○風早
委員 先ほど緊急動議を出したのでありますが、これは今皆さんの大体御了解を得まして、その採決は十二日まで延びたのであります。しかしながらこの際
大藏大臣その他
政府当局に嚴重にお願いしておきたい。今度の
予算案の
審議にあたりまして、とかく
國会を軽くあしらわれる。特にこの
予算委員会のごとき最も重要なる
委員会を、軽くあしらわれるような傾向が、間々あるいはたびたび見えるのでありまして、私
どもは問題の大体の事情は了解いたしておりますけれ
ども、しかしながらこれをそつとしておかれまして、少しも
委員会にお諮りにならない、
國会に堂々とおはかりにならない。そうしてその困難なところを困難だとして私
どもに諮
つてくださらない。こういうふうな点が非常に見受けられるのであります。その意味で私は特に嚴重にこの緊急動議を描出したのであります。この結末は今の皆様方の決議に服する次第であります。
さて今日の第一の
質疑は
大藏大臣にお願いしたい。
大藏大臣はかねがね本
会議におきましても、また当
予算委員会におきましても、今度の
予算案を通じて行われる
政府の政策の根本基調はデイスインフレである。つまりディスインフレ政策をこれによ
つて行うのである。それはインフレでもなければデフレでもない。こういうようなお話であります。デイスインフレ政策をいかに解釈してよろしいか。それによりましては、この
予算案全体に対するわれわれの態度もまたかわ
つて來なければならないと
考えるのであります。私は率直に
大藏大臣のいわゆるデイスインフレ政策なるものは、こういうものじやなかろうかということをここに披瀝いたしまして、
大藏大臣の所見を問うものであります。
大体
大藏大臣は四日の本
会議における
予算演説におきまして、
一般会計、特別会計並びに
政府関係諸機関を通ずる全総合
予算の眞の均衡をはかつたものである。
財政面からするインフレの原因を断ち切つたものであると大見得を切られたと思いますが、これはきわめて悲壯な
考え方ではないかと思う。なるほどこの
予算案は一應
一般会計から赤字公債を排除し、復金債の発行を停止する、特別会計への繰入金を停止する。また
地方財政への配付金を縮減する。しかも特別会計並びに
地方財政の起債にも制限を加える。從來の
予算編成がと
つて参りました
一般会計赤字の
建設公債並びに
地方債への横のしわ寄せというものはこの際抑制せられておる。いかにもインフレ克服を外見は装
つておるのであります。しかしながら一枚皮をはぎますと、実際には從來よりももつと廣汎な、もつと深刻な縦のしわ寄せをはか
つておられる。それによりましてインフレーシヨンの根本的な矛盾をさらに濃厚なものに発展さしておるのであります。
まず第一に中央
地方特別各会計のそれぞれにおきまして、
行政整理——首切りをやる。赤字
負担を官公廳の職員諸君並びに現業の
労働者諸君の犠牲に轄嫁しておる。これこそは、今
一般産業界におきまして、きわめて少数の巨大な独占資本のみの救済のために行われんとしており、また行われつつある集中生産、
企業合理化、この線によりまして、民族産業、中小商工業者の
人たち、さらに
労働者の大量首切りという方向へ犠牲を轉嫁しておる。この犠牲轉嫁の
一環であると
考えるのであります。
第二にはこの横のしわ寄せそのものも、これはきわめて深刻にな
つて来ておる。從來は中央会計から特別会計への繰入金、
地方会計への配付金をそれぞれ流して、特別会計には
建設公債を発行し、
地方会計には
地方公債を発行して、量的にはインフレを拡大しておる方針を
とつたのでありますが、この
予算案の編成にあた
つては、これとは逆にこういうものはすべてやめてしまう。ところが中央と
地方の
財政を形式的に絶縁しまして、中央から
地方へのしわ寄せをやめたようでありますけれ
ども、ほかの條件をそのままにしてやる。繰入金の停止というものはすでに問題にな
つておりますように、これは特別会計なり、
地方財政に非常に深刻な
負担を負わせるものでありまして、特に
地方配付金の縮小によりまして、
地方財政はまた
地方起債の制限と板ばさみにな
つて、もうつぶれることになるのではないか。そのようにして特別会計、
地方財政は、今度はその赤字の補填といたしましてさつそく
地方税の増徴をやる。現にやると言
つておる。大量首切りに上りまして縦に多数の職員の犠牲
負担を要求する。もしくはこれは
地方財政の場合でありますが、天くだり的な強制的寄付金の割当によりまして、廣汎に
地方民全体の犠牲
負担のしわ寄せをはか
つて行く、こういうことになるのであります。現に中央
財政で
公共事業費が削減せられ、これで六・三制
関係の
建設費はゼロにな
つている。そのしわ寄せをこの種の系統的な寄付の割当に求めておるという実例がある。警察
施設関係の拡張のための強制寄付の割当とともに、こういう一切の犠牲
負担を縦に及ぼすとか、そのほか
一般の
地方民に轉嫁して行
つておるのじやないか。そういう点が今度の
予算案の
一つの特色であると思う。そのようにいたしまして、ますます廣汎な
國民の各層、つまり今まではただ
労働者であるとか、農民であるとか、
一般のサラリーマンであるとかいわれておつた
人たちに対しまして、さらに廣汎に産業資本家や中小商工業者もこの犠牲
負担を受けなければならない。低
賃金とか、
失業とか、破産とかによりまして、今はもう購買力が低下するというようななまぬるい
状態を
通り越しまして、中には餓死的な
状態に落ち込んでいる者が幾らもあるそういう反面に、これはあとで申し上げますが、大きな資本家
——これはきわめて少数です。この資本家だけが、いろいろな面から恩恵をこうむるという矛盾が来ております。大体私はインフレーシヨンの特質を、どこまでもこういう階級的な收奪性というところに見ておるのでありまして、その意味から申しますと、これはますますインフレーシヨンを惡く内訌させるものにほかならないと断じてはばからないのであります。
安本の発表になる
経済白書によりますと、ただ
日本銀行券の発行高の統計だけでも
つてインフレーシヨンの進行を判断しておる。二十三
年度を通じてインフレの進行は鈍化したというように結論しております。その点については後ほど青木
安本長官にただしたいのであります。ところが日銀券の発行高の増減率は、これはただインフレーシヨンの指標にすぎないのでありましで、すでにインフレはできておるのであります。こういう
状態のもとでは、いろいろの税金、通貨の回轉率であるとか、それに関連しまして手形の流通高であるとか、市中銀行の貸出し
状況であるとか、多数の條件を組合せなければ、單純には結論できないものであります。しかし
経済白書では
簡單にインフレは收束するということを言
つておる。これで大衆をだまそうとしておるという意図がうかがわれるのであります。しかしもつと大事なことは、かような流通
手段、流通量の中で多くの割合というものは、ますます少数の大資本家の手の中に帰してしまう。少数の割合というものが、ますます大多数の
國民大衆に残されるという矛盾にな
つております。この
予算案の作成の基礎をなします
物價に対する織込み
賃金は、大体
政府の説明によれば、三千七百円に対して一・六倍である。もちろんこれは六千百四十二円ベースで、きわめて低いのである。六千三百円ベースという既定のベースよりもさらに低いのである。さらにまた首切りの問題がすでに詳細に論じられております。さらにまた昨年に倍するごとき重税が主として下の者に押しつけられております。これは徹頭徹尾收奪
予算であることがわかるのであります。そのことが何よりも雄弁にインフレーシヨンの階級的な攻奪性を、最も明瞭に示すものであると
考えるのであります。最近数日間の
予算委員会におけるいろいろな
質疑應答におきまして、民自党の方々がインフレーシヨンを急速にやめて、デフレーシヨンに移るのではないかという点にたいへんな危惧を示しておるのであります。ところが
政府の方ではいやそうではない、デイスインフレだとい
つているのであります。もしも民自党の危惧されるような意味におきましてならば、実はインフレーシヨンは量的にもますます発展するのでありましで、その御心配はないと私は
考える。むしろわれわれにと
つても心配で、このインフレーシヨンがこれから量的にも大いに発展することにつきまして、私はまず
安本長官並びに大磯大臣に、日銀券の膨脹の大体の見通しをこの一年間について伺
つておきたい。これは特に
安本長官にも伺
つておきたい。とかく
安本の見解と大蔵省の判断は食い違うことが多いのでありまして、この際お二方から同時にお聞きしてみたいと思います。大体デイスインフレーシヨン策は、私が今申し上げましたように階級的な收奪性というもの、すなわちインフレーシヨンの階級的な收奪の役割と、デフレーシヨンの階級的な攻奪的役割とを兼ね備えた最も惡質なインフレーシヨン政策であるとここに断じて、これに対して
大藏大臣の所見を伺いたい、このわれわれの判断が間違
つていないとすれば、これによ
つてこの
予算案に対する全体の態度を決定しなければならないのであります。非常に必要でありますから、ぜひお聞きしたい。私は通貨の増発も依然としてこれからそのテンポをゆるめないという見通しを持
つております。たとえば
建設公債、
地方起債の発行、またざらに産業資金、特に長期資金というふうなものはやらないのではない、ただ財源が今までは
一般会計からの繰入金であ
つて、そのかわり今度は主として対日援助資金、いわゆる見返り勘定に財源を求めるようにかわつただけでありまして、そこから今後再びインフレーシヨンの大きな発展が量的にも見られるのであります。この点はなお両大臣から日銀券の膨脹の大体の見通しのお答えによりまして、さらに
質問を続けてみたいと思います。これで第一の
質問は終りたいと思います。