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稻村順三君 私は、過日
議場において起つた
腕力的衝突に関連いたしまして、
院内である
議員のてした
言動に関し、
議長に対し、また
議長を通じて
法務総裁に対して、二、三簡單な
質問を試みたいと思います。なぜかというに、
当該議員の
言動というものは、
民主主義のもとでは考えることができないほど無謀であり、それは
議会の
威信を保持するためにも、また
議員の生命安全を保障するためにも、われわれ
議員としてはこれを黙視し得ないものがあるからであります。それにも増して重要なことは、
日本再建が
國際的信頼を得ることをも
つて最大の
條件としている今日、この点を明らかにしなかつたならば、わが
國再建の前途に多難な支障となるおそれが十分にあるからであります。(
拍手)このことは、
議会運営の上におきましてもきわめて重要な問題であります。そこで、
議員たる以上、二、三の点につき
議長の
所信をお伺いするとともに、あわせて
院外の問題にも、また
國際問題にも重大な関連を持
つておりますので、
議長を通じて
法務総裁の御意見を伺いたいと思うのであります。
議場内における腕力ざたというものは確かに悲しむべきことであり、院議としては巖重にこれを取締るべきが
ほんとうでありますが、しかし、審議に熱中している余りに、ときには
議員の賣
言葉、買
言葉について起るというようなことは、酌量すべき
事情があるといわなければなりません。
從つて、
議場内での
衝突というものは、あくまで
院内問題として解決し、それ以上発展させないことが
議員の常識であります。それを、よしんば
院内であ
つても、
議場外にまで延長して、その結果として
議員の
議場内の行動まで制約することがごとき結果となることが起つたとするならば、われわれ
議員として断じてこれは許すことができないのであります。(
拍手)ましてや
議場外といえども、いな
院外といえとも、わが國においては
民主主義の鉄則が巖として
存在しておるのであります。これを冒涜してまで、あえて
議員を威喝するがごとき行為があつたとするならば、われわれは
党派のいかんを問わず、一人々々が
民主主義の
擁護者として、身命を賭してこれと鬪うだけの
決意がなければならぬと思うのであります。(
拍手)かかる
決意と
情熱を持
つてこそ、初めて
軍閥によ
つて失墜したところの
國際信用を回復することができるのでありまして、ただその場を糊塗することによ
つて民主主義の形式を整えるというような安易な行き方は、断じてわれわれきくみするところではないのであります。(
拍手)
この点、過日の
議場混乱の当事者たる一
議員の
言動は、実に重大なるものがあるといわねばなりません。二十日の時事新報において、また昨日の
朝日新聞において、
事件後
当該議員の談として、次のごとく報じております。本
会議でなぐられたことは、
侠客として
議会に出ておる私の断じて許せないことだ。
そこで、私は
議長にお伺いしたい。
議長は、
侠客として
國会に出ておる
議員のあることを、これを公然と認めておるかいないかということであります。
侠客とは、すでに過去の
存在である。彼らの
仁義や
達引が
民主主義の脅威である点においては、これはいかなる
党派に所属している人といえども否定することはできないと思うのであります。
ポツダム宣言は、
日本民主化が完了したと認める場合、
日本の
自主と
独立とを証人すると言
つておりますが、
民主主義の完了どころか、
議会内に
侠客として出ておる
議員を持
つている、かようなことが、わが國の
自主独立の障害にならぬと、だれが保証するかと言いたいのであります。(
拍手)さなきだに、ややもすれば過去の
軍閥が行つたところの罪状のゆえに、
國際的に
日本に
右翼團体の
地下組織があると疑われ、
日本再建にと
つてそれが非常に大きな暗影とな
つておるのであります。あたかもそれを裏書きするがごとき、私は
侠客として
議会に出ておるというような
議員があつたとするならば、われわれは、これは
議会最大の問題として取上げなければならぬと思うのであります。(
拍手)
民主化のためには
政治上のボスさえ精算しなければならぬといわれておるのであります。それを、
暴力的背景によ
つてその
存在を主張するところの
侠客は、断じて許されるはずがないと思うのであります。もしかかる
議員のおる場合には、
議長はいかなる
信念をも
つてこれに対処しようとしておるか、この点をお伺いしたいのであります。
なお
議長を通じて
法務総裁に、この点に関連して、わが國に
侠客なるものが合法的に許されておるかどうかということをお伺いしたいのであります。おそらく賢明なる
法務総裁は、かようなものは合法的に許されていないと
答弁するでありましよう。もしそうだとするならば、
院外における
侠客と称する人々が、ある
議員の手引で
院内に入
つて、有言あるいは無言で、
侠客の
仁義や
達引をも
つて相手方議員に
暴力的恐怖を與えたとすれば、これに対するところのいかなる処置をなされるつもりかをお伺いしたいと思うのであります。(
拍手)
私は、これを思わせるような事実があ
つたのではないかということを遺憾に存ずるものであります。すなわち、二十一日における
懲罰委員会において、
当該議員は、これが
議会外ならば共産党三十五名の命はないと言い、
侠客道ならば絶対に許せない、あとで文句をつけないというので手を握
つたのだが、もしこのようにあくまでも追究するならば、私は断固としてまたやると放言しております。もつとも
委員会は、その
言葉が不穏当だというので削除したのであります。しかし、それが
新聞に出ておるのであります。今や
新聞に出た以上、これを不問に付するというわけには行きません。なぜかというと、世間は、いな
世界は、これを見て、
議会が姑息的に
事件を
やみから
やみへ葬り、
民主主義擁護の
情熱というものが一点もないと断ずるおそれがあるのであります。(
拍手)
議会の
威信はまつたく地に落ちることになるのであります。この際
議長は、
民主主義を擁護するために、明らかに何人が見ても反
民主主義的要素があるならば、これを
議会から一掃する
決意を持
つておるかどうかというところの
議長の
所信をお伺いしたい。(
拍手)
議長はすでに御老体でありますから、かような難問題の解決の衝に当られることは、私きわめてお氣の毒に思うのであります。しかし、
戰時中軍閥に同調しないで、多年の間不遇なる生活をなして來たのでありまして、今それが報いられておるのであります。何とぞ有終の美を飾る意味において、かような反
民主主義的な
事件がこの
院内に出たときには、勇往邁進してこれが処断に当られんことを切に
希望するものであります。(
拍手)昨日
椎熊君の
質問に対して、
議長は何ら関知しないと御
答弁になりましたが、すでに
新聞にも報ぜられ、
議会内でもたれ一人ひらぬ者はないくらい、もつぱらのうわさにな
つておるのでありますから、関知しないというのでは
議長が
院内秩序と、ひいては
議会の
威信に関しまして、はなはだ無関心であるということを暴露しておると私は思うのであります。(
拍手)
從つて、
議長にせつかくの有終の美を飾らせたいと
思つておる私としては、この際
議長がほとんど
院内秩序を維持する役目さえ勤まらぬような無氣力であることをやめまして、断固としてこの際に
所信を明らかにし、
國際的に、國内的に、今日
議会にあるいはかかるかもしれないところの疑惑を一掃せらんことを
希望いたしまして、あえて
議長の猛省を促す次第であります。(
拍手)