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事務總長(
小林次郎君) この前第四
國会におきましては
式辞の案が少し遅れて來たために皆さんに御迷惑を掛けたようなことがありましたので、今度は成るたけ早く拵えて呉れということを
衆議院に頼んで置きました。ところが今朝事務
総長が見えまして、事務局が拵えて昨日
運営委員会に諮りました案を持
つて來て呉れました。少し今までのものと型変りで長いようであります。今までの約倍ぐらいあるのです。それで
向うでは少し長いけれども、
参議院の方の御
意見で、もつと長くなることもあろうし、短かくなることもあろうからこういうような点は、適当に
議長において文章を整理して呉れというので一應通
つたのです。
只今からその案文を読みますからお聞きを願いたい。
第五回
國会開会式式辞
本日第五回
國会の
開会式が行われるに当りまして、天皇陛下の親臨を恭うし、無限の感激と緊張を覚えるのであります。
國会はわが國の直面する内外の
情勢に察し、時局の要求する内外の
情勢に察し、時局の要求する各般の施策については、和衷建設的の精神をも
つて審議し、
國民の信託にこたえたい覚悟であります。
かえりみれば現行憲法の公布されてから、二ケ年半近く経過しましたが、憲法の目指す主要の理想は畢竟一は文明を平和に求めることであり、一は
國民最大多数の幸福を民主主義の徹底的活用に見出すことであると解されます。この大理想は、今やわが國において着々根を深くおろしつつあるのを見まして欣快これに過ぎません。世界の公平な観測者も大体望を日本の將來に嘱して、事態の推移に注意を集めております。併し百里を行く者は、九十九里をも
つて半ばとすべきである。小成に安んずるところには、大いなる進歩がありません。日本は憲法の嚴粛な條章中、断然戰爭の放棄を宣言した一点において、列國に先鞭をつけましたが、民主主義の正しい理解並びに運用は一朝一夕に、立法手段のみによ
つて、社会の各層に浸透することを期し得られるものではありません。その他に科学の方面でも、物質的の方面でも、精神力の方面でも、わが國は未だ先進民主國に及ばないところの多い実相を率直に認めなければなりません。
國権の
最高機関に席を列らねるわたくしどもとしても、かかる現状の革新に至大の関心を持つのであります。
対外
関係に至
つては日本は一切殺人的の裝備を投げ棄てて、正義と友愛の観念に國連を任かし、偏狭な利己心よりも、廣汎な利害共通の了解に重きを置いて、列國の伍伴に加わらんことを希うものであります。これがため或いはわが國の前途を危ぶむ者もありましようが、つらつら大局を慮かるに、日本の独立と自由とを保障する百年の長計としては、この一筋道のほかにないことを確信します。わが
國民は惨憺たる敗戰の後を承けて、現に精神上並びに物質上の苦難に喘いでいますけれども、冬に後には必ず春の訪ずれることを信じ、如何なる試錬にも耐えて、やがて平和な、健全な、幸福な日本の誕生を待つものであります。
以上の見地に立
つてわたくしどもの捧げんとする奉公の努力は結局
國民一般の理解共鳴を得られるよう念願して止みません。これをも
つて式辞といたします。