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1949-04-09 第5回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年四月九日(土)     午前十一時十九分開議  出席委員    委員長 植原悦二郎君    理事 池田正之輔君 理事 上林山榮吉君    理事 庄司 一郎君 理事 西村 久之君    理事 水田三喜男君 理事 三宅 正一君    理事 中曽根康弘君 理事 志賀 義雄君    理事 圖司 安正君 理事 今井  耕君       天野 公義君    井手 光治君       井上信貴男君    小金 義照君       小平 久雄君    小峯 柳多君       尾崎 末吉君    鈴木 明良君       高橋  等君    田中 啓一君       玉置  實君    中村 幸八君       西村 英一君    野原 正勝君       平島 良一君    松浦 東介君       松野 頼三君    松本 一郎君       山本 久雄君    若松 虎雄君       有田 喜一君    小坂善太郎君       笹山茂太郎君    鈴木 幹雄君       稻村 順三君    西村 榮一君       川島 金次君    風早八十二君       野坂 參三君    米原  昶君       松本六太郎君    黒田 寿男君  出席國務大臣         大 藏 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 高瀬荘太郎君         農 林 大 臣 森 幸太郎君         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         逓 信 大 臣 小澤佐重喜君         労 働 大 臣 鈴木 正文君         建 設 大 臣 益谷 秀次君         國 務 大 臣 青木 孝義君  出席政府委員         内閣官房長官  増田甲子七君         総理廰事務官         (経済安定本部         財政金融局長) 内田 常雄君         経済安定本部物         價局長     谷口  孟君         大藏事務官         (主計局長)  河野 一之君         大藏事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大藏事務官         (銀行局長)  愛知 揆一君         運輸事務官         (鉄道総局長         官)      加賀山之雄君         逓信事務官         (電務局長)  中山 次郎君  委員外出席者         專  門  員 小竹 豊治君         專  門  員 小林幾次郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十四年度一般会計予算  昭和二十四年度特別会計予算  昭和二十四年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 植原悦二郎

    植原委員長 これより会議を開きます。質疑に入ります。有田喜一君。
  3. 有田喜一

    有田(喜)委員 総理大臣大藏大臣安本長官労働大臣商工大臣に御出席を願いたいのですけれども……。
  4. 植原悦二郎

    植原委員長 ただいま通達して出席を求めます。
  5. 有田喜一

    有田(喜)委員 文部大臣お一人のようですが、文部大臣に対しましては、昨日六・三・三制の点について質疑がありましたから、私はくどくどしく申し上げませんが、私ども文部大臣にしつかりお願いしたいことは、今回の六・三・三制の予算の削除は、わが國の教育問題としてたいへんなことです。わが國の教育制度の諸改革一環として六・三・三制度が施行されました。國民の非常なる負担をかけながら、ともかく文化國家建設のために、これが完遂努力されて來たのでありますが、今回の予算のあのさんたんたる状況では、遂にこれを放棄せざるを得ない。文部大臣はその間に非常に苦慮されて努力されておることは、その御立場をお察しいたします。昨日は、何とかしてこの六・三制度それ自体は継続したい、こうおつしやいますが、校舎もなければ、施設もない。二部教授でもいい、三部教授でもいい、あるいはお寺を借りても倉庫を借りてもいいのだ、こういうことならば、何のために六・三制をしくのかわからない。やはり教育制度ばかりではなくて、その内容充実ということがきわめて肝要であります。文部大臣はどうしてこれに対処されるのか、その具体的な対策をこの際お聞かせ願いたいと思います。
  6. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 お答えいたします。ただいま御質問にありましたように、六・三制は新しい日本教育体制を確立する基礎になつておるものでありまして、きわめて重要なる意義を持つものであることは、まつたく同じ意見であります。それにもかかわらず、六・三制の予算が二十四年度について、はなはだ憂慮すべき状態にあることは、文教の責任者としては、まことに遺憾にたえないところであります。それならば六・三制を放棄しなければならないのか、やつて行くならばどうして行くのか、こういう御質問であるかと思います。昨日もお答えいたしましたように、六・三制の予算は、一方において、義務教育に対する人件費國庫補助と、施設建設に対する半額國庫補助からなつておるわけであります。人件費に対する國庫補助は、今度の予算に計上されておりますから、多少きゆうくつになりますけれども、非常な故障を起すことにはならないと思います。從つて問題は施設に対する補助であります。これは先日も申し上げましたように、この二十四年度新制中学三年生が新しくできるわけであります。新制中学義務制が完成することになるわけであります。新たに三十四年度にふえます新制中学三年の生徒收容に対する建築費半額補助は、実は二十三年度において大体見積つてあるのであります。二十四年度以降における補助の問題は、今まで三部教授をやつておつたり、仮教室使つておつたり、雨天体操場使つておつたり、そういうはなはだ不完全な教育状態にあるものを解消することと、あの教育体制を完全に実施するにつきましては、普通教室にいろいろな実習用教室裁縫室であるとか、料理室であるとか、特殊な教室が必要であります。これは普通教室では十分の教育ができない。廣さも廣いし施設を持つた特殊の教室、これを相当数つくらなければ完全な実施ができない、こういう特別な教室をこれからつくつて行く。こういう計画になつておるわけであります。しかしそれらを完成することは、いかに努力をしても、とても三年や三年でできるものではないのでありまして、文部省計画としては、それらの不完全な状態を直すため、及び特別な教室建設するために、五箇年計画でもつて二十四年度予算を要求したわけであります。ところが御承知のように非常に困難な状況に立ち至つておる。そうすればこれを六箇年、七箇年、八箇年、こういう計画にして行くということで、一應計画は立つわけであります。しかしそれでは二十四年度状態はどうするかという問題になりますが、これは先ほど申しましたように二部教授をやつておつたり、仮教室使つておつたりするのを、できるだけ緩和する。そういうことでありますから、相当教育上は不完全ではありますが、実施上はある程度伸縮性を持つておるのであります。ですから教育的見地から言うと、はなはだ不満足で、不完全ではありますが、二部教授もやはり続けて行く。仮教室も使う。そうしてこの一年は何とかがまんをするということならば、施設の方はまあ何とか間に合せられないことはないと考えておるわけで、はなはだ教育的にはおもしろくないことであります。しかし日本財政状態経済状態とあわせて考えれば、ある程度どうしてもやむを得ないのじやないかということも考えてはおります。と同時にそれたけでなく、御承知のように六・三制というものは、アメリカで新しく採用されておる制度でありまして、日本にとつてはまつたく新しい制度でありますから、制度はでき上りましたが、内容につきましては、実施方法についてまだはなはだ未熟な点があることは御承知通りであります。むろん文部省としまして、その改善方法をできるだけ考えてはおりますが、全然新しい制度でありますために、十分すぐさま内容ぴつたりと地につかせることは困難な状況でありますから、だんだんにこれを改善しておりまして、大分よくなつて來ておりますが、まだ未完成の部分がはなはだ多いのであります。ですからその制度内容改善教授内容ないし教授方法改善も、まだやる余地が相当にあるようであります。また足りない施設利用方法につきましても、時間表の作成の方法——まだ一般的には実施されておりませんが、ある地方実施しておりますように一週間のうち五日間授業をやる。こういうようなことになりますと、一日教室があくことになります。ですからこれを利用する方法考えられますし、休暇の利用という方法もある。はなはだ姑息的、彌縫的な手段でありまして、教育的見地からは望ましいことではありませんが、やむを得ない手段とすれば、そういうことも考える。内容改善し、それで何とかこの危機を乗り切つて行きたい、こういうように考えておる次第であります。
  7. 有田喜一

    有田(喜)委員 そもそもこの六・三制なるものは、第一次吉田内閣にできたものである。そのときにわが國の経済の実情から見て、はたしてこれの実施の時期であるかどうかということについては、多大の疑いがありました。しかしともかくこれに腹をきめて、日本教育制度根本改革一環として、一旦緒についた以上は、あくまでも完遂しなければならない。今文部大臣の説明を聞いてみると、まことに心もとない。かようなことでは、たつとき青少年に対する希望期待を裏切るものでありまして、教育の大破綻を生ずるおそれがあると思う。文部大臣はこの際職を賭しても、この六・三制完遂のために、大いに公共事業費増額のために努力されて——これは單に文部大臣ばかりでなく、総理大臣、全内閣責任として、単なる公共事業費五百億のわくの取り合いというような姑息なことをせずに、公共事業費全般としての増額を、私は強く要望するものであります。文部大臣眞劍な決意のほどをこの際お伺いしたい。
  8. 高瀬荘太郎

    高瀬國務大臣 お答えいたします。新制中学建築費補助予算につきましては、公共事業費の中から相当額を、どうしても要求しなければならないということで、私どもといたしましては、できるだけ努力をいたしたわけでありまして、また内閣といたしましても、そういう方針をもつてつておつたのでありますが、今日の客観的情勢から、どうしても実現できなかつたわけでありまして、はなはだ残念に思いますけれども、先ほど申しましたような方法によりまして、はなはだ苦しいことでありますが、これを忍んでやつて行きたい。こういう決心であります。しかし今後それじやほうつておくかといえば、もちろんそういうわけではありませんで、私はもちろん内閣全体といたしまして、機会のあるごとに、この予算につきましては、十分の努力をしたいと考えておるわけであります。
  9. 有田喜一

    有田(喜)委員 文部大臣のもつと積極果敢なる努力を私は欲しますが、これ以上論議を繰返しても時間をとることになりますから、文部大臣に対する質問はこれで打切ります。労働大臣が見えておりますから労働大臣にちよつとお伺いいたします。  今回企業合理化並びに行政整理によつて相当勤労者の離職問題が起ると思う。きのう大体の数字が発表されたようでありますが、行政整理で約四十万人、それから一般失業者が多い場合六十万人、少くて三十万人、こういうような数字が発表されましたが、もう少し私は具体的に聞きたいのであります。企業整備によつて、一体どのくらい離職者の数が出るか。そのうちでどの程度の者が失業し、またどの程度の人がいかなる企業の方に配置轉換されるか。あるいは職業補導という方面にどのくらいまわられるか。その離職者の数と、それによる雇用に対する配置の状況をもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  10. 鈴木正文

    鈴木國務大臣 現在のところ本年度中に予想される失業者としては、昨日も申し上げましたように、百二十万ないし百七十万という全体的の数字を出しております。そのうち行政整理による者が、昨日もお答えいたしましたように四十万前後、それから企業合理化によつて三十万ないし六十万、それから引揚者が大体予想されるように推移したとして二十万くらい、それから潜在的の失業者の顯在化して来るのが二十万ないし四十万、それから新規の学校卒業生は、非常に就職困難の場合であるから、十万くらい就職困難の人が出て来るのではないか、以上の数字総計が最低の方をとつた場合には百二十万、最高の方をとつた場合には百七十万、これは労働省が現在入手し得る資料の範囲内で推定したところの数字であります。それに対しまして雇用はどのくらいふえるか。國民経済の中の新しい活動面が拡充されることによつて増加する雇用量はどのくらいか。これも安本その他の計画と合せての推定でありまするが、それによりますると、貿易方面において二十万くらい雇用増加が見込まれるのであります。もう少し詳しく申し上げますとその内訳の推定の根拠は、鉄鋼関係で二万八千人くらい、非鉄金属関係で一万人くらい、化学工業関係で三万人くらい、繊維関係で十万人くらい、窯業で三万人くらい、機械器具関係で一万人くらい、それらの総計が二十万前後、こういう推定をしているわけであります。そのほか貿易関係のみでなく、國民経済わくの中でいろいろな変動はあります。收縮する面もあるけれども、また拡充される方面がある。自由業サービス業その他そういつたものをひつくるめて、一般産業の中の雇用量増加が二十万見込まれる。双方合せて四十万くらいは終局的の雇用増加によつて吸收される。そうすると百二十万ないし百七十万のうち、全部が就職希望するかといいますと、たとえば引揚者その他全部これは就職希望者であろうと、いう面もありますけれども、別に行政整理あるいは企業整備によつて出て来る人たちが、百パーセント全部就職希望するというのでもなく、病氣の人その他特殊の人もありますから、これらの面は七十パーセントないし七十五パーセントぐらいが、就職を必要とするのではないかというふうな推定を加えて行きますと、就職を必要とする人たちは、最高の場合に百四十万人くらいを予想されるのではないか。これも推定であります。こういたしますと、百万人近くの人たちの中間的の措置は、どうするかという問題になつて参りまして、それは一つ失業保險により、一つ失業救済、あるいはこれは非常な数ではない、四、五万くらいの数かと思いますけれども職業補導という方にも吸收できる設備があります。そういうふうにして段階的にはこれに対應して行く。そうして四十万は今年内に吸收されるが、来年度引続いて貿易その他の関係民需産業雇用拡大というものは、決定的の数ではありませんけれども安本と共同調査した結果は、今年度の倍くらいのものが十分見込まれるという見通しが立つております。從つて本年度以後来年度において、もつとたくさんの数のものが、労資双方の総努力によつて幸いにして國家建設事業が進んで行きますならば、最終的に吸收されるという計画が立つわけであります。大体そういつた線沿つて計画を進めております。
  11. 有田喜一

    有田(喜)委員 失業者相当出て來ますが、昨日でありましたか、他の議員の質問に対して、今回の失業保險で約三十万とお答えになつたように記憶するのであります。われわれ見ますと、今回の失業保險一般会計からの繰入れが二十億といわれておりますが、その他失業保險は御承知のように使用者労働者の掛金もあります。全体としましては失業保險の金額は相当多額に上るのです。ところが労働者三十万として行くと、どうもその間に余りが出て来る。その数字は私はここではつきり申しませんが、大体の見当として相当余りがある。その余剩の金は一体どこにお使いになるか。何か予備金として六十億がまた別にあるような話を聞くのですが、この失業問題の重大なとき、失業救済方面にさようなものをお使いになる意図はないか。あるいは失業保險わくをもつと拡充する必要はないか。とにかく給付能力はもつとあるように思います。その辺の御見解をお伺いしたい。
  12. 鈴木正文

    鈴木國務大臣 失業保險保險経理はきわめて健全で、彈力性を持つておることは御指摘の通りであります。予算面に計上された三十一億の政府負担金は、御承知のように保險支拂いの三分の一を政府負担することになるわけであります。そういう場合には使用者及び労働者諸君の方から出すその倍額の四十億円が、保險料として一方にあるわけであります。しかし本年度保險料はさらにそれよりも多く、六十億円くらいの保險料がよけい入つて来るという見込みが立つのであります。しかしこれを保險金として支拂う場合には、政府の方が義務費として、その半額負担をしなければならないことになつております。失業が非常に多くなつて来て、失業保險を受取る人たちが非常に多くなつて来た場合には、当然の義務費としてそういつた措置も行われるでありましようけれども、一挙に失業者が出て来るのではなく、上半期末から下半期にかけてであるからして、一應三十万人の受入れ予算的措置がとられておるのであります。しかしもし必要であるならば、保險経理だけといたしましたならば、さらに本年度に入つて来る六十億円、その他昨年度の剩余金をも合せますと、九十万ないし百十万人くらいの受入れ保險経理は成立つておるのであります。予算にさしあたつて計上いたしましたのは、そのうち三十万人を対象とした部分だけでありますけれども保險経理自体は、きわめて彈力性健全性を持つておるということだけは申し上げ得ると思います。なおこの経費を、この際單なる保險料支拂いだけでなくて、別の方に適宜に使つたらどうかという御意見でありますけれども、特殊の資金でそう簡單には参りませんが、いろいろ調査研究はいたすつもりであります。
  13. 有田喜一

    有田(喜)委員 私はこの保險余剩金相当有効にお使いくださることをお願いします。とにかく今回の失業対策と申しますか、配置轉換対策その他企業整備並びに行政整理めぐつた失業者に対する対策はきわめて緊要であります。これはもちろん労働省が中心としてやらるべきことではありますけれども、各方面の総意を集めて、眞劍にこの対策を講ずることが私はきわめて肝要と思います。何か労働省といたしましては、委員会その他一般の衆知を集めて、最善を盡すという方途をお考えになるべきが当然と思いますが、その辺に対する具体案があればお伺いいたしたい。
  14. 鈴木正文

    鈴木國務大臣 その点についてはまつたくお説の通りでありまして、政府全体はもちろんのこと、官民の総力をあげて、この問題に当らなければならないということは、私たちも重々考えております。さしあたつては先に発表されました失業対策審議会でありますが、これはお説のような意味で廣く各方面の衆智を集めてという考え方のもとに、すでに昨日あたりから実際の人選に着手しております。不日発表して皆さんの御援助をいただける段階に達し得ると思います。  それから失業救済事業内容についても、どういう事業をどういうところでやつて行くかという問題も十分研究しております。その一つ方式として近く緊急失業対策法、これはかりの名前でありまするが、こういう法律をも準備しております。その骨子は、必要なる段階に、必要な場所で必要な救済事業をきわめて急速にでき得るような法的措置を講じておるのでありまして、これらも近く國会で皆様の御審議を仰ぎたいと思います。
  15. 有田喜一

    有田(喜)委員 だんだん時間がたちますので、労働大臣に対する質問はもう一点だけで打切りたいと思います。今回の経済原則の中で、賃金安定計画一つの重要なる課題になつておりますが、現在労働大臣は、賃金安定に対していかなる構想を持つておるか、簡單にお示し願いたい。
  16. 鈴木正文

    鈴木國務大臣 賃金の問題は、企業原則を厳格に実施するという大前提のもとに立ちますと、將來賃金問題のわくは、言わずしておのずから徹底するというような形になると思います。つまり不適当な給源による賃金引上げ、たとえば赤字とか、物價引上げとか、從來しばしば行われたと見られるようなそういつた形の賃金引上げは、実質的にも、また三原則関係からいつても、これは將來絶対にできないことになるだろうと思います。しかも私どもの今の考えでは、一方において企業努力、新しい経営の努力によつて企業の成績が上つた場合に賃金引上げられ、あるいは実質賃金充実されるという考え方を、しいてストツプさせるような考え方をとるのは、適当でないと思つておるのでありまして、正しい給源によつて企業努力によつて賃金が適宜に充実引上げされるという考え方は、十分認めて行きたいと思つております。なお今日の段階においても、以前からもそうでありましたけれども、十分の名目賃金引上げて行くという努力もないし、またそれでは物價との惡循環が依然として続くことになるので、やはり根本的の考え方は、実質賃金充実という点に將來もあるべきだと考えております。それらの点については流通秩序の確立とか、あるいは最もかんじんなのは低位の物價安定という、この大前提を絶対にくずさないという前提のもとに賃金を安定させて行く。この三つを切り離してはいけないのでありまして、ここに重点を置いて、実質賃金充実という点に努力して参りたいと思います。
  17. 有田喜一

    有田(喜)委員 おそらく賃金安定に対して、直接統制のようなことはおやりにならないと思います。間接統制方式で進まれるが私は当然と思います。しかし業種別によつて一つ賃金の標準のようなものがあるいはできるのじやないか。しかしそれはきわめて彈力性のあるものでなければならない。そしておつしやる通り企業努力によつて、いわゆる働く人々の力によつて企業能率が上るならば、それに対して能率給相当加えて行く。とにかく労働者の方々が安心して、一生懸命に働けば働くほど賃金はふえて行くのだという、非常な希望期待を持たせて、生産の増強に努めることが今日きわめて肝要だと思います。労働大臣はもちろんさような氣持で、この賃金安定に遺憾なきを期せられることと確信してやみません。それらに対する労働大臣の眞の氣持をお伺いいたしたいと思います。
  18. 鈴木正文

    鈴木國務大臣 お説の通りであります。そういつた線において專心努力しようと思つております。
  19. 有田喜一

    有田(喜)委員 大藏大臣農林大臣が見えておりますが、御両者に対して少し御質問したいと思います。  まず大蔵大臣に確かめておきたい点は、大蔵大臣は今回のこの予算は、現段階において、最も是と信ずる予算であると、かようにこの委員会で言明されましたが、その通りでございますか。
  20. 池田勇人

    池田國務大臣 さよう心得ております。
  21. 有田喜一

    有田(喜)委員 しからばお伺いしたいのですが、昨日の予算委員会におきましては、所得税めぐつていろいろと論議がかわされました。大藏大臣は、近く所得税を減免するということを確信をもつて言明せられておりますが、どうもどちらに重点があるのか、私はその間の平仄が合わないように思います。これに対してどういうようにお考えになつておりますか。
  22. 池田勇人

    池田國務大臣 ただいまのところ、この予算が最もよく、これでやつて行きます。しかし歳出につきまして十分考慮を加えて、できるだけ早い機会所得税軽減をやりたいと考えております。
  23. 有田喜一

    有田(喜)委員 できるだけ早くやりたいとおつしやいますが、それはいつごろからおやりになりますか。
  24. 池田勇人

    池田國務大臣 シヨープ・ミツシヨンは七人で構成されております。二人はもうきのうぐらいにこちらにお着きになつたと思います。シヨープ博士は五月の上旬と聞いておりますが、われわれは一月以來、大藏省税制審議会を設け、また最近内閣税制審議会を設置いたしまして、協議事項を準備いたしておりますから、シヨープ・ミツシヨンが來られたら、ただちに中央、地方を通じた全般税制について檢討を加えて、できるだけ早い機会に結論を得て、そうして軽減に充てたいと考えております。
  25. 有田喜一

    有田(喜)委員 大藏大臣税制に対して相当の識見を持つておられるはずです。もちろんシヨープさんの知恵を借りることもけつこうですが、なぜ今日ただちにこの予算審議の席上で、所得税減免の確信のあるものを、それを是と信じて提出されないのか。シヨープさんが來て、そのうちで、もしより以上のものがあれば、改正するものは改正していいが、この際なせそれを断行されないのか。その点が私は一向わからない。
  26. 池田勇人

    池田國務大臣 今後の税制につきましては、外資導入その他の点もございますし、占領治下、やはり向うの意見を聞いてやるのが是と考えた次第でございます。
  27. 有田喜一

    有田(喜)委員 向うの意見を聞くのが是と感ずると言われますが、この予算はやはりわれわれが審議して、われわれがここに決定すべきものである。シヨープさんの意見で、是と信じたものは改正するにやぶさかではありませんが、少くとも大藏大臣が税の減免を正しい、しかもその財源まである程度の見通しを持つておられる以上、この予算にそれが現われないということは、われわれはどうも遺憾千万である。ひとつこの予算を今からでも遅くはありません。これに対して修正する意思がないか。なければわれわれがこれを修正してもよいと思います。それに対して大藏大臣は賛成でありますか。眞の腹の氣持を聞かせていただきたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田國務大臣 繰返して申し上げまするが、やはり外國との資本の交流その他全般のことを考えまして、シヨープ博士意見を聞いて、根本的な改正をした方が將來のためにいいと思います。しかもあまり長く延ばされませんので、しばらくのことならば、それによつてつて行きたいと考えた次第であります。なお政府として、今この予算につきまして改正の意思があるかという御質問でありますが、意思はございません。
  29. 有田喜一

    有田(喜)委員 一向つじつまが合わない御答弁で、私は納得ができません。この予算が是と信じている。しかも一方で直さなければならぬ。大藏大臣の答弁は私には一向納得が行きません。しかしいくらここで繰返しておりましても、時間がたつばかりでありますからやめます。  しからば大藏大臣所得税に対しては、相当減免するということを確信をもつて言われておりますが、取引高税に対しては相当あいまいな御答弁であります。そこでこの取引高税に対しては、どういう考えを持つておられるか。所得税と同じ程度にはつきりとここに御説明を願いたい。
  30. 池田勇人

    池田國務大臣 取引高税も所得税も同じでございます。
  31. 有田喜一

    有田(喜)委員 しからば取引高税を廃止するいうことを、ここに確信をもつて言われるのでありますか。しからばその時期はいつごろになるか、この点を伺いたい。
  32. 池田勇人

    池田國務大臣 廃止の方針で向うと協議するということでございます。從つて結論については何とも申し上げられません。
  33. 有田喜一

    有田(喜)委員 しからば所得税も、減免したいというお氣持ちだけであつて、それが実現できるかどうかはわからないのでございますか。
  34. 池田勇人

    池田國務大臣 見通しにつきましては、軽減し得ると思います。取引高税につきましては、先般もお話申し上げましたように、相当議論があると考えております。
  35. 有田喜一

    有田(喜)委員 重ねて確認しておきたいのですが、所得税は減免することに対して確信を持つ、取引高税の廃止に対しては確信がない、かように了承してよろしゆうございますか。
  36. 池田勇人

    池田國務大臣 相手の考えによつて非常に支配されることでございますから、私は所得税につきましてはどうしてもやらなければならぬ、取引高税につきましてもどうしてもやらなければならぬ、これにはかわりはありません。ただ一般に各國の税制等から勘案いたしまして、所得税につきましてはほとんど議論はないと思いますが、取引高税については、その撤廃にはよほどこつちから強く行かないと、今のところ見通しがつかないという状況であります。しかし私は撤廃するということにつきましては、所得税と同じ力で行きたいと思つております。
  37. 有田喜一

    有田(喜)委員 私は大藏大臣氣持とか、努力というようなことを聞くのではありません。いやしくも政府がかくすると言つたことは、これを断行しなければならぬ。政府が言う以上は、もちろん関係方面の見通しもつけて行かなければならぬ。しかるに大藏大臣は、取引高税を撤廃すると言われながら、それが実現できていない。これは大きな政治的責任です。しかもそれを今なおあいまいに、取引高税を廃止したいということばかり言われますが、廃止されなかつたら一体どうなるか。そういう実現の見通しのないものを單なる希望として、したい、やりたいというようなことでは、これはほんとうの政治家の態度ではありません。見通しのないものは見通しがつかないと、ここにはつきり言われる方が、私は紳士らしく、またそれが眞の行き方だろうと思います。見通しがなければ、ここにはつきりと見通しがない、しかし努力してみるのだということをしつかり表明されたらいかがですか。
  38. 池田勇人

    池田國務大臣 相手のあることでございまして、相手の考えを聞いてでなければわかりません。私は自分としては所得税軽減並びに取引高税の撤廃につきましては、十分確信をもつて折衝するつもりであります。ただ先ほど申し上げましたように、向うがどう出るかということを、軽々しく政治家が言うことは、これは考えものであります。私は今の程度以上には申し上げかねるのであります。
  39. 有田喜一

    有田(喜)委員 相手があるから軽々しく言えない、それがほんとなのです。だから相手があるものを、できるがごとく、やるのだ、取引高税は撤廃するのだ、その態度を愼みなさいと私は申し上げておる。あなたはその当時入党されておつたかどうか知りませんが、民主自由党の今回の選挙対策でいろいろよいことの公約を並べておる。ことに取引高税のごときは時期まで掲げてこれを表明された。それがこの予算をめぐつて取引高税は撤廃になつていない。にもかかわらず、いまなおそれをごまかそうとして、今回シヨープ博士が來たら努力する、やりたい、廃止したいというような希望ばかり述べておる。そういうことを何回も繰返されておつては、日本の政治の明朗性を欠きます。いま少しくはつきりとそれを言明していただきたい。あるいは言明ができなければ、むしろそれを取消された方が私はよいと思う。この点を強く要望いたします。  なお今回取引高税が改正されましたが、今回の改正は相当私は疑問があります。印紙納税制を現金納税制にされた。あるいは非課税範囲が拡大された。印紙納税制の廃止、それはもちろん手数が省かれて一面けつこうでございますが、しかし今日その取引額の判定のよりどころがないことが非常に問題であるのであります。現金納税制にしますと、脱税を一層容易にするおそれがある。その点からいえば一つの改惡と申されます。また月三万円未満の業者の取引高税を免除されるということでありますが、取引高税は一体消費者に轉嫁されることが原則だと私は了承しております。取引量の大小によつて免税したり課税するということは、どうも筋が通らないように思う。きのうも同僚の委員から御質問がありましたが、取引高税が減免され、いわゆる非課税人員が四、五十万人も出るというにかかわらず、しかもその予算額はかわつておらない。ここにもどうも私は理解できないものがあるのであります。これが廃止されるならばあまり論議はいたしませんが、廃止されない以上は、ここらの点について私は大きな疑問を持つのであります。あくまでも取引高秘の今回の改正は、大藏大臣改善であるというお考えを持つておられるか。これは意見の相違になるかもしれませんが、私はこれを改惡だと思う。大藏大臣がこの取引高税に関して向うと折衝されたが、その折衝の力をもつと所得税の減免の方に、なぜ重点を置いてやられなかつたか。單なる行きがかりにとらわれてそれに重点を置くよりも、眞に日本國民のために努力せられたいのである。そこでこれらの見解について議論すれば限りがありませんので、大藏大臣の答弁は求めようといたしませんが、私は眞の國民の実情をにらんで、最善の努力をされんことを希望する次第であります。  所得税の問題が近くシヨープ博士がおいでになつて取上げられるのでありますが、過日來ここで論議されておりますように所得税は今回七割増し、これは何と申しましても、あまりの負担過重であつて、これの歳入を上げることは、私は困難だと思います。もしそれをやるならば、國民生活の上にゆゆしき問題が生ずると思います。どうしても所得税は減免してもらわなければ、この歳入を上げることはできません。ことに旅客運賃が上る、あるいは通信料金が上る、また主食の値上りもした、生計費の上昇のことを考えればひとしお困難であります。ましてや今回の政策がディスインフレ、惡く行つたらデフレになろうとする今日、この所得税の見積りはきわめて困難だと思う。そこで所得税の改正をされる場合に、大藏大臣は勤労所得税を中心として改正されるのか、あるいは申告税の方についても改正される意図があるか、ひとつお伺いしたい。     〔「同一質問統制してください」と呼びその他発言する者あり〕
  40. 池田勇人

    池田國務大臣 取引高税の撤廃について繰返し申し上げますが、十分努力いたしたいと決心いたしております。なお今回の取引高税の改正は改惡だというお話でございますが、私は非常な改善であると思うのであります。大体取引高税を施行しました各國の歴史を見ましても、印紙を使つておる國はございません。初めは印紙を使つた國が相当ありましたが、一、二年でみなやめておるのであります。これは取引高税の歴史の示すところでございます。私は取引高税は当然印紙をはずすべきだと思います。ただ例外的にアメリカの一、二の州に使つたたけで、非常な改善だと思います。もしこの取引高税に印紙を使用することがなければ、こういう問題は起らなかつた。取引高税に印紙を使うということがなければ、こういう強い非難もなかつたと思うのであります。大体印紙を使えば、脱税が防止できるといつたことは、これはしろうとの考えで、(笑声)実際印紙をやりまして、更正決定をしなければならぬような状況であることは、有田君も御存じだろうと思います。しこうしてまた取引高税が間接税であるや、あるいはまた流通税であるやに議論はありましようが、私は今の三万円未満程度のもの、これに帳面をつけさせ、こうして三万円に達しましても三百円、こういうものを課税対象に置くことは、これは税務行政の上からいつてもやめるべきだと考えまして、私は非常な改善だと思うのであります。これは國民は、はつきり結果からいつて支持すると考えております。  所得税軽減につきまして勤労所得税を中心とするか、事業所得税を中心とするかは、これは問題ではございません。これは基礎控除とか、あるいは扶養控除の税率は、勤労も事業も同様にやつております。從つて勤労所得税軽減して事業所得税をやめるとか、こういうふうなことは両者一体として考えなければならぬ問題だろうと思うのであります。
  41. 有田喜一

    有田(喜)委員 取引高税について印紙を張ることは、それが取引高税の非常な弊害だとおつしやいますが、私は印紙を張らすことは、なるほど手数はかかります。けれども國民が……。
  42. 植原悦二郎

    植原委員長 有田君、あなたは惡税だと言い、政府改善だという、その他についての議論は討論の場合に願いまして、質問に集中されんことを望みます。
  43. 有田喜一

    有田(喜)委員 それは私は質問したのじやない。意見を言つたので……。
  44. 植原悦二郎

    植原委員長 意見の陳述はどうかこの場合はお避けを願います。
  45. 有田喜一

    有田(喜)委員 それではあとの機会にやります。ともかく私は今回の改正を改惡だと考えます。  なお所得税をめぐりまして、この農村の今日の不平不満は、税金の高いこと、それから供出の問題、これに対して、一番農村は頭を悩ましておりますが、私は、農村のいわゆる農業所得事業税というか、所得税に対して一つの疑問がある。一番困ることは、大藏省において、いわゆる反当りの所得標準をおきめになつた。その標準につきまして、たとえば二十三年度の所得標準を見ますれば、反当り生産量三石とするならば、それを三千五百九十五円の二倍、七千百九十円、こう收入を踏まれました。そのうちには自家消費分もございますが、農家の自家消費は、二十三年度は十一月と十二月の二箇月で、その大部分は二十二年度米を消費して來たのであります。すなわち十二分の十は、二十三年の千七百五十円で計算すべきものと考えます。もちろん形式的の租税論から行きますれば、それは二十三年度に入つたものだから、こうおつしやるかもしれませんが、先ほど取引高税をめぐつても、三万円以下のものは免除する、手数も省けるから、こう申されますが、さような実情をお考えになるときには、この農業所得をめぐつて大藏省の從來の形式的な考えは、この際一掃されまして、農林当局の主張するところの、いわゆる自家保有米に対する所得は、少くとも安い前年度の計算でやるべきものと私は考えます。また農業は家族の労作経営であります。もちろんこれは生産事業といえば生産事業でありますが、一つの勤労所得とも見るべき性質のものが多分に含まれております。そこで勤労所得的な考えを、この農業所得に加味することが私は必要と思います。これに対して農林大臣並びに大藏大臣の見解を承りたいと思います。
  46. 池田勇人

    池田國務大臣 農業所得の計算につきましての米價の問題は、私は御説の点もありまするが、ただいまの方法が適当であると考えております。  第二の、農家に対しまする所得の控除でございまするが、今の現状が、主人のみならず妻あるいは長男の方なんかも、その農業生産に協力されておる現状からかんがみまして、所得税改正の際においては、適当な措置をとりたいと、こう考えております。
  47. 森幸太郎

    ○森國務大臣 お答えいたします。農業所得に対する課税の点は、今大藏大臣の答弁せられた通りでありますが、私はこの際、考えておりますことを申し上げたいと思うのであります。反当りの收入がどれだけあるのか、農業というものは、どれだけ税金を負担することが妥当であるかということは、相当重大な問題であるのであります。ただいまもお話の通り、一反歩当りの收穫をどれだけに査定するか。これは捕税技術の上において必要な問題になつておるのであります。私の考えにおきましては、農業者自体が、一体自分はどれだけの收入を得ておるのか、國民の一人としてどれだけの法に定まつたるところの税を負担したらいいのか、この基礎がはつきりいたしておらないのであります。今日の税金が重いか、あるいは軽いかという、これを科学的に説明する何ものも持つておらないのであります。それで私は本年より手をつけまして、農村における標準となるべき相当数の農家につきまして、簡單なる家計簿を設けさせて、そうして自分はこういう農業経営をいたして、これだけの收入を持つておる。これをはつきりさすということは、適当なる課税の基準となるのみならず、農業経営の上におきましても、最も必要なことと考えて、本年度よりはそういうふうな方面に施策を行つて行きたい、とかように考えておるわけであります。
  48. 有田喜一

    有田(喜)委員 昨日農林大臣は、繭の事業税のごときは、これはとるべきでないと、こういう見解を披瀝されました。私は今日の農村の事情、ことに近く設定さるべきところの為替レート、かようなものを考えますときに、この繭に対する対策はきわめて緊要と思う。少くとも税法の面におきましては、繭の事業税のごときは、やはりこの際撤廃され、そうして農村の振興、維持のために、税の面からも寄與することが必要と思います。大藏大臣は、農林大臣と同様の見解をお持ちになるか、この際その所見を聞きたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田國務大臣 主食に対しまして事業税を免除いたしております関係上、同じ農家の生産である繭に対しても、という議論はあるのでありまするが、私はただいま、これについては十分檢討を加えなければならぬと思いまして、檢討中でございます。
  50. 有田喜一

    有田(喜)委員 その檢討は、繭の事業税を廃止するという前提のもとに御檢討されるのですか。
  51. 池田勇人

    池田國務大臣 もちろん廃止するというところで研究をいたしておりまするが、非常にむずかしい問題だと思つております。
  52. 有田喜一

    有田(喜)委員 農林大臣はさような答弁で満足されるのですか。
  53. 森幸太郎

    ○森國務大臣 養蚕の今日の状況は御承知通りでありまして、アメリカに相当の滯貨があります。また貿易関係にも相当の滯貨を持つておるのであります。しかも近く爲替レートが修正されるということになりますれば、蚕糸業の前途は非常に憂慮されるのであります。この問題につきまして、いかにしてこの難局を切り抜けるかということに、目下努力を続けておるわけでありまするが、その善後処置について、まだ御報告する段階になつておりません。從つてできるだけ今後養蚕業を継続いたして行かなければならないという立場から考えますると、事業税のごときは当然廃止すべきものであるという見解に立ちまして、中央税制審議会は依然として養蚕に対しましても、事業税を継続する方途を持つておりまするが、この考え方に対して、ただいま大藏大臣の申しました通り政府といたしましては、廃止するという前提このもとに今研究を重ねておることを、御承知を願いたいと思います。
  54. 有田喜一

    有田(喜)委員 今日の農村は非常にさんたんたる状況にならんといたしております。農村恐慌、農村の不況、窮乏というものは、刻々と追つております。農林大臣は、農村の振興、維持のために、最善の努力を拂うべきが当然と思うのです。ひとつ一層の努力を願いたい。ことに今日の食糧の自給自足体制をすみやかに確立するということは、きわめて必要なことでありますが、今回の予算をめぐりましても、農地の改良費その他農村の利水というふうな方面について、非常な減額がなされております。これらは公共事業費全般として、私は先般文部大臣にも申し上げておいた。ぜひとも公共事業費増額をやつて、そして農村のためにも遺憾なからしめんことを切に希望いたします。  これで私の質問を打切ります。しかしなお他の安本長官及び総理大臣に対しては留保いたします。
  55. 植原悦二郎

    植原委員長 よろしゆうございます。それは午後にでもしていただきまして、この機会に、昨日から松野頼三君が、逓信大臣に対して何かちよつと質問したいそうですから、松野頼三君。
  56. 松野頼三

    ○松野委員 逓信大臣に一應行政整理予算に関し、逓信省所管の程度をどの程度に見込まれているか。また公約であるところの現業二割ということが言われておりますが、これをいかなる程度におとどめになりますか、それをお伺いします。
  57. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 行政整理の問題については、單に逓信省だけではなく、政府全般として先般新聞に発表された通り一般会計は三割、事業官廳は二割、從つて逓信省の方も二割という線が一應確認されておるのであります。しかしながら行政整理は單に一律の整理というようなことは不可能であります。企業廳あるいは一般官廳の現実の姿を見ながらやらなければ、業務に影響がありますから、結論的にはその線が必ずしも維持されるとは思いません。現実に即しまして、あるいは三割を越えるところもありましようし、あるいは二割以下のところもありましようが、そのこまかい具体策はまだ決定しておりません。
  58. 松野頼三

    ○松野委員 さらに退職手当の問題ですが、退職手当は今度の予算面にどの程度にお組み入れになつておりますか。
  59. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 お答えします。退職手当の問題も、これも一般行政整理と同じ考え方で進もうというのでありますが、大体政府部内の考え方は、一般退職資金の二倍、そして退職給與額を大体一箇月分の四箇月というような氣持で進んでおりまするが、まだ最後の決定には至つておりませんし、はつきりしたことを申し上げられませんが、今考えておる線は、ただいま申し上げた通りであります。
  60. 松野頼三

    ○松野委員 特にこの際逓信大臣にお伺いするのは、逓信省が現在この行政整理問題で一番大きな論争の的だろうと私は考えるのであります。ことに退職手当の問題になりますと、三箇月あるいは四箇月ということになりますと、長年勤務の者は除外されて、往々にして一年、三年という、いわゆる臨時雇いあるいは新しい雇い、または引揚者あるいは新年者がこの対象になる可能性が非常に多いのでありますが、一般的に逓信省では、どういう方策で行政整理わくを見ておられるか、あるいは勤務年限というものに対し、制限されておるかどうかを、一應お伺いしておきたいと思います。
  61. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 松野君の質問ははつきりしませんけれども、大体具体的に、ただいま申し上げた二割あるいは一割を整理する場合においては、あるいは年長者を主としてやるか、婦人を主としてやるか、青年者を主としてやるかという御質問だと思うのであります。この方針もやはり政府全般として考慮さるべき一つの定義なのであります。もちろん現在は政府の定義はきまつておりませんが、私の考えを申し上げますならば、大体公務員として職務に不忠実な者をまず第一に行政整理の目標にして、その次には家庭の事情等も考慮したいというような考えを持つておりますが、もちろんこれは逓信省だけで決定する問題ではなくて、政府全部が協議をいたしまして、今の抽象的な考え方を具体的にしたいと思つております。
  62. 松野頼三

    ○松野委員 行政整理は各省と関係がありますのでこれは別にいたしまして、逓信省関係でもう一つ特定局制度というものが今まで逓信省として行われておつた。ことに山村、農村においては、特定局の局長はその土地の名士であり、ことに村の人望を得た、つながりの強い方であるために、非常に農村において郵便貯金、郵便年金というものの集金も順調に行つておつたのでありますが、最近往々にして、この特定局が廃止されるのではないかという懸念もあります。また行政上においては、予算面においても、現在は請負制度をやめられた結果、一直接多数の人員に賃金支拂われておるのでありますか、この特定局の問題の前途について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  63. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 特定局制度が逓信事業の発展に非常な寄與をしたということは、今松野君の御指摘の通りであります。從いまして、今ただちに特定局の問題を急に改革しようという考えは持つておりません。現在でもこの特定局長の地位、あるいはその部落、その地方における信用というものは、相当逓信事業の隆盛に貢献をいたしておりまするので、われわれはどこまでもこの特徴を生かして行きたいと思つております。ところが最近に至りまして、特定局制度を廃止いたしまして、集配郵便局の出張所あるいは支店にしたらどうか、というような御意見が所々にあるのでありますが、私はこれは今松野君の御指摘のような、何か非常な、大きな貢献のあるこの制度を、ただちに改廃すべきものではない、こういうふうに考えております。
  64. 松野頼三

    ○松野委員 特定局は大臣のお考え通り、村の人望を集めた、どちらかというと民選的な性格を持つものでありますが、これを官僚にいたしますならば、その勤務状況、及び村民とのつながりにおいて、はなはだ不安を感ずるのであります。しかし逓信大臣のお考えと相反して、現在は請負制度も廃止された。また最近は特定郵便局長の廳舎の借上賃を支拂うという問題が起きておるのであります。これは具体的に申しますと、今までは廳舎の使用料は逓信省からお支拂いになつていなかつた。最近これを支拂うからこれに印判をつけというけれども、もらう方ではありがたいのでありますが、將來考えると、一應この際家賃をもらつたならば、この次は逆に借上げられて、強制的なものにされはせぬかという不安がある。これは全國の特定局に実施されておることだろうと思う。経費を節減する意味におきましても、今まで廳舎使用料は拂わなくてよかつたのを、將來責任わくにはめられて、局長変更の場合には、当然自分の社宅までも取上げられはせぬか。ほとんどの特定局は家族と同一居住であいますので、そういう不安も起るのでありますが、この現状は逓信大臣はどうお考えになりますか。
  65. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 今松野君の御指摘のような、家賃を拂うから判を押せというような具体的な事実はまだ聞いておりません。しかしながら特定局長問題については、先ほど申し上げました通り、非常な特質があり、逓信事業に貢献があるのでありまして、現在のこの特質、この貢献は続くように考えておるのでありますから、具体的問題に際しましても、調査をして、そうした事実があれば、それを排除する方針に進みます。
  66. 松野頼三

    ○松野委員 もう一点でやめます。ただいま特定局を廃止しないで大いに活用すると承つて、私も大いに安心しました。  第三点は電話の問題でありますが、電話公債は三月三十一日でやめられたと記憶しておりますが、ただいまは総額におきましてどの程度になつておりましようか。
  67. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 御承知のように、昨年度に限りまして電話公債法という特別法を設けまして、一箇所の架設を、大体三万円の公債を買つた方に限つて架設をするという方針になつたのであります。しかしこの法律は三月三十一日までの期限でありますので、逓信省といたしましては、現在の建設費用の少い現状から見まして、何とか今年も同じ條件で進行しようと考えましたけれども、客観條件がこれを許しませんので、とりあえず規定通り月三十一日でこの法律を廃止する予定で、すでに手続を進めております。公債の賣つた量は、はつきりしたものは大体三十五億でありますが、最後の年度末の分がまだはつきりしません。見通しといたしましては、さらに三十七億程度になるのではないかと考えております。
  68. 松野頼三

    ○松野委員 昨年は公債でまかなわれ、本年はこれをおとりにならないとすると、本年の建設予算がはなはだ厖大にふえはいたしませんでしようか。
  69. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 お答えします。お話の通り、昨年度におきまして、少くとも三十七億というものが建設資金に充てられたのが、今度は充てられなくなるのでありますから、その分だけ、すなわち四十二、三億は、われわれの予想したより資金が少くなります。しかしながら幸か不幸か——幸いに、ときどき大藏大臣の言う通り、千七百五十億の特別会計の中から逓信省の建設関係費百二十億、そのほか損益勘定から四十六億、進駐軍関係から二十五億、合計百九十億程度建設資金が大体確定しておりますから、この金額を昨年度の金額に比較しますと、金額においては同じ程度建設費があるのであります。事業量におきましては減ります。すなわち物價が値上りし、賃金が上つておりますから、大体三割減の事業量になるのではないかと思いますが、三割減というものを極力圧縮いたしまして、たとえばストックを使うとか、あるいは不必要になつた資材を使つて事業量において一割減程度建設をやりたいと考えております。
  70. 松野頼三

    ○松野委員 昨年度の加入者は非常な負担をこうむり、今年度の加入者は非常に利益をこうむるという不公平がある。とにかく多額な建設費用をかけておられますが、実際上において東京都内で電話を引こうとすると、おそらく八万円から十万円かかる。どこでこれを搾取されておるかということが第一点。  第二点は、話は別になりますが、今度はがきをすえ置いて、封書を値上げされた。そして増收をはかられるということでありますが、そうなると勢い封書が減つてはがきがふえる。そうすると予定の増收が上らず、ただ値上げによつて不評判を買うだけで、收入面において利益が上らないという不安がありますが、この点はどうですか。  第三は聞くところによると、四月二十日から値上げされるということです。鉄道は五月一日からであるにかかわらず、封書は四月二十日からやるのでありますか。この三点だけで終ります。
  71. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 第一点のどこで搾取されるかという意味は、ちよつとわかりませんでしたが、要するに昨年度の加入者は三万六千円の公債を買い、今年度の加入者は千八百円で架設ができるという不公平のあることは事実であります。從つて逓信省といたしましては、この公債制度を廃止するけれども、新たに千八百円の架設費を少くとも一万五千円くらい引上げますと、ちようど三万六千円の公債は二万円あるいは一万七、八千円で讓渡になつておるという情勢でありますから、そうすると実際の金額は一万六千円くらいの負担になります。でありますから一万六千円の架設費をとることによつて、昨年度の加入者も、本年度の加入者も公平の原則に当てはまるように考えて、今せつかく関係方面と交渉中でありますが、どうも望み薄であります。でありますから、もしそういう場合においては、去年の加入者にのみ三万六千円の公債を十五年間押えておくことは、きわめて不公平であります。從つてこれに対する早期返還ということを考慮しなければならぬと思います。すなわち來年度あたりから財政の許す範囲において、一定の、抽籤とか何とかの方法において償還して行くというような方途を、当然講じなければならないというはめに至ると思います。  それから郵便料金の問題でありますがお話のようにはがきは全部すえ置きまして、その他の郵便料金は大体四割ないし五割値上げいたしております。從つて郵便料が相当に減りまして、そうしてはがきの方へ移ると思いますが、予算の編成方法はそれを見通しまして、はがきの方でふやし、郵便料金の方で減らしまして、松野君の心配しておるところが全然ないように組んでおります。  それから四月二十日に郵便料金が値上げになつて、五月一日から鉄道料金が改正になるということは、これは松野君も御承知かと思いますが、鉄道は法律の制約によりまして一定の期間公示しなければならない。ところが郵便料金は現在の制度におきましては國会の承認さえ得ますれば、即日にこれはできるという意味で、郵便料金は四月二十日、鉄道料金は五月一日ということになつております。一
  72. 松野頼三

    ○松野委員 答弁漏れがあります。現実問題として八万円という話をもう少し具体的に申しますと、電話業者に頼みますと電話の架設か早い。またそうしないとかからない。特別の人は別でありまして、大臣官舎あたりはすぐつきましようが、一般的にはなかなかつかない。そこで電話業者に頼むと八万円という金をその場でとられる。これはおそらく電話業者と逓信省との間に、長年の密約でもあるのではないかと思うのでありまして、大臣御承知でないということはありますまい。
  73. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 不敏にいたしまして密約を存じませんから電務局長に御答弁いたさせます。
  74. 中山次郎

    ○中山(次)政府委員 御答弁申し上げます。逓信省といたしましては、所定の料金以外は逓信省の方には入つておりません。ただ公衆の方が電話業者の方といろいろ折衝されまして、その間費用がかかるという場合も私ども耳にいたしておりますが、なるべくそういう御迷惑を公衆の方にかけないように、監督方面でも相当努力いたしております。ただそういうようなことは、具体的に公衆の方なり、あるいは関係の方から御申告がないものですから、具体的にどこにどういう事件があつたという調査が、なかなか困難で困つておるのであります。しかしこれは今後ともそういうことがないように、私どもとしては万全を期したいと存じております。
  75. 松野頼三

    ○松野委員 今の話でありますと、ほとんどやみ取引ということになるわけでございますね。そういたしますと、これははなはだまたおかしな話で、おそらくあなたが電車に、乗られましても、あるいは自動車に乗られるかもしれませんが、自動車に乗られたときに、おそらく電話賣買の廣告を見ない街路というものはないだろうと思う。電話業者はほとんど公々然として看板を掲げてやみをやつておるということになる。これはおそらく戰争後に始まつたことではありますまい。十数年間あるいは何年間か、私どもそれはわかりません。私の生れる前からかもしれません。そうすると逓信省はこのやみブローカーを是認したということになりますが、それで間違いありませんか。
  76. 中山次郎

    ○中山(次)政府委員 ちよつと私の申し上げたことが誤解を受けたかと思いますが、電話業者の人たちは、これは別に営業といたしまして、不正なやみのものでありませんで、やはり需要供給のアン・バランスな現在の状況からいたしまして、需要者といらなくなつた方々の仲介に立つて、その手数料をある程度つて業をやつておられるので、電話業者の方が協定した公正なものでやつておられるのは、私どもとして別にとやかく考えないのでありますが、もしもそれがあまりにも不当になりまして、公衆の方に迷惑をかけるような場合には、私どもとして十分取締りたいと考えておる次第であります。
  77. 植原悦二郎

    植原委員長 私は今の電務局長のお話は、松野君の御質問に対して、十分の満足を與えるものでないと思います。この点は特に逓信大臣に十分の御調査を願いたいと思います。
  78. 松野頼三

    ○松野委員 今の委員長のお話に私も同意ですから、もう一度報告していただきたいと思います。
  79. 植原悦二郎

    植原委員長 これにて休憩いたします。午後は一時半より開会いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時五十三分開議
  80. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。これより質疑を許します。野原正勝君。
  81. 野原正勝

    ○野原委員 私はまず建設大臣にいろいろお伺いいたしたいと思います。今年の予算を見ますと、建設省の予算が非常に少いのであります。しかも建設省の予算と申しましても、当面の緊急を要すべき災害復旧の予算、これが非常に少い。同時にまたわれわれが民自党として國民の前に公約した一大建設をしたい、將來日本の國力の培養、國民生活の基盤を確保するためにも、大きな建設計画をもつて臨まなければならぬ。單なる災害の復旧というふうな應急手当はかりでなく、將來にわたつて絶対に災害が発生しないような恒久対策をもつて臨みたい。そのためにはいろいろな、たとえば電源の開発に関連いたしましたダムをつくつて行こうというふうなことを、建設計画として大いに期待しておつたわけでありますが、今回の予算を見ますと、そういつたいわゆる懸念対策予算方面さえも非常に少い。從つて恒久方面においては予算化されていないということになつて、実は建設省という名前さえも——実質的には建設省という言葉を與えるのがいけないほど、実に貧弱な建設予算であるということを感ずるのであります。はたして建設大臣はさよう貧弱な予算で満足しておるはずもなかろうと思いますけれども、一体建設大臣はこれに対していかなる御所信をもつて臨んでおられるのか、まず建設大臣の御所見をお伺いしたい。
  82. 益谷秀次

    益谷國務大臣 國土の開発については、思い切つて力強い施策を実行いたさなければならぬのであります。これは國家百年の大計からもこれに努めなければならぬのであります。今回の予算については恒久的な施設に対するものは、たとい僅少でありまするが、僅少の費用をなるべく効果的に使つて参りたいと思うのであげます。國土開発につきましてはひとり建設省のことのみではございません。政府といたしましては、最近國土の総合計画審議会を設置いたしまして、根本的に総合的に國土開発の計画を進めて行きたいと思うのであります。
  83. 野原正勝

    ○野原委員 ただいまの建設大臣の御説明で、政府としての建設に対するお考えはわかつたのでありますが、これが事実上予算の面に何ら現われていないということは、はなはだ遺憾であります。國民もまたこれを非常に遺憾に考えます。われわれは常にこの荒廃した國土の中にも、單に当面の問題のみを処理するばかりでなく、將來日本の発展、民族の繁栄を期して、この苦しい中にも建設をしたいということを考えて、特にわが民自党は大きな建設計画をもつて臨んでおる。たとえば行政整理に対する失業対策としても、單なる失業対策のための失業対策事業でなく、それが將來にわたつての大きな建設的な仕事として、それによつて二面においては失業対策にもなり、將來日本の大きな産業、経済、民生安定、それらのものがうまく参るように考えておつた。ところがその点が何ら考慮されない。しかもわれわれが非常に痛切に感じておるのは、昨年、一昨年とあの三回にわたつた大水害、あの大水害を考えるときにおいて、この災害に対する應急復旧さえもほとんどなし得ないという状態なのでありまして、これではわれわれ正直な話が、益谷建設大臣の今までの御主張も何ら予算面に現われていないことに対しまして、はなはだ実は残念であります。國民に対しましても申訳のないところと考えておるのでありますが、今度の貿易方面で、千七百五十億の予算が有効に使われ得るということになる場合においては、まずまつ先に取上げるべき問題は、建設省所管にかかるいろんな建設計画、これらのものを強力にやつてもらいたい。特に應急復旧に対する予算のごときは、いの一番にこれを計上してもらうように、大臣は特に御努力を賜わりたいと思います。
  84. 植原悦二郎

    植原委員長 野原さん、御希望ですか、御希望なら討論のときにどうか……。質問をなさつてください。
  85. 野原正勝

    ○野原委員 大臣のこれらに対する見通しをこの場合承りたいと存じます。
  86. 益谷秀次

    益谷國務大臣 今回の私所管の公共事業費は、もとより十分とは思つておりません。國家財政の許す限り、今後において十分費用を要求いたし、御希望に沿うように努力いたしたいと思います。ただ與えられた予算については、重点的に最も効率的に使用いたして行きたいと思つております。
  87. 野原正勝

    ○野原委員 次に森農林大臣にお伺いいたしたいと思います。まず食糧自給体制の確立の問題でありますが、敗戰以來われわれは、ほとんど食糧の窮乏に悩み続けて今日に至つております。幸いに米國の好意ある輸入によつて、どうやら餓死を免れて参つたのでありますが、いまだに食糧の自給体制が確立されていない。一体農林大臣は、日本の食糧をいつまでも外地から仰ぐ考え方であるか、それともまた食糧は日本國内でもつて必ず自給するというお考えであられるのか、その点をまずお伺いします。
  88. 植原悦二郎

    植原委員長 野原さん、毎会御出席にならないからですが、農林大臣はその点については、すでに一、二回かなりお話になつたと思います。念のためお話を願いますけれども、どうかそういうことを繰返さないように御注意申します。
  89. 森幸太郎

    ○森國務大臣 お答えいたします。いつまでも外國の援助によつて食糧問題を続けて行こうというようなことは、とうてい考えられぬことでありまして、私といたしましては、日本は食糧だけでも一日も早く独立いたしたい。この氣持をもつて政策を推進して行きたいと考えているのであります。きのうも申し上げましたが、しからば何年後に自給自足ができるかという御質問でありましたが、これは五箇年計画であるとか、あるいは六箇年計画であるとか計画いたしましても、必ずしもその通りに行われるものではないのでありまして、全力を捧げて、一日も早く自給自足の食糧事情を整えたい、かように考えて、あらゆる方面に総合的な食糧問題の解決に努力いたしているのであります。この食糧問題は、長い日本の食糧習慣といたしまして、米であるとか麦を主要食糧と考え、澱粉質のさつまいもとかじやがたらいもとかいうものを現在主食に入れておりますが、これはいけない、やはり米と麦でなければ日本人は主食でないというような考えを長い間持ち来つているのであります。こういう食糧に対する考え方を、今後日本は訂正して行かなければならない時期に來ていると思うのであります。いわゆる今日までの食糧はその量であつて、質を考えて來なかつた。蛋白質とかいうようなことを考えずして、量のみを考えて、栄養ということを考えておらなかつた、これが日本人の体質の上にも非常に現われているのであります。幸いにと申しますか、食糧事情の窮乏した結果、いろいろの雑食もやり、また粉食もやり、今までパンというようなものを食べなかつた國民が、パンを食べなければならないような情勢に置かれて來た、こういう戰争のためにやむを得ず置かれた。この一つの習慣を將來生かして、そして食糧をさらに合理化して行かなければならぬと思います。幸いに日本は四囲海にめぐられて、水産物のゆたかな環境に置かれているのでありますから、水産の増殖をはかりまして、ここに蛋白給源を求める。また酪農を奨励して、家畜その他こういう動物の蛋白質を求める。また小さいようでありますけれども、家庭においても、家庭の主婦が食料を考えるときに、量というよりも質というもの——一つの野菜を調理する上においても、カロリーをどうして多くとるか、あるいは栄養をどうして多く攝取するか、こういう方面にも考えて行かなければならぬと思います。國土の限られたこの日本が、年々増加する人口を包容して行く上から申しましても、この食糧問題は日本將來重大な問題であると私は考えているのであります。でありますので、いろいろ御報告も申し上げておりまするが、農林行政の上において、あらゆる角度からこの食糧増産に努力いたしまして、一日も早く外國の輸入食糧を断つて行きたいという氣持で、せつかく施策を練つておりますることを御承知願いたいと思います。
  90. 野原正勝

    ○野原委員 ただいまの大臣の御説明でよくわかつたのであります。農業生産力を増強せしむるための各種の施策を、政府は熱心に講ぜられているということを伺いまして、非常に心強く考えるのでありますが、その農業生産力を飛躍的に向上せしむるための農業技術の問題を私はここに考えてみたいと思う。科学と技術の裏づけ、根底なくして眞に農業の発展はあり得ないと思うのでありますが、かつて日本の農業が躍進に次ぐ躍進をもつて進んで参りましたものの、あの戰時中及び戰後におきまして、農業の技術方面、いわゆる研究機関であるとか、試驗場、こういうような方面予算等は当面の問題に追われて、ややともするとこれが軽んぜられるような傾向が多分にあるように思う。農業の技術は、狭い面積にたくさんの人口を收容しておる日本といたしましては單位面積からたくさんの收穫をあげ、農業生産力を拡充することが必要でありまして、そのためには科学と技術の向上をはかつて行きたい、かように考えておるにもかかわらず、あべこべにこうした科学技術の面が、年々多少ずつ低下しておるのではないかということが、はなはだ心配されるのでありますが、その点に関しまして、大臣は現在の日本の農業技術、農業科学の方面は、これをもつて満足すべきものとしておられるかどうか、あるいはまた満足していないとすれば、研究であるとか、調査であるとか、そういつた方面に対して、いかなる方法をもつてこの技術の向上、科学の向上を期さんとするか、御所見を伺いたいと思います。
  91. 森幸太郎

    ○森國務大臣 農業生産の上に科学を取入れることが、今日の程度でいいかという御質問ですが、とんでもないことでありまして、科学の浸透を最も緊要といたすのであります。しかし過去の情勢を見ますると、たとえば農事試驗場におきましても、中央にあり、地方に存在して、その組織網の上においては、大体形を整えておつたのでありますが、いかさま経費が貧弱でありまして、とうてい思い切つた試驗、研究が進まれていない。科学試驗というものは、その投資いたしました経費が、ただちに効果を現わすか、現わさないかわからないのであります。ここに非常な犠牲を要するのでおります。その犠牲を拂つてもそれをなおかつ打立てて行くことが、科学の力を実際に應用するまでに続ける努力であります。しかしはたして今研究しておることが実用に化するか、化せないか、研究の過程にある場合においてはそれがわからないのであります。そのわからないものに経費をぶち込んで行く、こういうことでありまするから、この科学の浸透をはかるという結論を得るまでには、なかなか容易ならざる犠牲を國家としては拂わざるを得ぬと思うのであります。今日まで試驗場が相当ありますけれども、経費が貧弱であつて、その機能を十二分に活用することができなかつたという事実を、われわれは認めざるを得ないのであります。それで今回農事試驗場も相当整理をいたしまして、これを拡充いたしまして、この力をできるだけ集中して行くいう方針をとつておるのであります。なおまたただ單に國立試驗場であるとか、あるいは縣立試驗場であるとかいうような意味でなしに、隠れたる試驗が相当あるのであります。全國的に見まして、俗にいう篤農家、老農家と言われるこの農業者が、長い間自分の体験によつて築き上げたる一つの技術、それは科学的説明はできなくても一とにかくそれが増産に貢献し、そうして農業の振興に力を與えている事実がたくさんある。それで現在におきましては、農業改良局を設置いたしておりまするが、この農業改良局の仕事といたしましては、この野に隠れておるところの技術、これを科学的に説明し、そうしてこれを取入れて普及いたしたい。現に本年度より施行いたさんとするあのさつまいも、じやがたらいもに対するキュアリング施設のごときは、これは全然まつたくしろうとの科学者の川原田政太郎氏の研究せられたものであります。これが結論を得るまでにはもちろんアメリカの援助もありましたが、容易ならざる御苦心、御努力を拂つて築き上げたものであります。そういうふうなことに関して、國家として相当の犠牲に対して感謝を捧げなければならぬと思つておるのであります。また日本の科学は今まで申したような事情で進んでおりません。電氣力を應用することも、まだまだこの農業生産の上に残された問題であります。あらゆる科学を取入れて、そうしてこの郷土の狭い日本に対しましては、この方面から増産、増殖の方面に力をいたして行きたいと思います。これはひとり耕種農業のみならず、水産の方面におきましても、あるいは森林の方面におきましても、科学の力の浸透しておらない事実を私は認めるのでありますので、將來この方面に科学を取入れ、あらゆる方面に力を注いで、改善努力いたしたい、かように考えております。
  92. 野原正勝

    ○野原委員 次に農林大臣にお伺いいたしたいことは、治山治水の問題が非常にやかましく言われておりますが、日本の山林の現状から考えまして、國をあげて、國土の荒廃の現状から緑化に力をいたさなければならぬ。國をあげて造林をしなければならないということを強く考えておるのであります。政府はさきに造林の五箇年計画を発表されまして、これに着手されておるようでありますが、その実績を見ますと、遅々としてはかどつておりません。この昭和二十四年度公共事業費関係予算を見ましても、造林の予算というふうなものが、大藏大臣の説明にも相当治山治水を考えてやつた、こういうお話にはなつておりますけれども、しかしながらいまだにこの予算内容を見ますと、五箇年計画の初年度の分を行うだけの半分にも満たない予算であります。これではとうてい治山治水の完璧を期するわけには参りません。ちようど昨日をもつて終りました緑化運動におきましても、われわれ声をからして國をあげて造林したい、それによつて日本の荒廃を食いとめなければならぬということを盛んに考えておるときにおいて、どうも政府の造林に対する御熱意が、口でばかり熱心に言つておりますけれども予算の面に現われるものは、非常に少いということを私は遺憾に考えております。聞くところによると、本年各学校を動員いたしまして、学校の協力を得て、五箇年計画で五万町歩の造林をするという計画を持つておるようでありますが、今日の日本の山林の造林すべき面積は、実に百五十万町歩もあるのでありまして、これは單に学校の生徒の力でもつて相当造林をするというようなことだけではいけないのでありまして、國をあげて山に木を植えるということを徹底するためには、やはりこれが予算として相当の額が計上されるということでなければ参らぬのでありますが、その点はなはだ残念に考えております。政府は先般造林の單行法をこしらえて、この戰時中の過伐、濫伐に基因する水害の原因となつた、この伐採跡地を急いで造林する。五箇年計画推進のためにも造林の単行法をつくるというふうなお話を伺つて、非常に期待しておつたのでありますが、先般の新聞などを見ますと、今議会にはこれが提案がないということを伺いまして、はなはだ残念に考えております。この造林に対する大臣の御所見を伺いたいと思います。
  93. 森幸太郎

    ○森國務大臣 お答えいたします。現に政府といたしましては、特に治山治水に力を注ぎたいと考えておるのであります。なるほどお話の通りに、現在百五十六万町歩の植えなければならない山があります。なお今後年々伐採して行きまする山を考えてみますると、少くとも二百五、六十万町歩を今後五箇年の間に栽植しなければならぬことになるわけであります。これは今学童に應援さすくらいでは、とうていでき得ないというお話でありますが、もちろんそうであります。学童を動員いたしましても、一年に一万町歩くらいしか計画が立つておりません。しかし植えるならば一度に植えたいのであります。野原委員もこの方面には造詣の深い方でありますが、御承知のように目下一番困つておることは苗木の生産であります。苗木の生産は、特に親木を選んで採種しなければ、いずれの種でもまいてよいというものではないことは御承知通りであります。それが食糧事情に悩まされておるために、苗圃を設定することの不自由もありましたが、苗木の生産が非常に遅れておるのであります。山は植えたし、苗木はなしというようなこういう現状でありますから、政府といたしましては全國の森林組合を動員いたしまして、優良なる苗木を生産せしめ、また政府においても苗圃地を拡張いたしまして、そうして苗木の生産に努力いたしたい。許される程度でありますけれども、できるだけこの苗木の生産に努力いたしたいと考えておるわけであります。また治山治水の問題も一番力を入れておるのでありますが、御承知通り戰争中過伐、濫伐をいたしまして、おまけに松根油が必要であるというので、枯れた松の根まで掘り出すようなことをして、山地を荒廃させてしまつたのであります。これを回復させるのには土砂管理がいり、また渓流の砂防工事も必要でありますが、これは建設事業と相まちまして、着々この方面には力を入れて行きたいと考えておりますが、何分里山がいち早く濫伐になつておりますので、林道を開発いたしまして、奥山を利用する。しばらく里山に休養を與え、奥山森林を利用するという方針のもとに、林道開発によほど力を入れて行きたいという氣持で、特に予算も山林方面には力を入れて行きたい、また行くつもりで予算も計上しておるのであります。しかし何と申しましても、五箇年計画を立てまして、その全部を執行するだけの予算をつくることができ得なかつたことは遺憾に存じますが、治山治水の方針に向つては、今申しましたような事情で施設を行つて行きたいと思います。全國の森林組合もまたこの氣持によつて種苗の生産、造林に努力してもらいたいと考えております。なおお話のような造林法の制定でありますが、これは自己の山であるから伐採後何年捨てておいても自分の自由だという氣持は、國土保安の上によろしくない。そういう場合に法の力によつてその山林所有者、土地所有者に植林を慫慂し、もしどうしても植林が自分の力においてできない場合においては、地方の森林組合の力によつて、植栽せしめるというような法制を考えておるのであります。あるいは本議会に提案の運びにならぬかもしれませんが、いずれとも政府といたしましては國土保安の上から、自分の山だからはげ山にしておいてもよいというようなことは許されないのでありますから、そういう方面施設は着々行つて行きたいと考えるのであります。なお國有林なり民有林の問題でありまするが、戰争中保安林解除が非常にやかましく叫ばれまして、解除すべからざるところの保安林が、相当解除されておるのであります。これが水害等の原因もいたしておるのでありますから、この國有林も、國有林として置くことがよいか、あるいはある部面におきましては、これを民有林に移して経営した方が、その森林の効能を発揮するかということを調査いたしまして、適当に國有林も整理して行きたい。保安林も、さらに保安林と認むべきものは、民有林におきましても保安林を設定して行きたい。特に國土保安林におきましては、この内閣といたしましては極力力を注いで行きたいという氣持を持つておることを御承知願いたいと思います。
  94. 野原正勝

    ○野原委員 ただいまの大臣のお話でよくわかつたのでありますが、なおもう少しお伺いいたしたいと思います。最近いろいろな問題がある中で、特に山林の開放、國有林の開放という問題が各地で起つておる。これらのことに関しましてもただいま大臣からお話がございましたが、よく実情を調査されまして、國有林として國家が直接経営するという場所に対しては、もちろんこれは國有林として残されましようが、從來ややもすると、当然民有林として経営さした力が、よいではないかと思うような場所が、今日いまだに國有林になつておるとか、あるいはまたあまりに厖大な奥地林であつて、民間の経営ではとうてい十分な経営管理が行われがたいというようなところは、むしろこれは一面においては國有林に編入するというような、いわゆる林野整備の大計画をもつて臨まなければならぬと思うのであります。一日も早くこの森林の整備計画をお立てになる必要があろうと思いますが、その林野整備を行う意思ありやいなや、ひとつ大臣の御意向を伺いたい。
  95. 森幸太郎

    ○森國務大臣 御質問の点でありますが、先ほどもお答えいたしました通り、國有林においても整備しなければならぬ問題があります。また民有林においてもこれを保安林とし、あるいは國有林とした方がよいという部面も相当あるのでありまするから、すみやかに御質問の要旨に沿いたいと今計画を立てておるわけであります。なお農地改正によりまして、平地林が未墾地として相当犠牲に供されておるという問題が各地に起りまして、本年の一月にそういうことのでき得ないように——今後の農地開放に対しましては、地方における審査会の決議によらずんば、これを買收することのでき得ないようにいたしたのでありますが、林野は先祖においても普通の耕地として考えたのであります。北海道の方におきましても、今二十年三十年の幼木林を開墾いたしまして、耕地をつくつておる。ところが耕地をつくつてみたところが、それは酸性土壤であつて、どうしても耕地としての利用ができない。やはりこれはもとの森林にした方がよい。こういうような土地もあるのでありますが、とにかくわれわれは、祖先だつて耕地は一坪でも多く耕地として要求いたしたのでありますから、あらゆる努力を傾けて行つて、その結果やはり林野として置くべきものは、平地であつても林野として置いたのであります。ことに近年の水害のごときは、平地林を減らしまして、いわゆる遊水林というものがなくなつた結果、一時に水が出る。こういうことになつたように考えますので、今後森林行政と、農地開放等は、よくその実情に沿うて行きたいということも、今後森林の調節をはかる上において、特に力を注いで行きたい。かように考えておるわけであります。
  96. 野原正勝

    ○野原委員 もう一点だけお伺いいたしますが、ただいまの大臣の御説明にございましたように、まだ若い切るべからざる幼齢なものが、切られておるということははなはだ残念である。どうしても、切らなければならぬ必要な場合に切ることはやむを得ませんが、せつかく切つたところが、そこが十分に利用されることもなく、また自然に山になつてしまう。單に山が荒れたということに終るような事態も少くないのでありますが、この際幼齢林の伐採を一時禁止せしむるような法的処置を大臣はお考えであるかどうか、いわゆる幼齢林の禁伐令というようなものをお考えになつておるかどうか、その点をお伺いいたします。
  97. 森幸太郎

    ○森國務大臣 御質問のようなことを法制化することは、今日の時代にどうかと思うのであります。森林経営者が木を植えたことは自分一代のためではない。自分の子孫のだめに森林を経営するのであります。自分らが祖先の経営した森林によつて恩恵を受けたのでありますから、その森林を利用した上は、そのあとを続けて子孫に傳えて行くというのが、私は森林経営の精神でなければならぬと思います。それでありまするから、植えて十年、十五年の木をぼんぼん切ることは、とうてい人情として忍びないことである。また自分の植えた山なら、十年や十五年では切る氣がしないと私は思うのであります。そういうことを考えますと、法制化して幼木林切るべからずということを出すことは、どうかと私は考えるのであります。あくまでも森林組合等の協同の力により、森林を守り育てて行くということに導いて行きたいとかように考える次第であります。
  98. 野原正勝

    ○野原委員 農林大臣に対する質問はこの程度で終りまして、次に経済安定本部長官にお伺いいたします。  日本が敗戰の結果、國土は約半分となり、非常に資源の乏しい日本であります。その狭い土地の中にあるあらゆる資源を、百パーセントに生かす以外には、われわれの生きる道がないことは申し述べるまでもないことであります。経済安定本部で資源開発の調査をやつておられることをお伺いいたしまして、非常に心強く思つておりますが、現在どの程度にその調査をやつておられるか、この点をお伺いいたします。
  99. 青木孝義

    ○青木國務大臣 われわれは御承知経済現況の分析で申し上げておるように、五箇年計画を立てまして、その予定を昭和二十八年までに完成したいということであります。しかしながら今回の予算等をごらんになりまして、多少この計画がずれるのではないかというような懸念もございますが、しかし何とかしてこれを本二十四年度の初年度におきましても、公共事業計画等と関連いたしましてできるだけその予定に沿うように努力いたして行きたいと考えます。
  100. 野原正勝

    ○野原委員 大臣は非常にゆつくり構えて調査計画を立てられるというように今お伺いいたしましたが、問題は非常に急を要するのではないかと私は思う。これは総合國力の基本であるべき調査でございますので、これらのものを急いでやつていただきたい。しかもどしどしこれを計画に載せて進めていただかないと、日本の再建はそれだけずれて行つてしまう。たとえば山林開発にしても、開発の計画をいろいろ御檢討中であるということをずつと以前から聞いておりますが、一向に計画に乗つて來ない。單に計画だけするのが安本であるということでは困るのです。この計画を実行に移すようにやつてもらわないと、はなはだわれわれとしては期待しておるだけに残念に考えるのですが、どうぞその点は今後てきぱきと計画を始めて、その計画が実行できるように強力に案を進めていただきたい、かように考える次第であります。  そこで私は先ほども建設大臣に伺つたのでありますが、先ほどの治山治水の問題、災害の問題と関連して、一体電源開発の計画などはどんなふうになつておるか。われわれしろうと考えでありますが、日本の特殊な地形から考えまして、非常に川が多い。その川の流れる水を野放しにしておくから、年年ああいうような大きな災害が起ります。あれを大きな建設計画をもつて電源として開発することになると、二千万キロにも上るほどの大きな水力発電が得られるということを聞いております。こういうものをひとつどしどし進めていただいて、將來日本の産業発展の上に実行願いたいと期待しておるのでありますが、経済安定本部長官は電源開発の問題に対して、どんなふうな見通しを持つているか、この点をお伺いいたします。
  101. 青木孝義

    ○青木國務大臣 お答えいたします。ごもつともなことでございまして、私どものところは御承知のように、総合計画を立案することが経済安定本部の一番重要なことになるのであります。その点については万違算なきを期するという態度で今やつております。ただ問題は、実施面におきましてどの程度にこれが実行できるかということであります。ことに電力開発等の問題については、われわれ党におりましても強く主張して参つたところでありますので、今年度は昨年度に引続きまして、できるだけその予定の線に沿つてつて参るつもりでありますが、御承知通り電力関係は昨年の暮から今年にかけまして、比較的水量その他の関係が順調に参りましたので、大体予定計画に沿つて進行している状態でございます。
  102. 野原正勝

    ○野原委員 それでは次に文部大臣に対する質問ですが。
  103. 植原悦二郎

    植原委員長 文部大臣は今お見えになりませんので、文部大臣に対する質問は次の機会にしていただきたいと思います。次に風早八十二君。
  104. 風早八十二

    ○風早委員 質問に入る前に緊急動議が一つあります。本予算案の基礎になりました千七百五十億円の見返り勘定でありますがこれに対して特別な法令が必要ではないかと思うのであります。これは法令を出されるつもりであるかどうか。まだわれわれそれを開いていないのであります。大藏委員会にもまだ提出されることを聞いていないのでありますが、この点についてあらかじめ質問いたしまして、これに應じて緊急動議を提出いたしたいと思います。
  105. 池田勇人

    池田國務大臣 ただいま法案を作成中でございまして、一、二日のうちに出せる予定でございます。
  106. 風早八十二

    ○風早委員 そういたしますと、これは本予算委員会で前にも問題になりました、法律の基礎なくして地方配付金の問題を予算に組み入れている、これと同じ問題がここにもつと大きな内容で出て來ていると思います。こういう法令が全然出ておらない場合において、この予算案の審議はできないのじやないか。その点に氣がついたので、私はここで緊急動議として、この予算案の審議は法令が出るまで、少くも並行審議になるまで停止していただきたい。この点を委員長にお諮り願います。
  107. 野坂參三

    ○野坂委員 今風早君から動議が提出されましたが、これはもつともなことで、前の地方配付税の問題のときに、社会党の三宅委員から、これは並行審議をやつていないから違法である、予算審議の方は法案が出るまで延ばしていただきたい、こういう動議が出されて、民主自由党の西村委員から満腔の賛意を表せられ、委員長自身もこれに対して全的な賛成を述べられ、そしてあのときに会を閉じて、そこで法案の出るまで待たれたと思います。それと同じ事情の問題だと思います。これでもう三回同じことを続けている。政府のこうした違法なことをわれわれは公然として、ここで審議を続けて行くことはできないと思いますので、諮つていただきたいと思います。
  108. 植原悦二郎

    植原委員長 ただいまの風早君の動議は皆様のお聞きの通りであります。それに対して賛成者もありますので、採決をいたしたいと思います。
  109. 西村久之

    西村(久)委員 ただいまの動議の採決に入ります前に、暫時休憩されんことを望みます
  110. 植原悦二郎

    植原委員長 今の動議採決の前に、暫時休憩するべしとの動議が出ました。その方が先決だと思いますから、西村君の動議に賛成の方の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  111. 植原悦二郎

    植原委員長 起立多数。暫時休憩いたします。     午後二時四十二分休憩      ————◇—————     午後三時八分開議
  112. 植原悦二郎

    植原委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  委員長理事諸君の御協議の結果を御報告受けました。本日の質疑應答はこのまま継続いたし、さらに十一日の公聽会も予定通りに開催することといたしまして、ただいま御提案になりました風早君の緊急動議は十二日まで採決を延期するということであります。さよう御了承を願いたいのであります。  風早八十二君。
  113. 風早八十二

    ○風早委員 先ほど緊急動議を出したのでありますが、これは今皆さんの大体御了解を得まして、その採決は十二日まで延びたのであります。しかしながらこの際大藏大臣その他政府当局に嚴重にお願いしておきたい。今度の予算案の審議にあたりまして、とかく國会を軽くあしらわれる。特にこの予算委員会のごとき最も重要なる委員会を、軽くあしらわれるような傾向が、間々あるいはたびたび見えるのでありまして、私どもは問題の大体の事情は了解いたしておりますけれども、しかしながらこれをそつとしておかれまして、少しも委員会にお諮りにならない、國会に堂々とおはかりにならない。そうしてその困難なところを困難だとして私どもに諮つてくださらない。こういうふうな点が非常に見受けられるのであります。その意味で私は特に嚴重にこの緊急動議を描出したのであります。この結末は今の皆様方の決議に服する次第であります。  さて今日の第一の質疑大藏大臣にお願いしたい。大藏大臣はかねがね本会議におきましても、また当予算委員会におきましても、今度の予算案を通じて行われる政府の政策の根本基調はデイスインフレである。つまりディスインフレ政策をこれによつて行うのである。それはインフレでもなければデフレでもない。こういうようなお話であります。デイスインフレ政策をいかに解釈してよろしいか。それによりましては、この予算案全体に対するわれわれの態度もまたかわつて來なければならないと考えるのであります。私は率直に大藏大臣のいわゆるデイスインフレ政策なるものは、こういうものじやなかろうかということをここに披瀝いたしまして、大藏大臣の所見を問うものであります。  大体大藏大臣は四日の本会議における予算演説におきまして、一般会計、特別会計並びに政府関係諸機関を通ずる全総合予算の眞の均衡をはかつたものである。財政面からするインフレの原因を断ち切つたものであると大見得を切られたと思いますが、これはきわめて悲壯な考え方ではないかと思う。なるほどこの予算案は一應一般会計から赤字公債を排除し、復金債の発行を停止する、特別会計への繰入金を停止する。また地方財政への配付金を縮減する。しかも特別会計並びに地方財政の起債にも制限を加える。從來の予算編成がとつて参りました一般会計赤字の建設公債並びに地方債への横のしわ寄せというものはこの際抑制せられておる。いかにもインフレ克服を外見は装つておるのであります。しかしながら一枚皮をはぎますと、実際には從來よりももつと廣汎な、もつと深刻な縦のしわ寄せをはかつておられる。それによりましてインフレーシヨンの根本的な矛盾をさらに濃厚なものに発展さしておるのであります。  まず第一に中央地方特別各会計のそれぞれにおきまして、行政整理——首切りをやる。赤字負担を官公廳の職員諸君並びに現業の労働者諸君の犠牲に轄嫁しておる。これこそは、今一般産業界におきまして、きわめて少数の巨大な独占資本のみの救済のために行われんとしており、また行われつつある集中生産、企業合理化、この線によりまして、民族産業、中小商工業者の人たち、さらに労働者の大量首切りという方向へ犠牲を轉嫁しておる。この犠牲轉嫁の一環であると考えるのであります。  第二にはこの横のしわ寄せそのものも、これはきわめて深刻になつて来ておる。從來は中央会計から特別会計への繰入金、地方会計への配付金をそれぞれ流して、特別会計には建設公債を発行し、地方会計には地方公債を発行して、量的にはインフレを拡大しておる方針をとつたのでありますが、この予算案の編成にあたつては、これとは逆にこういうものはすべてやめてしまう。ところが中央と地方財政を形式的に絶縁しまして、中央から地方へのしわ寄せをやめたようでありますけれども、ほかの條件をそのままにしてやる。繰入金の停止というものはすでに問題になつておりますように、これは特別会計なり、地方財政に非常に深刻な負担を負わせるものでありまして、特に地方配付金の縮小によりまして、地方財政はまた地方起債の制限と板ばさみになつて、もうつぶれることになるのではないか。そのようにして特別会計、地方財政は、今度はその赤字の補填といたしましてさつそく地方税の増徴をやる。現にやると言つておる。大量首切りに上りまして縦に多数の職員の犠牲負担を要求する。もしくはこれは地方財政の場合でありますが、天くだり的な強制的寄付金の割当によりまして、廣汎に地方民全体の犠牲負担のしわ寄せをはかつて行く、こういうことになるのであります。現に中央財政公共事業費が削減せられ、これで六・三制関係建設費はゼロになつている。そのしわ寄せをこの種の系統的な寄付の割当に求めておるという実例がある。警察施設関係の拡張のための強制寄付の割当とともに、こういう一切の犠牲負担を縦に及ぼすとか、そのほか一般地方民に轉嫁して行つておるのじやないか。そういう点が今度の予算案の一つの特色であると思う。そのようにいたしまして、ますます廣汎な國民の各層、つまり今まではただ労働者であるとか、農民であるとか、一般のサラリーマンであるとかいわれておつた人たちに対しまして、さらに廣汎に産業資本家や中小商工業者もこの犠牲負担を受けなければならない。低賃金とか、失業とか、破産とかによりまして、今はもう購買力が低下するというようななまぬるい状態通り越しまして、中には餓死的な状態に落ち込んでいる者が幾らもあるそういう反面に、これはあとで申し上げますが、大きな資本家——これはきわめて少数です。この資本家だけが、いろいろな面から恩恵をこうむるという矛盾が来ております。大体私はインフレーシヨンの特質を、どこまでもこういう階級的な收奪性というところに見ておるのでありまして、その意味から申しますと、これはますますインフレーシヨンを惡く内訌させるものにほかならないと断じてはばからないのであります。安本の発表になる経済白書によりますと、ただ日本銀行券の発行高の統計だけでもつてインフレーシヨンの進行を判断しておる。二十三年度を通じてインフレの進行は鈍化したというように結論しております。その点については後ほど青木安本長官にただしたいのであります。ところが日銀券の発行高の増減率は、これはただインフレーシヨンの指標にすぎないのでありましで、すでにインフレはできておるのであります。こういう状態のもとでは、いろいろの税金、通貨の回轉率であるとか、それに関連しまして手形の流通高であるとか、市中銀行の貸出し状況であるとか、多数の條件を組合せなければ、單純には結論できないものであります。しかし経済白書では簡單にインフレは收束するということを言つておる。これで大衆をだまそうとしておるという意図がうかがわれるのであります。しかしもつと大事なことは、かような流通手段、流通量の中で多くの割合というものは、ますます少数の大資本家の手の中に帰してしまう。少数の割合というものが、ますます大多数の國民大衆に残されるという矛盾になつております。この予算案の作成の基礎をなします物價に対する織込み賃金は、大体政府の説明によれば、三千七百円に対して一・六倍である。もちろんこれは六千百四十二円ベースで、きわめて低いのである。六千三百円ベースという既定のベースよりもさらに低いのである。さらにまた首切りの問題がすでに詳細に論じられております。さらにまた昨年に倍するごとき重税が主として下の者に押しつけられております。これは徹頭徹尾收奪予算であることがわかるのであります。そのことが何よりも雄弁にインフレーシヨンの階級的な攻奪性を、最も明瞭に示すものであると考えるのであります。最近数日間の予算委員会におけるいろいろな質疑應答におきまして、民自党の方々がインフレーシヨンを急速にやめて、デフレーシヨンに移るのではないかという点にたいへんな危惧を示しておるのであります。ところが政府の方ではいやそうではない、デイスインフレだといつているのであります。もしも民自党の危惧されるような意味におきましてならば、実はインフレーシヨンは量的にもますます発展するのでありましで、その御心配はないと私は考える。むしろわれわれにとつても心配で、このインフレーシヨンがこれから量的にも大いに発展することにつきまして、私はまず安本長官並びに大磯大臣に、日銀券の膨脹の大体の見通しをこの一年間について伺つておきたい。これは特に安本長官にも伺つておきたい。とかく安本の見解と大蔵省の判断は食い違うことが多いのでありまして、この際お二方から同時にお聞きしてみたいと思います。大体デイスインフレーシヨン策は、私が今申し上げましたように階級的な收奪性というもの、すなわちインフレーシヨンの階級的な收奪の役割と、デフレーシヨンの階級的な攻奪的役割とを兼ね備えた最も惡質なインフレーシヨン政策であるとここに断じて、これに対して大藏大臣の所見を伺いたい、このわれわれの判断が間違つていないとすれば、これによつてこの予算案に対する全体の態度を決定しなければならないのであります。非常に必要でありますから、ぜひお聞きしたい。私は通貨の増発も依然としてこれからそのテンポをゆるめないという見通しを持つております。たとえば建設公債、地方起債の発行、またざらに産業資金、特に長期資金というふうなものはやらないのではない、ただ財源が今までは一般会計からの繰入金であつて、そのかわり今度は主として対日援助資金、いわゆる見返り勘定に財源を求めるようにかわつただけでありまして、そこから今後再びインフレーシヨンの大きな発展が量的にも見られるのであります。この点はなお両大臣から日銀券の膨脹の大体の見通しのお答えによりまして、さらに質問を続けてみたいと思います。これで第一の質問は終りたいと思います。
  114. 池田勇人

    池田國務大臣 敗戰後のわが國のインフレ進行の原因は、先般も申し上げたように、主として財政インフレでございます。一般会計におきましては先ほど申し述べられておりましたように、一應特別会計への繰入れ等によりまして、ある程度の均衡予算をつくつておりましたが、特別会計並びに政府関係諸機関の資金放出によりますものが、インフレの原因をなしておつたのであります。從いまして今回は政府一般、特別会計はもちろん、関係諸機関の歳出につきまして均衡予算をつくり、財政インフレをとめることにいたしたので、今後はお話の通り今までのようなインフレがないと確信いたしております。  なお日銀券の見通しについての御質問でありますが、今後の政策がディスインフレである関係上、ただいまの最高発行限度三千五百億円を越えますにいたしましても、大したことはないと考えております。
  115. 風早八十二

    ○風早委員 一体どのくらいですか。
  116. 池田勇人

    池田國務大臣 今正確な数字は申し上げかねますが、大体昨年度二千億円、一昨年度相当ふえましたが、私は三千五百億円を越えても大したことはないと考えております。
  117. 青木孝義

    ○青木國務大臣 ただいま風早委員から経済安定本部は、日本銀行の通貨の発行量だけを見て、インフレの関係を洞察しておる。こんなふうにおつしやつたように思いますが、必ずしもさようなわけではございません。というのは「経済現況の分析」の中に出ておりますのは、二十二年の一月を一〇〇として計算されている。一方物價廳におきましては昨二十三年の一月を一〇〇として、一應物價と生計費への影響を勘案いたしておるのでありまして、その点については、われわれは單に日銀の通貨発行量いかんが、インフレの関係の一切を表示するものであるといつたような考え方をいたしておるものではございません。さらに御承知通り昨年から今年、ことに二月になりますと、大分物價は下つておるというふうに見ておりますが、生計費への影響を考えますれば、御承知のように今回主食に対する最高一割三分五厘の値上げとか、あるいはまた運賃六割の値上げとか、こういう状態を見ましても、おそらくその影響は、生計費に対してはせいぜい三パーセント程度しか影響しないであろうという程度の計算が成立つているのでありましてもしそれらの点について、もう少し詳細に説明を申し上げるためには、物價廳からも参つておりますので、政府委員から説明させてもよろしゆうございます。要するに今日われわれは、日本のインフレーシヨンはまさに收束過程をたどつているというふうに見ておりまするが、ただいまのお話で、今度の予算の立て方ないしはこの実行上におきまして、決してデイスインフレになるものではないかえつてインフレを促進するものだというような御観察につきましては、私は多少違つた考え方を持つておるわけであります。大体われわれとしては、この日本の現在の物價の生計費に及ぼす影響——また重要産業等における補給金であるとか、いうものについては、今回は特に物價の上らないような建前をとつて、從つて一般の生計費には大きな影響のないようにということを大体勘案しながら、デイスインフレの状態のもとに維持して行きたい。結局インフレを收束せしめたいという目標で、われわれせつかくこういう方面については研究をいたしておる次第でございます。
  118. 風早八十二

    ○風早委員 今大藏大臣並びに安本長官からの御説明でありますが、ただ三千五百億円を超えても、あまり超えないであろうというだけの漠然たる御説明では、少しもその根拠がわからない。なぜそれはあまり超えないのか、その根拠が少しも示されていないのでありまして、われわれ承服するわけには行かない。つきましては政府としては、もちろん詳細な資金計画並びに産業資金計画というものが当然あるはずであります。またこれがなければ予算を組み立てることもできないわけであります。いわんや今後の資金不定なり、あるいはこれをいかなる手当によつて充足するかということも、わからないわけでありまして、私はこの際この問題をさらに明らかにするために、資金計画並びに産業資金計画の概要を、大体今のインフレーシヨンの問題に即してでけつこうですから、御説明願いたいと思います。
  119. 池田勇人

    池田國務大臣 昭和三十四年度の資金計画につきましては、ただいま安本と共同いたしまして作成中でございます。
  120. 青木孝義

    ○青木國務大臣 これは大体のお答えになると存じますが、昭和二十四年度におきましては、重要基礎物資の生産が著しく増加するに伴いまして、第二次、第三次等の高次製品の生産も、相当増加する見込みであります。しかも重要基礎物資の價格については、原料として價格の引上げを行わないという方針でありますから、輸入物資の値上りあるいはその他の原因によりまして、若干の價格引上げを予想されるものがあるといたしましても、その影響は各生産段階におきまする操業度の向上であるとか、その他相当吸收することができるものと考えられるのでありまして、これがために高次製品の價格が、基礎物資價格に比し著しくきゆうくつとなり、主として高次製品に関連する中小企業者の負担を加重したり、あるいはまたこれがために、それに從事するところの労働者賃金を切り下げることによつて労働者負担を加重するというようなことは、まずないというふうに考えておるのであります。特に先ほど申し上げたことに関連いたしまするが、一般の生計費に大した影響がないということであれば、おつしやるように今度の予算によつて、生活を極度に圧迫するというような面は、おそらく——税とかそういう面については、なお檢討の余地はあろうと思いますが、大体ただいまの日本経済の進行過程におきましては、この予算を実行することによつて、インフレが招來されるというふうには、私としては考えられないように思つております。
  121. 風早八十二

    ○風早委員 大藏大臣の御説明はこれはあまりに木で鼻をくくつたような御答弁だと思うのです。昨日、一昨日以來、與党のいろいろな、非常に詳細なる、また非常につつ込んだ質問に対しましても、まるであしらつておられるように見受けられる。しかしながら與党に対してはまあそれでも済むといたしましても、野党たるわれわれに対して、そういうふうな非常に不親切な誠意のない御答弁では、ほとんど質疑をしてもむだな感をさえ抱かせるのであります。われわれが聞いておるのは、ただ目下作成中であるという御返答ではないのでありまして、作成中であるならば大体どの程度のものであるか、この点を聞いておるのであります。作成中であるということにつきましても、これは当然もうできておらなければならないのでありまして、それに対する責任をもう少し政府としては感じていただきたい。そういうことを一切抜きにして、ただ作成中だというので突き放されたのでは質疑をしても意味はないわけです。ただこつちでかつてに聞いていることになる。私ども眞劍にこの予算が実行できるかどうか、またそれが正しい予算であるかどうか、その基礎を確かめるために質問しておるのでありますから、もう少しまじめに回答していただきたいと思います。  安本長官の御説明で大体御趣旨はわかりましたが、あらましの数字を出していただかなければ今問題にいたしましたインフレーシヨンの発展の見通しというものには、何らの回答にはならぬ。ただそう思うというだけの抽象論になつてしまうのでありまして、いろいろ新聞紙上で第何次資金計画とかいうものが幾らもできておりまして、そういうものによつて今日まで大体野党といたしましても十分な研究をしておる。それらを檢討してみました結果、どうしても資金のずれが莫大になると大体判断されるのでありまして、この点で政府はただ漫然と楽観的に考えておられるということは、はなはだ危險だと思います。四月七日の衆議院の予算委員会におきましても、池田大蔵大臣は預金の増加を二千五百億円に見込んでおる。ちようどそのころ毎日新聞の座談会の記事に、大藏大臣と一万田日銀総裁の記事がありましたが、その中では大藏大臣は大体三千億円と見込んでおるというようなお話であつたと思います。これに対して一万田日銀総裁は二千億円。ところが予算委員会におきましては今度は二千五百億円いうように、五百億円だけ、さらにふくれ上つておる。こういうふうな点につきましても、一日、二日の違いですぐ預金の見通しについて五百億円も違つて来るといつたようなあやふやな見通しでは、われわれはとうてい承服できない。もう少し確実な数字的な基礎に基いて、ひとつ御回答を願いたいと思います。大体二千五百億円の見込みというものはもちろん過大である。はなはだしく過大であるとわれわれは見るのでありますが、これは大藏大臣に言わせれば、預金というものをドレツシングすればできるというふうに考えておられるのであろうと思います。そうなれば結局信用造出になつて、結局インフレーシヨン促進の結果になる。たとえば一億円の資金を貸し出しまして、ひもつきで五千万円の預金をさせる。そうして五千万円をまた貸し出して、二千五百万円のひもつき預金をさせるというぐあいに、こういうドレツシングをやりますと、預金の水増しはできます。二     〔委員長退席、西村(久)委員長代理着席〕 しかしそれでは生産計画というものは実施できない。またこの対日援助費見返り資金につきましても、昭和二十三年度分の残余分、これはガリオア資金でありましようが、そういうふうなものの残余分を四月からの資金計画に繰入れて利用するであろう、だから資金的なずれはないというふうな御説明がこの委員会でもあつたように記憶しておりますが、それだけではこの年度初めの資金不足を補うことは、とうていできないと考える。でありますから私は聞いておるのでありまして、こういう点について、どこまで見通しがあるのか。それにはどうしても概要でも資金計画、産業資金計画を出して來なければ、議論にならないわけであります。その点で今の御答弁ははなはだ不満であります。青木安本長官の御答弁もまたきわめて抽象的であつて、われわれ承服できないのであります。大体いつごろその資金計画——今作成中だと言われますが、いつごろになつたらできるものでありますか。予算案の審議が終らないうちに、この資金計画を公になされる見通しがあるのでありますか、その点念を押しておきたいと思います。
  122. 池田勇人

    池田國務大臣 予算案の御審議を願います際に、從來は資金計画も一應提出いたしまして、御審議の参考にしておつたのでございます。しかし今回は御承知通りに千七百五十億円というこの見返り資金特別会計の使途その他につきまして、関係方面とよほど折衝しなければならぬ。また関係方面でもこれをどういうふうに使われるかということについての、はつきりした見通しがついていない関係上、資金計画が遅れたのであります。ただいまのところ、昨日も相当省内で論議したのでありまするが、二日のうちには出し得ると思います。ただ千七百五十億円の内容につきまして、いわゆる産業資金につきましては、從來よりちよつと不確定の点があろうかと思います。預金の増加目標について、三千億円とか二千五百億円、こういうことを言つておるが、どれがほんとうか。これはやはり資金計画内容でございましてまだはつきりした数字は申し上げられません。資金計画をごらんに入れるまでには、しかとした金額を出そうと思つておる次第であります。御承知通り昨年は三千億円の目標でございましたが、大体三千五百億円に相なりました。私は理想といたしまとて、二千五百億円程度の貯蓄目標で行きたいという氣持を持つておるのであります。しかし全体の資金計画をいたしまして、この二千五百億円が狂うかもわかりません。大体私の目標としてはその程度で行きたいと思つております。
  123. 風早八十二

    ○風早委員 資金計画が二、三日中には提出せられるということでありますから、これが提出された後に、この問題についての最後の質問は保留しておきたいと思います。それから安本におかれましても、同様にやはりこの資金計画についての御計画があると思いますから、それもやはり方針をきめて、この予算委員会に提出せられまして、最後になるまで、その質問を保留しておきたいと思います。  第二問は、千七百五十億円の見返り資金についてであります。予算委員会におきましても本会議におきましても、池田大藏大臣並びに青木安本長官は、その御答弁の中で、必ず何かというとこの千七百五十億の見返り資金に問題を持つてつておられる。公共事業費が減つておるということが問題になりますと、それもこの千七百五十億円から融通ができないものでもないからというようなことを言われた。長期資金が問題になりますと、やはり千七百五十億円を考えておるということを言われる。この千七百五十億円の見返り勘定は、まるで打出の小づちのようなものでありまして、これさえ打出しますと、何でも問題が解決する。これが今度の予算案のまるで御本尊になつておるように考えられる。一切合財これで解決されるように感ぜられる。そのようなかつてな流用ができるものであるかどうかということにつきましては、はなはだそのこと自身が疑問なのであります。これは申すまでもなく、おそらく特別会計として出されるのでありますが、一般会計の費目に対して流用されることにつきましても、いろいろ問題があると思うのであります。こういう点については、われわれは共産党といたしまして、財政法の一部改正、特に流用、轉用規定が非常に緩和せられる、またそれに関して大藏大臣の権限が非常に強化せられる、この点がこの問題に直接関係があるということ。そしてその結果は日本といたしまして、この全予算を運営するにつきまして、その自主性がはなはだ問題になつて來やしないか、こういう危險をわれわれは感じますがゆえに、大いに反対をしたのであります。これはしかしもはや法律となつて通つたのでありまして、おそらくこの財政法の改正をもつて、この運営も合法的にされるという腹であろうとは考えられる。この問題については、しかしながらおのずからやはり限度があると思いますので、さらに後ほどもう一度触れてみたいと思います。この千七百五十億円というものがこの予算書に計上せられておりますけれども、その款項目は次のごとしとあるだけでありまして、次には何にも書いてありません。そして、すぐ歳出に移つております。でありますから、その歳出としては特に建設公債引受二百七十億円があるだけであります。こういうことにいたしまして、この千七百五十億円についての予算書そのものに、はなはだ欠陷があるのであります。千七百五十億円のこの問題については特別な法令が必要でありますが、それが出ておらないという先ほどの問題は、一應留保した上でのことでありますが、それにいたしましても、こういうような欠陷がある。でありますから、どうしてもこれは予算審議いたします前に、この打出の小づちともいうべき千七百五十億の計算の基礎は何であるか、これを明らかにしていただきたい。これが第一であります。二、三ずつまとめてお聞きいたしますからお答えいただきたい。それからこれはガリオア資金とイロア資金の合計なのでありますか、これがすなわち今後わが國に入つて来る援助資金の全部の円勘定でありますか、その点を伺つておきたい。その場合における大よその換算率もむろん一應は伺つておきたい。それからいつごろからこの資金が入り、物資が入り、そしてその賣上げ代金が政府の手元に入るのであるか、こういうことにつきましてはつきりしたことをお聞きしたいと思います。さらに二十三年度と申しますよりも、一九四八年の七月から四九年の大月会計年度、アメリカの財政の会計年度の外資援助の残高は今幾らでありますか。新しい千七百五十億円の実際上の資金化に至るまでのずれは、大藏大臣のお話によりますと、この残高によりてきめられるだろうというようなお答えがあつたと記憶いたしておりますが、これを正確に数学的に証明していただきたいのであります。私はこのずれからも資金難が起り、その手当のために必ずまた公債増発であるとかその他の問題が起つて來るであろう、それでインフレに拍車をかけるであろうということを考えるがゆえに、お聞きするわけであります。
  124. 池田勇人

    池田國務大臣 対日援助見返り資金特別会計の千七百五十億円は、日本経済再建の打出の小づちであります。この点はお話の通りでございます。なお千七百五十億円の計算の基礎はわかりません。これは関係方面からこの特別会計の資金として千七百五十億円を計上することを、勧告するとは申しませんが、私に言つて参りました。千七百五十億円が今年度におきます全部かどうかもわかりません。從つてまた換算率についてもわかつておりません。いろいろな想像はしておりますが、アメリカの議会で今後きめる、それによつて動く関係上、私から責任のあるお答えは申し上げかねるのであります。最後の、いつごろから入つて來るかという問題でございますが、お話の通りに、一九四八年から四九年の四億数千万ドルの分の残りの金で入つて来る。四月に入つて來て、そして利拂いをいたしまして貿易資金会計に入つて來れば、ただちに見返り資金特別会計に入れて使い得るのであります。今、四八、四九年の会計年度の四億数千万ドルの分がどれだけ残つているか記憶はございません。いずれ調べましてお答えすることにいたします。
  125. 風早八十二

    ○風早委員 今大藏大臣からかなり驚くべき御答弁があつたのでありますが、この千七百五十億円はもともと外資援助資金であるという場合に、それがはたしてどれだけ入つて來るかもわからない。またその換算率もわからない。いつ入つて來るかもわからない。こういうまつたくの不確定な、未知数的な、しかもこの基礎の上に財政を組み立てる、われわれの今後一年間の國民経済の全部を託する。これはまるでわが國民経済の全体を、從つてまた國民生活の全体を噴火山の上にでも乗せるようなものではないかと考える。こういうふうなあやふやな基礎に立つた予算案は、私は寡聞にしてこれが初めてだと思う。現在の政府当局には実際の政策につきましては、いろいろな角度から御質問をするつもりでありまするがこの予算案がそういうふうな性格のものであるということは、これできわめて明瞭になつたと思う。しかしながら一應仮定になつて、はなはだこれではやりにくいのでありますけれども、私は先に進みまして、その使用先についてもう少し具体的に説明をしていただきたいと思います。今のところでは予算書に上つておるのは建設公債だけでありまして、そのほかは池田大藏大臣のお話によりますと、大体長期資金をまず優先にし、そうして國債償還に充てたいというふうに言われております。その場合におきまして、長期資金にはどれくらい、國債償還にはどれくらいなされるおつもりであるか、この点を一應千七百五十億円のわくを認めた上でお伺いしたいと思います。それでなければ結局資金計画は一両日中に出されると申されましても、そういうことはあり得ないのでありまして、これは必ずわかつておいでになると思うのであります。  次にはこれはぜひ答えていただきたいのでありますが、長期資金はどの産業一どの経営を大体考えて、おられるか、これにつきまして具体的な方針をぜひ伺いたい。というのは、これはたいへん厖大なものではなくて、きわめて少数の産業、またそのうちでも特に少数の特定の経営であるということは、大体推察にかたくないのでありますから、その点を明らかにしていただきたい。なおこれに関連いたしまして、長期資金調達のためにまたいろいろな方法があると思います。たとえば市中銀行に債券の発行をさせるというようなことも考えられますかどうか、この点もあわせてお答え願いたいと思います。なお復金債の償還につきましても、今までわかつておられるところだけを報告していただきたいと思います。それから復金債、興銀債、いろいろあるでありましようが、そういうものをさらに日銀の手持ち、市中銀行の手持ち、その他いずれをいかなる割合で償還せられるおつもりであるか、この点につきましても、すでに大体資金計画並びに産業資金計画内容として、この際あらかじめ伺つておきたいと思います。
  126. 池田勇人

    池田國務大臣 私は率直にお答え申し上げたのでございまして、これが全部かどうかということも、アメリカの議会できめることでございます。ただいろいろな今までの折衝その他を勘案いたしまして、千七百五十億円來るということは大体確信があるのでございます。  次にその使途につきましては、先ほど來から申し上げておるように、これは西ヨーロッパ諸國では一應アメリカと協約を結びましてきめるのでありますが、占領治下にあります関係上協約もできません。向うの意思が多分に入つて來ると思うのであります。從つて先ほど來申し上げておるように、資金計画作成につきましても、支障を來しておる状況でございます。なお具体的の問題、長期資金の方、長期建設資金にどれだけ出すか、あるいは復金債券、國債をどれだけ償還するかということについて、ここで申し上げることができないのをまことに遺憾とするのであります。なお一般市中銀行に債券発行を認めるかという御質問に対しましては、ただいまは興銀だけに相なつております。しかし他の金融機関にも、ある程度認めてはどうかという問題につきましては、折衝をいたしております。
  127. 風早八十二

    ○風早委員 今この千七百五十億円の使い先につきましては、まだいろいろな点で了解ができておらないというお話でありますが、これについてはすでにこの委員会でも大藏大臣が言明せられましたように、すでにアメリカとイギリス、フランス、イタリア、あるいはギリシャ、トルコ、こういつた國々との間に協定がこの外資についてできておるのでありまして、それらの協定の内容、その條件は、とつてつてアメリカの対日援助の場合にも適用されるものと大体推察され得るわけであります。そこで私は大藏大臣に伺いたいのでありますが、特にギリシヤ、トルコの場合におきまして、どういう協定がアメリカとの間に結ばれておるか、これは大いにわが國におきましても参考になると思いますので、これはぜひ伺いたい。またフランス、イタリア、イギリスにつきましても、若干はすでに御説明がありましたが、これについてももう少し詳細に箇條書にして條件を聞かしていただきたい。
  128. 池田勇人

    池田國務大臣 各國の経済状況によつて区々になつております。イギリスにおきましては原則として國債の償還でございますし、またフランスにおきましては発電その他の産業資金、長期設備資金に相当部分が使われております。またイタリアの方では住宅資金等にも使つておる状態でございまして、区々になつておるのであります。御希望でございますから、ある程度こちらで調べましたものをごらんにいれてもよろしゆうございます。私の考えといたしましては、フランス、イタリア、こういうふうなところの状況によつて、そうしてまた金融界の情勢その他によつて、國債の償還にも充てたいという腹案を持つているのであります。しかしこれは大体ただいまのところ、三箇月ごとに策定をして行く意向でございますので、一年間の計画はなかなか立ちにくうございます。
  129. 西村久之

    西村(久)委員長代理 風早君にちよつとお諮りいたしますが、今の資金計画関係等、アメリカの援助資金の関係はたびたび質問がありまして、大藏大臣の申される範囲は限定されておるようでございますから、法律案が出ましてから具体的の質疑にお入りになることを希望いたします。
  130. 風早八十二

    ○風早委員 せつかく委員長の懇切なお言葉でありましたが、実は同じ問題ではありますが、これは大藏大臣も認めておられましたように本全予算の打出の小づちでありまして、これが少しでも明確にならなければ、一切予算審議ができないのでありまして、その点について私が伺うことは、ぜひ許していただきたい。なおまた同じ千七百五十億円の問題にいたしましても、與党の方がお聞きになりますのとおのずからその観点が違いますので、やはり御答弁の観点も違うと思いますから、その点は御了解願つて、あと二、三の質疑をこの千七百五十億円について許していただきたいと思います。
  131. 西村久之

    西村(久)委員長代理 ちよつと風早君にお諮りいたしますが、委員長は許さないと申し上げるのではないのでありまして、大藏大臣の答弁の範囲が限定されておるようでございますから、それ以上の質疑に対しましては、お答えができにくい関係がはつきりしておりますので、法律案をごらんになりましてからお尋ねにならなければ、時間だけを延ばしましても、同じような答弁の繰返しになりまするがために、申し上げておるのでございまして、許しませんとかなんとか言うつもりでございませんから、そのお心持ちでほかの方の問題に触れて、法律案が出ましてから、本問題についての質疑は御継続を願いたいと委員長希望いたします。
  132. 風早八十二

    ○風早委員 再度の委員長のお言葉でありますから、議事の進行上からいいまして、私は一應この法案が出、もう少しはつきりしたことが政府で御答弁され得る時期まで留保したいと思います。  ただ一つだけ、これはすでにもう大藏大臣もある程度大体言明をされておるのでありますからして、その点だけを念のために伺つておきたい。それは主としてコントローラーなるものの大体の性質であります。アメリカからコントローラーというものがやつて來ることが言われておりますが、これは日本予算の運用についてどういうふうな関係になつておるのであるか、その点だけをちよつと伺つておきたいのであります。質問の意味はおわかりになりましたでしようか。
  133. 池田勇人

    池田國務大臣 私は向うからコントローラーが來るということは聞いておりません。
  134. 風早八十二

    ○風早委員 これはすでに大藏委員会におきましても政府委員からはつきりと出ておる言葉でありまして、たしかまた本会議においても私は聞いたと思う。政府当局の方から言われるまでわれわれは知らなかつた。こういうコントローラーというのは日本語に直したら一体何と言つたらよいのか。またそれが今後の日本財政あるいは予算全体の運用をあたかもつかさどるものであるかのごとくにも感ぜられるような印象を受けたのでありまして、その意味でこれだけはちよつと伺つておかないと、これは重大な問題であると考えるからであります。大藏委員会の速記録でもごらんになればおわかりになると思います。私はもう当然のことと思つて、ここに毎月何日ということは調べて來ませんでしたけれども、これはおつしやらなかつたことにした方がよいのでありますか、その点をちよつと伺います。
  135. 池田勇人

    池田國務大臣 私はそういうのが來られて資金運用についてのサヂエスチヨンを與えるとか、意見を述べる機会を與えるとかいうふうなことはあるかもわからぬとは思つておりましたが、來るとはつきり聞いたこともございませんし、またいつ來るというようなこともはつきりとは聞いたことがございません。最近ちよつと向うへ行くことが少くなりましたので、あるいは他の大藏職員が行つて聞いて來て言つたのかもわかりません。私に関する限りは、はつきりしたコントローラーがいつ來るとかということは聞いておりません。
  136. 風早八十二

    ○風早委員 むろんこれは大藏大臣が言われたと言つておるわけではなく、大藏委員会で他の政府委員が説明されたのであります。そうでないとわれわれ委員はどつからも聞くところはないのでありまして、それで聞いておるのでありますから、それだけは御了解を得ておきます。そういたしますと、今の見返り勘定についての質問は留保して打切りまして、次に補給金の問題について伺つておきたいと思います。  この補給金の問題はドツジ公使によりましても、日本経済がそれにまたがつている竹馬の片足だということで注目を引いた問題であります。これはどういう点に一体問題があるかと申しますと、外資がふえるだけこの補給金がふえる。これは輸入補給金については一目瞭然でありますが、補給金がふえるだけ税金がふえる。これはしかし輸入補給金だけでないのでありまして、外資の恩恵を直接受けるきわめて限られた大きな経営、そういう経営が生産がそれによつて上れば上るだけ、今度はやはり少くも補給金の絶対額は上つて行く。そうして補給金の絶対額が上れば、それだけまた税金というものの負担がますます過重なものになつて来る。こういう関係が指摘せられたものとして問題になつておるのであります。     〔西村(久)委員長代理退席委員長満席〕 そうしてまあ大体ドツジ公使の見解によれば、こういうふうにして税金を会長つているような日本産業は、これはおかしいじやないか。この外資と補給金の両足をもつと短かくしなければならないというのが、大体その声明の趣旨だつたと考えるのであります。ところが今度の予算案を見ますと、補給金が非常に増大しております。これは二千二十二億円という莫大なるものであります。この点につきましては、輸入補給金のごときものがこの中に入つておるような関係も、あるでありましようが、いずれにいたしましても実に莫大なものであります。これについて政府は相かわらずこの補給金制度を、これからも続けて行かれるつもりであるかどうか。現在の補給金制度は、九原則に対してどういう関係に立つものであるか、この点につきまして御説明を願いたいと思います。
  137. 池田勇人

    池田國務大臣 二千二十二億円の補給金につきましては、内容はごらんの通りでございます。私としてはできるだけ安定帶物資の價格補給金につきましては削減する考えでおりましたし、今もまたその考えでおるのであります。ただ一般物價水準に影響を與えないという方針になりました関係上、できるだけ安定帶物資の品目も減し、あるいは補給金額を減しましても、なお千二億円に相なるのでございます。今後実行上におきましては、できるだけ少くするという考えのもとに、極力注意を拂いたいと考えております。
  138. 風早八十二

    ○風早委員 この補給金については、特に安定帶物資に対する補給金については、できるだけ縮めて行くつもりであるというお話でありますが、いかにしてそれを縮めることができるか、その具体的な方法をやはり説明していただきたい。大体これは商品別ではわからないのでありまして、一つ一つの物資についてのその生産のコストを明らかにしなければ——これはこの補給金の單價の計算の基礎でありますから、この点をやはりまず明らかにして、それによつて御説明願いたいと思います。この点につきましては、大蔵大臣並びに物價廳長官、物價廰長官がおられなければ、商工大臣ならなおけつこうであります。この両方から御説明願いたいと思います。今まで私どもが新聞その他で拜見しました資料によりますと、どうもこのコストにつきましても、両省のコストに非常に食い違いがあるように思われる。こういうのは一体どこから來ておるのか、私どもはどれを採用すべきであるか、この点についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  139. 池田勇人

    池田國務大臣 こまかい数字につきましては、政府委員より説明いたさせますが、私がなるべくこれを減額するように努力したいと申しますのは、やはり補給金を出しまする物資の生産会社の経理につきまして、相当の檢討を加えて行きたいと思うのであります。個々の会社によつてよほど違うと思いまするが、能率をうんと上げさせて、そうして経理に余裕を持たし、続いて補給金を減らすという考え方でございます。
  140. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 個々の物資の現在の生産者債務、從つてこれに対しての補給金算定の基礎になつておる消費者價格というものは、非常に厖大な数になりまするので、詳しくは、あるいは別の表で申し上げた方がいいかとも存ずるのでありますが、御参考までに二、三のものについて申し上げまするならば、石炭につきましては、現在の生産者價格が、平均いたしまして四千百九十三円であります。これが平均での賀渡し、特産関係の賣渡し價格が千五百十三円、從つてその差額の二千六百八十円というものが、補給金の計算の基礎になる單價になるわけでございます。それから鋼材につきましては同様の價格がトン当り二万六千六百九十円ということに相なります。消費者價格が一万一千六百三十円でありまして、差額万五千大十円が補給金の單價になるわけであります。銅につきましては十八万一千二百六十円……。
  141. 風早八十二

    ○風早委員 ちよつと途中ですが、そういうことは大体予算説明書にも書いてありますので、私の伺いたいことは、もう少しつつ込んでその原價計算にいろいろな問題があるわけでありまして政府は率直にこの原價計算上のいろいろな問題について、現在どうなつておるか、こういうところを突けば、今後この補給金を正当に減らして、しかも業者にも決して心配をかけない方途があるのだということをひとつ明らかにしていただきたいと思います。トン当りの消費者價格はきまつたものでありまして、こういうものと裸供出價格の差をとつて、補給金の單價を出すようなことはわかつておりますから、どうかひとつその先をやつていただきたい時間の節約上お願いします。
  142. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 今申し上げました数字が、いろいろと企業関係も入れてできました生産者價格であります。その計算の基礎につきましては、非常に複雑なものでありまするから別途違う政府委員からお願いすることにいたします。
  143. 風早八十二

    ○風早委員 大体特に復金の融資先——これはもちろん補給金をもらつておる先が、復金の融資先なのでありますが、この復金の融資先につきまして、その実際の運営に対する大藏省並びに商工省の監査を要求したのは、この前の國会のおそらくこの委員会であつたと思うのです。しかるにまだその監査の報告が國会に来ておりません。これにつきましては、私は特に主計局長あたりには便宜をはかつてもらうように慫慂してあつたのでありますが、まだ今日まで参つておりません。これについてこの際予算委員会としても、あらためてこの前の國会委員会で要求してありました、この融資先の一切の業務状態の監査につきましての報告を請求していただきたい。この点は委員長においておとりはからい願いたいと思います。
  144. 植原悦二郎

    植原委員長 今風早委員から前予算委員会においても要求されておる監査の表ですが、それはいかが相なつておるか、政府の御説明を願いたいと思います。
  145. 愛知揆一

    ○愛知政府委員 ただいまの御要求に対しまして、現在までの経過をちよつと簡單に申し上げたいと思います。先ほど御指摘の通り、復金の融資先の監査につきましては、國会からの御要請もあり、政府といたしましても復金法第三十一條によりまして監査いたす必要がございますので、特に昨年末から組織的に監査を実行いたしまして、最初に取上げましたものが、昨年の八月三十一日現在におきまして、復興金融金庫から一億円以上の融資を受けておりまする会社が八十三社でございます。相当の数に上つておりますので、まずこの一億円以上のものを対象といたしまして、大藏省におきましては理財局、銀行局それから地方財務局、地方部等を動員いたしまして、大体本年の三月三十一日までに一應これを終了することを目途にして実行いたしました。なお大蔵省以外にも商工省、日本銀行、復興金融金庫等の援助を得まして、この政府の監査隊の代行機関としての援助をしてもらつたわけであります。ただいまの状況は、主として大藏省が担当いたしまして、監査を終了いたしましたものが十八社、商工省が主として担当いたしましたものが一十九社、それから復興金融金庫が担当いたしましたものが三十三社、合計八十社に対して監査を大体終了いたしました。なお二、三社残つておるような状況でございます。このそれぞれの監査報告書はきわめて厖大なものになりましたので、ただいま残りました数社についての監査を急ぎまするとともに、これを総論的にとりまとめるものと、それから各会社別にいろいろ指摘しなければならぬところもございまするし、それに基いた措置考えなければならぬものもございまするので、ただいま非常に急いで、その書類を整備いたしておるような状況でございますが、できましたものから当委員会及び大藏委員会等に逐次書類においての御報告をいたしたいと考えておる次第であります。
  146. 風早八十二

    ○風早委員 この予算案の審議に間に合うようにぜひひとつ促進していただくことを強く希望しておきます。特に今石炭のお話も出ましたが、石炭等につきましても、石炭廳の監査課が大体昨年の七月から九月の間におきまして、全國十九の炭鉱について行つた石炭の原價監査の結果報告というものがありますが、そういうふうなものでも大体この問題の一つの要点は出しておると思うのであります。それによりますと、赤字だ赤字だといつておる炭坑に、やはり四%から一九%の原價のごまかしがあるということがはつきり出されております。これは公の資料であります。こういうふうな監査課の大体の結論によりましても、経営者は大体一トンについて二、三百円の赤字があるといいながら、実際は現在の炭價でも相当のもうけがある。そういうことが書いてあります。これは監査課の結論であります。そういうふうにして、ここにずつと炭鉱の名前も全部上つておるのでありますが、大体宇部地区のごときは特にひどいのでありまして、ほとんど一六%の含みがちやんとこの原價の中にある。この原價の含みにつきましては、これはおそらくアメリカからやつて來た專門家たちも、すぐこれに氣がついておつたと思うのです。こういう点について政府は眞にまじめにこの問題を取上げて、そして一方で合理化ということを言つておられますが、合理化という意味は、そういう非常によけいな含みを排除して、そしてコストを下げてそれによつてまた補給金を下げる。これをやらなければ、ほんとうに確実に補給金を下げて行くことはできないのであります。ただ目分量で下げるということではないと思います。それによりまして、初めてまた税金の負担も確実に軽減せられるのであります。そういう点について政府の所見を伺いたい。この炭鉱の赤字の問題につきましては、特に原價計算の非常な不正確というか、意識的なインチキにつきましては、いずれまた考査委員会というものもできたのでありますから、そこでもまた問題になるでありましようが、とにかく予算委員会といたしましては、これは予算審議の基礎として、ひとつ補給金の問題として、ぜひとも、ここで所見を伺いたい。特にこれは安本長官にお伺いしたい。
  147. 青木孝義

    ○青木國務大臣 ただいま風早委員からの石炭に関する問題でありますが、もちろん私どももそういう点については十分今後とも愼重に取調べまして、そしてむだな補給金を出すというようなことは、嚴に避けなければならぬという考えを持つておりますので、お言葉のようにそれらの点については、深い注意を拂つて参りたいと存じておるのであります。
  148. 風早八十二

    ○風早委員 そういうつもりだということはいつも政府は言われます。むろんそうでないということは言い得ないのでありますが、眞に有効にこのコストを下げ得るかどうかという問題でありまして、その点についてはこの石炭廳の監査課の監査そのものについても問題があるのであります。これは労働組合側から言いますれば、やはり労働組合がこの監査に参加するならば、もつとはつきりしたことがわかる。これはもうどこの石炭の労働組合でもみんな言つておることであります。そこで政府としてはこの監査を眞に有効にするためには、炭鉱労働組合がもつと大幅に有力に、この監査に参加し得るような仕組みについて考えておられるかどうか。聞くところによりますと、石炭の問題につきまして、調査班ができておりまして、いろいろな点について労働組合のそういう役割につきまして、かえつてこれを押えるような事実があるということも、労働組合側から問題になつて來ておるのであります。これらの点について、あわせて政府当局がどういうお考えを持つておられるか、特に安本長官に伺いたいと思います。
  149. 青木孝義

    ○青木國務大臣 私どももそういう点は公正を期したいと思いますので、なお十分研究をいたしまして善処いたしたいと存じます。
  150. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 関連質問ですが、今の補給金の問題であります。私はこの政府が出しました資料に若干疑問がありますので、今政府は石炭の例を取上げられましたので、ちよつとお伺いいたします。特定産業向けと一般産業向けの配炭の比率は一体どれくらいになつておりますか、まずそれをお伺いいたします。去年でありますと、八十五対十五くらいになつておりますが……。
  151. 青木孝義

    ○青木國務大臣 お答えいたします。その点は私もつまびらかでございませんので、資料を調べましてお答えいたします。
  152. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これは実は重大な問題があると思うのでありまして、大体の見当でよろしゆうございますから、局長さんからでもけつこうですが、去年はたしか八十五対十五になつております。これがどれくらいの見積りになつておるか、見当でけつこうです。
  153. 谷口孟

    ○谷口政府委員 お答えいたします。昨年の比率はお説のようなことと思います。今年の比率は特需向けの方がもう少しふえるかと思つております。詳しい資料はいずれ調べた上でお答えいたしたいと思います。
  154. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 大体その見当で私が計算してみますと、この資料にもあまりすように、ことし特定産業向け石炭國内の分として三百二億の補給金を出すことになつております。そこで二十四年度補給金單價は二千六百八十円になつておりますから、これで割ると、私の計算に間違いがないとすれば、一千百万トンということになります。これがもし八十五対十五の割合で補給されて、十五の分に当るとすると、八十五の分に相当するものは六千百六十万トンでなくてはならぬ。両方合せると七千万トン以上の石炭が二十四年度は増産されるということになるはずですが、これは政府が一應計画しておる四千二百万トンをはるかオーバーする額であつて、この石炭向けの補給金が何だか故意にふやされておるような印象を與えるのでありますが、この数字はどうでございますか、お伺いいたします。
  155. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 千三百万トンということになつて、この表にも出ておりますが、数字に間違いはないと思つておりますが……。
  156. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 これは特定産業でしよう。從つて一般産業というものはこのほかにあるわけです。そうすると八十五対十五ですから、大体五・六六ぐらいの倍率になつておる。一般産業には五・六六倍の石炭が配給されるということがこれで想像されるわけです。それを両方合すると、実に七千万トン以上の石炭が來年は出ることになる。これはこれだけの補給金をとるために、わざとそういう倍率をつくつたような重大な疑惑を私は持つのでありまして、今の河野さんのお答えだけでは納得ができません。御明答をお願いいたします。
  157. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 四千二百万トンという計算で、それに対していわゆる特定産業向けが千三百万トン、從来の割合がどういうふうになつておりましたか、この計算に間違いないのであります。
  158. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 そうしますと、谷口さんが先ほどお答えになりました八十五対十五という比率自体相当急激な変化でも來ておるのか。大分政府相互間において違うように思つております。
  159. 谷口孟

    ○谷口政府委員 お答えいたします。先ほど私は記憶で申しておりましたので、比率は大体三対一くらいだと思います。先ほど八十五対十五ということについて、大体その通りと申し上げましたのは、私の記憶違いと思います。今の河野政府委員の資料による説明の方が正しいと思います。訂正いたします。
  160. 中曽根康弘

    ○中曽根委員 その資料をひとつお願いいたしたい。
  161. 風早八十二

    ○風早委員 今の補給金をいかにして下げるかという問題が続きますが、政府は石炭業者に対しまして、二十一年四月から二十二年七月までにおきまして生じた石炭の赤字が二百十六億円、そのうち炭價の決定が遅れたということで、これは政府責任に帰すべきものだ、政府が非常に責任を感じまして、今後の予算で百四十一億を交付公債で支拂うことにしておる。ここに一つ問題があるのであります。かようにして一方では價格政策によつて生じたといわれる業者の赤字補填をやりながら、他面におきまして政府の價格のきめ方があやまつたときに生じた不当な利益につきましては、これを少しも取上げようとしておらない。そういう例は、たとえば昨年七月にきめました鉄鋼の價格、これは年間八十四万トンの生産で決定したものでありますけれども、実際には百十五万トンも生産がなされたのであります。從つてそのために單位当りの生産費は、コストが大いに下つておるのであります。これは安本でも争ういう作業は專門にやつておられるから十分に御承知と思う。今回の補給金問題と関連いたしまして、生産者價格を下げることになつておりますけれども、今までのもうけとをはき出させるということは、全然やつておらないのであります。こういう例はソーダについても言えるのであります。なお硫安につきましては、硫安の補給金の関係で、やはり從来の生産者價格を二万九百六十六円から二万五百六十五円に今度は引下げております。單位当りの補給金は下げております。しかしながら実際のところはこれは一万八千円ないし一万八千三、四百円でけつこうやれるということは、常識になつております。そういたしますと、九十億円の補給金が今計上されておりますけれども、大体これはその計算だけでも八十億円くらいになる。そこでその間に十億円くらいな補給金の節減ができるのであります、こういうふうなことはいろいろな安定帶物質について一々証明できると思うのでありますが、こういうことについて政府はもつとつつ込んで、生産が増大して、コストが下つたという割合に比例して、補給金も下げるというはつきりした方針をとられるのであるかどうか、この点について伺つておきたい。
  162. 青木孝義

    ○青木國務大臣 お説のようにそういう点は、やはり生産が上つて行けば、それだけ少くして行くというような方法をとつて参りたいと思います。
  163. 風早八十二

    ○風早委員 われわれは政府の実際の施策を問題としなければ、この委員会でただ通り一ぺんのごあいさつだけでは済まないのであります。今日御承知のように、民自党の方々も声を大にして叫んでおられる税金の問題、これはわれわれ勤労大衆にとつては、ほんとうに税金で泣かされるというようななまやさしいものじやない、これで首をくくるという段階になつている。そういうふうな税金を食つて補給金を渡している。この補給金の節減については、ただそのつもりだというような簡單あいまいなごあいさつでなくしてこれについてはほんとうにはつきりした具体的な方針を示し、かつ実行していただきたい。この点につきましては、また政府方面から今中曽根君の要求せられました資料なども正確に出て参りましたならば、いずれ関連して質問したいと思いますが、一應この補給金の問題についてはこれで打切りたいと思います。  これは主として青木安本長官に伺いたいのですが、集中生産の問題であります。政府は集中生産ということを今度は盛んに唱えている。また今度の予算案の全体の建て方も、結局は集中生産の財政的な裏づけとしてわれわれは見ているのであります。この集中生産につきまして、政府はどういうことを考えられているか、集中生産とは何であるか、この点についてあらためて簡單にその要点を明らかにしていただきたいと思います。また前の傾斜生産というものとどういう違いがあるか。この点について傾斜生産はたまたま第一次吉田内閣の石橋大藏大臣によつて唱え始められ、かつ実行せられた。この両者の違いについてもここであらためて明らかにしていただきたい。
  164. 青木孝義

    ○青木國務大臣 從來傾斜生産方式あるいは傾斜生産と申しましたのは、重点産業を中心、としまして、そこに資材、資金その他の面でいろいろな援助を與えながら生産の増強をはかつて行く、こういうことでありますが、今度の集中生産といわれているのは、大体におきまして合理化を行う。しかも合理化を行う結果、その企業が適当に能率化され、あるいは設備なり、技術なり、製品が消費者の批判なり、あるいは消費者の観点から見ても適当に進歩し、発達するという方向に持つて行きたいということでありまして、その生産そのものについては、御承知通り自然に規模の小さなものとか、あるいは設備の不完全なものとか、技術の非常に遅れたもの、あるいは経営そのものが適当でないというものには、どうしても資金面におきましても、きゆうくつを感じて來るということになります。その必然的な傾向と、もう一つ合理化が促進いたしまして、それらの條件がだんだん満たされて来るものについては、その資材と資金に対しても、できるだけこれに適当な援助を與えるというような態勢をとつて行くあるいはそういう方向に進んで行くということをさして、一般的に集中的な生産傾向と言つておるのであります。われわれもまたそういう意味におきまして、やはり今日の日本経済の現状から考えましても、輸出の増進を考え、あるいは生産面における各種の合理化というような点から、自然そういう方向に押し進められて行くということを予想しながら、日本の増産計画を達成したいとこういうことであります。
  165. 風早八十二

    ○風早委員 お答えの中の消費者というのはこれは何をさしておりますか。大体消費者の観点が非常に強く入つておるようでありますが、特にその場合において、國内の市場並びに國際市場、この間の関係を明らかにしていただきたい。
  166. 青木孝義

    ○青木國務大臣 私のただいま申し上げた考えでは、輸出生産、いわゆる輸出面に対する生産と、國内生産、ことに國内向け生産の面、この両面のことを一應考えておるのでありまして、從つてそういう観点から、日本の商品が漸進的に世界市場に押し出されて行く、そういう場合においても、当然そういうことが考えられるものである。あるいは國内生産についても、消費者大衆という立場を考えて、そう申し上げておる次第であります。
  167. 風早八十二

    ○風早委員 今の御説明、少し納得しがたいのであります。この消費者というのは、たとえば鉄鋼にいたしましても、消費者といつても、これはおのずから限定されたものでありまして、今日一般の産業部門、またいわんや一般國民が、何も鉄鋼を消費しておるわけではないのであります。この大部分は結局何に使われておるか、だれが一体これを消費しておるのか、いかなる目的に消費しておるのか、こういう点が少しも触れられてないのでありまして、はなはだこれは遺憾な御答弁であります。しかしおそらく今の御答弁以上に期待することはできないかもしれませんから、私はそれを打切りまして、集中生産の全体の問題についてさらに質疑を続けて行きたいと思います。  今日日本経済の再建またインフレーシヨンの克服、こういうような重大な任務を負わされて、全國民がこれに当らなければならない。それに対して集中生産という方式がこういうふうに國民経済に刻して影響を與えるものであるか、この観点から集中生産の問題について質問してみたいと思います。産業部門別に考えて、一例だけをあげます。たとえば鉄鋼業、銑鉄の部門におきまして、この集中生産がどう現われておるか、これははなはだ典型的なものでありまして、日鉄、日本鋼管、中山製鋼、ほとんどこの三社の六工場であります。日鉄の輸西、釜石、八幡、廣畑、日本鋼管の川崎、それから中山製鋼という六工場に集中しておりまして、電氣炉による製鉄工場は、ほとんど全部が全部つぶれるということは、必至であろうと思うのでありますがこの三社のみは三倍一以上の増資という状況になつております。これは石炭についてもまた相当極端でありまして、今日中小の炭鉱といわず、相当の大きな炭鉱においても非常な危機に瀕しておるわけであります。集中生産というのは、そういうことを意識的にやろうとせられるのであるか。もしそうであるとすれば、それは日本國民経済全体に対しては、非常な破壊的な作用を営むものじやないかと考えられるのであります。大体が大部分はこういう補給金をもらい、また輸入補給金はもちろんのことでありますが、さらに安定帶物資として補給金をもらつておる。こういう物資に限りまして、大部分がその消費市場は輸出向きである。日本経済再建をやるための大事な固定施設が、もう戰前、戰時からずつと破壞され続けて、これの修理修復が最大の急務である。これをやらなければ日本の生産をこれから現実に上げて行くことができないと言われておる。その際にこういうものがちつとも日本再建のために、具体的に使われるのじやないということが明らかになつて來るのであります。しかもその犠牲として、これは中小の工場だけじやない。今日はもう相当の大きな民族産業かこれでつぶれようとしておる。こういう大問題が出て來ておるのであります。これについて政府はただ、それも一時は忍ばなければならないことだ、この際に各産業部門についてごく一、二の巨大な企業経営、すなわち率直に申しますれば、財閥につながり、かつ必ず外資につながつた巨大なごく一部の企業経営のみが救われるという、こういう政策がすなわち集中生産であるとしか考えられないのであります。政府はそういうことを意識的にこれからやつて行こうという腹でありますか。その点についてさらに安本長官に伺つておきたい。
  168. 青木孝義

    ○青木國務大臣 おつしやることまことにごもつともでありまして、われわれもそういう企業、ことに特別な企業についてはきわめて重視いたしております。そういう企業の中でも、もちろん程度の問題がありまするので、その程度の問題ということははなはだむずかしい問題ではあります。たとえば規模であるとか、あるいは設備であるとか、そういつた問題はきわめて決定がむずかしいのではありまするが、その企業全体として、政府の手が多少とも及ぶことによつて支えられるものは、できることならば支えて行きたい、こういうことは根本において考えておる次第でありまして、ただ特殊な産業であり、また重要なものであるから、一、二の規模の大きいものたけを援助する、こういう方針をただいま意識的に決定しておるわけではございません。なおそれらの点についても、今後引続き十分檢討いたしまして、善処して参りたいと存じております。
  169. 風早八十二

    ○風早委員 意識的にやつておるのでないとすれば、なおさらこれは問題がある。そういうようなことを無意識にやつておられて、結局その実際の成行くところは、安本長官も一部認められておるように、日本の産業の破壞になつてしまう。國民経済の崩壞になつてしまう。こういうようなことを意識的でなくやつておられるとすれば、なおさら政府のその危險きわまる不見識に対しては、われわれは嚴重に反対せざるを得ない。こういう問題は一層深刻でありまして、たとえば鉄道につきまして、また通信関係事業について、すでにわれわれ危惧しておるのは、今度やはり千七百五十億円でありますか、それが建設公債の引受として、このうちから二百七十億円はさしずめぽんと出される。これは一見してはなはだけつこうなようであります。しかしながらそれによつて日本の鉄道並びに通信関係事業、ことに通信は國の神経であり、生命でありまして、この通信関係が眞に日本の自主的なる再建に役立つものとして、これから建設せられて行くのであるかどうか。そういう点について漫然とただ千七百五十億円の金が入るから、それでやろうということでは済まないと思います。千七百五十億円の性質は外資でありまして、結局は資本の法則に從つて、その目的を持つてここに投資せられるのであります。そういうものによつて日本の今まで國営でありましたところの鉄道なり通信事業——これはただだてに國営になつたのではないのでありまして、こういうものがいかに日本の政治、経済万般の独立性にとつて重要なものであるか。でありますから、もしもこれがうまく経営が行かないというのであれば、このやり方を國内において解決して行けばいいのであつて、これを外資に頼つてつて行こうとするところに、非常に大きな危險がはらんでおる。ましていわんやこういう現在の運営におきましても、これが非常に危險があるのみならず、將來においても危險がある。現在の危險と申すのは、おそらくこれは善隣諸國から好ましくないと判断せられるような目的であるとわれわれは判断せざるを得ない。さらに將來の危險というのは、一昨年でありましたか、二月二十二日にマッカーサー元帥がアメリカのコングレスに対して書簡を送つておる。その中でたとえばガリオア資金、これなんかは多くの國民がまだただでもらつておるような印象を受けておる。また政府筋からも当時はそういうふうな印象を與えようとしておつた。このガリオア資金について、特にマッカーサー元帥は、これは決してただで、慈善事業として與えておるのではない、このガリオア資金に関して、アメリカの納税者にはびた一文の御損もおかけいたしません。こういうことをはつきりと書簡に書いておることは、当時の各新聞紙にはつきりと公表せられた通りであります。その場合におきまして、マッカーサー元帥はこう言つておる。われわれは場合によつては、先取り特権ということを考えておる。この先取り特権というのは結局、いよいよこの支拂いがなされない場合において、優先的にアメリカが特定の資源なり、物資なり、あるいは國土の一部でもかまいませんが、そういうものをもらつてつてもさしつかえない。そういう権利を留保しておるということを書いてある。こういつたようなことが今度の鉄道、通信に関しては早くも出ておるのである。われわれはそれを憂うる。民族の独立とか何とかいうような決して抽象的なことではないのでありまして、現実にこれは起つて來つつある。そういう点につきましては、政府はただ漫然と意識しないでやられる、その結局がそうなるということになれば、これはなおさら危險千万であつて、そういう人たちに政治をまかせておくことはできない。これについて安本長官の所見を伺いたい。
  170. 青木孝義

    ○青木國務大臣 あなたの御意見はその通り、そのまま承つておきます。私は決してただいま意識的に、無意識的にという問題にこだわつて申したのではなくて、意識的なものもありましよう。しかし一般的には無意識的なものもありましよう。そういう意味で申し上げたのでありまして、その点はさように御了承願いたいと思います。
  171. 風早八十二

    ○風早委員 意識的でも無意識でもそれはいいのですが、とにかくこういう事態が現に起りつつあるということを、安本長官はお認めになりますかどうか、お認めにならないとすれば、どうして認められないか。私は幾らでもその実際の、事実上の根拠を出してみせます。お認めになるならば、今後政府はこれに対してどういうふうに考えて行かれようとするか、その所見を伺いたい。
  172. 青木孝義

    ○青木國務大臣 それは御意見として十分承つておきます。
  173. 野坂參三

    ○野坂委員 議事進行について……。先ほどから風早君の質問に対する安本長官のお答えは、いかにもふまじめであるとしかとれない、あるいはわざわざ回避されておるか、それとも答える能力がないのか、私たち理解に苦しむのであります。今風早君の提出した問題は、これは共産党だけの問題ではありません。もし皆さん方に日本人の血が流れているならば、この問題は眞劍考えなければならぬ問題です。これに対して政府当局はどういうふうにお考えになつておられるか、これを安本長官でなければ、ほかの閣僚からでもよろしい。もしどうしてもきよう聞かれなければ、総理大臣でもよいと思いますが、まじめ眞劍にこの点をお答え願いたい。
  174. 青木孝義

    ○青木國務大臣 ただいまの野坂さんのお言葉でございますが、決してふまじめにお答えをいたしておりません。御希望は承つておのし、また御質問の條項について自分の考えたことはお答えをいたしておる次第でございますから、決してふまじめにはいたしておりません。
  175. 野坂參三

    ○野坂委員 それではどういうふうにお考えになつておるか、風早君の質問に対するお考えを承りたい。
  176. 植原悦二郎

    植原委員長 政府からお答えはありません。
  177. 風早八十二

    ○風早委員 どうもお答えのない、まるで的のないところに幾ら申しても始まらないのでありますが、しかし今野坂委員も発言されましたように、問題は非常に重大であります。先般所得税軽減の問題について、與党の方面から非常に熱心な質疑が行われている際においても、大藏大臣のそれに対するお答えは、大いにそれはやるつもりだというようなことだけ言われて、どうしてそれが実現できるかということは言われない。私は所得税の問題は、これこそ今全國民が例外なく非常に苦しんでおるところでありまして、この所得税軽減の問題につきましては、それこそ全國民の輿論、全國民の率直な意見を十分に政府は受取つて、それでぶつつかつて行く。これはなるほど今日の政府の置かれている條件のもとでは、いろいろな方面との折衝もありましよう。しかしながらそれを政府か何でも自分だけで引受けてやる。その結果は政府が意識的にそれに屈服するか、あるいは事実もう力足らずして屈服するか、いずれにいたしましても決して國民のためにならない。私はこういう所得税軽減の問題にいたしましても、これはどこまでも國民意見を聞く。少くもこの國会國民を代表しているのでありますから、國会議員の意見は、與党たると野党たるとを問わず、だれもみな賛成の問題です。でありますから、こういうことについては十分にみんなの圧力をもつて向うに交渉される。こういうことを政府考えないで、今までのいわゆる官僚主義的なやり方でやるということは、これは政府のためにとらないだけではなく、また與党のためにもとらないところである、これは全國民がそのために非常な負担に苦しまなければならないことになるのでありまして、政府考え方が、今日の民主主義において根本的に古いのではないか、頭を切りかえてもらいたいと考えます。  これは前置きでありまして、大体この集中生産の結果でありますが、たとえばアルミ生産のごときも、七六%の配電増加を食つておるわけです。そのために硫安に対する電力不足も起つて来ておる。今度は硫安不足が口実になりまして、これまた高い高い値段で硝安をたくさん仕入れておる。こういう実にばかげきつたことをやる。そのためにまた農業の方では生産のコストも高まる。いずれにいたしましても、またそれに対して補給金を出さなければならないので、税金で苦しむというような、絶えず外資とそれから補給金——外資がふえればふえるだけ補給金はふえる。これは輸入補給金ではその通り数字に出て來る。そうして補給金がふえるだけ税金がふえる。また輸入補給金でなく、安定帶物資にいたしましても、大体その安定帶物資を独占しておるのはきわめて一部でありまして、またそのわくがだんだん縮まつて行く。だんだんこのわくからはずされて破滅して行くものが出て來る。このきわめて一部に集中せられましたそのわくの中でその外資を政府から安く買取りまして、それで生産が上れば上るだけ、またそれに應じて補給金は上つて来る。またそこから税金が増して来る。どつちにしても外資がふえればふえるほど補給金がふえ、かつ税金がふえるという嚴然たる事実は、だれも否定することはできない。これは数字ではつきり出て来る。でありますから、もしもわれわれが全國民の名において、税金を眞にまじめに軽減したいというのであるならば、恒常的に税金の負担軽減したいというのであるならば、どうしても補給金を創らなければならぬ。そのためにはどうしても外資を創らなければならぬ。そうして竹馬の足を短かくするのではなく、眞にこの竹馬からおりてわれわれ自身の足で歩かなければならない。それはりつぱにできるのでありまして、重要な産業が軒並に集中生産でほとんど大部分が倒れて、ごく一小部分が残つて行く。そこへ一切の資金も資材も、價格政策においても、その他一切の特権が集中せられて行く。でありますから、これを今度は仕組みをかえる。今まではただ独占利潤のためにこれが運営せられておる。それをまたどこまでも維持しで行こうというために、どうしてもそういうむりが起つて來る。そこでこれを切りかえて、眞に人民の管理、すなわち中小産業の資本家なり大産業資本家、労働組合や、また民主的ないろいろな代表、國会の代表というようなものが眞にこれに参画して、その管理の最高責任を持つということでやつて行くならば、科学者も、技術者も、もつと今よりも有効に動員できるのであります。これらの重要産業の國営人民管理、あるいはまたことに金融機関については、もつとはつきりしておるのでありまして、今日もう金融機関の機能は、きわめて一部の日銀なり復金なり、あるいはまた九大市中銀行という小数の金融機関に集中せられておるのでありますから、これをこの際やはり全部統合し、國営にし、かつ人民管理にして行くというわが党の主張が、どうしてもこの際行われなければ、それなくしては日本は再建されないというところへ來ておると思うのであります。でありますから、この点については、もう何も民自党とか、共産党とか、あるいは與党とか、野党とかいうことを言わないで、こういう問題については政府が断固としてこれをやられるならば、われわれはこれを支持します。また民自党がこれに賛成するならば、われわれも賛成します。こういう問題については、もつと超政党的に、ほんとうに國民の立場から、今野坂さんも言われましたように、そういうものから離れて、眞に日本の再建のために政府ががんばつていただきたい。しかるにそういう点については、政府は何らまじめに回答を與えようとしないで逃げようとする。こういうことこそ官僚主義であつて、私はどうしても政府にこの点を改めていただきたいと考えるのであります。
  178. 植原悦二郎

    植原委員長 風早君、それは御希望で御質問ではありませんね。
  179. 風早八十二

    ○風早委員 質問なんですが、政府が答えないだけです。だから私は的がなく矢を射ているというわけなんです。
  180. 植原悦二郎

    植原委員長 御意見はみな非常に興味を持つて承つたと思います。政府は答弁なさいません。それでは風早さん、まだあなたは逓信大臣に質問があるようになつておりますが、逓信大臣は出ております。御質問になりますか。
  181. 風早八十二

    ○風早委員 今度逓信省が二つに分割せられる。その際に、ただ分割せられるという便宜上、技術上の問題ではないのでありまして、これがすなわち建設公債を外貨によつて引受けられるという問題、さらに進んでは、日本の通信事業を今後どういうふうに運営せられるかということについて、大いにこれは影響かあるのでありますから、この点について御所見を伺いたい。なお時間がありませんから、附帶してお聞きしたいのでありますが、この通信会計においても、眞に日本民族の繁栄の立場から、通信事業というものが実際運営せられておるかどうか。たとえば私どもはそれについては電氣試驗研究所というようなものは非常に大事だと思う。ここには優秀なる科学者、技術者が集まつておる。ところがこういうものに対する研究は、だんだん削つてほとんどなきがごとくになつている。そうして逆に警察無線電信というようなものは、どこまでも金に糸目をつけずにふやして行くというような傾向が現われている。私はついでながらこういう点についての数字を承りたいと思います。警察無線電信の費用が今までどういうふうになつて來ておるか、その経過を伺いたい。これは附帯してお聞きしたいと思います。
  182. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 風早君にお答えいたしますが、通信事業はわれわれ國民生活のいわゆる神経でありまして、われわれの生活の向上、あるいは文化生活に非常に重大な影響のあることは、お話の通りであります。從いまして、この通信事業の拡張あるいは改善等におきましては、財政の許す範囲内において、極力やつて來ておるつもりであります。從つて本年度におきましても、大体三百二十億程度建設費を擁しまして、極力復旧復興に盡力いたしたいと思いましたが、客観情勢がその通りに行きませんで、結局において建設費がただいまお話の百二十億、それから四十六億の損益勘定が入り、進駐軍関係が二十五億、合計百九十一億が二十四年度に予定される建設費になつておるような次第であります。なお警察無線電信と言われましたが、警察電話の意味ではないでしようか。警察電話のこととしてお答えいたします。
  183. 風早八十二

    ○風早委員 有線も無線も両方です。
  184. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 警察電話の問題につきましては、御承知かもしれませんが、昨年の八月一日からその建設保守だけを逓信省に移管されてやつて來ております。しかしながら、通信事業における交換であるとか、その他の事務は、一切從前の通りでありまして、ただいわゆる通信事業の一元化、あるいは設備の改善改良は專門家にまかした方がよかろうという見地から、ただいま申し上げた通り建設あるいは保守は一切逓信省でやつておるような次第であります。從つてそれに対する予算は、大体保守勘定におきましては、歳入歳出ともに五億程度になつております。
  185. 風早八十二

    ○風早委員 どうも今のお答えは、私の質問の意味の最も大事なところがおわかりになつておらないお答だと思います。問題は今総計してどれだけの予算があるかということを聞いたのではないのでありまして、この重要なる新しい建設について、建設公債を発行しなければならぬことになつている。しかもそれを今度は千七百五十億円の中から引受けてもらう。こういうふうなところに新しい問題が出て來ておるということを申し上げる。日本の鉄道や通信事業は國営であつて、これはその國の祕密にも関係するでありましようが、平時においては祕密も何もあつたものではありません。しかしながら、今そこへこの金がつぎ込まれて、將來においてそれがどういうふうに実際に運営せられるかということは、相当まじめに今から考えておかなければならぬ問題でありまして、その見通しについてはどう考えておられるか。ただ漫然と今金がないから借りるのだというくらいのことを考えておられるのか。それから來る結果についてはどう考えておられるか。その点についてのお答はないのでありまして、もう一度お伺いいたします。それから警察の問題につきましては、これは早い話一例でありまして、たとえば私ども國会議員の電話——國会議員の電話というようなことを申しては、はなはだ恐縮でありますけれども、しかしながら國民の代表として今日國会日本の主権の正体になつておる。そうしてこれがほんとうに活発に、敏速に、正確に運営されることが、日本の民主主義の確立になるのでありますから、われわれが電話といつても、何も個人の利益を言つておるのではありません。そういう意味で國会議員の電話は大事である。ところが國会が始まつてから何箇月たつたつて電話など敷かれはしない。聞くところによれば、ケーブルが足りないという。すぐ隣にも、またその隣にも電話があるのに、われわれに対しては電話が敷かれない。もう敷かれないことになつたというような話さえある。これはしかし特に國会議員を出して言つたのでありまして、結局一般國民が今日電話の利用はほとんどできなくなつておる。そういう状態で、何も進んで警察電話また警察の無線電信、こういうもののみ非常に充実して行くということは、これは主客轉倒ではなかろうか。まず國民が便利になつてそれからでよかろう。何もかもやめろというのじやない。おのずから順序がある。そういう点についても、特になぜ警察電話を先にどんどん充実して行くか。そうして一般國民利用すべき通信事業を荒廃のままで捨てておかれるか、こういう点であります。この二点についてもう一度伺います。
  186. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 風早君の御質疑は、結局本年度において建設費百二十億を、先ほどの千七百五十億の見返り資金からとつたことは、將來よほど氣をつけなければいけないではないかこういう質問だと思います。その意味ははつきりいたしませんけれども、私はあなたと同じ考えで申し上げるならば、そういう心配はないと確信しております。  それからもう一つ國会議員の電話という問題でありますが、國会議員の電話は、その重要性にかんがみまして、できるだけ優先的に引かせることになつております。もし風早君の電話がかからなければ、具体的におつしやつていただけば努力いたします。  なお警察電話を、特に重要視して、一般國民の電話をうつちやつて置くというようなお話でありましたが、ただいまの警察電話の問題は、警察から五億入りまして、その費用で保守をやつて、つまり技術だけを私の方でやつてやるという意味でありまして、これをやつたからといつて一般大衆の電話の拡充に影響はないのでありますから、この点お含みを願います。
  187. 風早八十二

    ○風早委員 それはちつともお答えにならない。あとの方から申しますが、結局技術、施設を出すことが問題なんでありまして、費用がどこから出ようが、それは今の問題としては別問題です。そういうような施設なり、技術なりがあるならば、どうしてもつと早く一般國民の電話施設充実しないか。今日は自動電話が全然使いものにならない。私の私宅の電話でもやはり使いものにならない。そういうような状態をまず改善することが先決問題でないかということであります。  さらにその前の点でありますが、あなたはそういうふうに判断しない、そうは考えないと言われるだけでありまして、先ほどからこれは政府の各大臣が言つておられることと同じことなんです。ちつともそれはお答えになつておらない。そういう点ではもうこれ以上私は繰返す必要はなかろうと思いますから、この質問は打切りたいと思います。
  188. 小澤佐重喜

    ○小澤國務大臣 先ほど返事しないということは、大体私と同じ線で考えておりますから、ああ申し上げたのでありまして、決して私と違つた考えをよその閣僚が持つているわけでないことを御了承願います。
  189. 植原悦二郎

  190. 小坂善太郎

    ○小坂委員 それでは簡單に、御質問いたします。最初に大藏大臣安本長官に伺つておきたい。このほどドツジ公使の声明等もありまして、日本経済を竹馬経済からおりる。あるいは足を短かくて、とにかく地に足をつけた運営をしなければならぬということが言われておりますが、その意味は、大体千五百億ずつにも上るところの外國の援助と、もう一つは一時的な資金、補助金といつたようなものの上に立つている日本経済の姿が、このまま続いて行けば、竹馬の足を短かくする瞬間に、その足が長ければ長いほど、あとの安定恐慌なり、そういうものが深刻に來るのだ、今のうちにこのことを深刻に考えろ、こういう意味であろうと思うのであります。この予算を拜見いたしまして、政府の御苦心はまことに了とするものがありますけれども、ちよつとここでお伺いしたいと思いますのは、アメリカの援助資金を見返りとしたものが千七百五十億ある。さらに一時的な補給金が、ここで見ますと、千八百七十二億円あるわけです。これを昨年に比べてみますと、この一時的な補給金だけを見ましても、千三百四億円というものが計上されておるのでありまして、この内訳が昨年度の場合で見ますと、鉄道へ繰入れたものがあり、通信事業に繰入れたものがあり、さらに預金部資金に繰入れたものがある。あるいは船舶運営会に補助したものがある。その内容本年度は、それにかわるべきものとしてでありますか、その項のところに輸入物資補給金に繰入れる分、あるいは塩の補給金の分、こういうものが入れかわつておるにすぎないように思われる。そこでこの間の意味を、國民に十分わからせていただく意味において、私は御質問したいのでありますが、なぜ一時的な補給金を切るという建前がとられていながら、しかも金額においてはふえるというような現実を見ておるのかという点をひとつ御説明願いたいと思います。
  191. 池田勇人

    池田國務大臣 竹馬経済をやめるというときに、補給金が非常にたくさんになつておる、こういう御質問だつたと思うのでありますが、今までは竹馬の長さかどれくらいであつたかどうかということは國民にわからなかつた。特別会計あるいは政府諸機関におきまして非常な赤字を出しておる。そうしてまたアメリカの援助物資も、どこにどういうふうに使われたかわからなかつたり竹馬の高さもわからぬという状態であつたのであります。これが今回はこれだけの高さだということをはつきり表わしました。今後におきましてそれをだんだん地につけて行こうとする考え方でございます。
  192. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そういたしますと、まず今年の竹馬は千七百五十億と、片方の竹馬の足が千八百七十億だ、こういうことがはつきりしておるわけです。これをどういうふうにして短かくして行くか、その間にいきなり短かくいたしましても、そこにデフレーシヨンが起る。これは本会議でもしばしば質問されて、それに対して大藏大臣は、デフレーシヨンは起さないように努める、デイスインフレーシヨンで行くのだ、こういうお答えがあつたわけであります。デイスインフレーシヨンにするために、それじやどうしてやるかということでありますが、この委員会において伺つております、大体千七百五十億を適当にあんばいしてやつて行こう、こういう御趣旨のように承るのであります。そうすると、この千七百五十億がどう使われるかということが、問題になつて参ります。これについて今風早君から、コントローラーというものが來てやるのだという話があり、私も初耳であつて大藏大臣も初めて聞いたということであります。私は実は存じませんが、新聞で見ますと、コントローラーというものではなくして、政府都内に何か機関ができて、それで運営するのだということを書いてある新聞があるのでありますが、その間の事情を御説明願いたい。
  193. 池田勇人

    池田國務大臣 政府部内に機関を設けまして、それによつてつて行こうと考えております。
  194. 小坂善太郎

    ○小坂委員 それはいつごろおつくりになりますか。
  195. 池田勇人

    池田國務大臣 それはできるだけ一日中にはつくりたいと思います。あるいはこれは関係方面二つ、三つございまして、たいがい十一日の晩までにはできると思いますが、十二日中にはつくり上げたいと思つております。
  196. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そういたしますと、ただいままでのところは鉄道、通信関係の二百七十億だけがきまつておる。あとのものはこれからの委員会できめていらつしやるのだ、こういうことでございます。そういうふうになりますと、ちよつと今私が伺いたいと思つていたことが、あるいは伺えないかもしれないのでありますが、そのほかに海運等につきまして、日本が輸出を増強するという際に、海運の状況などを聞いてみますと、実に心細い限りであります。戰前六百数十万トンありました船が、現在百五十万トンだ、しかもその百五十万トンのうちの半分は二十五年も経ておる。そういうふうになつてくると、どうしてもここに相当巨額の建造資金がいる。聞きますと五十億円からいるそうでありますが、そういうものが早く計画をきめて出発しないと、いけない情勢のように思われるのであります。それに対して、まだきまつてないからというお答えは一應ございましようが、もし伺えるならば、できるだけその内容等についてお漏らし願えればと思うのであります。
  197. 池田勇人

    池田國務大臣 船舶建造費につきましては、今回出資を五十数億円予定いたしております。これで今船台に載つておる分は大体間に合うかと思います。お話の通り貿易外收入をふやす意味から申しましても、このお金はある程度やはり船舶建造資金に向けて行きたいと考えております。
  198. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そうすると、これは安本長官に伺いたいのでございますがこういうふうに、一般、特別両会計を通じ、さらに中央、地方を通ずるところの健全財政を強行するということになつて参りますと、その間にかなり國民は耐乏しなくちやならぬということになる。しかしながら國民が耐乏いたしますることは、これは将來の光明を目ざしまして耐乏するということでありますならば、これは日本人独特の勤労の精神というものも燃え上ると思うのでありますが、何にしても將來の光明が、やはりそこに目標として輝やいておらないといけないように思うのであります。そうでありませんと、政治にならないと思うのであります。安本の方で、昭和二十四年度國民の消費は、昭和——九年のべースに対して、どのくらいに考えていらつしやるかということを承りたいと思います。
  199. 青木孝義

    ○青木國務大臣 御承知通りに、この予算が一方において税問題等から考えまして、相当負担が加重されて行くだろうということが考えられまするし、また一方におきましては、援助資金というものについて、これを明確に使つて行かなければならぬということがございまするが、この点は御承知通り安本には二十四年度か初年度になつております復興計画が立つております。しかしこの復興計画を順調に推し進めて行きたいというのがわれわれの念願でございますが、今のところただちにこの二十四年度計画を、計画通りに実行して行けるか、それとも多少ずらさなければならぬか。という問題と、もう一つは、一應公共事業費等におきまして、これに沿つたある程度の進行を続けて行けるという大体の見通しはありまするけれども、しかしわれわれが完全にこれを実行して行くというには、いろいろ忸怩たるものがまたある。しかしながら御承知通り、大体先ほどおつしやつた竹馬経済の一方の足であるところの見返り資金がどういうふうに使われるか、こういうことについて、御承知通りこれはアメリカが外國援助資金というものを定めておりまするプランから考えますと、大体フランスであるとか、イタリアであるとか、その他の國々へ出しておる計画、そういうものについて見ますると、双務契約に基いた投資の、あるいは資金を出す面の、一應の法則があるというふうに私は考えておるのでありまして、しからばそういう点にどんなふうに出させるか、あるいは出してもらえるか、こういうところがまだきまつて参りませんので、それがきまつて参りますれば、相当にこれの活用によつて、この五箇年計画の第一歩を踏み出して行かれるのじやないかというふうに考えておる次第であります。
  200. 小坂善太郎

    ○小坂委員 安本長官は、投資の法則があるから、その法則によつてということでありまするけれども、これを單純に資本主義的な法則だけで参りますると、私は電源の開発であるとか、あるいは船舶の建造ないしは鉄道、通信の復興事業、そういつたものに対する投資はなかなか困難な問題があるのじやないかと思うので、私はむしろそこにはつきり五箇年計画というものを樹立せられまして、関係方面ともいろいろ話をなすつて、その必要性からむしろ投資をやつて行くということにしていただきませんと、ほんとうの復興ができないのじやないかという氣持を持ちまして、実はこの質問を申し上げておるわけなのであります。私は昭和五九年ベースに対して、昭和二十四年度國民消費なり、あるいはまた生産水準なりが、どういうことになるかということを、もし安本長官の方で御計算になつていたならば、それを伺いたい。
  201. 青木孝義

    ○青木國務大臣 ただいま申し上げましたように、資金面では計画がまだはつきりできておらないということは御承知通りであります。大体生産計画というものの点でありますが、生産計画なり、あるいは需給計画については、目下のところ関係方面と打合せ中でありまするし、その内容の発表については、メモが出ておるのでありまして、そこで大まかなことを申し上げますならば、現在のところ詳細のお答えができぬので何でありまするが、昭和二十四年度の物資の生産の見通しといたしまして、本年度の石炭の生産目標は四千二百万トン、これは二十三年度の実績に比べますと、先ほどちよつとお答えしたかと存じますが、大体一五%程度増加になつております。それでこれの直接の生産用に使用されますいわゆる産業用炭について見ますと、約三・六%増しとなつております。次に電力につきましては、昭和二十四年度は前年に比べまして約五%増し、それから大口産業用につきましては約一〇%増しというような予定にいたしております。さらに鉱工業用の原材料の輸入につきましては、前年に比べまして約五割増しということを予定いたしております。この前提に基きまして二十四年度の生産は、二十三年度に比しまして約二五%増し、これを昭和五—九年の生産を一〇〇とした指数で見ますならば、約七三程度に回復する予定であります。また各物資の配給計画につきまして経済復興五箇年計画の線に沿つて計数を算定いたしておるのでありますが、特に輸出に最重点を置きます関係から、資材面から輸出の増進に障害を與えるようなことのないように留意いたしまして、この計画によりますれば、二十四年度の輸出は、前年に比しまして約三倍程度を予想いたしておる次第でございます。それからわが國の経済復興の基盤を培養いたしまするために、石炭電力の動力部門、そのほか基礎的な産業部門及び食糧関係等は重点を置いておる次第であります。  そういうようなわけで、これはきわめて概要でありまするが、二十四年度計画は、予算関係及び資金関係、あるいは為替関係というようなことと密接な関係がありますので、ここで確定的な見通しを申し上げるわけには今のところでは参りませんので、以上申し上げたような予定を立てて進んで参りたいと存じております。  なお、先ほど申し上げましたアメリカの海外への投資といいますか、それらの関係から考えますれば、やはり新規の開発、あるい新規富源の獲得、こういう面にも一般には投資をするという方式が示されておりまするので、このことを考えますると、何とかその緒について行けるのではないかというような予想をいたしておる次第でございます。
  202. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そうしますると、大体不確定的な要素が多いのですから、そういう程度に承つておきまして、いずれにいたしましても、非常に長期資金がいるという、この事実を前にいたしまして、復金を廃止せられた政府の英断は、これはいろいろな批評もございましようけれども、とにかく復金の運営自体において、まことに國民の多くの批判と非難を買つたのでありますからこれは適当な措置と思います。しかしながら長期資金を必要とするという現実は、少しもかわつていないのでありまして、これに対して政府がどういうふうな——今の政府関係の、あるいは國の生産力をここまで持つて行くという大筋からの投資の方針はわかつたわけでありますが、一般の産業投資でありますか、その中における長期投資について、どういう考えを持つていらつしやるかということを、少し承りたいと思うのであります。現在私ども察知いたしておりまする範囲におきましては、市中銀行の公債を買つてつて、そうして長期資金のフアンドをつくるというような方向を考えていらつしやるように承つておりまするが、事実でありましようかどうか、存じませんが、これがかりに事実といたしましても、今預金の性質というものが、非常に短期になつておるので、定期預金等の長期のものはきわめて少い現状でありますから、市中銀行にそういう運用をまかせておいてよろしいものかどうか、私は相当危惧の念を持つのであります。なるほど金融の原則から申しますれば、市中銀行にまかせておいて、その自主性を強調させて行くことは、資金の効率的な運営ということ自体から見れば、一つ考え方でありましようけれども、やはりまだ全体の経済が非常にアンバランスであつて企業利潤だけから見て金融資本家が判断するという建前だけにまかしておくと、非常に不安があると思うので、この点についての政府のお考えを承りたいと思います。
  203. 池田勇人

    池田國務大臣 御説の通りでございまして私は千七百五十億円は、前にもたびたび申しておつたのでありますが、直接に長期資金に出したい。そうして余裕があると申しまするか、あるいは一般流動資金等の情勢を見まして、國債の價還とか、あるいは復金債の價還に充てる。原則といたしましては、やはり経済復興の意味から、長期資金の方へたくさん持つて行きたいという考えでおります。
  204. 小坂善太郎

    ○小坂委員 それはよくわかりましたが、次に中小企業に対する金融について、簡單に、伺つておきたいと思います。先ごろから、商工大臣等の答弁によりまして、いわゆる中小企業というものは非常に維持育成に努めるのだということでありまするが、その具体的方策といたしまして、何か中小企業の協同組合法を出す、それでいいのだというような話で、少しこれは簡單に過ぎるのではないかと感じております。一体中小企業の一番の問題は、やはり金融でございまして資材の問題ももちろんございまするけれども、やはり中小企業の金融を、どういうふうに見て行くかということに、根本問題があるのではないかと思うのであります。この間うちから伺つておりまする御答弁——大藏大臣の御答弁は私聞いておりませんが、商工大臣等の答弁を聞きますると、何か信用組合をつくつて行くから、それでいいというようなことなんでありまするが、信用組合をつくりましても、それに対する國家助成がどういうふうになるかということが問題ではないかと思うので、この点に関しましての大藏大臣のお考えを伺いたいと思います。
  205. 池田勇人

    池田國務大臣 初めに、今のお答えで、長期金融だけについて申し上げましたが、やつぱり企業の再建につきましては、自己資本の増加ということは一つ原則に置かなければならぬかと思つております。これだけつけ加えておきます。  なお中小企業の金融につきまして、御承知通り飢餓輸出とでも申しますか、輸出産業にもつと力を置きたい、こう考えております。中小企業で輸出向けのものにつきましては、貿易手形等に特段の方法を講じてやつて行きたいと思います。國内的の中小企業につきましては、まあ無盡とか信用組合、その他情勢によりまして、相当程度信用統制をやつて行きたいと思いまするから、そのときどきによりまして、日銀その他の操作でやつて行けるのではないか。大体中小金融金庫をつくる予定でおつたのでありまするが、とりやめに相なつ関係上、運用におきまして相当力を入れて行きたいと思つております。
  206. 小坂善太郎

    ○小坂委員 大藏大臣の構想のうちに、やはり中小企業金融金庫というようなものをつくられまして、それを通して國家助成を行おうというお考えがあるということを承つておりましたが、これがだめになりましたので、信用組合あるいは無盡等について、これはまあ非常に運営はむずかしいので、大体欠損だろうと想像されるのでございますが、それを何か運営とおつしやいますのは、國家助成をするという、そういうような御意図がある意味なんでございますか。
  207. 池田勇人

    池田國務大臣 金銭的に國家助成というところまで考えておりません。
  208. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そうすると、やはり信用組合をつくつて、それでやつて行けといつて、あとはどうもほうつてしまうようなことになりはしないかと思うのでありますが、何かそれについて特別な政府の金融についての構想はないのですか。
  209. 池田勇人

    池田國務大臣 特別に機関を設けましても、なかなか動きにくいものでございまして、私は先ほど申し上げましたように、業種別に、緩急の程度は違いましても、既存の金融機関をその方面に働かした方が効果的と考えております。
  210. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そういうお話を伺つておりますると、やはり今問題になつておりました集中生産を強行して行く、その集中土産を強行して行く場合に、やはり中小企業相当大きな部分が、集中生産からはずれるんじやないかというような予想もできまするので、それに対して何か助成をお考えになりませんと、この問題は相当な問題に発展するおそれがあると思うのであります。ある意味で相当な安定恐慌を起して行くということになつて、大臣のおつしやるデイスインフレーションであつて、デフレーシヨンでないのだという問題が、中小企業の面から、大臣のお考えを、否定するような問題が起きて來るんじやないかと思われるのでありますが、特別なことをお考えになれませんか。
  211. 池田勇人

    池田國務大臣 中小商工業金融と申しましても、業種別考えなきやならぬのでありまして、ただ輸出産業につきましては、相当の助成をいたしますが、國内産業については、このものが倒れるからすぐこれを金融で支えて行こういういうことは健全財政、健全金融という上からいつて、いかがかと思います。
  212. 小坂善太郎

    ○小坂委員 そういたしますると、國際的の競争能力のある企業を培養するという建前は、これは当然その通りになるべきことと思いまするが、やはり競争に耐え得ない企業相当出て來るのでありまして、そういう企業に対する措置については、ただいま自由主義的な優勝劣敗の原則でやむを得ないのではないか、こういうお考えのようにとれるのでありますが、どうなんでございますか。
  213. 池田勇人

    池田國務大臣 この点は、やはり先ほど申し上げました健全金融、健全財政の線に沿つて行くとすれば、やむを得ない点があるのではないかと思います。
  214. 小坂善太郎

    ○小坂委員 ではこの問題はこのくらいにしておきまして、次に納税の問題について少し伺つておきたいと思うのであります。現在の納税につきまして、相当の苦情のあることは、もう大藏大臣よく御存じの通りであります。しかも今回の税收入は相当名目的にもふえておるのであります。相当に納税の措置については意を用いないといけないということは、おそらく御答弁をまつまでもなく御同感ではないかと思うのでありますが、それにつきまして、私どもは実は先般來から、納税者の苦情処理機関というものをつくつてもらいたいということを申しておつたわけなんであります。大体國家が強制獲得件を持つておりまする問題でありますから、國家が決定すればよろしいようなわけでありますが、やはりわれわれの自由を保障する意味におきまして、裁判でも、あるいは公職追放の場合でも訴願機関が設けられて、決定した人以外の者がまたそれを査定し、判断する。こういう機関があるのでございますが、ただいまの税金の問題でございますと、更正決定した人それ自身が再審査の要求を見て、これを決定し、判断する、こういうような仕組みになつておるので、何か別途の機関を設けて、訴願の道を開くということが、どうしても必要ではないかと強く思うのであります。これに対して、大臣の御意見を承りたい。
  215. 池田勇人

    池田國務大臣 その機関は、実はあるのでございます。ただ今までそこで争うほど帳面に出ていないし、また根拠がないのでそこに行かないだけでございます。しかしわれわれとしては、そういう裁判所があるのであるから、これでよいのだということは考えておりません。お話の苦情処理機関と申しますか、あるいは更正決定に対しての異議申立ですか、決定した者がそれをやるだけでなしに、ある程度ほかの人の考え方も入れて、考え直すというような制度を設けることについて、今話合いをいたしております。
  216. 小坂善太郎

    ○小坂委員 先般來新聞紙を拜見いたしますと、総理御自身、納税という問題に非常な関心を持つておられて、今の申告納税制度國民に消化されていないのではないか。非常に民主的な制度でけつこうだが、納税者自身がそういう能力を持つていない時期において、どうもあの制度は進み過ぎておるので、それを元のような納税制度にかえた方がよいのではないか、というような談話を発表された新聞を見たのでありますが、大臣はその問題をどうお考えですか。
  217. 池田勇人

    池田國務大臣 これは申告納税制度を施行いたしますときにも、そういう議論があつたのでありまするが、税の民主化、財政の健全化からいつて、これがよいという結論に達したのであります。施行後二年でございまするが、私の見るところでは、だんだん軌道に乗りつつあるように考えております。ことに北海道なんかにおきましては、農業所得はほとんど大部分その申告によつて摩擦なしに行つておるような状況でございまして、これはかすに時をもつてし、また苦情処理機関的のものを設けるとか、ことに根本的に税務機構の改善、税務職員の素質の向上をはかるとともに、納税者がだんだんなれて來て協力していただければ、この制度でも行けるのではないかという見通しを持つております。
  218. 小坂善太郎

    ○小坂委員 その制度自身についてもさらに御研究を願いたいと思うのであります。やはり自分の收入が一番わかるのは納税者その人自身でありまするから、その人自身が申告をして納めるということは、理論的に正しいのでありますが、問題はそのような方向をとりながらも、非常に問題を起しておるという点にあるのでありまして、その点大藏大臣も十分御研究を願いまして、なるべくひとつみなの納得の行くような方向に持つてつていただきたいと思います。先般來納税に関しての御答弁の中に、税務機構の刷新強化、あるいは税務職員の素質の向上ということについて、いろいろお話がありました。そういう点についてもいろいろ御努力願わなければなりませんが、私も申しましたし、大臣も御答弁になりましたが、苦情処理機関の設置は、ぜひ緊急に御解決いただきたいということを強く希望いたすのであります。  次にこれはよく問題になりますが、主として社会党の方も言われておつたし、共産党からもよく言われることでありますが、國民所得と課程の対象になる所得の間に差があるのではないか、この差額がやみ所得と脱税になつておるという疑問が横行して來るのでありまして、私はその不当であることを考えておるものでありますが、大臣は非常にこういう点については專門家でいらつしやいますので、特にこの点について御説明を願つて國民にそういう不安が起らないようにひとつ鮮明していただきたいと思います。本年度國民所得を見ましても、二兆九千七百億という資料をいただいております。さらにもう一つの資料を見ますと源泉課税の対象になるものが一兆二百九十一億円、申告納税の基礎になる所得が八千四百八十一億円、合計いたしますと一兆八千七百七十二億円ということになつておるのでありまして、これはまた例の筆法から申しますと、その差額がやみだ、脱税だということをとかく言われる。私はこの差額はいわゆる法人の留保所得であるとか、あるいは基礎控除、扶養控除の失格者のものが相当ある、あるいは自家使用の地代、家賃というものが相当あるということで、動いている経済の把握におきまして、固定した課税の対象になるものとの差額があることは当然だと思うのでありますが、そういう点についてひとつ專門家の大臣からいろいろ詳しくお話願いたいと思います。
  219. 池田勇人

    池田國務大臣 巷間においてどう言つておるか存じませんが、課税所得、ことに所得税だと思いますが、所得税の計算につきましては、大体物價がどう動く、納税者がどういうふうになる、こういうところから勘案いたしておるのであります。二兆九千七百億、だから所得税がその何割でこうなる、そういう計算ではございません。一應課税所得がどれだけふえるかということは、もちろん安本國民所得というものを見合いましてやつておるわけであります。課税所得が今のお話であれば一兆八千幾らでございましたか、國民所得との差は御意見通り、基礎控除の問題とか、いろいろな説明のつく点と考えております。詳しくは主税局長からお答えいたさせます。
  220. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 経済安定本部で計算しております國民所得と、私どもが課税の見積りに予定しておりますところの課税債額との間には、相当な開きがあることは事実でございます。その開きはひとり営業所得だけではございませんで、勤労所得、農業所得等につきましても若干の開きがございます。これの理由はいろいろ檢討すべき要素が多いと思いますが、一つは免税点以下の所得、いわゆる失格者の所得、こういうものがなかなか的確に計算困難な点もございます。いま一つは確かに各種の租税につきまして、それぞれ相当捕捉漏れのあることも事実だろうと思うのであります。從いまして私どもは、一方におきましては税制合理化を徹底的にやると同時に、他方でき得る限り課税漏れを少くいたしまして、負担の公平をはかるべく努めたいと考えるのでございます。ただ一部巷間におきまして、そのギヤツプが全部大口脱税であるといつたような説がございますが、かような点につきましては、私どもはさようには考えていないのでございます。國民所得と課税所得との開きを、全部さようなふうに考えますことはどうも妥当でない、もちろんそういうことも中には入つておると思いますが、そういうものがどれくらいあるかということにつきましては、これはなかなか調査困難でございまして、またそれがはつきりわかるようでございますれば、私ども徴税も非常にやりいいのでありますが、なかなかむずかしいところでございます。從いましてこのギヤツプの点につきましては、一面におきましては税制合理化という問題と関連して、私ども今後よく檢討いたして参りたいと考えておりますが、現在のところといたしましては、さようなことに相なつておりますということを御了承願いたいと思います。
  221. 植原悦二郎

    植原委員長 関連して川島金次君に質問を許します。
  222. 川島金次

    ○川島委員 今大藏大臣は勤労所得の課税所得一兆幾ら、なお事業所得の課税所得が八千億、その課税所得にはすでに基礎控除、扶養控除などが差引かれておるというふうに受取れる言葉があつたのであります。そういうことだと、この課税所得からもつととれるという形になる。私の考えておるところによれば、この課税所得の中には、今の基礎控除や扶養控除というようなものは差引かれておらない生の課程所得だ、こういうふうに考えておりますが、その点はどうですか。
  223. 池田勇人

    池田國務大臣 お答え申し上げます。小坂委員のおつしやつた言葉は、國民所得は二兆九千七百億と言われており、勤労所得は一兆何ぼ、あるいは事業所得が八千億、こういうような数字を言われましたから、非常な差があるのだつたならば、それは課税所得と全体の所得の問題もありましようし、あるいはまた初めから課税のところへ入つて來る所得などは全然抜けておるのじやないか、こう想像的に申し上げたわけであります。正確な根拠があつて申し上げたわけではありません。
  224. 川島金次

    ○川島委員 そうすると私が最初申し上げたように、予算説明の中に出ておる課税所得、給與所得及び事業所得のそれぞれの数字は、基礎控除や扶養家族の控除というものがされてない、要するに生のままの所得を課税所得の対象にしてあるのだというふうに解釈してよろしいのでしようか。
  225. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 基礎控除や扶養家族控除によりまして納税者にならないもの、これはその中から除外されておりますが、納税者になる人の所得については控除前の所得でございます。参考書に掲げてあります数字はそれであります。
  226. 小坂善太郎

    ○小坂委員 大藏大臣安本長官に対する御質問はその程度にしておきまして、次に農林大臣に伺います。  今回地方配付税が減りましたし、また公共事業費の額が非常に減りましたが、これによつて農村の災害復旧費も減るし、あるいは土地の改良事業費も減るし、要するに食糧増産対策費が非常に大幅に減つて來ておる一方、昨年、一昨年に受けましたところの風水害の被害がいまだ完全に回復しておらないのでありまして、傷心いえざる地方の人々に相当大きな打撃を與えるということは、これはもう私が申し上げるまでもなく、大臣御自身御心痛のところだと思うのであります。しかしこれについては日本の農家が非常に小規模な農家であつて、西洋的な大規模農家において見られるような、金融等の助成によつてつて行ける農家と違うのであります。またその人口構成から見ましても、國民の過半数を占めるというような非常に大きな構成を持つておるのであります。やはり予算を配賦して食糧増産をやつてもらうという建前が、日本の農業は適切なあり方ではないかと思つておりますが、大臣の御見解はどうなんでしようか。
  227. 森幸太郎

    ○森國務大臣 お答えいたします。公共事業費は御承知のような編成方針になりまして、農業方面におきましても昨年の計画よりは金額が減つておる、しかも労銀、物資が上つておる現状においては、土地の改良ができないという点に、非常に苦慮いたしておるのであります。今日の農村はお述べのような、まことに小規模の農業経営でありまして、みずからの力によつてこれを改良し、あるいは復旧するという能力が非常に乏しいのであります。しかも耕地の担保力が低下いたしておりますために、この点非常に心配をいたしておるのであります。しかし今日の場合としては、農業協同組合の協同の相互扶助の力によりまして、この方面の打開に努めたいと考えるのであります。從來農業協同組合が連合会組織を許されておらないような情勢になつておるのでありますが、この際連合会組織ができるような方向に指導いたしまして、大きい力をもちまして相互扶助の横軸によつて、こういう当面の難局を切り抜けるように指導いたしたい、かように考えておるわけであります。
  228. 小坂善太郎

    ○小坂委員 大臣のお考えはよくわかりますけれども、さらに今後において都会に失業者が出る、その失業人口は農村に行く、さらに農村がそういうことで、全体の経済も苦しくなつて、零細化して行くのではないかということが非常に心配されます。大臣のお考えも、この予算の範囲内でやつて行こうということは、現在のお立場からそうならざるを得ないでありましようが、さらに先般来から伺いますと、追加予算を五月に出すというお話がありました。そのお氣持はむしろ税制をかえることによつて予算を減らすのだというような意味もあるように聞えますが、農林大臣としてはその機会公共事業費増額される御意見はありませんか。
  229. 森幸太郎

    ○森國務大臣 ただいまそういう時期を予想して申し上げるのもどうかと思いますが、もともと必要を感じまして当初計画を維持しておつた立場からいたしまして、もしそういう機会がありましたならば、極力予算の獲得に努力いたしたい、かように考えておるわけであります。なお金融方面においても昨年九月から本年三月まで、暫定的に復興金融が設けられたのでありますが、この復興金融に対しましても、何とかしてこれを継続いたして長期金融の方面をはかりたい、かように計画をいたしておるわけであります。
  230. 小坂善太郎

    ○小坂委員 長期金融の問題でございますが、これは四十億の問題かと思いますが、あれはどういうかつこうに今後なるのでありますか。復金の方は御承知のように廃止になつた、今後どのくらい年間に計画されておりますか。またそれを支出する方法は、どういう機関を通して考えていらつしやるのですか、構想をお伺いいたします。
  231. 森幸太郎

    ○森國務大臣 当初農林金融金庫というものを独立してつくりたいというふうな構想を持つたのでありますが、今日各農業者が出資をいたすということの不可能な状態と、また政府資金の関係上、独立の金庫を設けることは実現する運びに至らなかつたのであります。御承知通り、昨年九月から三月まで金融をいたしましたのは、中央金庫を通じまして三十億のわくを定められてあつたのであります。それが二十一億利用されたのでありますが、この方式によつて少くとも年間六十億を下らない程度に資金を得たい、今大藏当局とも折衝を重ねておるわけであります。その方法としては、從來の通り中央金庫を通じて、責任を持つて貸し付けるというふうな方法をとりたい、かように考えております。
  232. 小坂善太郎

    ○小坂委員 さらにもう一点伺つておきたいと思いますのは、このほど超過供出が法制化されるという問題がございますが、この超過供出という問題は、その扱い方によつて、実に食糧問題の興廃を決するような重要な問題でありますので、先般來実は超過供出に対する税金は、免除してもらいたいという氣持を私は持つておるのです。現在もその氣持においてかわりありませんけれども、これは税の全般の体系の一環として考えられなければならぬことでありますから、税制そのものの再檢討のときまで讓るといたしまして、現在超過供出については、超過供出をするために要するところの必要経費は差引くということになつておりますが、これはきわめて当然のことでありまして、それではさて何が超過供出をするために必要としたところの経費であるか、ということの算定の問題になりますと、なかなかそう簡單に出ないと思います。この算定の困難というものが農家自身にもありますし、また税務署の側にもあるのでありまして、超過供出をやりますと、その算定が問題になつて、非常に農家が不当に多く課税をせられるという現実があると考えておるのであります。むしろ今の申告納税制度というものが、先ほども申し上げましたが、ことに農家では理解されておらないし、農村の人たちは申告納税というものはそのまま税務署に受け入れられないのだ、必ず更正決定を受けるものだというふうな頭でおりますので、そういう頭が非常に超過供出を鈍らせておると思うのです。私はこの際ひとつ農林大臣に、非常な英断でありましようけれども、思い切つて超過供出に関しては源泉課税で行くのだということにしてもらいたいと思つております。私はそういうことについて大臣のお考えを伺いたいと思います。
  233. 森幸太郎

    ○森國務大臣 お氣持はよくわかるのでありますが、この問題につきましては、昨日大藏大臣からも御答弁があつたわけであります。一体この超過供出を農家が逡巡いたしますことは、それが総合課税となり、翌年の供出の対象となるという氣持が抜けないからでありまして、現に相当超過供出すべきところの食糧がありましても、これを超過供出しない、こういうようなことになるのでありまして、これはまつたく食糧集荷の上から申しましても、遺憾な点であります。何とかしてそういうふうな総合所得に加算されない、また翌年の供出の基準とならない、というようなことを裏づけるような方法によつて、今お話のような源泉課税ということも考えられるのでありまして、われわれもなるべくならば、源泉課税にしたいという氣持は持つておるのであります。昨日大藏大臣もここで答弁せられたように、御承知の定期預金に無記名定期というのがありますが、この無記名定期に対しては非常に税率が重くなつておる。それは総合所得に対する関係から、特に無記名であるという氣持で税率が高くなつておるのでありますが、米の超過供出に対しましても、その他に持つておる所得との比率によつて、総合課税がかわつて來るわけでありますから、源泉課税としては課税技術上、大藏当局としてはどうも承認をしがたいというような意見でありますので、政府といたしましては、源泉課税に持つて行くということを、ただいまお誓いするわけには行かないような段階にあるのであります。
  234. 小坂善太郎

    ○小坂委員 この問題は農林大臣もよほど奮闘なさつて、どうしても解決していただかぬといけない問題の一つではないかと思うのであります。大藏当局の、この税体系そのものから見るところの原則論というものも、これは氣持はよくわかりますけれども、そこを打ち破るということが実は政治ではないかというように思うのであります。これは私の意見でありますが、強く要望申し上げておきます。  さらに農業経営者以外の專從者というものについて、自家労力であるために、この專從者の基礎控除は認められていない。しかしこれは一般事業経営の場合に当てはめて、これはむしろ税体系の面から見まして、農業專從者の所得の基礎控除という問題は、できるのではないかと思うのですが、この点についていかがでございましようか。
  235. 森幸太郎

    ○森國務大臣 お尋ねの件まことに同感であります。今日までそれが実現いたしておりませんが、將來においては家族労働に対しまして、ぜひ控除の道を考えたいと、今努力を続けておるわけであります。
  236. 小坂善太郎

    ○小坂委員 総理大臣に少し伺いたいことがあるのでありますが、それは留保しておきます。
  237. 植原悦二郎

    植原委員長 今日はこの程度にしておきたいと思います。  この際、報告いたしたいことがあります。明後十一日は、午前十時より本委員会の公聽会を開くことになつておりますが、当日御出席を煩わす公述人の認定につきましては、かねて委員長に御一任を願つておりましたので、理事諸君とも御協議の上、次の通り決定いたしましたので、ごひろう申し上げます。学識者として慶應大学教授高木壽一君、東京商科大学教授井藤半彌君、金融機関代表者は、日本銀行副総裁川北愼一君、産業関係経済同友会幹事鹽原禎三君、荏原製作所社長畠山一清君、農業関係代表者は、生産農業組合連合会会長斎藤貞次君、地方財政関係として立教大学教授藤田武夫君、労働組合は、國鉄労組より星加要君、産別より寺井龍雄君、総同盟より清水愼三君、一般より荒木光子君、日教組の荒木正三郎君の十二名の方にお願いいたすことにいたしております。さよう御了承を願いたいと存じます。  委員諸君が非常に御勉強くだされましたので、明日は休みまして、明後日からまた開会いたしたいと思います。どうぞ御承知を願いとう存じます。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時八分散会