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賀來政府委員 政務次官の
お答えに対しまして、補足的に私から申し上げたいと思います。
全体といたしましては、不明確な点、あるいは欠けた点を補正をいたしたのでありまするが、具体的に申して参りますと、ます第
一條の第二項の
但書におきまして、
労働組合の正当なる
行為というものにつきましての、注意を喚起いたしておる点であります。これは今日まで、社会通念上、正当なというのは当然わかるだろうというふうな
考えで参りましたのが、一部指導者の間違
つた指導もあ
つたかもしれませんが、
労働者がそれがために
刑法上の違法の
行為を犯しまして、処罰をされたという例もあ
つたのであります。これらの点は、たとえて申しますならば、今度も書いてありますように、「
暴力の行使は」というふうな
書き方をすることによりまして、注意をいたしますと、いたずらな犠牲者を
労働者から出さずに済むんじやないかという点であります。
第
二條におきまして、
從來非常に不明確であ
つた点、たとえて申しますならば、
組合に加入いたします者の
範囲が不明確だとか、あるいは
経費の点が、主たる
経費という
程度でありましたがために、
労働組合が
自主性を失
つたりいたしておるのであります。これらの点を明確にいたしまして、いたずらな紛議が起らないように、
労働組合か
自主性を失わないというふうな点に注意した点であります。
第三は、
從來労働組合は、設立いたしますと届出をいたします。またそれに対しまして、行政官廳が資格の審査をし、あるいは
規約の変更を命じ、違法的な
行為に出ますると、裁判所は解散を命ずる。審査の結果もまた解散になる。かような場合がありましたのが、今度は自由設立主義を徹底いたしまして、
労働組合というものは、憲法二十八條に基きまして、いかなる團結をしてもよろしいのであります。ただ
法律が保護をいたすという
関係もありまして、
組合は最小限度かような
規約は備えておらなければならないということを示しておるのであります。
その次は、
不当労働行為の
範囲を明確にし、拡充をいたしておる点であります。
從來の
法律におきましても、第十
一條におきまして、
不当労働行為の問題は取上げられてお
つたのでありますけれども、過去三箇年の経驗によりますると、十
一條違反の事件は逐次増大をいたしております。のみならず、このために被害をこうむる
労働者の被害の
程度が、時間的にも量的にもだんだん多くなるという
傾向にな
つてお
つたのであります。これに対しまして、今度はその
不当労働行為の
範囲を明確にし、また拡充いたしますとともに、
從來はこの処分につきましては、裁判所がや
つておりまして、ただちに原状回復を命ずる等のことがなか
つたのでありますけれども、今度の
法案におきましては、
労働委員会が原状回復を命ずることができて、遅くとも三十日以内には、この問題が基本的には片づいて行くというように書いておる点であります。
次に
労働委員会が、
從來三者構成の一体といたしましての処置を、準司法的な処置に関しましては、とるというふうなことにな
つておるのでありまするが、それでは今日までの十
一條違反の実情を見ましても、取扱いました件数のうちで、裁判所に参りました件数は非常に少い。しかもそれが有罪にな
つた件数はまたさらに少いのであります。この点の参考の資料は、すでに先般差上げてありまするが、結果におきまして正当なる判断というものは、なかなか下しにくい状態にあ
つたのでありますけれども、今度は迅速にこれを処理するという
意味におきまして、
労働委員会の権限を拡充いたしますとともに、さらに地方
労働委員会と中央
労働委員会との
関係を調整いたしまして、全体的な
爭議あるいは紛議というようなものが、秩序正しく、
一つの統一された方針のもとに片づいて行くようにいたした点であります。以上が大体今度の
法案におきまして、
現行法よりも
改正したということが言える点であります。
結論といたしましては、
労働組合と
使用者との間の対等なる、正常なる
関係を明確に調整いたしまするとともに、
労働組合の
自主性、
民主性、特に九原則が至上命令とな
つておりまする今日、
労働組合の
責任性を明確にいたした点、これらが
改正にな
つたおもなる点だと
考えておる次第であります。
次に團体交渉の問題でありますが、第七條の第二項におきまして、團体交渉に應ずる義務を
使用者側に課しております。ただし正当な理由があ
つた場合には、これは拒み得るという
意味の
規定にな
つておるのであります。正当なる理由と申しますのは、この團体交渉は
労働組合にとりましては、最も重要なる仕事の
一つであります。これが秩序正しく、平和的に行われることが必要であることは申し上げるまでもないと
考えるのであります。團体交渉というものは、平和的にかつ秩序ある交渉が行われなければならない。その交渉が平和的にまた秩序正しく行われないことになりますと、團体交渉がうまく妥結することができないのは、今日まで三箇年間の経験から申しましても、当然であります。なおまた
一條二項
但書にありますような
行為、すなわち
刑法の上からも
免責にならないような
行為に出ました
事例が、今日まであるのでありまして、その結果が有罪にな
つた事例も多くあるのでありますが、さような
行為、すなわち脅迫的に出ましたり、あるいは長時間にわた
つて監禁をいたしましたり、また多数の人間が不当に長時間にわたりまして人身に危害を及ぼすおそれのある、あるいは及ぼすような事件が起きるような場合、これらはもちろん正当な團体交渉とは言えないのであります。かような状態におきましては、
使用者は拒み得るものと
考えるのであります。もちろんこれらが正当であるかどうかということにつきましては、
労働委員会がその判定をいたしましようし、最後的には裁判所がその
決定をいたすことと
考えておりまするが、平たく申しまするならば、平和的にかつ秩序ある團体交渉、これは
一般的の社会通念からも出て來ると
考えるのであります。かような社会通念に基いて行われまする團体交渉でありまするならば、これは拒み得ないと
考えるのであります。