまするから、この開発に全部一緒にかかることは到底できないし、一緒にかかりましても一緒に進行するということができないのですから、先ず奈良縣営としてはその一環の中の幾分でも、三分の一でも、水を両縣へ送ろう。それから農林省が水路の方においても昨年ね予算を要求しているのでありますから、これも非常に結構なことですから、これに対してできますれば地方の分担を和歌山縣と同様に分担はいたしたい、こう考えております。
  72. 安部定

    ○安部定君 それから先程ちよつとお話もあつたのですが、下流に河内平野がございます。この大和川は私も存じておるのですが、そこへ行きますと、先程お話の四千町ばかりの河内平野が助かるというお話でございますが、その場合これはお話があつたと思うのですが、水をどのくらい増すことになるのですか。
  73. 和田秀夫

    証人和田秀夫君) これは総合開発では、今までは大和川の下流の水を増すという計画は立てておらないのでありまして、結局十五トンが仮に最終に行きますと、最近大阪府の方へも直送ができると思いますが、構築の專門家の御調査によりますと、大和平野に十トン仮に水が將來行つたとします。そうするとこれを潅漑した残りが浸透しましてこれは亀ノ瀬という所に地すべりがありまして、あすこにどうしても集まる。これは三分の一乃至四分の一は嫌でもそこに流れるという事実があるのであります。そうしますとこれを受けて大阪府の方の檀原という所、それから下は大和川の用水はもう三本完全にできている。これが昔は水がありまして、十分潅漑に足りたのですが、昨今では全く水が少いので上流からそれが來ますると、後の水路施設その他はなくても、潅漑期には非常に恩惠を蒙むるわけです。現在では淀川の方から段々にポンプ・アップして上に上つている、非常に金をかけたり苦心しておるのでありますから、そういう事情で大阪が精神的に非常に支持している、こういう事実があるのであります。
  74. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 ちよつと三重縣の方にお伺いしますが、三重縣では新日本化学ですか、あの案を御支持されているようですが、新潟縣のこれは只見川になつているのですけれども、野口案というものが新潟縣の案として縣会も支持しておるようでありますが、三重縣においては新日本化学の案というものを賛成せられるということは、これは三重縣の一部の人達が支持するのか、縣会が或いは政党というものがこれに賛成しているというのか、その辺のところをちよつと参考に聽きたいのですが……
  75. 角永清

    証人(角永清君) 正式の縣会にかけたことはございませんが、実は運営委員会にかけて……実は知事が設立委員の一人になつておるのでありまして、その大体全員の賛成を得て設立委員会にかけるのであります。縣会の方もそういつたいきさつでございます。
  76. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) 三重縣にお伺いします。先程の御証言の中に熊野川の水が新日本化学工業ダムに建設のためにどのくらい減るか分らないというようなお話つたのですが、会社の案を見ますと、ダム作つて落して十津川に放流する案はないのでございますか。それでこのダム作つて洪水だけを溜めてやるというような考え方か、それともそういうふうな縣のお考えを土木部あたりで特に調査しておられるのか、それで調査しておられるのであるが、その結果が未だ出ないからああいう御証言であつたのか、その辺をちよつと伺いたいと思います。
  77. 大林勇治

    説明員(大林勇治君) 北山川ダムも新日本化学の案につきましては縣としては未だ詳細の調査をやつておりません。それで数字的なことは未だはつきり申上げるだけの根拠を持つておりません。
  78. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 私簡單にお尋ねいたします。奈良縣で本年度河川統制事業として、今の電化の件でありますが、この予算化を非常に要望されておりましたが、恐らく先程のお話も同じであつたことと思いますが、そうじやありませんか。河川統制事業としてその予算化を非常に要望しておりましたね。二十四年度のあれはこの事業ですか。
  79. 大林勇治

    説明員(大林勇治君) そうでございます。
  80. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 では和歌山縣にお尋ねいたしますが、その件についてやはり流域変更になりますが、それに対して和歌山縣はどうしておられますかどうかをお聞きいたします。
  81. 神尾守治

    証人神尾守治君) 和歌山縣は建設省からお呼び出しがありまして、奈良縣が今流域変更の申請書を出しておるが、それに対してどう考えておるかという御相談があつたわけです。この際奈良縣の方も出て來て貰いまして、その新らしい部分的と申しますか、部分的に分水計画の内容につきましてお話を聞きまして、私はそれを承わりまして、目下縣内においてその問題につきましてその旨を告げまして研究中であります。それで尚数回奈良縣廳の方とも御相談をしながらその仕事を何と言いますか、賛成すべきか、不賛成すべきか研究しなければならんと思つております。
  82. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 では重ねて言いますが、二十四年度は予算がございませんでしたが、あの問題については未だ和歌山縣は確たる同意を與えておらない、こういうふうに了解してよろしうございますか。
  83. 神尾守治

    証人神尾守治君) さようでございます。
  84. 赤木正雄

    ○赤木正雄君 それからもう一つ。さつきの野口工業伝々の問題でございますが、こういう調査には相当の費用もかかりますが、縣として調査に多少でも補助しておりますかどうか、伺います。
  85. 角永清

    証人(角永清君) 未だ全然補助した事実はありません。
  86. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) 私三重縣の方にちよつと申上げて置きたいのですが、私現地に参りまして感じたことは、この新日本化学工業が現地を非常に刺戟しておるということなんですが、何か知らんが現地に行つた人の態度が悪かつたかどうかよく分りませんけれども、昔の軍閥の代りとして資本家が出て來て昔の軍閥のやつたようなことをなるんだというようなことを盛んに言われまして、君は民主主義というものを知つているのかという質問まで受けた、それは会社のものが黙つて、この自分の家、屋敷にどこでも入つて來ると、そうしてどんどん測量をやる、こういうことは民主主義の今日昔の軍閥がやつたとこを会社がやつておるんだと、こういうふうに言つて、私答弁にも困つたことがあるのです。そういうふうな特殊な会社が未だできておるか、できてないか分らないようなものに対して、余りに縣の方で指示せられるというような恰好になりますと、私は府縣行政に非常に支障を來たしておるのではないか、こういうふうにも一應拜承したのですが、ああいう点は特に私御注意願いたいと思つております。これはこの問題と関連はないようでありますが、特にその点を申上げて置きたいと思います。
  87. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 三重縣にちよつとお尋ねいたします。この外資系まだはつきりしていないようなんですが、我々の憂慮する点は、その外資の受入れ方なんですが、お説のように海水から塩化アンモニヤ、或いは曹達灰を取るという化学工業によつて日本を復興するということは賛成なんで非常に結構なんでありますが、ただ心配になるのはそういう資源がただ外國の資本家の、過半数外國の資本下になつてしまう。それが利潤を上げれば上げる程結局外國資本の権利を大きくして行き、この返還の能力が日本の側にはできないので、結局その貴重な國の富というものは外國資本の隷属化になつてしまうというように行きはしないかという心配。又逆に言えば外資が入るか入らんかという心配もあるのでありますが、仮に入るとしても、仮に開発されて立派に成績が挙がつたとしても、そういうような危險がありはしないかということを我々は心配するのですが、そういうような点はどういうようなふうに考えておられるのでありましようか。ちよつと三重縣にお尋ねしたいのであります。
  88. 角永清

    証人(角永清君) これはむずかしい問題で議論の分れるところなのであります。今後の外資導入、外資導入と言われておりますが、他の問題にしても外資を導入した場合には、いわゆる経済的な植民地にならんかどうかという問題もあります。それは大丈夫だという議論もありますが、私共としましてはそういう隷属することはやり方によつてはないと考えるのであります。  それから先程委員長からも御注意がありましたが、実はこれは甚だお恥しいのでして、地元で余りそれまで言つておるということは聞きませんでしたが、反対運動のひどいことは聞きましたが、そういう点につきましては、私ここで聞いてびつくりしたのでありますが、今後注意して行きたいと思います。それから尚非常に誤解が出たようでありますが、この問題については縣はまだ正式の書類も何も本省に出しておりません。いろいろ檢討中の点もあるのでありまして、ただ抽象的に私共といたしまして、こういうことができれば縣として非常に結構だということで会社計画をここで御発表した次第であります。縣の方はまだ公式に本省に方にも公文にも結論を出しておるわけではありません。外資の導入がどういう工合になるのか、殊にその補償問題がどういう工合に具体的にやらなければいかんかということが固く決まつてからでないとこれは私具体的に発動すべきでないと考えております。その点一つ誤解のないようにお考えを願いたいと思います。
  89. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 はつきりしていないかも知れませんが、やり方によれば植民地になる危險がある、やり方によつてはそうではないと言われますが、そのやり方によつてはというのはもう少しちよつと、余りはつきりしないのですが、御意見でいいのでありますが、見解としてどういうことになる、そういう危險がないと考えておられるか。
  90. 角永清

    証人(角永清君) これは非常にむずかしい点ですけれども、これは無論専門家の皆さん方がここにおられるのでありますし、巷間いろいろ議論があるのでありまして、今日抽象的に申上げますれば、釋迦に説法でありますが、日本がどうして立上るかということにつきましては、今日米國からももうすでに十億ドルからの援助を受けておるわけであります。こういつたような一方的な援助がいつまでも続くか、これはドツジ案を待つまでもなく当然であります。ただ日本の現在の経済力なり、資源の状況からいたしまして、技術も状況からいたしまして、どうしてもアメリカからの援助を仰がなければ非常に速かに立上れんということは事実であると思うのであります。從いまして外資を導入していろいろの機械なり、資材なりを入れる。残念ながら土木の機械だつて日本の現状は今まで入らなかつたのでありますが、こういう大きな開発をやるには向うの機械を入れなければならん。従つてそういうようなことによつて資材を資本的に入れまして、全く資本に対する利子と償還ということを主とする。從つて向うが会社の指導権を握る、これはいろいろな議論が出るから知れませんが……、そういうところまでは恐らく行かんのではないかと思います。そういうところまで握られてしまうことはこちらの能力なり力によりますけれども、私それ程まで心配いらないのではないか、又そうかといつて、今日の日本が外資なり向うの援助なしに、いつになつたら本格的に立上るかということを睨み合して考えなければならんのではないかと思います。非常にむずかしい根本論となりまして恐縮でありますが……
  91. 安部定

    ○安部定君 もう一つお尋ねいたします。昭和二十二年度の電力の需要実績は全國で二百十九億キロワットアワーで、そのうち大阪は八・六八%で凡そ十七億キロワットアワーであるということであります。ところでこの只今の新日本化学工業の年間生産電力量は、我々が建設省から出ておる分によりますと年間十九億、又読賣新聞が八月十六日書いたところを見ますと十二億キロワットアワーといつておるのでありますが、この十九億、十二億というのを見ますと、ほぼ大阪が使つたのに匹敵する巨大なる発生電力量であります。それを全部自家用としてお使いになるのでありますか。或いは先程申上げましたように、阪神地区の不足電力に幾分か充てる計画になつておるのでございますか、その辺のところを……
  92. 角永清

    証人(角永清君) これは全部自家用に使うようになつたおるのであります。又自家用でなければ一会社で今出願できないのではないかと思つておるのであります。それから尚念のために何か上流に日発の何とかいう発電所、名前は忘れましたが、七千キロばかりの発電所があります。その分だけは水沒するので、補償するにしても、その分の電力というものを関西に送り、あとは全部自家用に使うようになつております。
  93. 安部定

    ○安部定君 希望になつて甚だ申訳ないのでありますけれども、先程來三重縣の縣当局が野口案というものを十分消化していないのではないかというような発言が可なりあつたのでありますが、私は今発生電力量と、それから先程申上げました大阪府の年間事業者使用電力の供給の分でありますが、これから考えましてもこれは大阪にあるような工場が全部あの木本附近にできましたようなことに使用電力量からいえばなるのでありまして、勿論工場の性質によつては小さな工場でも多量の電力を要することはもとよりであります。それに対しては全大阪に匹敵する電力量を使う事業であるからには、前回の何人かの発言者と同様にもうちよつとやはり檢討されないと、これはやはり大変なことじやないか。一方近畿地区は非常に水力電力を僅か三%、他は火力に俟つというところで御存知のように尼ケ崎に三十一万という大きな出力が出る発電所作つておるというような状態でありますから、近畿全体としてそこに向ける電力というようなことも考える必要があるのではないかと思われてならないのであります。併し國の再建上必要であるということは幾らもありまして、そういう点から考えますれば、一会社と雖も重要でありますから構いませんけれども、お話を伺いまして、前の発言者と同様の電力量の面から考えますから、御質問申上げて希望を申上げたわけであります。
  94. 原口忠次郎

    ○理事(原口忠次郎君) それでは本日の委員会をこれで閉ずるに当りまして私から一言御挨拶申上げます。本日は非常に御多忙のところを特に三証人の方々は遠路御出席して頂きまして、我我よく事情を拜聽することを得たことを仕合せに存じております。我々委員会といたしましては日本の資源である河川の総合開発の一日も早くできることを希望しております。そういう意味におきまして三縣ともよく連絡をお取りになりまして再建日本のために御協力になることを希望いたしまして閉会の御挨拶にしたいと思います。有難うございました。これを以て散会いたします。    午後二時三十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     石坂 豊一君    理事            原口忠次郎君            仲子  隆君    委員            岩崎正三郎君            水久保甚作君            石川 一衞君            赤木 正雄君            安部  定君            久松 定武君            兼岩 傳一君   説明員    三重縣土木部長 大林 勇治君   証人    奈良縣土木部長 和田 秀夫君    三重縣副知事  角永  清君    和歌山縣土木部    長       神尾 守治