○
政府委員(秋山龍君) この
海運関係の問題はすでに皆樣十分御
承知のことでございまするので、極く問題にな
つておりまするような主要點につきまして、二、三御
説明をいたしたいと存じます。
本
年度の汽船
輸送の
目標は千四百八十万トンでございましたが、しばしばの爭議に拘わりませず、一月末におきまして、すでにその九〇%を達成いたしまして、今年は
計画を少なくとも五%乃至十%を上廻る成績で行けるのではないかと見ておるのであります。海上
輸送は、汽船
輸送は平均いたしまして、
鉄道輸送キロの大体五倍
程度の
輸送キロを持
つておりまするので、千五百万といたしますると、大体七千五百万トンの
鉄道貨物に相應する
輸送力になる、かようなことになるわけでございます。機帆船におきましては、三千二百四十万トンの
計画でございましたが、油が去年の年末におきましては
相当殖え、その後又油が削られましたりいたしまして、いろいろと事情は変遷いたしておりまするが、すでに一月末におきまして三千二百五十六万トンの
輸送をいたしておりますから、これ亦
計画を大体上廻ることは確実でございます。かような
輸送力を得ました根本の原因は、船腹の回復が非常に順調であるということでございまして、終戰後大体八十万デッド・ウエィト・トンの稼動船腹を持
つてお
つたのでございますが、四月一日定傭切換えの当時におきましては、新船、傭船を合わせまして六百九十五隻、百九十五万デッド・ウエィト・トンを定傭に切換えることができ、それだけが稼動し得る
貨物船である、こういうような
状態に相成
つておるのでございます。
次に船員の問題でございますが、船員の問題につきましては、從來過剩船員があるということを非常に各方面から非難されております。何とかこれの
整理をいたしたいと
考えてお
つたのでございますが、逐次
整理或いは自然退職等によりまして、この定傭切換えのときにおきましては、殆んど過剩船員というものがないという
状態にこぎ付けております。下級船員におきましては、本
年度の半ばぐらいから、すでに不足を愬えておりまして、逐次新らしい船員を以て
補充をいたしておる
状況でございます。高級船員につきましては、再教育養成の
定員を除きますると、大体一杯々々に落着くというような
状況でございます。船員の給與問題につきましては、十一月の末以來例の爭議がございまして、我々賃金の問題の解決にいろいろ骨を折りましたが、遂に十二月におきましてはこれが解決を見ませんで、議会も終了いたしておりまして、何ら解決の方途がございませんので、組合にもよく話しまして、一應爭議を解除させたのでございます。然るにその問題が継続いたしまして、本年の一月半ば頃からこれが解決を迫られ、組合におきましても、
相当の実力行使に移るというような
状態に相成りまして、
只今一種のスローダウン・ストライキといいますか、そうい
つたような形にな
つておるのでございます。この問題の取決につきまして、
関係方面と鋭意折衝に当りましたのでございますが、漸く或る種の了解に到達いたしまして、
運営会補助金の追加
予算二十五億の中に課せられております給與の改善に充て得る金は五億円を超えてはならないという制限條項を緩和して頂くという補正措置を講じて頂くことに相成りました。恐らく一両日のうちに当院の御
審議をお願いするという結果に相成ると思うのであります。この解決の
方法は実は來
年度予算におきまして、
運営会の船員のうち約三万余は定期傭船の切替えに伴いまして、民間船会社の船員に代りまして、あと約七千名
程度の船員が
運営会に残留いたしまして、帰還
輸送及び米船
関係の
仕事に從事するというような形に相成るのでございますが、この船員に対しまして、民間に帰ります船員は私企業の船員であります。民間
事業の
從事員の給與に関して、その給與増額のためには補助金を與えないという鉄則がございまして、どうしてもこれを動かすことができません、そこでこの新給與問題は定傭切替と共に船主協会と全日本海員組合との間に新らしい團体協約によ
つて決めて貰わねばならんのでございます。
運営会に残留いたします船員につきましては、未だ多少問題に残
つておりますが、大体公務員として指定されるということを前提といたしまして、公務員としての給與水準による給與を與えられるというような方向に進むようでございます。そういたしますと、現在そういうことを前に控えております今日、
政府が補助金を以て船員の給與の水準を
決定するということはその團体交渉を不当に拘束するという
考え方もございまして、十二月乃至三月までの給與の増額の要求に対しましては一時金を以て対処する、こういうような工合に解決の曙光を見出すのでございます。この案に対しまして海員組合その他
関係方面にそれぞれ当
つておりますが、大体この
程度の措置を以ちまして爭議は円満に解決し得るものと見透しを立てておるのでございます。來年は定期傭船の切替によりまして、船員は民間船会社の船員として働くことに相成りますので、この船員がよく働くかどうかということは船会社の経理とも非常に重大な
関係がございますので、爭議を成るべく速かに円満に打切り、そうしてそのさつぱりした姿で新らしい團体交渉を通じまして、船会社のマネージに船員を入れる、かような心組みで
関係方面と折衝いたしておるような次第であります。船員の問題の一部として教育の問題がございまして、私共の方では高等商船学校或いは商船学校、
海運学院、
海運專門学院海員養成所とい
つたような一連の教育施設を以ちまして、船員の教育に当
つておるのでありますが、この船員の教育は戰時中
相当歪められた形にな
つておりまして、これを正当に戻すことにつきまして、今いろいろと策を練
つておるような次第でありますが、その時に当りまして、学校制度の改革と共に、高等商船学校を商船大学に、
地方商船学校を商船高等学校にするという問題がございまして、これに伴い学校教育は一切文部省に移管してはどうかというような話がございまして、非常に心痛いたしておるのでございまするが、先月の当
委員会における文部当局の御
説明のごとく、大体大学が完成いたしまするまでは、
運輸省において主管するということで、
事務的には妥協が成立いたしまして、あとは政治的に御
決定を待つというような
段階にまで到達いたしておるのでございます。この点は当
委員会の皆さんの御支援に対しまして厚く御礼を申上げますと共に、御
報告申上げる次第でございます。
次に船舶
関係の問題でございますが、
只今申上げました
通り、定傭切替まで民間に帰りまする
貨物船は六百九十五隻、百九十五万重量トンであります。その船の大部分、約七割は戰標船でございまして、あと約三割は老朽船が主でございまして、いわゆる我が國の
海運の本來の使命といたしておりまする外國方面に出まする船は極めて僅かのものでございます。特に外國の船級協会の規格に合致いたしまして、最低保險料率の適用を受けまする船は五指を以て数えるに過ぎないのであります。その他の船でも、外國の満載吃水線條約等によりまして、何らの非難を受けないで外航に從事し得るものと申しますのは、これ亦極めて寥々たるものであります。
從つて私共の当面いたしておりまする問題は、日本沿岸としては十分な船を今度は外航に適する船にどうして轉換するか、という問題に目下当面いたしておるのであります。私共の見込といたしましては、戰時中、戰標船型の二A、三Aと申しまする一万トン級の船は当分のうち何らかのエクスキューズで外航に使い得ると
考えてお
つたのでありますが、これに対する
相当の強い批判がございまして、目下その対策に追われておるのでございます。この船が内地に残留いたしまして、北海道炭その他の
石炭輸送に充当いたしますると、沿岸の船舶は
相当の過剩を愬たえるのでございます。一面
只今申上げましたように、外航適船は甚だ少いのでございます。この外航の配船につきましては、皆樣からもいろいろと御心配を賜
つておるのでございますが、最近契約が割合にうまく進んでおりまして、又
関係方面の特別な御配慮もございまして、バアレン島方面に戰時標準型のタンカーを以ちまして、油の積込に参
つております。すでに去年の八月以來今日までに十七万五千キロリツターの完了をいたしております。その外フィリピン方面の鉄鉱石の積取、或いはインド方面のコーキング・コールの積取など、最近にはシヤム米の積取にその機会を與えられておるのでございます。この意味におきまして、私共は日本
海運の將來に対して非常に明るい氣持を持
つておるのであります。併しながら何分にも外航に適する船がございませんので、外航に適する船をどうして作
つていくかということが目下重大な問題でございます。同時に國内に船腹が多少余るといたしますれば、それと船質改善とを何らか結び合す
方法がないであろうかというような
考え方で目下研究を進めておりまして、成案を得次第
関係方面の了解を得てその日の一日も早からんことを期待いたしておる次第でございます。この新らしい船の建造に対しましては、從來船舶公團という制度を設置して頂きまして、これにいわゆる共有制度というような
方法を以ちまして、新規造船の資金の援助をいたして参
つたのでございますが、今回の
予算におきまして、船舶公團に対しましては、現在船台に乘
つております
仕事、つまり繰越しの
仕事に対しまする
政府がすでに約束いたしておりまする金額、約五十四億円だけの
予算を認められまして、新らしい新船建造に対する資金は、
政府資金の援助は今のところ一文も認められておらないのであります。併しこのままで進めますと、到底今年、先程申上げましたようないろいろな理想的な案を
考えましても、現実に新船建造は不可能でございまするし、又造船所といたしましても、新船の建造は一船も許されないということでは全部倒れてしまう。こういうような
状態に相成りまするので、この問題につきまして鋭意各方面と折衝いたしております。何とか新らしい
政府資金の援助の
方法を見出しまして、所期の
計画に邁進いたしたいと存んじております。この点につきましても、当
委員会の皆樣の格別なる御支援と御指導を賜わらんことをお願いいたす次第でございます。
次に
運賃の問題でございまするが、
國鉄の
貨物運賃が大体据置きということに決まるそうだというような風評でございます。現在の
運賃体系と申しますると、大体
國鉄によりまする
輸送が最も安くて、その次に船舶
運営会による船舶の
輸送、船舶
運営会の中では八百トン以下の小型の船は
運賃が大体倍額でございます。これがその次に高い。それから八百トン以下の小型船舶は本
年度の
予算によりまして、大体八月頃には自営に返すというような案がございます。それから又その外に自営といたしまして、機帆船というグループがあるのでございます。この機帆船は從來補助金を出しておりませんために
相当に高い、
運営会の
運賃に比べますというと、大体四倍
程度の
運賃を認められておるわけでございます。こういうふうに大きなものは
運賃が安くて、小さくて独立しなければならんものは
運賃が高いというような
状態にな
つております。こういう
状態で而も最近の
状況によりますと、金融その他の行詰りから荷枯れの傾向が非常に顯著に行れて來ております。そうしますと、このままで推移いたしますると、この緊縮
予算その他から來る
経費の
節減等と睨み合わせて見ますると、本年は大
輸送機関には荷物が集中いたしますが、小
輸送機関に荷物がなくなる。こういうような
状態が予想せられるのであります。これが是正につきまして、私共も心痛いたしておる
状態でございます。つまり
國鉄の
運賃或いは
運営会の
運賃を或る
程度上げまして、又同時に機帆船その他につきましては、
相当の
節約と申しまするか、
合理化と申しまするか、そういうことをして貰いまして、そうして
運賃の均衡を得るということでなければ、
輸送の調整或いは小さな業者の独立ということは、経済的に成り立
つて行くということは困難ではないかというような
状態に相成
つておるわけであります。この点は私共非常な心配をいたしておるところであります。
その次に最後に申上げたいのは、
港湾の問題でございます、
港湾の
輸送につきましては、戰前は非常に沢山のいわゆる荷役業者というものがございまして、これが個々ばらばらに
仕事をいたしておりますのを、戰時中
港湾運送強化統制令というものによりまして、大体一本の会社に纏めてお
つたのであります。これが独占の弊害があるというような点から解体措置を講ぜられまして、解体をせられているわけでございます。六大港の
港湾会社、主として艀を持
つております会社につきましては、閉鎖機関に指定されまして、その艀を大体旧業者に戻す、こういう処置が行われております。その結果横浜におきましては八十数名の業者、名古屋におきましては二百九十の業者が艀を取得しているそうでありますので、その艀も戰爭中減
つておりますので、例えば名古屋の二百九十の業者のうち九十業者まで七以下の艀、こういうような
状態にな
つております。これでは到底円滑なる荷役ができませんので、業者がおのおの相集りまして、その小さな持分を出し合いまして、或る
程度の規模の会社を設立するというような動きにな
つております。從いまして、この閉鎖機関の処分、その後の動きを
考えますと、大体十社
程度の艀会社に再
編成替えせられるという
状態が現出するのではないかと聞いております。船内荷役のいわゆるステベの会社といたしましては、これは労務を主とする会社であります。職業安定法の
関係で親方制度の排撃という趣旨から、元の
状態に還すことは困難でありますので、これは数個の業者に分割するという方向に向
つております。その六大港の外の港につきましては、やはりこれになら
つて、複数制といいますか、還元化といいますか、再
編成を
考えるというようなメモが出ておりまして、目下そのメモに
從つて、やはり業者からどうするかという再
編成案を出して貰
つております。これを
関係方面と協議いたしまして、最後案の
決定を見るわけでありますが、その結果主要の港については、
相当複数制の港が現出するということにな
つているのでございます。この際私共の方の
海運総局の中には
港湾局というものを持ちまして、
港湾の
運営と
港湾の維持並びに
建設の
仕事をいたしております。それにつきましては、
建設に持
つて行くというような話がございまして、甚だ遺憾に存じている次第でございますが、この点につきましては、先程も
委員の皆樣から熱烈な御支持をされまして、誠に感謝に堪えない次第であります。こうい
つたようなことが、大体現在の持
つている問題でございます。
もう
一つ申上げて置きたいことは離島航路の問題でございます。北から申しますと、利尻、礼文、燒尻、奧尻、日本海方面に参りまして佐渡、隱岐、壱岐、対馬。九州方面に参りまして五島、屋久島、種子島、太平洋岸に参りまして伊豆諸島、こういうような離島に対しましては定期航路の汽船がございまして、これが陸上の道路と同じような働きをいたしているわけでございます。然るに最近数次の値上によりまして
相当この
旅客運賃が高くな
つております。
從つて島民からはこの
旅客運賃は高すぎて困る。こういうような非難もございますと同時に、会社といたしましては、各
輸送原價の値上りによりまして航路の維持が困難である、こういうような問題が起
つているのでございまして、
政府といたしましてこれに或る
程度の補助金を支出いたしまして、
地方の補助金と合わせて定期航路の維持を図りたい、かように存じて
計画いたしているのでありますが、この補助金等につきましては、今回の
予算編成では
法律の根拠のないものは一切廃止するという議がございまして、目下のところ実現が非常に困難のような
状態にな
つているわけでございます。こういう問題と合わせまして、私共の方では本議会に水上運送法というものを御提案いたしまして、こうい
つた定期航路の調整に関する問題及び
海運局がや
つておりますいろいろの行政の
一つの根基法規を作りたいというようなことを
考えております。目下
関係方面で
審議中であるのであります。それから尚
港湾法、これは
港湾に関する
工事のいろいろな法規が太政官布告、その他各種各樣の行政慣例等によりましてや
つて参
つておるのでありますが、これも
一つの
法律根拠を持たなければ行政として困る、こういうような問題がございます。又
港湾の
運営につきましてもいろいろと錯綜した問題がございますので、そうい
つた問題を解決する
一つの根拠法規を作りたいというので、
港湾法というものを
考えておるわけでございます。
それから造船
関係につきましては、現在造船所の数が非常に沢山でございます。それを少ない造船量のときこの造船能力を調整いたしますためにも、或る種の根拠法規が必要でございますし、又船種の改善等につきましてこれを助成しますためにも、或る種の根拠法規が必要であるという実情でございます。この
関係におきまして造船調整法というものを
考えておるような次第でございます。大体この三つの法規が
只今考えておりまする一番大きな法規にな
つておるのでございます。
関係方面を目下鋭意折衝研究中でございまして、成案を得ましたならば御
審議を願いたいと、かように存じておる次第でございます。どうかこの点につきましても御指導、御支援を賜りたいと存じておる次第であります。以上簡單ながら御
説明を申上げます。