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1949-07-19 第5回国会 衆議院 労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年七月十九日(火曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 福永 健司君    理事 三浦寅之助君 理事 吉武 惠市君    理事 前田 種男君 理事 川崎 秀二君    理事 春日 正一君 理事 石田 一松君       麻生太賀吉君    金原 舜二君       塚原 俊郎君    福田 喜東君       船越  弘君    松野 頼三君       青野 武一君    大矢 省三君       小川 半次君    土橋 一吉君     早稻田柳右エ門君    石野 久男君  出席國務大臣         労 働 大 臣 鈴木 正文君         國 務 大 臣 樋貝 詮三君  委員外出席者         國家地方警察本         部次長     溝淵 増己君         國家地方警察本         部警備部長   樺山 俊夫君         法務府事務官  高橋 一郎君         労働事務官   賀來才二郎君         專  門  員 濱口金一郎君         專  門  員 横大路俊一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  労働事情に関する件     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより会議を開きます。  労働事情に関する件を議題といたします。質疑を許します。三浦寅之助君。
  3. 三浦寅之助

    三浦委員 だれが來ておりますか。
  4. 倉石忠雄

  5. 三浦寅之助

    三浦委員 それでは第一に先般の東神奈川における争議人民電車の問題について質問したいのですが、一体あの人民電車というようなものは、これが適法であるか、あるいは違法と考えておるか、まず根本的な考え方から承りたいと思います。
  6. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの御質問人民電車が違法であるかどうかという問題でありますが、東神奈川における人民電車事件につきましては、すでに御承知のように相当檢挙されておりますので、これは違法なものとして取扱つておると存じます。
  7. 三浦寅之助

    三浦委員 当局は、あの当時違法であるということが——当然これは何人が考えても違法であることはもちろん間違いないと思うにかかわらず、違法なるああいう危險運轉が、東神奈川から赤羽までされ、赤羽からさらに櫻木町まで行つて東神奈川にもどつておる、こういうふうに運轉されておるのでありますが、こういうような運轉に対して、しかも危險なこの違法なる運轉に対して、何がゆえにただちに運轉中止処置取締りをしなかつたか。たとえば東神奈川から運轉したならば、ただちに鶴見なり、あるいはその程度において運轉を中止させるか、さもなければ、東京に來たならば——しかも赤羽まで來て何分間か停車して引返しておるのであるから、その際にただちに中止せしむるとか、その際に檢挙するとか、取調べるということが、いやしくも治安責任者であるならば、当然やるべきことであると思うのでありますが、何がゆえに最後まで運轉せしめたか。その取締りをしなかつた事情について、でき得るだけ詳しく御答弁を願いたいと思います。
  8. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの御質問でありますが、この人民電車が違法であるかということの認定につきましては、現地鉄道当局の判定というものも、かなり重要な要素になるであろうと存じます。実は横浜市の警察局でやつておる事件でございまして、檢察廳等について、相当法律的な協議をするような必要があつたのでないかと存じます。從いまして檢挙が遅れましたことは遺憾でありますが、その間法律適用等につきまして、こうした事例はいまだかつてなかつた事件でございますので、相当法律適用について研究を要する時間を要したのではないか、かように考えております。
  9. 三浦寅之助

    三浦委員 その答弁は私はふしぎな答弁だと思うのであります。この人民電車運轉されるということについて、これがもうその場において違法であるということは、何らの協議を要さなくても、当然判断すべきものと思うのであります。これは鉄道当局であろうと、あるいは檢察廳であろうと、警察官であろうと、何人でも、このくらいのことが協議しなければ違法か適法かわからないようで、はたして一体治安確保ができるかどうかということに対して、非常に疑わざるを得ないのでありますが、どうかもう少し確信を持つてその点の御答弁を願いたい。すなわち違法かどうかの認定に対して、しからば鉄道当局取締り当局警察当局檢察廳当局がいかなる協議をして、違法だということの認定がいつからあり、そうして取締りを開始したかということを、はつきり答弁願いたいと思います。少くともあの電車運轉されるまでは、御承知通り相当外郭團体、あるいは大勢の人が寄つて大騒ぎをし、あるいは一部駅の相当地位の人に対しては暴力にまで及んでおる事実が、われわれの調査においてあるのであります。そういうような暴行程度まで行つて相当大騒ぎをしておるのであるから、いやしくも取締り当局は十分なる関心を持つて現地ばかりではありません。檢察当局もあるいは警察全体の問題として、これには重大なる関心を持つてつたことは当然だと思うのであります。從つてあの一應の無人電車のように、突発した事故と違うのである。あれだけの問題に対しては、これらの人民電車事前に防止することの処置をとることが当然であります。この社会不安を除く意味におきましても、こういうことは少くとも運轉前、あるいはそういうような暴行、あるいはそういうような大きな問題が起きない前に、未然に防止するところの処置をとらなければ、今日の社会不安は絶対除かれないと思うのでありますが、その点に対する、もう少し具体的な確信ある御答弁を願いたいと思います。
  10. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの事件につきましては、横浜警察で主管しておりますので、詳しいことにつきましては後日十分に調べて御説明いたします。
  11. 三浦寅之助

    三浦委員 しからば横浜警察方面調査するというならば、それはそれとして、この電車はすでに赤羽まで來ております。横浜管轄を離れて東京管轄赤羽まで來て、何分かとまつておるのであります。これは横浜だけの問題ではない。東京警察の問題とも、あるいは東京檢察廳の問題とも、当然これは重大なる関係がおるわけであります。しからばそれに対して東京檢察廳、あるいは東京警察がいかなる処置をとつたか。それともまたこの人民電車を発車することについて、東京警察は全然そういうことは知らなかつたのかどうか。もし知つてつたならば、何ゆえにこれを防止しなかつたのか。その点に対する答弁を願います。
  12. 溝淵増己

    溝淵説明員 御答弁申し上げます。はなはだ遺憾ですが、東京措置につきましても、警視廳責任を持つてつておりますので、この点、その間の連絡がうまく行つてつたかどうかということについても、詳しく調べてみたいと存じます。
  13. 三浦寅之助

    三浦委員 実に私は無責任だと思うのであります。こういう大きな問題を、いまだにあなた方相当責任ある人が知らないで、調べなければわからないような状態に置かれるというようなことは、私は非常に無責任きわまるものだと思うのでありますが、それに対する最高責任者としての責任をあなた方は感ずるかどうか。今ごろ調べなければわからぬということ、しかもこの委員会に来る場合においては、相当調査をしてしかるべきだと思います。しかるにいまだに知らないということは、どういうことですか。そういうようなことで、あなた方は治安に対し責任を持つてやれるという確信があるかどうか。
  14. 溝淵増己

    溝淵説明員 まことにきついお言葉をいただきまして恐縮でありますが、実はこの事件につきましても、國警といたしましては、一應の責任者——一應と申しますか、自治体警察の主管になつておる関係上、実際手にとるような情報を得ることが困難な場合もありまするし、またこの事件がかなり労働争議に関連しておるということからいたしまして、双方の調査におきましても、鉄道当局との関連その他におきまして、かなり時間をとるというようなこともあるかと存じます。その間の事情をもう少し詳しく、できる限り調査いたしたい。こういうつもりでおります。
  15. 三浦寅之助

    三浦委員 國警自治警察権限の問題について、あなた方は直接関係がないというなら——少くとも私は警察本來の立場から見て、それは自治警察範囲だ、國警は知らない、調査ができないという、そういう連絡のないことで、一体ほんとうに少くとも東京治安の維持ができるかどうか。私ども自治警察範囲内であつても、國家警察本部がいやしくも國家全体の責任を持つ以上、それはたとい権限の問題、形式の問題においては、いろいろ御議論もあるでありましようけれども、それらの問題について逐一情報お互いに交換し、お互い連絡する、そうして緊密な方法をとつていろいろな場合において善処するということは、当然警察本來の立場からいつても、かくなければならないように考えるのでありますが、その点に対する御意見と、もう一つは今労働争議関係する問題であるから、ということを強く主張されておりますが、いやしくもこの國鉄人民電車の問題は、労働争議といつても、少くともこれは法律的には許されない事案なのである。これを単なる普通の労働争議として、労働争議は何をやつて警察干渉しないのだという態度をとつておられるのかどうか。しかし私は社会不安になる場合においては、進んで警察当局はあらゆる方面においてこういう問題について調査し、あるいは実情を十分に知つて、これらの問題を未然に防止するのが当然ではなかろうかと思う。こういう汽車であるとか、電車であるとか、國民に非常に大きな影響を及ぼし、あるいは生命、財産すべてにおいて大きな影響を及ぼすとりかえしのつかない大きな問題については、逐一國家警察本部におきましても、情報は十分に知り得るはずであり、また知らなければならない。そうしてこれに対して当然各関係方面檢察廳なり、あるいは政府なりと緊密なる連絡をとられ、打合せなり準備なり、調査方法などを講じておかなければならないものだろうと思うのであります。また法律上の解釈においても、当然これらの問題について準備しておかなければならないし、いざそういうような場合におきましては、ただちにそれに対する捜査を開始するくらいのことでなければ、断じてならないと思うのでありますが、もう一度その点に対する御答弁を願います。
  16. 溝淵増己

    溝淵説明員 情報の交換につきまして、はなはだ不十分な点があるということにつきましては、まことに申訳なく存じておりますが、われわれといたしましては、たとい警察の主体が自治体警察でありましても、国家の治安につきましては深い関心を持たなければならない地位にありますので、極力情報收集には努めているのでございます。ただ警察の性格がかわりましたために、情報が遅れるというようなこと、また聞込みが足らないというような点も相当あるのでありまして、この点機会あるごとに連絡をいたしまして、十分目的を達するようにいたしたいと存じております。  次に争議の問題でありますが、私ども争議そのものについては関係を持たないのでございますが、これに伴う違法行為につきまして警察取締りを加えるという方針には、何ら変りはないのでございます。たとえば先ほど御質問になりましたように、國鉄争議そのものは違法と申しますか、刑罰には該当いたしませんけれども人民電車違法行為である。刑罰に触れる行為であるということから、取締りをいたしておるのでございます。
  17. 三浦寅之助

    三浦委員 あなたの御答弁だと、東京都の自治警察関係においては、完全な答弁はなし得ないということになりますか。できればこれ以上聞きたいのだが、たとえばわかもとの問題も、東交のストの問題も、またきようの範囲外かもしれませんが、今度の三鷹のあの無人電車の問題についても結局あなたの方は直接の責任者ではないのだし、自治警察範囲内だから、完全な答弁はできないということになりますか。できないならば、完全に答弁ができる人が來るまで留保して、これで打切りたいと思いますが、どうなのかその点をひとつはつきりしてください。
  18. 溝淵増己

    溝淵説明員 私の方でわかつている事柄だけは、御報告できると思います。
  19. 三浦寅之助

    三浦委員 わかもとの問題なども調べなければわかりませんか。人民電車について相当重要視して質問すると、調べなければわからないと言う。結局調べなければわからないとしたら、わかもとの問題などもそうなりますか。たとえば六月十八日のわかもと争議の問題については、あなたの方で調査されておりますか。
  20. 溝淵増己

    溝淵説明員 概要の報告だけ聞いております。
  21. 三浦寅之助

    三浦委員 報告だけですか、それについてあなた方は責任ある答弁はできませんね。
  22. 溝淵増己

    溝淵説明員 こまかいことはわかりません。
  23. 三浦寅之助

    三浦委員 それでは私は直接の責任者の方に来てもらつて質問することにして……。
  24. 倉石忠雄

    倉石委員長 委員長から溝淵君にお尋ねいたしますが、おわかりにならないというのは、國警本部管轄区域外であるという意味ですか。
  25. 溝淵増己

    溝淵説明員 わからないと申しますのは、実は今日の委員会人民電車問題等につきまして、十分と申しますか——質問人民電車のことについての御質問であるとすれば、もう少し調べて来る予定でありましたが、そういう面もありますし、直接捜査に当つておりませんから、詳しくはわからない点がある。こういうことであります。
  26. 倉石忠雄

    倉石委員長 重ねてお尋ねいたしますが、國警本部管轄内であるが、直接捜査をしておらないからわからないという意味ですか。
  27. 溝淵増己

    溝淵説明員 いや國警管轄ではありません。
  28. 倉石忠雄

    倉石委員長 管轄外ですか。
  29. 溝淵増己

  30. 倉石忠雄

    倉石委員長 外であるからわからない。こういうことに了解してよろしゆうございますか。
  31. 溝淵増己

    溝淵説明員 詳しいことはわかりません。
  32. 倉石忠雄

    倉石委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止
  33. 倉石忠雄

    倉石委員長 では始めてください。前田種男君。
  34. 前田種男

    前田(種)委員 今懇談のときにいろいろ話を聞きましたが、どうも責任所在が明確でないようであります。私は、あなたは國警本部責任者であるから、むしろ一体國で、政府で、だれが一番責任者であるかということを指摘していただきたいと思いますし、できなければ、またほかの方から聞きます。それから、もし國警本部として答弁ができぬなら、できぬと明確に言つてもらいたいと思います。  第一聞きたいのは、議会は五月三十一日で終りましたが、六月一日以後における全國の労働争議、あるいは労資関係に関連いたしまして、警察当局あるいは司法当局が発動しなければならぬような事項相当起きております。これを具体的にこういう件数が起きておる。しかもそのおもなるものはこういう事件だというその内容を、この委員会を通じて明らかにしてもらいたいと思います。
  35. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの御質問でありますが、はなはだ不用意でありまして件数を持つておりませんが、後日調べて御報告いたします。私の方は労働争議の数はわかりませんが、檢挙された事件と申しますか、違法行為のあつた事件はわかつておりますから、件数は調べればすぐわかると思います。
  36. 前田種男

    前田(種)委員 件数は具体的にわからないでも、大体おもなるこういう事件が六月一日以後起きておるというような点を、ここにあげて報告するというわけには参らぬですか。おもなるものです。
  37. 溝淵増己

    溝淵説明員 労働争議については今ここに控えを持つておりますが、六月以降といたしましては廣島の日鋼事件、それから福島廣田三菱工場、それから東京におけるわかもと事件等が大きな問題です。
  38. 前田種男

    前田(種)委員 この委員会は今日で大体おしまいの予定でありますから、至急調査して、今日午後報告していただければ、していただきたいと思います。少くとも大きな問題等については今日国民は非常に関心を持つておる。しかも当局のやつておりますところの措置に対して、一方では干渉だと言つております。一方では当局たよるに足らぬというような非難がございます。この問題に対して、政府責任において善処されなければならぬと私は考えます。一方では干渉である。一方では政府あるいは警察当局頼むに足らぬというような非難が出て来るということに対しては、少くともその衝に当る者は、それぞれ対処しなければならぬと考えます。少くともこれが大部分労働争議の形になつて具体的に現われて來ておりますから、ただ單にけんか騒ぎ、暴力行為ではなくして、労資関係にからんでいろいろの問題が起きております。こういう問題が起きておればこそ、緊急に閉会中にもかかわらず、この委員会が開かれたのでありますから、至急にこの問題を、具体的に報告できるように、とりはからつていただきたいと考えます。  もう一つ質問いたしますが、この春以來警察電話はすべて旧逓信省管内に移管されております。今日警察電話というものは、全然秘密事項はだめだということを言われておりますが、はたして國警責任者として、警察電話が無能だ、秘密事項電話では連絡できないということになつておるかどうか、その事実をどの程度見ておられるかという点について御答弁願いたい。
  39. 溝淵増己

    溝淵説明員 警察電話につきましては、御承知のように昨年の十一月に逓信省有線電話だけが移管になりました。でありますが、無線電話につきましては、警察が主管いたしておるのであります。有線電話につきましては、かなり盗聽されるというようなことをいわれておりますので、私どもの方におきましても調査いたしておりますが、まだはつきりした確証のあがつたものはないようであります。盗聽されると困るということもありますので、いろいろくふうをいたしておりますし、いろいろの設備も考えております。無線電話につきましては、進駐軍の御好意もありまして、かなり充実されつつあるのでございます。
  40. 前田種男

    前田(種)委員 無線電話が、今日日本警察機能を十分に発揮するだけに完備していないことは、私も聞いております。その無線電話にたよつては、仕事はでき得ないと私は見ております。どうしても有線電話にたよらなければならぬ。しかもそれが最近のような情勢のもとにおいては、だれに聞かれてもいいような電話しか話ができないということを、責任者が露骨に言つております。特に今度の福島縣の問題にしても、その他の問題にしても、ちやんと事前應援警察官がどの程度、どこからどう来るというようなことも、具体的にわかしてしまつて、その対策が講じられてしまつておるということをいわれております。また地方のいわゆる檢察廳というのか、それとあなた方との間にいろいろ連絡する場合においても、あるいは電力を落して話ができぬようにされたり、いろいろなことをされて、十分電話活用ができないという、目に余るようなものができて來ておると私は聞いておるのです。しかしこれがただ單なるデマ程度のものか、あるいはほんとうに、電話がそれほど今日使えぬような実態になつておるのかどうか。もしなつておるなら大問題であると考えます。私はこの問題は、きよう午後浅井人事院総裁に出席してもらつて、そしてしかも管轄が公務員でありますから、その点については人事院総裁はどうするかということを聞こうと思いますが、一体國警の責任者として、この重要な連絡機関でありますものが、十分活用ができないというようなことでは、実にお話にならぬと思います。そうしたことから来るところのいろいろな手違い、あるいは当局取締りが、今のような劣悪というのか、もうなつていないというような態度では、どうにもこうにもならぬと私は存じます。こういう問題についで、責任を感じて対処しておられるかどうかという点は、今の答弁のような程度ではいかぬと考えます。私はもつと責任を感じて、それぞれの手配なり対策なりを講ずるように、もつと政府に強く言うとか、あるいはその他の方面へ十分連絡するとか何かして、警察特有のそうした連絡機関というものは、あくまで確保されてしかるべきだと考えます。私は國民全体の立場から、この警察電話確保されなければならぬと思います。一党一派に偏されまして、こういうものがいろいろなところに悪用されるということであつてはならぬと考えますから、まじめに日本治安確保意味から、こうした連絡機関確保されておるかどうかという点について、もう少しざつくばらんに事実を申し述べていただいて、今後の対策をしていただきたいと考えます。
  41. 川崎秀二

    川崎委員 私は昨日委員会事務当局から要求させておきましたので、答弁の準備もあることと思うのですが、三鷹電車地区事件は、今日の労働事情に関連して、非常に重大な波紋を國民の前に投げておると思うのであります。現在までにわかつた状況を、先ほど以來聞いておると非常にたよりないけれども、一應調査したものだけでも、御報告をいただきたいと思います。
  42. 溝淵増己

    溝淵説明員 三鷹事件につきましては、近來にない大きな事件でございまして、國警におきましても、関心を持つておる事件でございますが、御承知のように十五日の午後九時十三分に起つた事件でございまして、死者六名、重傷八名、軽傷六名というような無辜の人が列車にひかれた、ひかれたというよりも、むしろ殺された、という事態でありまして、國警におきましては、事件発生後、そこの管轄三鷹町でありますので、町から應援の要請がありまして、ただちに必要な警察官要請に應じて三鷹地方に派遣いたしました。そうして三鷹町と合同捜査本部というものを設けておりますが、実はこれも法律的に申し上げますれば、三鷹町の捜査本部であるわけでありますが、町と東京都の國警本部とが一緒になつてつておるのでございます。今日までの捜査経過は、新聞その他ですでに御承知だと存じますが、その事件の前後における現状等から容疑があるとして、元中野電車区の山本久一、元三鷹電車区の飯田七三の両名を逮捕いたしておるのでございます。その捜査経過はまだ十分報告に接しておりません。その後、附近の聞込み、地取り、そうして技術的な観点等からいたしまして、非常な努力をいたして捜査いたしておるのでございます。問題の範囲も狭いし、また技術的な観点からいたしましても、これは必ずしも自然に発生したものでないということがいわれておるのでございますので、捜査相当確証を近く握るものだと考えております。
  43. 川崎秀二

    川崎委員 二つだけ質問をしてみます。その第一の点は、逮捕状を出してから、本人二人を殺人容疑者なりということで逮捕をいたしたわけでありますが、その間に十数時間も空費をいたしておる。そこで問題は、今後の警察が人を逮捕するときの基本的な処置ということについて、私は非常な疑問を持つておる。その第一点は、逮捕をするときには、当然その状況が逼迫をしておる。逃亡のおそれがある。こういうようなことがあつて初めて逮捕状というものが出るのであつて、そうしてそれについては十分なる証拠を持たなければならぬ、こういうことであるのでありますが、すでに新聞紙上逮捕状を発するのだということが出ておる。しかるにそれに反して逮捕をされたところの当人たちは、アリバイをすでに逮捕前から主張をして、それが新聞紙上に出ておる。しかも集團を組んで、不法逮捕に対して反対をしておる、こういうことが一体公然と行われてよいのかという点であります。  それから所在もきわめて明らかであつたのに、逮捕ができなかつたということは、何らか警察力に対抗する非常な力があつて逮捕ができなかつたものかどうか。新聞紙上を通すると、最も都合のよい場所において逮捕したのだという、人をばかにしたような記事が載つておるのであるけれども、これらを一貫して、警察当局としては逮捕状を発してから、十数時間も逮捕できなかつた理由いかん。それから所在が明らかになつておるにかかわらず、逮捕ができなかつたという理由いかん。この点をお聞きしたいと思います。
  44. 溝淵増己

    溝淵説明員 逮捕状が出ましてから、時間が相当長く過ぎておるのはどういうわけかということでございますが、現地捜査当局におきましては、本人の住所その他につきまして相当の調べをいたしておつたのでありますが、本人が轉々としてわからなかつたということ、しかしその間に新聞その他に出ているではないか、こういうことも考えられまして、御意見のような御質問が出るのだと思いますが、捜査当局としては場所と時との問題を考慮して逮捕したということが、報告になつているのでございます。しかしながら時間的に申しまして、逮捕状が出るとか出ないとかいうようなことが早く喧傳されたために、非常に時間がかかつたように見られていますが、逮捕状が出まして時間が今までの例に比べて、必ずしも遅かつたというようには私ども考えておりません。問題は、逮捕状が出るとか、出ないとか、出たとかいうことが早く喧傳されたということは、いずれにしても措置がよろしくなかつたのではないか、かように存じております。
  45. 川崎秀二

    川崎委員 警察の威信に関する問題であつて、結局最後の答弁のところで、逮捕状が出るとか出ないとかいうことが喧傳をされたことは、警察秘密を秘匿し得ることができなかつた意味で、遺憾だという答弁があつたのでありますから、その点は打切ります。  もう一つ、私はこれは別の観点から問いただしておかなければならない点があるのです。それは逮捕状を出すとすれば、きわめて的確なるところの理由というものがなければならぬのであるけれども本人たちが証拠十分なる殺人容疑者であるのか。あるいは殺人容疑というものに重大な関連を持つ、たとえばこれを教唆をしたということによつてひつばつておいて、それから実際の犯人をあげるというような考え方では、少くとも逮捕状を出してはならぬと私は解釈をしているのです。これはやはり建前としては参考人として呼ばなければならない。こういうふうに考えるのですが、どうですか。
  46. 溝淵増己

    溝淵説明員 この二人の逮捕状については、現地報告によりますと、この件の発生前または発生後における、本人の言動等からして、この事件相当深い関係があるというように認定された、かように聞いておりますが、もともとこの逮捕状は、檢事の方で指導的に逮捕状を要求したと聞いております。詳しい檢事の心証についてはわかりませんが、少くとも逮捕状を出すのには、判事を納得さすだけの証拠がなければ出ないものと信じておりますので、その点は相当根拠があるのではないかと存じております。
  47. 春日正一

    ○春日委員 大体さきの話を聞いておりますと、どうもどこまで聞いたら、どういう返事がもらえるか見当がつかなくなつて参りましたが、最近労働争議に対して警察官が出て、國警なんかも動員されるというような場合があるのですけれども、あれは一体どういう手続があつた場合に、どういう立場から出すのですか。これからお聞きしたいのです。
  48. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの御質問でありますが、自治体警察から國警に対して應援の要請があつた場合においては、國警はその実力の範囲内で、應援をする一つの義務を持つているのであります。しかしながら應援した警察官は、その町なりその市の公安委員会の運営のもとに属して、仕事をするという建前になつております。
  49. 春日正一

    ○春日委員 そうすると、國警は人は出す、しかし事に対する責任は負わぬというような建前になつているわけですか。
  50. 溝淵増己

    溝淵説明員 應援を出しました以上、その警察官國警警察官であります以上、これの警察官のやり方等について不都合があつた場合に、それの責任を感じないというわけではございませんが、法律上その仕事をした結果、法律効果というものは、すべて公安委員会責任になつているのであります。
  51. 春日正一

    ○春日委員 それで日鋼の問題を主としてお聞きします。大体國警が今までやつて來たことにいろいろ関連していると思いますが、出て來て非常に乱暴する。たとえば日鋼の場合なんかでも、スクラムを組んでおれば、腕をたたき、それからひつぱつて來て、人間をそのまま車に乗せるのならば、まだりくつが通るけれども、そこで胴突きして、腰の抜けるようなことをやる。もつとひどいのは、新潟の加茂の場合みたいに、婦人労働者がスクラムを組んでいると、スカートの下から、私ここで口で言えないようなところに警棒をつつ込んだ。こういうことをあなた方の方で命令してやらせるのか、それとも警察官がかつてにやつたのか、この点はつきりさしていただきたい。
  52. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの御質問は非常にきつい御質問ですが、私どもの方において、そういうことを命じようはずはございませんし、私ども調査した範囲においても、そういうことは断じてないと確信いたしております。
  53. 春日正一

    ○春日委員 断じてないと言つても、たくさんの証人がいる。やられた被害者が事実いる。断じてないと言うならば、証人をここに呼ばなければならぬということになる。しかも大体私ども聞いているところでは、スクラムを組んでおれば、腕をたたくとか、みぞおちを突くというような教練を、警察官に対して警察学校でやつている。そういう指針も出ているように聞いている。しかし実際そういう乱暴をしなければ職務が執行できないのか、この点お聞きします。
  54. 溝淵増己

    溝淵説明員 労働争議そのものだけではございませんので、警察としましては、多くの場合凶悪犯人と鬪うということが警察の大きな仕事になつておりますので、あるいは現場で公務を執行するのに、相手方が言うことを聞かない。またある場合には相手方も相当な鬪争力をもつて対抗して來る。そして現場で乱鬪になるというような場合においては、警察官としては警棒を許されておりますので、警棒の有効な使い方については平生から訓練はいたしておりますが、これを乱暴に不必要になぐつたり、いらぬところをそれで暴行したりするようなことは、やるはずもないし、またやるべきでないと思つております。
  55. 春日正一

    ○春日委員 ところで日鋼の場合を見ましても、從業員の側からは重傷者が出ている。私たち調べただけでも九名、それに軽傷者を入れると三百名を越えている。これは当局ではそんなにないと言つておりますが、実際労働者は多少なぐられてこぶができたり、かすり傷ができても、そのくらいで医者に行つて診断を求めるというようなことはしない。だから組合の調査によると、三百名を越えた数になる。治療を受けた者だけでも六十名を越えている。ところが警察の方では、どれだけどんな負傷者が出ているか。あそこの労働者は積極的に抵抗をしていない。ただがんがんやつて來るから、こうやればかすり傷は出るかもしれませんが、しかし積極的に抵抗していない。少くもあの当時の写眞を見れば、ひつばられた人間をつり上げて、たたいているところが出ている。これは事実だ。そういうことで、特に労働運動というようなものは、あなたは凶悪な犯罪と言うけれども、決して凶悪な犯罪じやない。そういう場合に、單に法の執行に従わぬから、何でもやつてしまうのだというような態度でやられるのか、事と場合を考えて、なるべくならば、そういう暴力を使わぬように事を処理したいと考えておるのか、この方針をお聞きしたい。
  56. 溝淵増己

    溝淵説明員 どんな場合でも、警察官が相手方に暴力を使わずに逮捕したり、目的を達するということは当然のことでございまして、極力そういう事態にならないように努めるということは、もちろん当然でございまして、絶えず私どもはそういうように、できる限りにおいて指導をいたしておるのでございます。たとえば労働争議がありましても、それが違法行為にわたるおそれがあるというような場合には、極力事前に警告なり、あるいはその他のできるだけの措置をとつて、そうして平和的に解決のつくものはつけるようにという考え方を持つておるということは、申し上げていいのであります。ただ現場の情勢が、そういう余地を許さぬという場合もありますので、一概に言えないのでありますけれども警察としましても、決して事を好むのでないということは申し上げるまでもありません。
  57. 春日正一

    ○春日委員 常にそういうふうに言われますけれども、大体今まで起つた東芝の加茂の問題でも、川岸の問題でも、今度の日鋼の問題でも、事前警察官が動員されておる。そうして命令を出し、聞かぬからといつて、おどり込んで來るという形がとられておる。だから日鋼の場合なんかでも、條理からいえば、なるほど立ちのかなかつたのは悪いかもしれない。しかし労働者にあそこにすわり込ました原因というものを考えてみるならば、もつと大きく保護しなければならぬということは、國全体の立場から見て当然考えられるはずだつた。あなた方は御承知だと思うけれども、あそこではすでに今年の一月から、ずつと賃金の遅拂いが行われておる。賃金を拂つてもらえず、主食もとれない人もあるけれども、それでも工場をやめて行かないという点は一体何だ。失業が非常に多くなつた、やめてしまつても、よそに働き場もない、ここで働くよりしようがないという状態で、あそこにほんとうにしがみついてやつて來ている。そのためにあの首切りが出た六月の二日という日まで、シャムやビルマへ納めるものをつくるために、徹夜までしてやつておる。そういう氣持でやつてきた人間に対して、仕事が終つたとたんに首切りでは、労働者が怒るのはあたりまえでするしかも組合からも再建案を出して、もつと折衝して行くということを言つておるのに、会社の当の責任者は逃げてしまつて出て來ない。すでにそこに資本家の方に違法がある。これは今の法律によつて、第何條違反というような意味ではないけれども、常識的に考えて行けば、けんかを賣つて來ているのである。それを保護せずに、どうにも行く所がないということですわり込んだ者を、ぶんなぐり、そうしてたたいたりする、こういうことでよろしいか。檢察廳の方も來ておられるようですから、ついでに質問したいのであります。もつと大きなところをつけば、今度の日鋼事件の根本にあるものは、一体何だ。資本家に聞いてみれば、どうしても会社は赤字になつて、首を切らなければやりきれぬと言つておる、これは事実だ。どうして赤字になるかといえば、あそこは鉄道の車両の部分品をつくつている、鉄道の車両の下請をやつている。これが來なくなつた。ミシンも賣れない。だからどうしても人を減らさなければならぬと言つている。資本家の立場からいえばその通りです。会社の経営が成り立たぬ、これは大事なことだ。同時に労働者の立場からいえば、ここを首切られたら働くあてがない、食えないという問題がある。これも死活の問題だ。どつちの主張ものつぴきならぬところまで追い込まれている。この原因をつくつたのは一体だれだ。政府がこの間の國会で車両の予算を削つてしまう、あるいは全体としての首切り計画というようなものを出して、産業のやり方をそういうふうにかえて行つてしまうということで、失業者が出されている。しかもあのとき労働省は何と言つたか。失業者に対しては輸出産業に四十万を吸收しますとか、いや失業保險でどうしますとかいうことを言つておる。しかし現実において輸出産業自身が、ストックができて賣れなくなつて、首切らなければならぬというような状態が出始めている。地方をまわつてみても、失業対策なんて何もできていない。京都のごときは、職業安定所に來る失業者のうち、就職できる者は八%だという。だから当然そんなものを信用しないから、安定所に來ない者が非常に多い。こういう食えない状態にしておいて、そうして行く先もつくらなんでおいて、首を切る。それで行く先がないから食えないという人間を、法に違反するからといつて、ぶんなぐるというようなことが一常識として考えられるか。少くとも政府の機関であるならば、政府のやつた政策に対する責任は、國警といえども檢察廳といえども、やはり共同に感じなければならぬ。労働省の労働政策が悪かつたから、國警はとにかくひつぱつて來さえすればいい、検察廳は法に基いて檢挙すればいいというだけの問題じやない。一つの国家というものは統一された組織体だ。そうするならば、政府の失政のために出て來た労働争議、社会不安というものの処置に対して、ただ不服を言うからひつぱる、弾圧するというような道理が通るか。単なる法理論じやないと思う。この点についてあなた方はどう考えるか。これは檢察廳の方からもお聞きしたいし、労働省からも聞いてみたい。
  58. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの問題は、事國政の全般にわたる問題でありまして、警察としましてはそういう具体的なことはわかりませんが、ただ現場における現象としましては、管理者である知事の退去命令に対しまして、従わない者を追い出したというにすぎないのでありまして、先ほど春日さんは、かなり労働者の方にけが人が出たように申されましたが、私どもの聞いております報告によりますと、大部分の工員は割合おとなしく命令に從つて出まして、あとに残つた二、三百名の者がすわり込んだので、それを抱くようにして出したというような報告でございまして、その間大きなけがをしたというように考えられないという報告が参つております。その後も、日鋼事件では数百名の工員が入つたのでございますが、これもまたおとなしく出ました。そのときにはほとんど警察官も使わずに出ておりますので、おそらくそんなけが人も出ないのじやないか、かように存じます。
  59. 倉石忠雄

    倉石委員長 途中ですが、これで午後一時まで休憩いたすことにいたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  60. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは休憩前に引続いて会議を開きます。
  61. 春日正一

    ○春日委員 國警本部の方にお伺いしますが、廣島事件であの争議を交渉中に、人民裁判が五回あつた。それで七人の会社側の人が卒倒したという報告がされておるのですけれども、あなた方の方にそういう報告が入つておるかどうか、まずこれをお聞きしたい。
  62. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの御質問でございますが、人民裁判をだれがやられたのですか。
  63. 春日正一

    ○春日委員 会社側の者が争議團から人民裁判にかけられて、七人卒倒したという報告がなされておるのです。それについて國警の方にそういう情報が入つておるかどうかですね。
  64. 溝淵増己

    溝淵説明員 この問題は詳しい報告はあとから警備部長からされますが、私ども報告で聞いておる範囲では、会社の重役が相当長時間監禁状態になつたということで、卒倒するか、何かあつたかしりませんが、とにかく相当な被害を受けたということで、今取調べをいたしております。
  65. 春日正一

    ○春日委員 監禁状態にあつたということ、どこでどういうふうに監禁したのか、その事情をあなた方のわかつている範囲で聞かしてもらいたいと思います。
  66. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまのは詳しい情報はわかりませんが、とにかく檢事局が相当確信を持つて、監禁罪ということで取調べをしておるということをちよつと説明しておきます。
  67. 春日正一

    ○春日委員 それでもう一つお聞きしますが、あの争議中に暴力革命をやるんだ、暴力革命が八月九月にあるから、それまでストライキを続行するんだというような煽動が、盛んになされておるというように言つておりますけれども、そういう実があつたかどうか。
  68. 樺山俊夫

    ○樺山説明員 ただいまのお話、私ども聞いておりません。
  69. 春日正一

    ○春日委員 それではつきりしたのですが、実はなぜそういうことを聞いたかと言いますと、私ども二班と三班と二つにわかれて両方で廣島に調査に行つた。昨日の塚原委員報告では、そういうふうにして争議團が多分五回にわたつて人民裁判を行つた、そのために会社側が七人も卒倒しておるというような報告がされておる。それからまたこの八月、九月に暴力革命があるんだ、それまでとにかくこのストライキを持ち続けるんだ、というような煽動がされておるというような報告がされておる。ところが私ども第二班は社会党の大矢委員と民自党の船越委員と私と三人で行きましたけれども、縣の労働部長からも、あるいは労働委員会の務局の人からも、労働組合の当局者からも、そういう人民裁判があつたというような話は聞いていない、しかし会社側の所長が隠れてしまつて出て來ないので、その代理者あるいは課長、こういう者を池の端の島のところへ呼び出して來て、皆で首切り状の返還、この国体交渉をやつた、その際会社の態度が非常に不誠意であるというので、かなり乱暴な言葉も出て來たようだつたという報告は聞いておる。しかし、こういう大衆交渉を人民裁判というようなことにして扱えるか。裁判というからには、やはり罪人お前何だということでやるのが裁判である。大衆的に交渉するというのは労働組合として方々で起ることである。しかも大衆的にみな、出て來て、みなの前で返してくれということを、人民裁判というふうに宣傳しておつたら、非常に悪意のあるデマゴ—グだと思う。そういう点で、私はあなた方にそういう事実が当局者として報告があつて、そういうところからでも出たかということでお聞きした。幸いあなた方にそういう情報が入つていない、私どもの聞いた情報も、そういうことが出てないという点がはつきりしておる。この点三班と二班との調査において、大きな食い違いがあつたということだけをはつきりさせておきます。  次に國警本部の方についでにお聞きしたいのですが、実は東京都の例の公安條例の問題、あの問題で市電の橋本君が一人死んでおる。私ども労働者側から言えば、殺されたということになつておる。それについては自分で倒れて労働者に踏まれて死んだのだということで、片がついておるのでありますが、しかしこの問題について國警として、どういうふうな取調べをやられたか。この点をお聞きいたしたいと思います。
  70. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの御質問の問題でありますけれども、この問題は相当愼重に警視廳並びに檢察廳において厳重な調査をいたしたことでございまして、國警としては直接調査はいたしておりません。
  71. 春日正一

    ○春日委員 当の國警自身でやつたことなんだから、これを問題にして行けば、檢察廳の方が問題になると思いますけれども、私どもずつとこの経過を調べてみて、非常にお座なりに調べておるという傾向がある。たとえば三鷹電車事件があつたとか、下山事件とか——三鷹電車など、あまり熱心にやらないようだけれども、一生懸命新聞でも書き立てて騒ぎ立てる。しかしこの事件では、ほとんどお座なりに二、三の人に聞いてみたという程度で済ましておるようであります。この点はあとで檢察廳の方にお聞きしますが、大体あの五月三十日、三十一日にああやつて人が大勢集まつておる。これをすつかり包囲してしまつて、そしてこれに解散しろと言つたけれども解散しないから、すぐひつぱるというようなことをやることが、一体いいかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  72. 溝淵増己

    溝淵説明員 これも責任をのがれるように聞えるかもしれませんが、警視廳現地におきまして、その事態が解散すべき時期に解散しないということで解散命令を出して、出ないから押し出した、こういう事件でありまして、現場の情勢による問題でありますので、ここでそれがどうであつたというような批判は、われわれとしていたしたくもないし、またできない問題だと思います。
  73. 春日正一

    ○春日委員 解散命令を出しても、解散しないからやつたというように言われるのですけれども、私この点東京都知にも会つて聞いてみた。そうしたら、私は公安條例は出さぬと言つた、出さぬと言つても帰らぬから、警察を呼んだ、こう言つておられた。だから私は言つた。出さぬと言つても帰らぬから警察を呼ぶという考え方の中に、すでに公安條例があるのだ。そういう考えでやるからああいう椿事が起きるのだ。ただ出さぬと言つてなぜ信用できるか。今までずいぶんうそをつかれてだまされた。福井の場合でも、大阪の場合でも、方々で出さぬ出さぬといつて不意打ちを食つてだまされておる。労働者は身にしみてそれを知つておる。だからただ出さぬだけでは承知できない。ほんとうに出さぬものなら、実際にこれこれで出さぬ。しかし出すときには、公聽会でも開いてこういう手続で、こうやる、そのときに通知するからというふうにして、もつと親切に納得させればできるものを、出さぬと言つて、それを信用してくれないから警察を呼んだ。警察は解散しろと言つた。しかもあの状態では、解散できないように包囲して出品をふさいでおいて、さあ解散しろと言つても、解散のしようがない。私どもの経驗では、私も若いころずいぶんやられたけれども、とにかく大体ああいう事態になれば、時間をかせば労働者も考えて、ぽつぽつ退散しようという氣持になつて來るものである。そうして帰ろうとして崩れかかるときにぱあつとやられておる。あのときの状態を聞いても、すつかり包んで出られないようにして、さあ解散しろと言つても出て行けはしない。そういうふうなことで、たくさんの人を檢束するし、あるいは二階か三階から人が落ちてそれを踏みつけるようなことをやつておる。しかも最近出されておる告発状を見ると、やはり労働者が踏みつけたのじやない、踏みつけたとすれば、警察官が踏みつけたのだというように思われる証拠がいろいろあげられておる。そういう点で、あなた方の部下がかつとなつて、そういう乱暴をやらぬということは保証できない。今まで方々でそれをやつておる。さつき私が例をあげたように、女のまたぐらに棒をつつ込ませるという意思はなくても、事実つつ込んでおる。これは証人がちやんとある。そういうふうにやつておる。それで政府のやつたことだから、取調べは型通り一應はやつて、しかも死因は、とにかく自分が倒れて肝臓が破裂したのだというようなことを発表したところで、それで國警なり檢察廳なりの権威が保たれるか。そういうことによつて、かえつて権威が失われる。そういう点についてあなた方が今後どうやられるか、その点お聞きしたいと思います。
  74. 溝淵増己

    溝淵説明員 けさほどもお話申し上げましたように、われわれは法の命ずるところによりまして、正しく執行して行きたいと考えております。
  75. 春日正一

    ○春日委員 私、話のついでだから檢察廳の方にお聞きしますが、今の東京の問題でも、最近いろいろ労働争議に対して、檢察廳で檢挙なりいろいろやられる。そういうことが、一應争議というようなものには関係がないという形でやられておるけれども、実際檢察権の発動するときと、争議の状態がぐつと変化するときと、非常に一致して出て來ておる。たとえば日本製鋼の場合でも、組合の幹部が七人ひつばられたのが六月の二十九日である。それがひつぱられると、すぐ七月二日ごろには第二組合の旗あげがやられておる。あの組合は、きのうの報告にもちよつとあつたようですが、以前総同盟に所属しておつて、今まで鬪争などということはあまり経験していない組合である。そういう形で、非常に弱いといわれておつた組合である。こういう組合で、幹部がぽかつと中堅的なものを抜いて行く、同時にそれが第二組合の結成の一つの大きな轉機になつて出て來ておる。それからさらに私ども行つて聞いてみると、十三日に檢挙した組合の幹部は、これは國体交渉のために必要だからということで、釈放されることになつてつた。ところが、そのうち一番中心になる三人を裏門から出して、門のところで自動車の中の覆面した男が、だれとだれとだれに間違いないということで、またたらいまわしにひつぱつてしまつた。昔、東條さん以前に、われわれたらいまわしということをよくやられたけれども、現在そのたらいまわしがやられておる。しかもそういうたらいまわしのやられる時期に、どういう状態があつたかといえば、第二組合がくずれかかつて來ておる。そういう時期に、組合の信望ある幹部が帰つて來たら、ぐあいが悪いというので、またひつぱつた。労働者側ではこう解釈しておる。そう解釈されるような行動をとつておる。こういうたらいまわしというようなことがいいかどうか、今の世の中でできるかどうか。またそういうふうに労働争議に直接影響を及ぼすような檢挙の仕方、こういうことが結局組合運動に対する檢察権の干渉になつて來る。こういう点について檢察廳の方針をお聞きしたい。
  76. 高橋一郎

    ○高橋(一)説明員 檢察の方としましては、争議の成行きを見ておつて、何かその争議のためにするように、檢挙をいろいろ手心をして行くというような考えは、実は毛頭ないのであります。そういう行為の際に発生したいろいろな違法行為の檢挙にあたりましては、できるだけ無用の摩擦は起さないように、こういう配慮はもちろん十分にいたすのでありますが、やむを得ずして檢挙した結果、争議の上に影響を及ぼすということも、これはある程度しかたがないというふうに考えておる次第であります。
  77. 春日正一

    ○春日委員 それはその通りですけれども、緊急事態で犯人をどうしてもあげなければならぬというのだつたら、十四日にあの事件が起つたのだから、十四日か十五日にひつぱつたらよさそうなものを、二十九日までなぜほつておくか。二十九日まで置いたということは、あのときにひつぱるということが、争議の情勢にいろいろ影響する。そういう問題は逃げも隠れもするものではないし、証拠が湮滅されるものでもない。だから二十九日まで延ばしておく。それだけ延ばせるなら、團体交渉が始まつて争議が落ちついてからひつぱつてもけつこうだ。もしそういう人たちを残しておけば、早く争議の片がつくのに、その当事者をひつぱつてしまう。これはあなたの弁解は通らぬ。すぐひつぱらなければならないのなら、なぜ十五、六日にひつぱらないか、この点をお聞きしたい。
  78. 高橋一郎

    ○高橋(一)説明員 要するに日本製鋼の事件——おそらく今の春日委員のおつしやるのは、工場を占領しておつたという事案の檢挙であろうと思います。檢察当局といたしましては、そういう違法状態を自発的に解消してくれれば、もちろんそれに越したことはないのでありまして、ある程度それを見守つておるということはございます。從いまして、そういうような状態になつたからすぐに乗り出す、常にこういうふうに運用するとまでは考えておりません。いつまでも続きまして、どうしてもそういうことが期待できない。そこでやむを得ず出るのでありまして、その間多少の日時を経過するというようなことは、これはしかたのないことではないかというふうに考えるのであります。それから先ほどちよつとお触れになりました、たらいまわしということでありますが、これは私そういう順序はよく存じませんけれども、お話を伺つておけますと、おそらく工場占領ということで大勢を檢挙した、その人たちを何日かたつて釈放いたします。しかしそれより前に不法監禁か何かの捜査に着手しておりまして、その方の被疑者を檢挙する必要があつたように私は承知しておるのであります。從つてつたく別な犯罪で正規の手続でやつた。いわゆる昔あつたたらいまわしというようなものとは、全然本質を異にするように承知しております。
  79. 春日正一

    ○春日委員 あなたの言われるように、事態を見守つておるということをやつてくれれば非常にけつこうなんだけれども、しかし実際には警察力を発動してぽかつとやつてしまう。あのひつぱつた場合なんかは、十四日にもう済んでしまつて、それからあとは二十九日まで見守つたつてそういう事態は起つて來ない。しかも不法侵入あるいは不法監禁ということでひつぱつておいて、これが終つたから出すといつて、四時に出すと言つたものを、六時まで延ばして六時に出しておる。しかもその理由が、私の聞くところでは、二度目にひつぱつた理由は、賠償工場に不法に侵入したということになつておるそうでありますが、しかし彼らは交渉員として出入の許可をちやんととつている。それがそういうことでひつぱられた。これは何としてもこじつけてひつばつた、組合員がこの解釈するのも、しようがない状態にある。それからまたこういう政策的な検察というものでは、先ほど三鷹の問題がちよつと出ましたけれども、あの場合でもやはりそういうようなことが、非常に強く印象づけられるようなやり方をしておる。この点はあとで土橋委員の方から質問するから、私特に質問しない。しかし東京のあの事件の場合でも、非常に簡単に取調べて、これは本人が自分で死んだんだというようなことにしてしまつておる。人一人死ぬという事件を、そんなに簡単に片づけて、一体どれだけの人を喚問して、どれだけの証人を呼んでそれを調べたか、その点はつきりさしてもらいたいと思う。
  80. 高橋一郎

    ○高橋(一)説明員 橋本金二氏の死亡については、檢察廳として十分その事案の重要性を認識いたしまして、十二分にこれは捜査をいたしております。何人の証人を呼んで、どういうふうにというような、数字的な資料は今持つておりませんけれども、その点は私は手落ちがない、決してこの種のものをうやむやにするというふうには考えておりません。
  81. 春日正一

    ○春日委員 それについて相当たくさんの人から、いわゆる國警長官、警視総監あるいはその他の人を当時の殺人罪の容疑として告訴している。それは声明書にもはつきり出されているのでありますが、そういうものについて、あなた方は眞劍に考慮しているかどうか。
  82. 高橋一郎

    ○高橋(一)説明員 もちろん告訴、告発というようなものも十分考慮して、資料となるべきものはこれを資料としてやつているわけであります。ことにあの種の事案は、そのような告訴、告発がかりになくても、十分に捜査をいたすべき問題であるというふうに、檢察廳は労働問題に限らず、考えているわけであります。
  83. 春日正一

    ○春日委員 十分にやつていると言われるだけのことで、事実は、たとえば告訴状に載せられているように、たくさんの目撃した証人があげられているにもかかわらず、そういう人たちも呼ばれてないし、解剖した人たちの臨檢というようなこともなされていない。ただ学問的にいつてこうなるという回答が出て、それに対して原因が幾つも考えられるから、そのうちのどれか一つ、都合のいいもので片をつけるというようなやり方をやつている。しかもそういうことが公安條例と関連して、非常に多数の人の利害に関係したものとして起つている。單なる個人的な問題でなく、それが社会的な大きなものと結びついでいる事件であれば、それだけに徹底的に調べなければならぬ。ところがそれが調べられていない。そういうところに、やはり公安條例と似たような精神がまだ残つているのではないか。たとえば公安條例のようなものでも、戰争前の治安警察法よりも、もつとひどい取締りの内容を含んだものが中に盛られている。しかも起つた件に対して、檢察廳態度が、昔の警察と同じようなお座なり的な態度をとつているようにしか私には考えられない。今の答弁でも十分やつておりますと言われる。もちろん十分やつておりますと言うよりほかないだろうけれども、私らが見ているところでも、まだまだ呼んで聞くべき人がたくさんあるはずだのに、それが調べられていない。しかも事件はすでに片がついている。こういうことで実際に法の権威が守つて行けるか。この点を十分考えて、將來やつていただきたい。私あとまだ労働大臣その他に対する質問はたくさんありますけれども檢察廳國警に対する質問はこれで終ります。
  84. 吉武恵市

    ○吉武委員 私は今回労働委員会において取上げられましたる過般の東交事件、そうしてまた國電スト、廣島の日鋼事件わかもと等、これらの相次ぐ争議及び事件に関連にいたしまして、昨日政府当局並びにわれわれ労働委員会より実地調査いたしましたる方々の報告を受けたのでありますが、私どもが大体推察しておつた通り、今回のこれらの相次ぐ事件は単なる労働争議ではない、労働争議を装つた、一つの政治的な意図のもとに行われておつたということを、推察するにかたくないのであります。かりにまたこれが單なる労働争議であるとしても、その争議において行われましたる幾多の暴行脅迫は、われわれの断じて許さざる行為であると思うのであります。われわれはさきの第五國会において、労働組合法を改正する際に、第一條に、暴力行為はいかなる意味においてもこれを認めることはできないという字句を挿入したことは、記憶に新たなところであります。これについて社会党の前田君たちも、これは実にわれわれ労働運動をする者にとつては恥辱な言葉である、われわれがかくのごとき行為をいかにもするかのごとき感を與えることは、国際的に見てもはなはだ恥辱であるから、何とかして削つてほしいという意見を聞いたのであります。私ども日本の労働組合が、かくのごとき字句を法律の中に規定しなければならないということを悲しむものであります。しかしながら國会を通過いたしましてわずか一月足らないのに、相次ぐこれらの争議の様相は、まつたく言語に絶したるところの暴行ざたでございます。ただいま春日委員から廣島の日鋼の事件を取上げられまして、昨日わが党の塚原君が報告いたしましたるのに対し、人民裁判などと言つているけれども、そういう事実がどこにあるか、これは單なる團体交渉ではなかつたか、と言つておりまするけれども、私は春日君は実地に御調査になつて、何をお調べになつたかと言いたいのであります。私に、当時廣島の日鋼の工場長代理をいたしましておりました板垣茂という人が、終日これらの暴行脅迫にあつて遂に卒倒せんとしたときの手記を送つてくれた。私はこの手記を読んだときに、私どもがかつて労働問題に携わつておりました際に経驗しました、終戰直後のかの北海道の三菱の美唄炭鉱におつて行われたるところの、人民裁判そのものの様相を呈していると感じたのであります。私は本委員会の貴重なる時間をとることをはなはだ恐縮するものでありまするけれども檢察当局の方々はどこまで一体これらをお考えになり、知つておられるかと思いますので、その点について私は一應この告白の手記を読ましていただきたいと思います。  「昭和二十四年六月十二日午前九時ごろから、労働組合員全員約二千名が何らの予告なくストに入り、間断なく私の執務している所長室前廊下を反復デモ行進して、所長室の窓ガラス二枚を破壊してしまつた。当時部課長、工場長約二十名が所長室に集まつて会議をしておつた。ところが所長室の隣の秘書室に約五十名の組合員が入つて來て占領した。退去を要求しても應じない。所長室との間のドアも開放されて、両室とも実上執務のできない状況に押し込められてしまつた。  午前十時ごろから團体交渉の申入れがあつたが、これに関し勤労部長を通じて、目下デモ行進中の組合員を一應各職場に復帰させてくれ、無勢な状態になつた後に協議に應じよう、こういうことを組合の書記長の越智一見という人と松田執己という人に回答をしておつたのであります。しかるに午後一時ごろ守衞所より臭との直通電話で、小生のうちに電話がかかつて來た。当時本事務所の前の廣場には、全組合員が池を囲んで集合し、組合大会を開いていた。この池は、この池の中の小島に押し込められて人民裁判を行われたそれでございます。その池の周辺に大衆が大会を開いておつた。私は電話を終つてボックスから出ると、すでにボックスから池の方向に、二重のスクラムで人垣ができておりました。この池の中心に位する中の島は、これが人民裁判が行われた島でございます。この中の島は十一日夜、人事課長、秘書課長両名が監禁されて、不当な誓約をしいられた場所であり、その謀略を見拔いたので、私はそこに行くことがきわめて恐ろしかつた。私は群衆に向つて、今から組合幹部と会う用事があるから帰してくれと言いながら、スクラムを割つて通ろうとした。そのとき横合いから越智書記長——これは組合の人であります——が出て來て、どうしたのだと言いながら、私の手を抑えて引きもどした。それを合図に群衆は、声を立ててわつしよいわつしよいと、私を押して連れて行つてしまつた。私は恐怖のあまり助けてくれと十数回連呼して、押しもまれながら脱出しようとしたが、背後より背、しり、脚等をあるいはけり、あるいはこづかれ、次第に池のそばに押し出された。そのとき肩巾の廣い一見朝鮮人のような見知らぬ男が、おれのあとをついて來い、さもなければ危いぞと親切そうに言いながら、池の方向に誘導しかけた。私は君はだれですかと尋ねたら、三原車両の竹田太一と答えた。押しもまれて遂に力盡きて、本事務所前正面玄関の柱の根本にくずおれてしまつた。群衆は罵言雑言を加え、あるいは勢いを示して私を極度に畏怖させてしまつた。午後一時四十分ころ、大久保秘書課長が私を探して顔を見せたが、私の顔が蒼白で恐怖の状はなはだしく、助けてくれと呼ぶのを聞いて、驚いて所長室に逃げ込んでしまつた。午後二時ごろ松本作業部長、緒方勤務部長ら六名の者が松田、越智に導かれて出て來て何か折衝していたが、そのまま私の周囲にすわり込んでしまつた。午後四時三十分ころ、取締担当長門時行に何か事故あつたらしく、一組合員より長門の軽石が——これは守衛のあだ名だそうですが、守衛所でのばされているぞと呼んでいた。その直後十数名の者に長門が中の島に拉し去られるのを見た。長門というのは守衛長だそうですが、五時ころ鈴木総務部長が守衛所方向より二、三十名に押し出され、私の前方二メ—トルのところに引出され、とたんに群衆の中から茶色上衣の五尺二寸くらいの男が飛び出して、鈴木の頭をあと方よりなぐりつけるのを認めた。鈴木君は頭髪乱れ、腰部の苦痛をこらえて私らの間にすわられた。この間組合幹部は夕食の準備や電燈設備のさしずをしておる様子で、群衆は絶えず労働歌を高唱し、あるいは私たちに怒号を浴せ、罵言を浴せ、あるいは一人々々を尋問するなどを行い、特に私らの周囲の前面は、約一メートルくらいの間隔をあけておるが、側面、背面は密着してわれわれの起居に制限を加え、特に起立すると喊声をあげて動作を拘束し、すわらせ、わずかに小便に行かせてくれと頼んで、十数名のピケつきで便所までの往復を許す程度であつた。折柄の晴天のために、日陰に頭だけ隠そうとしても、渡邊正盛その他数名の者は、日陰に入るなどぜいたくだ、かぜを引かないように暖かい所に出してやると、ことさらにからだをすりつけて押し出した。すでに長門、鈴木を監禁したために、守衛の機能は壊滅し去り、外部の者の出入は自由になり、警官の出入は厳重なピケのために完全に阻止された。外郭團体は続々入場し、その都度拍手をもつて迎えられ、私たちを侮辱的言辞で紹介した。從業員家族と称して女子供の入場も多く、中野その他がこもごも私を、皆さんの親兄弟の首を切つて皆さんを殺す鬼であると、その他悪意に満ちた言辞を浴びせかけた。対島季己惠が特に緒方勤労部長に対し侮辱を加えておつた際、同部長は極度の疲労と恐怖のあまり、手足に痙攣を生じて卒倒してしまつた。私より医師を呼ぶことを要求したが、なおも罵詈雑言を浴びせ、約一時間の後土井喜医師の手当を受け、別室に移させ、九時ごろ直経二センチぐらいのパン二箇を與えられたが、恐怖のあまり食べる氣もしなかつた。このころまで絶えず十二名の者が、私たち個々について尋問口調で神経消耗を策して來た。私は終始黙して答えず、数回帰してくれと立ち上つたが、その都度実力で押しすわらせられ、ますます激昂して來て、生命の危險を感ずるに至つたので、後には諦めてすわり込んでしまつた。特に記憶に残つているのは、橋上某が足元も怪しいほど酔つて來てわれわれを威嚇したこと、三菱造船青年部長ほか七、八名の者が、同所從業員とともに私たちを取囲んで、スクラムを組んで、われわれの氣分を混乱させるため、労働歌を高唱した。長谷計という男が腕力の強いことを暗示して、首切りを撤回せねば、三日でも四日でもこのままの状態で拘置すべき旨を告げて、脅迫した。黒神貞松という男が私に回答を強要して、高い声を放つて威嚇した。池田敬三という男は所長室ではいばつていやがつて、そのざまは何だ、このかつこうを貴様のかかあに見せてやるなどと、侮辱的な言葉を浴せたのである。九時ごろ林春一という男ほか二十数名が、私たちの前面に、あるいはまたがり、あるいはすわつて相対し、群集に向つて、ただいまから團体交渉を開始する旨を宣した。このような状態で交渉しても、私にはとうてい正当な判断を下すことはできないから、協議会はお断りすると申し立て、爾後一切回答を拒否し続けて、機会あるごとに帰してくれと頼んだけれども、聞かれなかつた。組合の委員及び部外者は、こもごも立つて手を振り、足を踏んまえて威力を示し、各人二十分ないし三十今間何事かしやべつて回答を迫つたが、われわれはすでに思考力がまつたくなく、恐怖と疲労のため、何を聞かれているかもわからない。いわんや回答できるはずのものでなかつた。沈黙を守ることはますます群集を凶暴なものにして、怒号と罵声はいよいよ激烈となり、われわれの身辺にますます危險を感じたが、いかんとしてもしようがなかつた。午後十一時ごろ越智が激越な口調で、しばらく時間を與えてやるから、よく考えて返事をしやがれというようなことを言つて、組合の交渉委員たちは中の島に引上げて行つた。連日の疲労のため、迫り來る眠けと蚊の襲撃のために悩まされながら、うとうとしかけると、香川一彦その他の者はわれわれに近づいて來て、また何か個人的な尋問を始めて、休憩をとらせなかつた。その後十一時三十分ごろ、再度人民裁判的な交渉と称するものが開始された。そのとき正門方面に喊声があがり、同時に乗用自動車が一台正面玄関に停止して、米国人二名の下車するのが見えた。その後組合側の声も低くなり穏やかになつた。しばらくしてその米國人の手招きにより、私はようやく秘書室に連れて行かれ、当時の事情を説明した。そのとき松本作業部長が狂氣のごとく、泣いて、秘書室にくずれるように倒れ込んだ。私はこれを抱きとめていすの上に寝かせ、ただちに土井医師の來診を求め、十分の後土井医師の手当を受けさせた。」  こういうことをよこしております。これは被害を受けました板垣氏の手記でございます。共産党の春日君は、おそらくこれは一方的な言であると否定するでございましよう。私はこの本人の手記を読みまして、当時の有様が目のあたり映るのであります。何ゆえならば、私がかつて労働関係に携わつておりましたときに、終戰直後の北海道の三菱の美唄において行われたる人民裁判の様相が、このままそつくりであります。私はこれがゆえに、先般の労働組合法の改正の際にも、日本の労働組合の團体交渉のやり方は、正しい合法的なやり方をしなければならない、それを指摘いたしまして、法の上に、組合の眞の代表と、会社側の代表とか、平和裡に團体交渉の行われることを、規定に明記すべきであるということを言つたのでありますが、政府当局は、正当なる團体交渉という言葉において、表わされておるからと言つておられたのでありまするけれども、今なおかくのごとき交渉が続けられておりますることは、はなはだ遺憾であります。しかし私はこれらの行為をするものが、決して日本の一千万の労働者、六百万の組織労働者の全部であるとは思いません。ほとんどその大部分は、今日健全なる労働組合運動を行い、そうして一部の人々のこの無謀なる行為に対して、義憤を感じておる。それは現に國鉄争議においても、民同派の人人ははつきりとその態度を示しておる。日本の一部の人たが、かくのごとき無謀なる行為をすることによつて日本の労働運動の上に一つの汚点を印するということを、私ははなはだ遺憾に思う次第であります。  そこで私は、今回取上げられました事件を通じて調べてみますると、目下これらの事件は同時に考査委員会においても取上げられております。東交事件の際にもございまするが、先ほど春日委員からも話されましたように、この問題は公安條例が出るかどうかと、うことで、都廳に押し寄せた。当時私が都廳に行つて調べてみますと、何らそういう準備ができていない。同日ある共産党員がにわかに各方面電話をもつて連絡して招集をしておる。本日公安條例が上程されるから、至急に集まれと言つて招集しております。日ごろからそういう組織がつくられておるためか、たちまち共産党に属する外郭團体が多数東京都廳に押しかけた。そうしてもみ合つておるうちに、橋本金二君が押しつぶされて死んだ。そのときに春日正一君は何と言つたか。第五國会の終りに、春日正一君はこの委員会においても明らかに言つた。その言葉は、警察官が二階から突き落してわれわれ労働者を殺したのたと言つておる。こういう事実にもなきことを言つて労働者を煽動し、そうしてそれをきつかけにして、二日も東京市中の電車がとまつた。その後檢察当局の取調べによつて、それは明らかに墜死したのではなくて肝臓の破裂死である。押しつぶされて死んでおるのであります。多数の無垢なる労働者を集めてやたらにおだて上げて、その難踏の犠牲にしておるのであります。また先般の國電ストにおきましても、私が労働委員会が終つて考査委員会に入つて行くと、考査委員会は尋問のまつ最中である。東神奈川における駅長が困難だと言つておるのに、労働組合の者と外郭国体の者が、乗客だと言つて多数駅長室に押しかけて、そうしてうしろから鉄の棍棒のようなもので、背中を突きさして、負傷さしている。それで組合の者に、君はどうしてそんなことをするかと言つたら、それは乗客のやつたことだから知らぬ——この乗客というのが、共産党員によつて動員されたところの一部の人々であることは明らかである。それは推察するにかたくありません。それは駅長自身もそう言つている。それを、單なるそこに集まつた乗客が、電車が出ないから、憤慨して押し寄せたのだという宣傳をしている。私はこういうやり方に対しては実に憤慨にたえぬものでございます。また国電ストの東神奈川の問題ばかりではない。千葉の車掌区においても、先般考査委員会において取上げてこれを調べてみますると、六月の五日に区長室に、中島登という共産党に所属している車掌が、外部の者二人を案内して來て、区長、人が会いたいと言つているから会つてくれないか。区長は、名も知らない外部の者には会わない、と言つてつたのであるが、強引に入つて來て、そのあとに数十名の外廓團体が押しかけている。そして今申しました廣島と同じような罵詈雑言と脅迫のもとに、新交番制の反対を迫つた。何ら車掌区に関係のない外部の者が、多数に押しかけてやつている。遂に階下に押しかけて、階上に上れば、階上にまで押しかけて來る。先般の取調べの結果わかりましたことは、その車掌区の組合が、新交番制を実施すると労働強化になるからと言つている。調べてみますと、これはまだ確定的なことは申し上げられませんけれども、大体政府当局なり、あるいは区長あたりの話を聞きますと、実働八時間の勤務時間には変更はない。從來の勤務時間より多少七、八分か九分くらいの延長になるかもしらぬが、休憩時間を縮めただけであると言つている。それを、取調べられた中島某という共産党員は、從來の八時間が十時間に延長された、從來二日しかとまらないものが、一週間も家に帰れぬ。こういう虚偽なことを言つて、組合の何も知らない者を煽動している。これは共産党の人々自身もそう言つている。ほんとうにそうであるならば、私はそれは氣の毒な労働強化になると思いまするけれども、決してそういうむりなことをしていないことは、私は調べでみれば明瞭になると思います。また國電ストの際に、立川駅で行われたところの組合の決議を見ますると——これは熱海の大会においても行われております。國鉄の立川の支部長がストに入るか入らないかという、ことを、組合の大会に諮つたところが、第一回に諮りましたときにも、まだ時期尚早であるからやるまいということを決定している。ところがまた追つて、大会をやれ。またやつたところが、やはり組合の者は、時期尚早であるからやるまいと言つている。ところがだんだんと急進分子が、今度はその支部長に脅迫的に迫りまして、遂に脅迫のあまり支部長は飛び去り、その留守に一部の者だけが集まつて、スト突入の決議をして、あの状態に入つております。かくのごとくこれらの一部の人々は、労働組合運動と言つておりまするけれども、その実は決して労働組合運動ではない。一つの政治的な組織にこれを使つて、自分たちの意図するところの人民民主政権の樹立を願つていると、私は断ぜざるを得ないと思います。これは春日君や土橋君あたりがいかに言葉たくみに言われても、あなた方自身の腹の中を出して見たならば、私は明瞭になると思います。そこで私はこれらの労働争議を装う幾多の事件に引続いて起りましたところのかの平事件こそは、これはまつたく労働問題でも何でもない。ただ一警察署が、目抜通りの道路に立看板を出したのでは交通を妨げるから、もつとわきの方に寄せたらと言つて、場所まで選定をしてあつせんをしている。それにもかかわらず、多数の者が警察署に押しかけて、そして警察署を占領している。赤旗を立てて、警察署はわれわれ赤旗によつて占領したと豪語している。こういうことが今日の法治國家において許されるはずはありません。かくのごとく六月の初めから七月にかけての短期間に、幾多かくのごとき暴力ざたが行われている。これをわれわれは、單なる自然発生的な事件と見るわけに行かないと思います。これらについては、賢明なる檢察当局においても想像されているところと思います。私は労働争議そのもの警察官が干與されることは、断じてお断りをいたします。争議そのものは、労働者と使用者とが対等の立場において、平和的に解決されるものであることは言をまちません。多数の組合は、そういう方法によつて解決ができるのでありますけれども、しかし一部の組合の中には、この憲法に保障したところの團結権及び国体交渉権を悪用いたしまして、先ほど申しました廣島の日鋼事件、あるいは千葉、その他神奈川において起りましたように、憲法で保障したと称する團体交渉権を利用いたしまして、暴行脅迫によつていろいろなことをいたしております。かくのごとき身体に危險を及ぼすような事件に対しては、警察官は勇敢にこれを守らなければ、國民はどうして安心して生活を営むことができるでありましよう。今朝來川崎君からも取上げられましたが、三鷹事件は、何人かの手によつた計画的の事故か、まだ判明しないから、私は言葉を避けたい。しかしながらすでに檢察当局では、飯田七三、山本久一の両名を容疑者として逮捕したと傳えられております。これらの相次ぐ事件につきましては、いろいろ警察機構について問題にされているようでありますが、問題は機構ではない。ほんとう警察官が、國民を一日も不安なからしめるといい熱意に燃えられるならば、私はこの問題を防止することができないことはないと思います。これらにつきまして國務大臣が御列席になつておりますので、いかなるお考えをお持ちでございましようか、御意見を承ることができれば仕合せと思います。
  85. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 今いろいろと事実について承つた次第でありますが、今日政府におきまして、治安の責をとらなければならないと思つております。絶つてその結果に対しても、十分な責をとつて行きたいと考えておりますが、今日における警察の制度につきましては、非常に遺憾とするところが、御承知のごとくあるのであります。これに対しても十分にわれわれは考なければならないと考えておりますし、われわれは民主的な明るい警察を考えておりますけれども、決して弱い警察を考えておりません。警察は時代の正義を考えて、強くなければならないと思つている次第であります。もとより從來ありましたような暗い警察を考えておりませんけれども、しかしながら力弱き警察官は、最終の目的に沿わないものであるということを考えておる次第であります。労働問題に対しては、私は非常な同情を持つておりますけれども、しかしながら、それはどこまでも経済闘争でなければならないということを考えております。一歩を出でて政治ストの方面に入りましたところの様相が現われました場合には、断じてこれを許すことはできないと思つております。かような次第でありまして、あるいは現在の警察制度が十分でないうらみはありましようけれども、しかしながら與えられたところの現在の制度においても、皆さんのおつしやるごとくに、今日の治安に最上を盡して、この不安なきを期しておるような次第であります。
  86. 吉武恵市

    ○吉武委員 そこで私はこれらの事件を通じて、先般考査委員会で取調べましたる途上において感づきましたことは、千葉線で共産党に属する中島某という人を取調べておりました際に、君たちは現在公共企業体労働関係法という法律があつて、ストライキはできないということになつているが、知つているか、というわが党の大橋君の質問に対して、われわれはそんな法律なんか知りません。こう言つておる。これは共産党のよく言う、知つてつて知らないと言つているのかもしれませんけれども、私は一千万の労働者の中には、まだまだほんとうに労働組合法なり、労働関係法律を知らない者が多いのじやないか。この知らないところの善良なる労働者を、一部の共産党の人々がおだてて、そうして憲法二十八條で労働者は團結権と團体交渉権を保障されている。何をやつてもいいのだ。私が先般の第五國会において質問をいたしましたときにも、あるところにおいて共産党に所属する弁護士が、法廷でこういうことを言つている。われわれは憲法に保障された團体交渉権があるから、人を殺したつて、火をつけたつてかまわないのだという言葉を現に吐いておる。知らない労働者は、ほんとうにそんなものが憲法に保障されておるかのような印象を受けるのであります。今回起りました幾多の事件につきましても、実際に手を下したところの人々は若い青年である。共産党に所属いたしましても、近ごろ入つたような若い者ばかりで、そのうしろに老獪なるところの共産党員が控えて、自分は手を下さない。そして若い者をおだてて、若い者にそういう行為をやらせる。そしてそれらの人たが幾多の犠牲になるのであります。われわれはこれらの人々に氣の毒でたまらない。これについては私は政府にも責任があると思います。從來私も政府関係におりまして、労働組合運動の指導をすると、共産党は一方的な組合運動をやる、君たちは御用組合をつくるんじやないかなどと言つて、文句を言われて、多少遠慮した氣味もないでもございません。しかしながら今日のような状態になりました以上は、私は政府は勇敢に労働教育に乗り出されるべきである。決して政府の御用組合をつくる必要はない。ただ健全に、そうしてまじめにこの組合運動を進行して行く、強力なる組合を育成しなければなりません。一部の人々の不法なる行動によつて日本の労働組合がつぶされてはたまるものではありません。そこで私は思い切つて、労働者に対して、労働組合というものはどんなものであるか、團体交渉というものはどうしてやるべきものであるかという点を、明瞭に示されたいと思うのでありまするが、これについて労働省当局の方はどういうお考えでございましようか、御意見を承りたいのであります。
  87. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 お答えいたします。公共企業体労働関係法につきましては、これの対象になりまする労働者は國有鉄道並びに專賣公社の労働者でありまして、その数六十万前後であります。從いましてあの法律が施行せられます以前に、特に予算をいただきまして、ポスターを刷る、あるいはこれらのリーフレットをつくる、あるいは解説書をつくる等によつて、宣傳をいたし、その徹底をはかつたのであります。しかも各駅区ごとにこれが徹底をはかり得るような処置を講じておりますので、從つて徹底をいたしておるものと考えておつたのでありますが、ただいま御指摘にありましたように、もし、いまだほんとうにそれを知らないというふうな事実がありますならば、われわれといたしましては、これが施行の徹底を一層期さなければならないと考えております。新しい改正労働組合法につきましては、いまだ施行後日浅いために、徹底は十分でないと考えるのであります。從つてわれわれといたしましては、目下の計画は、七月より十二月までをこれが施行徹底の期間といたしまして、個別に組合の指導をやる。これが組合員に対しまして、改正労働組合法の精神によつて、健全な、建設的な労働組合運動をやつてもらうように勧告をする、こういう計画を立てまして、すでに七月の初めから、その仕事を開始いたしておるのであります。これに対しましては、GHQ、並びに地方の民政部におきましても、強力なる指導と援助をしてくれることになつておるのでありまして、逐次これが徹底がはかり得るものと考えるのであります。しかしながらさような程度をもつてしても、いまだ不十分だとわれわれは考えます。すなわち今度の改正組合法の最も指標といたしました点は、組合員の自由を確保するため、大衆のためにその権利を擁護する。一部あるいは幹部の指導によつて、組合員大衆の自由が侵害せられ、あるいは支配せられることを防止することをもつて、その主要なる改正要点といたしておるのであります。從いましてわれわれの教育は、從來のように組合の指導者に対して教育すれば足りるという範囲を越しまして、一般大衆に対しまして、その教育の徹底をはかり、自覚を促して行かなければならぬのであります。近くこれが要綱と申しますか、この施行の趣旨の徹底方策、特に最近のように暴力の行使というものが頻発をいたしておる際におきましては、至急緊急にこの趣旨の徹底をはからなければならないと思うのでありまして、近い將來におきまして、政府全体のこれが方策に関しまする意思の決定をまち、要すればこれに要しまする予算ももらうことといたしまして、十分なる徹底方策を講じたいと考えておる次第であります。
  88. 吉武恵市

    ○吉武委員 はなはだ恐縮でございますけれども、もう一点政府当局にお尋ねいたしたいと思います。それは失業救済に関する問題でございます。労働大臣がお見えになりませんので、もしお答えができなければ、政府当局よりお傳えをいただきたいと思うのでありますが、私どもは今回のこれらの相次ぐ事件は、單なる労働争議、労働問題とは考えられない、それ以上の何ものかの計画的なものであると推察をしておるのでありますけれども、しかし何と申しましても、政府職員において約二十万以上の人々が整理されるということは、これらの人々の生活を考えましたときには、やはり氣の毒であり、また本人の家族等を考えると、これを放置するわけには参りません。政府としましては、さきに退職手当を御決定になつたようでありますけれども、退職手当ばかりでなしに、これらの就職につきましては、優先的なあつせんの方法ほんとうにおとりにならないと、私は日本の多数の國民が、決して共産党の言うがごとき思想に流れるとは断じて信じないのでありますけれども、やはりその日その日の生活が不安でありますと、つい彼らの甘言に乗るおそれがあるのでありますので、これらにつきましては、十分なる親切心をもつて私はお取扱いにならなければならぬと思います。また一般の民間企業につきましても、大体整理は終えたように思いますけれども、これらの人人につきましても、政府としては、はつきりと失業保險の制度をつくられている。私は先般の第五國会においても、この点について質問したのでありますけれども、昨年三十億からの予算をとつて、そして失業保險のりつぱな制度がつくられておりながら、実際に支出した金はわずか二億足らずである。終戰以來しばしば失業者が出る。失業者が出ると、そのつど四百万、あるいは六百万と叫ばれておるのであります。私も政府当局にいるときに、常にその推定の数字を叫んで來たものでありますけれども、実際に運用してみますると、失業保險に二十億からの予算を準備しておいても、わずか二億しか使わないという実情である。私は決して失業者がそれほど出ないとは申しません。けれどもそれだけの準備ができておる。今年度の予算におきましても、すでに二十億の予算が組まれておる。これに事業費から捻出するところの金と、労働者の負担金を合せますれば、六十億に上るし、また昨年來予備金として積み立てられたものも、数十億に上つておると聞いております。これらのりつぱな制度がある。これはなに失業保險かと言つておりますけれども、失業保險では、大体今までもらつてつた実收の賃金の約七三%は保障しておるのであります。七三%だけで私は生活がやれるとは申しませんけれども、今までの実收の賃金の七三%を保險金によつて保障しておるならば、それにつけ加えて何らかの手間仕事をすれば、私は暮して行くことができるのじやないかと思うのでありますが、これらについても、私は政府が單なる宣傳でなしに、もつと趣旨の徹底をはかられる必要があるのじやないか。それからまた失業救済事業につきましても、先般の予算は当面の問題として八億を計上されておりましたけれども、相次ぐこの不況のためには、失業者が相当出るであろうことは予想にかたくございませんので、もし今日とられている予算の範囲内、あるいはまた新聞等によつて聞きますると、いわゆる見返り資金の運用においても、相当にくめんの余地があるように聞いておりまするが、これらについて、政府は一体いかなるお見込みを持つておられるのでございましようか。もし御意見を承ることができるならば、はなはだ仕合せと思うと同時に、これらの対策につきましては、今日の日本の財政のことでありまするから、大げさなことはもちろんできないでありましようけれども、最小限度の安定を得るだけの処置國民に公表されまして、そうして一日も早く労働者に不安なからしめられんことを、私は希望する次第でございます。
  89. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 実は大臣が、ただいま御質問の失業対策、救済対策につきましてGHQに交渉に行つておりまして、もう間もなく來ると思つておりまするが、そのときに大臣からお答えいたしますか、それとも私からざつと……。では大臣が間もなく参ると思いますから、どうぞ。
  90. 土橋一吉

    ○土橋委員 私は共産党の國会議員として、昨日三浦委員、塚原委員の各一班、二班の御報告を聞き、さらにただいま吉武委員のいろいろな政府に対する御質問を承つたのでありまするが、ただいまの吉武委員の御質問に対する樋貝國務大臣の答弁の中に、政治ストライキについては絶対われわれは容赦しない、こういうような御発言があつたように考えておるのであります。本委員会においては、少くとも労働條件に関し、あるいは第五会特別國会を通じて政府の予算なり、あるいは労働行政に関し、少くとも労働委員はその労働状態がいかようになつておるか、労働協約がいかように運用せられておるか、さらに賃金の遅配、欠配等に対して、会社当局はいかような誠意を持つて交渉しているか、これに対して労働関係各担当官は、どういうような御処置を講ぜられ、特に労働基準法の規定に從いまして、各基準監督はいかようになつておるか、というような具体的な資料を調べ、しかも現政府行つておる労働行政なり、國家予算なり、あるいは失業対策なり、あるいは企業整備なり、あるいは定員法に基くところの行政整理に対して、いかように労働委員会は、國民の意思を代表して政府を鞭撻し、政府の行政を監督すべきかというような事案を、本委員会において取上ぐべきであるのにかかわらず、三浦君の報告にいたしましても、塚原君の報告にいたしましても、労働組合が人民裁判をしたとか、暴力行為をしたとか、特に吉武君の意見等におきましては、一党に対する攻撃を加えまして、あたかも労働組合が政治的な意図を持つて、非常な暴力行為をいたしておるというような、一部臆測と同時に、個個の現象に現われましたそういう事態をとらえて、本委員会はそのような事案を、國務大臣なり政府関係当局質問をすべき委員会ではなくして——それは別に持たれておりまする考査委員会、法務委員会等において十分意見を述べるのが至当である。かように考えておるのでありまするが、しかしながら発言をせられた内容でありまするから、私は樋貝國務大臣に対して、政治ストは断じて許さないということを、ただいまお答えになつておりまするが、それはどういう意味であるか、どういう内容をさして吉武委員質問に答えたものであるか、その内容をざらに明確に御答弁を願いたいと思うのであります。それに続いてただいま賀來政府委員は、なお暴力の頻発が最近非常に多いのであつて、それに対しては政府としては、相当予算を増額して何かしようという答弁をしたが、その暴力の頻発というのはどういうような考え方であるのか。ただいまの吉武委員のは、一党的な攻撃を加える意図をもつて、本委員会を利用しておるような発言が私には見受けられるのでありまするが、そういう意味ではなくして、現在起つているところの企業整備、あるいは定員法による行政整理から、どういうような摩擦が生じ、その結果労働條件が危殆に瀕しておるものもありましよう、また賃金関係においては、きわめて困難なる事情にあるものもあるのであります。そういうものについて、政府あるいは会社当局に対し、労働行政担当官はどういうような措置を講じて、この紛糾状態、あるいは係争状態について処理する熱意を持つておるか。こういう点について私は明確に御答弁を願いたいと思うのであります。さらにもう一点、ただいま吉武委員は意識的に、失業対策費用の八億八百八十八万円に加えるのに、失業保險費が約六十億、それに今年度政府が説明をいたしておりまする五十四億のものをさして、この程度の準備があるほかに、特に見返り資金特別会計から相当のものが出されておるではないか。従つて労働階級があらゆる鬪争をするということは、非常に不都合ではないか。政府はそこまで手を打つておるのであるから、かようなことを煽動するのは共産党員であろう、というような意味合いの御発言があつたように考えておるのでありまするが、政府がこれを強くしなければ、少くとも共産党員の甘言に惑わされて、いろいろな事態が発生するであろうから、政府処置いかんというような質問を、きわめて挑発的に吉武委員はやつておるのであります。こういうようなことはきわめて政治的でありますので、われわれは本委員会においても十分失業対策が完備せられまして——特に政府が第五國会において、四十有余万にわたる失業者は、産業再開、特に外國貿易を中心としてわれわれは準備をし、適宜適切な措置を打つて、不十分とは思うけれども、必ずや労働階級の御期待に沿い、失業に対する不安は除去せらるる旨を本委員会、この部屋においても屡次説明しているのであるが、そういうものを眞劍に私はお聞きしたい。  以上三点まずとりあえず御答弁を願つて、私は逐次人民電車、新交番制の問題、あるいは日鋼の問題、わかもとの問題、東交の問題、さらに三鷹の問題、本日起つております六・三電車の急遽動いたというような問題についても、政府の所信を聞きたいと思います。
  91. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 お答えします。私がただいま吉武委員の御質問に対してお答えいましたのは、私はもし政治ストライキのような相貌を現わすならば、という仮設のもとに述べました決意であります。ただいまの御質問では、私が現在のあのストライキをもつて、ただちに政治ストライキと認定したような御趣旨でありましたけれども、ただいま申し上げましたように、経済ストライキでなしに、政治ストライキが起きたような場合においては——ども警察が出るということは最後でなければならぬ。経済上の問題である場合においては、警察は出たくないつもりでありますけれども、しかしそれを越えて違法が行われる、実力行使が行われているというようなことになりますれば、もはや警察においても默つていることはできないのであります。そのことを申し上げた次第であります。また吉武委員の御趣旨から考えましても、政治ストライキという言葉は使わなかつたに違いありませんが、御趣旨から考えて、そのことは明らかにくめると御答弁申し上げた次第であります。
  92. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 お答えいたしますが、私が暴力の行使が頻発しておると申しましたのは、改正労働組合法がこの前の議会へかけられましたときに、この暴力の行使とは一体いかなることかということが非常に問題になりまして、検察当局の御解釈があつたのでありますが、この御解釈に從いますと、最近各地の労働組合の團体交渉その他において行われております状況は、やはり組合法弟一條第二項の暴力の行使と解せらるべき筋合いの事件が頻発しておることを承知いたしておりますので、この点を申し上げたのであります。これに関連いたしまして、趣旨の普及をはかりたいと申しましたことは、暴力の行使はいかなる意味においても正当でないということはもちろん、一般労働大衆の自由を守るべきである、みずからその責任を守るべきであるという、今度の改正労働組合法の趣旨の徹底をはかるために、所要の予算を要求いたしたいということを申し上げた次第であります。
  93. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいま樋貝國務大臣は、政治的なさような状態のストライキが起つた場合には、そういう仮定のもとには、それは断固として政治ストライキと認定してやるであろうという御説明のように承つたのでありますが、ただたいまの吉武委員のあなたに対する、國家全般の立場から、いかようにそのような事態が起つた場合にやるかという質問に対して、あなたは政治ストライキということを確かに仰せになつたようであります。從いまして私は、吉武委員がそのようなことを仰せになつたかどうか、記憶はないのでありますが、吉武委員の御趣旨の少くとも全般的なものを御研究にならないで、一種感情的にいろいろ御説明になつたのでありますが、そのものについて答えるのに、政治ストライキは断固として処置をする、こういう御答弁は、打てばこたえるという観念をわれわれに與えるのであります。從いまして政治ストライキは断固たる処置をとるという、その政治ストライキの内容と、吉武委員の御質問との関連性につて、私は疑問を持つておるのであります。その点を明確に——吉武委員の今の質問内容項とは別に、そのような政治的な意図のみを目的とする場合においては、労働組合としては相当考えなければならぬという意味であるか、吉武君の質問に答えて、そのようなものは政治ストと思われるからして、私は断固たる処分をとるという答えであるのであるか、そういう点を明確にこの委員会でしていただきたい。  次は賀來君のただいまの内容でありまするが、暴力行為というのはどういう意味をさしておるのか、少くとも新労働組合法の規定においても、刑法第三十五條の規定を明確に了知せられておるのでありますから、そういう規定の関連性について、第一條第二項の規定が、三十五條の規定を適用しておる点から、簡單でよろしい、だれでもわかるように明確に説明していただきたいと思うのであります。賃金の遅拂い等の状況において行われておりまする團体交渉について、るる私も申し上げたいと思うが、その場合の一こまだけを見て、それが脅迫行為であるとか、監禁行為であるとか、そのような事案を取上げて、賀来説明員が御説明になつておるとすれば、それは非常な問題でありまするので、そういう点を重ねて御質問申し上げて本論に入りたいと思います。
  94. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 私のお話申し上げたことに疑問があるならば、吉武委員から重ねて御質問があつたはずであります。当時において默つておられたので、むろんそういう点に御疑問がなかつたことと考えております。
  95. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 私が申し上げましたのは、第一條第二項の但書におきまして、暴力行使とはというときの解釈の説明におきましては、たとえばストの自由というものはこれは阻害されてはならない、こういう解釈がし得られておるのであります。團体交渉を行うにつきましては、双方がお互いにその自由を尊重し、その意思を尊重いたしまして、合理的に行わるべきである。にもかかわりませず、一方的にこれの自由を阻害するがごときことがあつてはならない、かような意味を申し上げた次第であります。
  96. 土橋一吉

    ○土橋委員 大体第一の樋貝國務大臣の御答弁は、吉武君からさらに重ねて質問がないから、吉武君の御説明あるいは御質問にあつたような事項については、これは政治ストライキであるとあなたは考えてお答えになつたのかどうかという点を私はお聞きしたいのでありますから、その点だけでよろしい、もう一回御答弁願いたいと思うのであります。
  97. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 私はただいま申し上げた通り、吉武委員の御質問答弁しただけのことで、側面からの御質問に対してはお答えしたのではないから、從つて今の御質問から、ひいていろいろな御質問がありましたけれども、私の考えておつたこととは違いますから、お答えできないと申し上げます。
  98. 土橋一吉

    ○土橋委員 お答えできないということでありますから、しいて私は問いません。私は第一番に労働省関係にお聞きしたいのでありますが、このたびの六月十日に起りました國電のストライキの問題は、これは二つに分類しなければならぬと思うのであります。第一番は新交番制によるところの労働過重の点と、さらに將來政府予定せられておりまするところの人員整理に関係する問題であります。この問題は、少くとも私が東神奈川の例をとりまするならば、先ほどいろいろ御報告もあつたのでありまするが、平均通勤時間等を考えまして、遠距離から通勤しておる者も、相当鉄道の諸君にはおられるのであります。またこの車掌区においては、御承知のように二時間以内で來るというような関係の人も相当多数おられるのであります。また当時の状況を考えて参りまするならば、宿舎等におきましても狭隘な宿舎で、雨漏りもひどいし、さらに薪炭その他寝具等の設備が非常に不十分であつたという事実も聞いておるのであります。たとえば五十人程度寝るのに、ふとんは七十一枚しかないというような状況で、雨が降れば寝るところがないというような状況も聞いておるのであります。特に夏季を控えまして、相当数宿泊をすれば、当然炊事その他の設備が十分でなければならぬのでありますが、こういうものについても、少くとも五月の二十八、九日ごろ、その問題について相当電車車掌区の区長と組合は交渉されておるのでありまするが、そういう問題はほとんど考えられないでおるのであります。特に先ほどの御説明によると、時間としてはそんなに延長にならない、こういう理由でありますが、四百名近くのうちで、少くとも五十名以上の整理を見込んだこの新交番制というものは、実際に運轉をする表をつくつて参りますと、これは私はしろうとでよくわかりませんが、ここに國鉄の労働者諸君から表が來ておるのでありまして、この表の赤いしるしがあいておる時間であります。どのように表を繰りましても、現在の人員数をもつてしては、一週間のうちには必ず帰れるが、遠くの人は帰れないという事態があるのであります。その新交番制に関するところの通告は、五月三十日に発せられておるのであります。從いまして組合側といたしましては六月の五日まで待つてくれ、そうすれば何とか処置を講じたいと思うが、といつたような話合いがあつたのでありまするが、遺憾ながら車掌区の区長さんが十分なる御了解を得ないで、双方の間に相当紛糾状態が生じ、そうして新交番制につきましては同東神奈川の問題といわず、これは千葉方面においても、あるいは三鷹電車区その他においても、特に乗務者にとつては労働條件に関する問題でありますので、きわめて重大だ。從つてこの新交番制の問題が、労働協約の問題として、公共企業体労働関係法規の命ずるところの、團体交渉の中心的なものとして取上げてよろしいのか、それは團体交渉の対象とならぬかという点が、まず國鉄の問題といたしましては重大な論点だと思いますが、こういう点について現在労働省は労務過重を認めないのか、それとも何らこれによつて人員整理ということを予定していない、純然たる服務に関する問題だと言えるのかどうか、あるいはこれは團体交渉の対象になり得ると認めるのかどうか、こういう点をまずお聞きして、次に移りたいと思います。
  99. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 お答えいたします。神奈川事件の新交番制の問題につきましては、われわれは次のように考えておるのであります。すなわちあの新交番制と申しますものは、一月の終りに國鉄労働組合と運輸省との間におきまして、團体交渉によつて定められましたところの、新しい勤務時間規程に基きまする勤務に関しまする業務命令、これを新交番制と称しておると承知いたしておるのであります。従いまして新勤務時間規程に関しますることは、これは労働條件に関することでありまして、團体交渉の対象になり得まするし、またすべきものと考えております。しかしながら一應これが組合と使用者との間に妥結をいたしまして、実施するということがきまりまして、それに基いて発した業務命令の問題は、これは公共企業体労働関係法においては、管理運営に属する事項でありまして、團体交渉の対象にならないものと、かように考えておるのであります。
  100. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいまのあなたの御報告は、私は非常に不十分な内容を持つておると思うのであります。これは組合側の主張も十分聞いていただきたい。組合側では、現在の東神奈川の車掌区においては、この新交番制を採用することによりまして、今申し上げておりまするような諸般の條件から考えまして、これは短時間のうちには困難で、先日の考査委員会におきましても、明瞭に山田東京鉄道局業務部長が、三日程度はどうしてもかかるであろうということを、官側の諸君ですらこれを証明しておるのであります。しかるにかかわらず、業務命令を発しましたのは五月三十日であります。從いまして六月一日からこれを実施することは、官側のきようの証言によりましても、明瞭に言えるのであります。これを強行したということは、区長はもちろん管理部長と交渉いたしまして、管理部長は明らかにこのような証言をしておるのであります。いや、それは区長の方で、新交番制によつてただいま東神奈川は服務をいたしておりまするから、という報告があるので、君らが來てとやかく言わなくても、そういう内容になつておるのだから、それは君の方でもしかるべくやつてくれたらいいじやないか、こういうふうに管理部長は明確に交渉に應じておるのであります。このしかるべくやつたらいいじやないかということは、もちろん当時の各電車区、車掌区におきましては、相当困難性を伴つておるのであります。実際はこういうことをこの席上において申し上げることはどうかと思うのでありますが、実際労働関係に携わつたわれわれの過去の経驗からいたしましても、これでは正面衝突を生せざるを得ない。そこで中間に立つておる区長とかそういう責任者が、一應上部の方へは正式に行つておりまするという報告をしておるけれども、その事態が円満に解決するまでには、若干の時間を置いて調節をはかるというようなことは、世間に例のないことじやないのであります。從いましてこの間に区長の適宜な処置がないかというような事態も考えられるのでありまして、これは当時他の機関におきましてもそのような事案があつて、それを十分組合側は承知の上で区長にも交渉し、管理部長にも交渉いたしておつたのでありますが、遺憾ながらこの問題が十分な結論を得なくて、そうして今私が申し上げるように、区長の方から新交番制によつて一日からやつておるというような報告が來ておるのだから、君らの方は区長とそういうことを相談して、十分了解してしかるべく善処してもらいたい、というような重大な言質を與えておるのであります。この件が十分に了解を得られなかつたので、六月九日十七時からストに入つたというような状況でありますが、こういう内容について、私があなたに御質問申し上げる点は、一体この問題が労働強化になることはきわめて明白であります。と同時に労働條件に関する問題でありますから、少くとも管理部長なり、あるいは東京鉄道局長なりに対しましては、当然平穏裡に解決し、双方の誠意ある態度を披瀝すべきものである。かように考えておるが、労働省はいかなる見解を持つておるか承りたいのであります。この問題については端的に私が申し上げるように、事実の問題としては双方困難な問題もあるけれども、現実にはこういう事情を過去において経験しております。また現在国鉄が、特に東神奈川車掌区がかような状態にあるということを、あなたは認めるのか認めないのか、こういう点について御質問しておるのであります。
  101. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 お答えいたします。先ほど私から申し上げましたように、新勤務時間規程と申しますものは、これは労働條件に関する規定でありまして、労資双方が一應一月の終りに妥結をしておる問題であります。この実施に伴いまして、一般論としてはこれが妥結になつておりましても、個々の場合に適用するときには、またいろいろ問題があり得ると思うのであります。これも新勤務時間規程に関連いたしましての労働條件について、あるいはそれについての苦情その他につきまして、苦情処理あるいは團体交渉をやることはさしつかえない、かように思つておる次第であります。
  102. 土橋一吉

    ○土橋委員 大体私が考えておるような方向の御答弁であつたと思いますので、この点は一應さておきまして、この問題は労働條件を中心とする問題である、同時に国体交渉の中核になるかどうかという問題が、中心になるという点が、本委員会において明確にせられなければならぬのであります。從つて私は第二点といたしまして、人民電車のことについて檢察当局に御質問申し上げるのでありますが、檢察当局におかれましては、ちようど六月九日十八時三十分、トラック四台で警官三百名を動員しておるのであります。これは当時の團体交渉の過程をいかようにごらんくださつて、この警官諸君を派遣せられたかという当時の状況について、明確に御答弁願いたいと思うのであります。
  103. 溝淵増己

    溝淵説明員 当日の檢挙の状況につきましては、詳しく承知いたしておりませんが、ただ檢挙するのについて、相当警察官が動員されたということは聞いております。当時の檢挙について、相当警察官がいるということは想像ができるのですが、これが團体交渉とどういう関連があるかということは、われわれ承知いたしません。
  104. 土橋一吉

    ○土橋委員 これは遺憾ながら溝淵さん御承知ないのである。何もこの点は檢挙の問題ではなかつた。このときは團体交渉をしておつたのでありますが、どうしても区長が聞かない。この当時すでに東達甲五八三号だつだと記憶しておりますが、東達甲という永久的命令が出ておつたのであります。これは私の調査によりますと、当時労働組合はすでに九日の日にストライキに入つた、このような現象は労働組合としてはよくないというので、支部鬪争委員会の諸君が決議をいたしまして、神奈川の車掌区、電車区の分会鬪争委員会に対して、涙を振つてストライキをとめなければいかぬ、そうして乗車をしなければならぬという決議をした当時の、きわめて悲壮なるこれは時刻だつたのであります。当時警官諸君が四台の自動車で約二百名で神奈川の車掌区を包囲したのでありますが、この問題について組合側では決してそのようなことはないから、あなた方はお帰りを願いたいということで、この報告を見ると、警官諸君の多数の方が雨中に全部お帰りになつたということが書いてあるが、どういう必要をもつてここへ持つて來たかということを聞いております。このときには檢束の問題ではないのであります。六月の九日の十八時三十分であります。これをあなた方は、東神奈川電車区へどういう理由で発送したか。これは今申し上げるように、支部闘争委員会が、大乗的見地からストに入るべきではないというので、分会の鬪争委員会に涙を振つて忠告しておるのが、当時の状況であります。このときすでに鉄道当局は、永久的な命令である東達甲、管内において東達甲が出れば、永久的な性質を持つた業務命令であります。第五八三号によりますと、電車を動かしてはならぬ。乗務してはならぬと、こういう命令であります。この命令が出たが、あなたの方はどういう関係で警官をお出しになつたか。この点について私はお聞きしたいのであります。
  105. 溝淵増己

    溝淵説明員 ただいまの御質問につきましては、おそらく何らの事故がなかつたために、報告がなかつたと存じますが、全然私どもも聞いておりません。
  106. 土橋一吉

    ○土橋委員 それならば、さて問題の人民電車に入りたいと思うのでありますが、さような東達甲第五八三号が発せられまして、組合員はひとまず新交番制であろうと、旧交番制であろうと乗りまして、爾後團体交渉をいたしましようということで、乗りたいということを話したときに、ここにも報告書がありますが、こういうことになつておるのであります。この報告書を簡單に読み上げますと、電車区は六月十日三時半、区長並びに吉野助役に「一仕業より乗務する」ことを申し入れ、大いに喜んだ区長が、さつそく管理部へ通告したが、拒否されてしまつた。車掌区においては——このとき時間が書いてございません。——当面助役の遠藤氏に始発より乗車することを申し出たのである。ところがこれより前、一時三十七分に、管理部運轉司令より遠藤助役にあてて、電話にて「東神奈川電車区車掌区の乗務はさせてならない」と通告があり、さらに一時四十七分再度電話をもつて、「本日の軍臨にも乗車させなくてもよろしい。」——この軍臨というのは進駐軍の臨時列車のことを言つております。——「あわせてきようから、乗らなくてもよろしい」と通告があつたので、それを助役としてはどうすることもできなかつた。という報告も來ておるのでありますが、こういう情勢のさなか、その前後において警官が発動されたということは——今私が申し上げるように、こういう当時において人民電車が出て來たのであります。そういう当時の状況、今あなたの方で正確な資料をお持ちがなくて、御答弁がなければ、御答弁を要しませんが、私は当時のこういう状況におきましては組合の諸君といたしましては、もう交番制の問題はどちらでもよろしい。乗つた上で解決しよう。ここにも責任ある組合の調査した資料があります。これは共産党ではありませんから、安心してお聞きください。あなた方が共産党という懸念を持つてお聞きくださると、私の方では非常に困ります。これは國鉄労働組合の調査部でつくつた資料でございますので、決して共産党がつくつたというものではないのでありますから……。さてこのような状態で、第一回の人民電車が出る、当時の模様は雨が降つたそうであります。從つて東神奈川の勤め人の方々がどうしても帰れない。もう時間が非常に切迫しておる。当時は二十一時二十五分であります。二十一時は約九時ごろでありましよう。最終電車に近いまぎわであつたのであります。この当時に國鉄労組では、運轉させてくれない、新交番制を実施しようという当時であつて、組合大衆なりその他の諸君が当時いろいろ相談をして見たところが、ここにも書いてありますが、「かくのごとき鉄壁の陣に警官たちはなすことあたわず、無言のまま引上げて行かなければならなかつたという状況において、このストに対する市民の関心は高まり、二十時、東神奈川駅前は黒山の人出となり、首相を発表しろという声によつて、はからずも乗客大会ということになつた。組合側の事情説明、質問回答、大討論の末、よしわかつた、ストライキは支持するぞという端的な結論が、万雷のごとき拍手に迎えられた。そうしてそのとき一人の乗客がすつくりと立ち上つて争議は明日、明後日でもやつてくれ。しかし今日はこの人々を起り帰すための電車を一台動してくれ、そうして明日も明後日もみんなの頼むときには出してくれ、そのかわり資金カンパでお礼はするぞと掛声をかけた。これもまた万雷のごとき拍手をもつて迎えられたのであります。カンパはただちに開始され、たちまち二百九十円という金が集まつた。かねて工代会議よりも、また交番のラツシユ運轉については特に要求はあつたが、乗客大会の代表と改めて、工代会議要請により、二十一時二十五分及び二十三時の横浜電車は、組合員と乗客の歓呼のうちに出発したのである。」こういう記事が組合側から報道されておるのであります。縫いましてこの事案については吉武委員もいろいろ御報告になつたのでありますが、この是非の弁別は別といたしまして、当時の労働者諸君の心情というものは、どうしても電車を動かす、通勤着の利益のために利用せられるという大本質を考えた場合に、もちろん当局ではこれは業務命令違反ということもありましようが、雨が降つて大衆が帰れない、また自分の宿にも帰れないというような状況において、電車を動かしてはならぬ。という東達甲第五八三号というものの性質が、どういうものであつたか、これがもし労働争議に対する当局の対抗手段として考えられたものならば、これは双方の労働争議状態における対抗條件である。この対抗條件に対して、人民電車を出したということは、またおのずから観点が別であろうと思いますが、これについて、労働大臣はどういうふうに考えておるか。労働省所管の方々はこれに対してどういう見解を持つておられるか。そうして労働争議における双方の対抗的な争議行為の手段として、東達甲第五八三号を出す。片方では人民大衆諸君の利益のために、かれらの生活を擁護するために、その機能の本質に從つてこれを運用したという場合におけるその功罪について、説明していただきたいと思います。
  107. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 お答えいたしまするいかなる理由をもつていたしましても、正常なる業務の運営に従わずして、これに違反して行動することは、正常なる行為とは認められないのであります。さらにわれわれとして申しますならば、もともと全体の運行をとめるようなことがなかつたならば、人民の方方は不便なことがなかつたと、かように考えるのであります。
  108. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際樋貝國務大臣が時間の都合がございますので、樋貝國務大臣に対する質疑を先にいたしたいと思います。川崎秀二君。
  109. 川崎秀二

    川崎委員 先ほど労働事情の問題から関連しまして、吉武委員から、治安問題に対する構想を樋貝國務大臣にただされた際に、結論として國務大臣が申されたことは、先ほど共産党の方からも御質問があつたように、政治ストの問題、いま一つは今後の警察はいま少しく力強き存在にならなければならぬ。弱いものであつてはならぬということでございます。この内容は一体私はどういうものであるかしりません。     〔委員長退席、三浦委員長代理着席〕 その内容について承る前に、大体終戰後わが國は民主的な警察を持たなければならぬということで、自治体警察あるいは國家警察という制度が行われまして、この制度の運用についてよろしきを得れば、警察力というものは十分に私は発揮できると思うのであります。しかるに先ほどのお言葉の中に、相当警察制度の改善という言葉が使われ、また警察制度そのものの本質の中に——今日の新警察法による警察制度そのものの中に、何らか矛盾があるような御答弁がありました。私振り返つてみますると、先般來吉田総理大臣がしばしば警察力の増強ということを提唱されております。今の警察力では足りない、從つて警察力を充実すると同時に、縦横の連絡をいま少しく緊密化するために、警察制度の運用だけではなしに、制度そのものについても、改革すべきものがあるということを言われた。このことは今後の日本の行手に際しまして、諸外國から多くの批判を受けておるのであります。もちろんわれわれといえども警察力が力弱いものであつてはならないということを、痛切に感ずるものではありますけれども、そのことが、つまり警察の力を増す、数を増すということの、要求となり、そのことが諸外國における非常な関心の的となる。むしろ日本のいわゆる戰前の警察制度に対するところの復帰であるとか、あるいは特高警察の再現であるとかいうような観測を諸外國に招くことは、民主國家としてはなはだしく遺憾のように私は存ずるのであります。それらの点に関連をいたしまして、先ほど申されたいわゆる警察制度の改善、あるいは力強き警察力にするということの具体的な構想を、どういう点に持つておられるか、明快なる御答弁を伺いたいと思うのであります。
  110. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 今の川崎委員の御質問にお答えいたします。私の申し上げたことは、どこまでも、あなたのおつしやつたようなぐあいに、この警察が民主的でなければならぬ、このことを考えておりますので、たとえば今日公安委員が中に入つて、そしてわれわれの民意のあるところを反映してくれる、こういうことは確かに民主的であると思います。また現在の警察が民主的になつたということも、お認めであろうと思いますけれども、しかしながら一方において警察は最後に出るものであつて從つて力弱いものであつては困る、これもお認めくださると思います。私どもはその明るさということと、その力強いという二つをぜひ要求したい、言いかえれば、われわれ國民の意思によつて動くところの警察であつてほしいということを望む、と同時に、警察がややもすれば弱いものであつては困ると考える。例をあげて申しますれば、政府においても自治体警察の監督につきましては、まず第一線には容喙することはできないというような現行法になつておりますが、こういう点についてもある程度勧告、少くともアドバイスできるというような状態にならなければ、今日のような状態では困る、ばらばらになつては困るというようなおそれがあることは、実であろうと思います。一つだけでありますけれども、これらの点を御了解になれば、ここによほどわれわれがこの警察について考えなければならぬことが、ひそんでおると思うのであります。今申し上げましたような線に沿つて警察を順次ではあろうとも、今日の不安状態に感ずるように、十分に改善すべきものがあるならば、その点から手をつけたいということを考えておりますので、その点につきましては何人もまず異論がなかろうというふうに考えておる次第であります。それで私どもは、できるならば警察力によらないところの現象の現われ方が、一番理想でありますけれども、非合法もやむを得ないような手段に出まするならば、こちらは合法であるけれども、力をもつて臨むのもしかたがないというようなことを、考えておる次第であります。今の全体の御趣旨については異論はありませんけれども、しかし今申し上げましたような具体的な事情であります。
  111. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの御答弁は、筋としては一應承りまするけれども、きわめて抽象的でありまして、先ほど制度の改善というようなことを言われたごとについての御答弁には、ならぬと私は思うのであります。そこで今ただ一つ言われたことに、地方自治体警察が非常に力が弱いというような場合に対して、政府は勧告権を持ちたいということは、どういう政府の勧告権であるのか、地方自治体の警察力が弱ければ、地方の公安委員会はこれに対して責任を持ち、勧告をすべきものだと思う。その結果がどういう形になつて現われて参りまするかは別にいたしまして、終局的には、國政を審議している國会において十分な討議がなされ、そのことによつて解決を見て行くのが筋道と私は思うのであります。地方の自治体に政府が勧告権を持つというのはどういうことであろうか、この点を伺つておきたいと思います。それからたとえば制度の改善とか、あるいは警察関係の職員の増強ということが言われておりますが、そういうことは單なる構想であつて、今日政府としては考えておらぬ問題であるかどうか。あるいはまた装備の改善というようなこともときどき新聞紙上には載つておりまするけれども、そういうものについて政府は今日どういうお考えを持つているのか。この二点を伺つておきたいと思うのであります。
  112. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 先日の新聞には、ちようど総理が語つたごとくに出ましたのですが、人数もふやしたいということを言つてつたように思うのです。その翌日も総理に聞きましたけれども、そういう話をしたことはないということを申しておりました。私もそうだろうと思つております。從つて現在におきましては、いろいろの方面から研究しておりますけれども、人を増すというようなことを、今日において決定したことは全然ありません。それから地方自治体警察の弱いのに対して、勧告はしないものといたしましても、せめて先ほど具体的の例をあげましたごとくに、たとい悪いことを発見いたしましても、公安委員にアドバイスするだけも、遠慮がちな現在の状態であります、直接に勧告くらいはできるようにしたいという考えでおります。具体的に申せばそんなようなわけで、そういうこまかい事案がたくさんあります。今日のいろいろな請願にしても、自治体自体におきまして、財政が苦痛であるというような報告もあります。また装備の点につきましても同様ですが、人数が同じでも、十分科学的な捜査、科学的の施設、たとえば自動車のごときもそうですが、同じ数でありましても、十分な自動車を持つておれば、十分に働きができましよう。ただ人数だけ増すということが警察力の充実にはなりませんから、少くとも今日許されたる、與えられている部分については、すなわち自動車も新しいものを持つ、それから許されているところの機械にしましても、科学的なものを得たい、こういうことを考えております。
  113. 川崎秀二

    川崎委員 今の御答弁で非常に政府の持つておる考え方の一端が現われて参りましたが、それが実は私が次に質問せんとすることに関連を持つのであります。つまり地方の自治体の警察のごときものに対しての力を非常に増強しなければならぬ。あるいはまたそれに対しては、地方の公僕委員会があるけれども、一つの悪があつても、これを勧告するだけの力がないということは、つまりは地方の公安委員の人選の問題にも関連して來るので、今日の法律のわく内においては、やはり主体的には公安委員というものが勧告をして行くべきであるという建前は、私はくずしてはならないと思う。そういうことをやろうとするならば、やはり法律をもつて改正しなければならぬ。しかるに先ごろ斎藤国警長官の更迭問題等に現われた政府の考え方というものは、警察がとにかく非常に弱体である。どういう観点からかはしりませんけれども、いま少しく労働争議その他に現われたところの暴力的な行動、あるいは政治的な行動に対して、強く出るべきだという認識のもとに、ああいうことになつたかどうか、私は事実は知りませんけれども、しかしながらそういう思想の片鱗があるものでありますから、國警長官の更迭問題も出て来たものだと私は今解釈しておるのであります。そこで一体先般の國警長官の更迭問題は、一應政治的な解決で、政府は更迭は断念いたしたようであるが、この問題について今日委員会において発言をし、痛いところにさわられることは、政府としても困るので、あるいは質問のお答えとしては、今日は非常にうまく行つておるのだということの御答弁しか得られないかもしれませんけれども、一体あの事件というものは、これほど労働不安が高まり、それに対して、とにかく警察力を信頼の置ける警察にしなければならぬということの要請が、非常に高まつて来たときにおいて、ああいう事件が突発いたしたということは、少くも治安確保の上において、私は非常な障害になつたと思う。それは結論的に申せば、第一には政府の威信を相当傷つけたことにもなる、あるいはまた裏返しをして見るならば、政府から干渉されざるところの国家警察の人事、その他について、一党一派の專断を許さぬということの意味合いにおいては、国家警察の面目というものが保たれたという解釈も成り立ちましようが、一体今後齋藤國警長官というものを、國家警察の長官として、政府が十分に協力して、しかも幾多の問題を解決して行く自信があるものなりやいなや、あるいはまたこの過程において、一部にこの際人事を更迭して、増田官房長官その他の人と親しい人を持つて來るということの策謀が行われたのではないか、こういうことも言われておるけれども、それらに関して治安責任に任じておる國務大臣としては、今後国警本部と十分密接な連絡のもとに、事態を収拾し得る自信があるかどうか、ひとつそれらの経過についてこの際御説明を願いたいと思うのであります。
  114. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 斎藤君は、ちようど私の選出区の知事をやつてつた関係で、元から齋藤君とは親しかつたような事情がありまして、從つて個人的に私が何も申すわけではないのでありますけれども、ただこの際内閣といたしましては、治安ということに対して責任をどうしても持たなければならぬ。そこで現在の制度がいいか悪いかということについて、檢討を加えなければならぬ段階に達しております。從つて内閣といたしまして治安責任を持つ以上は、互いに密接な関係をとらなければならないと思います。そうしなければ警察行政もできないと思います。たとえば経済上の諸般の施設というものにつきまして、行政整理をやる場合においても、その整理をされた人間がどういうふうに経済上取扱われるかということなども多分に関係しますし、今日租税が非常に高いといわれておりますけれども、それについても、内閣がどういうことを考えておるかということを十分に知らなければ、警察行政ができない。こういうありさまでありますので、内閣の方と、言いかえれば私の方と密接にお互いに関連して、この行政を進めて行きたい、そうして適当な警察の行政にしたい、こういうことを考えておりますようなわけで、もとより法務方面とも警察関係を持ちますけれども、法務にいたしましても、そういつたような事情政府と関連するところが非常に多い。そういう関連から現行法について——これはデリケートな問題でしようけれども政府が考えておること、あるいは國警方面において考えておること、その間を調和したいという考えでおりますわけで、その手続においては遺憾なところがあつたかもしれませんけれども、しかしながら趣旨はそれです。從つて警察法の解釈はどちらでもかまわないというのが、当局の考え方の根本でありました。從つて根本においては、私ども今日におきましても、別に誤つたことはない、こういう考えでおります。枝葉末節のことにつきましては、あるいは今申したような事情からいたしまして、御不満の点があるかもしれませんが、その点は御了承を願いたいと思います。
  115. 川崎秀二

    川崎委員 一言だけ伺つておきますが、ああいう一時の政治的解決法でなしに、社会不安、労働不安というものが今日非常に高まつて來ておる。しかもその際における更迭ということは、きわめて不謹愼じやないかということがいわれておるのですが、そういうことはどういう解決方法になつたのですか。
  116. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 密接な連絡のもとに事務を進めておるというだけで、あれをかれこれ申そうというような考えはありません。從つてただいまにおきましては、ことに警察を担任しております私との連絡は密でありまして、その問題にあちらでも触れず、こちらでも触れず、不問に付しておる次第であります。
  117. 川崎秀二

    川崎委員 最後に樋貝國務大臣にぜひお伺いをいたしておきたいことは、ひとり労働問題で生起するところの暴力的な行動だけでなしに、町にはかなりそういうものと違つた暴力的な行動というものが、盛り場であるとか、あるいは駅の周辺であるとかいう所で起つておる。地方へ参りますると、特にその行動が、最近は潜在失業者の激増によつてふえております。浮浪者あるいはごろつき、そういう救いようのない失業者がふえておつて、そのことのために、かなり地方においては部分的な不安が私は起つておると思う。これは思想性のない暴力的な行動ではあるけれども、かつての右翼の暴力團とは違つた意味で、チンピラといわれるのでありますが、非常に局部的な暴行行つておる。それが最近においてはだんだん社会不安、あるいは労働不安というものと符節を合せまして、あるいは便乗をして、いろいろな形で出て來ておる。これを取締らないと、われわれは日中あるいは晩等において、一人歩きができないような状態が起つておるのではないかというように考えるのです。一体こういうものに対する取締りは、もつと徹底的にやつていただきたいと思うけれども、どういうふうにお考えになつておるか。
  118. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 最近におきましての統計を見ましても、そういう方面が幾らかふえて統計の上にも現われておるので、その点について考慮をめぐらしておりますが、御承知の通り今日のような状態ですと、ややもすると政治不安の方にたくさん人をとられますので、從つてただいまのようなことを考えておるけれども、さしあたりの急のために、その方へ手がまわらぬというような事情もあつたかと思います。地方においてはそういうことだつたと思いますが、しかしその方面にも十分手をまわさなければいけないということを感じておりますような次第です。それでけさほどの長期統計にもそれが現われて來ましたが、その方にも注意するということになつておりますようなわけで、從つて警察力全般が今日やや弛緩しておる面もありまするから、それらも十分督励いたしまして、御趣旨に沿つて行きたいと思つております。
  119. 川崎秀二

    川崎委員 樋貝國務大臣への質問はそれで終ります。労働大臣への質問を留保いたしておきます。
  120. 前田種男

    前田(種)委員 樋貝さんにお聞きしますが、先ほどからいろいろ質問のあつた中に、たとえばわかもとの件に対する檢挙のために、五百、七百という警察官が、翌日の八時半、あるいは九時過ぎに行つておるのです。その他廣島の問題にいたしましても、あるいは茨城の高萩炭鉱の問題にいたしましても、あるいは三菱の廣田事件にいたしましても、いろいろな問題を取上げてみますと、いろいろ双方から問題を起しております。私実際に行つて調査をしておりますが、わかもとのごときは、十八日の晩から翌朝まで事務所全体に從業員が行つて、夜通し交渉をしておるのです。しかも晩の九時ごろ、署長と数名の者が来て現場を見ておりながら、そのまま帰つて、翌日の朝もう何もなくして講堂に引上げてしまつたあと、何百人という警察官を動員して、二十七名というものを檢挙しておる。こうした措置がどうも適切に講ぜられていない。先ほどもいろいろ言われておりますところの事情が、実際事実でありますならば、國民はいろいろな観点から不安を感じておると私は考えます。もつと適切な措置が短時間の間になされなくてはならぬと考えます。東神奈川事件にいたしましても、駅長がなぐられたのは先月の五日の事件であります。そうして駅長はなぐられながら、そのなぐつた人々に対する処置が講ぜられていない。ほんとう争議になつたのは九日以後だということになつて、適切な措置が講ぜられてないがために、そうしていろいろやろうとして警察官を動員して來たときには、事が済んでもうずつとあとのことだというようなわけで、人権蹂躙の問題が起きたり、いろいろな問題を惹起しておるということになるのです。事件を起すことが能ではなくて、その件を未然にいかにして防止するかということのために、私は労資双方に対して、警察当局としてはそれぞれの立場から勧告をし、注意するということはあり得ていいと考えます。もちろん労働争議に対して警察が関與してはならぬということでありますが、事実として現われて参りますところのいろいろな事件が想像される限りにおいては、それぞれ当事者が注意をするというようなことは、あつてしかるべきだと私は考えます。しかしそうしたことは絶対にしてはならぬ。事が起きて初めてなさなければならぬということならば、それでよろしいから、そうしたことをもつと適切にやつてもらいたいと私は考えます。問題が起きた後に、多数の警察官を動員してやりますから、そうして弱いところに、図に乗つてやるというようなことをやりますから、全然関係のない者を毆打したり、あるいは檢束したり、あるいはその他の問題を起すということに、えてしてなりがちだと、私は最近の事実を見て痛感するのです。こうした措置に対して適切な措置が講ぜられるかどうか、どうするつもりか。労働争議である限りにおいては、絶対に事件の発生までは、警察官は関與すべきものではないというような結論を持つておられるかどうか。監禁、軟禁というようなことをいろいろ言われますが、これも争議團から言わせれば大衆行動だ、全從業員大衆が寄つて交渉するんだといつて、会社の重役を包囲して交渉する。これを大衆行動だとしてそのまま認める程度のものならば、もうそれ以上のことには踏み込まなければいい。それをあとになつてそれは監禁だ、あるいは軟禁だ、あるいは脅迫だといつて事件にするというやり方は、一番下手なやり方だと私は考えます。こうした下手なやり方に対する政府の見解は、一体どうなのであるか。もう一つ私は午前も申し上げましたが、特に國務大臣が見えておりますから意見を聞いておきたいのは、最近の警察電話のうち、有線電話は全然だめだと言われております。特に秘密指令を電話連絡しても、それが全部交換台を通じて漏れてしまつては、警察電話はもう役立たぬということになつてしまうわけであります。今のような貧弱な警察のもとで、たつた一つの連絡電話が使えないというようなことでは、はたして治安の維持が保てるかどうか。これでは保てないということになつてしまいます。はたしてそういうことに対する対策をどう考えておられるか。その点を大臣として明確な御答弁をお願いいたします。
  121. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 お答えいたします。どうも警察の方が何だかおせつかいに見えるようなふうに聞きましたが、警察も決しておせつかいに出るわけではなく、事があれば出て、事がないとなれば引上げたいのはあたりまえであります。平の事件にいたしましても、数百人の人が出ておるような状態でありまして、出なくて済むならば、出たくないのがあたりまえであります。何にもないのに、出ておるのではないのであります。その点はひとつ御了承願いたい。必要だということで出て、必要がなければすぐ引上げたい。こういうのが私どもの考えであります。必要であれば、やむを得ないから何ぼでも出す。こういうことを考えておる次第であります。それからまた電話につきましては、いろいろ改善くふうをしておるような次第でありますし、この点についての詳細なことをここで申し上げられないのは、遺憾と思います。しかしそれについては方法を講じております。
  122. 前田種男

    前田(種)委員 一例だけをただいま申し上げましたが、わかもとの例をとつてみますと、先月十八日の晩の九時前後に、警察署長が十数名の人を連れて私服でそこに來て、その現場を時間をかけてよく見ておる。しかも両方に一應注意を與えてそのまま帰つておる。そのままの状態が朝まで続いておる。その席上において、重役が便所に行く時分に、十人くらいがついて便所に行つたということはあつたけれども、それ以上の暴行その他の事項はないのであります。われわれの聞いた範囲においては、そのまま多数の人々が事務所を全部使つて夜通し交渉したという形になつて、しかも晩の九時半前後に署長が來て、現場を見ておる。それにもかかわらず、翌日八時半、九時ごろ、五百あるいは七百という多数の警察官を動員して、そうして三十名近く檢挙しておるというようなやり方をしておる。しかも署長が帰つてから朝までの間に、暴行、脅迫、その他の事件になるようなことが具体的に起つておりますならば、新しい事件が起きたから、それは当然の処置であつたのでありますが、そうしなければならぬほどの事項は、署長が帰つたあと、そうないということを、私はそのとき聞いた。その後事件があつたというなら別でありますが、そういうこともないのに、ことさらにかこつけてやろうというやり方をやる。しかもやらなければならぬときには、なかなか出て來ないということで、当局を信頼するに足らぬという結論に今日なつておると思います。各方面に自警團の問題が起きておるのは、警察頼むに足らぬというような現状になつておるところから、來ておると思います。これに対して、信念ある指導的立場にあるところの政府最高責任者として、もつとはつきりしたことを私は聞かしてもらいたいと思います。
  123. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 具体的の事例のこまかいことは私存じませんけれども警察で何でもないのに、翌朝幾百人というものを動員して檢挙したというようなことは、常識では私ども考えつかない。その間に事情の変化がありましたために、遂にその行動に出たのだろうと思います。從つてたれもいない、何にもしないところに檢挙が行われておるというようなことは、私は信ずるわけに参らぬ次第であります。具体的な問題は存じません。また今日警察においてもそういうことをやるということは、ただいま申し上げたごとく、私ども監督する——自治体については監督するわけに行きませんけれども、しかし隣人としての好意をもつて勧告はできると思いますが、決してそういうことを考えないように私は申しておる。もちろん常識としてそういうことはしておらぬと思うのであります。私どもはそう信ずるほかないと思います。
  124. 土橋一吉

    ○土橋委員 ただいまの問題でありますが、社会党の前田君から御質問があつたけれども、ただいまの大臣の御説明は、非常に私は遺憾だと思います。当時のわかもとという会社の状況について、私は簡單に御説明申し上げます。わかもと会社は御承知の通り昨年六月十四日、特に神奈川縣の元労働部長をしておりました上野宗太郎という重役が入りまして——これは組合員全員及びその近隣の人も鼻つまみのような、きわめてよろしくない人物でありますが、これが今度の首切り元凶とでも申しましようか、そういう方が見えた。当時わかもとはいろいろな事情がありますけれども、賃金遅配が十一月から続いて、当時團体交渉をするときは、四月の給料をまだ拂つておらぬという状況であつたのであります。從つて六月の十八日に來るように、会社からここにもありますように、世田谷宇奈根の四百番の宇奈根寮というところの延島靜子、小川とく江という方にはがきをよこしている。「來る六月十八日(土)、午前九時から十一時まで東京工場の講堂で、全重役から御懇談を致したいことがありますから、退職した方もしない方も御参集下さい。時間は御励行願います。わかもと製薬株式会社」というのであります。当時の組合の状況は、四月の給料がまだ四分の一も残つておるというような状況でありました。     〔三浦委員長代理退席、委員長着席〕 しかもこの通告の十八日の早朝には、朝日新聞日本ニユースのカメラマンが参りまして、警官が二千名近く來るということであつたが、組合の方ではどうするという質問があつた。これは特に今申し上げたような密谷重役及び上野重役というような諸君が、事前にこの懇談をしたいというのは、解雇通告を発したのであります。当時のわかもとは職員が約五百名程度つたのでありますが、そのうち四割五分、二百二十六名の首切りを断行するところの、これが申渡しの懇談会であつたのであります。そこで組合としましては、十八日に手紙をもらつたのだが、警官が來るというのはどういうわけだというので、カメラ・マンやニユース・マンが來ましたが、全部帰しまして何事もなかつたのであります。組合の幹部諸君は、大勢の人が国体交渉をすると、不穏な行動とかいろいろ言われるから、大多数の諸君にはまず講堂に集まつていただいて、逐次交渉をいたしましようというので、当日は——承知のように砧電車は最終が十一時五分であります。そこで当会社は木挽町の本社において交渉する場合にも、また当砧の工場において交渉する場合にも、この砧電車の最終が十一時五分でありますから、常に今まで夜つぴて團体交渉をするということが、当会社の慣例であつたような事実は双方とも認めておりまして、当時の状況においては、重役連中も承認の上で、電車に遅くなつて、それでは今晩團体交渉をしようというので入つたとき、今前田君から言われましたように、警官が來ておつたのであります。当時の警官、特にこれは國警の諸君でありますが、國警第二捜査課のある警官が——名前はちよつと私記憶ないのでありますが、このようなことも言つております。おれは警官だが、柔道四段で、警視廳には二千名も警官が待機しておるから、おかしなことをすれば承知せぬぞという、脅迫がましいことを申しております。これは追つて名前を本委員会において発表したいと思いますが、こういう状況で、当時の組合は靜かに講堂で夜が明けるまで待つてつたのであります。そして夜中の三時ごろに團体交渉が打切られたのであります。ところが朝の食事をとる必要がありますので、会社側も組合側も半数がお帰りになつた。朝の九時ごろ、今お話があつたように、約七百名の警官が参りまして、ここにもいろいろの資料がありまするが、言語に絶するようなことをやつております。当時の指揮者はもちろん会社の上野重役で、それが先頭になつて、これを逮捕してくれ、あれを逮捕してくれ、こういうようなことで逮捕した。この現状の写眞もあります。また当時の状況で特にけしからぬのは、帰人の坪田という組合員が、生理休暇で自分の寮へ帰つて寢ておるものを、むりに押しかけて衣類、特に下着類を——はずべきとも思われるような、またこの新聞にも書いてありますように、きわめて遺憾な現象がある。ただDという徽章をつけておつた、これは何だ、これはデモクラシーだというようなことで、二十六才でありますが、坪田君を強硬に持つて行く、これは写眞がありますから、あなたがごらんになればわかりますが、確かに寮の中を全部開けた、こういう状態であります。このようなことを警官が行つておりますから、前田君の質問も同様に、現在の國家警察が、だれの利益のために、どういうように使われておるかという点が、きわめて重大であるのであります。これがもし一部の会社の——今申し上げたように、労働條件については、賃金の遅拂いを重ね、しかも草を食い、捨ててある菜つぱまで食べるというようなわかもとの組合員諸君の現況について、特に給料等の遅拂い状態は、わかもとはひどいのであります。この工場の從來の経理方法、たとえば昨年鈴鹿方面においては、大軍需会社の跡を買つて数億にわたる負債を受けているとか、造船所をやつておるとかいうことについては、組合が逐一よく承知しております。組合としては再建的な計画を出している。当会社においては、すでに組合の決定した再建方針に從つて工場長以下やつている。この現状を考えて、賃金の未拂い、遅配等の問題からこの事案が起つて、特に首切りの通告せられた現状に対して、なぜあなたの方では警官を動員されたか、この点を私はもつと明確に聞きたい。もしあなたの方で事前新聞社その他の諸君に連絡して、十八日を期して会社がこの通告を発するから、警官を動員するというようなことであるならば、私は特殊の目的をもつて警察権を行使せられているような懸念を抱かざるを得ないのであります。そういう点を明白に御説明願いたい。
  125. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 ただいまるるお説がありましたが、わかもとの爭議については、私当時聞いておりますところでは、ちようど重役が軟禁されましたか、夜の十二時ごろそういう状態であつたと聞いております。從つて警察官方面においても、そういう不穏な状態であるならばこれを予防しなければならぬということで、人を集めたというふうに聞いております。それからそのことを漏れ聞いたのかどうかしりませんが、全部の人が引揚げて、翌朝警察官が來たときには、だれもおらなかつたということを聞いております。当時そういう事情にあつた。決してむだに人を繰り出したのではないのであります。  もう一つ申し上げておきますが、私どもは正当な経済上の主張であるならば、警察官は決して取締るものではない、違法の行為をする、直接行動をするというようなことになつたら、断固としてこれを取締るということを考えております。
  126. 土橋一吉

    ○土橋委員 私が御質問申し上げているのは、六月の十八日に会社から懇談をしたいという書面がやめた人、また残つている人に來た。ところが十八日の会社当局の発表は、遺憾ながら会社はもうやつて行けないから、どうか五百名のうち二百二十六名だけやめてくれぬか、こういう御説明であつたので、組合員としては、時には数回にわたる遅拂いをして、当時の状況は、四月分の給料が六月の十八日においてまだ三分の一も残つているというふうで、非常に窮迫しておつたのであります。從つて組合大会においてはいろいろな意見が出たのでありまするが、少くとも穏当を欠くような行動は、わかもとの工場においてはしたくないということで、組合員が自粛をせられまして、十八日の会合においてもいろいろ意見があつたのでありまするが、全部の諸君は大体において、人民裁判とかいう問題があるが、そういうことをしてはいけないというので、講堂の方に全部大多数の人が集まつておられて、組合の幹部諸君が数名團体交渉をやつてつた。そういう事態のもとに、今申し上げたように、十八日の朝、朝日新聞日本ニユースが、本日警察官が二千名も來るが、組合員は知らぬのかということを、組合員に問いかけている。こういう事実は、今申し上げたように、警察当局と会社当局が相提携せられて——二千名の警官が十八日の朝來るという状況になつている点から見れば、これは計画的にやられているのではないかという点を申し上げておるのでありますから、そういう点がおわかりであつたら、御説明願いたいと存じます。特に先ほど私が申し上げたのは、十一時ごろ辻第二捜査課員が重役の隣の部屋にずつとおりましたが、組合員に対して、おれは柔道四段だ、警視廳には二千名いるということを申しているのであります。これははつきりと組合員諸君が実情を述べておられます。こういう警官がいる。また十八日の日に新聞社がそういうようなことを申しているということは、明らかに会社当局、特に上野重役なり密谷重役等が、相緊密にこういうことをやつているという証拠でなかろうかということをお聞きしているのであります。この点について御答弁をお願いいたしたいのであります。
  127. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 ただいまのお話によりますと、何か警察が労働爭議の中に介入した、自分から進んで入つたようでありますけれども警察はそんなひまはありません。從つてそういうようなことを想像なさるところに矛盾があるのではないかと考えております。今申し上げたような通りであります。
  128. 石野久男

    ○石野委員 樋貝國務相に一つだけお尋ねしたいのですが、ただいま土橋君からも聞いておつたわかもと事件については、私どもも今度調査團としていろいろと調べて参りました。やはり土橋君の言つているように、その前日は確かに團交が持たれておりまして、組合員諸君もいろいろと問題がありましたけれども、やはり重役諸君に残つてもらつて團交をしたようであります。当時警官が数百名來たというときは、もうすでに事が終つたあとであつたことは、双方認めているわけでありまして、特にまた警官の要請を会社側がしたというのは、前日数回にわたつてつていると言つております。しかしその当時は警官からは何らのこともなかつた。その後事件は別に何らのことも起らずに、翌日の朝食になつてから後にこの問題が起きたことは、双方とも認めている事実であつたと思うのであります。こういうようなときに、先ほど前田君からもお話がありましたように、何ら該当すべき檢挙なり、あるいはひつぱられて行くという事件が起つてないときに、むりにああいうふうに警官が出たということは、われわれどうしても納得できない。國務相はとにかくそんなひまもないし、金も余裕もないのだとおつしやるけれども、事実はそうではなくして、そのひまのない國警の諸君が、やはり行つて混乱を起しているということを、私どもは調べて來ているわけであります。これはやはり國務相が実際を調べていただくようにお願いしたい。  それからこれらの問題と関連して、前々から警察官の不当な行為が各所に起きているのであります。すでに私は昨年八月に日立の事件でこういうことを見ておりまして、その後大阪の事件もそうでございました。たびたびこういうものが行われておりますが、最近は特に警察の方では、労働組合の集合がありますと、非常に危險視しておられるような傾向がありますし、われわれ今後の労働運動をして行くについて、特に何か集合があつたときに、常に國警なり自警がこれを危險視して、変な目で見ているということであつては、ほんとうに民主的な労働運動はできないというふうに私ども考えているのであります。これについて政府の方針として、特別な指示か何かでも與えているかどうかということを、この際國務相から承つておきたいと思うのでございます。
  129. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 今のお話にも、最初には二千人と言い、ただいまは数百人とおつしやいましたが、事ほどさように事実はわからぬのであります。そういうふうに、現実にどちらがどちらということは、あとから想像するだけで、事実はわからないのでありますけれども、しかしすでに当時において私の聞きましたところでは、今申し上げたような事情で、わかもとの爭議については、わずかな事件であるし、また自治体の警視廳事件でもあります。そういうふうに私の頭に残つている次第であります。当時警視廳及び國警等から数百人の警官が出ましたのは、決して何もないのに出るわけはないし、それが何んでもないのに新聞社からニユースカメラを持つてつたということもないのでありまして、その間においては、一連の関連をやはり常識上考えなければいかぬと思います。それらの点について詳細のことは、その当面の当事者からお答えをいたします。
  130. 石野久男

    ○石野委員 ただいまの御答弁は私の質問に触れていない。当時わかもとに数百人の人が行つたとか、二千人がどうのとかいうことは、樋貝國務相はちよつと聞き違えている。二千名來るという情報を得て、新聞社が來たので、当時現実に來ているのは数百名だと言つている。そこのところは感違いをしないでほしい。問題は、労働運動が行われ、労働爭議が行われているときに、特にしばしばそういう警察官の派遣が多いように感ずるのです。こういう点で、そういうことの指令があるのかどうかということを、私は聞いているわけです。
  131. 樋貝詮三

    樋貝國務大臣 先ほどの川崎委員からの御質問のごとくに、私の方でその場合にも、表向きインストラクシヨンを與えるわけに行かない。そういうことはできないという現実をむしろ悲しむものであります。從つてそんな印象を與えるようなことを、自治体警察に申したことはございません。
  132. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより労働大臣に対する質疑に移りたいと思います。前田種男君。
  133. 前田種男

    前田(種)委員 私は労働大臣に二、三の問題を聞きたいと思います。まず第一、本日の委員会は、四つの爭議の実情を調査するということも一つの目的でございましたが、緊迫せる労働情勢に対する対策等に対して、政府の所信を明らかにして、善処を促したいというのが、本委員会の目的の重要な点であろうと思います。第一に特にお聞きしたいのは、今日の國鉄の行政整理に対する今後の対策、今後國鉄問題を一体どうして処理するかということに対して、政府の所信をこの際明らかにしていただきたいと考えます。
  134. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 ただいまの前田さんの御質問の中で、今後の処理という問題になりますと、これは責任のがれをするわけではありませんが、実際にその残つた機関をどうするか、再建の方法をどうするか、また離職された方たちを、再雇用の機会があつたときにどういつた方法でやるかというような問題が主となつて來るものと思いますけれども、それらは運輸大臣なり、あるいは國鉄当局なりが、実情に應じて今後檢討すべきことであり、また檢討もしておるはずであります。労働大臣といたしましては、もともと行政整理は國鉄の問題に限らず、現在の日本の財政または行政機構、そういつた面から考えまして、九原則の方向とも照し合せて、必要最小限のものは、これはいろいろのところから議論はあつたにしても、やらざるを得ないし、やるのが正しいという見解のもとに、すでに定員法その他がこの前の國会を通つたわけでありまして、それらの問題についての再檢討、それからその方向をかえるというふうなことは、もちろん現在においても考えておりませんけれども、できるだけ犠牲を少く、そうして円滑に、そうして時間的にも早くこれらの整理というものを実現して、そうして残つた人たちに安心して、積極的に建設的に働いていただくと同時に、一方においては——あとで御質問があつた場合に申し上げますけれども、見返り資金等の厖大な運営によりまして、これも國会当時からしばしば申し上げておつたのでありますが、失業対策の根本はいろいろあるけれども、結局ほんとう意味における雇用というものを引上げて、そうして最終的に——それが一年やそこいらで完全にできるかどうかという問題は別でありますけれども、新しい雇用面に配置轉換の意味をもつて、最終的に押しつけて行くというのでなければならない。これもしばしば申し上げておつたのでありますが、幸いにして見返り資金の運営というものが、いよいよその実現期に入つて参りまして、この点についても新聞等によつて大体の動きは報道されておるのでありますけれども、近く見返り資金は活発な活動を開始すると思います。そういうような点から、廣い意味の雇用の上昇という問題を中心としたところの失業対策を考えて参りたい、また現に考えてもおるのであります。この点につきましてもあとで御質問があつたならば、ただいま具体的な資料を持ち合せておりませんけれども、私の記憶しておる限り率直にお答え申し上げて、皆さんの御批判も、またもし御注意がありましたならば、それも承つて参りたいと思います。根本的にはそういうふうな問題でありますけれども前田さんの御質問自体は、あるいは当面の問題、狭い意味と申しますか、当面の國鉄のあの問題を、今後の労働問題として、どういうふうに扱うかということも含んでお聞きになつたのではないかと存じますが、そういう意味でありましたならば、私どもの考えといたしましては、國鉄の整理はできるだけすみやかにその整理自体というものを完了して、そうして早くノーマルな形に帰つて、公共企業体関係の労働法によつて、正常な機関を通じ、正常な方法をもつて、残されたところの問題を急速に処理して行つて國鉄の人たちが積極的に働いてもらえるような方向に持つて行きたい、そういうふうに考えておりまするし、時期それらが許すならば、労働大臣といたしましては、そういう方向に経営者が動くように考えたいと思つております。ただくれぐれも誤解のないように申し上げておきますけれども、整理それ自体はあくまでも定員法によつて行うのである。これは観点によつて批評はあるかも存じませんけれども、團体交渉その他というふうなものは、その附則によつて排除されておるということ自体は、終始一貫したところの方針であります。そうして今申しましたように、できるだけ早く正常な姿に帰して、公共企業体の労働法でもつて、すべての問題を処理して行くようにいたしたいという意味は、整理自体とは引離して、早く整理を完遂して、そうしてそれとは別に、すべての問題を、そういつたノーマルな形でもつて解決して行ける日が一日も早く來るように、私も努力いたしたいし、そういう方向において解決をして参りたいと考えております。
  135. 前田種男

    前田(種)委員 私はあとで失業対策の問題は質問しようと思つてつたのです。先ほど吉武委員から質問なさつておりますが、第五國会におきまして、特に労働委員会の重要な論議として、失業対策相当論議をされたわけです。それに対する政府処置が、われわれの得心の行くような内容が盛られてないということを、私たちは言葉を強くして政府処置非難し、批判もしたわけです。今日社会各方面が、いろいろな点から落ちつきがない、あるいは物情騒然たるものがあるようにいわれておりますが、これがよつて來るところの原因は、経済的問題が主であろうと私は思います。二十四年の予算の編成の仕方、あるいはドツジ・ラインの強行、あるいはそれから來るところの失業対策が具体的になされていなかつたこと、さらに今日の金詰まりの問題、あるいは企業整備の問題、どれ一つを取上げてみましても、お先まつ暗だというのが今日の現状でございます。失業者救済の方法として、貿易の方が相当明るくなつた。その方面相当配置轉換ができるという政府答弁でございましたが、わずか二月も出ずして、貿易の方面におきましても行き詰まらざるを得ないような今日の現状であるわけです。われわれはそうした点から、一つには金詰まりをどうして打開するか、どうして今日具体的な失業対策を講じて、そして配置轉換を余儀なくされる人々を安心せしめて、職につき得る道を講じてやるかということをやらなければならぬ。さらに失業対策の問題は、公共事業を興して失業対策費を予算に計上してその方面に吸收するというだけが能ではなくして、むしろそれ以前に、今日の産業に対するところの融資その他の方法をして、何とかして失業を出さずして行き得るような状態に持つて行く先決的に考えられなければならない問題等が、論議されておつたわけです。もちろんそうした質問に対して、総理大臣は明確に、九月の臨時國会には大幅に失業対策費を計上しますという答弁を自分に対してはしておりますが、この九月を待つてない今日の現状が、いろいろな問題を惹起しております。その点から、今日対日援助資金を、何とかして失業対策費にいろいろな点で使えないかという問題等について、われわれも意見を具申し、当局もいろいろ善処されました結果、ある程度具体的になつておる面もございますが、むしろこの点がどの程度信用できるか、具体化しつつあるかという内容も、この機会に明確にしていただきたいと考えます。それとともに当面、私がさつき質問いたしました國鉄の問題に対しましては、もちろん行政整理のやり方、しかも定員法がすでに今日法律として施行されております関係上、その法律自身に対して批判の余地はないという大臣の答弁でございましたが、私は今日の現実の姿を見て、そうしてもし政府の施策に批判する余地がありますならば、大胆率直に批判していいと考えます。しかも今日國鉄を中心とするところの行政整理のやり方に対して、ああした強硬政策をやることが、國家の前途においてよい方法であるかどうかということについて、私は重要な反省を政府に促したいと考えます。もちろん今日國鉄の問題が、ここまでこんがらがつて來た原因については、いろいろな問題がございます。これは午前中からいろいろ論議されておりますところの、國鉄ばかりではなくして、今日の多くの労働爭議の扱い方、労働組合の指導、労資関係に対する認識、そうした問題に対して根本的に議論すれば、議論はあろうかと考えます。私はそうした根本的な議論に対しては、もつと勇敢な、大胆な態度をもつて臨まなければ、日本は救われないと考えております。しかしそうした考えを持ちつつも、なおかつ政府当局がやるべき措置には、血もあり、涙もあるところの措置がなされなければならぬと私は考えます。そうした血もあり、涙もある措置が、今日の当面の國鉄措置についても考慮されなくてはならぬ。当面は運輸大臣あるいは國有鉄道総裁の責任かもわかりませんが、少くとも國務大臣として、労働大臣としては、國鉄措置に対しましては重要な責任地位であろうと思いますから、労働大臣の地位においては、そうした血もあり、涙もあるところの当面の措置をやつて、そうして將來ほんとう日本の公共企業の中心をなし得るところの、りつぱな國鉄にしなくてはならぬと私は考えますが、こうした点に対する当面の処置並びにいろいろな不安から來まするところの失業対策、あるいは労働対策、その他もつと大きい立場で行きますならば、経済政策に対するところの緊急なる措置としていろいろな点が考慮されて参らなくてはならぬと思いますけれども、こうした点等について、もつと掘り下げて大臣の御答弁を煩わしたいと考えます。
  136. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 失業対策の問題は、前に吉武委員からも御質問があつたそうでございまするし、おそらく各委員からもそういう御質問はあると存じますので、この際一應まとめて、私から考えておること、現在までの推移というものを申し上げたいと思います。それより前に、國鉄の問題に対して、血もあり涙もあるところの措置というものをもつて、收拾に当るべきではないかという前田さんの御質問なり御意見は、それはもう百パーセント額面通り眞正面からお受取りいたします。さつきも申しましたように、定員法自体を今どうこうというような問題にまでは至りませんけれども、しかし行つた政治の善後措置というものにつきまして、あえて民同派ならどう、あるいは同派ならどう、そういう意味ではなくして、眞に國鉄に働いておる人のために、また一度やめられても、將來復職される機会の残されておる人たちのために、そういつたいい方法なり何なりを、誠意をもつて考えて行くこと、それから爾後の労働問題あるいは労働條件について、建設的にいい方法を考えて行く、それから就職のあつせんの問題というふうなもの、それら一つ一つを通じまして、労働大臣としてはもちろんでありまするけれども政府としても、それらの問題については十分に温情ある態度でもつて、でき得る限りのことをすべきであるという雰囲氣は、最近——以前はなかつたという意味ではありませんけれども、私からも申しまして、その雰囲氣は十分今生れつつあるのでありまして、新しく展開される健全な労働組合運動というものを考えまするとき、決してそのやり方、行き方というものに対しては、絶望ではなくして、前田さんの御指摘のように、誠意をもつてそういつた方面に働きかけたいと考えております。では具体的にどういうことをするのかということがありますけれども、たとえば今一、二のことを申し上げましたが、そのほかのことにつきましては、微妙な点もありまするし、國鉄の整理自体ああいう段階におることも考えまして、その程度政府の考えておるところを御了承願いたいと存じます。  それから失業対策の問題でありますけれども、これは実に大がかりな問題になつて来て、ここでもつて專門家の皆様方を前に、私が演説をやるのもおかしなものでありますけれども、やや全体的に聞いていただかなければ、部分的のことを申し上げても、なかなか政府の考えておること自体が認めていただけないと存じますので、少し詳細といいますか、全体についての考え方を申し上げたいと思います。それはさつきもちよつと申しましたように、結局最終的には雇用を拡大して行くというのでなければならない、そしてそれは必ずしも一年ぐらいをもつてして、すべてが完全雇用の状態に行くという考え方は甘過ぎて、私どもも考えていないし、おそらく皆さんもそれまでは要求されておらないだろうと思います。結局もつとぎりぎりに言いますと、見返り資金の千四百億円、かりに三年間それが継続されて出て行くといたしまするならば、四千億余りの金でありますけれども、これを集中的に生み出すためには、われわれ日本國民は、一方においてあの予算に見られますように、相当多くの税金というものを負担して、そうしてなるほど見返り資金自体はアメリカからの援助でありますけれども、それがああいう形で使い得るように、まとめて使い得るようにいたしますために、予算上にお互い相当の負担を忍んで、そうしてあの金を一年に千四百億円、向う三年間に四千数百億円が使い得る形に仕上げたのでありまして、その金には多くの大衆の苦痛と負担というものも相当あるということは、これは当然だと思います。それだけにあの金の使い方という問題につきましては、單に失業対策ばかりではありませんけれども、廣い意味で眞劍な日本再建の基金として考えなければならないのであります。要するにそういつた問題を一應別として、失業対策自体の、その資金と申しますか、拡大される事業というものの根源は、ある意味ではあの見返り資金が向う三箇年ぐらいの間に、どれだけの経済の再建を、またどれだけの雇用の拡大をすることができるかというところに、非常に多くのウエートがかかつておると思うのであります。見返り資金以外の一般の予算、一般の経済行政の方には、全然重要性がないのかといいますと、そうではなく、二十万ないし四十万の雇用というものは、見返り資金を別にしても、一般の経済活動によつて、一方において現われて來るだろう、それはこの前も申し上げた通りでありまして、そういう重要な性格は、見返り資金以外のものも持つておりますけれども、今のように非常に失業と雇用とが食い違つて來て、あるマージンに來たところの十万なり二十万なり三十万なりというものを、新たに吸収するという考え方から行きますと、今の見返り資金の一年に千四百億円、三箇年間四千数百億円、これがどれだけの効果を現わすかということが、至大の関係を持つて來ると思うのであります。この見返り資金は、今傳えられておりますように、また政府がその折衝に当つておるのでありますけれども、これも狭い意味の公共事業というようなところに、百億なり二百億なり、そういつた一定の部分をさいて、そうして公共事業を展開して、從來いわれるような狭い意味の失業対策を兼ねたところの事業を展開して行くということも、一面において考えられているのでありまするし、現にその折衝は継続されているのでありますけれども、より大きな本体は、千三百億円前後の資金が、一般の産業に重点的に注入されて行く、その中に新しい雇用拡大というものが見込まれるということに、非常に大きな意味を持つていると思うのであります。たとえば電源開発を例にとつてみましても、かりに三百億ないし四百億の金が電源開発に向けられたといたしましたならば、どうなるかといいますと、これは計算してみたのでありますが、三つの答えが出たのであります。最低の場合八万人の雇用力がある、それから十万というのと十一万何千というのと、三つの答えが出たのであります。その答えのうち、どれが決定的に確実なものであるかという見当はつかんでおりませんけれども、少くとも八方や九万の雇用がその面から生れて來るということは、十分言い得ると思うのであります。それからものによつては、たとえば造船業というようなところに、四十億、五十億というような金が注入された場合はどうなるかと申しますと、一般に浮動しているところの労働者をそこへただちに持つて行くということは、電源開発の場合などと違つて、ちよつとできないと思います。專門的の労働者だから。しかし前田さんのさつき言われたように、失業者が出て來るより先に、出て來ない経済的の手を打つことの方がより本格的の失業対策ではないかということ、私たちもその考えに賛成でありますが、その考えを持つて來ましたならば、三十億ないし四十億を造船業に注入することによつて、それがなければ、そこから当然現われて來るだろうところの失業者を食いとめるということもできる、そういうこと。そして最小限度、その周辺産業をある程度拡大することができるというところの効果はあると思います。從つて各部門に、電源にいくら、船にいくら、肥料にいくらというふうに、基幹産業が四つありまして、それにわけられて行く。それが失業対策としての力をどれくらい持つているかということは、事業々々によつて相当つて來るのでありますけれども、全体を通じまして千三百億円前後の資金が投ぜられたといたしましたならば、それによつて二十万くらいの新雇用というものは期待されるのではないかという一應の見通しは立つております。やや話がこまかくなりますが、もう少し聞いていただきたいのであります。それは五百億円前後が融資及び投資として出て行く、こういわれておりまして、残りの九百億ぐらいは復金債の買上げ、あるいは公債の買上げに向けられているのでありますけれども、その場合におきましても、漫然と銀行の資金を、手持公債なり復金債を買い上げて、出しぱなしでもつて、銀行が短期の最も有利な商業資本にまわすというようなことができないように、一種のひもつきの方法でもつて、重点産業の方に、政府が直接融投資する部分と合せて向けられて行くという方式をとるはずでありまして、それから先の技術的の問題は、私の專門でございませんから、申し上げませんが、そういう方法をとるのでありまして、要するに結局千四百億円というものは、政府の意図に経つて、重点的に相当ある部分に向けられて行く、しかも短期の有利な商業資本的な面には向けられて行かないように、注意するという意味であります。そういうようにして、大体二十万人くらいの人たちの雇用というものができ上る。しかし前からもしばしば私も申し上げ、皆さんもしばしば指摘せられましたのは、そういつたロング・ランにおいては、見合いというものが何とかつくであろう、しかも今年よりは來年の方が一層その状態がよくなり、二年ないし二年半くらいかかつたならば、それは一應安定の状態に持つて行けるかもしれませんけれども、時間的のずれに出て來るところの失業者をどう処置するかという問題が、前の國会以來しばしば問題になりまして、私どもも頭を悩まして來た問題であるのであります。この考え方の措置につきましては、今進みつつあるのは、大体これは約百億ときまつたのではありませんが、百億円前後くらいを見返り資金の中から出して、直接な公共事業の形でもつて事業を展開して行く。但しこの場合に注意しなければならないのは、見返り資金はインヴエストメント・オンリーという原則があるのでありますから、いかなる失業対策的公共事業にも出せるとは限つておりません。結局は返すべき金であり、一つの投資としての性格を持つものでなければ出せないから、そうすると、同じ公共事業といわれても、たとえば住宅のごとく、十億、二十億というふうな問題、これは決定してはおりませんけれども、これを取上げた場合には、きわめてその條件に合いやすいのであります。というのは、住宅営團というふうなものでやつて行けば、また將來返す計算のもとに借り入れて、一つのインヴエストメントの形でするのでありますから……。しかしいわゆる狭い意味の、区画整理をやるとか、どぶさらいをやるとかいう使いつぱなしの金というものには、この見返り資金は、どこまで行つても、いくら頼んでも、それは出て來ないだろうと思いますので、二つの考え方をしなければならない。たとえば住宅の方でも、あるいは道路の方でもけつこうなのでありますが、それが相当の資金をもつて、しかも今年中心に展開されるといたしましたならば、相当の失業対策になることは、わかりきつておるのでありまするし、本來労働省がかりに百億円の緊急失業対策費を持つたといたしましても、労働省は決して作業官廳ではありませんから、従來もそうでありますが、労働省自体が仕事を直接やるのではなくて、地方官廳か、あるいはほかの省でやつてもらうのでありますから、そういう意味合いにおいて、見返り貸金の中からある程度公共事業に、しかも都会中心に展開されるということになりましたならば、それは十分効果があがると思うのであります。しかしそれだけでは足りないと労働大臣としての私は思つております。なお自由労働者とか、あるいはそういうものに盛り切れない一つのマージンに現われて來るところの人たちというものに対して、どうして措置すべきであるかという問題は、やはりこの前の國会でもつて通過したところの緊急失業対策法、あるいは失業保險法、そういつたものをフルに動かすことによつて処置して行かなければならないのでありまして、端的に申しますると、今申しましたようなインヴエストメント・オンリーという原則によつているがために、見返り資金からは出せない。しかもなおかつ絶対必要である。少くとも最小限の資金というものは、どうしても捻出しなければならないということになるのでありまして、その場合には補正予算によるほかには、具体的の方法論はないということも事実だと思うのであります。お前はそれを必ず実現するのか、して見せるかと今聞かれても、目下折衝中でありまするけれども政府も決して何もやらずに行くという考えではないのでありまして、この二つの考え方の線に沿つて関係筋との折衝が今続けられておりますということが、ありのままの事実なのであります。それから見通しはと聞かれますならば、ドツジ政策以來、このことがきわめて困難なことであるということは、つくづく私も味わつて参りましたし、皆さんも御承知だと思いますけれども、最近においてのいろんな情勢ともからみ合せまして、必ずしも不可能——こちらの言う通り百パーセント行くかどうかという問題にもからみまして、可能という形までは進んでおりませんが、ごく近い機会に、この問題は一應解決するということを御報告申し上げます。  それからもう一つ、前田さんのさつきの御指摘の中で重要な点があると思います。中小商工業者の問題を中心にして、そこに資金を注入するということは、失業対策の面からいつても、きわめて根本的なラデイカルな行き方じやないかという御指摘は、まつたくその通りなのでありまして、これは私から治安閣僚懇談会があつたとき、あるいは経済閣僚懇談会があつたとき、一々覚えておりませんが、そういうときにその意味のことを、つまり出て來てから騒ぐよりは、日本の経済に絶対必要な中小商工業者に対する資金というものは、ぜひ出してもらいたい、経済政策の上からいつても、そうだろうけれども、ぼくの方からいつても、この上あそこからどんどん失業者が出て來られてはたいへんなんだ。出て來るかもしれないけれども、最小限に食いとめなければいけない、それには、出て來てからは再建はむずかしいから、今私だけでなくて、世間一般からもその要望が高まつておるけれども、中小商工業者に対する金融というものは、今考えなければいけないんだということも、しばしば言つたのでありまして、政府はこの問題につきましては、考慮いたしますという程度でなくして、大藏大臣の手元には、かなり詳細で、しかも相当大きな計画が進められており、また近い將來にこの政策を実現しよう。たとえば一方において、二百億とか何とかいう金額が流布されたこともありますが、それは知りませんけれども、今前田さんが指摘されましたような意味における金融上の措置というものは、急速に相当大きく考えて行く、しかもその意味の中には、失業対策という問題も強く考慮されており、從つて失業対策という問題は、きわめてラデイカルに大がかりな線でもつて構想されておるということを申し上げます。非常に抽象的でありましたけれども、以上大体論だけ申し上げます。
  137. 前田種男

    前田(種)委員 私はもつと掘り下げて質問を続行したいのですが、時間も迫つておりますし、他の委員の発言もあろうと思いますので、一應留保いたします。
  138. 川崎秀二

    川崎委員 今労働大臣は、経済政策との関連において、失業対策について今まで覚えられた知識をさらけ出されたという形なんですが、私は特にそのことについて質問しておきたいと思うのです。  それは大体見返り資金が一番目当てだということである。つまり長期の日本の経済計画に並行して、これ以上失業者を出さないという意味合いで、そのためには日本の経済復興計画を見返り資金の投入とにらみ合せて進めて行く必要がある。その意味において失業者を出さないということならば、私の考えておる構想と大体同じではあるけれども、しかしながら当面出て來たところの官公吏の二十五万有余の失業者、あるいは企業整備によつて出るところの三十万ないし六十万と労働省の推定する失業者、これらは本年七、八月から九月ごろにわたつて金詰まり、金融の逼迫とともに、不健全産業だけではなしに、健全産業にまで、その累を及ぼさんとするところの異常な形勢にあるのである。從つてわれわれの認識するところによるならば、本年度においては引揚げの二十万というのが、ソビエト連邦では九万五千人しかお帰しにならないということでありますので、これはどういうことになるかしりませんけれども、その予定以外は、相当失業者が出る。最初に予測をしたような過程で行くものと、私どもは考えるけれども、それらの失業者というものを当面どうして收拾して行くかということについては、さつき言われたところは、経済政策と関連して言われたものですから、いかにももつともらしいけれども、非常に穴があるんじやないかと思うのです。それは千三百億くらい金が出るのだ、しかし千三百億も今日出せるだけの財源はない。それで全体として千三百億というものは、つまりは三年間の長期計画においてやられるのではなかろうかとわれわれは思うのです。そうすると、その出せないという方の面では、吉田首相の言うところの千四百億の見返り資金というものは、これことごとく廣汎な意味における失業対策だ、こういう解釈をすれば別ですけれども、しかし今出て來るところの失業者に対する救済政策でも何でもない。そこであなたの言われるところをつき詰めて行くと、結局は百億程度を今の見返り資金から出そうという、その見返り資金の百億のうち、有望なのは住宅その他に対するところの、そういうインヴエストメントの余地のあるもの、これは入れられるであろうという見通しを立つておられるので、はなはだ私は心細いと思うのですが、もう一度御答弁を願いたい。
  139. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 川崎さんの御質問の中心は、中間的に大体ざつと数字をあげましたけれども、これを措置するということについての具体的なことは言わなかつたのではないか、この点にあつたと思います。この点はしばしばこういうことを言つていたと思うのであります。今年中に、たとえば百万なり百四十万なり、措置しなければならない人が出て來るとしても、現在の政府においても、また他のいかなる政府においても、失業のピークのときに、全部それを瞬間に措置してしまうというような対策は、おそらく立て得られまいし、そこまでは望むところではない。そのピークの最高潮に達したときに一番有効に使われるのは、たとえば失業保險の制度であり、あるいはそういつた緊急失業対策というものであるということを、しばしば申し上げたと思いまするし、私どももそう考えておるのであります。一番たくさん出て來るときには、そういうものと合せて、職業安定所その他を使つて雇用を拡大し、そして職業のあつせんに極力力を入れるということも必要でありますけれども、なお最盛期においては、それでも措置し切れない。そのものに対しては、失業保險その他——失業保險がどの國においても、一番失業のピークにおいては——これは消極的といわれる方法かもしれませんけれども相当これにたよらざるを得ないという数字が出て來る。これは現在大体予算に計上されておる予定でもつて三十万、しかし場合によつては、五十万でも七十万でも受入れる計画ができ上つておる。しかしそういつたものは、失業対策としては下の下の対策であるから、できるだけ雇用を高めて行くことに努力したい、こういつた意味であります。それから見返り資金に全的にたよつておるのではないのでありまして、見返り資金を抜きにしても、一方において相当の失業者は出て來るけれども、一方において同じ國民経済の中に雇用ということは必ずあるのでありまして、現にたとえばある会社で五百人やめた、その人たちが一箇月たつて全部五百人失業しているのではなしに、むりして、いろいろ苦労するでしようけれども、とにかく一方においては雇用というものが——これはほんとう意味における健全な雇用とは言えないかもしれませんけれども、とにかく職業を見つけて行くという雇用もあるのでありまして、そういう面をも加えて考えますときに、失業保險、そういつたものでささえておいて、もう一つは緊急失業対策でささえておいて、段階的に多少の時間的ずれはあつても、一方において見返り資金なり、そういうものの活用による雇用の拡大をはかりたいという考えなのであります。
  140. 川崎秀二

    川崎委員 失業のピークのときには、すぐそれを收拾し得るような受入れ態勢は、どこの國においてもないのだ、そういうことはわれわれもわかるのです。それで今年度はとにかく、相当インフレーシヨンに頭打ちをさせて、企業整備をしなければならぬ非常に重要な年だ、われわれ保守党の一部におる者はそういうことを考えておる。しかしそこに急激なカーヴを切ることは、あやまちである、そういうことはわれわれの政党の指導者北村君がしばしば言つておるように、そこに経済政策のうま味というものを出さなければならぬ。失業者については、最初から官公吏の整理人員五十六万というような厖大な数を一度発表して、当局との折衝過程において、ようやく最後には二十五万になつた。これは民自党の考えている線があまりどぎつ過ぎるというところに、私どもは今日の社会不安、労働不安の現象が起きて來たと思う。今ごろになつて、失業問題を非常に重大に考えている向きが、閣内においてふえて來ている。これは今までそういうことを考える雰囲氣がなかつたのではなくして、現実に重大問題に際会して起つたのだという予防線のお話ではあつたけれども、そこに私は認識の間違いがあると思う。失業対策の受入れ態勢一切なしに、今日かかる厖大な失業群を出したところに、問題があるのであつて、今になつていろいろ見返り資金がどうの、あるいはその他のことがどうのと言われているのは、あとまわしの政策ではなかろうか。そういう考えで行くと、せつかく日本経済復興の重要な時期であり、どうしても一應くぐらなければならぬデフレの谷であつても、そのことよりも、社会不安、労働不安の方が大きくて、政府の政策に全國民の共鳴を求められない点も多く出て來るのではないか、かような点を私は憂慮するものであります。しかしこれは議論であつて、私が今聞かんとする失業対策の核心をついておりませんので、次に論旨を進めます。  見返り資金が失業対策の全部ではないのだ、それは追加予算その他においても、他の財政面からも考えなければならぬということを、先ほどちよつと触れられたけれども、たとえばこういうことは有効であるかどうか。前年度剰余金すでに三百億、計数の上において出ている。このはしたの計数が整理されていないとかいうことも聞いておりまするが、この半額は追加予算において計上できる。失業対策としては見返り資金が生産的な失業対策、つまりはあなたが言われたように、失業対策というのは電源開発もあれば、災害復旧、道路の整備、住宅の新設というような問題がありますけれども、はねかえつて來るもの以外に、大きな土木工事を起さなければならぬというときには、おそらく見返り資金を使わせてくれないだろうという、さつきの御答弁の通り私どもも認識しているのです。そういう場合において、他の経費をもつて充てなければならぬということになると、税収入の自然増收を充てて行かなければならぬと私は思うのだけれども、そういうことに対する閣内における対策はどうなつているか、伺つておきたいと思います。
  141. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 ただいまの御質問はきわめて重大でありまして、臨時國会を前にして、閣内においていろんな予算の関係の問題が、全然論議されていないなどということはあるはずがありませんけれども、具体的の考え方については、関係方面との関係もあり、また私自身も專門でありませんから、そう詳しいことは知つておりません。しかし常識論として考えても、財源がなければ支出はできないのだから、その財源は何かといえば、御指摘のように前年度の剰余金が一つ、あるいは補給金を切つたものが一つ、國庫の賣り拂つたもの、考えられるものはそんなものだと思います。ただそれが三百億あつて、たとえばそのうち百五十億を歳入に計上するにしても、それを災害復旧あるいは失業対策に持つて行くとかいう、直接的なコネクシヨンをつけての予算編成は知りませんけれども、歳入は歳入として一つプールされる、歳出は歳出として一つプールされるということになると思います。しかしいずれにせよ、有力な財源は御指摘の点にあるのですが、それ以上の詳しい、どういう操作をするかという問題は、私は存じません。
  142. 川崎秀二

    川崎委員 先ほど見返り資金より重要なものはないと言われている。しかし見返り資金としては、失業対策の費用は相当限定されるわけだと私は思うのです。そうすると他に財源を求めて行かなければならぬ。そういう意味での失業対策というものを十分考究されて、方針が進められているものなりやいなや、私は投資以外のものにも、失業対策としては非常に重要な部面があると思うのです。特に失業対策といえば、必ず道路の復旧、港湾の整理、ことに道路作業というものは、世界の歴史を見ますと、必ず失業対策の行き詰まつたときには、道路作業というものがやはり一番前面に浮び出て來るものではなかろうか。それは人間と、非常に少い資材で道路作業というものはできる。しかもセメントなどというものは、一時は非常に少かつたけれども、今日は相当に滯貨もあるということで、その方面からするところの隘路は、今日相当打開できるのじやなかろうか。かように考えるので、これはむしろ政府の政策に協力して、先ほどから発言をしておるわけでありますが、その辺に対する見通しはいかがでございますか。ちよつとお尋ねいたします。
  143. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 前の方の重ねての御質問は、失業対策にしろ、災害復旧にしろ、新しい経費の支出でありますから、全然財源もないものを騒ぎ立てたところで、問題にならないのでありますが、川崎委員が今あげましたような二、三の財源となるべきもの、それを実際にしぼつて行くと、どのくらいの財源になるかということと並行して進んでおるというのが、事実でございます。それから道路の問題が出て参りましたが、道路の問題は、緊急失業対策というようなものとして、そのままでやつて行く、その対象としてもいいのでありますし、それで財源があつて行けば、一番いいわけでありまして、それは考えております。しかしこれは結論でありませんが、見返り資金の方からも、道路は必ずしも絶望じやないのじやないかと思う節がありますので、それらは目下折衝中であります。
  144. 川崎秀二

    川崎委員 最後にもう一つ私は要望しておきたいけれども、とにかく総合的な経済政策を運行して行く上において、労働大臣の発言権というものは相当重大なものであると思います。ことに行政整理、企業整備が一應強行されることになつたということならば、民自党あるいは現在の政府としては、一定した方針のもとに進められておる計画ではあると思うけれども、とにかく先手を打つて、労働大臣としてはなるべく失業者は出さないように、その方針を閣内において労働大臣の占むる特殊性に應じて、全力を上げて発言をすべきではなかろうか。私はそれは民自党の閣僚であるから、大藏大臣は財政緊縮政策である。それからあなたは財政膨脹政策だというような、間違つた方向をとれと言うのではない。しかしながらとにかく労働者を預かるべき労働省は、労働者へのサービス省だということを基本の役目として生れた役所の性質として、從來果しておつた、各労働大臣が労働者のために健鬪したように、やはりあなたの持つておられるところの経済政策の蘊蓄を傾けて、大藏大臣がするところの財政緊縮政策一方の考え方と、あなたの考え方というものが、ときには衝突をしてもさしつかえないのじやなかろうか。総合され、調和さして行くところに内閣のよさもあるわけですが、その点ひとつ、今後の労働政策を通じて、あなたの発言が強大になるように切に希望しておきます。
  145. 春日正一

    ○春日委員 労働大臣にお聽きしたいことがたくさんあるわけですが、ただいまの話を聞いておると、私もつい経済論争に入りたくなるのですけれども、大体こまかい原則的な問題のうち、特に重要と思われるものからお聞きして、結論的にそこへ行きたいと思うのです。大体今度まわつて見て、失業者が非常に多く出ておる、そうして職業安定所などへ行つてみても、失業保險を受取る人間が毎月ほとんど倍加するというような状態にふえて行く。だからあすこの安定所の仕事の状態を見ると、これはとても手が足らぬという状態になつておる。事実そうなつておる。どこに行つても安定所に行つてみればそういう状態がある。そう言われておる。基準局に行つて見ましても、最近非常に基準法違反のいろいろな問題があるけれども、十分に監督し切れないということを言つておる。これに対しては大体二通りの意向があるようです。正式にというのじやないけれども、耳にささやくような調子で言う意向は、一つはまあしようがない、人が足りなければ、足りないだけでやり放せという考え方と、もう一つの方は、もう人が足りなくなればしようがないから、今まではなるべくそうさせずに、手を盡して來た問題でも、どんどん送つてしまえという方法をとるか、どつちかよりしようがないということを言つておる。こういう実情から見て、この労働省管内の、特に今問題になつておる基準局関係、あるいは職安の関係、これは私がこの前の國会でずいぶん大臣にも言つたのです。この状態で首を切つたのじや仕事にならぬと言つたのですけれども、今度まわつて見て、現実にもうそれが大きく出ておる。それ以上仕事がとても間に合わぬという状態が出ておる。そういう状態でも、なおかつ大臣は、定員法なんだからどうしても三割切つてしまう。できなくてもいいと言われるのかどうか。まずそれをひとつお答え願いたいと思います。
  146. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 三割と言われるが、基準局関係は一割八分であります。けれども多少そこに出入りがありますが、そんなことは大した問題ではありません。三割と言つても、定員と実員がありますから……。要するに結論といたしましては、定員法といいますか、現内閣の根本方針であるところの行政整理というものは、この前の國会で決定したところの線に沿つて実行する方向に変りはありません。それから特に安定所について言われましたけれども、行政の輻湊という問題は、これは保險金の支拂額の逓増というものも、私たちも数字を見てよく知つております。ただ去年まではこれはほとんど開店休業にもひとしくして、とりに來なくて五十億の金が余つてしまつたという状態でありましたが、あれはまつたく不自然な状態であります。保險に関する限りは、積立金の方は入つて來るけれども、支拂いの方は、ほとんどとりに來なかつたのが実情でありますから、それから五割、六割くらいふえても、ただちに現在の人員でもつて、どうにもこうにも一ぱいで、はみ出してしまうというところにも行くことはないと思いますけれども、結果としては、春日委員の御指摘になりました問題につきましては、十分考えなければならない。しかしそれは定員法自体を、労働省に限つて修正してしまうというような方向において考えるということは、ないのでありまして、目下檢討してはおります。これらの問題に対して、どういうふうに円滑に片づけたらいいかということを檢討しておりますけれども、今の定員法自体の問題は、最初にお答えした通りであります。
  147. 春日正一

    ○春日委員 それから次にこれに関連しまして、方々の工場で首を盛んに切つておる。それを整理する場合に、たとえば京都の島津製作所へ行つても、ひどい整理基準というものをつくつておる。たとえば責任感ということでなく、からだがちよつとくらい惡くても、出て來て働く者は成績優等だ、こういう基準を出しておる。それは明らかに基準法違反だ。からだが悪くても出て來た者は優等だと書いている。そういうような基準をきめて、それにあてはめる場合に、組合運動の活動分子——共産党の者もたくさん入つておりますけれども、それをそういうものにあてはめて首切るということが行われておる。これは島津製作所だけではなくて、ほかの工場を聞いてみても、大体この首切り基準というものは、何でもあてはめることができるようになつていて、組合の活動を封じておる。これは明らかにいわゆる不当労働行為である。労働組合運動をやつたがために切るということは、はつきりつてないけれども、しかし実際には切つておる。そうして組合を弱めるようなことをやつておる。こういうことに対する大臣の見解を伺いたい。
  148. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 労働行政自体といたしましては、政党その他そういつた問題によつて差別があるべきでなく、また労働関係法規も、そういう建前になつておることは間違いないし、また実際の整理の問題にあたりましても、幾つかの整理の基準はあるのでありましようけれども、特に政党をもつて整理の基準とすることがあるべきでないという考え方には間違いはありません。しかし結果として、共産党員がこれだけ切られているじやないかという、具体的の結果を持ち出されるかもしれませんけれども、それは一々の個々のケースといたしまして、現実にそのケースについて、不当の、労働法の精神自体をまつたく蹂躙してしまうような、そういつた形のものに対しましては、個々の問題について調査もいたしましようし、善処もいたします。しかし頭から政党、そういつたものを整理の基準なり、あるいは特殊の除外的な方向に持つて行くという考え方は、労働行政及び労働法にないのは当然でありまする
  149. 春日正一

    ○春日委員 もう一つお伺いしたいのですが、今度の國鉄の中鬪の首切り、あの問題について政府は、あの中鬪委員で首を切られた連中は、政府に協力しないから首を切つたといわれておる。少くともあれは労働組合の幹部だ。政府が首を切ると言つたときに——これは会社でも同じだけれども、会社が首を切ると言つたときに、組合幹部がこれに協力することが考えられるか。そんなものは労働組合じやない。賃金を引下げるという場合に、これに協力する労働組合の幹部というものが考えられるか。当然そうなれば、労働組合幹部が首切りに反対して、團体交渉を申し入れ、最後まで犠牲をできるだけ少くしようとするのがあたりまえだ。それを、しかも政府自体が公然と新聞に発表して、これらの者は首切りに反対して政府に非協力だ、だから首切る、そういうことになれば、國鉄労働組合は政府に協力する幹部によつて構成さるべしということを、政府が要求しておることだ。明らかにこれは御用組合になることを要求していることだ。今大臣の言われた労働行政の精神とまるで違う。この点労働大臣としてどう扱うか、お聞きしたい。
  150. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 別に矛盾しておると考えません。國鉄の組合の幹部であるから切つたのでもないだろうし、政党の関係において切つたのでもないでありましようし、國鉄の当事者自身として、勤怠その他をそれぞれのケースについて判断して、そうして整理されたのであつて、その点において國鉄の当事者の、その角度の判断において誤りがないのであるならば、それでよいのであります。但しその判断において誤りがないがどうか。私自身はそれほどまでに國鉄事情知つておりませんけれども、私は國鉄当局者が、その判断を誤るほど、無能でも不見識でもないと思います。
  151. 春日正一

    ○春日委員 個々のケースにおいて切つた、そういうふうに言つていますけれども國鉄当局の発表しているのを見ても、首切りに反対した、そういうことがはつきり出ておる。とすれば、当然これは組合活動をやつておるのだから、やつておる間は非協力にならざるを得ない。むしろ非協力であるから、それで労資関係がうまく行くところへ行くのであつて、みんなが協力したならば、そんな組合はつぶれてしまう。みんな組合に入らなくなつてしまう。これはあたりまえだ。それをそういう形で切つて、これは個々のケースで切つた、某はこうだ、某はこうだ——島津製作所の今代君という人が、私のケースはこれですと言つてつて來た。組合の鬪争委員長になつたんだ。この人が、無能、暗愚、愚劣にして何とかというような、ひどい点をつけられている。他人と融和せず、どうにもならぬという点をつけられておる。他人と融和しない者が組合の鬪爭委員長になれるか。また無能、暗愚ににして何にもできない人間が、組合の鬪爭委員長になれるか。五千の人間から選出されて鬪爭委員長になれるか。常識で考えたつてわかることである。それをそういう点をつけて、しかも点をつけるのは会社でつけるのだと言つてつておる。今の政府がやつておることと同じだ。政府が卒先してそういう模範を示して、日本の労働組合をぶつこわそうとしている。これは個々のケースでという弁解はあろうけれども、問題は國民が納得するかどうかということだ。その点について、特に労働大臣は労働行政をやつておられるのだし、自分の管轄になつているのだから、そういう事態が起らないように十分注意して、そういう不当なものがあれば、これはやつぱりそういう基準で、この際便乘して切つてはならぬというような声明か、通牒を出すくらいな親切味は持つてもらいたいと思う。  それから、その次の問題でありますが、これは全体と関係する問題でありますけれども、最近労働運動において、いろいろ警察が出て行くという事件が起つているわけです。日鋼の場合でも、わかもとの場合でも、國電の場合でも、きようここで問題になつている三つの労働爭議の場合をとつてみても、たくさん警官が出て來た。さきほど吉武君は——今どつかに行つちやつて留守という形になるけれども、あの日鋼の会社の副工場長の手記なんかを持つて來て、悲壮な声で読み上げて、これは春日君の知らぬことだと言うかもしれぬけれども、私はあれを事実だと認めてよろしいと思う。事実と認めても、あれはおおかみの泣言にすぎない。おおかみというやつが、イソツプ物語じや、人を食おうとした。その食われようとした人が抵抗すると、お前は暴力を使つたといつて非難するのと同じだ。あの日鋼事件の起る前に、すでに賃金の遅配を一月からやつておる。基準法二十四條によつて、遅配をやつちやいかぬということになつておるんだけれども、これが一月からずつと続けられて來て、四月、五月とますますひどい状態になつているのに、これに対して何らの保護も加えられてない。これは一つのケースだけれども、全國にそういうのがふえておる。基準局に行つてみると、ずいぶん努力して拂うようにしております、一億数千万円拂われましたと言う。しかし拂つているはじから、またその次の月から、遅配がどんどんふえているという状態になつておる。これについて何らの解決も與えない。しかも普通余裕のある人なら、一月、半月遅れることは何でもないけれども、労働者の生活というものは、ほんとうにその月の金でその月一ぱいまかなつて、辛うじて生きて行く生活で、十日遅れたとしても非常に苦しい。現に私、よく近所の人から、三百円貸してくれとか言われる。配給をとりに行く金がないから貸してくれ、そういう事件がちよいちよい起る。そういう事件が起つているときに、賃金の遅配が行われる。これじや何にもめんどうを見ていないということが言えると思う。五月の二十五日に團体交渉を打切つた。しかし就業規則とか、あるいは賃金の問題、退職手当の問題、これはそのまま有効だという覚書までとりかわされておるにもかかわらず、六月二日に首切りを発表して、そのときには、今度首になる者は、退職手当を六箇月分出すという協約になつているにかかわらす、今度出る者は五千円しかやらない、こういうことをやつている。六箇月分やると言つて約束しておつたものを、一方的に五千円しかやらないと言つて、とつてしまつた。これは暴力じやないかもしれない。なるほど資本家に言わすれば、賃金支拂いをしないというのは暴力でないかもしれない。そういう約束をしたのを、六箇月を五千円に打切つてしまうというのも暴力でないかもしれない。しかしこれをやられるのは、ぶんなぐられるよりもつらしい。労働者にとつては生きるか死ぬかの切実な問題になつておる。國体交渉はもうしないと言つて、あそこの工場長は逃げてしまつておる。さつき呼び出されたという、読み上げられた手記を書いた人も、実は工場長の代理になつている人だ。そういう人を差出しておいて、会わないのは私の自由だと言う。そうしていいかげんな者を交渉の表面に出させておいて、それで團体交渉をしてくれと言う。ところがこの連中からも、会わないと言われてつつぱなされたら、これらの從業員はどうしたらよいか。正常なる國体交渉とあなたは言うが、正常な團体交渉を持ちたくても、これをのめ、のめなければもう会わぬ、こういう調子でやられて來たら、一体どうしたらよいか。どうしたつて、みんなおるところに來て説明してくれ、話をつけろと言わざるを得ない。そういうところに來たときの状態を聞いてみると、解雇通知を返上する、受取れぬ、それではとにかく取次いでくれ、取次ぎはいやだ、預かつてくれ、預かるだけなら預かるから、金庫の中に入れておけ、あしたになつたら返す、こういうことになると、貴様ら人間かという言葉が出るにきまつている。だから問題は、この事件の起つたところを見て、乱暴な言葉を使つたので、工場長がびつくりして氣絶したから、これは犯罪だというようなことでは、労働問題は解決つかないと思う。これは國電の場合も同じです。東神奈川車掌区の事情は私もよく知つておるのですが、三十五疊の部屋に五十人とめる。とまれるかというのです。しかもふとんが七十一組で、よいものはみんな区長とか何とかいう者が持つて行つてしまう。一人にみのぶとん一枚しか渡らない。そして夕飯も何もないから、とまれば、そばやうどんを食つて、勤めたときよりよけい金を使うことになつしまう。こういう設備で、新交番制でやれ、もう少し待つてくれ、そうすると業務命令だ、やれ、というような押しつけをする。聞かなければ首を切る。それでそのときの口のきき方が惡かつたとか、大勢集まつて悪い言葉を使つたとか、そういうことを言つて、私に言わせれば因縁をつけてひつぱる。だから問題がちつとも片づかない。労働者は、自分が惡いことをしたと納得すれば、警察からやられても、惡かつたといつて改めるけれども、むりおしに押えつけられて、困るから何とかと言つてすがつて來る者を、けとばすようなことをするから、怒る。だから方々で事件が起る。彈圧したからといつて、やめてしまわずに、また起るということになるから、この点は労働大臣はもつと考える必要があるのではないか。事前にそこまで行かぬうちに、栓を抜いて、圧力を一ぱいにしないようにする処置がとられなければならぬ。問題の根本はそこにあると思う。それをああいうおおかみの泣言みたいなのを持つて來て、この通り私が罵倒されて卒倒しましたなどということは、ナンセンスだ。労働者にとつてみれば、もつとひどい目にあつた者がある。そういうのを持つて來れば、いつまでたつても、問題は解決できない。しからばどこで一体解決がつくか。現在資本家も労働者も仕事がない。私どもが方々をまわつてみても、仕事がないということを言われる。だから國会でひとつ仕事をくれるように骨折つてくださいと、資本家からも、労働者からも言われる。会社が経営難で首を切つているところに行つて聞いてみると、金融難、賣掛金がふえていること、品物が賣れなくなつたこと、この三つが全部共通している。こういう状態で、私どもの考えからいえば、まじめな事業家であるならば、自分の仕事を大きくして行きたいとは思つてつても、首を切りたいと考えるような者はないと思う。それでもやはり首を切らねばならぬ。そうして結局は首を切つて、自分は損をしないように、労働者に押しつけることになる。首を切られて労働者はどうするか。失業対策何にもなつていない。八億の緊急対策費でどうか。あの京都の状態はどうか。あそこでは四百人使つているそうだが、一人一日二百円くらいの手間を拂つて使つているけれども、一週間に一日しか働かさない。みんな交代で働かせる。一週間二百円もらつて生きて行けるか。生きて行けようがない。安定所に行つても就職率八%だ。安定所に行く氣力もない。大阪や神戸は、京都よりも多少就職率はよいようだが、それだつて二〇%かそこらになつている。そういうような状態で、失業対策何もできていない。特に最近は、農村から失業者が流れ出て來ているということを言つている。そういう失業対策のない状態のところで、首を切つてほうり出すことになれば、労働者にとつてはどこに行つたらよいか。行く先がない。行先きめずに出て行け、出て行けませんと言つて、工場にすわり込む。そうしたら根棒持つてきてぶんなぐる。こういうむちやな扱いがあるか。春日のやつは口が乱暴でということはあなた方も……。
  152. 倉石忠雄

    倉石委員長 春日さん、御発言中ですが、お互いに時間も経過しておりますから、質疑の要旨をひとつ……。
  153. 春日正一

    ○春日委員 そういうことになつておる。そういうわけで行くところもきめず、首切つておるという状態が出て來ておる。そこに今日の労働運動の一番深刻な点がある。しかも労働政策として、今まで産業の復興ということを言つて來ておる。生産を増強するということを言つて來ておる。しかし今日ではそれがきかなくなつておる。この深刻な状態を大臣考えてもらいたい。生産増強をすればするだけ、よけい首切らなければならぬ。つくつた品物が賣れないから、そういうひどい状態になつておる。ここのところをどう解決するかということをつかまなければ、労働問題の解決ということにならぬと思う。警察力を増強して、むだに國費を使つたつて、それで労働問題が解決するものじやない。またそこで押えれば、どつかほかの方に惡い形で出て行くにきまつている。だからそこの点が問題だと思う。そういうことになると、ただいま大臣がいろいろ言われたけれども、私非常に遺憾に思う。この点は明らかに政府の黒星だと思うのですが、こういう失業者どんどん出て來て、首を切るぞといつて、四月に始まつて、最近ますます大規模になつておるのに、これを受入れる準備がない。將來見返り資金が百億來るか、二百億來るか知らぬが、現在、ただいま出ていない。だから私はこの際そういう事態を起さないようにするためには、やはりその準備ができるまで、首切らないで一度待て、そういう対策をとるべきであると思う。しかしこの点大臣の考えはどうかという点が一つ。  ついでに忙しいようですから、聞いてしまいますけれども、先ほど來大臣は、見返り資金を使つて、いろいろ産業方面に投資されるようにすると言つている。しかし今日の失業問題、労働問題の一番根本の点は、物をつくつて賣れないということです。これをどう考えておるか。政府の最初の方針では、とにかく集中生産をやつて、安くつくつて外國へ賣るという方針をとつておられた。しかもこの輸出が、最近の発表を見ても、どうもはかばかしくない。繊維産業でさえ、ストツクが二箇月分、三箇月分たまつている状態になつている。こういう状態で、かりに千四百億打ちこんで仕事をして、品物をつくつても、どこへ賣るか。この目途をはつきりつかんでいるか。これをつかまなければ、つくつてみてもどうにもならぬ。ここに問題があると思う。だからどうしても今日のこの状態では、政府のそういう失業に対する考え方、首切つてどうにもならなくなつて騒ぎ出してから救つてやるのではなくて、首切るときには、ずつとここに入れるという対策を立ててやるということに、かえなければならぬ。それから輸出をして、それで賣れるというなら、ここでどこへどのくらい賣れるというはつきりした数字、見通しを出してもらいたい。賣れないというなら、國内の消費の市場をどうしてつくつて行くか。購買力をどうして高めるかという点の見解を、はつきり聞きたいと思う。これができなければ、やはりいくら失業対策をやりますといつたところで、物が賣れなければ、つくつてもしようがない。どうにもならぬ。輸出輸出と言つて賣れない物をつくることよりも、國内で購賣力をつくつて、國内に賣らせる。つまりお得意樣をつくつてやるという政策にかえるべきではないか。その点、大臣から答弁を願いたい。
  154. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府当局の御答弁も、なるべく簡明、直截にお願いいたします。
  155. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 春日委員から廣い意味の経済論をお聞きしたのでありますが、賣れない物をつくつてもしようがないというふうな考え方は、だれが考えてもそうだと思うのであります。しかし今賣れないといつても、経済には一つの変動の波もあり、また世界情勢と結びついていろいろな問題が動いて行くのですけれども、必ずしも世界情勢の波も一方にばかり動いて行くのではないのであります。今賣れないからといつて、賣れないという建前のもとに、日本の経済を全部切りかえてしまう必要はないのでありまして、そこに幾つかの総合的な経済施策というものを展開して、賣れるように努力もし、また一方において、ただいま御指摘になりました國内需要、購買力の問題というふうな方面に対しても、金融的措置その他をやつて行くことも、むろん必要だろうと思います。要するに総合的にそういうものをやつて行くのでありますけれども、今日の委員会の性質からいつて、それらの経済的な事態についての檢討というものは、必ずしも春日委員の御質問の趣旨でもないと思いますので、別の機会にまた御意見を聞き、また私どもの意見も聞いていただきたいと思います。端的に申しまして、そういう措置がつくまで行政整理はやめろ、企業の整備はやめてしまえというのが、御指摘の中心であつたように思います。そうしてその理由は、失業対策の受入れ態勢もでき上つていないからやめろ。こういつた意味にとつております。失業対策自体は、いずれの國においてもきわめて困難な問題ではありますけれども、春日委員の御指摘になりましたような、何らの失業対策もでき上つておらないということは、あまりに從來の挾い意味の、今世紀の初めにイギリスがやつたような意味の失業対策にばかり、膠着し過ぎた考え方である傾きもあるのでありまして、今申しましたような、廣い意味の失業対策というものを含めたところの失業対策が、すでに着々準備されておるのでありまして、それだけの理由からして、行政整理をやめてしまうという、大方向轉換をするということを、政府がお答えするだけの十分な根拠はないと思います。むしろ既定の線に沿つて、幾多の障害を排除しつつ、失業対策にも、あるいは経済の再建にも、幾つかの新しい手を國民とともに打つて、努力を累積して行くということが、やはり本格的のかつこうだと思うのであります。
  156. 春日正一

    ○春日委員 大体考え方は平行線ですけれども、ただこうやつてどもがここで質問應答をしておる間にも、非常に食えない状態がどんどん出て來ておる。だからこれは緊急な問題です。大臣の遠大な理想は理想として、ともかくこの緊急な問題をすぐ片づけるということをやらなければ、政府責任は果せない。一切の起つて來るこういう労働紛爭の全責任は、やはり政府がそれに手をつけぬところにある。この点を十分考えてもらいたい。これで私は終ります。
  157. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 春日委員のただいま御指摘になりました点に、幾多の傾聽すべき点もあると思います。了承いたしました。
  158. 石野久男

    ○石野委員 委員長から時間を非常に詰められておりますから、簡単に二つのことだけ、お尋ねを兼ねてお願いしたい。  これは先ほど川崎委員からも特に最後にお話がありました。いわゆる政府の予算操作の問題等について、特に支出面における、労働大臣の失業対策を含んでの問題としての発言を、強くやつてほしいという意味のことがあつたように存じております。私はやはりこの際、特に今日の社会不安の一大原因が、この失業問題を契機として出ておる時期だと思いますので、ぜひひとつ労働大臣は政府部内におきまして、失業対策のために積極的な発言をなさいまして、もつともつと失業救済の実際の労政業務をやつて行くようにしていただきたいと思います。特に私どもは、今度東北地方をずつと歩いて事情をよく見ましても、たとえば郡山地区におきましての実情を見ましても、最近では大体十五人に二人しか、毎日の就職者のあつせんをすることができない。從來は十人に七人くらいの就職あつせんができておつた。またつい先ほど事件のありました平市のごときにおいても、三十人に二人くらいしか、この一箇月ほどほとんど就職あつせんすることができないという実情になつておる。このことは先ほど春日君からもお話がありましたように、職を失つて苦しんでおる労働者の、ほんとうに若しい実情を如実に現わしておると思うのでありまして、私どもがここで議論しておるよりも、そういう現実に直面しておる労働者諸君、失業にあえいでおる諸君らのことを、やはりもつと労働大臣が、ほんとうに身に体して行政面に当つていただきたいということを、特に私は第一にお願いしたい。  それから第二の点においてお尋ねいたしたいのでありますが、これは先ほど春日委員からも質問のありました今度の國鉄の、昨日発表されましたいわゆる中間の十四名に対する馘首の問題であります。  この点について一つだけ労働大臣にお尋ねしたい。公共企業体労働関係法の第五條の條項は、すでに御承知のように、組合運動に関係したことをもつて馘首されないと、はつきり明示しておるわけであります。今度の定員法による首切りとこれとの関連性が、どのようにあるのか。定員法は一切の他の法律に対して関係なしに、独立の立場からやるのだというようなことをしばしば聞いておるのでありますけれども、労働省にとつて、特に公共企業体労働関係法の第五條の問題は、今度の十四名の中鬪委員の解雇にあたつて、どういうふうに関係するのであるかということの見解を、はつきりここでお聞きしておきたい。
  159. 鈴木正文

    ○鈴木國務大臣 前の方の御質問につきましては、むしろ皆様から御声援を得てその線に沿つて活動したいと思います。  第二番目の御質問は、正直のところ、やや文理解釈の問題も出て参りますから、局長から一應その決定しておる点を発表してもらいます。
  160. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 今度の、國鉄の中鬪委員十四名の解職は、総裁の声明もありましたように、定員法に基いて処置をいたしておる、かような見解をとつておるのであります。公共企業体労働関係法の五條は、お話のように組合活動をやつたがゆえに、不利益な取扱いはしてならないということになつておるのであります。從つて今度の定員法に基きます処置に関連いたしましては、これは附則にありますように、公共企業体労働関係法の八條、十九條の適用はない。かようになつておるのであります。
  161. 石野久男

    ○石野委員 これはただいま労政局長から御答弁のありましたように、確かにこの國有鉄道の声明の中には、十四名の者を行政機関職員定員法によつて免職の発令をしたということが書かれておる。その点において私どもは、それならそれでよいというふうに思いますけれども、しかしこの声明書をその後ずつと読んで行きますと、この定員法の云々ということではなくして、むしろ公共企業体労働関係法のこれに該当するような事項がずつと並べてある。事由はほとんど労働運動を通じて政府に協力しなかつた、あるいは不穏の行為をやつたとか、あるいは穏健な分子を策動してあのような実力行使を決定せしめたとか、こういうような労働運動に関係することがその事由だと、ここに書かれておるのでありまして、この点については非常に今後大きな問題を持つて來ようと思います。私はただいまの賀來労政局長の、定員法によつてつたのだということだけでは納得できないのであります。いろいろと論議の問題も、内容が複雑なものがありますので、十分の回答はよろしゆうございますが、概略でよろしゆうございますから、私のただいま聞きました、声明の内容に関する私の見解に対して、政府当局の見解を承りたい。
  162. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 この点に関しましては、先ほど労働大臣からお答え申し上げた通りの考え方を私は持つておるのであります。
  163. 石野久男

    ○石野委員 どうもこれは、それだけであると、ちよつとわかりにくい。時間がありませんので一應読んで見ます。この声明は実に重要でありますし、今後問題の重点になると思いますので、私としてはとにかく、労働委員会としては十分これは檢討を加えなければならぬ問題だと思うのであります。これによりますと、「これ等の者はいずれも、國鉄労働組合中の有力なる指導的分子として、常に組合内の穏健かつ健全なる分子の正常なる組合活動を圧迫し、一般組合員の意向を無視して、独善的鬪爭体制の確立に狂奔し、まじめな従業員を煽動して、あえて違法なる行動をとらしめ、多数の犠牲者を生ぜしめたるにもかかわらず、いまだかつてその責に任ずることなく、また再三にわたる当局の警告にも、あえて反省するところなく、常に背後にあつて平和なる秩序の攪乱を企図しつつあつたものである。」それからしばらく抜きまして、「去る六月下旬の中央委員会においては違法かつ過激な提案を行い『ストを含む実力行使を行う』旨の結論に到達せしめ、また定員法による整理基準の発表による当局側説明の完了もまたず、これに対する絶対的反対の声明を発し、あくまで反対抗爭の決意を誇示して、善良なる職員を煽動する」云々というように書いてあるのでございます。これがほとんど今度の定員法によつて首切るのだという、理由になつておるわけであります。こういうことでは定員法の理由とはまた違うと私たちは思うのであります。これは明らかに、公共企業体労働関係法の第五條に該当する内容を持つておるものだと私は思う。そういうことが、この声明の主たるものであるということになりますと、最初に当局が「本日國有鉄道当局は、國鉄労組中央鬪爭委員会中十四名の者を行政機関職員定員法によつて免職の発令をした」ということと、意味が非常に違うのでございます。私ども労働運動の経驗にかんがみまして、こういう内容を持つ、特に六月下旬におけるところの熱海の決議まで、一部指導者によつて決議せしめたということなど、当局がこのようなことを言うことは実におかしい。組合運動をなしておつて、しかも五十万もの組合において、わずかに十数名の者がこれだけの決議を強行せしめたという結論を出すことは、実にわれわれにとつては解せないのであります。國鉄ではそのように非民主的に、ほんとうに独裁的なことがやられておるのかどうか。少くともあの組合の中において、あの熱海の中央委員会においては、最も民主的に討議が行われておるというふうに、われわれは信じておるのでございます。しかるにあの決議が因になり果になつて、この馘首が行われたとすれば、これは明らかな組合運動に対する当局の彈圧である。これはあまりにも干渉が過ぎると私たちは思うのでありまして、これでは決して五十万國鉄の労働者諸君は納得できないであろう。おそらく民同の諸君でも、こういう声明に対しては満足ではなかろうと私は思うのであります。労働組合が、ほんとうに労働組合の眞髄をもつて、その相手方であるところの経営者なり、あるいは資本家の諸君に対立することは、その力が弱いからこそ、自分たちの力を結集して、自分たちの利益を守ろうとする運動をしておる。首切りということは労働者にとつては決定的である。お前たちは死ねということと同じである。特に民主自由党が失業対策というものを何ら用意することなく、このような厖大な首切りをすることは、労働者としては默つて聞き得られるものではない。從つて死ねと言われるところの、こうした首切りに対して、率然と立つて、自分たちの力を発揮するということを決議するのが、なぜ違法であるのか、なぜそれが不穏当なのか、労働組合法はそういうことを決議させるために、十分なる法の保護を與えなければならないし、また憲法はそういう権利を保障しておるのである。私はあの國鉄の六月下旬において決定したといわれる六項目にわたる決議内容が、そのように、世の中が騒ぐように不穏当なものであるかどうかということを、まず考えなければならぬと思う。政府当局に私は聞きたい。あの決議のどこにそういう不穏当なものがあるか。しかもその後約一箇月有余にわたつて、続いて起つている鬪爭の過程において、中鬪の中からこの十四名が首切りの対象になつている。その具体的な事実がどこにあるか、これをはつきりとわれわれは、当局から聞かなければならぬとさえ思つております。そういうような内容を持つたこの首切り問題につきまして、私は賀來労政局長、あるいは労働大臣が、ただ定員法によつてこれをやつたのだということで逃げられているのでは、労働委員会としては納得行かない問題を含んでいると思います。もつとこの点について、眞劍な御答弁をいただきたい。私はあえてこの問題をどうの、こうのと言うのではありません。声明の内容が、明らかに公共企業体労働関係法の第五條に触れる内容を、その全文を通じて書かれているから、いま一度御答弁いただきたい。
  164. 賀來才二郎

    ○賀來説明員 あの声明文を読んでいると、御指摘のように、いかにも公共企業体労働関係法の十七條に該当するのではないかというような事項が列挙されております。もし石野委員のような御解釈で参るということになりますると、政府の公共企業体労働関係法第十七條の解釈から申しますれば、幹部諸君には十七條が該当になつて、十八條で解雇せられることになる。かようなことになると、十八條によつて一切の雇用上の権利を失うことになります。われわれとしては、これらの処置はいずれにいたしましても、定員法にしても、公共企業体労働関係にしても、これはその当事者の、使用者の立場にある者が処置するのであります。特に公共企業体労働関係法においては、労働処分としての処分がせられることになります。もしそれらの処分が法に違反して、たとえば第五條の規定によるがごとく、正当なる労働組合の活動をやつたがゆえに、一方的にやつたということになれば、労働省としてもこれを默過するわけに行きません。しかし國有鉄道の当局者は、かような法律に違反する処置を講ずるものとは考えられないのであります。特に定員法によつて処置をした結果は、幹部諸君は雇用上の一切の権利を失うことはなくして、今度の定員法に基く退職金規定の処置も受けられる、かようにわれわれは考えているのであります。
  165. 倉石忠雄

    倉石委員長 この点はこの程度にとどめまして、本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十七分散会