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政府委員(大野勝巳君)
只今の御
質問のうち、私共の方で申上げた方が御参考になると思う点を一、二ここで御報告申上げたいと思います。
第一の点は、何故
國会がこの問題についてイニシアチブを取る方がいいかという問題だと思うのでありますが、これは
佐々木さんの
お話の中にもありましたように、新らしい
憲法が施行されまして、
外交案件というものも
國民外交的な見地から取扱われるのが好ましいという点にも触れて來るわけでありますが、從來
米國から
援助を莫大な額において
日本が受けておりまするのに対抗いたしまして、この
阿波丸の賠償
請求權というような比較的少い金額の問題で、両國の間に長い間案件にな
つておるということは、いろいろな
意味において面白くない。丁度
アメリカの議会におきまして、今年の七月一日以降の会計年度において支出さるべき対日経済
援助に関する予算の討議が、今や進もうとしておるわけであります。その
内容に関しましては、外電が屡々伝えておりまするので、皆さんのよく御承知の
通りでありますが、來会計年度におきましては、占領開始以來未曾有の額に上るように予測がなされておるような状況であります。こういう
事態の下におきまして、比額的少額の賠償
請求權の問題について、いつまでも問題が解決しないということでありますと、
米國の
政府といたしましても、この
米國の議会に対して、対日
援助救済等の金額の
折衝をいたします場合におきまして、著しく立場が苦しくなるという点が実は
一つあるのであります。それと冒頭に申上げました
國民がやはり
外交をフアースト・ハンドに取上げるという点にも重要な
意味があるのでありまして、若し占領以來
日本に対して與えられた有形、無形の占領軍の指導力とな
つております米国からの
援助というものに、実質的になんらかの感謝の
意味を現し得るといたしまするならば、この問題のごときは可なりいい題目になり得る、これは我々が
先方と
折衝いたしておる間に
感じ得たところでありますが、その場合も、
政府が、一方的な
措置を取
つて、そうしてこれを議会に諮るということよりは、やはり
國民の代表の府であり、主權の代表であるこの
國会という機関におきまして、この問題が取上げられて、そうして單なる紙の方の、紙だけの感謝
決議ということではなく、その裏にこういう大きな含蓄のある問題として意思表示される、それによ
つて助言された形で、
政府が
先方と更に
折衝を進め得るという立場において貰えれば、これは
先方としても非常に工合がいいという点が実はあるのでありまして、その点は
一つ御賢察願いたいと思うのであります。
憲法上の
手続きその他の点に関しましては、
法制長官から詳細な御
説明がありました
通りでありまして、若しこれが御採択願えるといたしまするならば、私は
米國側に対しましては、非常にいい影響を與えるものと確信いたしております。尚この案件は非常に機微な
関係がございまして、先程
法制長官から御
説明がありましたように、どういう形で
交渉が妥結するかということは、ここで申上げる自由を持たないわけでありますが、又
日本の置かれておりまする特殊な
事態に鑑みまして、こういう問題についてゴールに到達するという場合におきましても、或いは理論的に申しますと、デイレクテイヴで來ることもあり得るし、或いは
日本側の一方的な損害賠償
請求權の
放棄という、
宣言という
恰好で行くこともあり得ると思います。或いは手紙の交換ということで行くこともあると思うんでありますが、これらの問題は、若しこういう
趣旨で
政府がや
つてよろしいという權限を
國会から頂きまするならば、それに基きまして、鋭意
折衝を進めまして、この
決議案の
趣旨に最も副うような
方法を
政府といたしましては取りたいと、かように存ずる次第であります。