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証人(
進藤武左衞門君)
日本発送電の
進藤でございます、
只今から
電氣事業の、特に当面いろいろな問題を控えておりますが、当面の問題につきまして御
説明申上げます。
政府御
当局、
國会などに対する
事者としての要望の意向も合せて申上げたいと思います。
最初に申上げたいと思いますのは、これはお願いでありますが、
電氣事業、つまり
電力が
日本の
経済復興に非常に重要な仕事をや
つているということで、我々は
電源の
確保に
全力を盡しておるのでございますが、
昭和二十三年度の
実績を申上げますと、先程
田中次長から
お話のありましたように、
日本の
電氣事業の今までの
発電記録の
最高でありました
昭和十八年とほぼ同じに
なつております。私の方の
調査いたしました
数字について見ますと、ちよつと上廻
つておるようでありますが、今度
昭和十八年の
最高記録を示しているというのは事実でございまして、これは実は
昭和二十年の
敗戰直後におきましては
電氣が非常に余
つて、この処置に実は
業者としては頭を悩ましたのでありますが、その後
需要が急激に
増加いたしましたので、戰災、或いは老朽の
工作物の復旧に過去三年間
全力を盡しまして、
火力発電所も
相当程度復旧いたしました。又
水力の
改修、或いは
建設中に
工事の
完成というふうなものが昨年の十二月頃までにほぼ我々の
予定通りできましたことと、それからもう
一つは
石炭の
確保、質の向上、それから昨年の、特に十一月以降の
豊水、こういうふうな
状況が噛み合いまして今申上げましたように
昭和十八年の
最高記録にほぼ同じということに相成
つたわけであります。併しながら
発電方面から見ますと、今申上げたことを
数字で示し得るのでありますが、併しながら
発電された
電氣が國の
経済復興に役に立
つておるかどうかという点の
檢討がまだ本当になされておるとは考えられておらんのであります。我々あちこちへ行きますというと、
電氣は大体
昭和五—九年の
基準年次に対して二〇〇%の成績を挙げておるのに、他の
鉱工業生産は大体五割、或いは六割
程度じやないか。
電氣は一体何に使われておるかというふうな点を聞かれもいたしますし、又我々としても非常な反省を要する点でありまして、
電源開発も非常に必要でありますが、併し今ある
電氣を國の
経済復興に本当に役立てるという
電力政策が強く採られ、又
國民も
電氣が非常に大切である。
生産は
上つてお
つても、これが
消費方面に使われてお
つたのでは、
経済復興に役立つことが非常に少いという点を特に
一つお考え下さいまして、
電源が
確保されても、これが果して
経済復興に全部百パーセント役に立
つておるかどうかという問題についても十分これは
檢討すべき問題だと考えております。今申上げましたように、需給の
状況はほぼ戰前の
最高記録に近づいておりますが、それでも
地方によりまして、特に九州、北海道におきましては、二割或いは三割
程度の
制限を余儀なくされておるわけであります。全國を平均いたしましても、恐らく一割
程度の
制限はや
つてお
つたろうと思いますが、この
制限を何とかして、
需要に應じて
制限をしないということを今後や
つて行かなくちやならんのでありますが、これに対しましては
電源の
開発とそれから現在の
工作物を十分維持して、
出力を低下しない方法、この二つを実施しなくてはならんのでありますが、現在の
工作物は、
水力発電所は大体二十年以上経過したものが四割四分、
火力発電所は五割
程度が二十年以上経過しております。
変電所等におきましてもこういう
状態でありまして、二十年と申しますと、大体
償却年限が三十年或いは四十年
程度でありますからして、人間に譬えますと五、六十の齢に
なつているということに
なつております。そうして
火力等では前の
石炭から見ますと非常に質が落ちておる、又
電氣が足りないから手入れが十分できない、或いは
資金が足りないから
資材の
確保もできないということで、譬えますと五、六十の老人に「ともうろこし」の粉を喰わせて、栄養失調になりかけている者のお尻を引つぱたいてどんどん働かせておるというのが現在の
発電所の
出力を上げている
状況でありまして、これに対しましては
資金の面、或いは
資材の面或いは
改修計画をしつかりするというような点をはつきりして行きませんというと、今後の
出力の
確保がなかなかむずかしい
状況に
なつております。又
電源開発に対しましては先程
田中さんから
お話がございました。我々も
電源開発の
委員会に出ておりますが、肝心の
資金計画がすつかり
目鼻が付きませんので、表といたしましては立派な
計画ができておりますが、併し二十四年度、つまり
復興五ケ年
計画の第一年度に今入
つておりますが、殆んど
資金の面で我々としては手を上げているという
状況でありまして、今後この
計画と
一緒に
資金の面、それから
資材の面或いは
工事能力の面、こういうふうな総合的の
計画をこの際はつきり立てるということが非常に必要ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。これをいたしますのに我々といたしましては、どうしても先ず
自己資金の
調達をやり、或いは
自分の力で今後この疲れ切
つた工作物を維持して行かなければならないということになりますと、今の
電氣料金が非常に不適正であるということを申上げなくちやならんのであります。日銀の小賣物
價指数を見ますというと、
昭和五—九年に対しまして確か昨年度が百二十八倍に
なつていると思います。それから
政府の
事業でありまする郵便だとか、電信だとか、電話、或いは汽車の運賃であるとかというふうなものは少くも六、七十倍、多いものは百二十倍
程度に
なつております。
電氣の方は二十三年度の
料金は三十倍にしか
なつておりません。これを右の表に書いてございますが、小賣物
價指数と、それから
石炭の卸賣物
價指数、
電力の指数というふうなものを比較いたしましても
電氣が非常に低し
状況に
なつておる。この低い
電氣料金を以ちまして
自己資金を
調達して
將來の
建設をする、或いは
運轉資金を手に入れて、今申上げた疲れ果てた
工作物の維持をして行くということは、率直に申上げまして不可能であります。これは
基本産業でありますし、
日本決済再建の中心の
産業でありますから、どうか
一つ電氣料金を適正にして頂いて、
自分の力で修理を完全にし、できるなら
自分の力もうんと働かして
自己資金の
調達をいたして、
將來の
建設をいたしたい、こういう熱望を持
つているのであります。本年も四月から
電氣料金は上らないということがはつきりいたしました。これもできるだけ早く
一つ電氣料金を適正にして頂きまして、
事業の安全を図り、
電力の
確保ができるようにいたしたい、こういうふうに考えております。それから今申上げまするように、
電氣料金が今のような
状態でありますからして、配当なんか勿論問題になりませんが、
我我は
資金の
調達に対しましても、
増資さへも困難な
状況にありまして、実は
自己資金の
調達の途を殆んど塞がれているような
状態であります。又借入金にいたしますと、これは
從來復興金融金庫から
融資をして頂きました。そうして先申上げますように、戰後の
工作物の
改修なり、或いはやりかけは
発電所の
完成なりを急ぎまして、大体昨年の十二月非までに
予定の
工事を済ませ、今年のような
発電実績を挙げたのでありますが、今度
復金からの
融資の途をすつかり絶たれてしまいました。從いまして現在我々といたしましては
設備資金を手に入れる途が全然ないのであります。そこで先般來日銀の総裁或いは
大藏省の御
当局その他にお願いいたしまして、どうか
一つ設備資金の
繋ぎ資金を御心配願いたい、すでに二十四年度に入りまして
継続工事を沢山いたしております。併し金が全然入りませんから、この調子だと全部
工事を打切
つてしまわなければならん、或いは註文を止めてしまわなければならんという実態になりまして、これを余り我々がいたしますと
事業の規模が大きいだけに
関連産業へ直ぐ波及いたしまして、非常な
混乱が予想されるわけでありますから、どうか
一つこの
資金計画の
目鼻のつきまでの
繋ぎ資金を出して頂く、而も
繋ぎ資金も
新規事業に対しては全然我々は手を着けずに今の
継続工事でもやり得るように
繋ぎ資金を融通して頂きたいということをお願いいたしておるのであります。金額は大体
日発で二十七億
程度、それから
配電会社で十三億
程度、
合計四十億
程度の
繋ぎ資金を頂きますと、この四月から六月までの第一四半期は
継続工事をどんどんやり得ると思います。そうしてその間に
議会等でお決る下さ
つて、
新聞で拜見いたします
貿易の
見返し資金というようなもの、或いは我々も今いろいろ
計画中でありますが、
増資等によりまして自
限資金の
調達を一部いたし、両方で何とかしてこの
電源の
開発に対しましても着手いたしたい、こう考えておるわけであります。
電源開発計画は先程
田中次長から御
説明のありましたように、我々としては本年度大体二百九十億ぐらいの
設備資金を以ちまして着手したいと考えます。昨年すでに十二月中に
政府から
建設準備命令が発せられましたので、各
地方廳その他へも
手配をいたしまして、又メーカーとも連絡し、
土建業者の方々とも連絡いたしまして、
資金さえ
目鼻がつきますれば直ちに着手できるような
手配をいたしておるのでございます。でありますから全然もう
電源開発をやらないということなら、それは止むを得ませんが、
新聞で拜見いたしますと、
貿易関係の見返
資金の方からも
電源開発の方へ或いは廻し得るのじやなかろうか、又
自己資金の
調達を何とかしてやりたいということでありますから、その
手配のできるまでの
繋ぎ資金を
是非一つ御
心配願つて、ここで中断していろいろの
混乱を起されないようにいたしたいということを特に考えておる次第でございます。
電源開発の問題に対しましては、これは
政府から御
説明がありましたから私から申上げることもありませんで、
電氣の
需要はさつき申しましたように、今年はたまたま
豊水でありましたから、割合に御迷惑を掛けることが少なか
つたのでありますが、これが二十四年度が
平水年でありますと、昨年の
水力よりも恐らく一割五、六分
程度の
出力が減退いたすのじやなかろうかと考えております。そういたしますと又
渇水期におきましては或る
程度制限をして、
産業方面への御迷惑を掛けなければならんと考えますので、本年の五ケ年
計画は
火力をできるだけ早く
改修して、そうして
石炭の質のよい物をできるだけこちらへ入れて頂く、又
水力の方もここ二、三年の短期間にできるものを一生懸命で早く
完成することに努力いたします。そうしてこれと
一緒に
將來どうしても
貯水池を持
つた発電所の
建設をいたさなければならんのでありますから、本年許されるならば
貯水池発電所へも手を着けて行きたい。こういうふうな考えで今進んでいるわけでございます。
その他
電氣事業の問題といたしましては、御
承知のように
企業形態の問題がまだ懸案に
なつております。
集中排除を
日発はかけられて、又
配電会社の方もかけられまして、これに対しましてはいろいろの案がございますが、
商工大臣の
諮問機関でありまする
電氣事業民主化委員会からも答申が出ておるのでございますから、いずれにいたしましても
電氣の健全な
経営は
企業が早くはつきりすること、それから
將來の
計画が総合的にはつきりいたすこと、ということがこの
統制経済下におきましてはどうしても決まりませんと、
経営の
自主性というと非常にぼやけて参りますが、どうか國の方針をはつきりして頂く、そうして九原則に基く我々の
経営の
自主性を本当にこれを実行して行くということをやらなくちやならんと思います。それに対しましては繰返して申しますが、
將來の
電源開発計画というものを総合的にできるだけはつきりして頂く、それから
料金を適正にして頂いて我々が
経営の
自主性をやり得るようにして頂くこと、それから
資金の当面の問題といたしましては
資金が非常に今窮屈になりまして、殆んど我々の力では
調達が困難視されておりますから、こういう点につきましても、
是非一つ御努力願いたいということ、それから
料金も実は四月から上げて頂くつもりで我々としてはや
つてお
つたのでありますが、これが上りません。
電氣の配分につきましてはすでに
火力は四百五十五万トンを今年焚くといたしまして
電力配分を御
計画のようでありますが、我々といたしましては、
料金は去年のままでありますからして、
石炭も去年と同じ、それから
石炭の單價も去年と同じ、賃金の五千三百八十円の一割減というふうなことも
料金に織込まれております。今の
状況は非常に変
つております。これもどうか一刻も早く現状に即した適正な
料金を御決定願
つて我々が
事業を健全にや
つて行けるようにしたいと、こう考えておるわけでございます。なかなか現在むずかしい時勢でありますからして、我々の希望を全部入れて頂くということはむずかしいと思いますが、少くとも非常に不合理の点は是非是正して頂きまして、我々の
経営の
自主性をはつきり責任を持
つてや
つて行ける態勢にして頂きたい。これをや
つて頂ければ
電源の
確保も或いは
産業の振興と申しますか、そういうようなことに対しましては我々も責任を以て
電氣の供給
確保に
全力を盡したいと考えておるのでございます。当面問題と
なつておりまする事項を極くおおざつぱに御
説明申上げました。尚後
日発と
配電会社から同僚が参りましたから、詳しく御質問がありますれば申上げます。