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説明員(秋山龍君) 最近自由港というような問題がいろいろ新聞紙その他で流布されておるのでございますが、この際問題の
経過、
現状につきまして若干御
説明を申上げて見たいと思います。我が國が終戰後いわゆる軍備を失いまして、新らしい國の建て方をしなければならないというような情勢に相成りました場合に、貿易立國というような
趣旨からいたしまして、今少しく貿易
関係の活動を自由にするというようなことが自然に頭を持ち上げまして、この際自由港市或いは自由港とい
つたような問題がいろいろ論議されたのでございます。然るに最近急にこの問題がこういうふうに活溌に論議されるようになりましたのは、御
承知のような中國の情勢に基きまして、東洋に対するエンポリアムと言いますか、貨物の藏置保管の機能を持
つておりました天津、上海とい
つたような都市が漸次中共の手に帰するというようなことになりまして、東洋地域に対する諸外國の貿易をいたします建前から、日本においてもそれに代るような
一つの地帶が
考えられないか、こうい
つたような問題が起りましたのが発端でございます。これを機会に我が
政府といたしましても、
関係官廳相寄りまして、或いは自由港湾都市或いは自由港というような問題につきましていろいろと論議研究いたしたのでございますが、最近大体得ました
結論といたしましては、自由港湾都市を設けるということは、これは我が國の國民生活の健康上と申しますか、或いは我が國経済の独立的の発展とい
つたような見地からいたしますと、いろいろな見地からいたしましてどうも余り望ましくない、こういうような
結論でございます。それから第二に、もう少し制限いたしまして、一定の地域を画しまして、ここに外國より原料を持
つて参りまして、そこで自由に加工して輸出する、自由加工地帶というような
意味における自由港はどうであるかということを
考えて見たのでございますが、この点につきましては、未だ確定的な
結論には到達いたしておらないのでございますが、やはり我國の固有の産業保護というような見地からいたしまして、消極的な見解が強いのでございます。然らば一番小さい
意味における自由港という、つまり開港の一部を画しまして、そこにおいて外國より大きな船で積んで参りました貨物を何らの関税その他の國内
手続を経ないで、そのまま又小さな船に積替えて東洋各地へ輸出する、そういう
意味におけるいわゆるフリー・トランシップメント・ゾーン、自由積替港地域というようなものを
考えたらどうかという案につきましては種々
檢討いたしましたところ、本件につきましては別に我が國全体からそう非常に惡いというような
意見もない、むしろこういうことをするというと、我が國に貿易外の
一つの
收入が得られる、非常に外貨の
收入が得られる
利益があるのみならず、我が國の小さな小型の船が荷物を得てこれらの貿易品を運ぶチヤンスが殖える、こういうような
結論でございます。
関係方面とも種々連絡打合せをいたしましたところが、先ずその
程度からでも始めて見たらどうか、こういうような
考え方がございまして、今自由港地帶の自由貿易地帶法試案というものを
考えている次第でございます。この自由貿易地帶というようなものはどういうようなものかと申しますと、我が國の開港の一部に國内との交通を一應遮断いたしました。交通があるにいたしましてもそれを極めてコントロールできるところの狹い出入口に限定したところの
一つの地帶を設定いたしまして、ここには関税法その他外國貨物に対して
適用せられる内國
法規の
適用を免除いたしまして、そうしてその中において外國貨物を積下し保管、或いは荷造りを解きまして入れ替え、或いはレッテルの貼り替えというような、貿易上の必要上の最小限度の活動をさせる、併し
内容貨物の混淆を避けるために、その中においては住民の住居或いは商賣というようなことはしない、そうしてそこにおきまして入れられました貨物が國内に入ります場合には、その地帶との境界線に関税線を設けまして、そこからその関税
手続によりまして國内に輸入をする途を開く、そうしてその地帶に対しましては、必要なる労務者はこれを外部から供給する、それに対しては外貨で
支拂を受ける、又その地帶の埠頭その他港湾設備、或いは上屋倉庫等の利用に対しましては、これ亦外貨を以て
支拂を受ける、大体そういうような事柄を骨子と
考えているわけであります。
この地帶を設けることに関しまして、
一つの爭われておりまする点は、本地帶に対しましては関税法は
適用があるのであるが、特に
法律を以て免除するという
考え方をする
考え方と、いや、これは関税に
関係ない地域を設けるのであるから、関税法以外に
一つの自由地帶設置
法案というよなものを設けるのがよろしいという
考え方と、極めて技術的な問的でございまするが、尚爭われているところでございますが、アメリカのや
つておりまする外國貿易地帶法によりますると、この地帶は関税を課さない、自由に中継貿易を行
なつて貰うということが
趣旨でありますからして、関税法に
規定すべきものでなくして、独立に自由地帶を設置するという
考え方がよろしい、又そのことがこれは一種の宣傳と申しますか、こういう地帶のサービスを外國に宣傳してこれを賣るわけでありますが、そういう販賣政策から言
つても、その方がアトラクテイブではないかというような
考え方を持
つております。開港から関税線を撤廃いたします問題は、これは即ち純粹の港湾でありますから、而も販賣政策上そういう
考え方がよろしいというようなことで、
運輸省としては後者の説をと
つているような次第でございます。それからこの自由地帶でどういう活動をせしめるかという
範囲につきまして若干問題がございますが、先ず加工を許さないということは大体
意見の一致を見たところでございますが、この地帶に入れましたものにつきまして、展示と申しますか、見本としての展示を日本に在住する人に許すかどうかという問題でございまして、我々はこの地帶に運ばれました物資が又諸般の情勢から日本に輸入することが極めて低廉で便利であるという場合もあり得るわけでありますからして、ここに見本展示を認めた方がいいのではないかという
考えを持
つておりますが、これに対しては目下別の方面でそこまで行かん方がいいのじやないかというような議論がありまして、未だ
結論に到達いたしておらないのでございます。それから自由地帶を一体どこに設けるかとい
つたような問題がございますが、これに対しましては、
関係方面の
意見……、結局これは外國に使
つて貰うわけでありまして、我々は直接諸外國からの情報を持
つておらないのでありまして、その
意味におきまして
関係方面の忠告というものを非常に重視しなければならんと思うのでありますが、その
考えによりましても、未だどのくらいの日本にこういう地帶の利用があるということは見積ることができないのであります。
從つて先ずできるだけ小規模で且つ將來十分発展する余地のあるような地域を選定したらどうかというような
考えでございます。ところが我が國では又非常にこういう地帶を設置して貰いたいという
要望が各方面に沢山あるのでございまして、これを調和いたすためには、やはり自由地帶を設置するにつきましては、一定の標準と又その標準に適合するかどうかということを判断する
委員会等を設けて見たらどうだろうとかいう
考え方も
法案の中に盛られているのでございます。いずれにいたしましても、この地帶は一万トンを少くとも超える船舶が同時に数隻埠頭に横付になるということが必要でございまして、沖荷役でこの地帶に物を運ぶということは関税取締上非帶な困難がございますので、その点はできるだけ避けたいとかように
考えているわけでございます。尚同時に本地帶の設置につきましては、
関係方面で使
つておりまする施設、倉庫というようなものにつきましての開放と申しますか、我が國に使わして貰えるようにできるだけお願いをしなければならんと思いまするし、又
相当好意的に
考えて頂けるというような見通しの下に行動しているような次第でございます。尚関税法につきましては、一應関税法の
適用はないわけでありますけれども、尚関税法中の若干の
規定はこれを自由地帶に
適用する必要があるのでございますが、これにつきましては先程申上げましたような根本理念に從いまして、自由地帶の設置法によりまして、関税法の必要のあるものをこれを
適用すると、こういうような
考え方を採
つたらいいのじやないかと、かように
考えているような次第でございます。尚本地帶を設けました場合に、どのくらいの
收入があるかというような問題でございますが、これはどうも確定してどのくらいあるということは申上げかねるのでございますが、一應量を相定いたしまして、例えば仲継月間二十万トンというようなものを想定いたしまして計算いたしますると、一年間に二千二百四十万ドルくらいな
收入がパイロットとか埠頭料、曳船料或いは荷役賃、倉庫賃というようなものから上るのではないかというふうに
考えているわけでございます。併し現在のところではこの月間二十万トンを一ケ所で扱うような場所はないのでございまして、仮に現在使い得ると
考えられる場所を想定して見ますというと、保管能力が年間大体約四十万トンくらいなものでございますが、これによりますと年間三百七十三万ドルぐらいの
收入が上るということになるのであります。いずれにいたしましても、東洋の地域の諸般の情勢を
考えられました場合に、特に我が國の小さな船が沢山遊んでおるように
考えますので、やはり一日も早くこういう地帶を設置するということが非常に我が國経済の発展に資するのではないかとかように
考えておる次第であります。