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法制局長(
奧野健一君) 先般來問題にな
つておりました憲法十六條に関する問題でありますが、この点につきまして、この前の
運営委員会におきまして、
門屋さんからの
お話に基きまして、法務廳並びに最高裁判所の
意見を聞くということに御
決定にな
つたので、即日、私の名前で公文書で聽き合せました結果、今日回答がありましたので、その点を申上げたいと思います。
初めに法務廳に対する問合せの回答は、この二枚の綴りに
なつた紙にあります。問合せといたしましては、つまりこれは憲法第十六條は、日本國民のみならず、日本在住の外國人にも適用するかどうかということと、それから日本在住の朝鮮人は、日本の國籍を有する日本人であるかどうかという二点を問合せましたところ、これに対する
意見として、法務廳の方では、「憲法第十六條は日本在住の外國人にも適用がある。」それから「日本在住の朝鮮人は、現在日本國籍を失
つたものとは解せない」という回答を言
つて参りました。又最高裁判所の方では、「一、憲法第十六條は、日本在住の外國人にも適用がある。二、終戰前から引き続き日本に在住する朝鮮人は、講和條約の締結までは、特別の定めがある場合を除いて、從前通り日本國籍を有するものとして取り扱う外はない。」というのでありまして、尚御參考までに學説等につきまして後に附け加えておきましたが、大体美濃部博士と宮沢教授、それからその他東京大学の教授連中の著しておる著書では、やはり十六條は外國人の適用があるという御
見解であります。異説といたしましては、
佐々木惣一博士がこの前
門屋さんが議論されましたように、最初は日本國民の権利義務であ
つて、そこにある事柄は、日本國民だけの事柄であるが、併しながら結論においては、やはり日本におる外國人にもこれらの権利義務の適用は結論においてあるということであります。立法
関係者の
意見等も附けておきました。要するに第三章の國民の権利義務は、大体において日本國民を目標といたしておりますけれども、外國人が日本に在住しておる限りにおいては、やはり日本の統治権に服しておるわけでありますから、その
関係においては、特に日本國民だけの固有の権利義務、即ち参政権とかい
つたものを除いては、大体において在住の外國人にも同じように適用があるというのが大体の通説かと
考えるのであります。尚文字の上から見ましても、特に日本國民だけに固有なものについては「國民は」というふうに言
つておりまして、それ以外の
一般個人の人格に関するものについては、大体「何人も」とい
つたような表現で、必ずしも日本國民固有のものだけに限らない権利義務についてはそうい
つたような
見解をと
つておるのであります。
從つて、問題はやはり日本における外國人と雖も、憲法十六條による請願の権利は認めていいのではないかというふうに
考えるのであります。