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戸叶里子君 私は、
賃金労働者の
日常生活に重要な
関係を持つ
主食掛賣り
実施、
遅配防止及び一部
保有農家に対しての
配給制限等、
人間生存上きわめて重大な
主食の問題に対して、
政府の
所信をただしたいと思うのであります。
人間が生きて行く以上、
食糧の問題は最も大切であります。
終戰後、十分とは言えないまでも、徐々に
食糧問題が
解決しつつあることは、まことに喜ばしいことであります。しかし、
マル公の
引上げ等による
物價の高騰につれて、
台所経済を担当する
主婦の
やりくりの苦しみは、とうていお話になりま
せん。
憲法において、すべて
國民は
最低限度の
文化生活を営む権利は認められておりますが、実際問題として
配給の
主食すらも十分買えない
状態にあるのであります。
主食は四日から一三%の値上りで、五人家族、十日分の
配給は千円近くもしております。
從つて、
配給はありがたいが、米屋さんの声を聞くと、からつぽの財布をかかえて裏口から逃げ出さなければならないと述懐する
主婦や、一枚ずつ
着物をはいでいられる間はまだましであつたが、このごろでは、はぐ
着物もなく、自分の血を
輸血用として賣りながら
生活している、こんな
生活がいつまで続くか、まことに心細いと、涙を流して語る未亡人がいることを考えましたときに、同じ
台所の
やりくりに苦しんでいる私
どもも、この
窮状救済に対して何とかできないものであろうかと、日夜頭を悩ますものであります。
政治というものは、実際
生活と密接に結びつかなければなりま
せん。
生活を離れて
政治はなく、
政治を離れて
生活はないことを考えましたときに、まず
配給の
主食を確保できるくらいな
生活が保障される
政治こそ望ましいものであります。(
拍手)
貿易振興のために二千億からの莫大な
補給金が
國民の税金から支拂われているのにもかかわらず、
國民の直接の飢餓を救うがために必要なる
主食の掛賣りに対して
政府の
責任ある
対策が考慮されないということは、あまりにも
生活窮乏の現実を無視した態度ではありま
せんか。
貿易振興に
補給金を拂うことも必要ではありますが、
國民の
日常生活における
生存を確保するため、
主食購入に際しての掛賣りを認められる施策が講じられなければ、
政治があまりに物的な面にのみ偏し、
人間生存の保障と擁護の面において冷淡であると
國民の
怨嗟を買うおそれがあるのであります。(
拍手)
從つて、この際
大藏大臣、
農林大臣はこれに対する何らかの
立法的処置を講ずる意思があるかどうかをお伺いする次第であります。
四月十日の本議場において、
賃金未
拂いの問題に関する
緊急質問が
提出されましたときに、わが党の
前田議員よりも、
賃金の不
拂いの続く間における
主食の前渡し、もしくは掛賣り
制度によ
つて主食を確保してやる用意があるかどうかと尋ねられたのでありますが、これに対して
厚生大臣は、
賃金の
担保價値を認定しなければならなくなるが、この認定は不可能と思う、もし掛賣りして
賃金が支拂われず、
賃金の取立ができぬときは
公團の
経営を不健全にすると答えられておるのであります。しかし、働く者がその
労働の報酬として
賃金を得ることは当然でありますがゆえに、
賃金を
担保としての掛賣りは、技術的にその操作を考慮するならば、できないことはないと信ずるのであります。(
拍手)要は
政府の誠実の問題であります。
賃金は不
拂いだ、
分割拂いだ、しかし
主食は
現金で買わなければならない、このように、
政府が
國民に対する
義務を果さず、
國民にのみ
義務を強要するということは、何という無
責任なことでありましようか。(
拍手)
國民は、
國家財政の苦しいことはよく知
つております。しかし、
賃金を十分にもらわなくては
主食を買うことはできず、
主食を買わずには生きて行くことはできず、腹が
減つては働けないのであります。しかも、
主食をただでもらうというのではなくて、一時立てかえてもら
つて拂うというこの掛賣り
制度が、どうして惡いのでありましようか。掛賣りそのものに惡い点があつたとするならば、その点を明確に指示していただきたいと思うのであります。もちろん
政府にとりましては、ずいぶん煩瑣なことでありましよう。しかし、
國民の
最低の
生活権を確保してやるために、一刻も早くこの
制度を立案
施行すべきであります。
最近またまことに悲しむべきことは、全國的に見まして部分的ではありますが、
遅配の
現象が現われて來つつあります。お腹がすいたと泣く子をいたわり切れないで
親子心中をする例がたくさんありますが、今から
遅配の
現象が現われるならば、來るべき
端境期を
遅配なしに切り抜けられるかどうか、まことに危惧するものであります。
政府はこの際はつきりと、今現われつつ
遅配の原因と、端境的を
遅配なしに乘り切れる自信があるかどうか、もしあるならば、それを
國民の前で表明していただきたいと思うのであります。
もう一点は、一部
保有農家に対する
配給制限の問題であります。
農村におきましては、老人から子供に至るまで、男女をあげて
食糧の
増産に励み、営々として働いている姿は涙ぐましきものがあります。汗の結晶として供出された
食糧を都会の
消費者は
配給されておるわけでありますが、この
食糧をつくる大もとの
農家において、働く人人の
食糧が十分でないということでは、とうてい
食糧の
増産をしてもらうことはできま
せん。すなわち
農村におきましては、
裸供出をしてしまつたり、
配給の
制限をされておるために、米をつく
つておりながら食べる米もないという
現象を來しておるのであります。近く
田植えも近づいております。
田植えのときには人手も頼まなければなりま
せんし、また平常よりは多少の
食糧のゆとりもほしいのは無理からぬことであります。
農家の人々が食物がないために
食糧の
増産に励むことができなかつたという結果を生み出さぬように、かつまた安心して
田植えを無事に終了できるよう、
政府は
責任を持
つて手当米を
配給すべきでありますが、これに対する
政府の
所信をただしたいと思うのであります。
われわれの
生活を少しでもよりよくする
政治、その第一歩として、少くとも以上の三点は
政府が
責任を持
つて解決すべき問題でありますがゆえに、誠意ある答弁をお願いする次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣森幸太郎君
登壇〕